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2016年12月11日 (日)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く4英信流居合之事7鱗返

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
4、英信流居合之事
7)七本目鱗返
鱗返
 左脇へ廻り抜付打込ミ開き納る
(秘書にハ岩波と同じ事を記しあり 口伝口授のとき写し違へたるならん 曽田メモ)

読み
鱗返(うろこかえし)
 左脇へ廻り抜打ち打ち込み開き納める
(秘書には岩浪と同じ事を記しあり 口伝口授のとき写し違えたるならん 曽田メモ)
 
 鱗返の手附は曽田先生が書き改めてメモされたという事です。
 参考に、細川義昌邸より借用されたという、木村栄寿先生の「林崎抜刀術兵法 夢想神傳重信流 傳書集及び業手付解説」では神傳流業手付の英信流抜刀之事「鱗返」
右に向き居って左り廻りに向へ抜付左の足を引冠り打込み開き納る也」
細川本の読み
 「右に向き居って 左廻りに向うへ抜き付け 左の足を引き 冠り打込み 開き納るなり」
 曽田本の出処が不明なので比較すべきでは無い思いますが、細川本も鱗返しの手附は鱗返では無い手附が記されていたのではないかと推察します。
 それは、文章の表現が、神傳流秘書の英信流居合之事とは雰囲気が違うと思われるからです。
 「右に向き居って・・」の書き出しですが、英信流居合之事(英信流抜刀之事)ではこのように座して居る我を正面に対して右向きであることをまず述べた業手付は有りません。
 「左廻りに向うへ抜き付け」という二節目の我が動作から敵の所在を我が右脇と想定させているのが基本です。
 次に「左廻りに向うへ抜き付け 左の足を引き 冠り打込み」では左足を引く時が敵に抜き付けてからの様に受け取れます。「左へ振り向きり 左の足を引き 向うへ抜き付け」が神傳流秘書の手附けの有り様と思います。
 この鱗返しの手附は、書写の時、間違えたまま伝わり、後世の者が書き写す際手直ししたと思われます。
読み解く
 「左脇へ廻り」ですから、相手は我が左脇に座すのでしょう。
 左脇に座す相手の害意を察し、刀に両手を掛け、腰を上げ、爪先立つや右足を軸に刀を抜きつつ左廻りに相手に振り向くや、左足を引いて横一線に抜付け、倒れる相手に、上段に振り冠って斬り下ろし、横に刀を開いて納刀。

 現代居合の鱗返になってしまいましたが、相手の想定は様々です。
 殺意を口にするだけで、元のまま座している。
 我に振り向き我が柄を制しようとする。
 刀に手を掛け腰を上げた状況である。
 我が方に振り向いて抜刀しようと刀を抜きつつある。
 右足を踏み込まんとする寸前。
 立ち上がって抜刀寸前、などいくらでも仮想敵の想定は可能です。
 我も敵の動作に先んじて応じる心持を以て敵の首又顔面、或は奥義の柄口六寸に抜き付けなければなりません。
 相手が腰を上げ振り向いて抜き付けようとするならば、左足の引きは低く、立ち上がりつつあれば合わせて高くでしょう。

 古伝の極意は「柄口六寸」でした。
 左足を後方に引いて、横一線の抜き付け、下からの切り上げ、上に抜き上げていれば、高く抜き付けるなどでしょう。

 現代居合の無双直伝英信流の鱗返を稽古して見ます。
 テキストは北海道滝川の坂田先生の「無双直伝英信流居合道入門」昭和48年発行。坂田先生は初め夢想神傳流を20年近く修行され後に政岡壱實先生、山本晴介先生に講習会でお会いし無双直伝英信流を稽古されています。
 テキストから見ますと河野百錬先生の大日本居合道図譜に従い、谷田佐一先生の居合詳解に居合心を刺激されていたようです。古伝神傳流秘書も研究されておられます。

鱗返
 理合:我が左側に居る敵に対し立ち乍ら其の首に抜き付け、更に上段に振りかぶり斬り下す業である。
技法:正面に対し右向に立膝。
 刀を抜きかけつつ右足先を軸として左に廻りつつ低く中腰に立ち上り、正面に向って左足を後に引くや腰を伸して敵の首に一文字に抜き付け、左膝をつき乍ら上段に振りかぶり、敵の真向に斬り下し、血振り納刀。

 細川義昌先生系統かと思われる広島の白石元一先生の昭和12年発行の大森流・長谷川流・伯耆流居合術手引の鱗返は「左方に立てる敵に対して行う」とあります。左方に向き乍ら左足を退きて中腰となり、横一文字に敵の胴部を斬り・・。

 夢想神伝流山蔦重吉先生の鱗返は、中腰に立ち上がり敵に向くと同時に左足を後ろに引くや中腰のまま敵の座して居るこめかみに抜き付ける・・此の時敵は座したまま右向きで柄に手を掛けている状況の様です。左足を後方に引くのは相手との間に斬り間を作るためとか。

 大江先生の鱗返「中腰にて左足を引きて抜付け、此の抜付けは水平とする事・・中腰は両膝を浮かめて抜付けるなり(敵の甲手を斬る)*大江先生の(敵の甲手を斬る)の思いは、どこに引き継がれたのでしょう。政岡先生の居合に残されて居る様です。

 昇段審査や競技会などでは決められた形で抜き付ければよいだけの事ですが、地味ですが、稽古では想定を幾つか変えて抜き付ける位置によって左膝の高さを工夫する、或は抜き付ける拳の高さを変えるなど稽古の楽しさが倍増するかもしれません。
 ついでに一刀目の抜付け不十分の際の左足を右足に引き付け右足を踏出して打込むなどでしょう。
 古伝の無双直伝英信流には見られない、敵が刀を抜出しつつ立ち上がる処、下からの小手への切上げも稽古して見るのも良いと思います。

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