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2015年7月26日 (日)

居合兵法の和歌8.如何に人腹を立つゝ

居合兵法の和歌

8.如何に人腹を立つゝ

如何に人腹を立つゝ怒るとも拳を見込心ゆる春な

*いかに人腹を立てつつ怒るとも拳を見込み心許すな

いかに人に腹をたてて怒るとも、拳をじっと見つめ、戦いの心を許してはならない。

この歌は田宮流居合歌の伝では
「人さまに腹をたてつついかるともこぶしを見つめ心志ずめる」
*相手に腹をたてて怒るとしても、己が拳を見つめ、心を静めよう。

新庄藩の林崎新夢想流の秘歌之大事では
「人い加尓腹を立徒々い可流累とも心尓刀拳者奈春那」
(ひといかに腹を立てつついかるゝとも心に刀拳はなすな)
*人はいかに腹をたてつつ怒るとしても、心に刀を持つとしても、拳は放してはならない。

多少の違いがあっても、元の歌の意味は伝わっているでしょう。
しかし、相手が怒り狂っても、あるいは我も怒り狂っても、我慢しなさいでは、都合のよい部下の操縦のための道徳教育の域を出られそうもありません。
極意ではなさそうです。もっと読み込んでみる必要がありそうです。

己の拳を見つめて、軽挙妄動を慎み真実を見極め、妄心に惑わされず、なすべきことを行うのであって刀を抜くことが唯一ではないと言うのでしょう。

誰の作った歌なのか次のような古い歌があります。
「心こそ心まよわす心なれ心に心心ゆるすな」

柳生新陰流の兵法家伝書はこの歌を解説しています。
「妄心こそが本心を迷わす妄心である、妄心に本心が心を許すな」と歌っています。
沢庵和尚の不動智神妙録にもこの歌は最終章の末尾に置かれています。
「人の知る所に於いて、私の不義を去り、小人を遠ざけ、賢を好む事を、急に成され候はば、いよいよ国の政正しく御忠臣第一たるべく候・・」と沢庵が柳生但馬に身を正せと諌めています。

武蔵も五輪書水之巻で兵法心持の事で「兵法の道において、心の持ちようは、常の心に替る事なかれ。
常にも兵法の時にも、少しもかわらずして心を広く直ぐにして、きつくひっぱらず、少しもたるまず、心のかたよらぬように、心をまん中におきて、心を静かにゆるがせて、そのゆるぎのせつなもゆるぎやまぬようによくよく吟味すべし・・心を直ぐにして、我が身のひいきをせざるように心を持つ事肝要也。
心の内にごらず、広くして、ひろき所へ知恵を置くべき也。
知恵も心もひたとみがく事専也。
知恵をとぎ、天下の理非をわきまへ、物事の善悪をしり、よろずの芸能、其道々をわたり、世間の人にすこしもだまされざるようにして後、兵法の知恵となる心也」

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