曽田本その1の3業附口伝読み解く4大小立詰

2018年3月22日 (木)

曽田本その1の3業付口伝読み解く4大小立詰7移り

曽田本その1
3業付口伝読み解く
4、大小立詰
七本目移り
 (伝書二ナシ口伝)敵後ヨリ組付キタルヲ我体を落シテ前二投ル也
 (後ロゟ組付體ヲ下リ前ヘ投ケル 五藤正亮先生ノ教示)
読み
七本目移り(うつり)
 (伝書になし口伝)敵後より組付きたるを我体を落として前に投げる也
 (後ろより組付く体を下り前へ投げる 五藤正亮先生の教示)
古伝神傳流秘書大小立詰七本目電光石火
 如前後より来り組付を躰を下り相手の右の手をとり前二倒春
 以上七本
読み
古伝神傳流秘書大小立詰七本目電光石火(でんこうせっか)
 前の如く後より来たり組付くを体を下り 相手の右の手を取り前に倒す
 以上七本
読み解く
*
曽田先生は第14代谷村亀之丞自雄の業附口伝書には無いけれど口伝があるので書き込んだと言うのでしょう。後ろから羽交い絞めにされたので体を低くして前に投倒すという技です。

伝書に無いと言うのは、谷村派15代には伝書で伝わっていないと言うことでしょう。古伝神傳流秘書には「電光石火」という業名であります。
 「前の如く後より来り組付を体を下り相手の右の手を取り前に倒す」


 すごい業名です電光石火です。後ろから組付かれた時は即座に相手の右手を取って体を沈めて前に投げる。一本背負いを彷彿とさせます。
 後ろから羽交い絞めにされたので、相手の右手をそのままでは取れそうもない場合は、体を沈めて相手の手が緩んだ処を一本背負いでしょう。

 業名は業附口伝の大小立詰めでは「移り」になっていますが手附は神傳流秘書の大小立詰の電光石火とほぼ同様です。
 これらの業は業では無いので変化極まりなし、よりよい方法、状況に応じた瞬時の判断を研究すべきでしょう。

 以上七本で大小立詰は終わります。
 此処も相手は小太刀、我は太刀を帯して行います。
 この大小立詰は見る機会が殆ど有りません。之だと言う伝系も有るのか無いのか失伝してしまった業でしょう。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の大小立詰移り
「伝書になし、口伝 打太刀仕太刀の後方。 打太刀後より組付き来るを仕太刀体を落して前に投るなり。」

*曽田先生の業附口伝と同じです。嶋 専吉先生の「無双直伝英信流居合術形乾」を終了します。これは第19代福井春政先生の業技法を垣間見れる現在唯一手元にある貴重な資料です。

以上で業附口伝を終わります。

 業附口伝は土佐の居合の下村派15代行宗貞義先生の弟子曽田虎彦先生が谷村派の16代五藤正亮先生、谷村派14代谷村自雄先生の業附口伝書をもとに田口先生(?)と実兄の谷村派土居亀江先生の口伝に依って、谷村派・下村派竹村静夫先生と実演したもので参考にまとめたものと序文に書かれています。

 ここには組太刀が4種類記載されていました。太刀打之位・詰合之位・大小詰・大小立詰です。
 神傳流秘書にあった大剣取がありません。
 英信流目録にあった小太刀之位もありません。
 業の細部は古傳神傳流秘書の太刀打之事・詰合・大小詰・大小立詰と異なる業名、その順番や動作がありますが、おおかた同じものと云えます。

 江戸末期から明治にかけて細々と稽古されていたもので現在の夢想神傳流にも無双直伝英信流にも失伝してこれらを全て打てる道場は少なかろうと思います。
現在打たれている無双直伝英信流居合道形は谷村派第17代大江正路先生に依る太刀打之位を元にした独創形であって、古傳太刀打之事或は太刀打之位とは別物です。

 この業附口伝のそれぞれの形は、一対一の攻防ですから、居合ならば正座の部、立膝の部が何とか理解出来、竹刀剣道、柔道、合気道などを少々齧って居れば手附だけで形を打つ事は出来るはずです。
 但し、武術として学ぶには奥深いものがあるので申し合わせの形の認識であったり、誰々師匠の直伝位の認識では形を順番に従って打てただけに終わりそうです。
 これ等を稽古するには文章をよく読み、それに従って書かれている通り演じてみることが大切です。
 どうしても抜けがあってどうしたら良いかわからない事がある時は幾つも想定して次の動作と違和感のないものを選択するのがよいでしょう。

 ここにも習い・稽古・工夫のスパイラルが求められます。習いと言っても、現代の居合の師匠では、一人演武の居合以外は古伝は全く知らない高段者が殆どです。

 現在師伝としてあるものは、大凡曽田虎彦先生の書かれた「業付口伝」を参考にされている様です。
 土佐の居合の第九代林六太夫守政が第八代荒井兵作(勢哲)(信定)清信、第七代長谷川主税之助英信より伝授されたもので「古伝神傳流秘書」によるものとは異なる部分もあって、古伝を紐解き研究すべきでしょう。

現代の無双直伝英信流居合は第17代大江正路先生の居合であって、江戸時代に土佐にもたらされた総合武術による居合では無いのです。

 古伝の文章が土佐に伝わる組太刀の師匠であり、現存する武術流派の業技法や自分の武的力量の達成度も師匠でしょう。
 そして、何より大切なのは、志を一にする仲間と、、古伝の手附を読み合いお互いを師と仰ぎ座学と実技を理解し合い、自分の道場へ帰って磨き上げる事かも知れません。


 第9代林六太夫守政が土佐にもたらした神伝流秘書の数々とは聊か異なる部分もありますが、業附口伝に書かれたものは大方古伝に近いものと云えるでしょう。

業附口伝の印刷された資料

河野百錬著昭和13年1938年発行無双直伝英信流居合道 第五節居合形之部第二~第五に文責筆者として曽田先生の業附口伝が書かれています。

島専吉著昭和17年1942年発行無双直伝英信流居合術乾
 戦時中に嶋専吉先生は土佐に赴き、第19代福井春政先生や田岡傳先生に直接指導を受け、その際福井先生の資料を書き写されたものです。内容は曽田先生の業附口伝と同じですが一部改変されています。
 太刀打之位、詰合之位、大小詰、大小立詰、外之物之大事、上意之大事、極意之大事などが記載されている貴重な資料です。

 

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2018年3月20日 (火)

曽田本その1の3業付口伝読み解く4大小立詰6乱曲

曽田本その1
3業付口伝読み解く
4、大小立詰
六本目乱曲
 前後二立チテ行ク也敵後ヨリ鐺ヲ取リクルクル廻シ引ク也我其ノ時スグニ後向キテ左右何レナルヤヲ見合セ右手ナル時ハ我左足ニテ敵ノ右足ヲ又左手ナル時ハ我右足ニテ敵ノ左足ヲ掬ヒ中二入ル也
 (後ロゟ鐺ヲ取リクルクル廻シ引其時左右ヲ見合セ中二入ル 五藤正亮先生ノ教示)
読み
六本目乱曲(らんきょく)
 前後に立ちて行く也 敵後より鐺を取りクルクル廻し引く也 我其の時直ぐに後ろを向きて左右何れなるやを見合わせ 右手なる時は我が左足にて敵の右足を 又 左手なる時は右足にて敵の左足を掬い中に入る也
 (後ろより鐺を取りクルクル廻し引く 其の時左右を視合わせ中に入る 五藤正亮先生の教示)
古伝神傳流秘書大小立詰六本目乱曲
 如前後より来り鐺を取り頻り二ねぢ廻し刀を抜かさじと春る時後へ見返り左の手か右の手尓て取たるかを見定め相手左の手ならバ我も左尓て鯉口を押へ相手右ならは我も右尓て取る後へ引付んと春るを幸しさり中に入り倒春
読み
古伝神傳流秘書大小立詰六本目乱曲
 前の如く後より来たり鐺を取り頻りにねじ廻し刀を抜かさじとする時 後へ見返り左の手か右の手にて取りたるかを見定め 相手左のてならば我も左にて鯉口を押へ 相手右ならば我も右にて取る 後へ引き付けんとするを幸いしさり中に入り倒す
読み解く

 敵は我が後ろに並んで歩いて行く時、敵後ろから我が鐺をつかんでクルクル廻しながら引く。
 我は其の時すぐに振り返って、敵が鐺を握っている手が右手か左手かを見極め、右手で握っているならば左足を踏み込んで敵の右足を掬い、左手ならば右足を踏み込んで敵の左足を掬い付け入って中に入る。

 我が鐺を敵が右手で取るならば敵の出足は右が普通でしょう。左ならば左足でしょう。その敵の出足を我は左ならば右足で、右ならば左足で掬うのです。

神傳流秘書 大小立詰 六本目 乱曲

 前の蜻蛉返の様に相手後ろより歩み来たり我が鐺を取る。トンボ返しの場合は相手は「我が右の手を取り刀の鐺を取り背中に押付られたる時」でした。
 乱曲は、我が鐺を左手か右手で取ってねじ廻し抜かせない様にするのです。其の時我は後ろを振り返って相手が左手で取っていれば我も左手で鯉口を押える。
 相手が右手を出して鐺を取れば右半身になっているでしょうから、我も右半身になるとでも思えばいいのでしょう。
 「相手右ならば我も右にて取る」ですが、我は右手で何処を取ればいいのでしょう。左手は鯉口を握るのは常識でしたら右手は柄でしょう。
 文章からは鯉口を右手で取ると読めます。

 相手後ろへ引かんとするを幸いに、後ろへ下がり相手の懐に入るようにして足払いで倒す。

 この乱曲と前の蜻蛉返の様に、英信流の瀧落も鐺を取られています。瀧落では鐺を取られ後ろを振り向き右手か左手か確かめていますがその違いは何も示されていません。

 左右の手と足の関係は、古伝も業付口伝の乱曲もしっくりきません。この際、研究しなおして見るのもいいかもしれません。

 この事については政岡先生の無双直伝英信流居合兵法地之巻に瀧落の解説で述べられています。
 「参考 これは(瀧落は)右手で鐺をとられた時の動作であるが、もし左手で握っておれば「左足を出し腰をおし出しつつ右手を柄にかけ、右胸に引き、鐺を左腿に添え、強く左前に出して、敵の手を振りもぐ」の動作は、左右とつぎ足で出て腰を右前に出す気持ちで、柄は左前に引きよせて敵の手をふりもぐべきである。
 この練習は行われていないが、後出の形(大小立詰の形乱曲参考)に於いては、右手で取られた時と左手で取られた時と両様の動作が行われている」

古伝大小立詰を知らない現代の先生方では「なぜ瀧落で後ろを振り向き左右の手を見極めるのか」の質問に応じられないで「そう教えられた」で片付けられてしまうでしょう。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の大小立詰乱曲
「前後に立ちて行く。 打太刀後より鐺を取りクルクル廻し引く、仕太刀その時直に後向きて左右何れなるやを見合せ右手なるときは仕太刀左足にて打太刀の右足を、又左手なるときは右足にて打太刀の左足を掬ひ中に入るなり。」

曽田本業附口伝と同じです。

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2018年3月18日 (日)

曽田本その1の3業附口伝読み解く4大小立詰5蜻蛉返

曽田本その1
3業附口伝読み解く
4、大小立詰
五本目蜻蜓返
 打ハ仕ノ後ヨリ仕ノ右手首ヲ後二引キ鐺ヲ前二押ス直チニ右足ヲ以テ掬ヒ中二入ル也鐺ヲ後二引キ右手首ヲ前二押ス時ハ左足ヲ以テ中二入ル也
 (後ロゟ右ノ手首ヲオサへ跡へ引左手鐺ヲオサヘ前へヲス時中二入ル 五藤正亮先生ノ教示)
読み
五本目蜻蜓返(とんぼかえし・せいていがえし)
 打は 仕の後より仕の右手首を後に引き鐺を前に押す 直ちに右足を以って掬い中に入る也 鐺を後に引き右手首を前に押す時は 左足を以って中に入る也
 (後ろより右の手首を押さへ跡へ引 左手鐺を押さえ前へ押す時中に入る 五藤正亮先生の教示)
古伝神傳流秘書大小立詰五本目蜻蛉返
 相手後より来り我が右の手を取り刀の鐺を取り背中に押付られたる時其侭後へ之さり中に入利倒春
読み
古伝神傳流秘書大小立詰五本目蜻蛉返
 相手後ろより来たり 我が右の手を取り刀の鐺を取り背中に押し付けられたる時 其の侭後へしさり中に入り倒す
読み解く

 蜻蜓返(せいていかえし・とんぼかえし)は蜻蛉返(せいれいかえし・とんぼかえし)です。
 打は仕の後ろより仕の右手首を右手で掴んで後ろに引き左手で鐺を前に押す。仕は直ちに右足を打の足の間に踏み込んで密着する。
 鐺を後ろに引き右手首を前に押す時は左足を打の足の間に踏み込み密着する。右手を後ろに引かれ、鐺を前に押されれば強く逆らわずになされる儘に右に体が回りこみますからそのまま右足を踏み込み相手の足を掬い刈ればいいのでしょう。
 古伝神傳流秘書では蜻蜓返は蜻蛉返はです。蜻蛉返ですから反転と思う処です。
 相手後から来て我が右手を右手で取り刀の鐺を左手で取って背中に押付けて来る、其の時その体勢の儘後へしさり相手に密着するや体を低めて投げ倒す。
 さて前に倒すか後ろに倒すか、状況次第ではどちらでも出来そうです。倒すにあたっては、相手に密着して足技を併用するなり工夫次第でしょう。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の大小立詰蜻蛉返
「打太刀は仕太刀の後ろに立つ。 打太刀、仕太刀の後より仕太刀の右手首を後ろに引き鐺を前に押す。仕太刀直ちに右足を以て掬ひ中に入るなり。
鐺を後に引き右手首を前に押すときは左足を以て中に入る。」

*曽田本業業附口伝と同じですが、業手附が「打は仕の後ろより仕の右手・・」を嶋先生は「打太刀は仕太刀の後ろに立つ。・・」と、変えて居ます。些細な違いですが「後ろより」と「後ろに立つ」では状況に違いが出ます。
 古伝を読む時は其の違いをどの様に判断するかが業が活きて来るか否かの差になります。

 此処には無いのですが、大剣取の無剣で「相手居合膝に坐し居処へ小太刀をさげかくる相手抜打つを・・」の文章で「小太刀をさげかくる」を、訳して「小太刀を引っ提げて進む」としたのでは、間違いではないのですが、「小太刀を無形の構えにとり、間境でふと止まり掛って行く」。

  もっと深く読めば「小太刀を無形の構えに取り間境を越すや小太刀の切先を少し上げて懸って行く起こりを見せるや相手抜き打つ・・」位迄読み取りませんと、無形の構えの有り様も、敵の抜打ちも只の申し合わせの踊りになってしまいます。

蜻蜒(せいてい)・蜻蛉(せいれい)となりますがどちらも「とんぼ」です。

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2018年3月16日 (金)

曽田本その1の3業附口伝読み解く4大小立詰4骨防返

曽田本その1
3業附口伝原文
4、大小立詰
四本目骨防返
 互二對立スル也打ハ仕ノ柄ヲ両手ニテトリ二来ル也我ハ右手ニテ敵ノ両手ヲ越シテ柄頭ヲトッテ両手ニテ上二モギトル也
 (敵両手ニテ柄ヲ取る時引廻シモグ 五藤正亮先生の教示)
読み
 互に対立する也 打は仕の柄を両手にて取りに来る也 我は右手にて敵の両手を越し柄頭を取って両手にて上に捥ぎ取る也
 (敵両手にて柄を取る時 引き廻し捥ぐ)
古伝神傳流秘書大小立詰二本目骨防返
 相懸り二懸りて相手我刀の柄を留めたる時我右の手尓て柄頭を取り振りもぐ也
読み
古伝神傳流秘書大小立詰二本目骨防返(ほねもぎかえし)
読み解く

 此の業は神傳流秘書では大小詰の二本目骨防扱に有ります。「立合骨防返に同じ故に常になし」と大小詰ではいつもは稽古しないと言っています。

 大小立詰めは、打太刀は小太刀を差し、遣方は太刀を差しての立業です。双方スカスカと歩み寄り、相手が我が刀の柄を両手で取って抜かさない様に押し付けて来る。
 我は透かさず右手を柄頭に取って柄を上に引上げ相手の手を振りもぐ。相手の我が柄を取るのが、右手だけ、両手、左手など在りそうですが工夫次第でしょう。
 振り捥いだら、後は抜き打ちでも柄當でもありでしょう。古伝は語らずです。

*五藤先生の大小立詰の骨防返「引廻しもぐ」も稽古しておくと良いかも知れません。形ばかりに拘って稽古熱心であっても、喧嘩慣れしたやくざにはコロッと負ける話も聞いたような・・。

 江戸末期に竹刀による試合稽古に慣れた者に古流の「かたち」だけの稽古しかしていなかった者が打ち負かされる話も聞きます。
 申し合わせの形稽古で打太刀が打ち易い様に仕太刀に打ち込む隙を作って打たせる、身長も似たような者同士で稽古する。足踏みも所定の踏み数で稽古するetc・・。
 何故ですかと問えば「昔からの形稽古のやりかただから、上達したら変化もする」と云うのですが「何時も同じ人と、同じ形ですね」とやると「演武会の出し物なのでこうする」やれやれです。
 其の上「大会の合同演武だからばらばらにならない様に組同士が動作を合せて」動作は愚か、足数も歩幅まで合わせ、打ち合った位置から、戻る位置まで合わせています。武的演舞の究極です。
 大方は軍属上がりの師匠の指導に依るのでしょう。乾いた号令が響いています。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の大小立詰骨防返
「互に対立す。 打太刀、仕太刀の柄を両手にて捉りに来るを仕太刀右手にて打太刀の両手を越して柄頭をとって両手にて上に捥ぎ取るなり。」

*曽田本業附口伝の儘です。

 

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2018年3月14日 (水)

曽田本その1の3業附口伝読み解く4大小立詰3鍔打返

曽田本その1
3業附口伝読み解く
4、大小立詰
三本目鍔打返
三本目鍔打返(つばうちかえし)
 互二對立スル也打ハ仕ノ抜カントスル右手首ヲトル也仕ハ右手ヲ放スト同時二左手に持テル鍔ニテ打ノ手首ヲ打ツ也
 (抜カントスル時其手首を押へル左手ニテ敵ノ手首ヲ打 五藤正亮先生ノ教自示)
読み
三本目鍔打返(つばうちかえし)
 互二對立スル也打ハ仕ノ抜カントスル右手首ヲトル也仕ハ右手ヲ放スト同時二左手に持テル鍔ニテ打ノ手首ヲ打ツ也
 (抜カントスル時其手首を押へル左手ニテ敵ノ手首ヲ打  五藤正亮先生ノ教示) 
古伝神傳流秘書三本目鍔打返
 相懸り二懸り我刀を抜かむと春る其の手を留られたる時柄を放し手を打もぐ也
読み
 相懸かりに懸かり 我が刀を抜かんとする 其の手を留められたる時 柄を放し手を打ちもぐ也
読み解く
三本目鍔打返

 これはお互いに相掛に進み仕が両手を刀に掛け抜かんとするところ、打は仕の右柄手を右手で押さえて抜かせじとする。仕は柄から右手を放すと同時に打の右手首を左手で鍔を以って打ち付ける。

 五藤先生は、柄手を押さえられたので左手で打の右手首を打つ、としています。この場合は仕は右手を柄から放さず、左手を鞘から離して打つのでしょう。ダメージは曽田先生の方が大きいでしょうが、咄嗟に柄手を放すには普段から稽古で充分慣らしておきませんと難しそうです。

 この業は大小立詰の三本目です、神傳流秘書でも三本目に位置します。

 この業はすでに、大小詰の四本目小手留で解説しています。四本目小手留「立合の鍔打返に同じ故に此処にては不記」

 立業ですから相懸りに懸り合って、我は柄に手を懸け抜こうとする処、相手が右手を取って押さえられる。我は柄手を離し相手の手を鍔で打ち付けもぐ。

 右手で柄を握った処を相手に右手で押さえられる、或は両手で押さえられる、そこで柄から手を離し、左手に持つ鍔で相手の手を打ち据えもぐ、と読んでみました。

 古伝は「手を打ちもぐ」とばかりですから想像を働かせるところでしょう。

 時代が進むと、どんどん技が固定化されていくのはいつの時代も同じです。より克明にと云うことか、特定しないと満足できないようです。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の大小立詰三本目鍔打返
「互に対立す。 打太刀は仕太刀の抜かんとする右手首をとる、仕太刀は右手を放すと同時に左手に持てる鍔にて打太刀の手首を打つなり。」

*曽田先生の業附口伝のままです。

 

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2018年3月12日 (月)

曽田本その1の3業附口伝読み解く4大小立詰2袖摺返

曽田本その1
3業附口伝読み解く
4、大小立詰
二本目袖摺返
 打ハ横ヨリ組ミ付仕肘ヲ張リテ一當スルト同時二スグ二打ノ刀ヲ足二スケテ後二投ル也
 (五藤先生ハ一當シテ中二入リ刀ヲ足二スケ後へ投ルト記セリ)
 (横合ヨリ組付ヒジヲ張リ一當シテ中二入リ刀ヲ足二スケ跡へ投ケル左右共同前 五藤正亮先生ノ教示)
読み
二本目袖摺返(そですりかえし)
 打は横より組付く 仕肘を張りて一當すると同時に 直に打の刀を足にスケて後ろに投げる也
 (五藤先生は一当てして 中に入り刀を足にスケ後へ投げると記せり)
 (横合いより組付く 肘を張り一当てして 中に入り刀を足にスケ後へ投げる 左右共同前 五藤正亮先生の教示)
古伝神傳流秘書大小立詰一本目袖摺返
 我が立て居る處へ相手右腋より来り我が刀の柄と鐺を取り抜かせしと春る時其侭踏ミ之さり柄を相手の左の足のかゞみ二懸け中に入り又我右より来たり組付をひぢを張り躰を下り中に入る。
読み
 我が立て居る所へ 相手右腋より来たり 我が刀の柄と鐺を取り抜かせじとする時 其の侭踏みしさり 柄を相手の左の足のかゞみに懸け中に入り 又 我が右より来たり組付くを肘を張り体を下り中に入る 
読み解く

古伝神傳流秘書の大小立詰の一本目袖摺返の業名は、大江先生が独創した無双直伝英信流奥居合立業の七本目袖摺返に業名を使用されていました。
 大江先生は土佐の居合をコンパクトに纏めて居合そのものを習いやすくして総合武術としては捨てるものは捨てたのでしょう。中学生向きに習いやすくするため、あるいは明治という時代が総合武術を会計的に分解してしまい格技にしてしまった時代背景に寄るのでしょう。

 打が横より両手で組付いてくる、仕は両肘を張って打の腹部に肘当てを食わし、体を低くして密着し柄を打の足に掛けて打を後ろに投げ倒す。
 「打の柄を打の足に掛けて・・」大小詰めですから打は小太刀です、「打の小太刀を打の足に掛け・・」は疑問です。
 「仕の太刀の柄を打の足に掛け・・」ならば出来そうです。
 「組付かれ肘を張りて一当てする」肘鉄が思いつきましたのでやってみました。
 「打の刀を足にすけ・・」ですがこの場合打の刀を足に掛ける方法が思い浮かびません。仕の柄でいいのでしょう。五藤先生のメモ書きでは誰の刀か不明です。

 この業は古伝新傳流秘書では大小立詰の一本目に置かれています。
 立って居る処へ、相手我が右脇から近寄って来て、我が柄を右手で鐺を左手で取り抜かさない様に鐺を背なかに押し付けて来る、我は其の儘後ろにさがり、柄を相手の左足のかゝみに懸けて体を低めて中に入り退き倒す。
 又相手が我が右より近づいてきて組付くのでひじを張って相手の組み付を緩め腰を低くして中に入り退き倒す。又我右より来たり組付をひぢを張り躰を下り中に入る。

 相手の攻撃は、古伝は柄と鐺を取って抜かさない様にする、業附口伝は横から組み付いて来る、何時の時か「又我右より来たり組付をひぢを張り躰を下り中に入る」だけに変わってしまったのでしょう。

 神傳流秘書の大小立詰一本目は袖摺返ですが五藤先生の業附口伝は二本目が袖摺返です。
 一本目は「〆捕」で業の内容が異なります。〆捕は神傳流秘書では四本目に位置します。順序は好きなようにしてもいい、気乗り次第だと云って居ましたが敢えて順番を変えた理由が解りません。

 長谷川英信の時代は甲冑を着た剣術から、素肌剣術に変わった時代でしたからその業技法への転換は頷けます。
 明治以降は伝統文化の伝承と白兵戦に怖気つかない兵士予備軍の育成にあったとも思われます。変える理由があるのでしょうか。
 寧ろ、大江先生に伝書は伝わらず、業名ばかりが伝わり内容が解らなかったと思う方が自然です。
 このような事を云いますと、大江宗家を冒涜する様な事を言うなと仰る方もおられます。無双直伝英信流を当時学ぶ者さえ無かった時代に、中学生に指導し継承された功績は大きいものですが、わけも無く神格化すべきものでも無いでしょう。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の大小立詰二本目袖摺返
「打太刀は仕太刀の横に立つ。打太刀横より仕太刀に組みつく、仕太刀肱を張りて一と當てすると同時に直に打太刀の刀を足にすけて後に投るなり(五藤先生は「一と當して中に入り刀を足にすけ後ろへ投げる」と記せり)左右共同前。

*曽田先生の業附口伝其の儘です。

 

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2018年3月10日 (土)

曽田本その1の3業附口伝読み解く4大小立詰1〆捕

曽田本その1
3業附口伝読み解く
4、大小立詰
一本目〆捕
 互二對立スル也打ハ両手ニテ仕ノ柄ヲ握ルヲ仕ハ左手ヲ以テ打ノ左手首ヲ握ル也更二□ノ時スグニ仕ハ右手ニテ打ノ両腕ヲ締メ込ミ我体ヲ台二シテ之レヲ極メル也
 (敵両手ニテ柄ヲ握ル左手ニテ敵ノ左ノ手首ヲ押へ躰ヲ込ミ〆付ル)
読み
 互に対立する也 打は両手にて仕の柄を握るを 仕は左手を以て打の左手首を握る也 更に□(其)時直に仕は右手にて打の両腕を締め込み 我が体を台にして之を極める也
 (敵両手にて柄を握る 左手にて敵の左の手首を押へ体を込み締め付ける)

古伝神傳流秘書大小立詰 四本目〆捕
 相懸りに両方より懸る時相手両手にて我刀の柄を留我左の手にて相手の脇つぼへ入れて両手を〆引上如何様にも投る也
読み
古伝神傳流秘書大小立詰四本目〆捕
 相懸かりに両方より懸かる時 相手両手にて我が刀の柄を留 我左の手にて相手の脇坪へ入れて両手を締め引上げ 如何様にも投げる也
読み解く

 仕は太刀を差し、打は小太刀を差し互いに相対して立つ。立ち位置は手を伸ばせば相手に十分触れる事ができる距離を想定します。
 お互いの体格を合わせる様な、安易な稽古はせずにどんな人とでも勝てる事を学ぶべきでしょう。

 互いに向かい合って立ちます。打は両手で仕の柄を握って抜かせないようする。仕は左手で打の左手首を握り、即座に打の両腕の肘に右手を掛け、体をぐっと付け込んで極める。
 五藤先生は「左手首を押へ、・・・両肘折を押へ・・」と押へると記述されています。

*
 古伝神傳流秘書では〆捕は四本目でした。曽田先生による五藤先生の業附口伝大小立詰では〆捕は一本目になっています。この入れ替りの順番も何故か疑問です。全業を終ってから考えてみます。
 大小立詰は我は太刀を差し、相手は小太刀を差しての立合いです。刀を抜く以前の攻防を習うもので、居合は刀を抜くものとばかり思っていたのでは、柄に手を懸けるや制せられてしまいます。

 双方相懸りに歩み寄る時、相手我が柄を両手で押さえて抜かさない様に制して来る。我は左手で相手の脇坪に左手を差し入れて、相手の両手を抱きかかえ締め上げ左足を退くや体を沈め左脇に投げ倒す。

 此の場合は、我は柄に手を懸けている、或はいない、特に指定されていません。三本目の鍔留が柄に手を掛けた処其の手を留められていますから、ここは柄に手を懸ける前に相手に柄を制せられるとするのでしょう。

「両手を〆上げ」は相手の両腕の肘のかがみを裏から抱く様に締め上げるのでしょう。


 第九代の林六太夫守政の時代から150年程後の業手附が五藤先生のものでしょう。
古伝は、相手の脇坪に左手を差し入れています、業附口伝では相手の左手を押えて、相手の両肱を右手で押さえこんでいます。
 其れでなければならないと言う事ではないと思いますが、先ず指示された通りと云うのが古伝を稽古する筋でしょう。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の大小立詰一本目〆捕
「打太刀、仕太刀互に対立す。打太刀は両手にて仕太刀の柄を握るを仕太刀は左手を以て打太刀の左手首を握る、更にこのとき直に仕太刀は右手にて打太刀の両腕を締め込み己が体を台にして之を極めるなり」

*曽田先生の業附口伝其の儘です。

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