« 曽田本その1の1神傳流秘書原文1抜刀心持引歌9業歌向身 | トップページ | 曽田本その1の1神傳流秘書原文1抜刀心持引歌10業歌右身 »

2016年10月22日 (土)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く1抜刀心持引歌9業歌向身

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
1、抜刀心持引歌
9)業歌向身三首
横雲
 深山には嵐吹くらし三吉野の
           花か霞か横雲の空
虎一足
 猛き虎の千里の歩み遠からず
           行より早く帰る足引
稲妻
 諸共に光と知れと稲妻の
           跡なる雷の響き知られず

   抜刀心持引歌には、神傳流秘書の英信流之事の業名の歌が並びます。
英信流之事は「是は重信翁より段々相伝の居合を最初にすべき筈なれ共先大森流は初心の者覚え易き故に是を先にすると言えり」と序文が有ります。
 英信流は始祖林崎甚助重信から段々に受け継いで来た重信流だと言います。
 
 この英信流の和歌は、いつ頃誰が選歌したのか、神傳流秘書の書かれた以前からあったかは不明です。

  奥州地方に残る歌にはこれに類する歌は見られません。第九代林六大夫守政が江戸勤番の頃、第八代荒井勢哲清信から聞かされたものだろうと思います。
 業の名称だけに拘って業の技法上のポイントをついている心得とは思えないものも有る様な気もします。

 一首目の横雲の歌には三吉野という地名が有りますが他の歌には地名らしいものは有りませんから、業に合わせて雰囲気を詠まれたものでしょう。三吉野の花は桜です。

遠い三吉野の奥山には春の嵐が吹いているのだろう、さくら吹雪が横雲になって霞の空に吹きつけている

 横雲の横一線の抜き付けを当てたのでしょう。やたら気張って、力いっぱい振り回したり、恐ろしい般若の形相で演じる人などはこのような業歌を口ずさんで、業をイメージして見るのもいいかも知れません。

英信流居合之事一本目横雲
「右足を向へ踏出し抜付打込み開き足を引て先に坐したる通り二して納る」


二首目は虎一足
 虎は千里往って千里還る 。虎は1日に千里の遠くへ行ってまた戻ってくる。勢い盛んなことのたとえ。
 虎は大きいものは胴長250cm、体重280kg位で縄張りは10~20平方km、一日に徘徊する距離10~20kmだそうです。

 この歌は、立膝に座し前面の敵の抜き付けを、左足を引いて切先を下にして抜き打ちに受け払い真向に斬り下す、すさまじい業です。その抜き付ける際の左足は後方に引く其の足捌きの素早い動作を歌に詠み込んだものでしょう。

英信流居合之事二本目虎一足
「左足を引き刀を逆に抜て留め扨打込み後前に同じ」

三首目は稲妻
 雷はピカッと光った後にゴロゴロと響き渡るので、音の聞こえてくる時間を推し測って近くに落ちたとか遠くに落ちたとか判断し、避難するタイミングを子供の頃から自然に覚えたものです。
 随分古い話ですが、木曽駒ケ岳の山頂で、雷に見舞われました、それこそ光より音の方が速いと思った事がありました。恐ろしい、怖いと言うよりもう覚悟してしまったのを思い出します。

 この歌は稲妻の様子を歌ったもので、稲光の後に音がすると歌っています。
 英信流の三本目稲妻にこじつけると、敵が上段から打込んで来るのを立ち上がり様刀を抜いて小手に抜打ちに切り付ける、ここが稲光の閃光の様に鋭く素早い処でしょう、即座に振り冠って真向に打ち下す処は後から追ってくる雷鳴でしょう。
 敵は雷鳴を聞く猶予も無く両断されているのです。この業を演ずる時あの恐ろしい山の雷を思い出している事も有ります。

英信流居合之事稲妻
「左足を引き敵の切て懸る拳を払ふて打込み後同前」

 向身というのは我の正面前に敵が居る事を意味します。古伝は全て我に対する敵の位置を示しています。向身は正面に敵・右身は我の右脇に敵・左身は我の左に敵・後身は我の後ろに敵を受けます。
 江戸時代末期までこの敵の位置関係を基に組み立てられていたものを、明治になってからでしょうか、道場の正面を我が向いた場合を前、道場の右を向いて敵が左脇に居るとしたのが右、左向きで敵が右に居るのが左、道場正面に我は後向きで敵は我の後ろに居るのを後と改変されてしまいました。
 敵の存在よりも、演武の位置取りが優先されてしまったのです。現代居合が敵を見失ってしまい、踊りと化した動作を優先してしまう原因の一つになったと思われます。

 道場の正面を向いて、どの業でも演じられる稽古を進める師匠にお目にかかって見たいものです。

 

 

|

« 曽田本その1の1神傳流秘書原文1抜刀心持引歌9業歌向身 | トップページ | 曽田本その1の1神傳流秘書原文1抜刀心持引歌10業歌右身 »

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く1抜刀心持引歌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 曽田本その1の1神傳流秘書原文1抜刀心持引歌9業歌向身 | トップページ | 曽田本その1の1神傳流秘書原文1抜刀心持引歌10業歌右身 »