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2017年7月25日 (火)

刀法の解釈の5全日本居合道刀法解説(1)正座ロ前後切

刀法の解釈
 
5)全日本居合道刀法解説
 
配布時の解説
 
(1)正座
 
ロ)前後切
◎意義
 敵我が真向に斬込み来るを受流すや顔面に双手上段から斬付け、直ちに後敵の真向に斬下し、更に前敵の真向に斬下して勝つ。
◎動作
 腰を上げ爪立つや刀を頭上に抜き上げ左斜下に敵刀を受流し直ちに双手上段となり右足を踏込みて前敵の面部に斬付けるや、膝を浮かして爪先にて左廻りに後方に向きつつ双手上段から右膝を床につけるや、後敵の真向から斬下し更に右廻りにて正面に向き直り、双手上段から左膝を床につけるや前敵の真向から斬下す。中段に直りて残心し刀を右に開いて納刀する事同前。
 二本目「前後切」は無外流の五用の二本目「連」より組み立てられたと言われます。
 
無外流居合兵道「連」
理合:前後に敵を受けた場合で、先ず前敵の眉間に諸手で抜きつけ、後ろを振り向くや、後敵を真向に斬り下ろして仕留める。
方法:両足の爪先を立て腰を上げると共に刀を上方に抜き上げる。
 刀を抜き上げる共に左手を柄にかけ、諸手上段となり、右足を踏み出して眉間に斬りつける。
 両膝を浮かし、直ちに左方から後方に向きを換えつゝ上段となり、向きを換え終るや真向に斬り下ろす、切先は床上五寸位。
 残心、納刀以下前に同じ。
 敵は前後ですが、正面の敵に再び斬り付ける事はせずに終わります。
 「全日本居合道刀法」は、「敵我が真向に斬込み来るを受流すや顔面に双手上段から斬付け」後ろに振り向き真向に斬下し、前敵に向き直って再び、真向から斬り下ろします。
 前後に囲まれた場合、前敵が先に抜き上げて真向斬り込んで来るのを受け流し、浅く斬り付け戦意を殺いでおいて即座に後ろに振り向くのであって、深く斬り込んでしまっては、刀が抜けず、浅く切る事は鉄則です。
 後に振向き後敵の状況を即座に判断して真向に打ち下ろすと解釈できます。後ろ敵は刀を抜き上げ真向に打ち込んで来るならば「合し打ち」「切り落とし」が有効です。再び前に振り戻って前敵を真向から斬り下ろしています。充分斬っているならば前に振り返る必要は無いし、真向から斬り下ろす必要も無いでしょう。
 中川先生の無外流の「連」は、我が方から仕掛けて前敵を制し、後ろに振り向き真向に斬り下ろし残心です。
 この全居連「刀法」のポイントは、受け流すや顔面に双手上段から斬付ける、と、後に振り返って斬り下ろす、再び前敵に向かうその方向転換の足捌きと、体裁き、刀捌にある筈です。
 無外流の「連」では「爪先を立、腰を上げると共に刀を上方に抜き上げる、刀を抜上げる共に左手を柄にかけ、諸手上段となり・・」で受け流しの意識は文章には見られません。
 然し中川先生の写真の動作は、刀を正中線上を体に近く刃を外向けて上に抜上げています。
 左手を鞘引きすれば切先は左に稍々振られ、左肩を覆う様になる筈で見事です。
 敵の斬り込みを受け流せば、敵との間合いは自ずから近く敵が退かんとする前に眉間に抜き付けるとすれば、上段から大きく振り下すのでは理に合いません。
 我が切先で敵顔面を引き切る位の運剣でしょう。当然両肘は屈む事になり、引き切った切先は敵の喉元で中心を取っているべきです。
 土佐の居合の教えに、「敵に囲まれた時は一人宛て深々とズンと斬っていては遅れをとる、居合の大事は浅く勝事肝要也、ビクとさせておいてその隙に一人づつ斬っていく(英信流居合目録秘訣上意之大事)」と言う教えがあります。
 受け流すに当たっての抜き上げについて、無双直伝英信流居合道覚書を書かれた南野輝久先生は「刀刃を左15度外側に傾けて、柄頭を正中線(額)に沿って静かに鞘引きしながら切先3寸(9cm)まで抜き上げ、切先3寸(9cm)から鞘を引き落し、切先が外に撥ね上らぬように抜上げる。抜き上げると同時に爪先立ち、右手首を直ちにその場で右に返して上段・・」と書かれています。切先は左体側より外に出ていなければならず、抜き上げる下からの突き上げと切り込まれるとの当り拍子が認識できませんと受け流しはおろかすり流しも不十分となります。
 第7代会長の刀法解説では「受け流す為に抜刀する時、右柄手を顔前を通して、刀刃を外懸け(外に倒す)にしながら払いあげる様に抜き取り敵刀を左斜め下に擦り落す様に受け流す」と明快です。
 右柄手を返し、左手を正中線上を上げて諸手上段に振り冠り、顔面に斬り付ける。
 ある地区の講習会では深々と敵の頭上に斬り付ける指導を当たり前の様にしていますが顔面に斬り付けるのであって両手が充分伸びた打ち下しでは無いでしょう。河野先生、福井先生の動画では顔面では無く深々と斬り付ける様に見られます。これでは意義を達せられないでしょう。動画を重要視する修行者に不向きな動作です。
 方向転換の動作で、すっくと立ち上がって方向転換し立ったまま斬り下ろしてから、後膝を床に着く動作が目に付きます。
 此処は、「膝を浮かして爪先にて左廻りに後方に向きつつ双手上段から膝を床につけるや、後敵の真向から斬下し更に右廻りにて正面に向き直り、双手上段から左膝を床につけるや前敵の真向から斬下す。」であって腰は挙げず浮かすようにして廻り、床に膝を着くと同時に斬り下ろすのがポイントでしょう。
 回転の足捌きは、敵との間合いを変えない様に体軸がぶれない足裁きをすべきで、爪先、踵の足裁きを工夫すべきです。
 会長の解説では、「左廻りする時、両足爪先にて廻切れば振り向きたる時一足分だけ後ろに下がる」とされています。「右足は爪先にて廻り、左足は踵にて廻る」とされています。
 武術は、その領域に達した者だけにしか理解できない奥義とも云えるものがあって、それが「術」となるはずです。真似ただけの「かたちは」は誰でも出来る様になるでしょう。
 設対者を置いての稽古が当たり前の相対しての剣術ならば己の技量は設対者の技量によって「術」の達成度は少しは推し量れます。
 仮想敵相手の一人演武の居合は如何に「かたち」の練習を積み上げても、時に独りよがりに陥り、出来ていると錯覚してしまいます。その良し悪しは師匠の「かたち」からともすると「癖の真似」の良し悪しで判断してしまうものです。
 真似すら出来ない者は「体格も、力も、哲学も師とは違う」と己の個性を強調して誤魔化すばかりです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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コメント

”第7代会長の刀法解説では「受け流す為に抜刀する時、右柄手を顔前を通して、刀刃を外懸け(外に倒す)にしながら払いあげる様に抜き取り敵刀を左斜め下に擦り落す様に受け流す」”このとは知りませんでした。

刀法の要点では『抜き上げる時は右手は受流しの要領で無く体の正中線を通して双手上段となる』とあります。そのためか、受け流す動作が無く正中線(額前)に右拳があるのをよく見かけます。

それと『刀刃を外にむけて抜き上げる』よう指導されます。刀刃で腕だか胸だかを切らないように、安全性を注意されるがあまり、『受け流す』の動作が無い人も少なく無いと思います。

イシゼキさま
コメントありがとうございます。
刀法の要点は全居連の会誌に書かれているものです。
これは要点のみ書いてあるもので、刀法の意義(剣理)、及び術理(動作)は知っている前提で書かれています。
第7代会長の術理(動作)に「・・我が頭・左肩を覆う形にて、刀を頭上に払い上げる様に抜き取りて左斜め下に擦り落とす様に受け流す」のが剣理にある「・・我が真向に斬り込み来るを受け流すや否や・・」にある様に、一方的に斬り掛かっていくのではなく後の先の動作です。
第七代会長の全日本居合道刀法解説をお持ちとは思いますが、師の教えと共に熟読され
お稽古される事をお勧めします。
       ミツヒラ

投稿: イシゼキ | 2017年7月28日 (金) 13時02分

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