2025年2月14日 (金)

無雙直傳英信流居合術の織田守馬先生御秘蔵解説 英信流(俗称長谷川流)3本目稲妻

無雙直傳英信流居合術の織田守馬先生御秘蔵解説 
英信流(俗称長谷川流)
3本目稲妻

無雙直傳英信流居合術
織田守馬先生御秘蔵解説
英信流2本目虎一足

 当解説書は剣道六段 織田守馬先生御秘蔵 
於 高知城下大日本武徳會寫之
 干時昭和十八年 龍〇月日 山本俊夫幽泉 印 

長谷川流居合之事

1、英信流(俗称長谷川流)
 向身三本目 稲妻:「
構へ方同前、敵立ッテ冠リ来ル先ヲ払フ心持ニテ左足ヲ右斜後方へ充分引キ中腰トナリテ高ク払ヒ(拳又ハ小手ヲ払フ)虎一足ノ如打チ込ミ(左膝ヲツクト共二冠リ右足ヲ踏ミ込ミテ打込ミ 虎一足の打ち込み)血振シ納刀」

古伝神傳流秘書英信流居合之事3本目稲妻:「左足を引き敵の切て懸る拳を拂ふて打込ミ後同前」

昭和18年8月河野百錬先生「大日本居合道図譜」より
 3本目稲妻:「意義・正面に対座する敵、上段より斬付けんとする機先を制し其甲手に斬付け直に真向に打下して勝つの意なり。右膝を起し乍ら抜きかける。中腰に立上るや左足を一歩後方に退き腰を左に捻りて敵の甲手に斬付ける。註1、刀刃は斜め右上に向け、右手は右肩より少し高目に、剣先を高く斬付ける。註2、剣先部を見ず、着眼は目の高さ、剣先の位置は敵の甲手とす。註3、之より左膝をつきつつ諸手上段となりて斬下し血振納刀する事同前。」

昭和15年太田龍峰著中山博道校閲の「居合読本」より長谷川英信流居合
   3本目稲妻:「意義・前方から斬って来る敵の起り頭を乗じ其前臂を斬る業である。動作・正面に向ひ箕坐す。右足を左足に引きつけ左足を一歩ひきつゝ中腰の儘で抜刀して敵の前臂を切り(大森流の勢中刀を参照)左膝を右足に引きつけつゝ刀を頭上に振り被り右足を前に踏みつけて正面を斬る。以下前に同じ。」

 それぞれ、斬る位置に違いもあるが、多少の足さばき、それによる體裁きの違いはあっても、同じような動作でしょう。山本先生と河野先生は止めの斬り下ろしは、左膝を床に付けて斬り下ろしています。甲手に斬りつけられた敵は、膝を着いて切り込む程に低く崩れるのか、違和感を覚えるところです。古伝は状況次第で立ったままか、崩れる敵に応じるか任せてくれています。

 


 

 

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2025年2月13日 (木)

無雙直傳英信流居合術の織田守馬先生御秘蔵解説 英信流(俗称長谷川流)2本目虎一足

無雙直傳英信流居合術
織田守馬先生御秘蔵解説
英信流2本目虎一足

 当解説書は剣道六段 織田守馬先生御秘蔵 
於 高知城下大日本武徳會寫之
 干時昭和十八年 龍〇月日 山本俊夫幽泉 印 

長谷川流居合之事

1、英信流(俗称長谷川流)
 向身二本目 虎之一足:「構へ方向前・左足ヲ後へ引クト同時二中腰ノ侭サカサマ二抜イテ留メ左膝ヲツクト共二冠リ右足ヲ踏ミ込ミテ打込ミアトハショ本二同ジ


古伝神傳流秘書英信流居合之事
 2本目乕一足:「左足を引刀を逆に抜て留め扨打込ミ後前に同」

昭和18年8月河野百錬先生「大日本居合道図譜」より
 2本目虎一足:「意義・正面に対座する敵が我が右足の方向より斬付けるを之に応じ其の退かんとするに乗じて上段より斬下して勝つの意なり。中腰になり乍ら抜きかける。右(左の誤植)足を一歩後方に退き腰を捻るや抜付けて刀棟を以て敵刀を反撃す。左膝をつきつつ右手を頭上に把り剣先を下げたるまま運びて上段にならんとす。註 諸手上段となりつつ右足左い左膝を進め右足を踏み込みて敵の真向に斬り下し血振ひ納刀する事第一本目に同じ。」

昭和15年太田龍峰著中山博道校閲の「居合読本」より長谷川英信流居合
   2本目虎一足:「意義・敵が前方から我が右臂(ひじ)を斬って来るのを抜刀して之を受け、敵の退くに乗じ正面に向ひ斬る業である。動作・正面に向ひ箕坐す。刀柄を上から握り、半ば刀を抜きつゝ左足を後方に踏み開き、刀を右足の側方に刀刃を前方にして敵の斬りつける刀を拂ひ受け、刀を頭上に振り被りつゝ左足を右足に引きつけ、右足を僅かに前方に踏みつけて正面ヲ斬り直ちに血振りをする。以下前に同じ。」

 中山博道先生は、敵が我が右ひじを斬って来ると攻撃される部位が明確です。
 大江正路先生の虎一足では:「膝を囲ふ、此の囲は體を左向き中腰となり、横構にて受止める事」とされています。
 細川義正先生の虎一足では:「(向脛へ薙付け来る者を斬る)・・差表の鎬にて強く張受に受止・・」

 敵は我れと同様に座していて抜き付けてくるのか、立って斬り込んで来るのかどの先生も特定されていません。古伝は「刀を逆に抜て留め」とだけの手付です。現代では指導される人の思い込みが手付になったのでしょう。どのように習い覚えても、実戦での変化は当然あるものです。
 敵の斬り込みを、刀で受けるなどは、仮想敵相手の稽古業では初歩的動作としてあり得ても、実戦では斬り込んで来る相手の小手に刃を逆(上にして)にして打ち込み「止める」を充分稽古し磨き上げるべきものでしょう。古伝はそれを望んでいると思います。

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2025年2月12日 (水)

無雙直傳英信流居合術の織田守馬先生御秘蔵解説 英信流(俗称長谷川流)1本目横雲

無雙直傳英信流居合術
織田守馬先生御秘蔵解説
英信流1本目横雲

 当解説書は剣道六段 織田守馬先生御秘蔵 
於 高知城下大日本武徳會寫之
 干時昭和十八年 龍〇月日 山本俊夫幽泉 印 

長谷川流居合之事

1、英信流(俗称長谷川流)
 向身一本目 横雲:「正面向二右片膝立テ、坐シ右足ヲ前へ踏ミ出スト同時二抜付ケ左膝ヲ進メテ冠リ右足ヲ踏ミ込ミテ打込ミ刀ヲ右へ開キ(血振)右足ヲ引クト同時に納刀ス」


古伝神傳流秘書英信流居合之事
 1本目横雲:「右足を向へ踏出し抜付打込ミ開き足を引て先に坐したる通り二して納る」

昭和18年8月河野百錬先生大日本居合道図より
 1本目横雲:「意義・前に対坐する敵に対する業にして正座一本目と同意なり。」
・・抜き付けのさい、右足先も、脚も、膝も真正面に敵に向け、左右膝の内方角度は90度より大きくならぬ事。鍔元が右膝の線上にある程に剣先を前に出す。

昭和15年太田龍峰著中山博道校閲の居合読本より長谷川英信流居合
   1本目横雲:「意義・大森流初発刀に同じである。動作・正面に向ひ箕坐す。右足を僅か前方に踏み出し大森流の初發刀と同様に抜刀して直ちに頭上に振りかぶり、敵を斬り下ろし、直ちに陰陽進退の最初の血振り(横血振り ミツヒラ)をなし、刀を納めつゝ右足を左足に引き付けて蹲踞し、後、徐かに立ち上がる。
 大森流初發刀の抜刀:「徐かに両足を爪立てつゝ左手拇指にて鯉口を切り僅かに外方に傾け右手を以て鍔より五分離して握る。次に右足踵が左膝頭附近に来る如く踏み著くると同時に刀を抜く、抜き放ちたる刀の高さは右肩の高さにして刀刃は水平に抜付真横に向ひ刀尖は稍下方に向はしむ。此際左肩を充分後方にひく(右半身 ミツヒラ)如くすれば刀勢一層活気を生ずるものとする。」

昭和47年山蔦重吉著夢想神伝龍居合道 中伝長谷川英信流 立膝
 1本目横雲:意義・初伝の初発刀と同じ要領で抜付け、自分の正面に坐っている敵を斬下すのであるが、初伝では、一歩踏み出すのに反し、左足をうしろに引くと同時に抜き付ける。もちろん、自分と敵との距離が充分あるときは、初発刀と同じく、右足を一歩踏み出して抜付けることもあるが、わざの基本としては、左足を引いて抜付ける。

平成15年2003年檀崎友影著居合道ーその理合と真髄 中伝長谷川英信流 立膝の部
 1本目横雲:意義・抜付けの際、大森流は、右足を踏み出すが、此の技では左足を引く

 河野先生の抜き付けの際、左右の肩は正面に平行を要求しているようですが、中山博道先生は右半身の様です。敵との間相によるとか、刀勢を強めるなど、現代居合では自流に取り込み、それでなければならないと決めつけているようですが、いかがなものでしょう。状況次第では抜刀の刀刃は下からの切り上げも出来なければなりません。
 抜き付けの際の足の操作は、夢想神伝流の山蔦先生も檀崎先生も「左足を引く」とされ、博道先生の昭和15年とは異なります。これも敵との間合いや状況次第で踏み込むか、下がるか。臨機応変であるべきと示唆しているのだろうと思います。どれも出来て当たり前ですが、現代の昇段審査や演武競技会などで判定はややこしいものです。

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2025年2月11日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘18居合術備忘録3奥居合19暇乞 立業

無雙直傳長谷川流居合術極秘
18居合術備忘録
3奥居合
19暇乞、20暇乞右向、21暇乞前二同ジ 立業

19正座黙礼両脛中立二立ツト共二刀ヲ斜二抜キ上段ヨリ打下スト共二両股開ク心血振納刀ト共二腰ヲ踵二下ス抜打真向同要領
20暇乞右向、右同要領黙礼ノ時ハ両手ヲ板ノ間二ツキ頭ヲ低ク下ゲ礼ヲナシ両手ヲ柄ト鞘二一度二カケ上二抜刀立チ股ヲ開ク心ニテ打下ス以下同前
21暇乞 前二同ジ、両手膝上黙礼ヨリ稍低ク頭ヲ下ゲテ礼ヲナシ両脛立ツト共二斜二抜刀打下シ血振納刀要領同前 終リ

 この暇乞の指導は曽田先生に依るのか、何か文献に由来するのか疑問です。
 
   古伝神傳流秘書抜刀
心持事17本目「抜打」:「(抜打上中下暇乞三本)格ノ低キ者二対する黙礼ノ時。等輩二対スル礼ノ時、目上ノ者二対スル黙礼ノ時。」

   特に動作の開設は無い。

 大江正路先生の奥居合立業の部十九本目「暇乞(黙礼」:「(正座し両手を膝上に置き黙禮し、右手柄に掛かるや刀を斜めに抜き付け上段にて斬る。」
20本目「暇乞(頭を下げ禮をする)」:「両手を板の間に付け、頭を板の間近く下して禮をなし、両手を鞘と柄に同一に掛け直ちに上に抜き上段となり、前面を斬る。
21本目「暇乞(中に頭を下、右同様に斬る。」:両手を膝上に置き黙礼より稍や低く頭を下げて禮をなし、右手を柄に掛け刀を斜に抜き上段にて斬る。(止め)(立合終り)」

 現代居合では、1僅かに頭を下げ目礼をなすや直に抜刀して敵の真向に斬下す。2前に両手をつく・・。3両手をつく、最敬礼の体勢に頭を下げる。両手を前につき頭を深く下げるや直に上体を起こしながら抜刀す。次に上体を起し乍ら諸手上段となり敵の真向に斬下し血振ひ納刀す。(河野百錬先生「大日本居合道図譜」による)

  細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部18本目「抜打」:「(出合頭に斬る)正面へ歩み往きつつ 鯉口を切り右手を柄へ掛けるなり 右足踏込み 出合頭に(正面へ)抜打に斬付け 左足を右前足に踏揃へると同時に 刀を納め終る。」
19本目「馳抜」:「(馳違ひに右後の者を斬る)正面へ 小走に馳往き(左側を通り)摺違ひに右後へ振返へりつつ、刀を抜き、諸手上段に引冠り 右足より踏込んで斬込み刀を開き 納め終る。」
20本目「抜打」:(対座して居る者を斬る)正面に向ひ対座し 刀を鞘なり前腹へ抱へ込む様に横たへ両手を前につかへ 頭を下げ礼をして俯きたるまま 両手引込め鯉口と柄へ執り 急に腰を伸しつつ 刀を右前へ引抜き刀尖を左後へ突込み 諸手上段に引冠りて斬込み 刀を開き納めつつ 両足の踵上へ臀部を下すと共に 納め終り 爪先立てたる足先を伸し正座して終る。」

 古伝の抜打の趣は18本目「抜打」や19本目「馳抜」からは感じられません。20本目に参考程度に稽古されたような気もします。

  夢想神伝流山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道奥伝奥居合立業十三本目「暇乞(三本あり)」:「奥居合中唯一の正座のわざである。これも上意討のひとつであり、主君の命令を受け、使者として敵となるべき者を訪問して、お互いの挨拶の際に、敵が刃向う心持のあるのを感知し、機先を制し、挨拶の途中に抜打ちに、敵を正面より斬倒すわざである。三つの動作がある。
1正面に向かって正座し、頭を少し下げ(黙礼程度の会釈)、礼をかわす間をおかず、うつむいたまま一気に抜刀、上段より敵の正面を斬下す。
2両手をつき頭を低く下げ、その体勢にて抜刀、敵が頭を下げるところを斬る。
3両手をつき深々と礼をして、体を起しながら抜刀、敵が頭を上げるところを斬る。」
暇乞の動作を前述のとおり三通りに分けてあるが、要するに自分に最も有利、有効な動作を、敵の気配や動きに応じて採る点から、分けてある訳である。」

 この手付も古伝の、相手の格に元ずく動作の趣が消えてしまったようです。自分に有利な状況を見出して戦う事に重点を置いています。

 山本俊夫先生の奥居合はここまでとなります。この居合の備忘録が書かれたのが時代が昭和18年1943年の事です。曽田先生の手ほどきで稽古されていたと思われます。しかし業はおおよそ第17代大江正路先生によるものと思われます。
 古伝神傳流秘書による、手付の順番や仕様とは幾つも異なります。併せて夢想神傳流の山蔦重吉先生の奥居合を載せておきましたが、これは中山博道先生系統ですが、博道先生の奥居合の手付は書籍では見当たりません。一説では奥居合は奥居合を指導したり、稽古姿すら見せなかったともいわれています。





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2025年2月10日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘18居合術備忘録3奥居合18請流 立業

無雙直傳長谷川流居合術極秘
18居合術備忘書
3奥居合
18請流 立業

左足ヲ右斜二踏出シ中腰デ前二刀ヲ抜キ頭上二上ゲ受ケ右足ヲ右方二開キ体ヲ低ク受流シ乍ラら左斜二捻リ左足二右足揃踏ミ双手上段ヨリ左斜ヲ打ツ左足ヲ退キ血振納刀 以上立業

 古伝神傳流秘書抜刀心持事には、「請流」の業は見当たらない。

 大江正路先生の奥居合立業の部十八本目「受け流し」:「(進行中左足を右足の前に踏み出し身を變して請流す)左足を出すとき、其左足を右斜に踏み出し、中腰となり、刀の柄元を左膝頭の下として、刀を抜き直に其手を頭上に上げ、刀を斜とし、體を左斜前より後へ捻る心持にて受け流し、左足を踏みしめ、右足を左足に揃へ、右拳を右肩上に頭上へ廻し下し、上體を稍や前に屈めると同時に真直に左斜を斬る、揃へたる足踏みより左足を後へ引き、血拭ひ刀を納む。」

  細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部には「受け流し」の業は見当たらない。

  夢想神伝流山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道奥伝奥居合立業十本目「受流(請流・弛抜)」:「進行中、自分の敵が真正面から斬込んで来るので、刀を右斜め横に抜くや、左足先を右にむけ、右足の前に踏出して、敵の刀を受ける。右足を右斜めに運んで、その刀を受流し、左足先を敵の方に向け、左手を柄に添え、右足を左足に揃えるように踏込むと同時に、敵の肩口に斬付ける。状況により首でもよい。伝書では腰車に斬付ける動作を示すものがある。初伝流刀と同じ要領のわざであるが、立業の受流しは敵が正面から来るところに相違がある。」

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2025年2月 9日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘18居合術備忘書3奥居合17壁添 立業

無雙直傳長谷川流居合術極秘
18居合術備忘書
3奥居合
17壁添 立業

進行中両足ヲ揃へ立止ルト共二刀ヲ上二抜キ爪先ヲ立チ双手直下二打下シ刀尖ヲ下トシタルマヽ少シ血振ヒ手元ヲ上二納刀爪先ヲ下ス

 古伝神傳流秘書抜刀心持事八本目「人中」:「足を揃へ立って居る身二そへて上へ抜き手をのべて打込む納るも躰の中尓て納る。」

 大江正路先生の奥居合立業の部十七本目「壁添へ」:「(進行中立留り両足を踏み揃へ上に抜き直下に斬下し堅立に刀を納む)中央に出で體を直立とし両足を揃へ刀を上に抜き上段となりてあし先を立てゝ直に刀尖を下として斬り下し、其體のまゝ刀尖を下としたるまゝ血拭ひ刀を竪立として納む。」

  細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部十本目「人中」:「(群集中にて前の者を斬る)正面正面に向ひ 直立の儘(刀は落差に)鯉口を切り 右手を柄に掛けるなり 刀を真上へ引抜き(左より背部へ廻し) 素早く諸手となり 前者へ斬込み(両足の間へ斬下す)其儘刀を 少し開き 柄を上へ引上げ(刀尖を真下に釣下げる様にして)納め終る(体は直立の儘動かさぬ事)」

  夢想神伝流山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道奥伝奥居合立業九本目「壁添(人中)」:「左または右側に壁がある。あるいは両側に壁のごとき障害物があって刀を自由に使えないような場所で前面に敵がいる。歩みながら(立止まってからでもよい)、右足に左足を揃えて爪先立チ、刀を上方に抜き振りかむる。この場合に限り刀先が、背中に着くよう深々とかむる。上段から大きく円を描くように斬下す。刀先は地上に近くなるように低く。この時、両足は爪先立ったままである。体に近く刀先を低く下げたまま血振りを行い、刀は上より下へと納める。納め終るとき両踵を下す。要するに狭い場所での東刀法で、刀は自分の体の幅の中で使い、左右いずれの横にも出せない想定で動作する。古い伝書の「人中」という意味は、多勢の中で、自分に用の無い人を傷つけず、目標の敵のみを斬るということから、名付けられたものと想像する。」

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2025年2月 8日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘18居合術備忘書3奥居合16門入 立業

無雙直傳長谷川流居合術極秘
18居合術備忘書
3奥居合
16門入 立業

右足ヲ出シ刀ヲ抜キ左足ヲ出シ抜刀ノ背ヲ胸二アテ握リヲ腰二ツケ刃ヲ右横二カへシ右足ヲ出シテ突キ左廻リ後ヲ切リ又右廻リ前方二向直リテ上段ヨリ打下ス

   古伝神傳流秘書抜刀心持事には「門入」に相当する業は見当たらない。



 大江正路先生の奥居合立業の部十六本目「門入」:「(進行中片手にて前を突き後を斬り前を斬る)右足を出したる時、刀を抜き、左足を出して、刀柄の握りを、腰に當て刀峰を胸に當て、右足を出して、右手を上に返し、刀刃を左外方に向け、敵の胸部を突き、其足踏みのまゝ體を左へ振り向け、後へ向き、上段にて斬り直に右へ廻り前面に向き上段にて斬る

 業名は門入ですが、業は前後の敵を突き斬る業のようです。業名の「門入」から20代河野百錬先生は「我門の出入に際し、門の内外の敵を受けたる時(前後に多敵を受けたる場合と同意)我門の真中に進み内外の敵を仆すの意なり。」とされています。


  細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部には「門入」に相当する業はありません。

  夢想神伝流山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道奥伝奥居合立業八本目「門入(隠れ捨)」:「門の内外に敵(二人以上)がいる。門の中に左足を踏入れ(門に対して右向き半身)刃を外にして刀を水平に胸前に抜取り門内の敵を刺す。そのままの足踏で一八〇度右まわりに旋回し、門の外のうしろの敵を斬り、再び、一八〇度左まわりに旋回し、門内のもう一人の敵を斬り倒すわざである。門の真中に踏まえて、門の内外の敵数人を斃すというわざで、頭の上に門の梁とか鴨居のような、障害物がって、刀先がつかえやすい場所での刀法と考えてよい。」

 

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2025年2月 7日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘18居合術備忘書3奥居合15袖摺返 立業

無雙直傳長谷川流居合術極秘
18居合術備忘書
3奥居合
15袖摺返 立業

右足出タルトキ刀ヲ抜キ左足出タルトキ右手上左テ下二胸ニテ組三右足ヲ出シ乍ラ右左ノ手ヲ開キ押別ケテ上段ヨリ打下ス 以下同前


古伝神傳流秘書抜刀心持事
同様の業名および手付は、古伝には見当たらない。

 大江正路先生の奥居合立業の部十五本目「袖摺返」:「(進行中抜放ち、刀を左の身に添へ群衆を押開き進みつゝ斬る)右足の出でたる時、刀を静に抜き、直ちに右手は上へ左手は下へ胸の處にて組み合せ、足は左右と交叉的に数歩出しつゝ、両手肘に力を入れて、多数の人を押し分ける如くして、左右に開き、直に上段に取りて、中腰にて右足の出でたるとき、前面を斬る、(両手を開く時は、両手を伸ばす、肘の處を開くこと)」

  細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部
同様の業名および手付は、無雙神伝抜刀術には見当たらない。

  夢想神伝流山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道奥伝奥居合立業七本目「袖摺返し(賢の事)」:「前方に群集がいて、その先に目指す敵がいる。歩みながら左足を進め、静かに抜刀し、右足を一歩進めると同時に、右拳を左肘の上に(刀は刃を上にして、うしろを突き刺すように)、左拳は右脇の下に来るように左右の手を胸の前で組合わせる。上体をややうしろに反らし、反動をつけるように、上体を前へ突込み、右足を前に進めながら両手を八の字になるように大きく開く。この時、左右の肘で人垣をかきわける。人垣の向側に体が出るや、刀を右側より受流しに振りかむり上段より、目指す敵を斬るわざである。人垣をかきわける時は、刀の刃を上に向け、無用の群集を傷ついけぬよう配慮する。」

 古伝神傳流秘書の抜刀心持の後ろ22番目に「賢之事」と言う業名が記述されていますが、これを解説する文面は存在しません。

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2025年2月 6日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘18居合術備忘録3奥居合14行違 立業

無雙直傳長谷川流居合術極秘
18居合術備忘書
3奥居合
14行違 立業

進行中右手ヲ柄二カケ鞘共抜出シテ前方二柄當ヲナシ其ノ右足ノ出タル姿勢ニテ体ヲ左廻リニ後方へ廻リ乍抜刀上段ヨリ打下シ又右廻リ二前方上段ヨリ打下ス血振納刀

 古伝神傳流秘書抜刀心持事一〇本目「連達」:歩三行内前ヲ右之拳尓て突其侭二左廻リ二振返リ後ヲ切リ又前へ振向て打込也

 大江正路先生の奥居合立業の部十四本目「行違」:「(進行中正面を柄頭にて打ち、後を斬り又前を斬る)右足の出でたる時、(敵顔面を柄頭にて)左手は鞘と鍔を拇指にて押へ、右手は柄を握りたるまゝ前方に伸し、柄當りをなし、其足踏みのまゝ體を左へ廻して、後方に向ひつゝ、抜き付右手にて斬り、直に前方の右へ振り向き上段に斬る」

  細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部十三本目「行違」:「(摺違ひに左側の者を斬る)正面へ歩み往きつゝ(右側を通り) 鯉口を切り左足を踏出しながら右手を柄に掛け 右足踏出すなり刀を向ふへ引抜き 左足踏出しつゝ(刃部を外へ向け)左腕外へ突込み 更に右足踏出すと共に摺違ひに刀を向ふへ摺抜き(対手の左側を軽く斬り)直ぐ左斜に振返へりつつ 諸手上段に振冠り 右足踏込んで斬込み 刀を開き 納め終る」

 細川先生の「行違」は、古伝の「十一品目行違:行違に左の脇二添へて拂ひ捨冠って打込也」でしょう。古伝の十本目「連達:歩三行内前を右之拳尓て突其侭二左廻り二振返り後を切り又前へ振向て打込也」ではありません。 

  夢想神伝流山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道奥伝奥居合立業六本目「行違」:「六本目行違:前方から二人前後して進んで来る敵がある。その二人の間に入り、すれ違いざま、やや遅れて歩いて来る敵の顔面の人中(鼻の下のみぞ)に柄当をする。(柄当とは、両手を伸ばし、刀を鞘ごと抜いてパシッと柄頭を敵の人中に打突する動作)ただちに左手で鞘をうしろに引きながら抜刀し、左まわりに体を一八〇度旋回させ、先に進んでいたもう一人の敵が、振向いたところを、刃を真上にしたまま突く。再び右まわりに一八〇度体を旋回(足踏はそのまま)して、柄当した敵を上段より斬下すわざである。一人の敵が前方から、他の一人は自分のうしろから追うように進んで来るといった、自分をはさみ討ちにする形を想定してもよい。柄当をして体を旋回しながら抜刀、突く代りに上段より一人を斬り、反転して柄当をした敵を、真向から斬下すわざもある。」

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2025年2月 5日 (水)

第85・86・87古伝研究会

第85・86・87回古伝研究会
 無雙神傳英信流居合兵法(無双直伝英信流・夢想神傳流等の古伝)の古伝研究会を、感染病対策として当分の期間月一回として継続しています。
 違師傳交流稽古会の令和7年課題は大森流居合之事となります。
 随って研究内容は現代の無双直伝英信流・夢想神傳流の「正座の部」を1700年代に書かれたと思われる古伝無雙神傳英信流の神傳流秘書によって解析して行きます。
 現代居合とは聊か勝手が違う部分も多々ありますが、
「古きを尋ねて新しきを知る」、ご参加いただいた方々が夫々「逢人皆我師」である事をご認識頂き、ご自由な意見を出され共に学ぶ研究会です。
 「俺の指導に従え」と云う「習い稽古する」稽古会とは異なります。
 古伝を読み参加者が自らが「工夫する」研究会です。どの連盟、他流派、他道場等ご自由にお出で下さい。


1
、第85回
  2月27日(木)
  鎌倉体育館 格技室
  13:00~17:00
2、第86回
  3月27日(木)
  見田記念体育館 多目的室
  13:00~17:00
3
、第87回
  鎌倉体育館 格技室
  4月24日(木)
  13:00~17:00
4、住所
  見田記念体育館
  248-0014鎌倉市由比ガ浜2-13-21
     ℡0467-24-1415
     鎌倉体育館・駐車場
  248-0014鎌倉市由比ガ浜2-9-9
     ℡0467-24-3553
  鎌倉警察署向かい側
5、アクセス:JR横須賀線鎌倉駅東口下車徒歩10分
6、参加費:会場費等割勘つど500円
7、参加申込:事前に参加連絡をお願い致します。
   mail:sekiun@nifty.com
8、研究会名:無雙神傳英信流居合兵法
  居合道研修会鎌倉(湘南居合道研修会鎌倉道場)
9、御案内責任者:ミツヒラこと松原昭夫
      sekiun@nifty.com
10、注意事項
 ・感染病対策として以下の事項に一つも
  該当しない事
 ・平熱を越える発熱
 ・咳、喉の痛みなど風邪の症状
 ・倦怠感、息苦しさ
 ・臭覚や味覚の異常
 ・体が重く感じる、疲れやすいなどの症状

 2025年2月5日 ミツヒラこと松原昭夫  記

 

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無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書 3奥居合 13信夫 立業

無雙直傳長谷川流居合術極秘
18居合術備忘書
3奥居合
12信夫 立業

進行中左足ヨリ右足ト左斜方向二廻リツヽ静二刀ヲ抜キ右足ヲ前二足ヲ斜二踏開キタルコヽ体ヲ横右二屈メ中腰二テ刀尖ヲ下二ツケ左足ヲ左斜二踏込三上段ヨリ打下ス血振納刀

 古伝神傳流秘書抜刀心持事
一二本目「夜ノ太刀」:「歩三行抜て躰を下り刀を右脇へ出し地をパタと打って打込む闇夜の仕合也」

 大江正路先生の奥居合立業の部十三本目「信夫」:「(暗打ち)左足より右足と左斜方向に廻りつゝ、静に刀を抜き、右足の出でたるとき、右足を右斜へ踏み、両足を斜に開き、體を稍や右横へ屈め、中腰となり、其刀尖を板の間に着け、左足を左斜に踏み込みて上段より真直に斬る、其まゝの中腰の体勢にて、血拭ひ刀を納む。」

  細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部十四本目「夜太刀」:「(暗夜に斬込み来る者を斬る)正面へ歩み往き止まりて 左足を左へ大きく披き 体を右へ倒し低く沈め 正面より来掛かる者を透し見つつ刀を引抜き向ふへ突出し 刀尖で地面を叩き 其者に斬込み来るを 急に右足諸共体を引起こしつつ諸手上段に冠り(空を斬って居る者へ)右足踏込んで斬込み 刀を開き 納め終る」 

  夢想神伝流山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道奥伝奥居合立業五本目「信夫(夜の太刀)」:「信夫は「忍」の当て字と考えられる。暗夜のわざで、前方に敵がいて自分の方に向って進んで来る。敵をかすかに認め、自分の体を左に転じて、進んで来る敵の正面をさける。体を沈めて、刀先で軽く地をトントンと二、三回叩いて音をたてると、誘われてそこに敵が斬込んでくるのを空を斬らせ、左斜め前に左足を踏み出して、上段より敵を斬下すわざである。このわざは暗いところで、かすかに気配をうかがう心持で行うことを必要とする。」

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2025年2月 4日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書 3奥居合 12惣留 立業

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
3奥居合
12惣留 立業
.
 進行中右足ノ出二テ刀ヲ右斜二抜付ケ左足出シテ納刀又足ノ出二テ右斜二抜付左足ノ出二テ納刀之レヲ数回行ヒ最後ハ左足ヲ出サス其ノマヽ納刀ス


 古伝神傳流秘書抜刀心持事
八本目「放打」:「行内片手打二切納ては又切数はわまりなし」

 大江正路先生の奥居合立業の部十二本目「總留め」:「(進行中三四遍斬っては納む)右足を出して、刀を右斜へ抜き付け、左足を出して抜き付けたる刀を納む、以上の如く四五回進みつゝ行ひ、最後の時は其まゝにて刀を納む。」

  細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部十七本目「放打」:「(右側へ来掛る者を一々斬る)正面へ歩み往きつつ 鯉口を切り左足踏出したる時 右手を柄に掛け右足踏出し 右前へ抜付け 左足を右前足に踏揃へる同時に刀を納め 又右足踏出して抜付け 左足を右前足に踏揃へるなり刀を納め する事 数度繰返し(三回位して)刀を納め直立の姿勢となり 終わる」

  夢想神伝流山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道奥伝奥居合立業四本目「総留(放し打)」:「せまい板橋、土堤、細道、階段など、両側に体を自由にかわせないような、障害のある場所を通行中、前面に数人の敵がいる。腰を充分左にひねって、右片手抜打ちに敵の肩口、胸部を斬下し、第二、第三の敵も同様に片手抜打ちに斬る。最後に、腰を右にひねり、正面に向き直り、血振り、納刀するわざである。足の運びに二様ある。第一の敵に対し、右足を(足先を左向き)踏込み、腰を左にひねり半身になり(左足先も左向き)右片手抜打ちに斬下す。次に左足を鷺足にごとく右足の右横に(左足は爪先を左向きにしたまま)、腰を落して踏みつけながら、いったん納刀、右足を第一の敵に対するごとく右へ踏出すと同時に、片手抜き打ちに第二の敵に斬付ける。これを数回くり返す。斬付けたときは、いつも半身で敵に対し自分は左向きになっている。伝書の放し打ちは、斬付けのとき左、右の足は前方、敵の方に向いているところが前述と異なる。」



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2025年2月 3日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書3奥居合11惣捲 立業

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
3奥居合
11惣捲 立業

進行中右足少シ出シテ刀ヲ抜キ其足ヲ左足二引揃へ刀ヲ右肩上二トリ左手ヲカケ右足出シテ左面 右足出シテ右肩 右足出シテ左胴 右足出シテ右腰ト左足引揃へ追足ニテ刀ヲ舞シ矢筈形二切リ最後二双手上段ヨリ打下血振納刀

 古伝神傳流秘書抜刀心持事には「惣捲」に相当する手附は見当たらない。

 大江正路先生の奥居合立業の部十一本目「惣捲り」:(進行中面、肩、胴、腰を斬る)右足を少し出して、刀を抜き、其足を左足に引き寄せ、右手を頭上へ廻し、右肩上に取り、左手を掛け稍や中腰にて(右足より左足と追足にて)敵の左面を斬り、直に左肩上に刀を取り、追足にて敵の右肩を斬り、再び右肩上段となりて、敵の左胴を斬り、再び左肩上段となり右足を踏み開き敵の右腰を目懸け刀を大きく廻し體を中腰となして敵の右腰を斬り、中腰のまゝにて上段より正面を斬る、(左面斬り込みより終りの眞面に斬ることは一連として早きを良しとす、)

  細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部には「惣捲り」に相当する手附は見当たらない。

  夢想神伝流山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道奥伝奥居合立業三本目「惣捲」:(五方切)

 

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2025年2月 2日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書3奥居合10連達 立業

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
3奥居合
10連達 立業

進行中右足ヲ右横二踏ミ体ヲ右二寄セ刀ヲ斜二抜キ刀背ヲ胸二当テ左横ヲ顧ミテ右二返シタルコ・(?)突キ足ハ其ノマヽ体ヲ右二変シテ双手上段右方打下ス血振納刀。
*
 古伝神傳流秘書抜刀心持之事9本目「行連」:立って歩ミ行内二抜て左を突き右を切る両詰に同事也。(両詰:抜て片手尓て左脇を突き直二振向いて右脇を切る

 大江正路先生の剣道手ほどき奥居合立業の部十本目「連達」:(進行中左を突き右を斬る)右横へ右足を踏み、體を右に避け、刀を斜に抜き、左横を顧みながら刀を水平として左を突き、右へ體を變して上段にて斬る

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部十二本目「連達」:(前後の者を斬る)正面へ歩み往きつつ鯉口を切り右手を柄に掛けるなり抜打に(前の者へ)斬付け直ぐ(左廻りに)後ヘ振返りつつ諸手上段に振冠り右足踏込んで(後の者へ)斬込み刀を開き納め終る。

 夢想神伝流山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道より奥伝奥居合立業二本目「連達」:左右の敵に挟まれ行く時、右足を少し右前に出し、敵がやや前に出た所を左の敵のみぎ脇腹を刺突し、その足踏みの儘、振り向く右敵に斬り下す。

 夢想神伝流檀崎友影先生の居合道ーその理合と神髄より奥居合の部立業二本目「行連」:左右の敵にはさまれ歩み行く時、右足を一歩右後方に開き、刀を右真横に抜いて左の敵を刺突し、右の敵に斬り下ろす

  細川義昌先生伝授の奥居合立業には「左を突き右を斬る」業が見当たりません。左右、前後の敵を斬るばかりです。この業の古伝の業名は「行連」ですが、他は「連達」で檀崎先生ばかりが「行連」です。古伝の教えが何処かで崩され、変化してきたのでしょう。今更統一される事も無いでしょうが、古伝の研究を古伝の述べた通りに研究して行きませんと、枝葉ばかりがはびこってしまいます。
 

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2025年2月 1日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書3奥居合9行連 以下立業

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書3奥居合
9行連 以下立業

進行中左足ヲ左横二踏上体ヲ稍々左二寄セ 右足右横二踏出スト共二片手上段ニテ右ヲ打チ足踏其ノマヽ体ヲ左二返シテ双手上段ヨリ左方打下ス血振立チタルマヽ納刀。

 古伝神傳流秘書抜刀心持之事従是立事也二本目(一本目向拂より通しで九本目)「行連」:立って歩ミ行内二抜て左を突き右を切る両詰に同事也。(抜刀心持之事居業4本目両詰:抜テ片手尓て左脇を突き直二振向いて右脇を切る。)

   大江正路先生の剣道手ほどきより奥居合立業の部九本目「行連」:(進行中右に斬付け又左を斬る)直立體にて正面を向き、右足より數歩出で道場の中央となりたる處にて、左足を左横に踏み上体を稍や左横に寄せ右足を右横に踏み出す時中腰にて抜き付け上段にて右を斬る、其足踏みのまゝ、左横に體を返して、上段にて、中腰にて斬り、同體にて血拭ひ刀を納む、(血拭ひ刀納めは以下之と同じ)

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部十一本目「行連」:正面へ向ひ歩み往きつつ鯉口を切り右手を柄に掛け右へ振り向くなり抜打ちに(右の者へ)斬付け直ぐ左へ振返へりつつ諸手上段に振冠り右足踏込んで(左の者へ)斬込み刀を開き納め終る。

 河野百錬先生の大日本居合土居図譜奥居合立業一本目(居業と通しで九本目)「行連」:(意義)左右の敵と歩行する場合、敵の機先を制し一歩敵をやり過し乍ら右の敵を抜打ち左敵の振向く所を斬下し勝つの意なり。(動作)前進し乍ら間をはかりて鯉口を切り左足を少し(半歩位ひ)左斜め前に盗みて踏み敵をやり過し柄に右手をかけるや右足を右斜前に踏込みて右敵の肩口より左袈裟に斬下す。左足を軸として左に向き乍ら上段となり、左の敵気付て振向く処を右足を踏込みて其の真向に斬下す。血振り納刀。

 夢想神伝流山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道奥伝奥居合立業一本目「行連」:左右の敵に挟まれ連行される場合、右の敵をやり過ごし右片手で抜打ち、左の敵が振り向く処を左より受流しに振り冠り左に向き真向上段に斬下す。

 夢想神伝流檀崎友影先生の居合道―その理合と神髄より奥居合の部立業その2(二本目)「行連」:左右の敵に連行される時、右足を右後方に一歩開き刀を右に抜き、刃を外上側にして左敵を刺突、更に右敵に向かい受け流しに振り冠り真向より斬り下す。

 古伝の「行連」の動作を、「行連」として稽古しているのは、檀崎先生ばかりの様です。同じ夢想神伝流の山蔦先生と、異なるのは何なのでしょう。
 中山博道先生に拠る奥居合の動作を著した書籍は無さそうです。常の稽古でも奥居合は弟子には、自ら稽古している処を見せず、稽古は大森流と英信流の現在で云う立膝迄だったようです。
 私に曽田先生直筆の曽田本を預けられた小林士郎先生とその同僚の方々に拠る「玉誠録 我等が師・太田次吉先生伝」平成23年発行に「太田先生も「中山先生は奥居合はゴク特別の人以外には教えナンダ(なかった)だから神伝流の人は奥居合をヨウセン(やらない)のだよ。」と話している。従って関東では英信流の人以外は奥居合の演武は行なっていなかった様で、太田先生は関東で奥居合の講習会を開かれたそうです。
 教えられた稽古業が全てである筈はあり得ないものです。敵の動きも我の動作も、状況次第で幾重にも変化するものでしょう。柳生新陰流では「砕き」と称して一つの形から如何に「砕き」を生み出せるかとの教え迄あります。ここでは同じ技名「行連」でもここまで変化すると読むべきか、どこかで間違ったのか、それがどうでも、どの教えも稽古するほどの心掛けを持ちたいものです。

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2025年1月31日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書3奥居合8虎走

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
3奥居合
8虎走  以上立膝

小走リニテ前方二進ミ右足ノ出二テ横二抜付ケ左脛ヲツキ双手上段ヨリ打下シ血振納刀未ダ二三寸残リオル内小走上体ヲ前二屈シテ後退シ左足退リタル時抜付左脛ツキ上段ヨリ打下シ血振納刀。

 古伝神傳流秘書抜刀心持之事従是立事也九本目「乕走」:居合膝二坐して居 立って向へ腰をかゞめつか〵と行抜口の外へ見へぬ様二抜付打込納 又右の通り腰をかゞめ後へ引抜付打込

 大江正路先生の剣道手ほどきより奥居合八本目「虎走り」:(中腰となり、走り抜斬又後ざりして抜斬る)座したる處より柄に手を掛け、稍や腰を屈め、小走りにて數歩進み出で、右足の踏み出したる時抜き付け、同體にて座して斬る(血拭ひ刀を納むるや)刀を納め二三寸残りし時屈めたる姿勢にて、數歩退り左足を退きたる時中腰にて上段となり座して斬る。(座抜き終り)。 

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法より英信流奥居合之部九本目「虎走」:(次の間に居る者を斬り退る処へ追掛け来る者を斬る)正面へ向ひ居合膝に座し左手を鯉口に右手を柄に執り抱へ込む様にして立上り上体を俯け前方へ小走に馳せ往き腰を伸すなり右足踏込んで(対手の右側面へ)抜付け左膝を右足横へ跪きつつ諸手上段に引冠り更に右足踏込んで斬込み刀を開き納めたるまま立上り 又刀を抱へ込む様に俯き小走りに退り腰を伸すと同時に左足を一歩後へ退き追掛け来る者へ(右側面へ)大きく抜付け 又左膝を右足横へ跪きつつ諸手上段に引冠り右足踏込んで斬込み刀を開き納め終る。

 夢想神伝流山蔦重吉先生夢想神伝流居合道奥伝奥居合坐業八本目「虎走り」:敵を追い懸け敵の上膊に抜付、斬下し、納刀、小走りに後退し抜付、打ち込み開き納める。

 夢想神伝流檀崎友影先生居合道ーその理合と神髄奥居合之部居業八本目「虎走」:敵を小走りに追い懸け、右足を踏み込むや抜付け左から振り冠り真向に斬る、血振り納刀、小走りに戻り抜付け、振り冠り斬下す。

 古伝は抜刀心持の立業の九本目に「乕走」として手附がありますが、細川先生の場合は奥居合は居業立業と表示せず一本目「向拂」から十八本目「抜打」まで通しナンバーとなっています。他の先生方は奥居合の居業の八本目に「虎走」は存在します。

 


 

 

 

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2025年1月30日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書3奥居合7両詰

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
3奥居合
7両詰

両足ヲ少シ出シ刀ヲ前二抜キ双手ニテ柄ヲ腹二取リ右足踏出スト同時二双手突キ二突其ノ姿勢ニテ上段ヨリ打下ス血振納刀

 古伝神傳流秘書抜刀心持之事四本目「両詰」:抜て片手尓て左脇を突き直二振向いて右脇を切る。
 古伝神傳流秘書抜刀心持之事三本目「向詰」:抜て諸手を懸け向を突打込也

 大江正路先生の剣道手ほどき奥居合七本目「両詰」:(抜放け諸手にて眞向を突き斬る)座したる處より右足を少し出して、刀を抜き、柄元を臍下に當て、右脚を踏み出して、前方を諸手にて突き、其姿勢のまゝ、上段にて前面を眞向に斬る

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部三本目「向詰」:(対座して居る者を斬る)正面に向ひ居合膝に座し例により鯉口を切り右手を柄に掛け両膝を立つなり右足を少し右前ヘ踏出し其方向へ刀を引抜き右足を引き戻すと共に刀尖を向ふへ柄頭を腹部へ引付け諸手となり(刀を水平に構へ)体を少し前ヘ進め対手の胸部を突き更に左足を進ませつつ諸手上段に引冠り右足を踏込んで斬込み刀を開き納め終る。

 夢想神伝流の山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道より奥伝奥居合七本目「両詰」:前方に敵、両側に障害物があり刀を前に抜き、刀先を前に向け柄頭を臍下に着け右足踏み出しもろ手突き・・・。

 夢想神伝流の檀崎友影先生の居合道ーその理合と神髄より奥居合の部三本目「向詰」:両側に障害あり、刀ヲ前方に抜き右足踏込んで前方の敵を突き・・・。

 古伝は「向詰」と業名で「向詰」は正面に我に害意をもに敵が詰めて居る事を示唆しています。「両詰」は我が左右に我に害意を持った敵が詰めている事を示唆しています。どの様な訳で何時「両詰」と「向詰」が入れ替わったのか、証明する者は有りませんが。古伝をベースにすれば、此の業名を「両詰」とするのは誤りです。江戸末期から明治30年ほどの間、土佐の居合は途切れています。大江先生も明治維新の際15歳ほどですから、下村茂市先生からの指導も充分あったかどうか疑問です。当然の事夢想神流の創始者と言われる中山博道先生も奥居合は身に付けられたかは疑問です。夢想神伝流の山蔦先生、檀崎先生は太平洋戦争後に修行されたと思われ、それぞれの思いで習い覚えたのであろうと推察します。業名は別として、武術的な不信は抱く事が出来ません。

 

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2025年1月29日 (水)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書3奥居合6棚下

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
3奥居合
6棚下

右足ヲ前二出シ上体ヲ前二屈シテ前方二刀ヲ抜キ左脛ヲ進メテ上段二ナリ上体ヲ起スト共二右足ヲ出シテ打下ス血振納刀。

 古伝神傳流秘書抜刀心持之事七本目「棚下」:大森流逆刀の如く立て上へ抜打込む時躰をうつむき打込是ハ二階下様の上へ打込ぬ心持也。

 大江正路先生の剣道手ほどきより奥居合六本目「棚下」:(頭を下げて斬る)座したる處より、頭を前方へ下げ、稍や腰を屈め右足を少し出しつゝ、刀を抜き上體を上に起すと同時に上段となり、右足を踏み込みて眞直に切り下す

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法八本目「棚下」:(上へ閊へる所にて前の者を斬る)正面に向ひ居合膝に座し例により鯉口を切り右手を柄に掛け体を前ヘ俯け腰を少し浮かせ左足を後へ退き伸し其膝頭をつかへ刀を背負ふ様に左後頭上へ引抜き諸手を掛け前者へ斬込み其まま刀を右へ開き納めつつ体を引起し右脛を引付けるなり左踵上へ臀部を下し納める。

 夢想神伝流の山蔦重吉先生による夢想神伝流居合道奥伝奥居合六本目「棚下」:縁の下や低い天井下に我は座し、敵はそこを出た所に居る。想定で抜刀方法は大江先生と同様ですが、右足を大きく前へ出しながら抜刀、左膝を引き寄せながら刀を背負い、体を起しつつ右足を踏出し前面の敵を斬下す。

 夢想神伝流の檀崎友影先生の居合道ーその理合と神髄より奥居合の部七本目「棚下」:棚下などの頭の閊える低い場所から這い出て前の敵を斬る想定で山蔦先生と同様。

 古伝は、刀を頭上に、刀を背後に背負う様に或いは頭上に水平に、抜き、体を俯き切り下ろす。これは頭上が低い所での運剣を稽古する事でしょう。場合によっては敵は頭上高き所にいるならばそこへ踏み出して切り込むことも想定されます。然し、大江居合や夢想神伝流の「棚下」では、敵は我が這い出るのを待って切り込んで来そうです。此の場合は突きが何とか良さそうです。細川居合では敵と我は同じ高さの低い柳下などでの攻防と思われ、その動作は古伝神伝流秘書の教えと思えます。

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2025年1月28日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書3奥居合5戸脇

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
3奥居合
5戸脇

右足ヲ右斜二踏出シ抜刀刀背ヲ胸二アテ左方ヲ顧ミテ突キ足元其ノマヽ右横二上体を振向ケ上段ヨリ打下ス血振以下同断。

 古伝神傳流秘書抜刀心持之事四本目「両詰」:抜て片手尓て左脇を突き直二振向いて右脇を切る

 大江正路先生の剣道手ほどき奥居合五本目「戸脇」:(左を突き右を切る)右足を右斜へ踏み出し、刀を抜き、左横を顧みながら突き、足踏みは其まゝにて上体を右横に振り向け、上段にて切り下す

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部四本目「前後詰」:(前後に座して居る者を斬る)正面に向ひ居合膝に座し例により鯉口を切り右手を柄に掛けるなり腰を伸しつつ右足を前へ踏出し(前へ掛かると見せ)刀ヲ其方向へ引抜き咄嗟に(左廻りに)後ヘ向くなり後者の胸部へ(右片手にて)突込み直ぐ(右廻りに)正面へ廻りつつ諸手上段に引冠り前者へ斬込み刀を開き納め終る。

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵歩英信流奥居合之部五本目「両詰」:(左右に座して居る者を斬)正面に向ひ居合膝に座し例により鯉口を切り右手を柄に掛けるなり腰を伸し(右へ掛かると見せて)右足を少し右へ踏出し其方向へ刀を引抜き咄嗟に左へ振向き(右片手にて)左側の者の胸部を突き直ぐ右へ振返りつつ諸手上段に引冠り右側の者へ斬込み刀を開きき納め終る。

 山蔦重吉先生の  夢想神伝流居合道奥居合坐業五本目「戸脇(戸詰)」:我が前に敷居有りて戸及び襖あり、右の戸の陰に敵一名、我が左側面或いは左後方に敵一名あり。右足を右斜め前に踏み出し刀を抜き、体を左に振り向くや左方の敵の左肩を刺突し、右足は其の儘返す刀で右に振り向き右の敵を上段より斬る

 古伝神傳流秘書は業名「両詰」ですが大江先生は之を「戸脇」とされています。「戸」と付けたのでそれらしき想定を動作に盛り込まれています。細川先生伝授は「両詰」で古伝と同じです。業の基本は古伝でしっかり身に付け、新陰流で云う「砕き」は変化業の事ですが、仮想敵の位置や、周囲の状況変化による、異なる想定に対しての稽古は、一人稽古で身に付けるものかも知れません。稽古業すら他人に見せない、弟子にも他所で演じさせない先生も居られますが、武術は更に奥深いものです。



 

 


 

 

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2025年1月27日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書3奥居合4戸詰

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
3奥居合
4戸詰

右足ヲ右斜二出スト共二右方片手打下し其ノ足ヲ左斜二踏替へ双手上段左斜二打下シ血振以下右同断。

 古伝神伝流秘書抜刀心持之事には、右前左前に座す敵への手附は存在しません。

 大江正路先生の剣道手ほどき奥居合四本目「戸詰」:(右を斬り左を斬る)抜き付け、右の敵を右手にて切ると同時に右足を右斜に出す、其の右足を左斜横に踏み變へて上段にて左斜を眞直に斬る

   細川義昌先生伝授無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合には、右前左前に座す敵への手附は存在しません。

 山蔦重吉先生著夢想神伝流居合道奥居合坐業四本目「戸詰(三角)」:前面左右の戸の陰に敵、敷居越しに右の敵を右足を踏出し抜打ち、受流しに振りかむり左足に踏み変え左の敵を斬る。

 檀崎友影先生居合道その理合と神髄奥居合の部四本目「両詰」の1「戸脇」:立膝に坐す我が前面の敷居の向う側に右と左に敵、まず右足を引いて抜刀し左敵左肩下を刺突し、右敵に振り向き右足踏み込んで上段にて斬る。血振り納刀。
 四本目「両詰」の2「戸詰」:立膝に坐す我が前面の敷居の向う側に右と左に敵。敷居越しに右足を右斜めに踏み込んで右敵を真向抜打し、左に振り向き受け流しに振り冠り左足を踏み出し左側敵に斬り下す。血振り納刀。

 山本俊夫先生の「戸詰」は大江先生の「戸詰」でしょう。古伝には「戸詰」の業名も形もありません。細川先生の手附にも大江先生の業は存在しないので、独創か、谷村派谷村亀之丞自雄系の第16代五藤孫兵衛正亮の教えでしょう。
 夢想神伝流の山蔦先生、檀崎先生共に想定は大江先生に似ていますが、動作に違いもあり、中山博道先生の居合も奥居合に就いて残された文献が無いので私には判断できません。

 

 

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2025年1月26日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書3奥居合3四方切

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
3奥居合
3四方切

右足ヲ右斜二出シ刀ヲ右斜二抜キ刀背ヲ胸二アテ刃ヲ右横二シテ左後ヲ突キ 受返シテ右斜方ヲ上段ヨリ打下シ 又受返シテ右足ヲ左斜二踏替ヘ同方向二打下シ 又右足ヲ正面二踏替へ受返シ二正面二打下し 血振以下右同断。

  古伝神伝流秘書抜刀心持之事六本目「四角」:抜左の後の角を突き 右の後の角を切 右の向を請流し 左の向を切 右の向を切る也。

  大江正路先生の剣道手ほどきより奥居合三本目「四方切」:右足を右斜へ出し、刀を右斜に抜き、刀峯を胸の處に當て、刀を平として斜に左後を突き右側面の横に右足を踏み變へ、上段にて切り、右足を左斜横に踏み變へ て(受け返して打つ)上段となりて切り、右足を正面に踏み變へて、上段より切る

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部七本目「四角」:(四隅に居る者を斬る)正面に向ひ居合膝に座し例により鯉口を切り右手を柄に掛け腰を伸し右脛を立てつつ(右前へ掛かると見せ)刀を其方向へ引き抜き咄嗟に左膝頭で(左廻りに)後斜へ廻り向き左後隅の者を(右片手にて)突き直ぐ右へくるりと廻りつつ諸手上段に引冠り右後隅の者へ斬込み直ぐ左へ廻りつつ刀ヲ頭上へ振冠り(右前隅の者より斬り込み来る太刀を受け流しながら)左前隅の者へ斬込み直ぐ再び右へ振向きつつ諸手上段に引冠り右前隅の者へ斬込み刀を開き納め終る。

 中山博道先生伝授による山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道(昭和47年1972年発行)を、居合道の研究のため拝借します。奥伝奥居合三本目「四方切(四角)」:前後左右に四人。まずうしろの敵の左胸を刺し、左側より刀を振りかむり、右の敵を斬り、左にまわり左の敵を斬る。さらに九〇度右にまわって、正面の敵を真向から斬下。

  檀崎友影先生の居合道ーその理合と神髄(平成15年2003年)奥居合居業六本目「四角(四方斬)」:前後左右に敵を受け、正面向い刀を抜き、後の敵を刺突し、刃を水平にして廻りながら左・正面・右の敵に斬付け、振り冠って右敵斬り、振り向きつつ振り冠って左の敵を斬り、正面に向き直りつつ振り冠って正面の敵を斬る。

 これ等の手附でまず、四方切の奥居合居業での順番が、三本目・六本目・七本目と古伝の六本目と異なる事。
 次に敵の座す位置が「前・後・左・右」と「右前・左前・左後・右後、いわゆる十文字の頂点とバッテンの頂点」とあり、大江正路先生は左後・右前・左前・正面」と変形です。古伝は「左後・右後・左前・右前」と斬り付けています。山本俊夫先生は大江先生の手附を読まれていたのでしょう。敵は師匠に習った座し方で攻めかかるのが絶対などあり得ない。どの様な座し方でも自由に運剣できなければならないし、敵との間合いも切込みの順番も夫々でしょう。自由自在に応じられる様に稽古する心構えが欲しいものです。習い覚えた足踏みや形に捉われ「順序が違う!」と飛んでくる訳知り顔の師匠や兄弟子など居る者です。

 

 

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2025年1月25日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書3奥居合2脛囲

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
3奥居合
2脛囲

正面向左足ヲ退キ立ツト共二刀先二二、三寸残ル迄一気二抜キ右脛前二刃ヲ上二抜放チ膝ヲ斜二囲ヒ左脛ヲツキ双手上段打下シ血振納刀以下右同断

 古伝神傳流秘書抜刀心持之事二本目「柄留」:乕之一足の如く下を留めて打込。(英信流居合之事二本目「乕一足:左足を引き刀を逆に抜き留め扨打込ミ後前に同シ。)

 曽田虎彦先生の師匠行宗貞義先生の型長谷川流奥居合抜方二本目「脛囲」:長谷川流二番に同じ(乕一足:左足ヲ引キ右脛ヲ囲イテ切ル)

 大江正路先生の剣道手ほどき奥居合二本目「脛圍」:(長谷川流二番目と同一)膝と刀を竪立斜めとして、刃を上に平に向けて、膝を圍ひ(體は中腰半身とす)體を正面に向けて、上段より斬り下す。
(長谷川流居合二本目「虎一足:正面に座す、静かに立ちながら左足を引きて刀を抜付くと同時に膝を圍ふ、此圍は體を左向き中腰となり、横構にて受止める事、此體形にて刀を上段に冠り正面に向き座しながら斬り下すなり。血拭ひ刀納めは一番とおなじ(膝を受け頭上を斬る)。)

 細川義昌先生伝授の無雙神傳抜刀術兵法英信流奥居合之部二本目「柄留」:正面に向ひ居合膝に座し例により鯉口を切り右手を柄に掛け立上るなり左足を一歩後ヘ退く同時に刀を引抜き鯉口放れ際に左腰を左へ捻り体は正面より左向きとなる(視線は右正面の対手に注ぐ)対手が正に抜掛らんとする刹那、其右手へ逆に強く薙付け体を右へ捻り戻す同時に左膝を跪きつつ諸手上段に引冠り右足踏込んで斬込み刀を開き納め終る。

 中山博道先生弟子で山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道奥居合二本目「脛圍(柄留)」は、敵の斬り込む刀を叩き落し斬り込む動作をされています、が、昭和47年1972年発行の夢想神伝流居合道には、心構えとして「古伝にいう柄留とは、敵が抜刀せんとするその拳に抜付けて、その動作を封じてしまうという意味のものである。」と書かれています。

 抜刀心持之事の「柄留」での、相手の斬り込む部位が立膝に坐して居る我が右足に斬り込んで来る想定があり得るでしょうか、むしろ我が先に相手に斬り込まんとし、刀に手を掛け立ち上がらんとするに際し、敵が先んじて我が右脛に切り込むのを受け拂うのは、いやいやですが理解します。
 古伝は業の名称が「柄留」です。業名から判断するならば、相手の斬り込まんとする柄手に先んじて、刃を下にして抜き上げて「柄留」する、それが「乕一足」の言う「刀を逆に抜き受け留め」に相当する動作でしょう。抜刀心持之事の極意業を秘すために、相手の斬り込みを受け拂い、上段から斬る動作を、初心者には指導されたのだろうと思います。

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2025年1月24日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書3奥居合1霞

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
3奥居合
1霞

正面向右足ヲ出スト共二横二抜付ケ掌部ヲ上二返シテ左方水平二切返シ直チニ双手上段ヨリ打下シ血振一気二納刀鍔元ノ残部ハ右足ヲ引キツヽ徐々二納刀

 古伝神傳流秘書抜刀心持之事一本目「向拂」:(格を放れて早く抜く也 重信流)向へ抜付返須刀二手を返し又拂ひ打込ミ勝。

 大江正路先生の剣道手ほどき奥居合一本目「霞」:(俗に撫斬と云う)正面に座して抜き付け、手を上に返して、左側面水平に刀を打ち返す、直に上段となりて前面を斬る。血拭ひはよく、刀は早く納める事。其刀身を鞘へ六分程早く入れ残りは静に體の直ると共に納うるものとす、以下納めは之れと同じ。

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流奥居合之部一本目「向拂」:(正面に座して居る者を斬る)正面に向ひ居合膝に座し例により鯉口を切り右手を柄に掛け刀を抜きつつ両膝を立て腰伸びきるなり右足踏込んで(対手の右側面へ)抜付けたるも剣先が届かぬため、右足より迅速に体を進めつつ抜付けた刀が止らぬ中に直ぐ振返し返す刀で(対手の左側面へ)斬付け左膝を進めつつ諸手上段に引冠り更に右足踏込んで斬込み刀を開き納め終る。

 中山博道先生の居合読本(昭和9年1934年発行)には長谷川英信流居合として現代居合の立膝による奥居合は既述がありません。
   夢想神伝流の山蔦重吉先生、檀崎友影先生共に正面の敵を斬り、その後ろの敵をも切り倒す想定で「向払(霞)」を稽古しています。

 河野百錬先生による無雙直傳英信流居合道(昭和13年1938年発行)奥居合之部居業之部一本目「霞」:(意義)吾が正面に對坐する敵の機先を制し、其首に斬り付けたるに不十分なりし故、直ちに總體を進ませ乍ら斬りかへし、更に上段より斬り下して勝つの意なり。(動作)正面に向ひ立膝に坐し、氣充つれば、鯉口を切り、刀を抜きかけ腰を延び切るや、右足を踏み出して一文字に抜きつけ、右手の止まらぬ間に總體を進ませ乍ら(腰を屈めず、腹を前に出し、左膝を右足の所迄進める)甲手を返えして左に斬り拂ひ、左膝を進ませると同時に雙手上段に振り冠り、右足を出すと同時に斬り下し、刀を右に開きて血振し納刀する事、すべて立膝と同要領を以て行ふ。(注意)イ、奥居合は當流の技の至極するところにして、諸動作の神速を尊ぶを以て、抜刀より納刀迄其の心持を失わずして練磨し、練熟以て精妙の域に達すべし。ロ、奥居合の納刀は鍔元五寸位迄は極めて早く納め、それより静かに納刀す。

 抜き付けたが、斬り込みが浅い、或いは相手に躱された、などは奥居合を技の至極とするならば、機先を制して抜き付けた意味が無いようです。それにも関わらず、切り返しで甲手を返すだけならともかく、切先を上に向けて、右肩上に構え直す様にして切り返すなどの、躱す能力を持つ敵ならば飛び込んで来て右手を制し固められてしまいそうです。
 第二の敵の想定は、正面の敵の首は切れても、その後の敵は抜刀して斬り込んで来るならば、首と云う訳にはどうでしょう。
 「向拂」は稽古の形としては、想定が不自然ですが面白い形です。敵になって、応じるのも良さそうです。

 

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2025年1月23日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書2立膝之部10真向

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
2立膝之部
10真向

正面正座前二抜刀両脛立上段二打下シ血振納刀ト共二腰ヲ踵二下ス大森流抜打ト同要領 以下立膝之部終リ

 古伝神傳流秘書英信流居合之事十本目「抜打」:大森流の抜打二同し事也(大森流居合之事11本目「抜打」:坐して居る所を向より切て懸るを其のまゝ踏ん伸んで請流し打込ミ開いて納る 尤も請流二非春 此所筆二及ばす。)

 大江正路先生の剣道手ほどき十本目「眞向」:正面に向って座し、腰を伸し趾先を立て、刀を上に抜き上段となり、同體にて切る此時両膝を左右に少しく開く。血拭ひは其姿勢のまゝ刀を納め、伸したる腰は徐ろに正座に直り、刀の納まると同時に臀部を両足踵の上に乗せ。静に正座となる。刀を腰より抜き取り、體前に置き禮をなし、左手に持ち適宜の所にて神殿に禮をなし退場す。

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流表之部十本目「抜打」:(対座して居る者を斬る)正面に向ひ正座し例により鯉口を切り右手を柄に掛けるなり急に両膝を伸しつつ刀を右斜前へ引抜き(膝が立つと同時に両足爪立て)刀尖を左後ヘ突込み諸手上段に引冠りて斬込み刀を開き納め終る(抜打はすべて早業の事)

 中山博道先生校閲太田龍峰先生著居合読本長谷川英信流居合十本目「抜打」:(意義)大森流に全く同じ。(動作)大森流に全く同じ。
(中山博道先生大森流居合十一本目「抜打」:(意義)彼我互に接近して對坐せる時不意に正面に向ひ斬り付ける動作である (動作)正面に向ひ正座す。彼我極めて接近しある場合を考慮せるものなるを以って抜刀に際しては成るべく右拳を前方に向けて動かしつゝ、概ね前額の前方に至らしめ、刀尖を左上膊の外側に近く移動せしめつゝ刀を頭上に振り被る(此際両膝を密接す)次で、直ちに両膝を開き刀尖が概ね地より二握り位の處に来る位に切り下ろす。次で左手を放ち右拳を右に開き血振りをなすこと陰陽進退に於ける第一段の血振りと同様に動作し、後、刀を納む。)

 英信流居合の十本目は、大江先生の業名「眞方」が上に刀を抜いていますが、他の先生方も古伝も、大森流の「抜打」と同じとされています。
 大江先生は何処からどの様な訳で、業を変えてしまったのか何処にもその由来は見えませんが、現代の無双直伝英信流居合兵法を学ぶほとんどの所が「眞方」で刀を上に抜き揚げています。これは是也に完成された(動作)ですから敵の斬り込んでくる場合などには有効です。

  

 

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2025年1月22日 (水)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書2立膝之部9瀧落

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
2立膝之部
9瀧落

後向左足ヲ退キ左後ヲ見乍柄部ヲ押下ケ体ヲ右向二左足ヲ踏出シテ捻リ右足ヲ出シテ刀ヲ抜キ腹二当テ後二向直リ足踏ミシテ
刃ヲ平二カへシ右片手突左足出シ上段右足出シ左脛ツクト共二打下シ血振納刀ト共二右足ヲ引込ム。

 古伝神傳流秘書英信流居合之事九本目「瀧落」:刀の鞘と共二左の足を一拍子尓出し抜て後を突きすぐ二右の足を踏込三打込ミ開納る 此事ハ後よりこじりをおっ取りたる処也 故二抜時こじりを以て當心持有り。

 大江正路先生の剣道手ほどき長谷川流居合九本目「瀧落」:後を向き、徐ろに立ちて左足を後へ、一歩引き鞘を握りたる左手を其儘膝下真直に下げ、鐺を上げ後方を顧み、右手膝上に置き同體にて左足を出し右手を柄に掛け胸に當て右足を前に進むと同時に抜き刀峯を胸部に當て、同體の儘左へ轉旋して、體を後向け左足を前となし、其體の儘胸に當てたる刀を右手を伸ばし刀刃を右横に平として突き左足を出しつゝ上段に取り、左膝を着き座しつゝ頭上を斬る、血拭ひ刀を納む。

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流表之部九本目「瀧落」:(後に座して居る者を斬る)正面より(左廻りに)後向き居合膝に座し左手で鯉口を握り立上り後者が右膝を立て鐺を握り引止る) 右足を踏出し柄を左へ突出し左後ヘ振向き対手を見つつ 急に左足を前へ踏越す同時に柄ヲ右肩の前へ引き上げ右手を掛け更に右足を前ヘ踏み出すなり 刀を引抜き鞘は後ヘ突込み鐺で対手を突き 刀の棟を胸部へ引付け(左より)後ヘ向くなり左足右足と踏み込み対手の胸部へ突込み更に右足踏込みつつ諸手上段に冠り大きく斬込み 刀を開き納めつつ蹲踞し左足踵上へ臀部を下すなり右脛を引付け納め終る。

 中山博道先生校閲太田龍峰著居合読本長谷川英信流居合九本目「瀧落」:(意義)敵が我が鐺を握ろうとするのを、之れを避けて立ち上ったが、尚ほ追ひ迫るを以て再び之れを避け、遂に抜刀して握り向きつゝ敵を突き刺し、尚ほ追撃する業である。(動作)正面に對し後ろ向きに箕坐す。左手を以て刀柄を左方に開きつゝ立ち上り左足を一歩前に踏み出すと同時に左拳が概ね右肩の附近に来る位まで刀を鞘の儘、抜き出し體を僅かに反らす、此際左踵は地に着かぬものとす。次に、右手を以て刀柄を握り右足を左足の稍々前側方に踏み着けると同時に左手にて、鞘を下方に押し下げつゝ體に近く抜刀し、刀尖が概ね左乳の上附近に来る如くす。此際後方から見た刀及び鞘の形は、概ね▢鞘の如くなるものとす。右足を軸として、後ろ向きをなしつゝ左足を少しく前方に踏み出すと同時に刀刃を上にし、右片手にて敵を突き刺し、直ちに、刀を頭上に振り被り右足を左足の前方に踏み着けて、敵を斬り側方に血振をなしつゝ左膝を地につく以下横雲に同じ。

 明治の先生方の動作は、多少の違いがあっても同じと見てよさそうです。但し後方の敵を刺突する際、刀の刃を右外に向けて突くのが、動作としては理に適っていると思いますが、博道先生は「刀刃を上にし」敵を突いています。此の辺りの動作は夢想神伝流の十八番でしょう。

 

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無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書2立膝之部8浪返

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
2立膝之部
8浪返

後向立チツヽ左廻リニ抜刀シ乍正面二向直シ時左足ヲ充分退キテ正面横二抜付ケ左脛ヲツキ双手上段ヨリ打下シ血振納刀シツヽ右足ヲ引込ム。

 古伝神傳流秘書英信流居合之事八本目「波返」:鱗返二同し後へ抜付打込ミ開き納る 後ヘ廻ると脇へ廻ると計相違也。

 大江正路先生の剣道てほどき長谷川流居合八本目「浪返」:後ヘ向き左より正面へ両足先にて廻り、中腰となる、左足を引き、水平に抜付け上段に取り、坐しながら前面を斬るなり。血拭ひ刀納めは前と同じ。

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流表之部八本目「浪返」:(後に立って居る者を斬る)正面より(左へ廻り)後向き居合膝に座し例により左手にて鯉口を切り右手を柄に掛け抜きつつ腰を伸し左へくるりと廻り 正面へ向くなり立上り左足を一歩後ヘ退くと同時に(対手の右側面へ)抜付け(対手倒れる)左足を右足横へ跪きつつ刀尖を左後へ突き込み諸手上段に引冠り右足踏込んで斬込み刀を開き納め終る。

 中山博道先生校閲太田龍峰先生著居合読本長谷川英信流居合八本目「浪返」:(意義)敵が我が後方から斬り来るに對し後ろに振り向きつゝ初発刀の如く斬る業である。(動作)正面に對し後ろ向きに箕坐ス。鱗返しの要領にて約百ハ十度左に旋回するの外全く鱗返しに同じである。

 古伝は後方の敵の状況は特定して居ません。細川先生は「後に立って居る者を斬る」。中山博道先生は「敵が我が後方から斬り来る」。と言う想定です。後ろから切りかかって来る敵を感知する能力を持ち合わせないのでは此の業は成り立たないかも知れません。感知出来ても斬り込まれる状況に応じる体裁きを仮想敵相手に磨き上げるのも、その意識も無い稽古では身につく事も難しそうです。

 

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2025年1月21日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書2立膝之部7鱗返

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
2立膝之部
7鱗返

右向立チツヽ左廻リニ廻リ乍ラ刀ヲ抜キ正面二向直ルト同時二左足ヲ退キ正面一文字二抜付左脛ヲツキテ双手上段ヨリ打下シ血振納刀シツヽ右足ヲ引キ込ム

 古伝神傳流秘書英信流居合之事七本目「鱗返」:左脇へ廻り抜付打込ミ開き納る。

 大江正路先生剣道手ほどきより長谷川流居合七本目「鱗返し」:右に向き、左より廻りて正面に向ひ、中腰にて左足を引きて抜付け、此抜付けは水平とする事、上段に取り、座しながら斬り落すなり。血拭ひ刀納めは前と同じ。中腰は両膝を浮めて抜付けるなり。(敵の甲手を斬る

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流表之部七本目「鱗返」:(左側に座して居る者を斬る)正面より右向き居合膝に座し例により鯉口を切り右手を柄に掛け腰を伸しつつ左へ廻り正面を向くなり立上り左足を大きく後ヘ退き腰を低く下げ(対手の右側面へ)抜付け左足を右足横へ跪きつつ刀尖を左後ヘ突込み右上段に引冠り更に右足を踏み込んで斬込み刀を開き納め終る。

 中山博道先生校閲太田龍峰先生著居合読本長谷川英信流居合七本目「鱗返」:(意義)大森流の左刀に同じ。(動作)正面に對し右向に箕坐す。上体を少しく前に傾け右膝の外側より右手を以て、刀柄を握り右足蹠骨部(しょこつ、足裏の骨)軸として約九十度左向きをすると同時に左足を後方に約二足長半乃至三足長踏み開き、初発刀の如く抜刀す。此際左膝は着かざるものとす、以下横雲に同じである。
参考。(大森流二本目「左刀」:意義 左側面に對坐せる敵に對し初発刀と同意義にて行ふ業である。
参考。大森流居合二本目「初発刀」:意義 互いに四尺位離れて對坐せる時、急に敵の眼の附近を横薙に切り付け、相抜きの場合は敵の抜付けし拳に切り込む、倒るゝ所を直ちに上段より斬る業である。
参考。横雲と同じ:・・直ちに頭上に振りかぶり、敵を斬り下ろし、横血ぶり納刀。

 古伝は正面向きの儘稽古するとも右向きに坐して稽古するとも言っていないのですが、明治以降の稽古は右向きで正面を斬る。左の敵を斬る事が目的でしょう。
 斬る部位は、相手の左側面とあいまいですが、大江先生は、敵の甲手を斬ると指定されています。
 演武会や昇段審査のための稽古から、武術としての稽古を思うと、一人稽古であらゆる部位を想定して稽古すべきでしょう。その際抜方も、高さを変える稽古をすべきでしょう。横一線の抜き付けに加え切り上げなども、課題です。

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2025年1月20日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書2立膝之部6岩浪

無雙直傳長谷川流居合術極秘  

18居合術備忘書
2立膝之部
6岩浪

右向ニテ左足ヲ退キ立チ乍刀ヲ前二抜キ左手ハ刀先ヲ下向二取直シ体ヲ左向二変シ左足ヲ退クト共二前二屈シテ刀先ヲ右膝外二隠シ右足ヲトントフミ拍子ニテ左手刀ヲシゴキ片手二突キ左脛ヲツク右足退キ刀ハ引倒シテハネ上ゲ左脛退キテツキ右足出シテ上段ヨリ打下シ血振納刀シツヽ右足ヲ引込ム。

 古伝神傳流秘書英信流居合之事六本目「岩浪」:左へ振り向き左の足を引刀を抜左の手切先へ添へ右の膝の外より突膝の内に引後山下風の業に同じ。(後:切先を後へはね扨上へ冠り打込み開き足を引て先に坐したる通りにして納る)

  大江正路先生剣道手ほどきより長谷川流居合六本目「岩浪」:右に向き、左足を後へ引き、刀を體前に抜き直に左手にて刀尖を押へ、右膝頭の處へ着け、左足を右足に寄せ、體を正面に直し、左手と右手とを水平とし、其右足を其儘一度踏み全体を上に伸し、直に體を落し、左膝をつき右手を差伸し、左手は刀尖を押へたる儘、伸ばして刀を斜形として敵の胸を突き、右足を右へ充分引き變へ體を右向きとし、両手にて刀を横に引き、敵を引き倒し、其姿勢にて刀を振り右肩上にかざし、上段に取ると、同時に左足を後へ引き、右足を前にて踏み變へ正面に向ひて上段より斬る。(左の敵の胸を突く)

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流表之部六本目「岩浪」:(左側に座して居る者を斬る)正面より右向き居合膝に座し例により鯉口を切り右手を柄に掛け腰を浮かしつつ前へ俯き左足を後へ退き刀を前へ引抜き刀尖放れ際に左膝頭をつかへ 刀尖の棟へ左手の拇指を示指で挟む様に添へ右膝を左足に引き寄せつつ正面へ向く同時に(刃部を下へ向け刀尖を前柄は後水平に)刀を右膝横へ引付右足を少し踏出すと共に対手の左横腹ヘ突込み刀の腰へ左手の四指を添へ切先下へ柄頭を後上へ引上げつつ右足を右後ヘ退き(体は再び正面より右向きとなりつつ)対手を押倒し左膝を跪き右足を向ふへ踏出すと同時に刀尖を上より後ヘ返し双手を向ふへ突出し横一文字に構へ(視線は左正面の対手に注ぐ)左膝を右足に引寄せ正面へ向きつつ右上段に振冠り右足踏込んで斬込み刀を開き納め終る。

 中山博道先生校閲太田龍峰先生著居合読本長谷川英信流居合六本目「岩浪」:(意義)我が左前に接近して坐せる敵の季動部を刺突し直ちに敵を引き倒して後、斬る業である。(動作)正面に對し右向に箕坐す。上體を前に傾けると同時に左足を斜後方に引きつゝ抜刀し直ちに左手を刀尖に近き刀背に添へ、成るべく低く左向きをなしつゝ右足を左膝頭附近に踏みつけ敵の季動部を突き刺す。この時、刀は左手が刀身の中央に至る位突き出す、次に右手を以て刀を左手が刀尖附近に来る位迄引き、左膝を軸として約九十度右向をなし、右足を左膝附近に引きつゝ両手を以て、刀を引き、敵をひき倒す。この際右臂は充分伸ばすものとす。以下山下風に同じ。(以下山下風:其位置に於て右拳を以て刀を反転し右足を出しつゝ左手を添へ、右足尖を軸として、左足を約九十度右に旋廻し、概ね正面に向く間に全く刀を頭上に振り被り直に斬り下す。・・)

 刀を抜き左を向くやトンと足踏みして敵を突く動作は現代居合にも使われている動作ですが、明治の文献には顕著に見られません。演武では細部の違いが目に付くかも知れませんがほぼ同じ目的の動作でしょう。

 

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2025年1月19日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書2立膝之部5山颪

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
2立膝之部
5山颪

左向右手ヲ柄二カケ右足ヲ右斜二出スト共二柄当ヲナシ左足元ヲ引付ケ脛ヲツクト共二正面へ斜メニ抜付ケ左足ヲ左方二延ばシ正面二向直リ左手ニテ刀背ヲ押へ右足ヲ退キテ引切リ左手ハ刀ヲ右上二ハネ上ゲ左脛ヲ?)退キテツキ上段二トリ右足ヲ出して打下シ血振納刀シツヽ右足ヲ引込ム。

  古伝神傳流秘書英信流居合之事五本目「山下風」:右へ振り向き右の足と左の手を柄と一所尓て打倒し抜付後同前但足は右足也 浮雲と足は相違也

  大江正路先生の剣道手ほどき長谷川流居合五本目「颪」:(又山おろしとも云ふ)左向き腰を浮めて右斜めに向き、柄止、直に左へ足を摺り込み、其踵へ臀部を乗せ右斜向體となり、斜刀にて筋變へに打ち其形状にて左手は刀峯を押へ左足を左横に變へ、刀を右へと両手を伸ばして引き、敵體を引き倒すと同時に右足を右斜へ寄せ、直に其刀を右肩上の處にかざし左足を後部に引き右足を出し、正面に向き上段となりて斬るなり。血拭ひ刀納む。(敵の眼を柄にて打つ進んで胸を斬り更に頭上を斬る)

 細川義昌先生伝授の無雙神傳抜刀術兵法英信流表之部五本目「山下風」:(右側に座して居る者を斬る)正面より左向き居合膝に座し例に依り左手を鯉口に執り腰を伸しつゝ右膝を立て体を右へ廻し正面へ向くなり 右足を引付けると同時に柄を右胸上部へ引上げ右手を柄に逆手に掛け右足踏み出すと共に鍔にて対敵の右横顔を打ち直ぐ右足を引寄せる 同時に鯉口を腹部へ引付け刀を右真横へ引抜き(切先放れ際に)左膝を左へ捻り正面より左向きとなり 対手の胸元へ(切先上りに手元下りに)斜に抜付更に体を右へ捻り戻しつつ刀の腰に左手の四指を添へ刀尖を下へ柄頭を後上へ引上げ体を右へ廻しつつ対手の体を押倒すなり(正面より右向きとなり)左足跪き刀尖を(上より)後ヘ振り返へし右足踏出すと共に双手を向ふへ突出し横一文字に構へ(視線は左正面の対手に注ぐ)左膝を右足へ引寄せつつ諸手上段に振冠り右足を正面へ踏出し(胴体へ)斬込み刀を開き納め終る。

 中山博道先生校閲太田龍峰先生著居合読本長谷川英信流居合五本目「山下嵐」:(意義)右側面に坐せる敵が抜刀せんとするを取り敢えず刀柄を以て其の手背を強打しヒルム所を抜刀して斬りつけ、其の殪るゝを再び正面より胴部に向ひ斬り下ろす業である。(動作)正面に對し左向に箕坐す。左膝を軸として約九十度右に向くと同時に刀に「反り」を打たせつゝ左手を以って刀を少しく前上方に出し、右足を約一歩前方に踏み着くると同時に鍔を以って敵の手を打つ、次に左手を以て刀を上方より敵の頭を越えて敵にふれない心持で右に旋回し、左拳を概ね右腰の附近より舊帯刀の位置に復しつゝ、右拳で刀柄を握り左膝左右足尖を軸として左足を右に旋回して、右足の後方に至らせ、腰を左に捻りつゝ抜刀して敵の胸に斬り付く。直ちに左膝及び右足尖を軸として左足を約九十度左に旋回して、左手を刀尖に近き刀背に當て右脚を左膝附近に引き着け刀を右後ろに引きつゝ敵を切り倒す(刀を引く時身體に触れない様に注意するを要す)。其位置に於て右拳を以て刀を反転し右足を約一歩前方に踏み出しつゝ左手を添へ、右足尖を軸として、左足を約九十度右に旋回し、概ね正面に向く間に全く刀を頭上に振り被り直に斬り下す、以下横雲に同じ。

 古伝の教えによるのか、居合は敵の害意に対し先を取っての抜き付けと言う事なのですが、敵の害意が何であるかが統一されていません。
 現代居合では河野百錬先生は大日本居合道図譜立膝之部五本目「颪」:浮雲と同様に我が柄を取らんとするを我れ・・。
 檀崎友影先生は居合道その理合と神髄の長谷川英信流五本目「山下嵐」:右側に座したる敵が刀を抜かんとして刀柄に手を懸けたとき・・。
 状況はそれぞれですから、その状況によって対処法が異なって当たり前です。しかしそれでは第三者からは判別できないでしょうから、流派によっては厳しく統一してしまい、武術から形演武になってしまうのでしょう。

 

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2025年1月18日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書2立膝之部4浮雲

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書2
立膝之部
4浮雲

左右ニテ左足退キ立チツヽ刀ヲ左横尓開キ次二右手ヲ刀二カケルト共二左足ヲ右足二カラメ正面向キ体ヲ左二捻リツヽ斜に正面へ刀ヲ抜付ケ足元ヲ直シ正面向キ左手を刀背にカケ右足ヲ退キテツクト共二引切リ左手ハ刀ヲハネ上ゲ双手上段ニテ左足外二打下シ横血振納刀シッヽ左足ヲ引込ム

 古伝神傳流秘書英信流居合之事四本目「浮雲」:右へ振り向き足を踏みぢ彳腰をひねり抜付左の手を添へて敵を突倒春心尓て右の足上拍子に刀を春ねへ引切先を後へはね扨上へ冠り膝の外へ打込ミ後同前又刀を引て切先を後へはね春して取りて打込む事も有。

 大江正路先生の剣道手ほどきより長谷川流居合四本目「浮雲」:左向き静かに立ち、中腰となりて左足を後へ少し引き、刀を左手にて左横に開き右手を頭上に乗せて力を入れる、其開きたる状態より左足を右足前方へ一文字となし刀刃柄を右手に握り、胸に當て右下へ抜きつゝ體を右へ廻し、刀尖三寸残りし時、刀を一文字の儘體は中腰となり右横より左へひねり正面に向け抜付け折り返して打ち、左手の内にて刀峯を押へ伸ばし右手は弓張とし、右左を右斜へ引き、其膝をつき、敵を引き倒し、直に刀を肩上にかざし、上段にて正面に直り左斜めを斬る、此時膝頭外にて両手を止む、血拭ひ刀を納む。(敵三人並び一人の敵を置き先の敵を斬る時

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流表之部四本目「浮雲」:(右側に座して居る者を斬る)正面より左向き居合膝に座し例により左手を鯉口に執り立上り柄諸共左足を前に踏出し(視線は右正面の対手に注ぐ)体を右へ廻し正面へ向きつつ柄を上げ対手の頭上を越すようにして刀を前腹へ横たへると 同時に左足の裏を上に向け右足の前を越させ足を交叉し膝頭を左右へ割り腰を下げ刀を右真横へ引抜き切先放れ際に体を左へ捻り正面より左向きとなりつつ対手の胸元へ斜に(切先上りに手元下りに)抜付け 体を右へ捻り戻しつゝ刀の腰に左手の四指を添へ体は正面より右向きとなりながら刀尖を下げ柄頭を右後ヘ引上げ対手の体を押倒すなり 右膝を跪き刀尖を上より後ヘ振返し双手を向ふへ突出し横一文字に構え(視線は正面の対手に注ぐ) 右膝を正面へ進ませつつ左上段に振冠り左足を踏出し其脛を少し右へ倒し左脛の外側へ(胴体に)斬込み刀を納め終る。

 中山博道先生校閲・太田龍峰先生著居合読本長谷川英信流居合四本目「浮雲」:(意義)右側面に坐せる敵が我が刀柄を取ろうとするのを避けつゝ立ち上り抜刀と同時に斬り着け敵の倒るゝに乗じ胸部を斬る業である。(動作)正面に對し左向に箕坐す
 敵が我が刀を握ろうとするのを、左手の拇指を鍔にかけ刀柄を左方に開きつゝ何心なき態で立ち上り、左足を右足の前方から廻して右足の外側に小趾の側にて踏みつゝ膝を右に捻り両膝を僅かに屈げ、之を左右に開きて平均を保つ、此の間左手で以って刀を少しく上方に引き出しつゝ(敵の頭上に触れない様にする心持ちで)左手を右膝の附近に致し、後、概ね舊帯刀の位置に復せしめ、此の姿勢に於て右拳を以って刀を抜き、鯉口を離れる時、體が概ね正面に向ふ如く腰を左に捻りつゝ僅かに立ち上る心地にて斬りつける。
 茲に於て左足を全部踏み着けると同時に左手を物打附近の刀背部に當て右足を左足の僅かに右後に踏み開き両手を以て敵を押し倒し、且つ引き切る如き動作をなす。此の際左膝は動作の基礎となるのであって、概ね直角より伸びないのが可い、又、右足踵を挙げ右膝は屈げて體を安定させることが肝要である。右膝を突くと同時に右臂を僅かに伸しつゝ刀を右前上方に上げ左手を以て柄頭を握り刀を頭上に振り被りつゝ右膝を軸として右足を僅かに左足の後方に旋廻し、次に左足を僅かに右に踏み着けると同時に斬り下ろす。血振りをなし刀を納め左足を右足に引き着け蹲踞し、後、徐かに立ち上る。

 古伝は敵に何をされたので敵を斬るのかが不透明ですが、簡潔な手附でしょう。大江先生の敵が我が右側に三人並んでいるなどの事は、古伝からも、細川先生、中山先生の動作からも読み取れません。現代でもそのように解説する先生も居られるが疑問です。

 

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2025年1月17日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書2立膝之部3稲妻

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
2立膝之部
3稲妻箕

左足ヲ退キ中腰二立ツト共二正面斜上二高ク抜付ケ左脛ヲツキ双手上段ヨリ打下シ横血振納刀シツヽ右足ヲ引込ム

 古伝神傳流秘書英信流居合之事三本目「稲妻」:左足を引き敵の切て懸る拳を拂ふて打込ミ後同前

 大江正路先生剣道手ほどき長谷川流早抜き三本目「稲妻:正面向きのまゝ、右足を少し出しながら刀尖の三寸残りし時、左足を後に引き中腰にて高く抜き付け、同體より座して上段より斬る。血拭ひ刀を納む。

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流表之部三本目「稲妻」:正面に向ひ居合膝に座し例により鯉口を切り右手を柄に掛け抜きつつ立上り右足を踏出し(或は立上り左足を退きてもよし対手の右側面へ抜付左膝を右足横へ跪きつつ刀尖を左後へ突込み右諸手上段に引冠り更に右足踏込んで斬込み刀を開き納め終る。

 中山博道先生校閲太田龍峰先生著居合読本長谷川英信流居合三本目「稲妻」:(意義)前方から斬って来る敵の起り頭を乗じ其前臂(ひじ)を斬る業である。(動作)正面に向ひ箕坐す。右足を左足に引きつけ左足を一歩ひきつゝ中腰の儘で抜刀して敵の前臂を切り(大森流の勢中刀を参照:右足を約一歩踏み出すと同時に中腰にて抜刀し刀尖を稍々日左にし刀刃がが僅かに斜右に向ふ如くし敵の前臂を切る)左膝を右足に引きつけつゝ刀を頭上に振り被り右足を前に踏みつけて正面を斬る。以下前に同じ。

 古伝は敵の拳を拂うのですが、細川先生は右側面に抜き付け、博道先生は前臂、山本俊夫先生は何処と部位を示さず大江先生と同じように高く抜き付けています。動く部位への抜付けは難しそうですがやはりここは、左足を退いて抜き付けているので敵の拳、或いは肱でしょう。状況次第では下からの切り上げなども有効でしょう。

 

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2025年1月16日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書2立膝之部2虎一足

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
2立膝之部
2虎一足

静二立チ乍ラ左足ヲ退クト共二刀ヲ右脛前二斜二抜付ケ脛ヲ圍ヒ左脛ツキ上段打下シ横血振納刀ト共二右足引ク

 古伝神伝流秘書英信流居合之事二本目「乕一足」:左足を引き刀を逆に抜て留め扨打込ミ後前に同じ。

 大江正路先生の剣道手ほどき長谷川流居合二本目「虎一足」:正面に座す、静かに立ちながら左足を引きて刀を抜付くと同時に膝を圍ふ、此圍は體を左向き中腰となり、横構にて受止める事、此體形にて刀を上段に冠り正面に向き座しながら斬り下すなり。血拭ひ刀を納めは一番と同じ(膝を受け頭上を斬る)

 細川義昌先生伝授無雙神伝抜刀術兵法英信流表之部二本目「虎一足」:(向脛へ薙付け来る者を斬る)正面へ向ひ居合膝に座し例によりて鯉口を切り右手を柄に掛けるなり立上り左足を一歩後ヘ退く 同時に刀を引抜き(刀尖放れ際に)左腰を左後ヘ捻り体が左向きとなるなり(対手が向脛へ薙付け来る)差表の鎬にて強く張受に受け止め 左膝を右足横へ跪きつつ右諸手上段に引冠り更に右足踏込んで斬込み刀を開き納め終る。

 中山博道先生校閲居合読本長谷川維新流居合二本目「虎一足」:(意義)敵が前方から我が右臂(ひじ)を斬って来るのを抜刀して之を受け、敵の退くに乗じ正面に向ひ斬る業である。(動作)正面に向ひ箕坐(きざ)す、刀柄を上から握り、半ば刀を抜きつゝ左足を後方に踏み開き、刀を右足の側方に刀刃を前方にして敵の斬りつける刀を拂ひ受け、刀を頭上に振り被りつゝ左足を右足に引きつけ、右足を僅かに前方に踏みつけて正面を斬り直ちに血振りをする。以下前に同じ。

 古伝の手附は、相手が斬り込んで来るので「刀を逆に刃を下にして抜き逆袈裟にして相手の打ち込む小手を斬れ」と言っているようです。ここは状況をいくつでも思い描いてこの業を磨き上げるのですよ、と言われている気がします。如何に立膝であっても坐して居る我が右足に斬り付けて来るでしょうか、刀で刀を張り請ける能力が有るならきっと、相手の小手を切る事は出来るでしょう。
 

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2025年1月15日 (水)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書2立膝之部1横雲

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
2立膝之部
1横雲

右足ヲ出シ抜付ケ双手上段ヨリ打下し横血振納刀シツヽ右足ヲ引込ム(外に足を廻し乍ら引込ミ納刀ス)

 古伝神傳流秘書英信流居合之事
是ハ重信翁より段々相伝の居合然者を最初にすへき筈なれ共大森流は初心の者覚易き故二是を先二すると言へり
一本目「横雲」:右足を向へ踏出し抜付打込ミ開き足を引て先に坐したる通りにして納る。

 第15代谷村亀之丞自雄の英信流目録は長谷川流居合以下伝書ナシ残念ナリ。

 大江正路先生による剣道手ほどき長谷川流居合一本目「横雲」:正面に座して刀ヲ右へ静かに抜きつゝ、三寸残りし時右足を出し、刀尖を抜付け、其姿勢にて上段にて真直に前方を斬る。血拭ひ刀を納む(敵の首を斬る)

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法英信流表之部一本目「横雲」:(対座して居る者を斬る)正面に向ひ居合膝に座し(居合膝とは坐した左膝頭を左向ふに向け右膝を(右脛)を右へ倒し左踵の内側の所へ臀部を下し右脛を稍々立左膝頭と右向脛が一文字になり右足の踏誥(ふみつけ、ふみこう)を下につけ正に立上らんとする態勢を云ふ) 両手を膝元へとり(一呼吸の後)左手を鯉口に執り拇指にて鯉口を切り右手を柄に掛けるなり(下腹へ充分力を入れ)抜き掛けつつ膝を立膝伸びきると同時に右足踏込んで(対手の右側面へ)抜き付け 左膝を進ませつつ刀尖を左後ヘ突込み右諸手上段に引冠り更に右足踏込んで斬込み 刀を開くと同時に左手は一旦引込め腰に執り後ち鯉口へ進め刀ヲ納めつつ右脛を引付け爪立たる左踵上へ臀部を下すなり刀を納め終り右手を柄より放し膝元へ執りて終る(刀を開くとは血振ひする事其要領は大森流の五本目陰陽進退の所にて注釈の通り刀を抜掛けるまでと血振ひして刀を納めてからの手足の所作は何時も同じ)

 中山博道先生校閲太田龍峰著居合読本長谷川英信流居合一本目「横雲」:(意義)大森流初発刀に同じである。(動作)正面に向ひ箕坐す。(動作)正面に向ひ箕坐す、右足を僅か前方に踏み出し大森流の初発刀と同様に抜刀して直ちに頭上に振りかぶり、敵を斬り下ろし、直ちに陰陽進退の最初の血振りをなし、刀を納めつゝ右足を左足に引き付けて蹲踞し、後、徐かに立ち上る。

 立膝による座し方の違いだけで、抜き方は大森流初発刀と同じでしょう。それぞれの先生方の抜き方に特に古伝との違和感は感じられません。

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2025年1月14日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書1正座之部11抜打

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
1正座之部
11抜打

刀ヲ前二抜クト同時二両脛ヲ引寄セ中立チシ脛立チ双手上段二冠リ爪先ヲハネ股間ヲ開ク心ニテ打下シ其ノ姿勢ニテ横血振ヒ納刀シツヽ腰ヲ踵二下ス。

 古伝神傳流秘書大森流居合之事十一本目「抜打」:坐して居る所を向より切て懸るを其のまゝ踏ん伸んで請流し打込ミ開いて納る尤も請流二非春此所筆二及ばす 以上十一本

 第15代谷村亀之丞自雄の英信流目録大森流居合之位十一本目「抜打」:(原本に記載なきも之尓て時十一本となる輔筆之置く)曽田

 大江正路先生の剣道手ほどき大森流居合十一本目「抜き打ち」:正面に座す、對座にて前の敵を斬る心組にて其正座の儘刀を前より頭上に抜き、上段に冠り、身體を前に少しく出し、前面の頭上を斬る。血拭ひは中腰の同體にて刀を納む。

 細川義昌先生伝授の無雙神傳抜刀術兵法大森流居合十一本目「抜打」:(対座して居る者を斬る)正面に向ひ正座し静に左手にて鯉口を切り右手を柄に掛けるなり急に両膝を立て(両爪先立てる)同時に刀を右前へ引抜き左後ヘ突込み諸手上段に引冠りて斬込み刀を開き(開くとは血振ひの事)納めつつ爪先立てたる両踵上へ臀部を下す同時に収め終り爪先立ちたる足先を伸して正座の姿勢となり終る 大森流十一本完

  中山博道先生校閲太田龍峰先生著居合読本大森流居合十一本目「抜打」:(意義)彼我互に接近して對坐せる時不意に正面に向ひ斬り付ける動作である (動作)正面に向ひ正座す。彼我極めて接近しある場合を考慮せるものなるを以って抜刀に際しては成るべく右拳を前方に向けて動かしつゝ、概ね前額の前方に至らしめ、刀尖を左上膊の外側に近く移動せしめつゝ刀を頭上に振り被る(此際両膝を密接す)次で、直ちに両膝を開き刀尖が概ね地より二握り位の處に来る位に切り下ろす。次で左手を放ち右拳を右に開き血振りをなすこと陰陽進退に於ける第一段の血振りと同様に動作し、後、刀を納む。

 古伝は、「坐している所を向うより斬って懸る」に応じて「踏ん伸んで請流し打込む」のですが、他は、我から仕掛けているようです。敵に思うところに斬り込ませ、摺落として切り込む、新陰流の極意業です。


 

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2025年1月13日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書1正座之部10追風

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
1正座之部
10追風

 直立体ヲ稍前二屈シ数歩二走リ出テ右足ヲ一歩踏出スト共二抜付ケ左足右足ト攻込ミ上段中腰ノマヽ打下シ血振デ左足を引き寄セ右足ヲ退キ低キ中腰ノマヽ納刀ス

 古伝神傳流秘書大森流居合之事十本目「乕乱刀」:是ハ立事也幾足も走り行く内に右足尓て打込ミ血震し納る也但し膝を付けす。

 第15代谷村亀之丞自雄先生の大森流居合之位十本目「乕乱刀」:是盤立テ春か〵と幾足も行て右の足尓て一文字尓抜付(拂ふてもよし)かむる時左の足一足ふみ込右の足尓て打込ム血ぶるひの時左を右の足に揃納る時右の足を引納其時春ねはつ可ぬ也

 大江正路先生剣道手ほどきより十本目「追風」:直立體にて正面に向ひ、上體を稍前に屈し、刀の柄を右手に持ち、敵を追ひ懸ける心持にて随意前方に走り出で、右足の出でたる時、刀を首に抜付け、直に左足を摺り込み出して上段に冠り、右足を摺り込み左足は追足にて前面を頭上直立體にて斬り、刀尖を敵の頭上にて止める、血拭ひは右足を引き中腰のまゝ刀を納む。

 細川義昌先生伝授の無雙神傳抜刀術兵法大森流之部十本目「虎乱刀」:(前方へ行く者を斬る)正面へ向ひ立歩みつつ右足踏出しながら鯉口を切り左足踏出しつつ右手を柄に掛け更に右足踏込んで(対手の左側面へ)抜付けたるも剣先が届かぬため直ぐ左足を踏込みつつ諸手上段に引冠り更に又右足踏込んで斬込み血振ひして(立身のまま)刀を納め終る。

 中山博道先生校閲、太田龍峰先生著居合読本より大森流居合十本目「虎亂刀」:(意義)敵が逃れ去らんとするを追ひ掛けて斬る動作であって始終立姿にて行ふ即ち立居合である。(動作)正面に向ひ直立す左足を約一足長前方に出す(抜刀を容易にする目的)と同時に右手を以て鍔に近く握り右足を約一歩前方に踏み出だし初発刀の要領にて抜刀し、次に左足より二歩前進しつゝ刀を頭に振り被り右足が地に着くと同時に切り下ろす、以下の動作は成るべく神速に行ふを理想とす。次いで、立ちたる儘で初発刀における血振ひをなして刀を納める。

 古伝神傳流秘書では、追い懸けて抜き付けるや納刀してしまいます。その後は、抜打して「剣先が届かぬ為」なのか更に前進して斬り下しています。

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2025年1月12日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書1正座之部9月影

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
1正座之部9月影

左斜二向正座正面二右足踏出スト共二刀尖高ク斜右二抜付ケ左足右足ト二歩追足ヲ攻メ込ミ中腰ノマヽ上段ヨリ打下シ血振デ左足ヲ引付ケ右足ヲ退キ中腰ノマヽノ姿勢ニテ納刀

 古伝神傳流秘書大森流居合之事9本目「勢中刀」:右の向より切て懸るを踏出し立って抜付打込血震し納る此事は膝を付けす抜付二拂捨て打込事も有

 第15代谷村亀之丞自雄先生の大森流居合之位九本目「勢中刀」:是も坐して居也少し右向の方より敵立て来る心持也我其時右の足より立チ一文字に拂ふ其儘かむり討込ム也跡は血ぶるひをし左の足を右の足尓揃納る時右の足一足引納ル時春ねをつかぬ

 大江正路先生の剣道手ほどきより大森流居合九本目「月影」:(左斜に向き右眞向に抜き付ける)前左斜に向き正座し、同體の儘右足を出し中腰にて刀を高く抜き付け、右敵の甲手を斬る同體にて左足を出しつゝ上段に冠り、右足を出して稍直立體にて敵の頭上を眞向に斬り刀尖を胸部にて止む。血拭ひは右足を引き一番(初発刀)と同じ要領にて、刀を納む。但し直立の儘

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法九本目「勢中刀」:(右側より斬込み来る者を斬る)正面より左向きに正座し左手を鯉口に右手を柄に掛け(対手が上段より斬込まんとする刹那)膝を浮かべ右へ廻りつつ立上り左足を一歩後ヘ退くと同時二(斜上へ高く対テの右甲手へ)抜付直ぐ左足を右前足に踏揃へる。同時二右諸手上段に引冠り右足踏込んで斬込み血振ひ後左足を右前足へ踏揃へ更に右足を一歩後ヘ退き立身のまま刀を納め終り右足を左前足に踏揃へるなり柄を向ふへ向け直立の姿勢となり終る。

 中山博道先生校閲太田龍峰先生著居合読本大森流居合九本目「勢中刀」:(意義)右側面より斬り来る敵の前腕を斬り續いて之を追撃する動作である。(動作)正面に對し左向に正坐す。左膝を軸とし九十度右に旋回し右足を約一歩踏み出すと同時に中腰にて抜刀し刀尖を稍々左にし刀刃が僅かに斜右に向ふ如くし敵の前臂を切る心持にて握り締む、次に左足を右足に添ふると同時に右足を踏出しつゝ刀を頭上に振り被り右足が地に着くと同時に斬り下ろし、初発刀に於ける血振りをなし、刀を納む。

 此の業に対する座し方はそれぞれですし、敵は我が右方から切りかかって来るのに応じて、小手・肘などに斬り付け、追い込んで打ち込む動作とされています。古伝は正面向きに坐し、敵は右前から斬り込んで来るのに、抜き付けて斬り下すのです、この様な場合横一線に払い捨てる抜打も、下から逆袈裟に切り上げるも状況次第で幾つもあり得るでしょう。形に終わらせない稽古をしておきたいものです。

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2025年1月11日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書1正座之部8附込

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
1正座之部
8附込

右足ヲ出シツヽ刀ヲ抜キ其ノ足を後二引揃ヘテ立ツト共二上段右足右足ト二度打下し右足退キ手上段、静二刀ヲ下シ右脛をツキ右手逆に持替へ左手刀ヲ受ケシゴキ納刀

 古伝神傳流秘書大森流居合之事八本目「逆刀」:向より切て懸るを先々に廻り抜打二切右足を進んて亦打込ミ足踏揃へ又右足を後へ引冠り逆手に取返し前を突逆手二納る也。

 第15代谷村亀之丞自雄先生の英信流目録大森流居合之位八本目「逆刀」:是盤坐して居り春っと立其侭引抜向ヱ拝ミ打二打チツヾケテ二ツ打其時両足を前へ揃へ太刀を亦かむり其時右の足を跡へ引春ねをつき亦太刀を前へそろりとおろし右柄を逆手尓とり左の手尓て刀のむねをお左へ太刀の刃を上へ向て手前へ少しそろりと引納ル也初発刀より此迠ハ納尓春ねをつく也。

 大江正路先生の剣道手ほどきより大森流居合八本目「附込」:(俗に追切)正面に向いて正座す、右足を少しく前に踏み出しつゝ、刀を抜き、刀尖の鞘に離るゝ時頭上に冠り、右足を左足に引き揃へ、直立體となり、右足より左足と追足にて前方へ一度は軽く頭上を切り二度目は頭上を同一の態勢にて追足にて斬る、此體勢より右足を後部へ引き、中腰となりて更に上段構を取り、敵の生死を確めつゝ残心を示す(抜付けより之れ迄は早きを良とす)此残心を示したる體勢より自然前方へ刀を下して青眼構となる、此時は右足の膝を板の間につけ、左足の膝を立て全體を落す、更に同體にて右手を逆手となし、刀柄を握り、左手は左膝の上に刀峯を乗せ血拭ひをなし刀を逆手の儘同體にて納む。

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法大森流之部八本目「逆刀」:(前方より斬込み来る者を斬る)正面へ向ひ正座し咄嗟に左手を鯉口に右手を柄に掛け急に膝を伸し右足を右前へ踏出し其方向へ刀を引抜き立上りつつ左足より一歩後ヘ退き(対手が斬込み来る剣先を退き外し)更に右足踏込んで斬込み対手倒れる)左足を右前足に踏揃へつつ諸手上段に引冠り更に又右足を少し踏込み上体を前掛りに(対手の胴体へ)斬込み一息に右足を一歩後ヘ退き左諸手上段に冠り残心を示し其まま右膝を跪き刀を静に前へ下し(水平に)右手で鍔際を逆手に執り(刃部を向ふへ向け)柄を右肩の上へ引上げ刀尖の棟へ左手の拇指と示指と挟む様に添へ膝頭を左前ヘ出し止を刺す形をし其まま刀を振返して納め終る。

 中山博道先生校閲、太田龍峰先生著居合読本大森流居合八本目逆刀:(意義)正面より斬り込み来る敵の刀を脱しつゝ上段より敵の胸元迄切り下げ敵が後退するのを追ひ打ちに再び切り著け敵が倒れたるに對し尚ほ残心を示し、最後に止めを刺す動作なり。(動作)正面に向ひ正座す。右足を約一足長前方に踏み出すと同時に半ば刀を抜き左足を僅か後方に引きつゝ立上り同時に右足を左足にひきつけて刀を頭上に振り被る、次で右足を一歩前に踏み出し刀尖を胸の高さ位まで切り下げ続いて左足より二歩前進して、刀を再び頭上に振り被り右足の地につくと同時に斬り下ろす。此時に於ける著眼点は一間位前方の地とし、刀尖は腰の附近迄位切り下げ左足を右足にひきつけ、直ちに右足を約一歩後方に引くと同時に刀を頭上に振り被り、残心を示し、然る後、徐ろに右膝を地につけつゝ刀を下ろし右手を逆手に成る如く握り換へ左手を放ち刀を逆手に持ち左手を刀尖に近き部位の刀背に添へ、止めを刺す心持にて刀を僅かに上方にひき、以下流刀に於ける納め刀の要領により刀を納む。

 夫々文章表現の違いがありますが、相手の斬り込みを外すや、二度斬り込み、残心、更に逆手にて止めの残心、納刀でしょう。
 

 

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2025年1月10日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書1正座之部7介錯

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
1正座之部
7介錯

右足ヲ出シツヽ刀ヲ斜右前二静二抜キ右足ヲ後方二退クト共二刀ヲ擔ギ少待チ右足一歩踏出スト同時二打下し刀平ヲ右脛上二乗セ柄ヲ逆二持替へ納刀シツヽ右脛ヲツク

 古伝神傳流秘書大森流居合之事七本目「順刀」:右足を立左足を引と一處二立抜打又ハ八相二切跡は前に同じ(*流刀より:扨刀をすねへ取り逆手に取り直し納る膝をつく)。

 第15代谷村亀之丞自雄先生に拠る大森流居合之位七本目「順刀」:是盤坐してる前のものを切る心持なり我其儘右より立春っと引抜かたより筋違に切也是も同しく跡者春ねへ置き逆手尓とり納ル也

 大江正路先生の剣道手ほどき大森流居合七本目「介錯」:正面に向きて正座、右足を少しく前へ出しつゝ、刀を静に上に抜き、刀尖が鞘と離るゝや右足を後へ充分引き、中腰となり、刀を右手の一手に支へ、右肩上にて刀尖を下し、斜の形状とす、右足を再び前方に出し上體を稍前方に屈し刀を肩上より斜方向に眞直に打下して、前の首を斬る。血拭は足踏の儘六番(六本目)と同じように刀を納む。

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法大森流之部七本目「順刀」:(介錯する事)正面へ向ひ切腹する者の左側へT字形に三尺位離れて正座し(知人之善人の介錯を頼まれたる場合は慣れぬ事故若し斬損じがありましても御免を蒙るとの挨拶するを礼とす)機を見て鯉口を切り右手を柄に掛け右足を少し右前へ踏出し其方向へ刀を静かに引抜き(抜拂はぬ事)立上りつつ右足を退き左足に踏揃へ体を引起し直立の姿勢となりつつ刀尖を左後へ突込む様に右手を挙げて頭上を越させ血振ひする直前の様に(右肩後ヘ釣り下げて待つ)切腹者が(介錯頼むと)両手を前につかえると同時に右足踏出しつつ(悪人の首を切る場合は右足を前へどんとおとのする様に踏出し其音に斬られる者の心気を一轉させ)(怨霊を去る口伝)刃部を左斜下へ向け体を前掛にて柄頭を握り諸手となる左足を一歩後ヘ退き左拳を左斜上へ突出し(刃部を向ふへ向け)刀尖を右膝上に引付け(懐紙を出して血糊を拭ふは略す)右手を逆手に執りかへ刀を振り返して納めつつ左膝を跪くと同時に納め終る(血振ひせぬ事)

 中山博道先生校閲太田龍峰先生著居合読本大森流居合七本目「順刀」:(介錯とも云ふ)(意義)切腹者の左側方に於て切腹者に面して坐し介錯する動作にして極めて静粛に實施するを特徴とするのである。(動作)正面に向ひ正座す、頭を正面にしたる儘、左膝を軸として九十度右に旋回右足を僅かに前方に出すと同時に半ば刀を抜き、次に立上りつゝ抜き放ち左足を正面に向けつゝ右足を左足に引付けて直立す、此間に刀を右拳の位置か肩の右前下方概ね乳の高さ位にして刀背が右上膊の中央付近に来る如くす。次で氣合を圖り右足を一歩前方に踏み出しつゝ刀を頭上に被り足が地に就くと同時に稍々左側下方に向ひ斬り下ろし後、僅かに上體を起す。以下全く流刀に於ける納め刀の要領に同じである。

 神傳流秘書の「順当」がいつの間にか「介錯」とされています。無雙神傳英信流居合兵法には「介錯」について口伝があります。
 「介錯口傳」:古代ニハ介錯ヲコノマズ其故ハ介錯ヲ武士ノ役ト心得ベカラす死人ヲ切ル二異ナラス故二介錯申付ラルヽ時二請二秘事有リ介錯二於テハ無調法二御座候但シ放討ナラバ望所二御座候ト可申、何分介錯仕レト有ラバ此上ハ介錯スベシ作法二掛ルベカラズ譬切損シタリトモ初メ二コトワリ置タル故失二非ス秘事也能覚悟スベシ。
 「他流ニテ紐皮ヲ掛ルト云事」:仰向二倒ルヽヲ嫌テヒモ皮ヲ残スト云説ヲ設ケタル見ヱタリ當流ニテハ前二云所ノ傳有故二譬如何様二倒ルヽモ失二非ス其上紐皮ヲノコスノ手心何トシテ覚ラルベキヤ當流ニテハ若シ紐皮カゝリタラバ其ノ侭ハネ切ルベシサッパリト両断二ナシ少シモ疑ノ心残ラサル様二スル事是古伝也

 この様な古伝が残されているのに、大森流居合之事七本目「順刀」が現代居合の「介錯」でしょうか。全剣連居合に五本目「袈裟切り」があります、其の「要義」:前進中、前から敵が刀を振りかぶって切りかかろうとするのを逆袈裟に切り上げ、さらにかえす刀で袈裟に切り下ろして勝つ。
 この動作を、座して居る處へ敵が前方より切りかかって来るのを、刀に手を懸け、右足を前に踏み出し、刀ヲ上に抜きつつ左足を後方に退き間を切るや、抜撃ちに逆袈裟に切り上げる。など古伝は示唆しているとも思えます。いつの間にか「介錯」として伝わったのでしょう。大森六郎左衛門が林六太夫に「介錯」の仕方を伝授するとも思えません。


 

 

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2025年1月 9日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書1正座之部6請流

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
1正座之部
6請流

右斜向或ハ右向正座右脛前二左足ヲ出スト共二中腰二立チ刀ヲ抜キ上ゲテ請ヶ右方二左足ヲ右足二踏替へ体ヲ左方二変シ左足元二右足を踏揃へテ打下シ左足退キ刀ヲ右脛上二乗セ逆二持替ヘ納刀シッヽ左脛ヲツク。

 古伝神傳流秘書大森流居合之事六本目「流刀」:左の肩より切て懸るを踏出し抜付左足を踏込抜請に請流し右足を左の方へ踏込ミ打込む也 扨刀をすねへ取り逆手に取り直し納る膝をつく。

 第15代谷村亀之丞自雄先生の大森流居合之位六本目「流刀」:是盤坐したる所へ左横脇より敵討かゝり来る也其時我ハ左の足を立可ヱ前へふみ出し横二請流ス心持尓て其侭右の足をふみ出し筋違尓切り跡盤春ねへ置き柄を逆手尓取直し納ムル也。

  細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法大森流之部六本目「流刀」:(左側より斬込み来る者を斬る正面より右向に正座し左手を鯉口に執り右手を柄に掛けるなり 急に左足を前方に踏出し体は低く刀を左頭上へ引抜き(左側より斬込み来るを)受流しながら右足を前へ踏越す同時に体をくるりと左後ヘ振向き(刀は頭上にて受流したるまま左後より右肩後ヘ血振ひする直前の様に振下げ空を斬って居る者の後ろ首へ)刃部を左斜下へ向け右足を左前足に踏み揃へる同時に上体を前掛りに(右片手にて)大きく斬込み同時に左手で柄頭を握り諸手となる 其まま左足を一歩後ヘ退き上体を引起し(刃部を向ふへ向け)柄を左斜向ふへ突出し刀尖を右膝頭上へ引付け(懐紙を出して血糊を拭ふは略す)右手で鍔際を逆手に持かへ刀を左へ振返し納めつつ左膝を跪き納め終る(血振ひはせぬ事)。

 大江正路先生の剣道手ほどきより大森流居合六本目「請け流し」:(右斜向きにてもよし)右向となりて正座し敵が頭上に切り込み来るのであるから右斜横に左足を踏み出し中腰となりて刀尖を少し残して左膝に右黒星を付け抜き、右足を體の後に出すと同時に残りが刀尖を離れて右手を頭の上に上げ、刀を顔面にて斜めとして刀尖を下げて請け流し、右足を右横へ摺り込みて左足に揃へ、左斜向に上體を變へ稍や前に屈し、刀は右手にて左斜の方向に敵の首を斬り下し、下す時左手を掛ける。血拭ひは、斬り下したる體勢の足踏みより左足を後方へ引き、右足は稍前方に屈し膝頭を前に出す、其膝上に刀峯を乗せ右手は逆手に刀柄を握り構へ、其儘静に刀を納む、刀を納むるとき刀を鞘に納めつゝ體を漸次下へ下し、刀の全く鞘に納まるや之と同時に左足の膝を板の間に着けるなり。

 太田龍峰著、中山博道先生校閲の居合読本より大森流居合六本目「流刀」:(意義)敵が不意に左側より斬撃し来りしを以て取敢ず抜連れて、之を受け流し、敵が前にのめる所に乗じ其腰を切る動作である。
(動作)正面に對して右向に正坐す。頭を左に向け左足を約一歩前にふみ著くる間に右手を以て柄を上方より握り抜刀し頭上を目がけて斬り来る敵の刀を左肩の後方に向け流す心持にて動作す。この際に於ける抜刀は前記の諸場合と異り左手で刀を抜くに容易なる如く外方に旋回する遑(いとま)なく、急遽抜刀する意なるを以て之を上方より握るものにして抜き連れて受けたる時の刀刃の方向は之が為僅かに右方に向ふものとす。而して右拳の位置は前額の右前上方にして右肘は軽く屈げ次に立ち上りつゝ右足を左足の右後方約一歩半の所に開き刀は右肘を屈げて肩に擔ふやうにする。次に左足の蹠骨部を軸として、約九十度左に向けつゝ右足を左足に引きつけ、殆んど足を揃える如くし、両膝は軽く外方に屈げ、上體は正しく腰の上に落付かしむ。而して、刀は両足の将に揃はんとする時、左手を添え上げて左前方に向ひ斬り下ろす。(此際刀尖は稍々下り刀刃は斜左下方に向ひ恰も前にのめりたる敵の浮腰(肋部を斬る)然る後左足を約一歩後方に引き上體を起し刀尖部を右膝(右膝は伸び易きを以て特に注意するを要す)の上部に託する如く両手を少しく左方に移す、此際左肘は概ね伸びあるものとす。(納め刀)次に右手を放ち掌の反面を以て鍔を被ふ如く刀柄を上より握り左手を放ちて鞘口を握り右手を以て刀尖を右肩の方向に向はしむる如く刀を反転して之を納む。此際左膝は地に就く。

 古伝は至極簡単な手附で、師匠の教え無くして受流せるのか、ですが現代居合がこれを補っているでしょう。請け流す事を条件に稽古しているのですが、それが強くなり過ぎた形を演じる先生も居られるようです。
   刀で刀を請け其の上で流す等は、初歩の事で、あたり拍子に請け流す、更には請ける態勢で摺落としてしまう。古伝は「流刀」と業名を付けています。更には打ち込む相手の小手に抜き付けてしまう。など稽古して置きたいものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

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2025年1月 8日 (水)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書1正座之部5八重垣

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
1正座之部
5八重垣

右足ヲ出シテ抜付ケ左足ヲ出ス時上段ヨリ打下シ横血振納刀三分ノ二程納メ左足ヲ後方二退キテ立ツト共二右脛前二抜刀左脛ツキ上段ヨリ打下シ血振デ左足引付ケ立チ右足引キ納刀ト共二脛ツク

 古伝神傳流秘書大森流居合之事五本目「陽進隠退」:初め右足を踏出し抜付け左を踏込んで打込ミ開き納又左を引て抜付跡初本二同し。

 第15代谷村亀之丞自雄による大森流居合之位五本目「陽進刀」:陽進刀是磐正面二坐春る也右の足一足ふみ出し立つなりに抜付左をふみ込ミ打込ム也 春く尓右脇へ開キ其侭納ム也 隠退刀其侭左の足を跡へ引其時亦抜付打込ミ血ふるひの時立左の足を右尓揃へ納る時右を一足引也。

 細川
義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法大森流之部五本目「陰陽進退」:(前方を斬り又薙付け来る者を斬る)正面に向ひ正座し例により鯉口を切り右手を柄に掛け抜きつつ膝を伸し右足踏込んで(対手の右側面へ)抜付けたるも剣先が届かぬ為急に立上り左足を右足の前へ踏越しつつ刀を引冠りて正面へ斬込み刀を右へ開き(開くとは血振ひの事)刀を納めつつ右膝を跪き納め終りたる所へ (別人が向脛薙付け来る)急に立上り左足を一歩退くと同時に刀を前へ引抜き切先の放れ際に左腰を左へ捻り体は正面より左向きとなり(視線は右の対手に注ぐ)刃部を上に向け差表の鎬にて張受けに受け止め体を正面に戻しつつ左膝を右足横へ跪きながら刀尖を左後ヘ突込み右諸手上段に引冠り更に右足踏込んで斬込み血振ひして刀を納め終る。


 神伝流秘書は、動作の概略だけを書かれて、現代居合の動作の意義を思い浮かべながら読み進んでしまいます。「抜付けたるも剣先が届かぬ為」などはこれまでの四本で何を稽古してきたのか、それとも敵は尋常の使い手では無かったのだろうか。現代居合の著書を読みながら疑問だらけの「八重垣」です。

 大江正路先生の「八重垣」:・・此時敵未だ死せずして足部を切り付け来るにより・・膝を囲みて敵刀を受け・・。これでは残心の心得すら見えて来ないでしょう。

 中山博道先生の「陰陽進退」:‥切りつけたるも、敵逃れしを以て直に追ひかけ之を斬り倒し、刀を納めんとせし時、再び他の敵より斬り付けられたるを以って直ぐに之れに応じて敵の腰を斬る・・。

 他の敵が斬り込んで来るならば、刀で受ける以前に相手の小手なり腕に抜き付けるこの流の極意「柄口六寸」が忘れられています。大森流居合之事の創設者大森六郎左衛門は真陰流(新陰流)であれば切り込まんとする相手の抜口なり、打ち下さんとする小手を斬る筈でしょう。
 
 大江居合は、堀田先生の文章を大江先生はどこまで監修されたのか疑問です。其の儘現代居合に引き継ぐ伝書も多く検討課題でしょう。

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無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書1正座之部4後

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
1正座之部
4後

要領右同、右脛中心左脛をスカセ刀ヲ抜キツヽ左廻リ二正面へ半回転シ左足出スト共二抜付ケ双手上段ヨリ打下シ血振デ右足引付ケ立チ左足ヲ退キ納刀シツヽ其ノ脛ヲツク。

 古伝神傳流秘書大森流居合之事四本目「當刀」:左廻りに後ヘ振り向き左の足を踏み出し如前。

 谷村亀之丞自雄先生の大森流居合之位四本目「當刀」:是盤後二向て坐春る也正面へ左より廻り左の足を出し抜付春ぐ尓打込ミ血ぶるひの時立右の足を左に揃納る時左を一足引納る也

 行宗貞義先生の大森流居合抜方四本目「當刀」:後向キヨリ正面二抜キ付ケ冠リテ切ル也

 細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法大森流之部四本目「當刀」:(後に座して居る者を斬る)正面より(左廻りに)後向に正座し例により鯉口を切り右手を柄に掛け刀を抜きつつ左脛を立てながら右膝頭で左へくるりと廻り正面へ向くなり左足を踏み出し(対手に右側面へ)抜付け右膝を前へ進ませつゝ刀尖を左後へ突込み左諸手上段に引冠り更に左足踏込んで斬込み血振ひして刀を納め終る。

 1前(初発刀)、2(左刀)、3(右刀)、4後(當刀)の大森流居合之事の四本を抜いてきたのですが、抜刀して抜き付ける部位を現代居合は明確に指定しています。その発端の伝書は第17代大江正路先生に拠るのかも知れません。
 
大江正路・堀田祐弘共著「剣道手ほどき」の大森流居合(抜方と順序)一番「前」:我が體を正面に向け正座す、右足を出しつゝ刀を抜付け前の敵首を切り更に上段になり同體にて前面の頭上を眞直に切り、血拭ひ刀を納む。

 この抜き付けの部位は「右」「左」「後」「八重垣」とも「首に抜付け」と指定されています。
太田龍峰著、中山博道校閲の昭和9年の居合読本による大森流居合の「刀の抜き方」では:抜き放ちたる刀の高さは、右肩の高さにして、刀刃は水平よりも稍々下方に向ひ、刀尖は稍々下方に向はしむ。・・尚ほ切尖は右乳の前方の位置し・・。とどこに抜き付けるのかは読み取れませんが、抜き付けた時の形を示しています。
 然し一本目初発刀の意義で:互に四尺位離れて對坐せる時、急に敵の目の附近を横薙に切り付け、相抜きの場合は敵の抜付けし拳に切り込む。とやや形だけではない抜き付けの部位をほのめかせています。何時如何なる状況で敵ガ切り込まんとするも、それに応じられる事が、居合の本領でしょう。形は稽古の基であってもそれだけに拘っては武術にはなりません。
  

 

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2025年1月 7日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書1正座之部3左

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
1正座之部3左

左脛中心右脛ヲスカセ刀ヲ抜キツヽ右廻リ正面二向直ルト共二右足ヲ出シテ抜付ケ双手上段ヨリ打下シ血振デ左足引付ケ立チ右足ヲ退キ納刀シッヽ其ノ脛ヲツク。

古伝神傳流秘書大森流居合之事三本目「右刀」:右足を踏み出し右へ振り向抜付打込血震納る。

業名の「左」は「右」の間違いなのか、山本先生は左右入違っています。

谷村亀之丞自雄による大森流居合之位三本目「右刀」:是者右脇へ向て坐春る也右へ廻り右の足をふミ出し抜付春く尓討込血ぶるひの時左の足を右尓揃納る時右を一足引納ル也。

行宗貞義先生の大森流居合抜方三本目「右刀」:左向ヨリ正面二抜キ付ケ冠リテ切ル也

細川義昌先生伝授の無雙神伝抜刀術兵法大森流之部三本目「右刀」:(右側に座して居る者を斬る)正面より左向に正座し例により鯉口を切り右手を柄に掛け刀ヲ抜きながら右足を立てつつ左膝頭で右へ廻り正面へ向くなり右足踏込んで(対手の右側面へ)抜付け左膝を前へ進ませつつ刀を左後ヘ突込み右諸手上段に引冠り更に右足踏込んで斬込み血振ひして刀を納め終る。

 古伝神伝流秘書では三本目「左刀」で敵は我が右側に座すのである事を述べています。一本目「初発刀」・二本目「左刀」では敵は我が正面に座す設定で稽古をするようにしています。三本目「右刀」で、右へ振り向き敵は右側に座すとされています。

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2025年1月 6日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書1正座之部2右

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
1正座之部2右

右脛ヲ中心トシ左脛ヲスカセ刀ヲ抜キツヽ左廻リ正面へ向直ルト共二左足ヲ出シテ抜付ケ双手上段ヨリ打下シ血振デ右足ヲ引付ケ立チ左足ヲ退キ納刀シッヽ其ノ脛ヲツク

古伝神傳流秘書の大森流之事2本目「左刀」:左の足を踏み出し向へ抜付け打込み扨血震して立時足を前に左の足へ踏み揃へ左足を引て納る 以下血震する事ハ足を立替へ先踏出したる足を引て納る也

 古伝は正面を向いたまま正面の敵を左足を踏み出して抜き付けています。現代居合の様に、右を向いて座し正面の敵を切ってはいないのです。業名も「左」ですが、山本先生は「右」とされています。ここは左右間違えて記述されたかも知れません。

第16代谷村亀丞自雄による英信流目録より大森流居合之位二本目「左刀」:是は右脇へ向て坐春る也ヒタリへ廻リ左の足を一足ふみ出抜付春く尓打込亦血ぶるひをして立時右の足を左尓揃納る時左を一ト足引納ル也」

 江戸時代末期には右を向いて座し左廻りに正面を向き、正面に座す敵に左足を踏み込んで抜き付けています。古伝の正面の敵には、右足踏み出し抜き付け、及び左足踏み出し抜き付けと言う、稽古を抜にして、左の敵に対する動作を要求しているのです。

細川義昌先生が植田平太郎に伝授された無雙神伝抜刀術兵法大森流之部二本目「左刀」:左側に座して居る者を斬る)正面より右向に正座し、例により鯉口を切り右手を柄に掛け刀を抜きながら腰を伸しちち脛を立て、右膝頭で左へ廻り正面へ向くなり左足を踏込むと同時に(対手の右側面へ)抜付け右膝を前に進ませながら刀尖を左後方へ突き込み諸手上段に引冠り更に左足踏込んで斬込み血振ひして刀を納め終る」

曽田先生の師匠行宗貞義先生も細川先生と同門の下村派です、その大森流居合抜方二本目「左刀」:右向キヨリ正面二抜キ付ケ冠リテ切ル也。

 細川家に残された下村派の大森流居合に二本目左刀も谷村派と同様に左の敵を斬るには、右膝を軸に左廻りに左足を踏み込む稽古業になり、古伝の教えとは異なります。谷村派と下村派に分離する以前に二本目左刀はこの様に変えられていたのかも知れません。右足でも左足でも状況次第で自由に踏み出せる体裁きは稽古業として貴重なものと思います。特に抜き付けで右に強く半身となる教えに、正対して抜き付ける稽古もしておきたいものです。

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2025年1月 5日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書1正座之部

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
1正座之部

1前:右足ヲ出シテ抜付ケ双手上段ヨリ打下シ血振デ左足ヲ引付ケ立チ右足充分退キ脛ヲツキ乍ラ納刀ス

 この正座之部1前の備忘書は、曽田先生の指導によるものか、何か技術書より転記されたのか、何も書かれていませんから分かりません。
 昭和18年に書かれた「無雙直傳長谷川流居合術極秘」ですから、この頃までには土佐の居合は十分稽古できる書籍が出版されています。

 「古伝神傳流秘書」大森流居合之事「初発刀」:右足を踏み出し向へ抜付け打込み扨血震し立時足を前二右足へ踏み揃へ右足を引て納るなり。

 「曽田本その1」第15代谷村亀之丞自雄の英信流目録大森流居合之位「初発刀」:平常之如く坐し居ル也右の足を一足婦ミ出抜付討込亦左の足を出し右尓揃へ血ぶるひをして納むる也血ぶるひの時立也右を引納ル也。

 「曽田本その2」の行宗貞義による大森流居合抜方「前」:(初刀又初発刀)正面二座シ抜キ付ケ冠リテ切ル也血振ヒヲ為シ右足ヲ引キ納刀膝ヲツク

 大江正路・堀田祐弘著「剣道手ほどきより」大森流居合「一番前」:我體を正面に向け正座す、右足を出しつつ刀を抜付け前の敵首を切り更に上段になり同體にて前面の頭上を眞直に切り、血拭ひ刀を納む。

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2025年1月 4日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  17無雙直傳英信流居合術目録 

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
17無雙直傳英信流居合術目録

1向身ー横雲・虎之一足・稲妻
1右身ー浮雲・山嵐
1左身ー岩波・鱗返
1後身ー浪返・瀧落
         四方切、右、左、後
「太刀打之位」
1、出合 1、附込 1、請流 1、請込 1、月影 1、絶妙権 1、水月刀 1、独妙剱 1、心明剱

「詰合之位」
1、八相 1、拳取 1、岩浪 1、八重垣 1、鱗形 1、位弛 1、燕返 1、眼関落 1、水月刀 1、霞剱

「大小詰」
1、抱詰 1、骨防 1、柄留 1、小手留 1、胸捕 1、右伏 1、左伏 1、山影詰

「大小立詰」
1、〆捕 1、袖摺返 1、鍔打返 1、骨防返 1、蜻蜒返 1、乱曲 

「外之物之大事」
1、行連 1、連達 1、遂懸切 1、惣捲 1、雷電 1、霞 

「上意之大事」
1、虎走 1、両詰 1、三角 1、四角 1、門入 1、戸詰 1、戸脇 1、壁添 1、棚下 1、鐺返 1、行違
1、手之内 1、輪之内 1、十文字

「極意之大事」
1、暇乞 1、獅子洞入 1、地獄探 1、野中幕 1、逢意時雨 1、火村風 1、鉄石 1、遠方近所 1、外之剱 1、釣瓶返 1、知羅離風車

 この目録は、曽田先生の書き付けたものを見て書き出したのでしょう。業名以外に目録ですから説明書きは有りません。

 

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2025年1月 3日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  16英信流土佐居合史

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
16英信流土佐居合史

 当流ノ始祖ハ抜刀術中興ノ租(奥州人)林崎甚助重信先生(初メ東下野守元治ノ神明無双東流剣法ヲ學ブ)デアル、第七代目長谷川主税助英信ハ始祖以来ノ達人デ無双流ヲ無双直伝英信流ト改メラレタ
 九代林六太夫先生ハ土佐ノ人デ高知城下南八軒町二住ス、稀二見ル多芸ノ士デアッタ、
 十一代目大黒元右ヱ門先生ヨリ当流二ッ二分レ其ノ手獨特ノ相違有之、藩政時代二最後ヲ飾る両派ノ代表的人物二谷村先生下村先生有リ、両士共剣風見事土佐第一デアッタ、谷村先生ノ腕ノ冴ハ見事也、下村先生ハ安政嘉永頃藩ヨリ居合術指南ヲ拝命ス、
 維新後欧州文明ノ流入二ヨリ古来ノ武士道、當流も衰微ノ一途ヲ辿ル、明治二十六年板垣先生ノ熱意二ヨリ之ガ復興ヲ説カレ谷村派ノ五藤先生林木町(材木町)二於テ一般ヲ指南、其ノ愛弟子二森本先生有リ時二天下無双ノ稱アリ、其ノ弟子小藤亀江先生ハ早世ス、
 下村派デハ行宗先生ガ第一線二立タレタ、先生ノ居合ハ見事ナル剣風有リ、明治四十年頃土佐第一ノ称有リ、門下二廣田広作曽田乕彦先生有リ、
 又細川先生明治ヨリ大正二カケ達人デアッタ、細川先生没後大江先生アリ子弟ノ教育二熱心大イ二斯道二貢献サル、今曽田先生及福井、山本(宅)、松田、山本(晴)、織田、田岡ノ各先生御活躍セラレツヽアリ、又竹村先生アリ

 山本俊夫先生による土佐居合史で、其の教え、又は出典が定かでは無いのでこのままとしておきます。

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2025年1月 2日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  15無双直傳英信流居合術系図

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
15居合術系図

無双直英信流居合術系図
開祖林崎甚助重信-2代田宮平兵衛業正-3代長野無楽入道槿露齋ー4代百々軍兵衛光重-5代蟻川正右衛門宗纘-6代萬野團右衛門尉信ー7代長谷川主税助英信ー8代荒井勢哲清信-9代林六太夫守政ー10代林安太夫政詡-11代大黒元右衛門清勝
ー12代松吉貞助久守(下村派)ー13代山川久蔵幸雄(幸雅のミス)ー14代下村茂市
                               ー15代細川義昌
                               ー15代行宗貞義ー曽田虎彦

ー12代林益之丞政誠(谷村派)ー13代依田萬蔵敬勝ー14代林彌太夫政敬-15代谷村亀之丞自雄
ー16代楠目繁次成榮
ー17代谷村樵夫ー18代小藤龜江 

ー16代五藤孫兵衛正亮
ー17代森本兎久身ー18代竹村静夫(教士)

ー17代大江正路子敬ー18代中西岩城(教士)・18代甲田盛夫(教士)・18代穂岐山波夫(ー19代福井春政(教士)・18代山本晴介(教士)・18代山内豊健(教士)・18代政岡壹實(教士)・18代鈴江義重(錬士)・18代西川倍水(教士)・18代山本宅治(錬士)・18代松田英馬(教士)・18代森吉兼吉(錬士)・18代田岡 傳(教士)

 抜刀術 開祖林崎甚助重信ハ初メ東下野守元治ノ「神明無雙東流剣法」ヲ学ブ

 この開祖の学んだという事は、何から引用されたのか明記されていません。そのようなことが有ったという書籍をミツヒラは知りません。但し早川順三郎による「武術叢書」大正4年発行による「武術流祖禄」には、「抜刀中興祖林崎甚助重信 奥州の人也、林崎明神を祈り刀術の精妙を悟る、此の人中興抜刀の始祖、其の技術神妙也、門に田宮兵衛重正其の宗を得る。」同じく続いて「田宮流 田宮平兵衛重正 関東の人也、刀術を好み東下野守元治に学び、神明無想東流の奥旨を究む、後又林崎重信に就き抜刀の妙を得る、實に神に入り變に盡、・・・」とあります。これに依れば「神明無双東流」を学んでいたのは田宮平兵衛重正の事で、山本俊夫先生は此の混線かも知れません。
 なお、居合術系図はほぼ曽田虎彦先生の書かれた系図によると思われます。17代大江正路先生の中学校の教え子は、ここには見えない森茂樹を含む8名に「根元之巻」を授与された様に政岡壹實先生は「無雙直傳英信流居合兵法 地之巻」に書かれています。                

 
                              

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2025年1月 1日 (水)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  14居合目録

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
14居合目録

昭和十九年八月十日外出日二、曽田先生宅ヲ訪問、英信流二就テ種々拝聴協議ヲナシタル後、先生秘蔵傳書、極意初其ノ他 數百年以前之貴重ナル巻物ヲ拝見ノ光栄二浴ス 又「英信流居合目録一巻を授ける」と申しくれた 早くほしい早くほしい

昭和二十年一月十日乃至同年六月三十日迄福知山教育隊修学中は殆ど剣を忘れ軍隊にのみ専念ス 六月三十日無事卒業するや喜々として剣を持ち打振る
而し軍隊生活二年間中業及気合意の如くならず 遺憾なり 愈々修行初志貫徹に努力せん事を神に誓いぬ 

昭和二十年七月三十日 於 福岡県早良即金武校 見習士官 山本俊夫

  昭和19年から20年の山本先生の生活と思いが伝わってくる様な一節です。日本は敗戦に向かって走っていた時代でしょう。近年の聞こえてくる、痛ましい戦争のニュースや、権力者の我物顔に意地を張るこの頃。あの時代に決して戻ってはならないでしょう。多くの異国の観光客と鎌倉と言う居場所柄出会うこの頃、この人たちとは決して戦争に巻き込まれたくない、仲良く何時までもつきあいたいものです。 

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2024年12月31日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  13一毛弛めば一剣を浴びん

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
13一毛弛めば一剣を浴びん

 敵剣、眸を射、殺面を吹くの緊迫に身を曝せば、人間の五肢内蔵諸機関はもとよりの中手の爪、足の爪もこぞって戦ひの生理に就く、毛髪の一根々々も逆立って戦ひ総身の毛穴も呼吸を助けて汗を噴かざるはない状態を呈す・・・もしこの時一指の紊(みだれ)れでもあるか、一本の睫毛が眸を遮るの際でもあれば、敵剣は虚に乗じて忽ち五體を両斷してしまふ。

 山本俊夫先生が、どこかから読んだかここ及んだかした教えでしょう。一毛とは「聊か」「些細」などの意味でしょうが「わずかな隙を見せれば」とでも読めば良さそうです。しかし、隙を見せない等に拘ったのでは、隙だらけになってしまいそうです。無心になってしまえば、戦いも難しそうです。それらしき「教えに」相槌を打つ前に、やるべきことが有りそうです。
  柳生十兵衛の「月之抄」を読み直したくなってきました。

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2024年12月30日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  12負傷の記

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
12負傷の記

 負傷の記(日記ヨリ)持(特?)二大ナル事故
1、昭和十八年四月頃瀧落ニテ抜刀腰ヲヒネル時朝尊ノ鞘半分程割る修繕不能ノ為新作ス
1、昭和十八年七月中指負傷全治二週間
1、昭和十八年九月二十九日初発刀演武中納刀の際刀辷りて拇指爪を負傷す、今迄少々の傷は数十否数百回も受く而此の傷大なる故特に記す也
1、昭和十八年十二月十四日午後▢時四十分武徳於暇乞演武中抜付ケト同時二左手拇指根本二長サ二寸位深サ五分位負傷直二宮本病院ニテ応急措置を取リ同日四時十針縫合ス全治三週間ナラン出血多量体弱リテ苦し割合上達ノ今日國二捧シ身体粗末にセンハ深ク反省セザルベカラズ刀身五寸程スベリ鞘走タルヲ不知急抜打チスル時鞘ト思ヒテ刀身ヲ握リ抜刀スゴキタル故也
1、昭和二十年八月二十日金武(福岡)小学校柱一寸ほど斬込ム

 山本俊夫先生の怪我の話、やれやれです。でも何時でも誰にでも大小の自傷は真剣を帯びての稽古には有りうるものです。
 稽古中、抜刀時に鯉口を割って左手の平に斬り付けたのを目の前で見ましたが、血が噴き出る如くでした。常に正しい運剣操作が行われる様、気を散らさず稽古すべきなのでしょう。


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2024年12月29日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  11伝書寫

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
11伝書寫

▢上傳書寫ハ昭和十八年四月中旬ヨリ着手同年十一月十日完成ス、但外之物之大事上意之大事等多ク有ルモ一先ズ之二テ打切ルトス、我苦心ノ極意書二シテ、他見他耳不可也
昭和十八年十二月同行者
瀧口、上居、野田、中沢、南、西川
織田先生、(守馬)高知市愛宕町(十九年三月ヨリ城商ノ教師)
曽田乕彦先生
山本、田岡、福井、(佐川町)近藤清雄監師
高知市本町三番地 〇〇〇〇先生

当流下村派では曽田先生 谷村派では竹村先生が古来の傳をつかれてゐる由を聞きたり(織田教師談)

鞘走るわが劔太刀神ながらの・・・抹消

拾九年七月三十日作
耐へたへて積る恨と鞘走る
     我打っ太刀に水もたまらず  出▢▢

 此の稿は、山本俊夫先生の単なる覚書なのか、何かを成し遂げた事の既述なのか、よく理解できない部分もあります。

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2024年12月28日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  10武術の四部門

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
10武術の四部門

大日本武徳會武道種目
撃突武術:居合術(道)、剣術(道)、銃剣術、槍術、薙刀術、棒術、杖術、鎖鎌術、十手術、鉄扇術等。
格闘武術:柔道(術)、空手術。
射撃術 :弓道(術)、射撃術。
投擲武術:手裏剣術(根岸流・白井流)。

術とは=熟のみちに乗った形 即ち錬達して自ら道を成したもの之也
道とは=只一本の本道又大道であり「皇道」及其ノ別名の外あらざる也 
・・・成瀬周次氏説(手裏剣)より

武道教訓
  わざにこそ理は有明と悟るべし
       障子あければ月のさすなり

 山本俊夫先生の居合術極秘は、居合を学ぶにあたり武術関係の書籍を能く勉強されておられることがよくわかります。

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2024年12月27日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  9山本系図

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
9山本系図

山本系図 定紋巴亦丸之内耳一之字用フ
根元清和天皇ー大代ー陸奥守源頼義ー一代ー進士判官代源義業ー山本遠江守源義定ー二拾代ー山本勘助晴幸(甲斐住戦死)ー長男行處不明ー山本亦次郎義法(土佐布師田住 大阪城外ニテ自殺)ー山本彦右ヱ門(野地二来ル)ー山本大之蕪ー山本八右衛門ー山本惣七ー山本宇(?)治蔵(?)ー山本忠三郎ー山本栄五○(?)ー山本良五○ー山本泉ー山本良輝ー四拾四代山本俊夫
*
 山本俊夫先生の素晴らしい系図です。
  この系図の乗せられているページには、山本俊夫先生の御研究によるのか無双直伝英信流の系図が書かれています。

神明夢想東流剣法(東下野守元治)ー夢想神傳流(林崎甚助)ー無双直伝英信流・長谷川英信流(長谷川主税助)
ー下村派(無双直伝英信流(下村茂市))
ー谷村派(無双直伝英信流(谷村亀之丞))

 此処には曽田先生による「無雙神傳英信流居合兵法」の呼称が書かれていません。「居合兵法伝来」として曽田本その1には「目録には無雙神傳英信流居合兵法とあり、是は本重信流と言べき筈なれども長谷川氏は後の達人なる故之も話して英信流と揚られたる由也」と書かれています。
 林崎神助(甚助)重信の流名が何であったのか、定かではなく、江戸期に入って長谷川英信の教えを受けた荒井勢哲の弟子であった土佐の林六太夫守政であれば「無雙神傳英信流居合兵法」が妥当でしょう。林崎甚助重信の居合がどのようなものであったか、その経歴は定かではありません。武術流派の業は、時代と共に変化してゆくのは当然の事で、元のままでは、時代にそぐわなくなって廃れてしまうものです。

 昭和十八年十一月四日 藤並神社二右居合五本ヲ奉納ス 記念品有 ▢アリ
1、初発刀 2、陽進陰退 3、抜打 4、山嵐 5、岩浪

 曽田先生が「土佐居合兵法叢書」を近き中出版される由 昭和十九年初ならん

 奉納居合の業の順番の「抜打」の後に長谷川流の業名が記載されて、現代居合から見ると異質です。順番は「大森流ー長谷川流」なのでしょう。
 曽田先生が「土佐居合兵法叢書」を出版されると聞かされていたのでしょう。その原稿が私の手元に在る呼称「曽田本その1」なのかもしれません。昭和二十年の米軍による高知空襲により家財道具一式焼けてしまった曽田先生ですから、出版は断念せざるを得なかったと云えるかもしれません。

 



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2024年12月26日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  8参考 1居合流名

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
8参考 
1居合流名

Pb180540241118
*
 居合流名については前にも書かれています。ここには無雙直傳英信流、無楽流、一傳流、上泉流、不傳流、田宮流、伯耆流、関口流、鞍馬流、10神影流、の10流です。前回の「主ナル居合流派は始祖」は23あり始祖も明記していましたました。ナンバーの赤は前回にも書かれていた流派ですから、ここで表記する意味は、何なのでしょう。

 次の居合術名称は「居合・抜刀術・居相・鞘ノ中・居合術」で現在は「居合道」と言われるとしています。
 以降は、どこかで読んだ歌でしょう。

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2024年12月25日 (水)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 13大森流の事

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
13大森流の事記

大森流は林先生の師大森六郎左衛門が眞陰流古法五本の仕方より案出したるものを英信流に附属せしめたり

「神傳流秘書」の「大森流居合之事」によると:「此居合と申は大森六郎左衛門之流也 英信と各段意味無相違故に話而守政翁是を入候 六郎左衛門は守政先生剣術之師也 真陰流也 上泉伊勢守信綱之古流五本之此形有と言或るは武蔵守卍石甲二刀至極の伝来守政先生限にて絶(記此の五本の仕形の絶へたるハ残念也守政先生の傳是見當らず)」  
 大森流は第9代林六太夫守政が大森六郎左衛門が眞陰流の五本の形から案出したもので林六太夫が第8代荒井勢哲に話して、大森流として英信流に加えたというのでしょう。その根拠は業技法からは現代の柳生新陰流の教えからは読み取れません。
 真陰流の業については、曽田本その1として解説してきた林六太夫守政の語りを第10代林詡が書かれた「老父物語」にその片鱗が見え隠れしています、「亦相懸二而敵来ル時、先二敵ノ太刀ヲコロシテ勝位有、古人和卜刀トモ云ヱリ」などは柳生新陰流に見られる「和卜」なのでしょう。
 「和卜」についてはミツヒラブログのカテゴリー「老父物語」2023年11月1日から同年11月6日の6編のうち11月3日の「無雙神傳英信流居合兵法 極意巻秘訣 後書3」に解説してあります。他の新陰流の業と思える解説も後書1~6までに「思いつくままに」書き込んであります。

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2024年12月24日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 12心構の3

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
12心構の3

40浮雲等敵ヲ引ク場合ハ自分ノ近二引キ其ノ場合刃刃下二向ク
41納刀ノ場合ノ右手ハ手首ヲ折ルベシ
42右身浮雲ノ柄二手ヲカケタル場合ハ如何ニテモ正面向トナル事
 ▢▢ズバ刀抜ケズ且腰ヒネレズ又抜付ハ引キ気味ナルベシ
43目ノ付ケ所注意スベシ
44鯉口と切先の線の切れざる様に・・・
45業と業の間は一連に行ふは不可にして少しの間を置く事但し此の間は時間的のものには之無く「一動の終りのグット確なる力の締り」必要也
46服装大切なれ

心構の3は前回30まででしたが、突然40から始まって46で終わっています、従って総数37になります。山本俊夫先生の自らの覚書でしょうから、項目の詳細な解説は書かれていません。

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2024年12月23日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 12心構の2

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
12心構の2

16納刀は早く やわらかに
17技ハ堅カラズ 充分ナル「貫禄」大切也
18業ト業トノ内ハ間ヲ置ク(時間的ニハ非ズ)力ノ締付必要ナリ
19気分ハサッ〵パキ〵
20肩コラザル様二注意
21抜終ッテ次二移ル時ノ間(一本目ー二本目ー・・)二呼吸半位ノ時間アルガ良シ但シ一人尓テ行フ時ハ如何様尓ニテモ良シ(精神しづまり気満ツレバ・・)
22總テ大森流「初発刀」ガ根本トナッテイル完全ナル業ヲ行フベシ
23抜付ケノ剣ノ高サ「少シク水ノ流ルゝ程度」此ノ時ノ左ノ手及ヒヂ二注意 カムリ方大切也 冠ル高サ、打下シ(柄握リ締ム)血振ノ高サ後二引ク足等二注意肝要也
24業ハヤワラカクスル事 態度ハ自然也
25仮想ノ敵二注意ス 間合大切ナレ(切ル間合、切ル時機、切ル気合)
26抜刀ノ時ハハバキヨリ順々二押へ抜ク事忘レヌ様二ス
27礼式モ慎重ナルベシ
28業ヲ行フ前ノハカマ拂に注意ス然ラザレバ足二モツレ危険也
29日本刀に注意する(目釘 栗形 刀身等二)
30貫禄アレ 富士山ノ如クニ

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2024年12月22日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 12心構の1

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
12心構の1

1残心大事之事
2目ハ観ノ目 見ノ目
3鞘ヲ反轉二注意ヲ要ス最モ鞘栗形二注意スル
4抜付納刀共指ニテ鎬ヲオサユル事 納刀一文字ノ事
5切付ノ高サ血振ノ高サ抜付ケノ高サ姿勢注意
6奥居合ノ納刀ハ音ノセヌ様二スルコト肝要也又残心アル如クスルコト
7刀身ノ鞘ヲ離ルヽ迠三段ノ教アリ即チ徐・破・急也
8呼吸大切ノ事
9態度ハ静寂、厳粛、清澄、圓満
 技術ハ正確、連神、圓満
10極意切付ケ二星大切也
11柄握リ大切
12鯉口ノ切リ方三種 内切リ、外切、控切リ
13居合打下シハ(座業)床ト八寸ノ隔リアルコト立業ハ敵ノヘソ位也下ガラヌ事
14總テ抜付ケハ鯉口トノ縁ノ切レザル様注意ス
15体前二ノメラヌ事

 山本俊夫先生の居合に於ける覚書だろうと思います。指導を受けた時のメモ、或いは居合の書物からの抜粋でしょう。1~46迠ナンバーが付記されています。1~15、16~30、31~46と三回に分けてアップしておきます。
 10二星については柳生但馬守宗矩による「兵法家伝書」殺人刀から「二星(にしょう)敵の柄を握った両手のこぶしの動き」を指します。

 

 

 

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2024年12月21日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 11不動智

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
11不動智

不動智 柳生但馬守宗矩述
 不動智と申すは人の一心の動かぬ所を申候 我心を動轉せぬ事にて候 動轉せぬ心とは物に心をとどめぬ事にて候 物に心を留むれば物に心をとられ候 毎物とどめる心を動くと申候 物を一見しても心を留めぬを動かぬと申候 なぜなれば物に心を留め候へばいろ〵の分別が胸に候て的の中色々に動き候 留まれば動き候 とまらぬ心は動かぬにて候

心眼:眼ヲ開キテ心デ見ル也

観自在菩薩 行深般若般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄

 不動智について柳生但馬守宗矩述とあるので、其れらしき文献を探したのですが見当たりません。沢庵和尚による不動智神妙禄には柳生但馬守宗矩に、剣禅一如を説いたもので、「向ふへも、左へも、右へも、十方八方へ、心は動きたきやうに動きながら、卒度も止らぬ心を、不動智と申し候。・・物一目見て、其心を止めぬを不動と申し候。なぜなれば、物に心が止り候へば、いろいろの分別か胸に候間、胸のうちにいろいろに動き候。止れは止る心は動きても動かぬにて候。・・」この不動智神妙禄の教えを宗矩は兵法家伝書上巻殺人刀にも引用されています。

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2024年12月20日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 10主ナル居合流派ト始祖

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
10主ナル居合流派ト始祖

Dsc00198241106
*
 この「主ナル居合流派ト始祖」には、無外流、神道無念流など幾つか現代にも伝わっている居合流派が欠落しています。
 山本先生はどの様な参考資料によって纏められたのか、手持ちの書籍でチェックしてみたところ、山田次郎吉先生の著書で「日本剱道史」大正14年1925年発行と引き合わせますと、幾つかブレますが新田宮流まではほぼ同じと見られます。
 書き出しの無雙直傳英信流を長谷川主税助英信、夢想神傳流を林崎甚助重信とされた謂れが知りたい処です。
 現代では途絶えてしまった流派も有る様で、その昔は時流の業を安易に披露する事を嫌ったとしても現代では、しっかりした流祖の記述を基にした時流の教えを、臨む者には容易に手に入れられる事にしておきませんと、「唯授一人」などと云って見ても、意味のないことです。

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2024年12月19日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 9呼吸二就テ(業ト業ノ)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
9呼吸二就テ(業ト業(技)ノ)

 呼吸二就テ 着座シ二呼吸ノ後三度目ノ息ヲ吸ヒ終ッタ頃刀ヲ抜ク但シ一人稽古ノ時ハ心鏡十分整ヒ明鏡止水ナル迠正座シ然ル後行フ事

 呼吸 抜付ケノ場合息ヲ吸ヒテ切付ケ打下シタルトキ抜キ血振納刀後▢テ抜ク事

 抜付ケ(極意二▢大切之事)

 業 總テ業ハ初ヨリ終ルマデ一ツ〵ノ業ヲ完全ナラシメ業二貫禄ヲツケル事

 納刀 修行二依リテ神速ノ中二静サヲ含ム自然ノ納刀肝要也

 居合を精神修養として心がけるには、この様な教えはぜひ実行すべきと思います。然し実戦を考えた場合、相手はこのような呼吸法も、抜くタイミングも待ってはくれません。
 それではどうすればよいのでしょう。抜き付けに気合を発すれば呼吸は、息を吐くことになります。上段からの切込も同様でしょう。如何なる状況下でも、相手の動きに応じられる居合でなければならないでしょう。新陰流で云う「就色随色」でなければなりません。私は意図しない、通常の呼吸での運剣を心がけています。我から先んじて抜き付けると云うのは、相手の意図する初動を感じ取った時に発せられるもので、其れすら後の先なのです。一方的に切り掛かれば、後の先で敗れます。
  


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2024年12月18日 (水)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 8勝負

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
8勝負

勝負ハ竹ヲ割ルガ如ク本ノ一節ヲ破レバ其ノ末へ手二應ジテ破ルベシ兵書二「破竹ノ急」ト云ウハ是也 一節ヲ破ル二止マレバ破レズ是レ止ルト謂ヒテ嫌ヒ瞬時モ止ムベカラズ也

 「破竹の勢い」と言うのは三国志などから」聞き覚えていますが、「破竹の急」とはどこから出たのでしょう。意味は「激しくとどめがたい勢い」とでもいうのでしょう。竹を割る時、一と節ばかり斧で切り裂けば二た節目も一気に切割る事が出来る、その様な勢いを譬えています。
 「ここぞ」という時の勢いは理解しますが、打ち込む刀を不必要に切り抜いていたのでは、剣術にはならないでしょう。

心氣力ノ修行
剣法は心・氣・力、三者調業ナレバ全クナリ難シ、心ヲ治メ氣ヲ静二シ力ヲ養フハ修行二アリ。

居合打下シ(床ト約八寸程ノ間アルベシ)
刀ノ抜キ方(速度)(序、破、急 是也)
態度 平素ト異ルナキ自然ナル態度ヲ持シ静寂、最粛、清澄、圓満ヲ要トス。
技 正確、神速、圓満ナレ

 昭和18年に纏められた山本俊夫先生の居合に寄せる思いを、覚書としたのでしょう。曽田先生の指導にも学校教育にも時局を思う意気込みが漂っていたはずです。

 

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2024年12月17日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 7斬ル手ノ裏

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
7斬る手ノ裏

 打ツ時ノ手ノ裏ハ前条ノ如ク締メ刀ヲ振リ上グル時ハ弛メ構ユル時モ弛メ彼ヨリ打ツ時ハ手ノ裡ノ締メテ留直二弛ムベシ其ノ緩急ハ業二随テ行ク也

 山本俊夫先生の覚書きには斬る手の内、構えた時の手の内に於ける、柄握りの締め弛めについての教えが書かれています。
  斬り込んだ時は手の内をグット締めるのには異論はないのですが、敢えて振り上げる時、構える時などに弛めないで握り締めて居たのではどうにも自由が利かないものです。自然に手の内は変化に応じられる程に軽く弛むはずです。
 演武などで、手の内の締め弛めを、せっかく握った柄から指を延ばす様にして緩めたり、〆込んでいたりするのを見かけます。

 宮本武蔵の兵法三十五箇条の太刀取様の事に「太刀も手も出合やすく、かたまらずして、切り能き様にやすらかなるを、是れ生る手と云也。手くびはからむ事無く、ひぢはのびすぎず、うでの上筋弱く、下すぢ強く持也。能々吟味あるべし。」とあります。この「下すぢ強く持」には、食指と拇指は緩く指の先端が触れる程にあてがい、中指・薬指・小指は軽く握っただけでも下筋は張ります。
 柳生新陰流では「中指・薬指・小指と均等に力を入れて握り、食指と拇指の間をすぼめないで丸く握る通称「龍の口」の状況に握る(江戸武士の身体操作柳生新陰流を学ぶ 赤羽根龍夫著より)」
 いずれにしても、腕を伸ばして打ち込み、更に手首を折って打つ、叩くのではなく体で「ズン」と斬る為の手の内なのです。
 

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2024年12月16日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 6柄握リノ事

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
6柄握リノ事

肩ヲ落シ臂(ヒジ)ヲ延バシ食指ヲ軽ク屈メ中指ヨリ小指二至ルマデ次第二左右ノ力ヲ斉シク聊カ大指ヲ押ス事手ノ裏ノ可ナルモノトス

 この「柄握リノ事」は抜刀しようとしての右手による柄の握り方と、抜き付けに至る柄握りの心得を書き付けたのでしょう。
 まず、題の「柄握リノ事」について、宮本武蔵は五輪書水之巻で「太刀の持ちやうの事」を、兵法三十五箇條では「太刀取様之事」を書いています。
 居合での抜付けであっても、切先が鞘離れして抜刀した上で太刀を持って敵と戦う時でもこの「柄握リノ事」の基本は同じとしていいと思います。

   五輪書「太刀の持ちやうの事」:太刀のとりやうは、大指ひとさしを浮ける心もち、たけ高指しめずゆるまず、くすしゆび・小指をしむる心にして持つ也。手の内にはくつろぎのある事悪しし。敵をきるものなりとおもひて、太刀をとるべし。敵をきる時も、手のうちにかわりなく、手のすくまざるやうに持つべし。もし敵の太刀をはる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大ゆび・ひとさしゆびばかりを、少し替る心にして、とにも角にも、きるとおもひて、太刀をとるべし。ためしものなどきる時の手の内も、兵法にしてきる時の手のうちも、人をきるといふ手の内に替る事なし。惣而、太刀にても、手にても、いつくとゆふ事をきらふ。いつくは、しぬる手也。いつかざるは、いきる手也。能々心得べきもの也。

  兵法三十五箇條「太刀取様之事」:「太刀之取様は、大指人さし指を請て、たけたか中くすしゆびと、小指をしめ持候也。太刀にも手にも、生死と云事有り、搆る時、請る時、留る時などに、切る事をわすれて居付手、是れ死ぬると云也。生と云は、いつとなく、太刀も手も出合やすく、かたまらずして、切り能き様にやすらかなる是れ生る手と云也。手くびはからむ事なく、ひぢはのびすぎず、かゞみすぎず、うでの上筋弱く、下すぢ強く持也、能々吟味あるべし。

 柳生新陰流でも、太刀の握り方は同じで「太刀は中指、薬指、小指と均等に力を入れて握り、人差し指と親指の間をすぼめないで丸く握る、この丸くなった指の間を「龍の口」と呼び、特に重視する。(赤羽根龍夫著 江戸武士の身体操作 柳生新陰流を学ぶ より)

 山本俊太先生の「柄握リノ事」は、居合抜の手の内を言い現しているのですが、鞘離れの瞬間でしょう「聊か大指を押す事」とあります。
   誰から抜き付けの手の内を指導されたのか、師匠は曽田虎彦先生でしょうが、この様な事は曽田本には書かれていません。
   河野百錬先生がまだ大日本武徳會居合術教士であった頃に纏められた無雙直傳英信流居合道指導要綱に「抜き付けると同時に右拳はグット強く握り締め、(小指中指の中程でグット引き、拇指の基部にてグット押す心)左手は栗形の上ゆ・・」と書かれています。此の書き付けは活字印刷されていますが書かれた期日がありません。

 抜付けは、左手で鯉口を切りつつ、同時に右手を柄に掛け、刃を左に水平に傾けつつ、切先三寸まで抜いた瞬間右手の小指・薬指・中指を強く握り締め、左手を後方に引いて抜き付ければ、刀刃は水平に抜きだされて敵に斬り付けられます。
 稽古を充分積んだ上、抜き付けの部位が特定されるならば、刃を上向きの儘、鞘離れの瞬間に右手の握り締めと同時に角度を合わせれば狙った位置に抜き付けられます。
 敵が如何様に斬り込んで来るかは、状況次第なのです。然しそれも想定内なのです。
 

 
 

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2024年12月15日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 5注意

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
5注意

抜付ヶ=鯉口ト切先ト縁ノ切レザル様又上体前二俯向ケヌ事

正座ノ足引=納刀ノ場合後方二引ク足ハ十分腰二気力ヲ注ギテ角張ラズ「スーット」退ク極メテ静ナルヲ要ス

動静=肚デ抜キ肚デ切リ肚デ納メル 所謂気界丹田二満ツルヲ要トス


   この「注意」事項は、所作のポイントとして注意された、或いは自得したかの事を述べているのでしょう。
 昭和13年1938年発行の山内豊健・谷田佐一共著「圖解居合詳説」では「抜き付けは正確であり、圓滑であり、且つ神速でなければならぬ。先づ最初は正確を旨として之を體得し、次に圓滑に抜かれる様に稽古をし、而して最後に神速でなければならぬ。抜き付けは、肘や腰や手首で行ふのではない。氣剣體、心氣力の一致でなくては其の目的は達せられない。」とあります。

 抜き付けの動作に付いて詳細に書かれた解説書は幾つもありますが、河野百錬先生の無雙直傳英信流居合道昭和13年1938年発行が山本俊夫先生が読まれて居られるかもしれないと、ここに参考にさせていただきます。
 「正坐之部其1前:正面に向ひて端坐し、十分氣の充ちたる時、左手を静かに鯉口に掛け拇指にて鯉口を切り、右手の全指を軽く開きたる儘柄頭より軽く柄を撫でる心持にて静かに鍔元を縁金(約五分位ひ)を避けて握り、両膝を少し中央に寄せる様にし臀部をあげ、腹を前に出し両足先を爪立てつゝ刀刃を左四十五度位に傾むけて静かに抜きかけ、刀柄を左に押し運びつゝ弛み無く抜き出だし、剱先三寸の處(此の場合刀の位置は、鯉口より正面へ引きたる直線上よりも鍔元が外方へある様に注意し、抜き付けを大きくし、刀勢を強める事に留意する事)より急に膝を伸び切るや右足を前に踏み出すと同時に吾が胸の通り一文字に、敵の首(又は顔面)に抜き付け(此場合上體は心持ち前にかゝる気分とし右膝の内方角度は九十度を超えざる事)。」この抜き付けは、恐らく第18代穂岐山波雄先生直伝によるのだろうと思います。

 この無雙直傳英信流居合道に記載された抜き付けは、河野先生の大日本居合道図譜昭和18年1943年の正座の部第一本目前の抜き懸けでは「1、敵を確かに見定むる心持にて抜きかける。2、腰を上げるや直ちに両足爪立てる。(床に直角に以下同じ)3、刀は外に四十五度位に傾けて柄頭にて敵の中心を攻める心持にて徐々に抜く。4、腰に十分の気力をこめ腹をひかぬ事。5、すべて着眼(めつけ)を正しく敵を忘れぬ事。
 初心の間は剣先三寸迄極めて徐々に抜き出すも幾千の錬磨を重ねて次第に其の速度を早やめ、抜きかけの鍔元より釼先に至るに従ひ抜刀の速度を次第に早くするものとす。
 抜き付け(斬付け):右足を踏出すや敵の抜刀せんとする腕より其の顔面に(首とも胸とも想定可)真一文字に斬付ける。註1、右足先も脚も、膝も、真正面に敵に向ける。2、左右膝の内方角度は九十度より大きくならぬ事。3、剣先も、拳も、肱も、肩の高さより上らぬ事。4、上体を反らず真直に、胸を張らず、肩をおとし、左肘を張らず、顎をひき、腰を伸ばし気力を入れる。・・・」この抜き付けは、第19代福井春政先生の指導も有るかもしれませんが、自身の稽古で気が付かれ修正された事も有ろうかと思います。

 山本俊夫先生の無雙直傳長谷川英信流居合術極秘の執筆が昭和18年1943年の事なので、それ以前に出版された書籍として谷田先生、河野先生の抜き付けを引用させていただきました。但し山本先生が曽田先生から指導を請けられていたことから、下村派の抜き付けで抜き付けた締りは「半開半向」であったかも知れません。

 

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2024年12月14日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 4業と業の間につきて

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
4業と業の間につきて

一連に行ふは最も不可にして間を置く事但し此ノ間は時間的のものにも無之「一動の終りにグット確かなる力の締り」を必要とする也

 この事は、どこから引用されたのか、手持ちの剣術の教えからは見当たらない。「業と業の間」を意識すべきか、せざるべきか、其の儘鵜呑みにすると一瞬の隙を作ってしまいそうです。居合の形演武で心がけると不必要に締めてしまいそうですね。

注意
抜付ヶ=鯉口ト切先ト縁ノ切レザル様又上体前二俯向ケヌ事
正座ノ足引=納刀ノ場合後方二引ク足ハ十分腰二気力ヲ注ギテ角張ラズ「スーット」退ク極メテ静ナルヲ要ス
動静=肚デ抜キ肚デ切リ肚デ納メル 所謂気界丹田二満ツルヲ要トス


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2024年12月13日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 3五行ノ構

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
3五行ノ構

五行ノ構
木、八相ー陰の構ー監視の構也
火、上段ー天の構ー攻撃ノ構也
水、中段ー人の構ー(正眼)攻防の構也
金、脇構ー陽の構ー監視の構也
土、下段ー地の構ー防御の構也

 山本俊太先生の「五行ノ構」は、宮本武蔵の五輪書では水之巻に「五方之構の事」であれば「上段・中段・下段・右わき構・左わき構」の「五方の構」なので「八相」がありません。
 高野佐三郎先生の「剣道」大正4年1915年での「構方」では、以下の様に記されています。また、構へ方は此外尚ほ種々あれども右の五種を以て主要なるものとす、之を木(八相)、火(上段)、土(下段)、金(脇)、水(中段)の五行に配し五行の構へともいへり)とされています。纏めて見ますと以下の様になり、山本俊夫先生の資料に相当します。
火1上段の構(攻撃せんとする構・天)
水2中段の構(正眼自由・確実なる構・地)
土3下段の構(応接する構・人)
木4八相の構(監視する構・変化の構・陰)
金5脇構(監視する構・変化の構・陽)

 この構の「五行」は一刀流の天地万物の本源は「木火土金水」の教えに由来すると思われ、山本俊太先生の構の順番に相当します。

 

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2024年12月12日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 2宮本武蔵述

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
2宮本武蔵述

士道即死道  宮本武蔵氏述
大方武士の思ふ心をはかるに武士は只死するといふ道を嗜む事を覚ゆる程の儀也

山本俊夫先生の覚書です。
宮本武蔵の五輪書「地の巻」:大形武士の思ふ心をはかるに武士は只死ぬると云ふ道を嗜む事と覺ゆる程の儀也

 この武士の心を、山本俊夫先生は。心に刻み込む覚としてここに書き込んだ理由は何でしょう。昭和18年ですから太平洋戦争に突入し、自らも軍務につく事を思って書き込まれたのでしょうか。

空二就テ   宮本氏述
所有ヲ知ッテ所無ヲ知ル 是空也

宮本武蔵の五輪書「空の巻」:有所を知りて無所を知る是則空也」

 五輪書の「空の巻」で武蔵は「心意二つの心をみがき観見二つの眼をとぎ少しもくもりなくまよひの雲の晴れたる所こそ実の空と知るべき也」と締めています。

構 宮本武蔵氏述
構ゆると云ふ心は先手ヲ待つ心也人二仕懸けられて動ぜぬ心也機に臨み変に應じて無礙自在の働きをする位也
*
 五輪書の「風之巻」から引用され山本俊太先生が短くまとめられたようです。風之巻他に太刀の構を用ゐる事「太刀のかまへを専にする所、ひがごとなり・・かまゆるといふ心は、先手を待つ心也。能々工夫有るべし。兵法勝負の道人の構をうごかせ敵の心になき事をしかけ或るは敵をうろめかせ或はむかつかせ又はおびやかし、敵のまぎるゝ所の拍子の理をうけて勝事なれば、構と云後手の心を嫌ふ也、然る故に我道に有構無構といひて、構は有りて構は無きと云所也。」
 
 

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2024年12月11日 (水)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  7資料 1鍛刀精神

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
7資料 
1鍛刀精神

鍛刀精神 南海太郎朝尊説
天地は則ち我也我は則ち天地也と心神一而臍の辻より二寸下りて気界と云ふ此廓(ろう・くるわ)に気を集め迷を放てば則ち神也 此始而造る所の劍に非らずんば天下の禍は除くこと能はざる也 一心正しく動きて動かず物事に動顛(どうてん)せざる所を不動と名付けたる事を悟り心術は常に学び入る所に至っては学ぶ能はざる也

 山本俊夫先生の無雙直傳長谷川流居合術極秘には、先生が勉強された居合道に通ずる様々の覚書が記されています。南海太郎朝尊(なんかいたろうともたか・ちょうそん)は文化3年1806年土佐で生まれ慶応2年1866年没した、土佐の刀工で本名森岡友之助(友高ともいう)。刀工としてだけではなく刀剣研究も行い「刀剣五行論」「宝剣奇談」「新刀銘集録」などの書き物もある。この「鍛刀精神」は恐らく「刀剣五行論」の刀剣五行論下「造刀心気の法」からの抜粋です。どの様にこの鍛刀精神を山本俊太先生は居合術を身に付けるにあたって、ここに抜粋されて残されたのかは特に何も書かれていません。
 敵も我も天地そのものである、その心を一つにして気界丹田に集め、敵の動きに応じて打ち勝つ所謂「就色随色」、不動智を知り、常にその心構えと運剣を身に着けなければならない。刀を鍛える心も居合の心も相通ずるものなのでしょう。

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2024年12月10日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小立詰7移り

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小立詰7移り

山本俊夫先生業附口傳
大小立詰7本目乱曲=(伝書ナシ口傳アリ)敵後ヨリ組付キタルヲ我体ヲ落シテ前二投ル

曽田乕彦著述業附口伝書
大小立詰7
本目移り:(伝書二ナシ口伝)敵後ヨリ組付キタルヲ我体ヲ落シテ前二投ル
「後ロヨリ組付體ヲ下リ前へ投ケル 五藤正亮先生教示」

無雙直傳英信流居合術 乾
大小立詰7本目移り:(傳書になし、口傳)打太刀後より組付き来るを仕太刀體を落して前に投るなり。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小立詰7本目電光石火:如前後より来り組付を躰を下り相手の右の手をとり前に倒春

 大小立詰7本目は(伝書二ナシ口伝)と曽田先生の業附口伝書では書かれています。神傳流秘書の大小立詰7本目は「電光石火」と業呼称を付けた手附が書かれています。業名は異なっても業は同じものと判断できます。古伝は「電光石火」なので業名が「移り」では無いと云うだけで「伝書二ナシ口伝」では納得できません。細川家より借り出された伝書にも大小立詰7本目は「電光石火」として神傳流秘書同様の手附が書かれています。

 参考に大小詰・大小立詰の業の順番に従って
神傳流秘書と業附口伝書を対比しておきます
大小詰
 
神傳流秘書:1抱詰2骨防扱3柄留4小手留5胸留6右伏7左伏8山影詰
業附口伝書:1抱詰2骨防 3柄留4小手留5胸捕6右伏7左伏8山影詰

大小立詰
神傳流秘書:1袖摺返2骨防返3鍔打返4〆捕 5蜻蛉返6乱曲7電光石火
業附口伝書:1〆捕 2袖摺返3鍔打返4骨防返5蜻蜓返6乱曲7移り

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2024年12月 9日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小立詰6乱曲

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小立詰6乱曲

山本俊夫先生業附口傳
大小立詰6本目乱曲前後二立チて行ク也、敵後ヨリ鐺ヲ取リクル〵廻シ引ク、我其ノ時スグニ後向キテ左右何レナルヤヲ見合セ右手ナル時ハ我左足ニテ敵ノ右足ヲ又左手ナルトキハ我右足ニテ敵ノ左足ヲ掬ヒ中二入ル也。

曽田乕彦著述業附口伝書
大小立詰6
本目乱曲:前後二立チて行ク也、敵後ヨリ鐺ヲ取リクル〵廻シ引ク也、我其ノ時スグニ後向キテ左右何レナルヤヲ見合セ右手ナル時ハ我左足ニテ敵ノ右足ヲ又左手ナル時ハ我右足ニテ敵ノ左足ヲ掬ヒ中二入ル也。
「後より鐺ヲ取リクル〵廻シ引其時左右ヲ見合セ中二入ル 五藤正亮先生ノ教示」

無雙直傳英信流居合術 乾
大小立詰6本目乱曲:前後に立ちて行く。打太刀後より鐺を取りクルクル廻し引く、仕太刀その時直に後向きて左右何れなるやを見合せ右手なるときは仕太刀左足にて打太刀の右足を、又左手なるときは右足にて打太刀の左足を掬ひ中に入るなり。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小立詰6本目乱曲:如前後より来り鐺を取り頻り二ねじ廻し刀を抜かせじと春る時後ヘ見返り左の手か右の手にて取たるかを見定め 相手左の手ならば我も左尓て鯉口を押へ相手右ならば我も右尓て取る後ヘ引付んと春るを幸しさり中に入り倒春

 曽田先生の業附口伝書の6本目乱曲に比べると、古伝の6本目乱曲の手附は、細部にわたった所作が不十分な感じです。古伝に従って不十分な処は、自ら是と言った動作を工夫するのでしょう。その結果が業附口伝書の乱曲なのかもしれません。しかし、古伝の相手が我が鐺を取ってねじ回し刀ヲ抜かせない様にする時の所作が業附口伝と異なります。相手が左手ならば、我も左手で鯉口を押さえ、右手ならば右手で鯉口(柄では)を取るのです。相手が背中に我が刀を押し付ける時、其の儘相手に密着して押し倒す。そのあたりを更に業附口伝は工夫したとも云えます。
 状況次第で、如何様な変化を行えるかが、形に捉われない実戦的稽古なのでしょう。古伝の剣術はともすると「形だから」と言って変化業を危惧する傾向が強いものです。奉納演武であれば「やむなし」ですが、稽古はもっと突き詰めてするものでしょう。

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2024年12月 8日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小立詰5蜻蜓返

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小立詰5蜻蜓返

山本俊夫先生業附口傳
大小立詰5本目蜻蜓返=打ハ仕ノ後ヨリ仕ノ右手首ヲ後二引キ鐺を前二押ス直チ二右足ヲ以テ掬ヒ中二込ル鐺ヲ後二引キ右手首ヲ前二押ス時ハ左足ヲ以テ中二入ル也

曽田乕彦著述業附口伝書
大小立詰5
本目蜻蜓返:打ハ仕ノ後ヨリ仕ノ右手首ヲ後二引キ鐺ヲ前二押ス直チニ右足ヲ以テ掬ヒ中二入ル
「後ヨリ右ノ手首ヲオサヘ後ヘ引左手鐺ヲオサヘ前へオス時中二入ル 五藤正亮先生教示」

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小立詰5本目蜻蛉返:打太刀は仕太刀の後ろに立つ。打太刀、仕太刀の後より仕太刀の右手首を後ろに引き鐺を前に押す、仕太刀直ちに右足を以て掬ひ中に入るなり鐺を後に引き右手首を前に押すときは左足を以て中に入る。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小立詰5本目蜻蛉返:相手後より来り我が右の手を取り刀の鐺を取り背中に押付られたる時其侭後ヘしさり中に入る倒春

 古伝の5本目「蜻蛉返」と業附口伝書の5本目「蜻蜓返」とは文字違いがありますが、どちらも「とんぼ」でしょう。業は古伝の「後ヘしさり中に入る倒す」が業附口伝では「右足ヲ以テ掬ヒ中二入ル」と古伝より詳細に所作を固定しているようですが、中に入る目的が欠如しています。倒す危険を意識したとも思えますが、業手附は実戦でも通じる所作を明記して置くべきかと思います。

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2024年12月 7日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  18居合術備忘書1正座之部4後

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
18居合術備忘書
1正座之部
4後

要領右同、右脛中心左脛をスカセ刀ヲ抜キツヽ左廻リ二正面へ半回転シ左足出スト共二抜付ケ双手上段ヨリ打下シ血振デ右足引付ケ立チ左足ヲ退キ納刀シツヽ其ノ脛ヲツク。

古伝神傳流秘書大森流居合之事四本目「當刀」:左廻りに後ヘ振り向き左の足を踏み出し如前。




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無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小立詰4骨防返

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小立詰4骨防返

山本俊夫先生業附口傳
大小立詰4本目骨防返=互二対座スル打ハ仕ノ柄ヲ両手ニテトリ二来ル我ハ右手ニテ敵ノ両手ヲ越シテ柄頭ヲトッテ両手ニテ上二モギトル

曽田乕彦著述業附口伝書
大小立詰4
本目骨防返:互二對立スル也、打ハ仕ノ柄ヲ両手ニテトリ二来ル也、我ハ右手ニテ敵ノ両手ヲ越シテ柄頭ヲトッテ両手ニテ上二モギトル
「敵両手ニテ柄ヲ取ル時引廻シモグ 五藤正亮先生教示」

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小立詰4本目骨防返:互に對立す。打太刀、仕太刀の柄を両手にて捉りに来るを仕太刀右手にて打太刀の両手を越して柄頭をとって両手にて上に捥ぎ取るなり。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小立詰4本目〆捕:相懸り二両方より懸る時相手両手尓て我刀の柄を留我左の手尓て相手の脇つ保へ入れて両手を〆引き上げ如何様尓も投る也
「大小立詰2本目骨防返:相懸り二懸りて相手我刀の柄を留めたる時我右の手尓て柄頭を取り振りもぐ也」

 古伝の大小立詰4本目は「〆捕」ですが業附口伝書は4本目は「骨防返」となっています。伝書が伝わらずに口伝口授による谷村派の手附の事なのでしょう。
 業附っ口伝書では「4本目骨防返」は相手が「柄を両手にて捉りに来るを」ですが、古伝は相手我「刀の柄を留めたる時」です。文章表現をどの様に解釈すべきか、それによって我の所作は異なります。

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2024年12月 6日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小立詰3鍔打返

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小立詰3鍔打返

山本俊夫先生業附口傳
大小立詰3本目鍔打返=互二対立スル打ハ仕ノ抜カントスル右手首ヲ取ル仕ハ右手ヲ放スト同時二左手二持テル鍔ニテ打ノ手首ヲ打ツ

曽田乕彦著述業附口伝書
大小立詰3
本目鍔打返:互二對立スル也、打ハ仕ノ抜カントスル右手首ヲトル也、仕ハ右手ヲ放スト同時二左手二持テル鍔ニテ打ノ手首ヲ打ツ
「抜カントスル時其手首ヲ押ヘル左手ニテ敵ノ手首ヲ打ツ 五藤正亮先生の教示」

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小立詰3本目鍔打返:互に對立す。打太刀は仕太刀の抜かんとする右手首をとる、仕太刀は右手を放すと同時に左手に持てる鍔にて打太刀の手首を打つなり。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小立詰3本目鍔打返:相懸り二懸り我刀を抜かむと春る其の手を留られたる時柄を放し手を打もぐ

 大小立詰3本目は古伝も業附口伝も「鍔打返」で業の内容も同じと読み取れます。古伝は「抜かんとする其の手」ですから塚に掛けた右手です。其の右手から「柄を放し」左手で持つ「鍔で打もぐ「鍔打返の業呼称」より認識できます」。業附口伝が古伝神傳流秘書と同じ所作を要求しているのは珍しい。

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2024年12月 5日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小立詰2袖摺返

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小立詰2袖摺返

山本俊夫先生業附口傳
大小立詰2本目袖摺返打ハ横ヨリ組付仕肱を張リテ一當スルト同時二スグニ打ノ刀ヲ足二スケテ後二投ル
(五藤先生ハ一當シテ中二入リ刀ヲ足二スケ後へ投ルト記セリ)左右共同前

曽田乕彦著述業附口伝書
大小立詰2
本目袖摺返打ハ横ヨリ組ミ付、仕肱を張リテ一當スルト同時二スグニ打ノ刀ヲ足二スケテ後二投ル也。
(五藤先生ハ一當シテ中二入リ刀ヲ足二スケテ後へ投ルト記セリ)左右共同前。
(横合ヨリ組付ヒジヲ張リ一當シテ中二入リ刀ヲ足二スケテ後ヘ投ケル左右共同前 五藤正亮先生教示)

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小立詰2本目袖摺返:打太刀は仕太刀の横に立つ。打太刀横より仕太刀に組みつく、仕太刀肘を張りて一當てすると同時に直に打太刀の刀を足にすけて後に投るなり(五藤先生は「一と當てして中に入り刀を足にすけ後ろへ投げる」と記せり)左右共同前。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小立詰2本目骨防返:相懸り二懸りて相手我が刀の柄を留めたる時我右の手尓て柄頭を取り振りもぐ也
「1本目袖摺返:我か立って居る處へ相手右脇より来り我か刀の柄と鐺を取り抜かせしと春る時其侭踏ミ之さり(しさり)柄を相手の左の足のかゞみ二懸け中二入り 又我が右より来り組付をひぢを張り躰を下り中に入る」

 この大小立詰2本目も曽田先生の業附口伝書では「2本目袖摺返」であり、古伝神傳流秘書では「骨防返」で業の動作は異なります。古伝の「1本目袖摺返」は相手が我が「刀の柄と鐺を取り抜かせじとする」そこで「踏みしさり」「柄を相手の左足のかゞみに懸け中に入り」そこまでですが実戦では投げ倒のでしょう。或いは「右より来り組付を肘を張って中に入る」そこで柄を相手の足に掛け倒すのでしょう。
 業附口伝の「打ノ刀ヲ足二スケ後二投ゲル」は不自然です。五藤先生の教示は其れを正している様です。このような業は幾へでも変化業が研究できるものですから「あ~だ、こ~だ」やって見るのは良いとしても、引き継ぐ形を変えてしまうとあらぬ方に行ってしまうでしょう。

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2024年12月 4日 (水)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小立詰1〆捕

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
4大小立詰1〆捕

山本俊夫先生業附口傳
大小立詰1本目〆捕=互二対立スル打ハ両手ニテ仕ノ柄ヲ握ルヲ仕ハ左手ヲ以テ打ノ左手首ヲ握ル更二此ノ時スグニ仕ハ右手ニテ打ノ両腕ヲ締メ込ミ我体ヲ台二シテ之ヲ極メル

曽田乕彦著述業附口伝書
大小立詰1
本目〆捕互二對立スル也 打ハ両手ニテ仕ノ柄ヲ握ルヲ仕ハ左手ヲ以テ打ノ左手首ヲ握ル也 更二此ノ時スグニ仕ハ右手ニテ打ノ両腕ヲ締メ込ミ我体ヲ台二シテ之ヲ極メル也
(敵両手ニテ柄ヲ握る左手ニテ敵ノ左ノ手留メ押へ右手ニテ敵ノ両肱折ヲ押へ躰を込ミ〆付ル 五藤正亮先生ノ教示)

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小立詰1本目〆捕:打太刀、仕太刀互に對立す。
打太刀は両手にて仕太刀の柄を握るを仕太刀は左手を以て打太刀の左手首を握る、更にこのとき直に仕太刀は右手にて打太刀の両腕を締め込み己が體を台にして之れを極めるなり。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小立詰1本目袖摺返:我か立って居る處へ相手右脇より来り我か刀の柄と鐺を取り抜かせしと春る時其侭踏ミ之さり(しさり)柄を相手の左の足のかゞみ二懸け中二入り 又我右より来り組付をひぢを張り躰を下り中に入る
「大小立詰4本目〆捕:相懸二両方より懸る時相手両手尓て我刀の柄を留我左の手尓て相手の脇坪へ入れて両手を〆引上如可様尓も投る也」

 古伝神傳流秘書の大小立詰1本目は「袖摺返」で業違いで、曽田先生の業附口伝書1本目は「〆捕」でこれは古伝の4本目に「〆捕」は存在します。古伝の五本目「袖摺返」の業名は業附口伝書では2本目に「袖摺返」の業名が存在します。この順番の移動は、江戸末期から明治に、正しい古伝の内容が細川家に存在しながら表に出る事無く、下村派が休眠状態に入り、谷村派は伝書を持たず口伝口授だったが之も教えが曖昧だったりして、結局曽田先生による業附口伝書が昭和になって表に出たためと思います。

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2024年12月 3日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小詰8山影詰

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小詰8山影

山本俊夫先生業附口傳
大小詰8本目山影詰=打ハ仕ノ後ロ二坐ス後ヨリ組付其ノ時仕ハ頭ヲ敵ノ顔面二当テ敵ヒルム隙キニ我が刀ヲ抜キテ打ノ組ミタル手ヲ切ル也(五藤先生ハ一当シテ仰向二ソリ返ルト記セリ)

曽田乕彦著述業附口伝書
大小詰8
本山影詰:打ハ仕ノ後ロ二坐ス、後ヨリ組ミ付也、其時仕ハ頭ヲ敵ノ顔面二當テ敵ヒルム隙キニ我刀ヲ抜キテ打ノ組ミタル手ヲ切
(五藤先生は一當シテ仰向二ソリカエルト記セリ)
「五藤正亮先生の教示8本目山影詰:後ロヨリ組付頭ニテ一当テシテ仰向二ソリカへル」

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小詰8本目山影詰:打太刀は仕太刀の後ろに坐す。
打太刀、仕太刀の後より組みつく、其の時仕太刀は頭を打太刀の顔面に當て打太刀の怯む隙に己が刀を抜きて打太刀の組みたる手を切るなり。
(五藤先生は「一と當てして仰向に反り返へる」と記せり)。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小詰8本目山影詰:是は後より相手組を刀を抜き懸其手を切ると一拍子二我も共に後ヘ倒るゝなり

 古伝は「相手の手を切ると一拍子に我も共に後ヘ倒るゝなり」ですが、業附口伝の教えは「組たる手を切る」で「五藤先生の教示では「反り返へる」で倒れるまでの事はしていません。これは実戦では古伝の如く実施しても、稽古ではそこまでやるなという事かもしれません。

 

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2024年12月 2日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小詰7左伏

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小詰7左伏

山本俊夫先生業附口傳
大小詰7本目左伏=右伏ノ反対立業也
「6本目右伏=打ハ仕ノ右側二並ビテ坐ス打左手ニテ仕ノ胸ヲトル、仕スグニ其ノ腕を巻キ込ミテ逆手ヲトリ前二伏セル

曽田乕彦著述業附口伝書
大小詰7
本左伏:右伏ノ反對業也
「6本目右伏:打ハ右側二並ヒテ坐ス、打左手ニテ仕ノ胸ヲトル、仕ハスグニ其ノ腕ヲ巻キ込ミて逆手ヲトリ前二伏セル也。」
「五藤正亮先生教示の左伏:左脇二坐ス右手胸ヲトリ来ル其手ヲ押へ前へ伏セル

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小詰7本目左伏:右伏の反對の業なり
「6本目右伏:打太刀は仕太刀の右側に並びて坐す。打太刀左手にて仕太刀の胸をとる、仕太刀は直にその腕を巻き込みて逆手をとり前に伏せるなり。」

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小詰7本目左伏:是は左の手を取る也 事右伏に同左右の違計也 尤も抜かんと春る手を留められたる時は柄を放し身を開きて脇つ保へ當り又留られたる手を此方より取引倒春事も有也
「6本目右伏:我右の方二相手並ひ坐し柄を取られたる時 直に我右の手を向の首筋へ後より廻し胸を取り押伏せんと春るに相手いやと春くはるを幸に柄を足に懸て後ヘ投倒春 又抜かんと春る手を留められたる時も右の通り二取倒春

 古伝は7本目左伏は「・・事右伏に同左右の違計也」として業附口伝書も「右伏の反対の業」としているだけです。古伝の右伏を左伏にして左右入れ替えて見ます。
「7本目左伏:我左の方二相手並び座し柄を取られたる時 直に我左の手を向の首筋へ後より廻し胸を取り押伏せんと春るに相手いやと春くばるを幸に柄を足に懸て後ヘ投倒春 尤も抜かんと春る手を留められたる時は柄を放し身を開きて脇坪へ當り 又留られたる手を此方より取引倒春事も有也
 業附口伝書の7本目左伏は五藤正亮先生の教示も古伝の赤字部分の手附と同じです。

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2024年12月 1日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小詰6右伏

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小詰6右伏

山本俊夫先生業附口傳
大小詰6本目右伏=打ハ仕ノ右側二並ビテ坐ス打左手ニテ仕ノ胸ヲトル、仕スグニ其ノ腕を巻キ込ミテ逆手ヲトリ前二伏セル

曽田乕彦著述業附口伝書
大小詰6
本右伏:打ハ右側二並ヒテ坐ス、打左手ニテ仕ノ胸ヲトル、仕ハスグニ其ノ腕ヲ巻キ込ミて逆手ヲトリ前二伏セル也。
「五藤正亮先生教示の右伏:右脇二坐ス左手二手胸ヲトリ来ル其手ヲ押へ前へ伏セル」

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小詰6本目右伏:打太刀は仕太刀の右側に並びて坐す。打太刀左手にて仕太刀の胸をとる、仕太刀は直にその腕を巻き込みて逆手をとり前に伏せるなり。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小詰6本目右伏:我右の方二相手並ひ坐し柄を取られたる時直に我右の手を向の首筋へ後より廻し胸を取り押伏せんと春る相手いやと春くはるを幸に柄を足に懸て後ヘ投倒春 又抜かんと春る手を留められたる時も右の通り二取倒春

 古伝の「右伏」は右側に並んで座す相手が、我が柄を取るので、右手を相手の頸筋に廻し胸を取り、押し伏せると、相手が「すくむ、硬直する」ので柄を足に掛けて後ヘ投げ倒します。業附口伝では左手で我が胸を取るので、直ぐにその腕を右手で巻き込んで逆手に取って前に伏し詰める。
 古伝との業の違いは明瞭ですが、これも変化業としては有りうるでしょう。然し何故業が変わってしまったのか疑問です。

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2024年11月30日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小詰5胸捕

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小詰5胸捕

山本俊夫先生業附口傳
大小詰5本目胸留=互に対座打ハ仕ノ胸ヲ捕ヘテ突ク仕スグニ右手ニテ支ヘ左手二持タル柄頭ヲ敵ノ脇坪二当テル又胸ヲ捕りて引ク時ハスグニ刀ヲ抜キテ突ク

曽田乕彦著述業附口伝書
大小詰5
胸捕:互二對坐、打ハ仕ノ胸ヲ捕へて突ク、仕スグニ右手ニテ支エ左手二持タル柄頭ヲ敵ノ脇坪二當テル也、又胸ヲ捕リテ引ク時ハスグニ刀ヲ抜キテ突ク也。
「五藤正亮先生教示:向ヲテ居ル右手ニテ胸ヲトリ突ク時ハ其手ヲヲサヘ左手ニテ脇坪へ當ル引ク時ハ抜キハナチ刺ス」

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小詰5本目胸捕:互に對坐す。打太刀は仕太刀の胸を捕へて突く、仕太刀直に右手にて支ヘ左手に持ちたる柄頭を打太刀脇坪に當てるなり。又胸を捕りて引く時は直に刀を抜きて突くなり。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小詰5本目胸留:詰合たる時相手我胸を取り突倒さんと春る時、我右の手尓て其手を取り左の足を後へ引柄頭尓て相手の脇へ當る、又引く時は随而抜突く

 5本目胸留の古伝は、胸を捕って来た相手の手を右手で取り、左足を退いて、柄頭で相手の脇坪に打ち当てる。相手が引けば抜き放って突き込むのです。
 業附口伝も似てはいますが打が胸を取って突き倒そうとするので、我は右手で支へ左手で柄頭を打の脇坪に突き当てるのです。相手が引く時は抜き放って突く処は同じ様です。これも、変化業として両方稽古して置けばいいと思います。
 

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2024年11月29日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小詰4小手留

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小詰4小手留

山本俊夫先生業附口傳
大小詰4
本目小手留=打ハ仕ノ左側二並ビテ坐ス打ノ抜カンチスル右手ヲ仕向キ直リテ右手ニテ捕へ引寄セルト同時二左手ニテ柄頭ヲ敵ノ脇坪二当テル也

曽田乕彦著述業附口伝書
大小詰4
本小手留:打ハ仕ノ左側二並ヒテ坐ス打ノ抜カントスル右手ヲ仕向キ直リて右手ニテ捕へ引キ寄セルト同時二左手ニテ柄頭ヲ敵ノ脇坪二當テル也
(五藤正亮先生ノ教示:左脇二座ス抜カントスル右手ヲ把ル其手ヲヲサヘ左手ニテ脇坪へ柄頭ヲ以て當テル)

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小詰4本目小手留:打太刀は仕太刀の左側に並びて坐す。打太刀の抜かんとする右手を仕太刀向き直りて右手にて捕へ引き寄すると同時に左手にて柄頭を打太刀の脇坪に當てるなり。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小詰4本目小手留:立合の鍔打返に同し 故に此処尓てハ不記
 「大小立詰3本目鍔打返:相懸り二懸り我刀を抜かむと春る其の手を留られたる時 柄を放し手を打もぐ也」

 古伝の大小詰4本目小手留は、大小立詰3本目鍔打返と同じとされています。ところが曽田先生の業附き口伝書では、その事は触れず、古殿と異なる、仕打の攻防に変わってしまっています。まず相対する古伝に対し、打は仕の左側に座すので、座業であり、双方向かい合うのでもないのです。これも折角の事ですから両方稽古して置きます。

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2024年11月28日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小詰3柄留

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 3大小詰3柄留

山本俊夫先生業附口傳
大小詰3本目柄留打ハ仕ノ右脇二並ビテ坐ス仕ノ抜カントスル柄ヲ留ム仕ハ右手ノ(ヲ)頸二巻キ敵ヲ前二倒サントス打倒サレマジト後二返ル其ノ時スグ二仕ハ打ノ体ノ返リテ前足浮キタル下ヨリ(膝)柄ヲカケテ後ヘ倒ス力ヲ添フル也

曽田乕彦著述業附口伝書
大小詰3
本目柄留:打ハ仕ノ右側二並ヒテ坐ス、仕ノ抜カントスル柄ヲ留ム、仕ハ右手ヲ頸二巻キ敵ヲ前二倒サントス、打倒サレマジト後二反ル、其ノ時スグ二仕ハ打ノ体ノ反リテ前足ノ浮タル下ヨリ(膝)柄ヲカケテ後へ倒ス力ヲ添フル也。
(五藤先生の教示:右向二座ス抜カントスル柄ヲトル我レ右手尓テ首ヲマキ前へ押ス敵後トへソル時後へ倒ス 其時柄ヲ足へカケ倒ス也)

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小詰3本目柄留:打太刀は仕太刀の右側に並びて坐す。仕太刀の抜かんとする柄を留む、仕太刀は右手を頸に巻き打太刀を前に倒さんとす、打太刀倒されまじと後に反る、その時直に仕太刀は打太刀の體の反りて前足の浮きたる下より(膝)柄ヲかけて後ろへ倒す力を添ふるなり。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小詰3本目柄留:抱詰の通り両の手尓て柄を取り下へ押付られたる時向のわきの辺りへ拳尓て當扨我右の足尓て相手の手を踏み柄をもぐ 常の稽古尓は右の足を押膝尓てこぜもぐ
 「1本目抱詰:楽々居合膝二詰合たる時相手両の手尓て我刀の柄を留る時我両の手を相手の両のひぢ二懸けて躰を浮上り引其侭左の後の方へ投捨る」

 大小詰3本目柄留の古伝は「楽々居合膝に詰合たる時」ですが、曽田先生による「業附口伝書」では「打ハ仕ノ右側二並ヒテ坐ス」と変えられています。せっかくですから、両方稽古して置けば良い事ですが、江戸末期から明治30年程まで、消え失せそうになっていた土佐の居合ですから、古伝神傳流秘書が公開されていなかったためか、先輩からの口伝口授の為せることかもしれません。然しその流の基本技が捻じ曲げられるのはその真髄を求める時には困りものです。

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2024年11月27日 (水)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小詰2骨防

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小詰2骨防

山本俊夫先生業附口傳
大小詰2
本目骨防=互に対座 打ハ両手ニテ仕ノ柄ヲ握ル仕ハ右拳ヲ顔二アテ其ノヒルムトキ二乗ジ右足ヲ柄越二マタギ右足内側ヨリ右手ヲ柄に添へ右足ニテ敵ノ両手ヲ押払フト同時二柄ヲ防ギ取ルコノ時敵ハ我右脇へ匍ヒ倒ル

曽田乕彦著述業附口伝書大小詰2本目骨防互に対座 打ハ両手ニテ仕ノ柄ヲ握ル仕ハ右拳ヲ顔二アテ其ノヒルムトキ二乗ジ右足ヲ柄越二マタギ右足内側ヨリ右手ヲ柄に添へ右足ニテ敵ノ両手ヲ押払フト同時二柄ヲ防取ル此ノ時敵ハ我右脇へ匍ヒ倒ル
(五藤先生の教示:向フテ居ル両手ニテ柄ヲ押シ附る時直に右手ニテ面へ當テ其虚二乗リ右足ヲフミ込ミ柄ヘ手ヲカケモグ 曽田メモ)

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小詰2本目骨防:打太刀、仕太刀互に對坐す。打太刀は両手にて仕太刀の柄を握る、仕太刀は右拳を顔に當てその怯むときに乗じ右足を柄越に跨ぎ右足内側より右手を柄に添へ右足右足にて打太刀の両手を押払ふと同時に柄を防ぎ取るなり、この時打太刀は仕太刀の右脇へ匍ひ倒る

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小詰2本目骨防扱(ホネモギ扱):立合骨防返に同し故常二なし
「大小立詰2本目骨防返:相懸り二懸りて相手我刀の柄を留めたる時我右の手にて柄頭を取り振りもぐ也」

 古伝の大小詰2本目骨防扱は、古伝の大小立詰2本目骨防返と同じとされています。「相手我刀の柄を留めたる時、我右の手にて柄頭を取り振りもぐ」至極自然な防御の所作を語っています。「我が柄頭を持つや、右足を踏み込み敵の手を右足で押し払い、相手を拂い倒し」てはいません。相手の状況次第での変化は当然でしょうが、まず敵の手を柄から放させることがこの業の狙いでしょう。放させてしまえば柄頭で敵の人中を突き打つなり出来るでしょうし、敵が引くならば抜打ちに切る事も出来るでしょう。
 古伝の教えがシンプルであれば、幾つもの追加の仕草が時の流れと共に加えられるのも理解できますが、何が目的なのかが薄れてしまうはずです。

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2024年11月26日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 3大小詰1抱詰

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
3大小詰1抱詰

山本俊夫先生業附口傳大小詰1本目抱詰=互二対座 打ハ仕ノ柄ヲ両手ニテ取ラントス スグニ仕ハ両手ニテ打ノ二ノ腕ヲ下ヨリ差シ上グル様二掴ミ我左脇二引倒ス也

曽田乕彦著述業附口伝書大小詰1本目抱詰:互二對坐、打ハ仕ノ柄ヲ両手ニテ取ラントス、スグ二仕ハ両手ニテ打ノ二ノ腕ヲ下ヨリ差シ上グル様二掴ミ我ガ左脇二引キ倒ス也
(五藤先生の教示:向フテ居ル敵我刀ノ柄ヲ両手ニテ押付ル時敵ノ両肱へ手ヲカケウスミ上ゲ左へ振リ倒ス 曽田メモ)

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
大小詰1本目抱詰:(以下解説ハ福井春政先生所蔵に係る文献の謄寫なり)打太刀、仕太刀互に對坐す。打太刀は仕太刀の柄を両手にて捉らんとす。仕太刀は直に両手にて打太刀の二の腕を下より差し上ぐる様に掴み己が左脇に引き倒す。

大江正路先生の英信流居合の型には大小詰は無い。

神傳流秘書
大小詰1本目抱詰:(是ハ業二あらさる故尓前後もなく変化極りなし始終詰合組居合膝二坐春 気のり如何様とも春へし先大むね此順二春る)重信流 
楽々居合膝二詰合たる時相手両の手尓て我刀の柄を留る時我両の手を相手の両ひぢに懸けて躰を浮上り引て其侭左の後の方へ投捨る

 業附口伝によると、「相手が我が柄両手で取らんとす」です、古伝は「我が刀の柄を留る時」であり、曽田先生のメモ書きでは「刀の柄を両手にて押付る時」に応戦が始まります。このわずかな動作の違いは、相手の「二の腕を下より差し上げる様に取る」のか「我が両の手を相手の肱に懸け躰を浮き上がる様に(ウスミ上げる)上げるや、左後方に投げ捨てる」のか文章表現は微妙に異なります。古伝の所作を身に付けることから稽古すべきなのでしょう。

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2024年11月25日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 2詰合之位の11討込

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
2詰合之位の11討込

山本俊夫先生業附口傳詰合之位11本目討込=(傳書ナシ)(留ノ打也)双方眞向二打込ミ物打ヲ合ハス

曽田乕彦著述業附口伝
詰合之位11本目討込
(伝書二ナシ)(留ノ打ナリ)双方真向二打チ込ミ物打ヲ合ハス也

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
詰合之位11本目打込:(傳書にナシ、留の打なり)仕太刀、打太刀共に中段 互に進み間合にて眞向に打込み物打を合せて双方青眼となる。

大江正路先生の英信流居合の型には詰合之位は無い。

神傳流秘書
詰合11本目ナシ:なし

「傳書になし」とは古伝神傳流秘書には詰合の「11本目討込」の業は無いという事でしょう。確かに11本目は神傳流秘書には有りません。10本目「霞劍」:眼関落の如く打合せたる時相手引かんとするを裏よりはり込ミ真甲へ打込ミ勝亦打込ま須して冠りて跡を勝も有り。
 霞剣は「業附口伝の11本目討込」を稽古は「合し打」と「張り打」の連続業で充分稽古しなさいと、既に業手附は示してあるのです。「張打」はともかく「合し打ち」は、理屈で解っても容易に身に付けられない極意業である事を示唆していると思えます。
 

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2024年11月24日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 2詰合之位の10霞劍

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
2詰合之位の10霞劍

山本俊夫先生業附口傳詰合之位10本目霞劍=(相中段)是モ互二立合敵待チカケテモ不苦 互二青眼ノ侭スカ〵ト行 場合ニテ互二拝ミ打二討也 互二太刀ノ物打チアタリ合タル所ヲ(中段二直ル) 我其ノ侭左ノ足ヲ踏ミ込ミ裏ヨリ払いヒカムリ勝也 五歩引キ相中段二次二移ル也

曽田乕彦著述業附口伝
詰合之位9本目水月刀
(相中段)是モ互二立合也 敵待チカケテモ不苦 互二青眼ノ侭スカ〵ト行 場合ニテ互二拝ミ打二討也 互二太刀ノ物打チノアタリ合タル所ヲ(中段二直ル) 我其ノ侭左ノ足ヲ踏ミ込ミ裏ヨリ払いヒカムリ勝也 五歩退リ相中段二次二移ル也

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
詰合之位10本目霞劍:仕太刀、打太刀共に立姿勢、相中段(打太刀は後退せざるも可なり)互に青眼のまゝ(但し劍尖を幾分高目に且つ腕を稍々前方に伸ばす心地にて)スカスカと進み間合にて双方拝み撃に物打のあたりにて刀を合せ中段に直るところを仕太刀素早く左足を一歩進め瞬間裏より打太刀の刀を拂ひ直に上段に冠り勝つなり。刀を合せ五歩退り(但し次の「留の打」を演ずる場合は納刀はせず)相中段にて次に移る。

大江正路先生の英信流居合の型には詰合之位は無い。

神傳流秘書
詰合10本目霞劍:眼関落しの如く打合せたる時相手引かんとする裏よりはり込ミ真甲へ打込ミ勝 亦打込ま須して冠りて跡を勝も有り
 眼関落(柄砕):両方高山後ハ「弛し木刀」二同し
 弛し木刀(はづし木刀:太刀打之位獨妙剱の事ならむ):相懸也 打太刀高山遣方切先を下げ前二構へ行 場合尓て上へ冠り互に打合 尤打太刀をつく心持有 柄を面へかへし突込ミ勝

 古伝の手附は「眼関落しの如く打ち合わせたる時」という事で、太刀打之事7本目「獨妙劍」まで戻ります。古伝の言う「獨妙劍」の打太刀が上段から、仕太刀の頭上に斬り下し、仕太刀は下段から上段に後拍子で振り冠って、真向に打ち下す。
これは双方上段からの「合し打ち」により、仕太刀が相手の太刀を打外して勝負がつく所ですが、双方の間の中心で打ち止めてしまったイメージでしょう。これは、稽古業としてここで勝負付けず、相打にもさせず、双方打ち止めにして、打太刀が引かんとするのを察するや、踏込んで裏よりはり込んで上段となり真甲へ打ち込み勝事にしたのでしょう。相手の刀を張って打ち勝つ事を学ばせるには、「合し打ち」が泣いてしまいます。業附口伝による詰合の教えも同様で、形稽古では聊か面白くない「霞劍」です。このもやもやを吹き飛ばしてくれるのが、業附口伝では最後の「11本目討込」になる筈ですが、扨てどうでしょう。

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2024年11月23日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 2詰合之位の9水月刀

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
2詰合之位の9水月刀

山本俊夫先生業附口傳詰合之位9本目水月刀=(相上段)是モ同ジク立合テ真向へカムリ相寄リテモ敵待カケテモ不苦 我真向へカムリテスカ〵ト行場合マデ太刀ノ切尖ヲ敵ノ眉間二突キ込ム様二突ク其ノ時敵スグ二八相二払ふ其ノ時我スグ二カムリ敵ノ面へ切込ミ勝也 互二五歩退リ血振納刀以下同じ

曽田乕彦著述業附口伝
詰合之位9本目水月刀
(相上段)是モ同シク立合テ真向へカムリ相掛リテモ敵待カケテモ不苦 我真向へカムリテスカ〵ト行場合ニテ太刀ノ切尖ヲ敵ノ眉間二突キ込ム様二突ク也 其ノ時敵スグ二八相二拂ふ 其時我スグ二カムリ敵ノ面へ切込ミ勝也 互二五歩退リ血振納刀以下同シ

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
詰合之位9本目水月刀:(仕太刀打太刀立姿勢、相上段 此場合も打太刀は後退せず原位に留るも可なり)立合て右上段に冠り相掛りにて進み中途仕太刀は幾分刀を下げ間合に至りて打太刀の眉間に突込む様に刺突す、打太刀之れを八相に拂ふ。仕太刀隙かさず左の脚を稍々左方に踏み體を軽く左に轉はして振冠り、右足を一歩踏み込み打太刀の面を打つ。(此場合體を左に開き上段に振冠りたるまゝ残心を示す様式もあり)刀を合せ双方五歩退り血振納刀。

大江正路先生の英信流居合の型には詰合之位は無い。

神傳流秘書
詰合9本目水月:相手高山二かまへ待所へ我も高山二かまへ行て相手の面に突付る 相手拂ふを躰を替し打込

 古伝は、業呼称は「水月」です。何時の時代の誰が「刀」を付け加えたのか疑問です。
 古伝の業は仕太刀が上段から切先を下げて相手の面に突き付けるや、相手が払って来るので體を躱して打ち込んでいます。此の場合敵が面を突いて来る仕太刀の刀を拂って来るならば、業附口伝の様に振り冠って外すや打ち込めば良いでしょう。
 相手が我が左小手を拂って来るとか、右小手に打ち込んで来るとかもあり得るものです。刀で刀を撃ち払うなど真剣ではやるべきでは無いでしょう。我も刺突の際、相手が隙と見て打ち込んで来る様な誘いも身に付けるものでしょう。相手の打ち込みを外した時が斬った時。
 どうしても、相手が我が刀を打ち払うならば、当たり拍子に刀を廻して右から打ち込むなどもできます。古伝は語らずに語ってくれていますが、形に拘る現代居合の詰合では疑問だらけです。その癖「形」に拘っているのに古伝から離れてしまう不思議です。

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2024年11月22日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 2詰合之位の8眼関落

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
2詰合之位の8眼関落

山本俊夫先生業附口傳詰合之位8本目眼関落=(相上段)是モ互二立チ敵モ我モ真向へカムリ相寄リテスカ〵ト行キ場合ニテ互二拝ミ打二討其ノ時敵ノ拳ト我拳ト行合其ノ時スグ二柄頭ヲ敵ノ手先ヨリ顔ヘハネ上ゲ込勝也(右足ドントヌスミ急二左足ヲ踏ミ込ム)互二五歩退ク納刀以下同ジ

曽田乕彦著述業附口伝
詰合之位8本目眼関落
(相上段)是モ互二立チ敵モ我モ真向へカムリ相掛リ二テスカリテスカ〵ト行キ場合ニテ互二拝ミ打二討也 其ノ時敵ノ拳ト我拳ト行合也 其時スグ二柄頭ヲ敵ノ手元下ヨリ顔ヘハネ込勝也(右足ドントフミ急二左足ヲ踏ミ込ム也)互二五歩退リ納刀以下同ジ

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
詰合之位8本目眼関落:(仕太刀打太刀立姿勢、相上段)互に立合ひて眞向に振冠り相掛りにてスカスカと進み間合(此場合は幾分間を近くす)にて互にに打つ(物打あたりにて)續いて双方の拳が行き合ふ瞬間、一時鍔元にて競り合ひ仕太刀は直に右足にて強く一度大地を踏み付け急に左足を打太刀の右側に一歩稍々深目に踏込みざま、打太刀の手元下より顔ヘ撥ね込み人中に柄當を加ふ。刀を合せ互に五歩退き血振、納刀をなす。

大江正路先生の英信流居合の型には詰合之位は無い。

神傳流秘書
詰合8本目柄砕:(眼関落ノコトナラン)両方高山後ハ弛し木刀に同じ(はづし木刀:太刀打之位独妙剱の事ならむ)
「太刀打之事7本目独妙劍:相懸也打太刀高山遣方切先を下げ前に構へ行場合尓て上へ冠り互に打合尤打太刀をつく心持有 柄を面へかへし突込勝」

 古伝の「柄砕」の形ばかりを明治以降は指導されて来たようで、古伝の太刀打之事7本目独妙剣の心持は忘れ去られている様です。相上段での打合であれば、新陰流の「合し打」で勝負は付けられる。また仕太刀下段ならば、打太刀の斬り下す右小手を下から切り上げ勝。などを教えてくれる立合です。演武会で華麗な演武の中でも迫力のある演武が身に付けられると思います。

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2024年11月21日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 2詰合之位の7燕返

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
2詰合之位の7燕返

山本俊夫先生業附口傳
詰合之位7本目燕返=仕立納刀 左打上段) 是ハ敵モ我モ立ツ敵ハ刀ヲ抜テカムル我ハ鞘二納メテ相ヨリテ行ク也場合ニテ敵我面へ打込ム 我其ノ時右手片手ニテ抜キ頭上ニテ請ケスグ二左手ヲ柄二添へ打チ込ム 敵又表ヨリ八相二払フ 我又スグニカムリテ打込ム敵又スグニ裏ヨリ八相二払フ 我又スグニカムリテ敵ノ面へ打込(左足ヲ一足踏ミ込)其ノ時敵後へ引 我空ヲ打ツ 其ノ時我切尖ヲ下ゲ待、敵踏ミ込ミテ我真向へ打込我其ノ時左足ヨリ一足退リ空ヲ打タセ同時二カムリテ一足踏込ミ敵ノ面ヘ勝也 互二五歩退リ納刀後再ヒ刀ヲ抜キ相上段ニテ次二移ル。

曽田乕彦著述業附口伝
詰合之位7本目燕返
:仕立納打上段 是ハ敵モ我モ立ツ也、敵ハ刀ヲ抜テカムル我ハ鞘二納メテ相掛リニテ行ク也、場合ニテ敵我面へ打込ム也、我其時右片手ニテ抜キ頭上ニテ請ケスグ二左手ヲ柄二添へ打チ込ム也、敵又表ヨリ八相二払フ也、我又スグニカムリテ打込ム也、敵又スグニ裏ヨリ八相二払フ也、我又スグニカムリテ敵ノ面へ打込也(左足ヲ一足踏ミ込)其時敵後へ引、我空ヲ打ツ也、其時我切尖ヲ下ゲ待也、敵踏ミ込ミテ我真向へ打込也、我其時左足ヨリ一足退リ空ヲ打タセ同時二カムリテ一足踏込ミ敵ノ面ヘ勝也 互二五歩退リ納刀後再ヒ刀ヲ抜キ相上段ニテ次二移ル。

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
詰合之位7本目燕返:前の業終って刀を合はせ一旦原位に復したる後互に五歩後退して血振ひ納刀し、次の業に移るを型の基本とするも、この「燕返」にありては打太刀後退せずそのまゝ原位に留るも可なり。然れどもこゝには打太刀も同様に後退し更に前進する場合を解説せり「9本目水月刀」「10本目霞剱」に於ても同様なり。
仕太刀 立姿、帯刀・打太刀 立姿、帯刀より左上段に移る。
打太刀は上段、仕太刀は刀を鞘に納めたるまゝ相掛りにて前進、間合にて打太刀は仕太刀の正面に打込む、仕太刀は素早く抜刀劍尖を左方に右雙手にて頭上十文字に請け直に雙手上段となり左足を一歩進め相手の裏ら面に打込むを打太刀は右足を一歩退き裏より之れを八相に拂ふ。
仕太刀更に右足を一歩進め表て面に打込むを打太刀亦左足を一歩退き表より八相に拂ふ。
仕太刀は直に振冠りて左足を一歩進め打太刀の正面に打込む、この時打太刀は左足より大きく退きて仕太刀に空を打たせ。次いで打太刀は右足を一歩踏込み仕太刀の眞向に打下す、仕太刀は之に應じて左足を大きく引き體を後方に退きて打太刀に空を撃たせ(此際拳は充分に手許にとるを要す)振冠りざま右より踏込み打太刀の正面を打つ。刀を合せ原位に復し互に五歩退きて血振ひ納刀をなす。

大江正路先生の英信流居合の型には詰合之位は無い。

神傳流秘書
詰合7本目燕返:相手高山我ハ抜か春して立合たる時相手より打込むを我抜受に請る相手引を付込ミ打込相手右より拂ふを随って上へ又打込拂ふを上へ取り打込扨切先を下げて前へかまへ場合を取り切居処へ相手打込を受流し躰を替し打込勝又打込ま須冠りて跡を勝もあり。

古伝神傳流秘書の「7本目燕返」は、
相手が打ち込んで来るのを抜請けに請け、
相手が引くのを付け込んで打ち込む、
打ち込まれて相手は右から払うのであたり拍子に振り冠って又打ち込む、
相手が払うので上段に振り冠り打ち込む(相手亦払う、又は一歩下がって外す・・このような動作が書かれていない)
扨、そこで我は切先を下げ、間合いを充分取って
下段に取り前に構える。
相手真向に打ち込んで来るのを、請け流し、
體を躱して打ち込み勝・・打ち込まずに上段に振り冠って勝を示す。


 

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2024年11月20日 (水)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 2詰合之位の6位弛

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
2詰合之位の6位弛

山本俊夫先生業附口傳
詰合之位6本目位弛=(仕坐納刀、打左上段)是ハ敵ハ立チ我ハ坐スル敵ハ太刀ヲ抜テカムル我ハ鞘二納メテ右片手ヒザ立チ坐スル 敵スカ〵ト来ッテ打ツ其ノ時我アタル位ニテスッカリト立チ其侭左足ヲ一足引キテ抜敵二空ヲ打タセ同時二右足ヲ一足踏ミ込ミ面ヘ切リ込ミ勝也 仕太刀ハ刀ヲ合セ五歩退キテ血振ヒ納刀仕太刀ハ其ノ位置ニテモ五歩引キテモ不苦

曽田乕彦著述業附口伝
詰合之位6本目位弛
:仕坐納、打左上段 是ハ敵ハ立チ我ハ坐スル也、敵ハ太刀ヲ抜テカムル、我ハ鞘二納めて右足ヒザ立テ坐スル也、スカ〵ト来テ拝ミ打二討ツ也、我其時アタル位ニテスッカリト立チ其侭左足ヲ一足引キテ抜、敵二空ヲ打タセ同時二右足ヲ一足踏ミ込ミ面へ切リ込ミ勝也 仕太刀ハ此ノ時刀ヲ合ハセ五歩退キテ血振ヒ納刀 打太刀ハ其位置ニテモ五歩退リテモ不苦

嶋専吉述無雙直傳英信流居合術形 乾
詰合之位6本目位弛:「姿勢及構へ」仕太刀は納刀其の位置に在りて立膝。打太刀は五歩退きて立姿のまゝ一旦納刀の後、更めて抜刀左上段の構へ。但し帯刀より前進中抜刀するも苦しからず、此場合發足即ち右歩にて抜刀、次の左歩にて上段に冠り、續いてのこと。
打太刀上段にてスカ〵と前進し拝み撃に仕太刀の眞向に打下す、仕太刀は打太刀の刃が将に己が頭に触るゝ位にて其刹那、敏速に左足より一歩體を退きつゝ刀を抜きて、スッカリと立ち打太刀に空を打たせ直に右足を一歩踏み込み上段より打太刀の面を撃つ。刀を合はせ各五歩退き血振ひ納刀。
但し次の業例へば「燕返」に移る如き場合打太刀は後方に退らず、その位置に止るも苦しからず。

大江正路先生の英信流居合の型には詰合之位は無い。

神傳流秘書
詰合6本目位弛:我居合膝二坐したる所へ敵歩ミ来りて打込むを立さまに外し抜打に切る 或は前の如く抜合たる時相手より打つを我も太刀を上へはづし真向へ打込ミ勝

業附口伝は古伝の手附に従った所作と云えるでしょう。打太刀の打ち込みを「立さまに外す」には、左足を退き、刀は柄頭を上に向け、左肩を覆うようにして、相手の刀を摺り落とす様に抜き上げ、抜き付ける。大森流の8本目「逆刀:向より切て懸るを先々に廻り抜打に切」で稽古してきている筈です。

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2024年11月19日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 2詰合之位の5鱗形

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
2詰合之位の5鱗形

山本俊夫先生業附口傳
詰合之位5本目鱗形=(打、仕納刀)坐リ方同前左足ヲ一歩引キテ抜合ス 其ノ時スグ二我面へ上ヨリ打ツ我モスグ二太刀ノ切尖ヘ左ノ手ヲ添へテ十文字二請テ左ノ足ヲ踏ミ込ミ摺込勝

曽田乕彦著述業附口伝
詰合之位5本目八鱗形:(仕打納)坐リ方同前左足ヲ一足引キテ抜合ス也 其時スグ二我面ヘ上ヨリ打ツ也 我モスグ二太刀ノ切尖ヘ左ノ手ヲ添へテ十文字二請テ左ノ足ヲ踏ミ込ミ摺込ミ勝也

嶋専吉先生無雙直傳英信流居合術形 乾
詰合之位5本目鱗形:仕太刀、打太刀共に納刀のまゝ 前同様に抜合せ打太刀は右より進み仕太刀の面上に打下すを仕太刀左足より體を退き左手を棟に添へて頭上十文字に請け止め續いて左足を一歩踏み込み(この時右跪となり)左手を刀に添へたるまゝ對手の刀を己が右方に摺り落しながら喉を刺突の姿勢となる。此の時打太刀は左足より體を退き刀を左方に撥ね除けられたるまゝ上體を稍々後方に退く。次で刀を合せ血振ひ、(若し續て次の「位弛」を演ずる場合は打太刀は五歩後方に退きて血振ひ)納刀す。

大江正路先生の英信流居合の型には詰合之位は無い。

神傳流秘書
詰合5本目鱗形:如前抜合せ相手打込むを八重垣の如く切先に手を添へ請留直二太刀を摺り落し胸をさす

 夫々表現の仕方に多少の違いを感じますが、稽古の際、思いつくままに打太刀の動きに応じて応じて行く事で、業が見えてくると思います。この摺落としの業は充分稽古して置くもので、十文字に請けるや摺落とす、請けずに外してしまうなどでしょう。

 

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2024年11月18日 (月)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 2詰合之位の4八重垣

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
2詰合之位の4八重垣

山本俊夫先生業附口傳
詰合之位4本目八重垣=(打、仕納刀)是モ同ジク詰テ坐シ前ノ如ク左足一足引テサカサマ二抜合敵其ノ侭我面ヲ打テ来ルヲ我又太刀ノ切尖へ左手ヲ添へテ面ヲ請クル夫レヨリ立て敵スグ二我右脇ヲ打ツヲ我其ノ侭刀ヲ右脇二サカサマ二取リテ此ノ時左足ヲ一足引キ請テ留る敵又立チテ左脇ヲ打チ来ルヲ我又左足ヲ一足引キテ左脇ヲ刀ヲ直シテ請け止メル敵又上段ヨリ面へ打チ来ルヲ我又右足ヲ引キテ上ヲ請テ敵カムル処ヲ我右足ヨリ附込ミ勝也刀ヲ合セ原位置二帰リ血振納刀ス

曽田乕彦著述業附口伝
詰合之位4本目八重垣:(仕打納)
是モ同ジク詰テ坐シ前ノ如ク左足一足引テサカサマ二抜合也、敵其侭我面ヲ打テ来ルヲ我又太刀ノ切尖へ左手ヲ添へテ面ヲ請クル也、夫レヨリ立て敵スグ二我右脇ヲ打ツヲ我其ノ侭刀ヲ右脇二サカサマ二取リテ此ノ時右足ヲ一足引キ請テ留ル也、敵又立チテ左ノ脇ヲ打チ来ルヲ我又左足ヲ一足引キテ左脇ヲ刀ヲ直二シテ請け止メル也、敵又上段ヨリ面へ打チ来ルヲ我又右足ヲ引キテ上ヲ請テ敵カムル処ヲ我右足ヨリ附込ミ勝也刀ヲ合セ原位置二帰リ血振納刀ス跪

嶋専吉先生無雙直傳英信流居合術形 乾

詰合之位4本目八重垣:仕太刀、打太刀双方帯刀の儘詰合ひて右立膝對坐 是も同じく詰合ひ對坐より左足を一歩退きて倒か様に抜合はせたる後、打太刀は右より進み左跪にて仕太刀の正面に打込み来るを仕太刀左より體を少しく退き左踞にて剱尖を左方に左手を棟に添へて頭上十文字に請止む。
續て打太刀、左足を一歩進め(打太刀は一應立ち上り左足を一歩進め右膝を踞きて)仕太刀の右脇に打込むを仕太刀右足を一歩退き刀を倒か様にとりて(左手を棟に添へたるまゝ刀を體に近く剱尖を下方に略々垂直にして)右跪にて請止む。
打太刀更に立て一歩右足を進め左跪にて仕太刀の左脇に打込み来るを仕太刀左足を一歩退き刀を直にとりて(左手を棟に添へ剱尖を上に刀を垂直にし)脇近くに請留む(左跪)。
打太刀更に右足より進みて上段より正面へ打ち込むを仕太刀は右足を一歩退け左手を棟に添へて再び頭上十文字に請け止め次で打太刀右足を退き振冠るところを仕太刀右足を一歩進め附込み打太刀の喉を突く。
(この際打太刀の左膝と仕太刀の右膝とは相接する如く向ひ相ふ)次で刀を合せ原位に復し血振ひ納刀す。

大江正路先生の英信流居合の型には詰合之位は無い。

神傳流秘書
詰合4本目八重垣:如前抜合たる時相手打込を我切先二手を懸けて請又敵左より八相に打を切先を上二して留又上より打を請け相手打たむと冠を直耳切先を敵の面へ突詰める(我切先に手を懸希て請け敵左より八相二打を切先を下げて留又敵右より八相二打を切先を上二して留又上より打を頭上尓て十文字二請希次に冠るを従て突込むもある也

 古伝は、打太刀の打ちは、上・左・上ですが、曽田先生の(追記)は上・右・左・上とされ、業附口伝を手附とした山本先生も嶋先生もそれに従っています。
  更に古伝は、抜き合った後の上・左・上の打ち込みは座した状況での打ち込みで、あえて立ち上がって打つことを要求していません。此の事も業附口伝では要求されています。座いたままでも、立ってでも自由自在に応じられて当たり前ですから深く、何故と追及する事は必要はないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2024年11月17日 (日)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 2詰合之位の3岩波

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
2詰合之位の3岩波


山本俊夫先生業附口傳
詰合之位3本目岩波=(仕打納刀)詰合テ坐スル前ノ如ク左ノ足一足引キテサカサマ二抜合セ敵ヨリスグニ我右ノ手首ヲ左ノ手ニテ取ル我其ノ侭敵ノ右ノ手首ヲ左ノ手ニテ取リ右手ヲ添ヘテ我左脇へ引倒ス刀ヲ合セ血振納刀

曽田乕彦著述業附口伝
詰合之位3本目岩波:詰合テ坐スル也前ノ如ク左ノ足一足引テサカサマ二抜合セ敵ヨリスグニ、我右ノ手首ヲ左ノ手ニテトル也、我其侭敵ノ右ノ手首ヲ左ノ手ニテ取リ右手ヲ添ヘテ、我左脇へ引倒ス也刀ヲ合セ血振ヒ納刀(遣方右手ヲ添エル時刀ヲ放シ直二相手ノひぢヲトルナリ)

嶋専吉先生無雙直傳英信流居合術形 乾
詰合之位3本目岩浪:「姿勢及構へ」仕太刀・打太刀共に帯刀ノ儘前同様の姿勢にて詰め合ひ對坐
前と同様に抜合せたる後、打太刀左膝を跪き左手にて仕太刀の右手首を把る、仕太刀も亦之に應じて打太刀の右手首を捉へ右手に在る刀を放ち右拳を(稍々内側に捻る心地にて)對手ノ掌中より奪ひ之を内側より相手の右上膊部に添へて己が左脇へ投倒すなり。
次で刀を合はせ左跪坐にて血振日の後納刀すること前と同様なり。

大江正路先生の英信流居合の型には詰合之位は無い。

神傳流秘書
詰合3本目岩浪:拳取の通り相手より拳を取りたる時我よりも前の如く取り我が太刀を放し右の手尓て敵のひぢのかがみを取り左脇へ引た保春(ひきたおす)

 手附は動作を其の儘書いていますが、読んだだけではわかりずらい様です。実際に稽古して見ればすぐ納得できます。古伝は兎に角、書かれている十番通りにやって見る事が大切でしょう。

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2024年11月16日 (土)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 2詰合之位の2拳取

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
2詰合之位の2拳取

山本俊夫先生業附口傳
詰合之位2本目拳取=(仕打納刀)是も同シク詰合テ坐シサカサマ二抜合スコト前」同様也我其ノ侭左ノ足ヲ踏み込ミ敵ノ右手首(拳ナラン)ヲ左手ニテ押ヘル也後同断

曽田乕彦著述業附口伝
詰合之位2本目拳取:
仕打納 是モ同ジク詰合テ坐シサカサマ二抜合スコト前同様也我其侭左ノ足ヲ踏ミ込ミ敵ノ右手首(拳ナラン)ヲ左手ニテ押へル也後同断
同断:敵ノ引カントスル処ヲ我左ノ足を一歩付込左ノ手ニテ敵ノ右ノ手首ヲ取ル此ノ時ハ左下二引キテ敵ノ体勢ヲ崩ス心持ニテナスベシ、互二刀ヲ合セ五歩退キ八相二構へ次二移ル也)

嶋専吉先生無雙直傳英信流居合術形 乾
詰合之位2本目拳取:「姿勢及鎌へ」仕太刀、打太刀共に帯刀のまゝ前と同様の姿勢にて詰合ひて對坐す 發早の場合と同様に双方抜合せ続いて仕太刀は迅速に左足をその斜左前即ち對手の右側に踏み込み(右足直に之れを追ふ、右膝は地に跪き、稍や體を開き)その瞬間左手にて打太刀の右手首を逆に捉へ之れを己が左下方に引き寄せ相手の態勢を崩しつゝ右拳の刀を打太刀の水月に擬し(柄を把れる右拳を己が右腰に支へつゝ刃を右にし打太刀の刀の下より)将に刺突の姿勢となる。互に刀を合はせ原位置に復し血振ひ納刀をなす。

大江正路先生の英信流居合の型には詰合之位は無い。

神傳流秘書
詰合2本目拳取:如前楽々足を引抜合於左の手尓て相手の右の拳を取り刺春也

 嶋専吉先生の拳取は省略される部分が無いので、古伝を彷彿とさせます。師匠は第19代福井春政先生、田岡傳先生がこの様に指導されたのでしょう。
 第18代穂岐山波雄先生に御指導を請けられた野村凱風(條吉)先生発行の「無雙直傳英信流居合道能参考」昭和40年発行によりますと、英信流居合形は第17代大江正路先生の7本の形を記載され古伝については触れられていません。このあたりの人間関係や稽古業の違いは何なのでしょう。興味はありますが掘り下げても、何ら業技法に効果ある事とも思えませんので、どなたかにお願いいたします。

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2024年11月15日 (金)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 2詰合之位の1八相

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
2詰合之位の1八相
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山本俊夫先生業附口傳
詰合之位1本目八相=(仕打納刀)(傳書二発早トアリ)是ハ互二鞘二納メテ詰合テ相向ヒ右膝立テ坐スル也互二左足を一歩引キテサカサマ二抜合スル也(互二右膝へ抜付ケル)其ノ侭ヒザヲツキ仕太刀ハカムリテ面へ打込ム此ノ時打太刀ハ十文字二頭上ニテ請ケ止メル也互二合セ血振納刀足ヲ引ク也

曽田乕彦著述業附口伝
詰合之位1本目八相:(口伝二発早トアリ)是ハ互二鞘二納メテ詰合テ相向ヒ二右膝立テ坐スル也互二左足ヲ一足引キ手倒様に抜合スル也(互二右脛へ抜付ケル)其侭ヒザヲツキ仕太刀ハカムリテ面へ打込也此ノ時打太刀ハ十文字二頭上ニテ請ケ止ムル也。互二合セ血振ヒ足ヲ引キ納刀

嶋専吉先生無雙直傳英信流居合術形 乾
詰合之位1本目発早(口傳に発早とあり、八相とも録す):「姿勢及構へ」仕太刀、打太刀 互に刀を鞘に納めたるまゝ詰め合ひて相向ひに右膝を立てゝ坐す 双方左足を一歩後方に退きて立ち上ると同時に互に對テの右脛に斬付くる心にて(剱尖を下方に)抜き合す。次てその儘膝を地につくと共に仕太刀は振冠りて上段より打太刀の正面に打込む、此の時打太刀は劍尖を右に頭上にて十文字に之れを請け止むるなり。次て互に刀を合はせ適當の位置に復し双方左膝を跪き血振ひ右足を退きて納刀す。

大江正路先生の英信流居合の型には詰合之位は無い。

神傳流秘書
詰合1本目発早:(重信流也 従是奥之事 極意たる二依而挌日に稽古春る也)楽々居合膝二坐したる時相手左の足を引下ヘ抜付けるを我も左の足を引て乕の一足の如く抜て留め打太刀請る上へ取り打込ミ勝也

 詰合は古伝神傳流秘書では「重信流也」と言うのですが、「重信流」そのものが見当たりません。重信流そのものであったか、江戸時代中期初めまでに変化してきたか分かりません。「居合膝」とは現代居合の「立膝」の座し方を指すと思われます。英信流居合之事で学んで来ているはずです。
 双方膝下で刀を抜合せ、仕太刀は上段振り冠って真向に斬り付けるを打太刀は頭上にて十文字請けする。業附口伝の動作と古伝神傳流秘書との違いは特に無いと思います。

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2024年11月14日 (木)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 1太刀打之位の10打込一本

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
1太刀打之位の10打込一本

山本俊夫先生業附口傳
太刀打之位10本目打込一本=(仕打中段)(傳書ナシ 口傳アリ留ノ打込也)双方真向二物打ニテ刀ヲ合ハシ青眼二直リ退ク

曽田乕彦著述業附口伝
太刀打之位10本目打込一本:仕打中(伝書二なし口伝アリ)(留ノ打込也)双方真向二物打ニテ刀ヲ合ハシ青眼二直リ退ク

嶋専吉先生無雙直傳英信流居合術形 乾
太刀打1010本目留之劍(打込一本、但し傳書になし):「姿勢及構へ」仕太刀、打太刀 共に中段 互に進み間合にて眞向より物打あたりにて軽く打合ひ(音を立てゝ強く撃ち合ふ意にあらず)更に青眼に直りて残心を示し正しき位に復す。
右「留之劍」終らばそのまゝ一旦後方に退き血振ひして刀を鞘に収め更に前進し正坐にて刀の終禮を行ひ再度後退して對立のまゝ相互に黙禮をなし、次で神前の敬禮を行ふ。

大江正路先生の英信流居合の型
7本目眞方:打太刀は其儘にて左足を出して八相となり、仕太刀は青眼のまゝ左足より小さく五歩退き上段となり、右足より交叉的に五歩充分踏み込みて、打太刀の眞面を物打にて斬り込む、打太刀は右足より五歩出で仕太刀を斬り込むと同時に左足より右足と追足にて退り、其刀を請留める、互に青眼となり打太刀は一歩出で仕太刀は一歩退り、青眼のまゝ残心を示し互に五歩引き元の位置に戻り血拭ひ刀を納む。

神傳流秘書
太刀打之事10本目打込:相懸又ハ打太刀待処へ遣方より請て打込ミ勝

 古伝神傳流秘書には10本目は「打込」として存在していますが、何を以て「傳書になし」と云うのでしょう。大江先生の「眞方」以外は仕太刀が相手の真向に斬り込み、打太刀は之に乗じて真向に打ち込む。所謂柳生新陰流の「合し打ち」を意図したと、思いたいのですが、手附はどれも打ち合うだけで、それ以上は何も書かれていません。
 この程度の手附であれば、稽古が進めば、「仕太刀が先に真向に打ち込まんとするを、打太刀が先んじて打込むのを、仕太刀これに乗じて真向に打ち込み、相手太刀を摺落として勝」。

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2024年11月13日 (水)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 1太刀打之位の9心妙剣

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
1太刀打之位の9心妙剣

山本俊夫先生業附口傳
太刀打之位9本目心妙剣=(仕納刀打上段)是モ相掛リテモ相手待チカケテモ不苦、敵ハ眞向ヘカムリ我鞘二納テスカ〵ト行也 其時我ハ片手ニテ十文字二請ル也 其侭敵引ク也 スグニ我打込ミ勝也 最後二打込ム時ハ敵ノ刀ヲ押シ除ケル様二シテ左足ヲ踏ミ込敵ノ首根二払ヒ打込ム也

曽田乕彦著述業附口伝
太刀打之位9本目心明剱:(仕納打上)是モ相掛リニテモ相手待チカケテモ不苦、敵ハ眞向ヘカムリ我鞘二納テスカ〵ト行ナリ其時我片手ニテ十文字二請ル也 其侭二敵引也 スグニ我打込ミ勝也 気合大事也云々 最後に打込ム時ハ敵ノ刀ヲ押シ除ケル様二シテ左足ヲ踏ミ込敵ノ首根二打込ム也

嶋専吉先生無雙直傳英信流居合術形 乾
太刀打之位9本目心妙劍:仕太刀納刀の儘、打太刀上段 打太刀は眞向に冠り、仕太刀は帯刀のまゝ相掛りに前進し間合に至り打太刀上段より仕太刀の面に打下すを、仕太刀間髪を容れず抜刀、雙手にて頭上十文字に請け止め、打太刀の引き際に(打太刀は足を替へず體を僅かに退く)右片手にて打太刀の刀を押し除くるか如く右下に拂ひ、左足を左方に踏込み打太刀の首根を断つ。(此業特に「気合大事なり」とあり充分心すべし。尚この形に於て仕太刀雙手刀を拂ふ業、及び左足の踏込と共に相手の頭べを撃つ動作には特に工夫あるべし。)次に刀を合せ五歩後退。

大江正路先生の英信流居合の型
6本目請流:刀を腰に差したるまゝ、静に出で打太刀は刀を抜きつゝ左、右足と踏み出し上段より正面を斬り、體を前に流す、仕太刀は左足を右足の側面に出し、刀を右頭上に上げ受け流し左足を踏み變へ右足を左足に揃へて體を左へ向け打太刀の首を斬る、仕太刀は左足より左斜へ踏み、打太刀は左足より後へ踏み、退きて青眼となり次の本目に移る

神傳流秘書
太刀打之事9本目心妙剣:相懸也打太刀打込を指なり二請て打込ミ勝也(打込む時相手の刀越於し能希る(かたなをおしのける)業あるべし)

 古伝神傳流秘書は、上段に構えている相手に、我は帯刀したまま相懸りに進み、間に至るや相手が真向に打ち込んで来るのを、抜くなりに頭上で請けるや、相手太刀を押しのける様に摺落とし、相手の受流された所を、刀を左肩から廻し右肩上に取るや左手を添えて斬り込み勝。
 或いは、相手の上段からの打ち込みを頭上に誘い込み、抜刀するや左手を切先手前の棟に添え、相手の打ち込みを請けるや相手刀を押しのける様に右に摺落とし、切先を相手の喉に着け勝。
 或いは、相手が我が頭上に打ち込まんとするや、刃を下に抜き上げて、相手の打ち込んで来る右肘を切り上げて、其の儘振り冠って斬り下し勝。刀で刀を受けずに、相手の動きの先を取ることも見えてきます。
 或いは、大江先生の「請流」でしょう。此の業は「心妙剣」と言うだけに、状況次第で変化極まりなしと云えるものでしょう。
  究極は、相手の打ち込みを、抜刀しつつ右に体を外して、空振りさせるや切り込んで勝つ。
 演武会での華麗な演武を型として望む人には、理解出来ないかも知れません。

 

 

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2024年11月12日 (火)

無雙直傳長谷川流居合術極秘  6業附口傳 1太刀打之位の8独妙剣

無雙直傳長谷川流居合術極秘  
6業附口傳 
1太刀打之位の8独妙剣

山本俊夫先生業附口傳
太刀打之位8本目独妙剣=(仕打八相)是も同ジク抜也敵待チカケテモ相掛リテモ不苦八相二カタギテスカ〵ト行場合ニテ打込也其ノ時敵十文字二請テ又眞向へ打込其ノ時我又本ノ侭ニテ請ケ面へ摺リ込ミ勝也(我請タル時ハ左手ヲ刀峯二當テ次二摺込ミ勝也)

曽田乕彦著述業附口伝
太刀打之位8本目独妙剣:(山川先生ノ秘書二ハ絶妙剱トアリ)仕打八 是モ同ジク抜也、敵待カケテモ相掛リニテモ不苦、ハ相二カタキテスカ〵ト行場合ニテ打込也 其時敵十文字二請テ又我カ眞向へ打込也 其時我又本ノ侭ニテ請ケ面へ摺リ込ミ勝也(我請タル時ハ左手ヲ刀峯二當テ次二摺リ込ミ勝也)摺リ込ミタル時敵刀ヲ左肩二トル

嶋専吉先生無雙直傳英信流居合術形 乾
太刀打之位8本目獨妙劍:仕打ハ相 互にスカスカと進み間合ひにて仕太刀は打太刀の面に打下すを打太刀十文字に請止む、次で打太刀體を前に進め(足を替ふることなく)、仕太刀の眞向に打込み来るを仕太刀は左手を刀の棟に添へ(刃を上に、棟を拇指(内側)と他(外側)との間に請けて)體を後ろに退きて(足を替へず)頭上十文字に請止め。更に左足を一歩踏出し摺り込みて打太刀の喉に刺突を行ふ姿勢となる(此場合打太刀は依然足を替へずに唯々上體を少しく後方に退く、従て打太刀の右膝と仕太刀の左膝と相向ふことゝなるなり)。刀を合はせ互に五歩退き血振ひ納刀。

大江正路先生の英信流居合の型にはこの8本目獨妙剣は見当たらない。

神傳流秘書
太刀打之事8本目絶妙剣:高山二かまえ行て打込み打太刀より亦打込を請て相手の面へ摺り込ミ相手肩へ取る(請くる時は切先に手をそへ頭の上尓て十文字に請希留むるあり(なり))

 古伝の8本目絶妙剣の思いは、業附口伝の8本目獨妙剣に引き継がれているようです。現代居合の大江先生による「太刀打之位」には引き継がれていません。良く言えば中学生相手に居合を指導するにあたり難しい所作は外してしまったのかも知れません。悪く言えば、古伝の太刀打之事10本の内容を知る者が見当たらず、聞きかじりのものを組み立てたとも思えます。
 現代居合ばかりでは無く多くの剣術流派の古伝は同じような事かも知れません。

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