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2015年12月 2日 (水)

曽田本免許皆伝目録その23林崎新夢想流解説の2

曽田本免許皆伝目録

その23、津軽藩 林崎新夢想流解説の2

1.津軽藩「林崎新夢想流」原文
(平成3年居合審部会発行 林崎甚助源重信公資料研究委員会編 より)

抑居合者奥州従林之明神夢想傳之夫兵法者上古中古雖有数多此居合末世相応之太刀手近之勝負一命之有無極此居合 恐於粟散邊土之堺不審之儀不可有之唯霊夢依所也
尋此始或時奥州林崎甚助謂者依兵法之望林明神百日参籠満暁夢中告云汝以此太刀常胸中憶持得勝怨敵云々
則如霊夢成得大利腰刀以三尺三寸勝九寸五分表六寸而勝之妙不思議の極位一国一人之相傳也
 
腰刀三尺三寸者過現未之三心三身則三宝之王法是為三剱禅門有十八種剣六種剣十二種剱又是□(濟)家室中重代衲僧截断柊行也
殺人刀活人剣都在掌握中脇指九寸五分者九品蓮葉剣出離憂苦海中生死魔軍追倒釋道九曜五古之内証也
 
則為曹洞五位之秘訣敵味方成事是亦前生之業感也
生死一体而百戦場中使大寂光土也
如此観事現世摩利支尊天之護身符也
此居合千金賜以不貴伹於實當之人可傳附之
兵利心懸者晝夜思之祈神明之息得利正見依心濟身耳
 
畢竟黙然良久云
 
珊瑚枝々撑着月


2、読み下し省略
 
3、意味
先ず、言葉の意味を探ります。

1.粟散邊土の堺:
  仏教語で、遠く離れた、粟粒(あわつぶ)を散らしたような小国。インド・中国などから見て日本をさしていうことが多い。粟散国(そくさんこく)。粟散辺土(そくさんへんど)。

2.霊夢:
  神仏やそのお告げが現れる不思議な夢。
 
3.参籠:
 祈願のため、神社や寺院などに、ある期間こもること。

4.満暁:
   願い毎の叶う 満願の日の暁時
 
5.億持
    心に念じて思いとどめること。常に念頭に置いて忘れないこと。
 
6.表六寸:
  神妙剱他流にては心を明に〆敵の働を見よと云とは大に違へり生死のさかいなれば平 気とは異り然れども忘るまじき事一つ有り則柄口六寸也柄口六寸実は抜口の事に非ず極意にて伝る所は敵の柄口六寸也かまえは如何にも有れ敵と我と互に打下ろすかしらにて只我は一図に敵の柄に打込也先我身を敵にうまうまと振ふて右の事を行ふ事秘事也是神明剱也
 津軽藩の林崎新夢想流では「表六寸」ですが土佐を含め奥羽地方の伝書でも「柄口六寸」と書かれています。
 
7.腰刀三尺三寸
 腰刀三尺三寸は刃渡を指すのか、鞘を払っての長さなのかはともかく太刀を云うのでしょう。約1mの太刀を帯していたとも思えます。
8.過現未の三心三身
  前世と現世と来世三世 の至誠心(真実に浄土を願う心 )、と、深心(深く浄土を願う心 )、回向発願心(修行した功徳を回向して浄土に往生しようと願う心 )
 
9.三宝:
 仏教における「仏・法・僧」(ぶっぽうそう)と呼ばれる3つの宝物を指し、この三宝に帰依し、その上で「授」することで正式に仏教徒とされる。
10.王法:
  仏法に対する世俗の法律や慣習のこと。
 
11.禅門十八種の剣、六種の剣、十二種の剣有り:
  在家(ざいけ)のまま仏門に入り剃髪(ていはつ)した男性。入道(にゆうどう)
 
12.斉家室中重代衲僧截断:
  修身斉家治国平天下(しゅうしんせいかちこくへいてんか)「礼記」大学から天下を治めるには、まず自分の行いを正しくし、次に家庭をととのえ、次に国家を治め、そして天下を平和にすべきである。 ところから斉家いえととのう。
家をととのえ、家中を大切にし衲僧を截断する。
 
12.殺人刀活人刀:
  禅宗で、師が修行者の智慧のはたらきをとどめ、修行の完成に向かって自由自在に導くはたらきを活殺自在の剣にたとえた言葉。
 
13.九品蓮葉剣:
  九品浄土(9の等級に分けられた浄土)や九品蓮台(同様の蓮台)を単に九品と呼ぶ。浄土教で極楽往生の際の九つの階位を表しており、人の往生には上品・中品・下品があり、さらにそれぞれの下位に上生・中生・下生とがあり、合計9ランクの往生があるという考え方。九品仏はそれを表した9体の阿弥陀仏のこと。
 
14.苦海:
 大海のはてしないように,はてしない苦につきまとわれ,さいなまれている世界のこと。輪廻転生を繰返す六道の世界を海にたとえていう。
 
15.魔軍:
 悪魔の軍勢。仏道を妨げる一切の悪事のたとえにいう。
 
16.釈道:
  お釈迦様の道とでも云うのでしょう。釈道安の「大師の本は釈迦より尊きなし」から。

17.九曜五古:
  九曜は日本では、土曜(聖観音)、水曜(弥勒)、木曜(薬師)、火曜(虚空蔵)、金曜(阿弥陀)、月曜(勢至)、日曜(千手観音)、計都(釈迦)、羅睺(不動明王)の9つの星を「九曜曼荼羅」として信仰した。平安時代には交通安全に霊験があるとして車文に多く使用された。
 インド天文学やインド占星術が扱う9つの天体とそれらを神格化した神で、繁栄や収穫、健康に大きな影響を与えるとされた。
 此処では陰陽道の九星との混同もありうるかも知れません。
 「五古」は一般的は五言古詩を刺す様ですからここは「五鈷」であろうと思います。
  五鈷杵(ごこしょ)中央の刃の周囲に四本の刃を付けたもの。仏の教えが煩悩を滅ぼして菩提心(悟りを求める心)を表す様を、インド神話上の武器に譬えて法具としたものである。
 
18.曹洞五位:
  曹洞宗(そうとうしゅう)は、中国の禅宗五家(曹洞、臨済、潙仰、雲門、法眼)の1つで、日本においては禅宗(曹洞宗・日本達磨宗・臨済宗・黄檗宗・普化宗)の1つである。本山は永平寺(福井県)・總持寺(横浜市鶴見区)。専ら坐禅に徹する黙照禅であることを特徴とする。(wikipediaより)
その曹洞宗の五位とは、禅の境地を頌(詩)で表現したもので、一夜を五つに区分した五更転に対応させ、正中偏・偏中正・正中来・兼中至(偏中至)・兼中到の五つの境位と言われます。
修行のランク付けと悟りの状況を表し、凡夫の境地(正中偏)・凡夫から菩薩へ(偏中正)・菩薩の境地(正中来)・菩薩から究竟仏へ(偏中至)・究叫竟仏の境地(兼中到)
此処では曹洞五位にある様な修行の段階を経て奥義に達し、と言う様に捉えれば良いのかとも思います。奥義の意味も、より深い悟りを意味するのだろうと思います。
 
19.前生の業感:
 前世の善悪の行為が因となって、苦楽の報いを感受すること。
 
20.百戦場中大寂光土:
 戦場に於いても、法身の住んでいる浄土。真理そのものを世界としてとらえた、一切の浄土の根源的な絶対界。寂光土、寂光浄土がある。

21、摩利支尊天之護身符:
  摩利支尊天は太陽の陽炎(かげろう)が神格化されたもので、「開運・勝利」の鎮守。
 摩利支尊天は三つの顔と六本の腕を持ち、頭には宝冠、身には甲冑を着け、七頭の猪に乗っている。

22.實當の人:
  真実に当てはまる人

23.畢竟黙然:
  つまるところ口を噤んで座す。

24.珊瑚枝々撑に月付く:
  この文章は、碧巌録百則の「僧、巴陵に問う。如何なるか是れ吹毛の剣。陵云く、珊瑚枝枝撑著月」から来ているのでしょう。
 払っても払いきれない迷いの霧は、珊瑚の枝々が夫々月を支え、月を宿す様に、何の苦も無く自ずから霧消す。とでも言うのでしょう。

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