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2014年10月12日 (日)

神傳流秘書を読む 4.英信流居合之事七本目鱗返

神傳流秘書を読む

4.英信流居合之事

 七本目鱗返

 左脇へ廻り抜付打込み開き納る

*「左脇へ廻り」ですから、相手は我が左脇に座すのでしょう。
左脇に座す相手の害意を察し、刀に両手を掛け、腰を上げ、爪先立つや右足を軸に刀を抜きつつ左廻りに相手に振り向くや、左足を引いて横一線に抜付け、倒れる相手に左膝を右足踵に引付、上段に振り冠って斬り下ろし、横に刀を開いて納刀。

現代居合の鱗返になってしまいますが、相手の想定は様々です。
殺意を口にするだけで、元の座したまま、我に振り向き我が柄を制しようとする、刀に手を掛け腰を上げた状況、我が方に振り向いて抜刀しようと刀を抜きつつある、右足を踏み込まんとする寸前。
あるいは、立ち上がって抜刀寸前などいくらでも仮想敵の想定は可能です。
我も相手の動作に先んじて応じる心持を以て相手の首又顔面に抜き付けなければなりません。
相手が腰を上げ振り向いて抜き付けようとするならば、左足の引きは低く、立ち上がりつつあれば合わせて高くでしょう。

古伝の極意は「柄口六寸」でした。
この抜き付けは、相手が抜刀しようと柄に手を掛け抜き出すその右小手に抜きつけるものです。
左足を後方に引いて、横一線の抜き付け、下からの切り上げ、上に抜き上げていれば、高く抜き付けるなどでしょう。

相手の座す位置は、畳一畳に二名の割り付けでは、せいぜい三尺以下の近間でしょう。
決められた想定の元に何度やっても同じようになる形は充分学ぶとしても、空間刀法に依る勝手な動作では相手との攻防にはなり難かろうと思います。
常に相手を意識した居合でありたいものです。

現代居合の無双直伝英信流の鱗返を稽古して見ます。
テキストは北海道滝川の坂田先生の「無双直伝英信流居合道入門」昭和48年発行。
坂田先生は初め夢想神傳流を20年近く修行され後に政岡壱實先生、山本晴介先生に講習会でお会いし無双直伝英信流を稽古されています。
テキストから見ますと河野百錬先生の大日本居合道図譜に従い、谷田佐一先生の居合詳解に居合心を刺激されていたようです。
古伝神傳流秘書も研究されておられます。

鱗返
理合:我が左側に居る敵に対し立ち乍ら其の首に抜き付け、更に上段に振りかぶり斬り下す業である。
技法:正面に対し右向に立膝。
刀を抜きかけつつ右足先を軸として左に廻りつつ低く中腰に立ち上り、正面に向って左足を後に引くや腰を伸して敵の首に一文字に抜き付け、左膝をつき乍ら上段に振りかぶり、敵の真向に斬り下し、血振り納刀。

細川義昌先生系統かと思われる広島の白石元一先生の昭和12年発行の大森流・長谷川流・伯耆流居合術手引の鱗返は「左方に立てる敵に対して行う」とあります。左方に向き乍ら左足を退きて中腰となり、横一文字に敵の胴部を斬り・・。

夢想神伝流山蔦重吉先生の鱗返は、中腰に立ち上がり敵に向くと同時に左足を後ろに引くや中腰のまま敵の座して居るこめかみに抜き付ける・・此の時敵は座したまま右向きで柄に手を掛けている状況の様です。左足を後方に引くのは相手との間に斬り間を作るためとか。

大江先生の鱗返「中腰にて左足を引きて抜付け、此の抜付けは水平とする事・・中腰は両膝を浮かめて抜付けるなり(敵の甲手を斬る)

*大江先生の(敵の甲手を斬る)の思いはどこに引き継がれたのでしょう。

昇段審査や競技会などでは決められた形で抜き付ければよい事でしょう。
地味ですが、稽古では相手の動作を都度決めて抜き付く位置によって左膝の高さを工夫する、或は抜き付ける拳の高さを変えるなど稽古の楽しさが倍増するかもしれません。
古伝の無双直伝英信流には見られない下からの小手への切上げも稽古して見るのも良いと思います。

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