« 幻を追ってその7中山博道先生の居合6教書の2 | トップページ | 幻を追ってその7中山博道先生の居合7比較の2書き出し »

2016年3月29日 (火)

幻を追ってその7中山博道先生の居合7比較の1

幻を追って

その7.中山博道先生の居合

7、幽芳録・居合読本・幻のコピーの比較の1

 中山博道先生の口述に依る土佐の居合、「大森流及び長谷川英信流居合道(解説)」を読んで中山博道先生の居合を稽古して来ました。このコピーには大森流と長谷川流までしか記載されていません。
 所謂、無双直伝英信流でいえば正座の部、立膝の部までの業手附解説です。奥居合については有りません。
 このコピーの原本を訪ねているのですが何処にも、どなたからも応答が有りませんので「幻のコピー」としておきます。
 このコピーの信頼性を確保できるものに、中山博道先生に師事された大村唯次先生のお弟子さん方の香山会による幽芳録に納められた「鏡心録」にある中山博道口述「居合業付大森流居合術・長谷川流居合術」の内容とは多くの処で一致していますが異なるものもあるのです。
 そこで、中山博道先生が関与されたであろう教書の中で昭和9年1934年発行の太田龍峰先生の「居合読本」、昭和64年1989年発行の香山会の幽芳録、そしてこの「幻のコピー」を順次並べて中山博道先生の居合をもう一度その意義から読み直してみます。
 土佐の居合の古伝神傳流秘書では動作を簡略に手附として示されるのみで、その動作の元となる想定は業ずる者が考えてこの手附に従って稽古せよ、と云うものでした。
 太田龍峰先生の著書は、それをまず意義と云う言葉で相対する敵との攻防の状況を想定し、それに応ずる術理動作を解説した教書の仕立てにされています。恐らく土佐の居合では初めて試みられた指導書のありかたでしょう。
 教書とそれまでの手附及び伝書とは同じような感じもしますが、この意義と動作で仕立てられたものとは全く違うと思った方が良さそうです。
 教書は、読み解く能力次第では、その業を、所作に於いては自流になってしまうかも知れませんが独学で演じられるだけの仕立てになっています。
 古伝の多くは業名のみが示され、其処から先は師匠の口伝・口授・看取による指導に依って磨かれた筈です。
 手附けはその指導されたものをメモ書きしたものと云えるかも知れません。
前置きはこの辺で、この幽芳録・居合読本・幻のコピーの三部の違いを覗き見して見ます。
・長谷川英信流瀧落の意義
幽芳録:
敵が我が鐺を握ろうとするのを避けて立ち上がったが尚追い迫るので再びこれを避け遂に抜刀して振り向きながら敵を突き刺し、尚追撃する業である。
居合読本:
敵が我が鐺を握ろうとするのを、之を避けて立ち上がったが、尚ほ追ひ迫るを以て再び之を避け、遂に抜刀して振り向きつゝ敵を突き刺し、尚ほ追撃する業である。
幻のコピー:
後の敵が我が刀の鐺を握ったので之を振り放して後ろ向きになって敵の胸部を突き刺し更に両断する動作である。
幽芳録及び居合読本は敵に鐺を握られるのを避けつつ逆転しています。幻のコピーは敵に鐺を取られてしまった攻防です。
・夢想神伝流の先生はどうだったでしょう。
山蔦先生:敵が、自分の刀の鐺を上より握ったので、その握りを振りはなし
紙本先生:敵が、吾が刀の鐺をつかむや、その握りを振り離し
檀崎先生:敵が、吾が刀の鐺を握った其の握りを捥ぎ取って
古伝神傳流秘書の瀧落
 刀の鞘と共に左の足を一拍子に出して抜て後を突きすぐに右の足を踏込み打込み開納る此の事は後よりこじりをおっ取りたる処也故に抜時こじりを以て當心持あり
 中山博道先生は昭和12年1937年発行の「日本剣道と西洋剣技」の中で「後方より武器を掴まれた場合、前に述べたやうに、これを外づすには、左、右と順次に対手の逆を行くか、同時にこれを払ひ外すかの二様あるが、この外すといふことは非常に困難な業で、沢山ある抜刀各流にも、その例はまことに少ない。余は推して知ることができやう。」と、握られたら簡単に外せないと云っています。
 無双直伝英信流では、意義を教書に書き加えられたのは河野百錬先生の昭和13年1938年発行の無双直伝英信流居合道からと思います。そこには「吾が後に坐す敵が、吾が鐺を握りたるを其の手をもぎとりて敵の胸元を刺突し、倒るゝ所を更に真向より斬り付けて勝つの意なり」と有ります。
 さて、どんな「幻を追って」になるか楽しみです。
 
 
 
 
 
 
 

|

« 幻を追ってその7中山博道先生の居合6教書の2 | トップページ | 幻を追ってその7中山博道先生の居合7比較の2書き出し »

幻を追ってその7」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 幻を追ってその7中山博道先生の居合6教書の2 | トップページ | 幻を追ってその7中山博道先生の居合7比較の2書き出し »