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2016年11月13日 (日)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く3大森流居合之事5陽進陰退

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
3、大森流居合之事
5)五本目陽進陰退
陽進陰退
 初め右足を踏出し抜付け左を踏込んて打込ミ開き納又左を引て抜付跡初本ニ同し
読み
陽進陰退(ようしんいんたい)
 初め右足を踏み出し抜き付け 左を踏み込んで打ち込み 開き納める 又 左を引きて抜き付け 後初本に同じ
 
読み解く
 陽進ですから抜き付け不十分で逃げる敵を追い込んで左足を踏み込んで打込む、十分と見て刀を横に開いて納刀する。ここでは何故大森流の血振いでは無いのでしょう。前方に第二の敵を意識しているのでしょうか。
 納刀して居ると前方から第二の敵か、斬り倒したはずの敵か、打込んで来るので左足を後方に引き間を外すや抜き打に斬り付ける、引き足による後方へ退く此処が陰退でしょう。
 即座に上段に振り冠って右足を踏み込んで打込む、血振いして立つ時右足に左足を引き付け、納める時右足を後方に引いて納刀する。

 この動作は中山博道系の夢想神傳流の大森流「陰陽進退」でしょう。
 神傳流秘書の大森流之事五本目「陽進陰退」が何故「陰陽進退」になったのでしょう。業のイメージは古伝の「陽進・陰退」でしょう。

 この業の替え業でしょうか、「前方の敵を斬りたるのち敵再び足に斬り付け来るを応じて防ぎ続いて斬り倒す意(大森流・長谷川流・伯耆流居合術手引白石元一著大森流居合術陰陽進退)」と言う動作が現代居合に残されていて、無双直伝英信流の八重垣となっています。

 谷村派の第12代林益之丞政誠の安永5年1776年の英信流目録大森流居合之位「陽進刀・陰退刀」「陽進刀 是は正面に座する也右の足一足ふみ出し立なりに抜付左をふみ込み討込む也すぐに右脇へ開き其儘納む也
 陰退刀 其儘左の足を跡へ引其時亦抜付打込み血ふるひの時立左の足を右に揃え納る時右を一足引也」

 この大森流(正座の部)陽進陰退の形でも第二の敵と言う文言は見られません、それと、敵刀を受け払う動作も見られません。想定は動作に従い自由に考える事にすすのでいいのでしょう。しかし、どうやら雰囲気は夢想神傳流が引き継いだようです。

 大森流「陽進陰退」は無双直伝英信流正座の部五本目八重垣と業名を変えて古伝の仕方を特定してしまった様です。

正座の部五本目八重垣
「剣理:対座せる対敵の首(又は顔面・腕)に斬り付けたるも不十分にして、対敵後退せんとするを、透かさず追い込みて双手上段より斬り倒したるに致命に至らず対敵倒れし処より我が右の脛に薙ぎ来るを我れ立ち上がりながら受け留め(払い留め)、反撃して勝つ意也。」(当代の解説書による)

 跪いて脛を床に着いているのに、其処に斬り付けて来る分けなど有りそうになく無理やり想定を作ったようなと、思いつつ稽古をしています。
 抜き打ち不十分で追い込んで打ち込み、充分斬れたと判断し、血振い納刀している時に、敵が死力を振り絞って右足に斬り付ける(右から斬り付けて来る位の大らかさがいい)。
 抜き打ち不充分も情けないし、充分打込んで瀕死の敵が死力をふり絞るのも腑に落ちません。
 二人目の敵の方がすっきりしますが、大森流は基本的に一対一の攻防の様です。二人目の敵の攻撃であればこれも腑に落ちません。

 然し、あり得ない事では無いでしょう、抜き付け不十分と思ったら素早く追い込み第2刀の打ち込みをする事。
 充分に気配りしたが、何時如何なる事態にも応じられる態勢で油断の無い残心、納刀をする事。
 第二の敵であれ、第一の敵が死力を振り絞ってであれ、どの方角からでも何処に仕掛けて来ても、敵の攻撃を外して応じる形による稽古業です。大森流(正座の部)の最も生き生きした素晴らしい業でしょう。

 初発刀から機先を制して先、先と仕掛けて陽進まで稽古しました。陰退で後の先の心持を学ぶことになります。

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