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2016年10月16日 (日)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く1抜刀心持引歌6抜かずして勝

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
1、抜刀心持引歌
6)抜かずして勝
居合抜覚へるとはやく抜せす故に詰合の位能く執行有へし 只太刀を抜く計り思ふへから春抜春して勝の利あり 是事の位に教ゆへし
 人の我をとらへて抜さしと春る時必ず抜まし 我をとらゆる人を此方より取りたおすへし或ハ先二とられぬ位有るべし 敵の仕懸により春くにとゞまり勝事も有り 或は其気をさけて勝事も有りみな敵の仕懸に依るなり
 工夫有へし  歌に
 止ると思はゞ其所に止れ与 
           行と思はゞとくとくと行け
 あだとのみ人をつらしと何か思ふ
           心与我を憂きものと知れ
 右の心尓て工夫あるへし 然れ共剛力或ハ色々と理屈を云ふ人有らば皆我が敵と知れ 然れ共夫々に心を取られ迷ふ事勿れ  歌に
 無用なる手詰の論を春へから春
           無理な人二ハ勝って利はなし
読み解く
*
 居合抜を覚えると素早く抜くことばかりを、良しと思いこんでいる人が多いものです。早く抜かさずに詰合の位をよく稽古してその心持を覚えさせなさい。
 この詰合とは詰合之位よりむしろ大小詰・大小立詰をさしている様です。
 居合とは唯太刀を抜き付ける事だとばかり思うのではなく、刀を抜かずに勝つ事(業)の利を、稽古する中で教える様にするべきである。
 相手が我を捕えて抜かさない様にする時、必ず抜かない様に心掛ける事、我を捕える相手を此方から捕えて倒すのが良い。或は相手が捕りに来るのを捕られない様にする位もあるものだ。
 敵の仕懸けてくる事に、乗せられずにとどまり勝つことも有る。或は相手の誘いの気を避けて勝事も有る。それらは皆敵の仕懸けに依る物である。
工夫すべきである。 歌に

止まると思うならばそこに止まって、行かんと思うならば速やかに行け。
相手の仕掛に左右されるのは我が心に相手に乗せられる隙があるのだ。

その様な心にならない様に工夫するものではあるが、力ずくでいろいろ理屈を云う相手であれば、皆我が敵と思い知って、それぞれに心を取られて迷う事の無い様にするのである。

歌に

必要もないのに、激しく攻め立てて論ずべきでは無い、理に疎い人には譬え勝っても利するものは無いものだ。


土佐の居合は居合抜ばかりではなく、相対しての組太刀も太刀打之事・詰合・大小詰・大剣取・和など総合武術が習い易いように順番通りに整理されています。既に江戸末期から明治にかけて失伝してしまい、伝書も良く判らなかったのでしょう。同時に、総合武術は分解されてしまい、夫々専門の分野を作り上げて来ています。

 第17代大江正路先生はそれらを纏めて無双直伝英信流居合形を独創されたと言われますが、いかに習いやすくともそこまでに過ぎません。

 戦前に曽田虎彦先生はそれらを書き付けた伝書類を書写していました。
 知り得た人によって密かに稽古されていた様です。居合だけでは飽き足らない人によって復元されればよかったのですが、身近に他の武術があればそれを導入してしまい可笑しな理屈を以て事為れりとしてしまった所もある様です。従って今回の「抜かずして勝」の項目は読み解かれても「ちんぷんかんぷん」の居合剣士が殆どでしょう。

 刀を帯して仮想敵に向って抜き付けるばかりです。竹刀剣道などやって来られた人はせっかく刀を持つにも拘わらず、相対せば「当てっこ」の跳び込み面ばかりです。
 
 この神傳流秘書には、歌心から始まります。日本の誇る和歌さえ稽古の際、語れる師匠に出会ったことが有りません。
 仕組と云われた組太刀もいつの間にか演武会の皮切りの演舞となり、笛を合図の合同演習に化しています。居合をより対敵相手の武術とし、抜き付けでしくじっても応じられる形稽古も軽んじられています。まして刀を抜かない詰合いなど何処へやら行ってしまっています。「和」の位など居合では無いと・・・
 棒振りに甘んじて「坊!何時まで棒振りしとる」と90歳を過ぎた老母に諭されて頭を抱えて恥じ入るばかりです。
 武術は、「無刀」に至り、人の究極のコミュニケーションの手段を越え人と「和」す神妙剣に至るものとして生涯修行する価値があるものだろうと思います。
 
 

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