« 曽田本免許皆伝目録その4小藤亀江の根元之巻読下し | トップページ | 曽田本免許皆伝目録その6小藤亀江の根元之巻道統 »

2015年11月14日 (土)

曽田本免許皆伝目録その5小藤亀江の根元之巻訳

曽田本免許皆伝目録

その5、小藤亀江の根元之巻 訳

 抑々居合というものは、日本の奥州林の大明神の夢想に従い、之を伝えて来たものである。
 その兵術は、上古、中古、数多他流に依る違いは有るとはいえ、大きな人にも小さな人にも、力の弱い人も、剛力な人にも、合わないと云う事の無い兵術として用いられる云々。
 いつか、相応の太刀と為る、汝に、身近に起こる勝負で一命の有無の極まる処を云う。
 此の居合を、恐れ、粟散辺土の地の堺に至る共、之に不信を抱いてはならない。
 ただ、夢に現れた霊に依る処である。
 此の始まりを尋ねるならば、奥州に林崎神助(甚助)重信という者、兵術を之れ林の神明に有ればとて、百有日参籠してその満願の日の暁時に、夢の中に老翁が現れ、重信に告げて曰く、「汝、此の太刀を以て、常に胸中に思い抱く怨敵に勝つ事が出来る云々」
 則、霊夢に有るように、腰刀三尺三寸を以って大きな利を得て、九寸五分の添え差しに勝つ事、すなわち柄口六寸を以て勝つ事で、其の妙不思議な極意である。一国一人への相伝である。
 腰刀三尺三寸は貪・瞋・痴の三毒である欲望・怒り・無知に対し三部の金剛界・胎蔵界・蘇悉地によって煩悩を打ち破り智徳を以って一切を包み込む菩提の心に依って、但、脇差九寸五分に勝のである、己の運命を切り開き五鈷をもって成就する事を悟る証しである。
敵味方になる事は、是、前生の因縁の報いであり、生死一体の戦場も浄土の様に思うものである。
 これに観られるように、則、現世は悟りを得られた仏に見守られ、摩利支尊天によって加護され、来世は成仏し得る事を疑わないであろう。
 此の居合は千金を積まれても真実で無い人に、決して授けてはならない、天罰を恐れるべきものである。唯一人に之を伝える云々。
古語に曰く
 其の疾く進んだとしても、それは速く退いていく云々。
 此の意は、貴賤・尊卑・前後の輩に隔てる事無く、それを為す者を以てしても、目録印可を相違なく許し達する謂れは無い。
又、古語に曰く
それ、百錬を積んで構えをこらそうとも、すなわち茅や茨の素晴らしい荘や鄙であろうとも、兵の利を心懸け、夜自ずから之を思い、明神佛陀を祈り、忽ちその利方を得る。是に依って心は済み、身は燦然と輝くものである。
・・
*この訳文で根元之巻が言わんとする所はつかめます。
 然し其処に或る「腰刀三尺三寸勝九寸五分事柄口六寸勝之妙不思議之極意」は文字を訳しても一向に伝わって来ません。
 腰刀三尺三寸を大太刀の寸法として見るのか、九寸五分を、敵と我との間合いと考え、その大太刀の運剣法の極意とも取れます。
 いや添え差しの操法だとも勝手に解釈してしまいます。
 柄口六寸についても、敵の柄を持つ小手であろう、いや上泉伊勢守の新陰流の云う「是は吾が太刀先三寸を以て敵の拳三寸を打つ事也」かもしれません。
 現在では、土佐の居合無双直伝英信流を習う限りは、明瞭に柄口六寸は口に出して稽古すらしたことがないものでしょう。
 根元之巻はこの武術の形目録であって、さらに奥に或る奥義は形でも文字に表されたものでもないのかも知れません。
 其処には現代居合では理解しがたい太刀の操法を秘めて居たのでしょう、奥羽地方に何処かで伝承されて居るかもしれません。
 それは、土佐に伝わった古伝神傳流秘書に形としては伝わっていません、老父物語りに語られた「居合兵法極意秘訣」にも感じる事は出来ますが明瞭ではありません。
 もっと古い林崎甚助重信の時代の介者剣法にまで遡って研究し直すものかも知れません。
 密教などの仏語が頻繁に添えられて居ますが、其処に捉われても根元之巻は多くを語ってくれないでしょう。
 呪術が秘められていたと妄想するのは自由ですが、それでは剣術を学ぶのではなくなってしまいます。
 命を懸けて闘わざるを得なかった戦国時代の事ですから、人事を尽くして天命を待つ事も有りえたでしょう。その位の解釈で良いと思うのですが、いかがでしょう。
 現代の無双直伝英信流及び夢想神傳流を学ぶ者が、業技法の末節に拘って演武(演舞?)の美を追求しつつ、あの人の教え、此の人の教えと迷いながら、それでも日々稽古を重ねる中から此の一振りの意義を悟り、読み解くものかも知れません。
 次回は、この根元之巻の道統です。さらりと流します。

|

« 曽田本免許皆伝目録その4小藤亀江の根元之巻読下し | トップページ | 曽田本免許皆伝目録その6小藤亀江の根元之巻道統 »

曽田本免許皆伝目録15-11」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 曽田本免許皆伝目録その4小藤亀江の根元之巻読下し | トップページ | 曽田本免許皆伝目録その6小藤亀江の根元之巻道統 »