« 2014年4月 | トップページ | 2014年6月 »

2014年5月

2014年5月31日 (土)

曽田本その2を読むの2の4英信流大小詰8山影詰

曽田本その2を読むの2

4、英信流大小詰

8.山影詰
打は仕の後に座して後より組み付其の時は仕は頭を敵の顔面に当て敵ひるむ隙きに我が刀を抜きて打の組みたる手を切る也

◎後より組付頭にて一当てして仰向にそりかえる(五藤先生手記)

*大小詰の打の配置は、前3本(抱詰、骨防、胸捕)・右2本(柄留、右伏)・左2本(小手留、左伏)・後1本(山影詰)と打が居合膝に座すわけです。
殿中での収容人数の目安は、畳一枚に二人だそうです。膝と膝の間隔はおよそ二尺(60cm)でしょう。後ろに座す打は、もっと近いかも知れません。

打は仕の後に座している、打は腰を上げて仕の両腕を制する様に組み付き、手を組む。其の時仕は、打の顔面に後頭部を打ち当て、打が一瞬怯む隙に、腰を上げつつ太刀を抜きかけ反り返って打の組んでいる手に斬り付ける。

反り返って斬り付ける、斬り付けて反り返る、状況から最も有効な方法を即座に選択するのでしょう。
組み手に斬り付ければ、打は即座に組み手を放して引くか、斬り付けが浅ければ手をほどくや何かしてくると思います。

古伝神傳流秘書大小詰「山影詰」
「是は後より相手組を刀を抜き懸其手を切ると一拍子に我も共に後へ倒るゝ也。」

*曽田先生の大小詰「山影詰」に古伝の心持を加えれば完璧になりそうです。
組み付かれたら、頭で打の顔面を打ち付け、打の怯む隙に即座に刀を抜き懸け打の手を切ると一拍子に後へ浴びせ倒す。

大小詰は今回で終了です、次回から大小立詰です。

| | コメント (0)

2014年5月30日 (金)

曽田本その2を読むの2の4英信流大小詰7左伏

曽田本その2を読むの2

4、英信流大小詰

7.左伏
右伏の反対業也

◎左脇に座す右手胸を取り其の手を押へ前へ伏せる。(五藤先生手記)

*右伏の反対ですから、打は仕の左側に小太刀を指して居合膝に座して居る。仕も居合膝で太刀を指している。
打は腰を上げ、右手を仕の左から差し伸べて仕の胸を取る、仕は直ぐに打の右肘を左手で下から巻き込み右手で打の手首を取って前に押し伏せる。

是も、古伝神傳流秘書大小詰「左伏」とは、座仕方が同じで手附は異なります。
「是は左の手を取る也事右伏に同じ左右の違計也尤も抜かんとする手を留められたる時は柄を放し身を開きて脇つぼへ當り又留られたる手を此方より取引倒す事も有也」

*右伏の反対で、打は仕の左側に座して居る、打は右手を伸ばして仕の柄を取る。仕は左手で打の首に後から廻し胸を取り、押し伏せ様とするのを、打は嫌がって、腰を浮かせて後ろに突っ張るのを幸い、仕は柄を打の右足に懸け後に投げ倒す。
仕が刀を抜かんと右手を柄に懸ける手を、打が右手で留めた時は、柄を放して体を左に向け打の脇つぼに左拳を打ち当てる。
又柄手を打の右手で留められた時は、右手で打の右手を取り右に引き倒す事も有る。

*これも大らかな古伝の手附に工夫を凝らせて稽古して見ると良いのでしょう。

| | コメント (0)

2014年5月29日 (木)

曽田本その2を読むの2の4英信流大小詰6右伏

曽田本その2を読むの2

 4、英信流大小詰

 6.右伏
打は仕の右側へ並びて座す打左手にて仕の胸をとる仕はすぐにその腕を巻き込みて逆手をとり前に伏せる也

◎右脇に座す左手にて胸を取来る其の手を押へ前へ伏せる(五藤先生手記)

*打は仕の右側に並んで、居合膝(立膝)に座して居る。打が爪立つや腰を上げ仕の胸を左手で取り、仕は掴まれるや爪立って腰を上げ右腕を打の左肘に下から巻き込み、右手を打の手首に取り、前に押し伏せる。

古伝神傳流秘書大小詰「右伏」と様子が違います。
「我右の方に相手並び座し柄を取られたる時直に我右の手を向うの首筋へ後より廻し胸を取押伏せんとする相手いやとすくばるを幸に柄を足に懸けて後へ投倒す又抜かんとする手を留められたる時も右の通りに取倒す」

*大小詰は、打は小太刀、仕は太刀を差し、居合膝に詰め合って座して居ます。ここでは打は仕の右側に並び座して居る。
打が左手で柄を取る処、仕は左手を鍔に掛け抜き取られない様にして、打の首に右腕を廻し後ろから打の胸を取り、押し伏せようとする、打はそうはさせじと後ろに突っ張るのを幸い浮足立った打の足に柄を懸けて後へ投げ倒す。又刀を抜こうとする手を留められた時も同じように取り倒す。

古伝は、この程度の手附ですから、書かれていない処は理に適う方法で工夫する処でしょう。
打は仕の右腕を首に廻され胸を取られ、押し伏せられようとするのを嫌がって腰を浮かして逃れようとする、仕はその浮足立った打の左足に柄を懸けて打を仰向けに倒す。

| | コメント (0)

2014年5月28日 (水)

曽田本その2を読むの2の4英信流大小詰5胸捕

曽田本その2の2

 4、英信流大小詰

 5.胸捕
互に対座打は仕の胸を捕へて突く仕はすぐに右手にて支え左手に持たる柄頭を敵の脇坪に当てる也又胸を捕りて引く時はすぐに刀を抜きて突く也

◎向うて居る右手にて胸をとり突く時は其手を押へ左てにて脇坪へ当てる引く時は抜きはなち刺す(五藤先生手記)

*大小詰は打は小太刀、仕は太刀を帯して対座して居ます。
この胸捕の業は、二つの業を持って居ます。
一つ目は、打が仕の胸を右手で掴んで突き倒そうとする、仕は「右手で倒れるのを支え」左手で鍔を持ち、打の脇坪に打ち当てる。「右手にて支え」の方法は倒れそうになるのを右手で支えるとしましたが、ここでは打が仕の胸を捕る右手を右手で押させない様に支えると解釈してもいいのかも知れません。
もう一つは、打が右手で仕の胸を掴み引き倒そうとする、仕は其の拍子に刀を抜き放ち打を刺突する。

五藤先生の場合は、打が右手で仕の胸を掴んで突き倒そうとする、仕は其の打の右手を右手で押さえ左手で打の脇坪を拳で打ち付ける。
もう一つは、打が右手で仕の胸を捕えて引き倒そうとする時は刀を抜き放って刺突する。

古伝神傳流秘書の大小詰「胸捕」
「詰合たる時相手我胸を取り突倒さんとする時我右の手にて其手を取り左の足を後へ引柄頭にて相手の脇へ當る又引く時は随って抜突く也」

*古伝は解りやすい、詰合って座して居る時、打が仕の胸を右手で取り突き倒そうとする、仕は打の右手を右手で取り、左足を後へ引いて打の突き倒そうとする処へ柄頭を打の脇坪に突き当てる。
又、打が右手で仕の胸を捕って引き倒そうとするならばそれに従って刀を抜き放ち突く。

| | コメント (0)

2014年5月27日 (火)

曽田本その2を読むの2の4英信流大小詰4小手留

曽田本その2を読むの2

 4、英信流大小詰

 4.小手留
打は仕の左側に並びて座す、打の抜かんとする右手を仕向き直りて右手にて捕へ引き寄せると同時に左手にて柄頭を敵の脇坪に当てる也

◎左脇に座す、抜かんとする右手を把る其手をおさへ左手にて脇坪へ柄頭を以って当てる(五藤先生手記)

古伝神傳流秘書大小詰「小手留」
立合の鍔打返に同じ故に此処にては不記

*立合は大小立詰の事ですから、その「鍔打返」
相懸りに懸り我が刀を抜かんとする其手を留られたる時柄を放し手を打ちもぐなり

是では、業名は同じでも、違う業になってしまいます。
古伝は、仕が刀の柄に手を懸け抜こうとするのを、打が仕の手を押さえて留められたので、柄手を放して打の手を拳で打ってもぐ。

曽田先生の小手留は、打は仕の左側に座っている、打が刀を抜こうとするのでその柄手の右手を、打の方に向き直って右手で掴んで引き寄せ、同時に左手で刀を握り柄頭で打の脇坪を突く。

*小手留と同様の古伝神傳流秘書大小詰では左伏でしょう。
「是は左の手を取る也事右伏に同じ左右の違計也尤も抜かんとする手を留められたる時は柄を放し身を開きて脇つぼへ當り又留られたる手を此方より取引倒す事も有也」

参考に右伏を載せておきます。「右伏:我右の方に相手並び座し柄を取られたる時直に我右の手を向の首筋へ後より廻し胸を取り押伏せんとするを相手いやとすくばるを幸に柄を足に懸て後へ投倒す又抜かんとする手を留められたる時も右の通りに取倒す」

*この辺りは混線している様です。
古伝は、良く整理されています。そろそろ古伝神傳流秘書に従って業の有り方を直していく時期かとも思います。

実は、河野百錬先生は、曽田先生からこれらの古伝を昭和23年にお借りして、曽田先生が昭和25年にお亡くなりになった4年後(昭和29年)に「無双直伝英信流居合兵法叢書」を発行されています。内容は曽田本の読み下しです。

昭和49年に政岡先生は無双直伝英信流居合兵法地之巻を発行されています。その随所に古伝神傳流秘書の教えを引用されて業解説をされると共に、古伝の組太刀を復元された写真付きのテキストは貴重です。

その後昭和57年に木村栄寿先生が細川家からお借りした伝書から「林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流傳書集及び業手付解説」を発行され、是も読み下し主体で一部夢想神傳流を元に業技法の解説をされています。
題の「夢想神殿重信流・・」は本来「無双神傳重信流・・」でしたが現在の夢想神傳流の流名を重んじられた様です。

河野先生の「無双直伝英信流居合兵法叢書」は古書として市場に出る事も無く、一部図書館にうずもれている様です。
個人の所有はもうどうなったか、幻の書籍です。此の発行を元に古伝への憧憬を河野先生はお持ちであったろうと思います。
大江正路先生を蔑ろにするつもりは有りませんが、稽古とは「昔の物事を考える事。古書を読んで昔の物事を参考にして理義を明らかにする事」とあります。

| | コメント (0)

2014年5月26日 (月)

曽田本その2を読むの2の4英信流大小詰3柄留

曽田本を読むの2の2

4、英信流大小詰

3.柄留
打は仕の右側に並びて座す仕の抜かんとする柄を留む仕の右手を頚に巻き打を前に倒さんとす倒されまいと後に反る其の時すぐに仕は打の体の反りて前足の浮きたる下より(膝)柄をかけて後へ倒す力を添うる也

◎右脇に座す抜かんとする柄をとる我れ右手にて首をまき前へ押す敵後へそるに付後とへ倒す其時柄を足へかけ倒す也(五藤先生手記)

*原文の儘でも充分動作が付けられそうです。
打の動作に和して応じる事を学ぶに良い業です。

古伝神傳流秘書大小詰「柄留」
「抱詰の通り両の手にて柄を取り下へ押付られたる時向のわきの辺りへ拳にて當扨我が右の足にて相手の手を踏み柄をもぐ常の稽古には右の足を押膝にてこぜもぐ」

*江戸中期の古伝と維新前後の大小詰の業は変わったのかその変遷は不明です。
この両方の業は全く違うものでしょう。

古伝の神傳流秘書の大小詰で曽田先生の「柄留」に相当するのは「右伏」の様です。
「右伏:我右の方に相手並び座し柄を取られたる時直に我右の手を向の首筋へ後より廻し胸を取り押伏せんとするを相手いやとすくばるを幸に柄を足に懸て後へ投倒す又抜かんとする手を留められたる時も右の通りに取倒す」

*どこかで他の流派の業の混入か、替えてはならないと云いながら変えてしまったものか解りません。
武術は変化して当然かも知れません。武器の進歩、戦術の進化、戦争目的の違い、対戦する民族との違いによる体格、体力の違い、宗教や倫理観、残虐性の違い、色々でしょう。
何を意図して変えたのか不明確な中で、少々替えてみても然したる進歩が見えない場合が往々にしてあるようです。
変える時は、変える理由も明らかでないと厄介なものです。
大江先生の土佐の居合の改変などはいい例です。明治と云う時代が及ぼした、侍の時代を消し去った中で、どれが本物か見えなくなりつつある中で、吟味・選択して掴み出したものが大江先生の無双直伝英信流なのでしょう。
是はしかし、武術の進歩や進化では無く、ほっておけば消滅、を留めた大きな変革だったかもしれません。

然し、単なる修行者や流派に所属する一道場主が業についてとやかくした処で、一門を背負う宗家とはその背負う重さは月とスッポンです、その事を忘れてはならないでしょう。

| | コメント (0)

2014年5月25日 (日)

曽田本その2を読むの2の4英信流大小詰2骨防

曽田本その2を読むの2

 4、英信流大小詰

 2.骨防(ほねもぎ 曽田メモ)
互に対座打は両手にて仕の柄を握る仕は右拳を顔にあて其のひるむときに乗じ右足を柄越しにまたぎ右足内側より右手を柄に添え右足にて敵の両手を押払うと同時に防(もぎ)取る也此の時敵は我右脇へ匍い倒る

◎向うて居る両手にて柄を押し付る時直ぐに右手にて面へ当て其虚に乗り右足を踏み込み柄へ手をかけもぐ(五藤先生手記)

*古伝神傳流秘書大小詰「骨防扱(ほねもぎ)」
「立合の骨防返しに同じ故常になし」

*この大小詰は居合膝による坐業です。立合いですから「大小立詰」にある「骨防返」の事でしょう。
「相懸りに懸りて相手我刀の柄を留めたる時我右の手にて柄頭を取り振りもぐなり」

*古伝は立業の「骨防返」と同じと云って、常の稽古では立業の大小立詰の方で稽古するのでしょう。

打が柄を両手で掴んで、抜かさない様にするので、仕は右手で柄頭を握って、左手は鍔を押さえて、上に振り上げ振りもぐ。或は右か左に振って振りもぐ。
柄が自由になれば後は居合抜きで制するわけです。

曽田先生の手附では、対座する時、打が身を乗り出して両手で仕の柄を握って押さえるので、仕は右拳で打の顔面人中或は眉間を打ち、打が怯むところを、腰を上げ左足爪立って、右足を柄越しにまたぎ右足で打の両手を押さえつけて、同時に右足の内側から右手で柄を握って柄を振りもぎ、打を仕の右側に腹這いに倒す。

柄をまたぐのは打の柄を押さえている両手をまたぎ越える事になります。
随分複雑な動作をさせています。
古伝はそこへ行くと、柄頭を握って振りもぐだけです。立業ではこれで有効でしょう。
座業では、鐺が床に当たって振りもぐのが厄介です、工夫の一つが敵を顔面打ちして怯ませる事、それでも駄目なら、右足を踏み込んで足で敵手を押しのけもぎ取る。

| | コメント (0)

2014年5月24日 (土)

曽田本その2を読むの2の4英信流大小詰1抱詰

曽田本その2を読むの2

 4、英信流大小詰(◎朱書きは故五藤先生の手記より写 曽田虎彦蔵す)

 1.抱詰
互に対座打は仕の柄を両手に手て取らんとすすぐに仕は両手にて二の腕を下より差し上ぐる様に掴み我左脇に引き倒す也

◎向て居る敵我が刀の柄を両手にて押し付ける時敵の両肘へ手をかけ「うずみ」上げ左へ振り倒す(五藤先生手記)

*「うずみ」上げる、と云う事ですが、「うずみ」の由来については、江戸時代に行われた倹約政治のため贅沢品とされた鶏肉・えびなどを堂々と口にすることができない庶民が、具を飯で隠しながら食べていたことが始まりだ と言われている。
「埋める」と解釈すればこの業を理解できそうです。

古伝神傳流秘書の大小詰「抱詰」
「楽々居合膝に詰合たる時相手両の手にて我刀の柄を留る時我両の手を相手の両ひじに懸けて体を浮上り引く其儘左の後の方へ投捨る。

*正面に居合膝に対座し、打が両手で我が柄を押さえて抜かさない様にするので、仕は打の両肘の下から両手で浮き上がる様に抱きかかえ、沈み込む拍子に左へ投げる。
或は、打は両肘を抱きかかえられ引こうとする機を捉えて仕は浮き上がる様にして左へ投げる。

うずみ上げる際、古伝に従って、打の両肘を抱きかかえる様にしましたが、「二の腕を下より差し上ぐる様に掴み」と云うもの、「両肘へ手をかけ」或は「両肘を巻き込む」、など状況に応じた方法があろうかと思います。

打が柄を取り来る姿勢も、居合膝の儘座して体を乗り出して来る、腰を上げてくる、立上って来るなど様々でしょう。
詰合之位より先は奥伝となります。様々な工夫があってしかるべきものです。

大小詰について古伝では「是は業にあらざる故に前後もなく変化極りなし始終詰合組居合膝に座す気のり如何様ともすべし先おおむねこの順にする」
とあります。業の順序も好きなようにしてもいい、業技法は変化極りなしとあります。

体術などを極められた方と、私の様な素人では応じ方が異なって当然でしょう。
心得として、特別な関節技などを使わずに即座に応じられる方法が最良と思っています。
又、力の無い者はそれなりに、力が優れて居る者もそれなりにでしょう。

| | コメント (0)

2014年5月23日 (金)

曽田本その2を読むの2の3英信流太刀打之位10打込一本

曽田本その2を読むの2

 3、英信流太刀打之位

 10.打込一本(留の打込なり)(仕打 中段)(伝書になし口伝あり)
双方真向に物打にて刀を合わし青眼に直り退く

*10本目は伝書には無いが、真向打込み合う留の打込一本、と云う事で双方中段に構えスカスカと歩み行き打が上段に取るや仕も上段に取り、打が右足で間を越して仕の真向に打ち込む、仕も右足で間を越して打の真向に打ち込打の刀に打ち勝って終る。
稽古では切先を高くして物打ちで相打ちとなる様手の内の締めを利かせ、残心を以て青眼に直り、静かに双方後方に退いて、横血振り納刀する。
しかし稽古を重ねこの「打込一本」を会得すれば、仕は打の太刀に打ち勝ち打の頭上で寸止めも出来る様になる筈です。

是が古伝の太刀打之位の留の打込ですが、大江先生の英信流居合之形の7本目真法とは異なります。(2014年5月1日)

古伝神傳流秘書太刀打之事では「打込」として曽田本では記載されています。この「打込一本」では古伝には無いと曽田先生は書いていますから古伝に記載したのは曽田先生かも知れません。木村栄寿先生の夢想神傳重信流にも太刀打之事の最後に曽田本とまったく同じに記載されていますから「打込一本」が古伝には無いと云うのは疑問ですが・・ともかくとして。
「打込:相懸又は打太刀待処へ遣方より請て打込み勝也」

*この古伝に在る、打込は「遣方より請て打込み勝」とあります。之は柳生新陰流の「合し打」、一刀流の「切落し」の極意技でしょう。
打の真向に斬り込んで来る太刀を請けて仕も真向に斬り込み打の太刀を打ち外し仕の太刀が打の真向に打ち込まれるものです。
「請て打込」の「請」に拘り、十文字請けをして打の太刀を止めるのとは違います。
仕は打の斬り懸る太刀のおこりを見抜いて、少しもそれにこだわらず、己からも進んで打ちだすので、一拍子の相打の勝となる。

大江先生の英信流居合之形の7本目「真方」とは、技に置いても、その心においても格段の違いがある事を知るものです。

| | コメント (2)

2014年5月22日 (木)

曽田本その2を読むの2の3英信流太刀打之位9心明剣

曽田本その2を読むの2

3、英信流太刀打之位

9.心明剣(仕納刀 打上段)(心妙剣ともあり(山川先生伝書))
是も相掛にても相手待ちかけても苦からず敵は真向へかむり我鞘に納てスカスカと行也其時我片手にて十文字に請る也其儘に敵引也すぐに我打込み勝也気合大事也云々最後に打込む時は敵の刀を押し除ける様にして左足を踏み込み敵の首根に打ち込む也

*古伝神傳流秘書太刀打之事では心妙剣と云う業です。
相懸也打太刀打込を抜なりに請て打込み勝也打込む時相手の刀をおしのける業あるべし

相掛でも、打は待ち掛けてもいい。打は真向に冠りですから、上段で打が突っ立って居る所へ仕がのこのこ納刀したままで間に入るのも何か納得できないので、相掛の方が性に合います。
間に入ると打が真向に打ち込んで来るのを抜くなりに片手で十文字に請ける。十文字請けですが敵の刀を直角に請けるばかりが十文字請けでは無く、敵の刀とバッテンに請け交点があるのが十文字請け位に大らかにしかし、ここは請け流しもしませんし、摺り落としもしません、抜くなりに片手でがっちり受けるのです。
受け止められて打が退く処を、仕は左手を柄に添えて刀を押しのける様にし乍ら左足を左斜め前に踏み込み、同時に刀を右から振り冠って上段に取るや真向に打ち下す。

打が退くのに合わせる様に押し退けて振り冠るのは、案外容易ですが、打が退く気配を見せない場合は右入り身に素早くなって同時に左に打の刀を摺り落して上段に振り冠って左足を踏み込んで斬り下す、請けて流す事も研究して置くと有効です。
いずれにしても片手抜請けに請けるや打ち込む業となります。

| | コメント (0)

2014年5月21日 (水)

曽田本その2を読むの2の3英信流太刀打之位8独妙剣

曽田本その2を読むの2

 3、英信流太刀打之位

 8.独妙剣(仕打 相八相)(山川先生のには絶妙剣とあり)
是も同じく抜也敵待ちかけても相かかりにても苦からず八相にかたぎスカスカと行場合にて打込也其時敵十文字に請て又我真向へ打込也其時我又本の儘にて請け面へ摺り込み勝也
我請たる時は左手を刀峯に当て次に摺り込み勝也
五歩退き納刀次に移る

*この業名も古伝の絶妙剣と入れ替わっています。
相八相でスカスカ歩み行き、仕は真向に打ち下すところ打は之を十文字に請け留める、透かさず打が仕の真向に打込んで来るのを仕は其の儘十文字に左手を刀の峯に添えて請け摺り込んで打の面に詰める。

十文字請けをするや、左足を左前に踏込み同時に体を右に開き敵刀を摺り落とし敵の面に突き込む。

敵刀を請けるや一拍子で摺り落とし詰める稽古を積む処でしょう。
十文字に受けた交点をずらさずに摺り落します。

古伝神傳流秘書太刀打之事「絶妙剣」
「高山に構え行て打込み打太刀より亦打込を請て相手の面へ摺り込み相手肩へ取る(請くる時は切先に手をそえ頭の上にて十文字に請け留むるなり)

*古伝では、打は真向打込んだところ、十文字請けされ、はっとする処を摺り落される様にしたいのですが、此処は打が十文字請けされ即座に八相に取って打込まんとするところ、仕は透かさず打の面へ摺り込んで行くとも取れます。
形は如何様の変化もあり得るでしょうし、それでなくてはならないと云うのでは、実用にはなりません。

是は詰合之位の五本目鱗形(2014年5月7日)の立業ともとれます。
英信流詰合之位「鱗形」
「坐り方同前左足を一足引きて抜合す也、其時敵すぐに我面へ上より打つ也、我もすぐに太刀の切先へ左の手を添えて十文字に請て左の足を踏み込み摺込み勝也刀を合せ血振い納刀」

| | コメント (0)

2014年5月20日 (火)

曽田本その2読むの2の3英信流太刀打之位7絶妙剣

曽田本その2を読むの2

 3、英信流太刀打之位

 7.絶妙剣(仕下段 打八相)(山川先生のには独妙剣とあり 曽田メモ)
是は我前へ切先を下げスカスカと行き場合にて互に拝み打に討也敵と我とは拳と拳と行合其時すぐに面へ柄頭を突込勝也合掛にても敵待ちかけても苦からず仕は鍔ぜりとなるや右足をドンと踏み直に左足を踏み込て敵の拳の下より人中に当る也打の構え不明なるも八相ならん  (詰合の眼関落 曽田メモ)

*ここでは「絶妙剣」と業名がなっていますが、山川幸雅先生の神傳流秘書の太刀打之位では独妙剣だと曽田先生は云っています。
この曽田本2の英信流太刀打之位は曽田本の五藤先生・谷村先生業附口伝によるもので曽田先生が実演して記述したものとの事。その際業名を「絶妙剣」と教わっていたと云うのでしょう。

仕は下段に切先を下げてスカスカと間境で上段に振り冠り、打は八相に構え同じくスカスカと行き上段に振り冠るり、双方拝み打ちに打ち下し物打ちを合わせ、互に踏み込んで拳を合わせて鍔競り合いとなる。仕はドンと右足を踏み直すや左足を踏み込んで打の柄を握る拳を下から突き上げて打の人中に柄当てする。此の際仕の構え不明だが八相であろう。

古伝神傳流秘書太刀打之位「独妙剣」
「相懸也打太刀高山遣方切先を下げ前に構え行場合にて上へ冠り互に打合尤打太刀をつく心持有柄を面へかくし突込み勝」

*相懸かりに打太刀上段、仕太刀下段に切先を下げ前に構えて進む。一足一刀の間合いにて仕太刀上段に冠り、互いに真向に打合い刀を合す。この際仕太刀は下段から打太刀を突く心持にて上段に冠ること。
互いに踏み込み拳をあわせ押し合い仕太刀は柄頭を打太刀の面へ返し顔面へ突き込み勝つ。

古伝の解釈で「この際仕太刀は下段から打太刀を突く心持にて上段に冠ること」としましたが下段に構えて場合に入り打太刀が上段から打ち下ろすので下段から切っ先を上げて打太刀の刀を摺り上げて物打を合わすとしたいのですが、難しい技です、心持ちでしょう。稽古では大いに工夫あるべきものでしょう。(2013年1月4日)

*ここでの太刀打之位では、仕打真向に打ち合う業は五本目の月影(2014年5月18日)にもありました。
今一つは詰合之位の八本目眼関落(2014年5月10日)で是は今回の絶妙剣と同じ業です。
土佐の居合の拝み打ちは双方上段から真向に打込技と、仕が下段から打の喉を突きあげる様に打の真向打ちを下から摺り上げ外す、或は鍔で受けるなど極意技が含まれたものです。

大江先生も捨てがたかったのか、英信流居合之形の五本目の「鍔留」(2014年4月29日)に名のみ残されたようです。古伝の月影の業名を変更されて組み入れられています。

| | コメント (0)

2014年5月19日 (月)

曽田本その2を読むの2の3英信流太刀打之位6水月刀

曽田本その2を読むの2

 3、英信流太刀打之位

 6.水月刀(仕中段 打八相)
是も相掛にても敵待かけても苦からず敵の眉間へ我太刀の切先を指付てスカスカと行く也敵我太刀を八相にかけてなぐる也其の時我すぐにかむりて後を勝也
詰合の水月刀に□(やや?)同じ

*英信流詰合之位の水月刀(仕打 相上段)
是も同じく立合て真向へかむり相掛に敵待かけても苦からず、我真向へかむりてすかすかと行、場合にて太刀の切先を敵の眉間へ突き込む様に突く也、其時敵すぐに八相に払う、其時我すぐにかむり敵の面へ切込み勝也。
(2014年5月11日)

詰合之位では相上段から仕は歩み行く内間境で中段に取り打の眉間に突き込んでいきます。
太刀打之位では仕は中段の儘打の眉間に突きつけて間境を越えるのです。
仕の突きを其の儘では突きこまれるとギリギリまで引き付け八相から討ち落とす。
仕は打ち落されるに従って、左足を左に踏み出し右から振り冠って右足を踏み出し真向に斬り下す。筋を替って打込んでみました。
打が遠間で撃ち落とすのであれば、仕は左足、右足と踏み込む事も有りでしょう。

古伝神傳流秘書太刀打之事「水月刀」
相手高山或は肩遣方切先を相手の面へ突付て行を打太刀八相へ払う処を外して上へ勝つ或は其儘随て冠り面へ打込み勝も有り」

*古伝もほぼ同様です、仕は打が躊躇して居れば其の儘打の眉間に突きこむ気魄を以て歩み行くのであって、払われる事を意識しすぎて間境で止まるべきでは無い、いや一瞬止まって打が払ってくるのをを誘うのも仕の工夫です。
古伝の「払う処を外して」の文言が気になります。払われるまま右に落とされそれに従って左手を上げて摺り落すや振り冠るのでしょう。
ここは、打の眉間に付けてスルスルと間境を越えるや打が打ち落さんと八相に払ってくるのを左足、右足と退いて外し同時に上段に振り冠って右足を踏み込んで面に斬り下ろす。

古伝は大らかです。

| | コメント (0)

2014年5月18日 (日)

曽田本その2を読むの2の3英信流太刀打之位5月影

曽田本その2を読むの2

3、英信流太刀打之位

5.月影(仕下段 打八相)
是も同じく抜て居る也相掛りにても敵待ちかけてもにがからず敵八相にかたきて待ちかくる也我は太刀先を下げてスカスカと行也場合にて敵八相に打処を出合て互に押し合又互に開き敵打込む処を我左足を引き立ち直りて打込み勝也
(我左足を引きたる為敵空を打ちたるを、我すぐにかむりて敵の真向に打込也体互に開たる時は脇構えの様になる也)

*大江先生の英信流居合之形五本目鍔留の原型ですが、古伝神傳流秘書太刀打之事「月影」は状況が是より明瞭です。
「打太刀冠り待つ所へ遣方右の脇に切先を下げて構え行て打太刀八相に打を切先を上て真甲へ上て突付て留め互に押相て別れ両方共車に取り相手打をはづす上へ冠り打込み勝」

打八相に構え待つ所へ、仕右下段に構えスカスカと歩み行き場合にて、打が八相に左面に打込んで来る、我は切先を上げて敵の真向に突き上げる様に摺り上げて鍔で請ける。右足を双方踏み込み拳を合わせ押し合い、機を見て双方後方に分れ車に構える、仕の左足目掛けて打が打込んで来るので左足を引いて之を外し同時に上段に冠って敵の真向に斬り下し勝。

敵の打ち込みを下段から突き上げ摺り上げて鍔で請ける、この鍔留の処を大江先生は業名に残されたと思われます。
車の構えは、現代では竹刀剣道の脇構を取るより、八相からのダイレクトな打込みなど思いますと、稍両足を開き膝を折って開き、刀刃を敵に見せる様な車構えでしょう。
鍔競り合いは、拳を合わせ押し合うのであって、鍔を押し付け合うとか、柄を押し合うとか鍔元の刃を押し合うのでは無いでしょう。

| | コメント (0)

2014年5月17日 (土)

曽田本その2を読むの2の3英信流太刀打之位4請込

曽田本その2を読むの2

 3、英信流太刀打之位

 4、請込(請入)(仕打 相八相)
是も同じく相掛にても敵待かけても苦からず請流の如く八相にかたきスカスカと行て真向へ討込也敵十文字に請て請流の如く裏より八相に打、其処を我も左の足を出し請流の如く止むる也敵其時かむりて表より討たんとする所を其儘左の肘へ太刀をすける也(体を右に開き下より二の腕を掬い上げる也)

*これは大江先生の英信流居合之形絶妙剣が似ています。
絶妙剣(相八相 伝書による請込なり 之は請込のことを記せり)
打は其儘にて左足を出し体を斜め向きに八相となり、仕は青眼より左足を出して八相となり、仕は其の儘右足より五歩進み右面を斬る、打は八相より左足を引きて仕の太刀と合す、仕は左足を出し打は右足を引きて前の如く打ち合わせ、打は左足を引きて上段構となり斬撃の意を示す、之と同時に仕は右足を出して右半身とし中腰となりて左甲手(? 曽田メモ)を斬る、静かに青眼になりつゝ打は三歩出て仕は三歩退く。

大江先生は仕は右面打ち・左面打ち・左甲手斬り。打は右面相打ち・左面受け・上段に取って甲手を取られています。仕は前進し攻める、打は後退して請けるです。
古伝は、仕は同様に前進しますが、打の後退しながらの打ち込みを受けています。
打が上段に振り冠る処右半身になって下から掬い上げる様に(すける)二の腕を掬い斬りします。

古伝神傳流秘書太刀打之事「請入」
「前の如く打合相手八相に打を前の如く留又相手より真甲を打を体を右に開きひじを切先にて留勝」

*前進しながらの打ち込み、受け止めはスムースな人も後退しての打ち込みはどことなく無様です。
しっかり退き足を地に付けて打込まなければならないのでしょう。仕もどこへ打込まれるかもわからない内に受け太刀の形を取って待つような事をせずしっかり振り冠ってから受け太刀になるものです。さもないと打は慌てて打込むので腰の引けた手打ちの無様になる様です。
そんな打もお粗末ですが・・・。

| | コメント (0)

2014年5月16日 (金)

曽田本その2を読むの2の3英信流太刀打之位3請流

曽田本その2を読むの2

 3、英信流太刀打之位

 3.請流(仕打 相八相)
是は敵も我も八相の構にて行真向へ討込也(敵は待ち居ても相掛りにても苦からず)敵十文字に請て又八相にかけて打込也我其時左の足を一足踏み込て裏を止ると敵又引きてかむる処を我其儘面へ突込也敵其時横に払う也其処を我体を開きかむり後を勝也

*これが古伝の請流です。大江先生の受流とは全く異なります。
相方スカスカと歩みより、仕は右足を踏み込んで正面真向打ちする、打は十文字請けに請け、請けるや右足を引いて八相に左面を打って来るので、仕は左足を踏み込んで八相の裏に受け止める(逆八相)、打又引いて左足を引いて上段に振り冠る処、仕は右足を踏込み敵の面に突きこんで行く、打は其の時右足を退いて仕の突きを八相に払うを体を左に披き払われるに従い右から振り冠って真向に打ち下して勝。

十文字請けとは敵の打込む刀に十文字に交差する様に刃を持って受けるのを云います。要するに×に請ける、左手を切先に添えて請けるもありでしょう。
ここは打は相打ちとなるや退りながら攻めて行きます、仕は踏み込みながら受けています。打が退る処、面に突きこまれ思わず八相に払ってしまう、払われたのに従って「請け流し」に体を開いて敵刀を摺り落とし乍ら上段に振り冠るわけでここが「請け流し」なのでしょう。

古伝神傳流秘書太刀打之事「請流」
「遣方も高山相手も高山或は肩へかまえるかの中也待処へ遣方歩み行き右の足にて出合う打込を打太刀請扨打太刀の方より少し引て裏を八相に打つを左足にて出合うて留相手又打たんと冠るを直に其儘面へ突込み相手八相に払うをしたがって上へ取り右の足にて真甲へ勝」

江戸中期の手附と明治維新の手附は同じ動作を要求しています。請け流しは請けた拍子に流す、であって受け止めてから流すのでは無い教えでしょう。打の動きに仕は間合いを開けずにぴたりと寄って攻防しています。

古伝は上段又は八相の構えから入りますから、真向打ちもしくは左面打ちでしょう。
スカスカと歩み寄るのを覚えたいものです。大江先生の英信流居合之形が虎走りに寄りますのでその様にしてしまうのですがそれでは、やたら力んで早くなるばかりで、申し合わせのチャンバラになってしまいます。

| | コメント (0)

2014年5月15日 (木)

曽田本その2を読むの2の3英信流太刀打之位2附込

曽田本その2を読むの2

3、英信流太刀打之位

2.附込(附入)(仕打 相納刀)
是も出会の如く相掛にて右の足を先にして場合にてさかさまに抜合せ敵の引かんとする処を我左の足を一足付込左の手にて敵の右の手首を取る此の時は左下に引きて敵の体勢を崩す心持にてなすべし互に刀を合せ五歩退き八相に構え次に移る
詰合拳取の立業

*是は大江先生の英信流居合之形の二本目拳取の元になったものです。
この業名が「附込(附入)」と云う事は、一本目と同じように、逆さまに抜合わせ「敵の引かんとする処を我左の足を一足付込」の附け込む処が稽古のポイントでしょう。
敵が均衡を破って次の行為を為そうとするのを、間を開けずに附け入るのです。同時に左足を敵の右足側面に踏込み、左手で敵の柄手の右手首を取って左下に引き下ろし敵の体勢を前に崩し、敵の胸を突く。
拳取りにばかり意識が先行し、左手を伸ばして敵手を取りに行くのではなく、左足を踏み込むと同時に体も移動させて敵手首を制して下に引くのです。
附け込む意識を指導出来ませんと、打が動く前に飛び込んでしまう仕がやたら目立ちます、ここは打の退く動作の起こりを捉える待つ気も大切な所でしょう。

大江先生の英信流居合之形拳取
 2.拳取(立姿 納刀 伝書による附込なり 曽田メモ)
一本目同様虎走りにて出て膝にて抜き合せ、仕は左足を打の右足の側面に踏込み左手にて打の右手頚を逆に持ち下へ下げる、打は其儘にて上体をやや前に出し、仕はそれと同時に右拳を腰に当て刀尖を胸に着け、残心を示す、仕は一歩退く打は一歩出て青眼の構えとなる(仕は五歩青眼にて退り打は其の儘にて位置を占む)

古伝神傳流秘書太刀打之事「附入」
前の通り抜合せ相手後へ引かんとするを附入左の手にて拳を取る右の足なれ共拳を取る時は左の足也

*古伝も相手引く時附入って拳を取れと云っています。其の一本目の出合は右足から附け入って真向打ちでしたが、拳を取るので左足から附け入れと云います。大江先生の拳取りはこの辺の処が文面では抜けて、動作のみ優先しています。

組太刀を始めた頃、バンバン木刀を打ち合って緊張感を味わって悦に入ったものです。
ガキ大将の頃のチャンバラです。
形には先師の弛まざる工夫が詰め込まれ形も心も順番さえも充分考慮されたものです。
順番通り演じる事は出来てもその本質を見極め指導出来る人は少ないでしょう。
これらの土佐の居合の残された文章に語られている声を味わって見る事も良いのではと思います。
形は「かたち」では無い。千変万化に応じられるようになってはじめて形を知るのでしょう。

| | コメント (0)

2014年5月14日 (水)

曽田本その2を読むの2の3英信流太刀打之位1出会

曽田本その2を読むの2

 3、英信流太刀打之位

 1.出会(仕打 相納刀)
是は互に刀を納めて相掛りにスカスカと行、場合にて右の足を出しさかさまに抜き合せ、敵引く処を付込みて左足にてかむり右足にて討込む也、此の時敵一歩退き頭上にて十文字に請け止むるなり、互に中段となり我二歩退き、敵二歩進み更めて五歩づつ退く也、納刀、詰合の発早の立業。

*河野先生が大江先生の英信流居合之形を太刀打之位とカッコ書きしてしまったので、同じものと思っている先生もおられる様ですが、本数に置いてもその難しさに置いても違うものです。

大江先生の英信流居合之形はこの業を其の儘一本目の出合として置いています。すでに曽田本その2の2の1英信流居合の形(大江正路、堀田捨次郎著)の一本目出会で2014年4月25日に解説しています。

大江先生の英信流居合の形一本目出会(立姿)(納刀)
打太刀は柄に手をかける、仕太刀も打太刀の如く柄に手をかけ双方体を少し前方に屈し虎走にて五尺の距離に出て右足を出したる時膝の処にて打は請け、仕は抜打にて刀を合す仕は直に右足左足と一歩摺り込み上段より真直に打ち込む、打は左足より右足と追足に退き刀を左斜にして受け仕は二歩退く打は二歩出て中段の構となり残心を示す、之より互に五歩退き元の位置に帰り血拭い刀を納む。

古伝神傳流秘書太刀打之事出合
相懸りにかゝり相手より下へ抜付るを抜合せ留て打込相手請る右足也

*大江先生は体を屈して虎走りに出て、仕の抜き打ちを打が請けています。仕は直ぐに右足左足と摺り込んで真向打ちです。打はそれを刀を左斜めにして受けています。

古伝は双方スカスカと歩行き、場合にて抜き合せていますが、更に古い古伝は打が抜き付けるを仕が受け止めています。
打が退く処を仕は左足を出し振り冠り右足を出して討ち込んでいます。打は十文字に仕の刀を頭上で請けています。

打の誘いに仕が応ずるのも、仕が一方的に攻めまくるのも、打に攻められて隙を見出すのも、先の取り合いをするのもありでしょう。
もし打が上位者である事を誇示するならばどのようにこの業を演じるでしょう。
逆ならばどうでしょう。
道場によっては師伝と称して先生の教えだけしか知らない場合もあります。或は組太刀の合同演武と称するものが戦前の統一志向と同様に、号令一過、同じ動作を同じリズムで演じさせる場合もあるようです。
然しそれはもう武道では無く伝統的な形を真似た踊りの世界でしょう。

 

| | コメント (0)

2014年5月13日 (火)

曽田本その2を読むの2の2英信流詰合之位11討込

曽田本その2を読むの2

2、英信流詰合之位(重信流居合口伝真詰合位)

11.討込(仕打 中段(伝書にはなし)(留の打なり)
右真之詰合十一本気合極大事口伝有。
仕打中段 双方真向に打ち込み物打を合わすなり。

*古伝神傳流秘書の詰合は霞剣迄の十本です。本当の詰合はこの討込を入れて十一本だと曽田先生は云います。気合を入れて行う事が大事だと口伝にあるとおっしゃいます。

仕打中段からスカスカと歩より、双方間境で上段に振り冠って真向に打込み物打を合す。
じり、じりと退いて中段となり、双方離れて血振り納刀して終る。

この業も真向打ち合です。
詰合之位では、真向打ち合わせが、柄砕・水月・霞剣と三本続くのですから最後に討込で四本目の真向打ち合わせは無くとも良いのでしょう。
仕組みの締めから討込の業は「留の打なり」でやりたくなるものです。

居合の仕組(組太刀)は、演武会の出し物であったり、演じる事での優位性を誇示するものでも無いはずです。
従って、真剣を以て打ち合う見せものではないでしょう。土佐の居合の仕組みは敵刀を刃で請ける業も多く、鞘付木刀を以て正しい刃筋で積極的に打ち合うべきものです。

受け損じれば大怪我をする可能性が高いので寸止めの稽古や、間と間合いについては充分体がわかるまで基礎的認識は身に着けるべきでしょう。
初心の内は少し遠い間合いで、覚えて行くなどの工夫も居るでしょう。
使用する木刀も、軽いものを使って、形や手の内をしっかり身に着けるのが良いものです。
居合で真剣を抜かれる方は双方真剣で、刀が当たらない距離に離れて、運剣と刃筋を認識し合うなども稽古法に取り入れても理解できることが多くあります。

何時も同じ相手とのなれ合いなど何が目的なのか知れています、まったく初めての人との稽古、身体的差の違いも克服して稽古となるものでしょう。
師伝の違う方とも打ち合って打込む位置や請け方の違いなども知れば形の素晴らしさが増してきます。

| | コメント (0)

2014年5月12日 (月)

曽田本その2を読むの2の2英信流詰合之位10霞剱

曽田本その2を読むの2

 2、英信流詰合之位(重信流居合口伝書真詰合位)

 10.霞剱(仕打 中段)
是も互に立合也、敵待ちかけても苦からず、互に青眼の儘スカスカと行き、場合にて互に拝み打に討也、互に太刀の物打ちのあたり合たる所を(中段に直る 曽田メモ)我其儘左足を踏み込み裏より払い面へ勝也。

古伝神傳流秘書詰合霞剱
「眼関落しの如く打合せたる時相手引かんとするを裏よりはり込み真甲へ打込み勝亦打込まずして冠りて跡を勝も有り

*古伝は短い文章の中にその業のポイントをしっかり入れています。
現代風のマニュアル化していない大らかさがあります。
稽古する者に工夫をさせることも意識したのか、他流に漏れても動作がわからない様にして置いたのか、書いてない処は師匠の飯の種だったり・・・。

この業は、双方青眼に構え、スカスカと相懸りに歩み行き、間境で上段に振り冠り右足を踏み込んで真向に打ち下し物打を合わせ、右足を引いて左足に引き付け、双方中段となって物打ちを合わせる、打が退かんと左足を退く処、仕は左足を踏み込み裏から打の刀を張込み上段に冠って真向に打込む、或は上段に構えて勝を示す。

ここは打が退かんとする気をとらえて透かさず踏み込むのか、打が退こうと左足を動かす機を捉えて踏み込むのか。
気を捉えると云えば極意の業ですが、一方的な動作になるでしょう。
矢張り機を捉える中に気を捉えられるようになればと思うのですが、したり顔の人から「申し合わせの形だから」とそっけないものです。

| | コメント (0)

2014年5月11日 (日)

曽田本その2を読むの2の2英信流詰合之位9水月刀

曽田本その2を読むの2

2、英信流詰合之位(重信流居合口伝書真詰合位)

9.水月刀(仕打 相上段)
是も同じく立合て真向へかむり相掛に敵待かけても苦からず、我真向へかむりてすかすかと行、場合にて太刀の切先を敵の眉間へ突き込む様に突く也、其時敵すぐに八相に払う、其時我すぐにかむり敵の面へ切込み勝也。

*是も双方上段に構え相懸りでも打は中央で待ちかけてもいい。双方相懸りの方が仕が機を捉えて突きを入れるタイミングを覚えるには良さそうです。
仕は上段に構えて、出足から「スカスカ」と歩足で進み、間境で剣先を下げ太刀の切先を打の眉間に突き込む、打は上段から八相に斜めに払う、其の払われた拍子に仕は左足を左斜め前に踏み込み上段に振り冠って右足を踏込み打の面に打込む。

古伝神傳流秘書の詰合では「水月」
「相手高山にかまえ待所へ我も高山にかまえ行て相手の面に突付る相手払うを体を替し打込み勝」

この突きは、打を誘う為の突きで、飛び込んで突きを入れるのとは違って、仕は上段からするすると切先を下して打の眉間に切先を付けてスカスカと間境を越し、打が何をするのかと思った時には、踏み込まれれば突かれてしまう程に切先が近寄っている、思わず払ってしまうと云う仕の仕懸けでしょう。

この業と似たような業は、古伝太刀打之事「水月刀」に有ります。
「水月刀(仕中 打八)是も相懸りにても敵待かけても不苦、敵の眉間へ我が太刀の切先を指付けスカスカと行く也敵我太刀を八相にかけてなぐる也其時我すぐにかむりて後を勝也」

太刀打之事では仕は中段の儘、スカスカ間境を越えてきます。詰合も太刀打之事も同じような業ですが、何の気なしに同じように応じるものか、面白い例題でしょう。

| | コメント (0)

2014年5月10日 (土)

曽田本その2を読むの2の2英信流詰合之位8眼関落

曽田本その2を読むの2

 2、英信流詰合之位(重信流居合口伝書真詰合位)

 8.眼関落(仕打 上段)
是も互に立ち敵も我も真向へかむり相掛にてスカスカと行き場合にて互に拝み打に討也、其時敵の拳と我が拳と行合也、其時すぐに柄頭を敵の手元下より顔へはね込み勝也(右足をどんとふみ急に左足を踏み込む也互に五歩退き納刀以下同上 曽田メモ)

*相上段で古伝神傳流秘書詰合の眼関落では柄砕です。
「両方高山後は弛し木刀に同じ」
と云って省略されています。(「はずし木刀」とは太刀打之位独妙剣之事ならん 曽田メモ)に従って「太刀打之事独妙剣」
「相懸也打太刀高山遣方切先を下げ前に構え行場合にて上へ冠り互に打合尤も打太刀をつく心持有柄を面へかえし突込み勝」

上段の構えも、ここは右上段とか左上段とか後世は指示されているのですが古伝は大らかです。左右上段の業における優位性を理解して行うのか、前の業の成り行きによる出足なのか、連続する業の中での単なる稽古上の変化なのかよく理解できません。

相上段から真向打ちの相打ち、踏み込んで拳を合わせ押し合い、打が退かんとするに乗じて仕は素早く柄頭を返して打の顔面に柄当てする。
この際均衡を破る様に仕がドンと右足を踏み鳴らし腰を沈めるや左足を踏み込んで突き上げる様に柄頭を突き込む。と云うのを曽田先生は仰っています。

鍔競り合いの場合、竹刀剣道の方は、竹刀が相手の体に触れて居たり、及び腰の鍔競り合いなど、真剣ではありえない様子が儘見られます。
又鍔同士を押し合うとか柄同士を押し合うとか云いますが、土佐の居合は柄を握る右拳の山を押し合うのです。

この眼関落は鍔競り合いからの勝ち口を教える様に見えますが、ここは上段からの真向打ちの極意業を稽古する所は決して疎かにしてはならない処と思います。
上段から我が正中線に真直ぐ打込むのであって、切先を外した受け太刀では意味は有りません。
其の儘打込めば新陰流の「合打」です。物打触れた位置で双方刀を握り締めます。

| | コメント (0)

2014年5月 9日 (金)

曽田本その2を読むの2の2英信流詰合之位7燕返

曽田本その2を読むの2

2、英信流詰合之位(重信流居合口伝書真詰合位)

7.燕返(仕納刀 打左上段)
是は敵も我も立也、敵は刀を抜てかむる、我は鞘に納めて相掛にて行く也、場合にて敵我面へ打込む也、我其時右片手にて抜き頭上にて請け、すぐに左手を柄に添え打込む(右側 曽田メモ)也、敵又表より八相に払う也、我又すぐにかむりて打込む(左側 曽田メモ)也、敵又すぐに裏より八相に払う也、我又すぐにかむりて敵の面へ打込む(左足を一足踏込 曽田メモ)也、其時敵後へ引我空を打つ也、其時我切先を下へ下げ待也、敵踏み込みて我が真向へ打込むなり、我其時左足より一足退り空を打たせ同時にかむりて一足踏込み敵の面へ勝也。
互に五歩退り血振り納刀以下同上。

*仕は納刀の儘、打は上段に構え、相掛に歩み行く。
間に至りて打が真向に打込んで来るのを、刀を抜き出し右足を踏み込んで片手にて顔前頭上にて請け、即座に左手を柄に添え、左足を踏み込んで打の右面を打つ、敵右足を引いて八相に払う、仕は又すぐに振り冠って右足を踏み出し左面を打つ、打は直ぐに左足を引いて裏八相に之を払う、仕は直ぐに上段に振り冠って左足を踏み出し打の真向に打ち下す、打は右足を大きく退いてこれを外す、仕は其の儘切先を下げ打に打ち込ませんと誘う処、打が真向に打込んで来るのを左足を退いて打に空を打たせ、右足を踏み込んで打の面に打込み勝。
仕打の攻防で仕が前進して、打ち込み打は退りながら之を受ける様にしましたが。
仕打攻防で仕の斬り込みが左右足の踏み替えで切り返すならば、打も退かずに足の踏み替えで応じるのも良いでしょう。
大江先生の英信流居合之形を稽古していますと、仕の攻撃は踏み込んで行くばかりですが古流剣術は、足の踏み替えによる筋を代わりつつ斬り込み同様に請ける動作も身に着けるものと思います。

古伝神傳流秘書詰合「燕返」
「相手高山我は抜かずして立合たる時相手より打込むを我抜受に請る相手引くを付込み打込相手右より払うを従って上へ又打込払うを上へ取り打込扨切先を下げて前へかまえ場合を取り切居処へ相手打込を受流し体を替し打込勝又打込まず冠りて跡を勝もあり」

*古伝の燕返しは、打が打ち込んで来るのを右足を踏込み抜受けに請け、打が下がる処左足を踏み込んで附け込んで打ち込む。
打は右より八相に(斜めに)払ってくる、払われたのに従って上段に振り冠り右足を踏み込んで打込む。
打はそれを逆八相に払うに従って上段に取り真向に斬り下す。打はそれを後へ退り仕に空を打たせ、仕は切先を下げて刀を前に構え待つ処へ打が真向に斬り込んで来るのを下段から突き上げる様に受け流し体を左へ替って真向に打ち下し勝。
打込まずに上段に振り冠って構えて位勝ちも有。

*古伝も少々抜けがあってそこは工夫ですが、どうしても速い動きになるので仕打共に良く相手を見て攻防する事を学ぶところだろうと思います。
間と間合いを十分認識する事、受け太刀では無く双方払う、或は摺り込む、突き上げる受け流し、体の筋変えなど盛りだくさんです。

| | コメント (0)

2014年5月 8日 (木)

曽田本その2を読むの2の2英信流詰合之位6位弛

曽田本その2を読むの2

 2、英信流詰合之位((重信流居合口伝書詰合位)

 6.位弛(仕座納刀 打左上段)
是は敵は立ち我は坐する也、敵は太刀を抜てかむる、我は鞘に納めて右片ひざ立て坐する也、敵スカスカと来て拝み打に打也、我其時あたる位にてすっかりと立ち其儘左足を一足引きて抜、敵に空を打たせ同時に右足を一足踏み込み面へ切り込み勝也。

古伝神傳流秘書の詰合「位弛」
「我居合膝に坐したる所へ敵歩み来りて打込むを立さまに外し抜打に切る或は前の如く抜合たる時相手より打を我も太刀を上へはずし真向へ打込み勝

*この業は大森流の逆刀の組太刀版でしょう。「向より切て懸るを先々に廻り抜打に切・・」
位弛の読みは「くらいゆるみ」でしょう。弛は「はずし」でしょう。

打は鱗形が終了するや、納刀して五歩下り、仕は其の位置で納刀して居合膝に坐す、打は刀を抜き左上段に取りスカスカと間境を越えるや右足を踏み込んで仕の真向に打ち下す、仕は刀に手を懸け物打ちまで抜出し爪先立って間合いを計り、打が真向打ち込むや左足右足と立上りつつ後ろに退き、刀を頭上より左肩を覆う様に抜き取り、打の真向打ち下しを外し、右手を返すや双手上段に振り冠って右足を踏込み打の真向に打ち下す。

大森流の「逆刀」、大江先生の正座の部の「附込」でしょう。
太刀打之位の「月影」の打が真向に打込むのを仕は右下段から突き上げて摺り上げて外す運剣も稽古しておきたいところです。
打の打ち込みを充分引き付けて外す緊張する業です。

| | コメント (0)

2014年5月 7日 (水)

曽田本その2を読むの2英信流詰合之位5鱗形

曽田本その2を読む

 2、英信流詰合之位(重信流居合口伝書真詰合位)

 5.鱗形(仕打 納刀)
坐り方同前左足を一足引きて抜合す也、其時敵すぐに我面へ上より打つ也、我もすぐに太刀の切先へ左の手を添えて十文字に請て、左の足を踏み込み摺込み勝也、刀を合せ血振い納刀。

*この業はこの詰合之位の一本目「発早」の返し業です。
一本目では、仕打共に左足を引いて下で刀を合せ、其の儘左膝を着いて仕は打の真向に打込んで、打がそれを切先に左手を添えて十文字に請けました。仕が打を刀ごと両断するもので、太刀打之位の一本目「出合」の座業でした。

これは、仕打逆に演じています。「発早」同様に下で刀を合せ、打は左膝を着くや真向に仕の頭上に打込みます。
仕は切先に左手を添え打の真向打ち下す刀を顔前頭上に刃で請けるや打の刀を右方に摺り落して左足を踏み込んで打の喉元に切先を付けて詰める。
間が近ければその足の儘詰めるも出来るはずです。

土佐の居合の組太刀は良く出来ています。
十文字請けを充分身に着けたとしても所詮受け太刀ではそれまでです。八重垣では受け太刀を学んだので受けただけでは打が攻めながら切り返して次々に打込んできました。打が退く隙に付け入って勝ったのです。

古伝神傳流秘書詰合「鱗形」
「前の如く抜合せ相手打込む八重垣の如く切先に手を添え請留直に敵の太刀を摺落し胸をさす也」

鱗形では真向打込みを請けるや摺り落して勝ちに転ずる事を学ぶのです。
附込-拳取-岩浪の業技法の展開もすでに稽古してきましたからよく理解できます。

ここで十文字請けからの摺り落しを一拍子で出来る様に充分稽古して置けばその変化技はいかようにも進化していくはずです。

| | コメント (0)

2014年5月 6日 (火)

曽田本その2を読むの2の2英信流詰合之位4八重垣

曽田本その2を読むの2

2英信流詰合之位(重信流居合口伝書真詰合位)

4.八重垣(仕打 納刀)
是も同じく詰合て坐し、前の如く左足を一足引てさかさまに抜合也、敵其儘我面を打つ、我又太刀の切先へ左手を添えて面を請くる也、それより立て敵すぐに我右脇を打つを我其儘刀を右脇に逆さまに取りて此の時右足を一足引き請け留る也、敵又立ちて左の脇を打ち来るを我又左足を一足引きて左脇を刀を直にして請け止むる也、敵又上段より面へ打ち来るを我又右足を引きて上を請て、敵かむる所を我右足より附込み勝也、刀を合せ原位置に帰り血振納刀。

古伝神傳流秘書詰合「八重垣」
「前の如く抜合たる時相手打込を我切先に手を懸けて請け又敵左より八相に打を切先を上にして留又上より打を請け相手打たんと冠るを直に切先を敵の面へ突詰める
(我が切先に手を懸けて請け敵左より八相に打を切先を下げて留又敵右より八相に打を切先を上げて留め又上より打を頭上にて十文字に請け次に冠るを従て突込むもある)

*八重垣の業名ですが大江先生は、大森流を正座の部と改変される際この業名を大森流の陽進陰退(陰陽進退ではありません)に使ってしまいました。今の正座の部八重垣です。
恐らくこの「詰合」を永久消滅させようとしたのでしょう。

明治と云う時代が維新の名の元に多くのものを置き去りにしました。
幽かな明かりを頼って伝承者を中学生に求め、彼らの成長に期待しながら、覚えやすく、学びやすく、教えやすく、土佐の居合の真髄を求められる幾つかに絞り込んだのでしょう。と思いたいのですが真意は解りません。
其の為に聊かおおらかさを失って重箱の隅をつつくような業名になってしまったものもあるようです。

大森流の陽進陰退は横一線の抜き付けを躱した相手を追って真向に打ち下し、瀕死の相手が斬り込んで来るのを受け止め真向に打ち下す、のでした。
この詰合の八重垣も同様に打が仕を追い込んで行く内、機を見て仕に逆襲されるドラマす。

打は左足を引いて逆さまに打ち合うや、左膝をついて上段となり右足を踏み込んで仕の真向を打つ、仕も左足を引いて逆さまに打ち合うや、打の真向打込みを左膝をついて切先に左手を添えて十文字に請ける。
打は腰を上げ中腰になるや上段に振り冠り左足を踏み込んで仕の右胴を八相に打つ、仕は
右足を一歩退いて切先に左手を添えたまま右脇に切先を逆さま(下)にして、柄を上にして刀を立てて刃で請ける。
打は再び上段に振り冠り右足を踏み込んで仕の左胴を八相に打つ、仕は左足を一歩退いて切先に左手を添えたまま切先を上にして、柄を下に左脇に立て刃で請ける。
打は更に左足を踏み込んで上段から真向に打込む。仕は右足を一歩退いてこれを切先に左手を添えたまま頭上に十文字に刃で請ける。
打は左足を一歩退いて上段に振り冠る処、仕は右足を踏込み切先を打の喉元に付け勝。

| | コメント (0)

2014年5月 5日 (月)

曽田本その2を読むの2英信流詰合之位3岩浪

曽田本その2を読む

2、英信流居合詰合之位(重信流居合口伝書真詰合)

3.岩浪(仕打 納刀)
是も同じく詰合て坐する也、前の如く左の足一足引てさかさまに抜合せ、敵よりすぐに我右の手首を左の手にてとる也、我其儘敵の右の手首を左の手にて取り、此の時右手に持てる刀をはなして相手の右肘の辺りに右手を添えて我が左脇へ引倒す也。刀を合わせ血振い納刀。

土佐の居合の仕組の面白い処です。
古伝神傳流秘書の太刀打之事では「附入」、詰合では「拳取」、そのあとに「岩浪」と、立業で一本、立膝で二本の、附け入って拳を取る業があります。

附込では、打が後へ引かんとするを附け入って左の手にて拳を取る、右の足で附け入るのが一本目の出合で学んだから今度は、拳を取るので左足から附け込むのだと云います。

詰合では、太刀打之事が立業ならば、今度は居業の場合の附け入って拳を制して、しっかり相手を崩して刺突せよと次のステップを示しています。

次の岩浪では、相手より我が拳を制しに来るので、我も相手の拳を制して、固められない様に刀に執着しないで刀を放してしまい、右手を自由にして相手を投げ飛ばせと云います。

術のレベルアップを自然に手に入れられるように組み込まれている様に思えてきます。

古伝神傳流秘書詰合「岩浪」
「拳取りの通り相手より拳を取りたる時我よりも前の如く取り我が太刀を放し右の手にて敵の肘のかゞみを取り左脇へ引たおす」

ここまでには、一方的に斬り込んでいた下への抜き付けの機微も少しは知りえるでしょう。
相手が取った我が刀を持つ右拳の開放もいくつもの方法が考えられそうです。
肘のかゞみ付近の筋を押さえるとしびれてなすが儘にされたり、引き倒しも投げ飛ばしも可能で、武術の門に入る事になります。
附け込む事が出来ていればさまざまに優勢を保持できそうです。
形としても、勝負がついてから、打を引き起こすとか、打が仕の刀の位置まで誘導するとか業の位も高くなってきます。
形を「かたち」や「申し合わせ」などとせずに形の持つ奥深さを味わってみたいものです。

| | コメント (0)

2014年5月 4日 (日)

曽田本その2を読むの2英信流詰合之位2拳取

曽田本その2を読むの2

2、英信流詰合之位(重信流居合口伝書真詰合位)

2.拳取(仕打 納刀)
(伝書に擧取とあり誤ならん 曽田メモ)
是も同じく詰合て坐しさかさまに抜合すこと前同様也、我其儘左の足を踏み込み、敵の右手首を左手にて押へる也。後同断(血振納刀)

*拳取を擧取と伝書には書いてある、文字の間違いだろうと曽田先生は云っています)
「擧」はあがる、あげる。「拳」はこぶし。
是は一本目の発早と同様、詰め合って座し、左足を引いて逆さまに抜合わせ、我は左足を敵の右足の側面に踏込み敵の右手首を左手で制して、柄を腰に切先を敵の胸に付け勝、血振り納刀する。

古伝神傳流秘書詰合「拳取」
「前の如く楽々足を退抜付我が左の手にて相手の右の拳を取り制す也」

*拳の制し方は師伝によりいろいろある様です。
簡単なのは、敵の甲側右手首を左手の拇指で押さえ握り込み下へ押し下す。
敵の右手の甲に左手拇指を押し付け四指を掌に付けて捻り下へ押し込み下す。
拳を取るきっかけは、打が退かんとする起こりを捉えて素早く付け入って行く事、
ポイントは拳を制するや打の態勢を前に崩し打の刀を制して胸を突く事

見ていますと、順番通りに仕が一方的に打を制しています。先の取り合いとは打の仕懸けに乗じて取るものでしょう、相手の動きを無視して仕の順番ばかり優先ではいくら稽古を積んでも気を読む事も機に乗ずることも無く、何ら上達する事にはならないでしょう。

この拳取は立業の太刀打之事では「附入」と云う呼称を貰っています。
「抜合せ相手後へ引かむとするを附入り左の手にて拳を取る・・」

詰合では附け入る事を充分出来るようになったとして、次のポイントは敵を制する手法を深く学ぶことでしょう。

| | コメント (0)

2014年5月 3日 (土)

曽田本その2を読むの2の2英信流詰合之位1発早

曽田本その2を読むの2

 2、英信流居合之位(重信流居合口伝書真詰合位)

 1.発早(仕打 納刀)(八相 伝書曽田メモ)
是は互に鞘に納めて詰合て相向いに右膝を立て座する也、互に左足を一足引きて倒様に抜相いする也(互いに右膝へ抜付ける)、其の儘膝をつき仕太刀はかむりて面へ打込む也、此の時打太刀は十文字に頭上にて請け止むる也、互に合せ血振い足を引き納刀。

*この英信流詰合之位は何を出典として曽田メモに記入されたのか記載は有りません。
括弧内の(重信流居合口伝真詰合位)と云うのも其の儘解すれば、是は林崎甚助重信翁から口伝されたものの伝書で真の詰合の位だと云うのでしょう。

此の原本はどうやら五藤正亮、谷村亀之丞による業附口伝で之を元に曽田先生と竹村静夫先生が昭和10年10月25日に日本古武道振興会の主催で陸軍戸山学校の天覧武道場で演じたもので、詳解してはいないが田口先生のご指導と実兄(五藤先生の高弟)の口伝によりあらましを記したり。とある「業付口伝」によるものだろうと思います。(2012年3月13日原文による詰合之位、2013年7月17日曽田本を読む業附口伝2詰合之位1八相)曽田先生の覚書です。

古伝神傳流秘書の詰合(重信流也従是奥之事極意たるに依而格日に稽古する也)発早
「楽に居合膝に座したる時相手左の足を引下へ抜付るを我も左の足を引て虎の一足の如く抜て留め打太刀請る上へ取り打込み勝也」

*ここでは省略しますがこの英信流詰合之位には線描きで業の有り様を描いたものが付属します。曽田本(曽田本その1)の業附口伝には線描きは有りませんでしたが、追加されたものかよくわかりません。業のポイントが充分理解できるものです。

河野先生の昭和13年の無双直伝英信流居合道の第五節居合形之部は曽田本その2とほぼ同じものです。

河野先生の詰合之位(以下記す所は当流古伝の略術にして文責筆者に在り)
八相(口伝に発早とあり)「打太刀、仕太刀共も納刀より始む。互に鞘に納めて詰合いて相向い右膝を立てゝ坐するなり、互に左足を一歩退きて逆まに抜き合す(互に右膝に抜き付ける)、其の儘膝をつき仕太刀は冠りて面に打込む、此時打太刀は十字に頭上にて請け留むるなり。互に合わせ血振いし足を退きて納刀す。」

*古伝の詰合の一本目は「発早」です。「八相」ではなんだかしっくりきませんが、当て字でしょうから「一本目はっそう」と云うのがぴったりです。

土佐の居合を学ぶ最も適切な組太刀と思いますが、大江先生の居合に無いと云う事か奥居合への門を潜らずに居る様な気がします。
大森流・英信流をやって太刀打の位を習って棒をやって、詰合・大小詰・大小立詰・大剣取を修行して奥居合に至る様に順番付けされている様に思います。
仕上げは和でしょう。

刀を帯びずとも応じられる土佐の居合の修行の様です。

| | コメント (0)

2014年5月 2日 (金)

曽田本その2を読むの2の1英信流居合の形8終礼

曽田本その2を読むの2

 1、英信流居合の形(大江正路先生、堀田捨次郎先生著)

 8.終礼
刀を納めたれば互に右足より出て四尺の距離を取りて左足を右足に揃え直立し、同体にて正座し右手にて腰の刀を抜き、前に置き互に礼をなし、更に刀を右手に持ち竪立とし、左手に持ち変え左腰部に当て右手は右膝の上に乗せ、其儘右足より立ち左足を右足に揃え互に三歩退り直立となり神殿に礼を行い、対向し三歩ずつ退り黙礼を行い左右に別る。

*此の終礼は堀田先生の見たままなのか、当時の大江先生の指導がどうだったか不思議な気がします。
まず、「腰の刀を抜き、前に置き互に礼をなし」ですが之は「刀礼」と教えられて来ました、「互いの礼」は、ここでは無く道場の下座に戻って為すと教えられています。

此の礼の後の立ち方は「右足より立ち左足を右足に揃え」ですから正座から、右足を一歩踏み出し立上り左足を右足に揃えて立って居ます。
互に四尺の距離を取って直立し、膝をついて座したのですから、其の儘座りますと互いの膝の距離は二尺位でしょう。刀礼にしろ互いの礼にしろギリギリです。
ここで右足を踏出して立ち左足を右足に踏み揃えますと、互いの距離は二尺以下でしょう。

それから互に三歩下って神殿の礼です。小さく下がれば双方の距離は八尺、自然の歩幅で十尺でしょうか。
神殿の礼の刀は「左手に持ち替え左腰部に当て」其の儘ですから、左手に持ったまま礼をしています。
是が大江先生の始めも、終りも神殿の礼の作法だったのでしょう。
現在は右手に持ち替えていますが之は、大日本武徳会の剣道形の作法に習って変化したものと思っています。

大江先生の動作を見てこの手ほどきを書かれているならば、刀を右手に持ち替えない神殿の礼が事実であれば、土佐の居合はその様であったと想像され、時代が進むに従った、竹刀剣道の作法が浸透してしまったとも考えられます。

曽田本その2の2の1英信流居合の形 作法(2014年4月24日)では曽田先生は大江、堀田共著「剣道手ほどき」にある「発声」が抜けています。
「発声は相互の打合せ、或は受け又は打ち込みたるとき、其業毎にイーエーと長く引きて声を掛け合うなり。」

*このかけ声の掛け方ですが、立った位置から「イー」と間境まで声を伸ばし、打込む時に「エイ」と掛ける様に教わりました。
しかし、何処かおかしいと思います。
河野先生の大日本居合道図譜では「発声はイーエーと互いに斬り込みたる時かけ合う(イーはヤアにてもよし)(斬込む瞬間にイーとかけ、斬込みたる瞬間にエイとかける)」とあります。
立った位置から「イー」とやってしまいますと、間境で何の溜めもなく「エイ」と打込んでしまうのが普通です。特に申し合わせの「かたち」しか追えない初心者は是では力いっぱい勝手に打込むばかりです。
河野先生の方法ですと、間境で刀を抜き乍ら「イー」とやります、相手を充分見定める機を捉える事が出来る様になるものです。
政岡先生は、無双直伝英信流居合兵法地之巻で「発声 打つ・応ずる気の整った時、「ヤア」打つ時「エイ」応ずる時「トウ」要するに「ヤーエイ」「ヤートウ」の連続であって下腹に力の籠った声でありたいものである。」と同様の事を書かれていますが味わってみるものでしょう。

| | コメント (0)

2014年5月 1日 (木)

曽田本その2を読む2の1英信流居合の形7真方

曽田本その2を読むの2

 1、英信流居合の形(大江正路先生、堀田捨次郎先生著)

 7.真方(打八相 仕上段 伝書による打込なり 之は打込のことを記せり 曽田メモ)
「打は五歩下り左足を出して八相となす、仕は青眼の儘左足より小さく五歩退き上段となり右足より交叉的に五歩充分踏み込み、打の真面に物打にて斬り込む、打は右足より五歩出て仕を斬り込むと同時に左足より右足と追足にて退り、其の刀を請け留める、互に青眼となり、打は一歩退り青眼の儘残心を示し、互に五歩引き元の位置に戻り血拭納刀」

*打は八相、仕は上段、河野先生はこの構えを、大日本居合道図譜では打は八相、仕は中段と変えています。前の「請流」が青眼で分かれていますから、双方構えを変えて業に入ると大江先生はされたようです。
河野先生は、打は請流で双方青眼に構えた其の位置に残り仕は五歩退らせています。その分打を八相にさせ、仕を中段とするのも有かとも思うのですが、ここは創作された大江先生に従うものでしょう。
竹刀剣道の青眼から上段に取って真向に打ち下す事にされたかも知れません。
昭和8年の河野先生の無双直伝英信流居合術全では大江先生の打は八相、仕は上段です。
大江先生は仕は上段から打の真向に打込む、打は八相から仕に斬り込む寸前に打の動作が瞬時早いと察し、右足を踏み込んだが即座に左・右と追足で下り「其の刀を請け留める」。
どの様に受け止めるかは不明です。
河野先生は「第一本目の要領にて受ける」ですから「打は左足より追足にて一歩退き剣先を右に刃を上に柄を左に出し水平に前額上に把る」(大日本居合道図譜より)

古伝神傳流秘書の「打込」
「相懸又は打太刀待処へ遣方より請て打込み勝也」

曽田先生の五藤先生及び実兄の土居亀江先生の口伝による「打込一本」
「(伝書に無し口伝あり、留の打込なり)仕打中 双方真向に物打にて刀を合し青眼に直り退く」

この古伝及び曽田先生の手附によりますと「打込」は打が真向に打込むのを仕が請けて真向に打込む柳生新陰流や一刀流の「合っし打」「切落とし」を彷彿とさせる極意の業です。

| | コメント (0)

« 2014年4月 | トップページ | 2014年6月 »