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2016年11月23日 (水)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く3大森流居合之事10虎乱刀

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
3、大森流之事
10)十本目虎乱刀
虎乱刀
 是ハ立事也幾足も走り行く内二右足尓て打込ミ血震し納る也 但し膝を付けす
読み解く
 虎乱刀の業名は、虎が獲物を追う姿をイメージしたのでしょうか、そんな雰囲気を感じてしまいます。現代居合では、第17代大江正路先生に依って改名されこの業名は「正座の部 追風」です。
 風流な業名です、夢想神傳流の壇崎先生、山蔦先生も大森流の虎乱刀に括弧書きで(追風)と付して山蔦先生は「逃げる敵を風が追うように、スーッと攻めて行く姿で動作するところに特徴がある」と大江先生の改名を評価されておられます。
 何時誰が教えたのか、「追風}と称して道場の端から端までドタドタ走り込んでいます。又はスルスルと進んで突然ドタドタ足音をさせて周囲を脅かして抜付けています。
 無双直伝英信流正統正流にも、そんな師匠が居られた時期もあったらしく今でも一部の者がやっています。
 これなど、土佐の居合の古伝「上意の大事 虎走」が伝えられていれば、これ等は理に合わない替え業であると知り得たでしょう。
 土佐の居合には元々追い懸けて切る教えが有りました。
 英信流居合目録秘訣の外之物ノ大事「逐懸切」
「刀ヲ抜我可左ノ眼二付ヶ走り行テ打込但敵ノ右ノ方二付クハ悪シシ急二フリ廻リヌキハロヲガ故也 左ノ方二付テ追カクル心得宜シ」
読み:逐懸切(おいかけきり)
 刀を抜き我が左の眼に付け走り行て打ち込む 但し 敵の右の方に付くは悪しし 急に振り廻り抜き払うが故なり 左の方に付けて追い懸ける心得よろし
 大森流は正座による業ですが、虎乱刀は立って行うと言います。立って前方遠間に居る敵に走り行き、左足が間境に至れば右足を踏み込んで打込むのですが、この「打込み」の方法がこの古伝の手附には明示されていません。
 一刀のもとに敵を倒していますから、横一線に首を刎ねている、上に抜き上げ真向に打ち下ろしている、下から切り上げている、いずれにしても確実に一刀で仕留める大技です。二刀目は有りません。血振いは大森流之血振りです、立ったままの納刀です。

 この業をのちの12代林益之丞政誠が安永五年1776年に英信流目録を書いています。書いた時期が丁度、第10代林安太夫政詡の亡くなった年になります。
 土佐に英信流を持ち込んだ第9代林六太夫守政亡き後34年後のことです。
大森流居合之位十本目虎乱刀
「是は立て
スカスカと幾足も行て右の足にて一文字に抜付(払ふてもよし)かむる時左の足を一足ふみ込右の足にて打込む血ぶるひの時左を右の足に揃納る時右の足を引納其時すねはつかぬ也」

 10代は幾足も走って追いつく、12代は幾足もスカスカと歩いて追いつくのです。
 抜き打ちは右足を踏込み横一文字に抜き付けます。この抜き付けは抜き払っても良いと言いますから。敵の首を斬り払うも有かも知れません。口伝でしょう。
 二刀目の留めは左足を踏み込みつつ上段に振り冠り右足を踏み込んで真向打ち下しでしょう。現代居合のイメージにつながっています。
 
無双直伝英信流正座の部十本目追風
 剣理:我が前方に逃れ去らんとする対敵を、我れ小足、小走りにて追い込みて斬り付け勝つ意也(虎走り掛かりに留意)(当代の解説書より)


 古伝英信流居合目録秘訣の上意之大事に「虎走」 
「仕物抔云付られたる時は殊に此心得入用也其外とても此心得肝要也 敵二間も三間も隔てゝ座して居る時は直に切事不能其上同座し人々居並ぶ時は色に見せては仕損る也さわらぬ躰に向ふゑつかつかと腰をかがめ歩行内に抜口の外へ見えぬ様に躰の内にて刀を逆さまに抜きつくべし虎の一足の事の如しと知るベシ大事とする所は歩みにありはこび滞り無く取合する事不能の位と知るべし」

読み:虎走
 上意により仕物(しもの)などを言い付けられたる時は この心得入用なり 其の外とてもこの心得肝要なり 敵二間も三間も隔てて座している時は直ぐに切る事あたわず 其の上同座し 人々居並ぶ時は色に見せては仕損じるなり さわらぬ態に向うへつかつかと腰を屈め歩み行うちに 抜き口の外へ見えぬ様に体の内にて刀を逆さまに抜き付くべし 虎の一足の事の如しと知るべし 大事とするところは歩みにあり はこび滞り無く 取合いする事不能の位と知るべし 


 
この上意之大事は決してしくじってはならない上意によるものです。不意打ちであってもやむおえないものです。英信流目録の秘訣では、切るべき者にも気付かれない様に、同座の人々にも邪魔されない様に、色に見せるな。つかつかと腰を屈め歩み行き、間に至れば抜き口が見えない様に体の内で刀の刃を下にして英信流の虎一足の様に抜き付けろ。大事なのは足の運びであり、邪魔されないことである。これが心得の基本だろうと思います。抜き打つ寸前に「上意!」と掛け声を懸けるかどうかも状況次第でしょう。

 

 

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