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2016年11月25日 (金)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く3大森流居合之事11抜打

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
3、大森流居合之事
11)十一本目抜打
抜打
 坐して居る所を向より切て懸るを其のまゝ踏ん伸んで請流し打込ミ開いて納る 尤も請流二非春 此所筆二及ばず

読み
抜打(ぬきうち)
 座して居る所を 向うより切って懸かるを そのまま踏ん伸んて請け流し 打ち込み開いて納める 尤も請け流しに非ず この所筆に及ばず
読み解く
 大森流の11本目抜打はすさまじい技です。
 我が正面に座す敵が刀を抜出し「切って懸る」は、真向に打ち込んでくる状況でしょう。坐したまま「踏ん伸んで請け流す」は、刀を前に抜出し抜き付けんとするが、敵が早くも上段に振り冠り真向に打ち下ろしてくる、我れは柄頭を上に向け刀を抜き出すや、顔前頭上から左肩を覆うようにして敵の刀を請けるや摺落とし、拳を返すや上段から敵の真向に打ち下ろし、刀を横に開いて納刀する。
 この請流しは請けて流すようなものでは無い、筆に表せない、と締めくくられてしまいました。この現代風請け流しでは古伝の居合心には至れないものです。

 第十代林安太夫政詡によると思われる英信流居合目録秘訣による外之物の大事に霞八相と言う項目があります。
 「先生口授のまま記 外の物とは常に表の仕組より外の大事と云う事也」とありますから、動作の事よりもそれ以外の事が大事だよ、と言うのでしょう。

霞八相
 雷電霞の二ヶ条当流極秘中の秘にして大事此外に無請流に心明らかにして敵の働きを見と云う教有れども当流には雷電の時の心亦霞ごしに見るが如くの心の所に大事の勝ある事を教る也
 夢うつつの如くの処よりひらりと勝事有其勝事無疵に勝と思うべからず我身を先ず土壇となして後自然に勝有・・・・

 「請流しは身を土壇となして後自然に勝」ではなかろうかと思うのです。演武を見ていますと、殆んどが先を取る様に、一方的に抜出し、さっさと打ち下ろしています。
 中には飛び跳ねたり飛び込んだり、床を膝で踏み鳴らしたり・・どこかの流派の技法を教えられて其の儘のようです。古参の高段位の者のやることとも思えません。抜き打ちの斬撃力を高めたり、飛び込む意味を考えたことがあるのでしょうか。

 安永五年1776年の林益太夫政誠の英信流目録の大森流居合之位十一本目は原本に記載はありません。
 十本目勢中刀で終わっていますがそのあとに「以上十一本」とありますからこの目録を書写された第十五代谷村亀之丞自雄が写し損なったのかも知れません。但し当時大森流の十一本目に抜き打ちがあって稽古をしていたのでしょう。

大森流(正座の部)十一本目抜打(抜打)
 剣理:正面に対座せる対敵の害意を認めるや、直ちにその真向を上段より斬り下ろして勝意也。(我れ抜刀時、刀を柄頭の方向に抜き上げる心地こそ大切也)・・もし敵斬り込み来たりてもその刀を受け流す気にて行う)(当代の解説書による)


 と、剣理に記載されて古伝の気は引き継がれている様に思いますが、演武では殆ど一方的な抜き打ちにしか見えません。敵の害意とはどのような状況か、其れに則した抜打とは何か、究極の業技法が研鑽されていればと思うのです。

 演武の締めには大方演じられますが、身を土壇となして、請け流し心で演ずるならば土佐の居合心を少しは心得て居ますが、敵の攻撃もないまま一方的に抜き打つならば、唯の形(かたち)ばかりで締まるわけは有りません。その上飛び込んだり、床を踏み鳴らしたり、不意打ち闇討ちばかりです。

 此処は、「尤も請流二非春 此所筆二及ばず」をどの様に解するかでしょう。敵の真向に斬り下さんとするその機に乗じ、刀を上に抜き上げ我も亦真向に切下し「合し打ち」に敵刀を斬り落としての勝であればまさに極意業でしょう。

 敵はへぼばかりではないはずです。

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