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2016年12月 7日 (水)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く4英信流居合之事5山下風

曽田本その1
1.神傳流秘書を読む
4、英信流居合之事
5)五本目山下風
山下風
 右へ振り向き右の足と右の手を柄と一所尓て打倒し抜付け後同前但足は右足也 浮雲と足は相違也
読み
山下風(やましたかぜ、やまおろし、おろし)
 右へ振り向き 右の足と右の手を柄と一緒にて打ち倒し 抜き付けあと同前 ただ足は右足也 浮雲と足は相違也
 後同前 但足は右足也 浮雲と足は相違也については
浮雲に同じ:左の手を添へて敵を突倒春心尓て右の足上拍子に刀を春ねへ引切先を後へはね扨上へ冠り・・浮雲同様抜き付けた後は、敵を突き倒し、切先をはねて振り冠って・・。
 但足は右足也 浮雲と足は相違也浮雲では膝の外へ(左膝の外へ)打込ミ・・山下風では右足を踏み込み打ち込む・・。


読み解く
 まず業名の「山下風」は現代居合では「颪」おろしの漢字が当てられています。「山颪」の二文字を使えば「やまおろし」です。どのように「やましたかぜ」を読ませたのでしょう。
 慶応2年1866年に下村派の下村茂市が島村善馬に授与した根元之巻には「山下」と書かれています。
 古伝は縦書きですから「山颪」の「おろし」を「下風」と書いて「山下風」をやまおろしと読ませたのでしょう。
 「颪」は山から吹き下ろす風の意味ですから現代居合は「颪」

 英信流居合の四本目浮雲と、五本目山下風は我が右脇に敵は座す、所謂右身の業技法です。敵は我に害意を持って仕掛けて来ようとする。
 古伝の山下風には敵の仕懸けがどのようであるか何も読み取れません。敵が我が柄を取ろうとするのも、敵が刀に手を掛けて抜かんとするも有りでしょう。

 我は右に振り向き「右の足と右の手を柄と一緒にて打倒し」については、敵の立膝に座す右足と、敵が刀の柄に手を掛け抜き付け様とする其の右手と柄を、我が柄頭と右足で打ち倒す。
 それとも、敵が我が柄を制しようとするので、其の手を外して、我が右足で敵の柄を踏み固め同時に我が柄で相手を打ち倒すのか。
 太田龍峰先生に依る中山博道先生の「山下嵐」の意義を読んでみます
「右側面に坐せる敵が抜刀せんとするを取り敢えず刀柄を以て其の手背を強打しヒルム所を抜刀して斬りつけ、其の倒るゝを再び正面より胴部に向かひ斬り下ろす業である。」
 無双直伝英信流の谷村派第17代大江正路先生の立膝の部「颪」を「剣道手ほどき」では「左向き腰を浮めて右斜めに向き、柄止め、・・」ですから、敵の抜かんと刀に掛けた柄をとめていたのでしょう。
 それが、第20代河野百錬先生は「浮雲と同様に我が柄を取らんとするを我れ柄頭を敵の顔面に当てる、敵退かんとするを直にその胸部に斬込み右に引倒して上段より胴を斬下して勝つ」(昭和17年大日本居合道図譜)
 恐らく、江戸末期には、幾つも替え業があって夫々想定が違って居たのでしょう。 

 柄頭を以て敵を打ち据え、敵後ろに反り返る間に、鞘を後方に引き腰を捻って敵の肩から胸に抜き付け、刀に左手を添えて、右足の方に引き倒し刀をはね上げ打ち下す。
 颪の場合の左足外への打ち下ろしは、現代居合では見られ無いのですが「後同前」に従ってみれば左足外かなと思えてしまいます。
 「但足は右足也 浮雲と足は相違也」ですから右足を踏み出して切り下す、足は浮雲と違うよ、と云って居ます。
 左足外への打ち下ろしは、その様な状況に出会った際慌てずに技を自然に繰り出せるように教えたものと解すべきかも知れません。
 古伝はおおらかですが、反面よく読んで文字の向こうにあるものを読み取ることもしなければただの抜けだらけで手におえないマニュアルです。

 敵が柄に手を懸け抜刀しようとするのか、我が柄を制止に来るのか、神傳流秘書の山下風からは読み取れませんが、どちらも有として学べる「山下風」です。
 現代居合の師伝を充分稽古した上で、「おおらかに」古伝の心持を汲み取れれば良いのですが、習った事だけしか出来ないのでは古伝は遠すぎます。

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