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2016年12月 3日 (土)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く4英信流居合之事3稲妻

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
4、英信流居合之事
3)三本目稲妻
稲妻
 左足を引き敵の切て懸る拳を拂ふて打込ミ後同前
読み
稲妻(いなずま)
 左足を引き 敵の切って懸かる拳を拂うて打込み あと前に同じ
読み解く
 この稲妻の手附を読んでいますと、「敵の切て懸る拳を払ふ」と云う処で、場の想定が幾つも駆け巡ります。
 
①敵は何処から来るのか、正面か、斜め右か、斜め左か、後か、何処から来ようと、応じられる心構えと、運剣動作は稽古して見ればと思います。
 此処は、一本目横雲から三本目稲妻までは、向身とされて居ます、向うは正面ですから敵は正面に居る事になります。従って左足を引いて正面に抜き付けです。
 
②敵は我に対して立膝で座していたのが、急に立ち上がって刀を抜いて来たのか。

③敵は我と同様に立膝に座していたのが、急に両手を刀に懸け、大森流抜打ちの如く腰を上げ爪立って刀を上に抜き上げ上段に取って打ち下さんとするのか。

④「左足を引き」は何故右足を踏み込まないのか。敵との間がある場合は、我れの方から踏み込む事も可能です。
 ここでは対座する敵の不意の攻撃に応じるとすれば、敵が打込まんとする瞬前に、左足を後方に引いて間を外すと同時に敵の打ち下さんとする両小手に抜き付けるのでしょう。

⑤「拳を払ふ」は、横一線の抜き付けと違うのか。
 敵が立ち上がって打込んで来ようとするならば、我も腰を上げ立ち上がり左足を引くや右拳は肩より高く斜めに抜き付ける。
 敵の打ち込みが速ければ腰を低く左膝も高く上げずに引き斜めに抜き付けるでしょう。

⑥敵が座して腰を上げて上段から打ち込まんとするならば、我は腰をあげ左膝を後方に低くく引き、肩より高く斜めに抜き付ける。此の場合は肩より高く横一文字もあり得るでしょう。

⑦敵が立って打込んで来るならば、小手を払われただけで崩れ落ちるとは言い切れないと思います。後方に引く相手を追いこんで左足を右足踵に引き付け上段に振り冠って右足を踏み込み真向に斬り下ろす。

⑧敵が低く抜き打って来るならば、我も低く抜き付けるわけで、此の場合は敵との間合いによって左膝を右足踵に付けて座して真向に打込むのでしょう。

⑨現代居合では、中腰に立ち上がり左膝を低く浮かし抜き打ちに敵小手を払い、左膝を右足踵に着いて、上段より敵を切って居ます。

⑩敵が高く上段から打込まんとするのに対し、立ち上がり左足を伸ばし上体を起し抜き付ける様にする所も有ります。それでも左膝を右足踵に送り込んで座して上段から打ち込んでいます。

 いずれにしても、敵の動作に応じた対応であるもので、どれも稽古すべきものでしょう。高く立って打ち込もうとした敵の小手を切っているのに、左膝を着いて相手の頭上に斬り下ろす想定が描けずに困ります。敢えて真向打ち下しが敵の頭上であると思う必要も無いとは言え
 小手を切られて前に本能的に崩れ落ちるとも云われますが、いかがなものでしょう。

河野先生の大日本居合道図譜の稲妻
「正面に対座する敵、上段より斬付けんとする機先を制し其甲手に斬付け直に真向に打下して勝の意なり。
 中腰に立ち上がるや左足を一歩後方に退き腰を左に捻りて敵の甲手に斬り付ける、之より左膝をつきつつ諸手上段となり斬下し・・」

政岡先生の地之巻の稲妻
「正面に向って座す所へ正面から斬り下して来られたので、すばやく籠手に応じ、真甲から切下す動作。
 左足を引き、中腰のまま体を開き籠手に応ず、左膝を右足の処まで送りつつふりかぶる。」

 両先生とも、上段から切って懸られるのを、河野先生は、左足を引いて左に腰を捻り(開き)敵の拳に抜付けています。政岡先生は、大きく鞘送りして、柄頭を敵に向け、打ち込んで来る右籠手を、鞘引きするや左上から斜めに斬り付けています。
 
 土佐の居合の極意である柄口六寸の教えに相当する業の一つでしょう。敵と間合いによっては右足を踏み出して先をとる抜付けも、ついでに稽古しておけば頭が柔らかくなります。
 もう一つついでに、左足を引いて水平に胴に抜付ければ夢想神傳流の横雲になります。
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 政岡先生は「左足を引き、中腰のまま体を開き籠手に応ず」ですから右半身になって筋を替って抜き付けると読みたいのですが、左足を後方に真直ぐ引くのですから、筋は変われません。演武では敵の斬り下す右小手を、刀を抜き上げて左から右へ斜めに斬り下して居る様です。この籠手への抜き付けには、新陰流の斬釘截鉄による片手抜刀が使えそうです。

 河野先生の場合も、左足を引けば自然に右半身になるのですが、甲手に抜刀の基本である「腰を左に捻りて敵の甲手に斬り付ける」横一線の抜き付けのようです。筋を替る意識は見られません。

 当代はこの抜付けを「上段より我に斬り付けんとするその甲手(両内甲手又は左内甲手)に我れ斬り付け・・」と斬り付け部位を特定しています。

 此の業は田宮流の表之巻一本目にある稲妻と業名と動作が似ています。妻木正麟宗家の想定では「対座している敵が立ち上がって右斜め前方から上段から切りかかろうとするので、我はすばやく立ち上がりつつ敵の肘に抜き付け。さらに真っ向から切り下ろして勝つ」と云うものです。

 

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