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2016年10月12日 (水)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く1抜刀心持引歌4敵に従う

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
1、抜刀心持引歌
4)敵に従う
敵にしたがって可勝心持 春風を切ると云ふ 古歌
風吹は柳の糸のかたよりに
         なびくに付て廻る春かな
強身にて行當るおは下手と知れ
         まりに柳を上手とそいふ
*読み解く
敵の攻撃に従って勝べき心持を、春風を切ると云うのである。 古歌に
 
 敵に従って勝べき心持とは、少々異論もありますが、「春風を切る」と云う事では無学祖元の電光影裏斬春風(電光影裏春風を斬る)になぞらえたのでしょう、参考に。
 「鎌倉の無学祖元禅師が大康の乱に捕へられて斬らるゝ時、無学辞世に右の頌を作られたれば太刀を捨て拝したと也。
 無学の心は太刀をひらりと振り上げたるは電(いなびかり)の如くに電光のピカリとする間、何の心も何の念もないぞ、打つ太刀にも心はなし、我身にも我はなし、斬らるゝ我にも心はなし、斬る人も空、打たるゝ我も空なれば、打つ人も人にあらず、打太刀にもあらず、打たるゝ我も我にあらず、唯いなびかりのピカリとする内に、春の空吹く風を斬ったらば、太刀に覚えもあるまい、斯様に心を忘れきりて萬(*よろず)の事をするが上手の位なり。」(武術叢書)

 この無学祖元の電光影裏斬春風の句は次のとおりです。
乾坤無地卓狐節 乾坤狐節を卓するの地無く
喜得人空法亦空 喜得す人空法亦空
珍重大元三尺剣 珍重す大元三尺の剣
電光影裏斬春風 電光影裏春風を斬る

 風が吹くと、柳の細く柔かい枝が風下に吹き寄せられていく、その糸の様に靡く様子に春の巡り来るのを感じている。
 この歌は武道の歌で有名ですが、歌としても風になびく柳に春の巡り来った喜びを歌っていて思わず、肩の力が抜けて行く様です。相手の動きに従って応じているうちに、打つべき時が巡り来ると云うのでしょう。
 ・
 体中に力強さを漲らせて遮に無に当たって行くようでは下手と知るべきものです。柳の細い枝に鞠が当たっても、何心なく受け流して知らず気にある様な無心なものを上手と云うのである。
 この歌は、奥州の新庄藩に残された林崎新夢想流之の伝書(元禄14年1701年)「秘歌之大事」にも記載されています。
 田宮流居合歌之伝には「居合とはつよみよわみは定まらず 兎にも角にも敵によるべし」とも歌っています。
 
 剣術には、一方的に相手を斬る殺人刀、と、相手を働かせて、その働きにしたがって勝つ剣の活人剣がある。宮本武蔵と柳生兵庫の違いではないかと場の生命論の清水博先生は仰っています。
 
 力一杯、刃鳴りを響かせて、肩や腕の筋肉を強張らせ、如何にもとする居合を見て居ます。「元気で良い」とばかりに褒め、褒められています。外されれば忽ち敗れてしまいそうです。師匠も弟子もいつ「まりに柳」を悟のでしょう。
 かと言って、ゆるゆるしているばかりで、「ゆっくり・大きく・正確に」では初心者の演(武?)ではともかく、ものの役には立ちそうにありません。これもいつ悟るのでしょう。
風を歌った歌を幾つか
吹けば行く吹かねば行かぬ浮雲の
       風にまかする身こそやすけれ
(中川申一著 無外流居合道解説より)
吹く風も雪も霰も咲く花も
       勤むる業の工夫とはなる
柔らかく握れる人の太刀先は
       風に吹かるる青柳の糸
強きより弱気を己が力にて
       風にはおれぬ青柳の糸
乗得ては波にゆらるるあま小舟
       ただ浦々の風にまかせて
(阿部 鎮著 剣道の極意より)
 

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