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2011年12月 4日 (日)

極意の秘歌(残歌5首目敵合に)

田宮流歌伝口訣より

敵合に早き業とは何をいふ こゝろとどめぬ人をいふなり」

敵合に臨んで、敵がカウスルゾ、ナラバ、ケ様にしようと色々思慮按排にわたる時は勝負合鈍クなる也。故にそこに心を留めず敵に向ふと、まだ敵の刀も振り上げぬと云うやうふる未発の場に打込む時は必勝を得る也。愚慮按排にわたらず無分別の住より見込みたる所を一断撃に討ち取るを心とどめぬと云ふ也。

* 「早き業」の意味する所を教えているわけです。長い刀を素早くせこせこと立派に派手にする事とは違います。 

此の歌の心は既に「極意の秘歌(5首目寒事に)で書き込んであります。

霜の下りる音を聞いて敵に対するのでは負ける、敵の未発に已発する極意の歌です。

新庄藩 林崎新夢想流 秘歌之大事 5首目

「寒事尓て霜を聞遍幾心こそ 敵尓於ふて能勝盤とる遍き」

「寒事にて霜を聞くべき心こそ 敵におふての勝はとるべき」

* 直訳すれば、寒い朝に霜が結ぶを聞くほどの澄んだ心があれば 敵に出会っても勝ちを得られるであろう。

武術肝要集に「我れ已発を以って敵の未発を抑ふ。是れ業を言わず、気の位いを言うなり」とあります。

霜が降りて真っ白になってから霜を知ったのではならないと云う事でしょう。寒さの度合いで霜が降りる事を察知する位の感性を持つことを云うのでしょう。

敵の未だ発せざるに、すでに発している事を已発というのでしょう

田宮流居合和歌之伝

「寒夜にて霜を聞くべき心こそ 敵にあいての勝をとるなり」

寒夜に霜を聞くほどに心を鎮めよ、心の騒ぎは怒りから出る。臆するところより出るなり敵を打つべきと思うに、怒るに及ばず、臆するに及ばず、心のおさまり第一。

* 「早き業」のポイントはただ早ければよいのでしょうか。

下村派の古伝に英信流居合目録秘訣と云うのが有ります。其処の一節。

「当流には雷電の時の心、また、霞越しに見るが如きの心の所に大事の勝有る事を教るなり。夢うつつの如くの所よりヒラリと勝事あり、其の勝事無疵に勝と思うべからず。我が身を先土壇となして後自然に勝あり、その処は敵の拳なり委しき事は印可歌に有」

沢庵和尚の不動智神妙録から下村派の「神伝流極秘」に「間に不容髪と云う事有」でこの辺の事を取り上げています。

「敵の振り上げる太刀に心が止まり候得ば間が出来て其の儘手前の働きが抜け候敵の振り上げる太刀と我働きとの間へ髪筋も入れず程の事成ば人の太刀は我太刀たるべし

先だって大会向け演武から抜けたいと云う女剣士の話を聞いて「切れる居合がしたい」と投げかけられました。私は「切らない居合が目標です」と言っておきましたが、「切れる居合」とは抜きつけがどうの、刃筋がどうのと云う技法の問題ではなく、気の問題なのです。

「我が身を土壇となして」とか「人の太刀は我太刀たるべし」が理解できない限り「切れる居合」はありえないでしょう。

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