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2016年11月27日 (日)

曽田本その1の1神伝流秘書を読み解く4英信流居合之事前書

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
4、英信流居合之事
前書
英信流居合之事
 是ハ重信翁より段々相傳の居合然者を最初にすへき筈なれ共先大森流は初心の者覚易き故二是を先二すると言へり

読み
英信流居合之事
 是は重信翁より段々に相伝の居合 然るものを最初にすべき筈なれども まず大森流は初心の者覚え易き故に 是を先にすると言えり

*
読み解く
 英信流居合は林崎甚助重信公よりだんだん相伝して来ている居合である。英信流居合を最初に稽古すべき筈であるが、先ず大森流は初心者には覚えやすいので大森流を先に稽古すると云うのである。

 英信流については、居合兵法伝来で「目録には無双神傳英信流居合兵法とあり 是は本重信流と言べき筈なれども長谷川氏は後の達人なる故之も称して英信流と揚られたる由也」とありました。

 土佐の居合の流名は「目録には無双神傳英信流居合兵法とあるが是は本無双神傳重信流居合兵法と云うべき筈」と云って居ます。
 奥羽地方の林崎甚助重信の起した流名は、林崎流(三春藩元禄7年1694年)・林崎新夢想流(新庄藩元禄14年1701年)・林崎夢想流(宝暦8年1758年)・林崎流居合(秋田藩天明8年1788年)などで、姓の林崎を出して名の重信を表面には出してはいないのです。

 「無双神傳・・」では無く「・・夢想」というと云う流名です、土佐と奥羽地方とはどこかで分岐したものと思われます。伝統にあった4、5、6代の道統に謎が潜んでいそうです。
 この神傳流秘書のもとになる第9代林六太夫守政が江戸で第7代長谷川英信や第8代荒井勢哲に出会い居合を習得しているとすれば、彼らの流名が無双神傳重信流であったかも知れませんが証明できません。

 南山大学の榎本鐘司先生の「北信濃における無双直伝流の伝承について」の論文から類推すれば「無双直伝重信流」であり長谷川英信を後の達人として「無双直伝英信流」に置き換えたとした方が土佐の居合に於いては納得出来そうです。「無双」は「夢想」との誤認かあえて変えたのか謎は深まるばかりです。

 英信流居合と林崎甚助重信の奥羽地方の業名を対比してその根源を求めるのですが、似ているかもしれないけれど容易に当てはまりません。

 現在、夢想神傳重信流として稽古をされている所もある様で、動画も見られます。
 敵は正座で短刀を差し、我は立膝で三尺位の大太刀を差して対して居ます。英信流の遠い昔を忍ぶとも云えそうな運剣動作とも思えます。是は古伝の継承でしょう。定寸の打刀での素肌居合とは一線を画します。

 笹森順造先生の「一刀流極意」にある「詰座抜刀」などは津軽藩に伝わった新夢想林崎流(林崎新夢想流?)でしょう。
 詰座抜刀向身押掛
 「打方 正座し小太刀を帯し両手を股の上に置く、仕方が六尺の間合いから寄前膝間一尺離れ蹲踞する。打方は気を満たし機をはかって右手を柄にかけると、仕方が押しかかりきて柄頭にて打方の眉間を非打ちする。打方は仰向けに反る所へ仕方が抜刀し打方の胸を切る。仕方が天横構から天縦構にとるから、打方は抜刀し仕方の左拳を突きゆくと、仕方が身を交わし、打方の左首を切る。打方は小太刀を膝上に立て納刀する。

仕方 趺踞し大太刀を帯し・・・打方の気を測るに、打方が殺気を生じ右手を柄にかけるから、仕方は直ちに押しかけ左手にて太刀の鍔と鞘口とを握ったまま突き出し、柄頭にて打方の眉間を非打ちに突く、打方が仰向けに反った所へ仕方は左足を引き抜刀して打方の胸を横一文字に切る・・・(以下略す)」(笹森順造著「一刀流極意」より)

 これを、市井にあった長谷川英信が改変して、江戸中期の生活に根差した定寸の太刀による素肌居合の形を創作したのかも知れません。
 奥羽地方の林崎甚助重信の居合と、北信濃の居合と、土佐の居合の関連性を辿る伝書は何処かに眠っているかもしれません。 

 武術は時代に逢う様に変化するものです。そして古きものを忘れ去って行くものです。そうでなければすたれて消えて行くものです。然し時々振り返って見る事も必要でしょう。

 大森流も、土佐に居合が持ち込まれたその時代から、正座が武士の正式な坐し方となれば、其れに則した抜刀法は必要でしょう。古い時代の蹲踞した抜刀術は戦国時代を色濃く残し、新しい時代は正座からの抜刀術と徳川政権の師範柳生新陰流の思想をも、合わせて飲み込んで伝承している、と思えるのです。

 土佐の居合も、元々傳書や手附は特定の人以外は読む事も許されなかったと思います。江戸末期から明治にかけての混乱期に、伝統武術は失われ、太平洋戦争で多くの伝書が焼失している筈です。

 現代では、刀による闘争は考えられません。古伝の居合心が伝わらなければ、如何に華麗であったとしても、それは刀による特定の斬撃殺人を想定して、「かたち」のみを演じる棒振り演舞です。
 「特定の斬撃殺人の仕方を想定」にして、特定の「かたち」のみに拘っているのは、マニュアルが無ければ何も作動してくれない事と同じ様に思えてなりません。
 一つの業技法からあらゆる場を想定し、瞬時に応じられる技の稽古を重ね、如何に「その場に応じる」生きた武道へ昇華できなければ、唯の華麗な棒振りの芸事だろうと思います。
 

 

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