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2016年12月15日 (木)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く4英信流居合之事9瀧落

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
4、英信流居合之事
9)九本目瀧落
瀧落
 刀の鞘と共二左の足を一拍子二出して抜て後を突き直ぐ二右の足を踏込ミ打込ミ開納る此事ハ後よりこじりをおっ取りたる処也故二抜時こじりを以て當心持有り
読み
瀧落(たきおとし)
 刀の鞘と共に左の足を一拍子に出して 抜きて後ろを突き 直に右の足を踏み込み打ち込み 開き納める 此の事は後ろより鐺をおっ取りたる処也 故に抜く時鐺を以って當てる心持ち有り


 これは立膝に座している時、後ろの相手が我が刀の鐺を掴んで抜かさない様に押し付けてくる。「おっ取りたる」は、「押し取って」「急いで取る」「ゆったり取る」などの意味ですから相手の動作により次の我が動作も決まって来るでしょう。

 ここは、後ろから我が鐺をゆったりと取られ、背中に押し付けられそうになるので、鐺を押し付けられるに任せてゆっくり立ち上がる。
 左足を前に踏み出すと同時に急に柄を右胸に取って鐺を持つ相手の手を外し、右足を踏み出し抜刀し、後方に振り向くや相手を突き、右足を踏み込んで真向に打ち下ろし、刀を横に開いて納刀する。
 これが大方の現代居合の瀧落でしょう。ただし「抜時こじりを以て當心持有り」は心持ちすら見られません。

 場の状況を「此事は後よりこじりをおっ取りたる処也」の追記で示してくれています。次の「故に抜く時こじりを以て当てる心持有り」は、鐺を外された相手が前にのめるならば出来るかもしれません。現代居合では見られない動作です。

 この神傳流秘書の手附では、現代居合の素養が邪魔します。鐺は掴まれたら現代居合の方法では、容易に相手は放してくれそうもありません。
 鐺を掴まれたまま、左足を後方に退いて、相手に背中で附け込み、左足を踏み出して柄を胸に引き付け、右足を踏み出し体前に抜刀して、同時に鞘を後ろに退いて鐺で相手に付き当てるや反転して相手に突きこむ事は出来そうです。此の場合相手の手は鐺から離れていようと否とに無関係で抜刀できる事が前提です。

大江先生の瀧落
後を向き、徐ろに立ちて左足を後へ一歩引き鞘を握りたる左手を其儘膝下真直に下げ、鐺を上げ後方を顧み、右手を膝上に置き同体にて左足を出し、右手を柄に掛け胸に当て右足を前に進むと同時に抜き、刀峯を胸部に当て、同体の儘左へ転旋して、体を後向け左足を前となし、其体の儘胸に当てたる刀を伸ばし刀は刃を右横に平として突き左(右の誤植か)足を出しつつ上段に取り、左膝を着き座しつゝ頭上を斬る、血拭ひ刀を納む。」

 大江先生の手附では、相手の手を放させる文言が見えません。又「抜時こじりを以て當心持」は有りや無しやです。

夢想神伝流の山蔦先生の瀧落
 「敵は自分の背に顔を向け約80cm離れて座っている想定。
鐺を掴まれ立ち上がり、鐺を右後上方に寄せ第一の振り払いを行うが敵は掴んだまま、左足を、爪先を下向きに浮かせて右にまわし、左ふくらはぎを右脛に付け、鷺足となり、同時に刀をしゃくるようにして右乳辺りに持って来て第二の振り払いにより敵手を振り払う。右手を柄に掛け左足をトンと着き、同時に右足を左足の右側30cm辺りに踏み付け、刀を右横やや上方に抜き上げ左へ廻り込む様にして、刀を上から下へ落す様に敵の胸を突く・・・
」*
複雑な足捌きが行われていますが、敵の手は手附通りには振り払えないものです。
振り返っての突きは、何故か上から突き下ろす様な表現です。刃は此の時上向きになっている様です。

 この業の事理をとやかくするよりも、この複雑な動作をそれらしく捌く事でしょう。鐺を掴まれて立つ、(振り捥ぐ)、抜刀し刺突する、真向に斬り下す。
 それぞれ気剣体一致の拍子が理解できなければただの剣舞でしょう。其れには繰返し設対者を設けて後ろから鐺を持ってもらう実戦同様の稽古が必要でしょう。但し、設対者が、業を知っていてどのようにしても握り締める様な事では外せないでしょう。

 瀧落の敵に握られた鐺は我れが相当の剛腕でも敵手は握りを解いてはくれません。かの中山博道先生も「日本剣道と西洋剣技」の中で「後方より武器を掴まれた場合、これを外すには、左、右と順次に対手の逆を行か、同時にこれを拂ひ外すかの二様あるが、この外すということは非常に困難な業で、沢山ある抜刀各流にも、その例はまことに少ない」と述べられています。

 古伝は「後よりこじりをおっ取りたる処・・刀の鞘と共二左の足を一拍子二出して抜て後を突き」と云っています。
 握られた鐺に固執せずに、左足を踏み出すと同時に、鐺を持たせたまま前に抜刀して「抜時こじりを以て(後方の敵に)當」振り返って刺突する。この方が理に叶っています。

 但し演武会でこのように演じれば、出鱈目をするなと大目玉でしょう。容易に出来ない、瀧落の鐺外しを出来て居る振りで演ずるのも愉快です。

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