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2016年12月13日 (火)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く4英信流居合之事8波返

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
4、英信流居合之事
8)八本目波返
波返
 鱗返二同し後へ抜付打込ミ開き納る後へ廻ると脇へ廻ると計相違也
読み
波返(なみかえし・浪返)
 鱗返に同じ後へ抜付け打込み開き納める 後へ廻ると脇へ廻るとばかりの相違也
・・参考
七本目鱗返
 「左脇へ廻り抜付打込ミ開き納る(秘書には岩浪と同し事を記しあり口伝口授のとき写し違へたるならん)」
読み解く
 七本目鱗返しと同じと言います。鱗返が左脇へ廻るのに波返は後ろに廻るだけの違いだと言うのです。
 後ろに座す相手の害意を察し、刀に両手を掛け腰を上げ爪先立ち、鱗返同様左廻りに正面の相手に振り向くや、左足を引いて横一線に抜き付け、左足を右足踵に引付上段に振り冠り真向に打ち下ろし、刀を横に開いて納刀。
 現代居合では、鱗返も波返も右足を軸に左廻りです。鱗返は敵は我が右脇ですから左廻りが最短ですから当然でしょう。
 波返は真後ろの敵ですから左廻りでも右廻でも良い筈です。

 後ろの相手を抜き打つには、左廻りが絶対有効なのでしょうか。敵は真後ろでも、我が右脇、右後にも敵に転ずるかも知れない予備軍がいないとも限りません。
 大森流の當刀(後)も左廻りですが、大森流では右廻りしてもさしたる違和感は無く大森流右刀を180度回転にしたようなものです。

 鱗返の右廻は一旦180度真後ろに廻って更に90度右廻りするのではよほどの状況が無い限り不要でしょう。自然に最短で廻る筈ですから左廻りに為ります。
 波返しは、左右どちらでも180度廻るだけで同じ回転です、左廻りは立膝の坐し方では左足が右足より後に在るので右足先軸での左回転を妨げません。
 左足先を軸に右廻りしようとすると、右足が邪魔して左足の回転を妨げます。右足を軸にした右回転は左足の運用次第です。

 中腰に立上り、右足を軸に右廻りの回転に従って左足を常に体の後方にある様に移動させて後に振り返るや左足を後方に引いて抜付ける。
 今一つは、中腰に立上り右足を左足に添わせるか少し後方に引いてから右回転すれば容易に回転出来ます。
 もう一つ、中腰に立上り左足を右足の少し前に踏み出して左足を軸に右回転し後方に振り向くや右足を引いて抜付けます。

 更に、中腰に立上り左足を右足の前に千鳥に踏んで置いて左足を軸に右回転して右足を引き抜付ける、など幾つかやって見れば足捌きに依る体の運用が明確に把握できるでしょう。
 中腰に立ち上がらずに右回転も可能ですが、左膝を軸にした場合左足でも右足でも後方に引くのは厄介です。
 右足を引くか左足を引くかは右回転の際敵との間を瞬時に測る眼も大切です。
 古伝神傳流秘書にある抜刀心持之事、所謂現在の奥居合ですが、その三角や四角が右廻と左廻りの混合です。
神傳流秘書抜刀心持之事三角
「抜て身を添へ右廻りに後ろへ振り廻りて右脇を切る。
此の方法は幸いにも英信流居合目録秘訣の上意之大事に解説されています。
「三人併居る所を切る心得也ヶ様のときふかぶかと勝んとする故におくれを取る也居合の大事は浅く勝事肝要也三人併居る所を抜打に紋所のあたりを切先はづれにはろをときはびくとするなり其所を仕留也三人を一人づつ切らんと思ふ心得なれば必仕損ずる也一度に払ふて其おくれに付込で勝べし」
神傳流秘書抜刀心持之事四角
「抜左の後の角を突右の後の角を切る右の向を請流し左の向を切又右の向を切る也」
上意之大事
「三角にかわる事無し是は前後左右に詰合ふ之心得也故に後ろへ迄まわって抜付る也」
 左右いずれからも回転出来ても、現代居合の動作は左廻りが業の形です、業は千変万化するなどとんでもないと言う形をなぞるのが趣味の人の前で、右廻りして「業違」と言って笑われるのが落ちでしょう。
 冒頭の「鱗返に同じ」の文章によって鱗返の様に左廻りに後に振り向き抜き付けるのが古伝の指定した方法だと読み解くのが妥当でしょう。
 しかし波返の右廻も稽古しておくだけの心構えは欲しいものです。

 大江先生の浪返「後へ向き左より正面へ両足先にて廻り、中腰となる、左足を引き、水平に抜付け上段に取り、坐しながら前面を斬るなり」古伝に忠実です。

 曽田本ではこの業名は「波返」ですが現代居合は「浪返」と書くのが多そうです。業名の漢字はどちらが妥当でしょう。

波(は、なみ)
 波及・波紋・音波
 風などによって水面が上下して傾き、生じるなみ。転じて、なみだつ水面。なみのように伝わり及ぶさま。

浪(ろう、なみ)
 浪費・放浪
 清らかななみ、なみのようにとりとめもないさま、型にはまらずかってなさま。

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