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2017年5月19日 (金)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く9抜刀心持之事16虎走

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
9、抜刀心持之事
16)十六本目虎走
虎走
 居合膝二坐して居立って向へ腰をかゞめつかつかと行抜口の外へ見へぬ様二抜付打込納又右の通り腰をかゞめ後へ引抜付打込也
読み
虎走(とらばしり)
 居合膝に坐して居 立って向こうへ腰を屈め つかつかと行き 抜き口の外へ見えぬ様に抜付け打込み納む 又 右の通り腰を屈め後ろへ引き 抜付け打込む也
*
 居合膝は右足膝を立て左足を折り敷いた所謂現代居合の立膝か、左足膝を着き爪立った体構えか判りませんが、「坐し居る」ですから恐らく前者だろうと思います。
 この文面からこの業は、遠間のところに居る相手にも周囲の者にも気付かれない様に抜付けるのですから不意打ちの状態でしょう。掛け声すら掛けていないようです。上意打ちとも読めます。

 立ち上がり、腰をかがめ、つかつかと間に至り、「抜き口の外に見えぬ様に抜付」はどのようにするのでしょう。
 間に至れば、両手を刀に掛け右足を踏み込み首に抜き付け、即座に真向に振り冠って左足を踏み込み打ち下ろす。下から切り上げる。片手袈裟に切る。そしてその場で納刀。
 現代居合ではお目にかかれない抜刀術の妙を言うのかも知れません。或は、柄への手掛かりや抜き始めの柄頭の方向などに有る筈です。如何にも斬るぞとばかりに、抜打つ相手に柄頭を付けて抜き出すのでは、目的は果たせません。

 「」からの処は、現代居合の奥居合居業の八本目虎走の様に、目的を果たした処、討ち果たした相手の味方が前方より走り込んで来るのを、我は腰を屈め後退しつつ相手が間に至れば抜き付け、真向より打ち下し、納刀する。

 此の業のポイントは相手に接近する動作と、抜口を見せない抜き付けにあるのでしょう。
現代居合では失念した動作です。

 英信流居合目録秘訣の上意之大事の最初に虎走の心得があります。
「仕物抔云付られたる時は殊に此心得入用也其外とても此心得肝要也敵二間も三間も隔てて坐して居る時は直に切事不能其上同座し人々居並ぶ時は色に見せては仕損る也さわらぬ躰に向ふえつかつかと腰をかゞめ歩行内抜口の外へ見えぬ様に体の内にて刀を逆さまに抜きつくべし虎の一足の事の如しと知るべし大事とする所は歩みにありはこび滞り無く取合する事不能の位と知るべし」

読み
 「仕物など言い付けられたる時は、殊にこの心得入用なり 其の外とてもこの心得肝要なり 敵が二間も三間も隔てて座している時は 直ぐに切る事あたわず 其の上 同座し 人々居並ぶ時は 色に見せては仕損じる也 障らぬ躰に 向うへつかつかと腰を屈め歩み行くうち   抜き口の外へ見えぬ様に 体の内にて刀を逆さまに抜き付くべし 虎の一足の事の如しと知るべし 大事とする処は歩みにあり 運び滞り無く 取合いする事能えずの位と知るべし」

 ここでも「抜口の外へ見えぬ様に」とあり「体の内にて刀を逆さまに抜きつくべし」そして「虎の一足の事の如し」と言います。
 すでに、失伝している、下からの抜き付けでしょう。
 「同座し人々居並ぶ時・・」ですから、邪魔が入らないように刀に手を掛けるや否や抜刀し刃を下にし低く切り上げるのでしょう。甲冑を付けた股間を斬り上げるなどの刀法も有ったかもしれません。

 現代居合では不意打、闇打は無く、相手の害意を察して抜き付ける様に教えられています。それは教育上の中学生向きの事であって、古伝はしばしば不意打の心得を伝えて来ます。対敵との単なる仕合では無く、主命を帯びての役割を果たすべき心得も伝えているのでしょう。

 「大事とする所は歩みにありはこび滞り無く取合する事不能の位と知るべし」と言う処は、相手にも、廻りの者にも、気付かれないような歩み方に、ポイントがありといいます。
ドタバタ音を荒げた足踏みしたりするのは、古伝は嫌っています。

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