« 曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く10夏原流和之事3小具足5繰返 | トップページ | 曽田本その1の1神傳流秘書原文10夏原流和之事3小具足6逆ノ剱 »

2017年7月28日 (金)

刀法の解釈の5全日本居合道刀法解説(2)立業ハ切先返

刀法の解釈
 
5、全日本居合道刀法解説
 
配布時の解説
 
(2)立業
 
ハ)切先返し
 
◎意義
 敵我が真向に斬込み来るを左斜めに受流し、左手を刀に添へて敵の面部を引き切り、直ちに腹部を刺突して勝つ。
◎動作
 前進しながら右足を前に踏込み刀を頭上に抜き上げ(刀刃は後方にして切先を左に下げ我が頭部と肩をかこひ表鎬にて受流す)敵の刀を左斜に受流すや、直ちに左手を刀の棟に(物打の下方に)添へ、少し体を沈めつつ柄を右腰に下げ乍ら敵の面部を引き切り、左足を一歩前に踏込んで(左手を刀棟に添へたまま)敵の腹部を刺突す。残心し左足を後方に一歩退き刀を右に開いて納刀す。
 「切先返し」は伯耆流の「切先返し」を基にしています。
伯耆流磯波会江島敬隆著星野宣敏校閲の伯耆流居合術教本昭和17年1942年の教本によって稽古して見ます。カタカナを仮名に直してあります。線画が付属していますが省略します。
切先返し(立姿)
 正面より斬り下す敵に対して抜き流して、受け流し、間髪を入れず、敵の顔面を断ち斬り、更に腹を突きて倒すのである。
 踏み込んで受け流すところ、顔面を断ち切る動作並に其の姿勢より突く所、妙味ある事である。
1、前方より斬りかゝらんとするものあり之に応じてすゝみ寄る。
2、敵が斬り下したる刀を抜き放って受け流す。
3、頭上に刀をかざして攻撃をとる。
4、敵の顔を断ち斬る。
5、突の構え。
6、敵の腹を突いて倒す。
7、残心。
8、引き上げ。
9、納の構。
 刀法の切先返しが体を沈めつつ敵の顔を引き切るのに対し、伯耆流の切先返しは頭上に刀をかざし攻撃の体勢をとって顔面を断ち斬るの違いがあります。
 この違いは、受け流されて間近くある敵の顔面を引き切り戦意を消失させるか、顔面を「断ち斬る」の文言にひかれ、頭上よりズンと断ち割り致命傷を与え、止めに刺突するかの想定の違いを思い浮かべてしまいます。
 河野百錬先生の大日本居合道図譜の切先返しの写真では、敵刀を受流すや、直ちに左手を刀の腰に(ほぼ中央)に添え、右足先を稍々左に向け左後足は受け流した位置の侭、左手を十分前に延ばし、右下後ろに、右手を十分引いて敵の面部を引きかき切る。とされていますが、受け流された敵は間近に顔は有ります、これでは受け流された敵が即座に後方に引かない限り、我が刀は敵の頭上に斬り込んでしまい、意図する「面部を引き切る」とはなりそうにもありません。
 この河野先生の面部引き切りの左足捌きは、無外流の中川先生の写真にも見られますので制定当時の動作であったのでしょう。
 河野百錬先生、福井聖山先生、池田聖昂先生の動画により意義に対する動作を拝見してみます。
 お三人とも動作は形も拍子も夫々です。河野先生の受け流してから左手を物打ち下に添えて、何とも曖昧な顔面切り、その左足の固定された捌きは敵の動きをどの様に意識されたのか術理が不明瞭です。
 福井先生の受流すや左手を物打ち下に添える際、下から突き上げる様にして敵頭上から断ち割るが如き動作は、「左手を刀に添へて敵の面部を引き切り」の意義に合いません。
 両大家とも、敵の打ち込みをひょいと受けてすり流す様です。敵刀の打ち込みをどの様に受けているのでしょう。なり行き任せに見えてしまいます。
 当代は、刀を抜きつつ、敵の上段からの打ち下しに、もぐりこみ突き上げる様に表鎬にて受流すや物打ちに左手を添え、即座に切先を敵の顔面に当てる様に引き切る。
 右入身、左入身の体捌きにこの業の進化の歴史を見るようです。
 ある地区の指導者は福井先生の様に左手を物打ち下に添え、切先を後ろに刃を上向け床に水平に取り、敵の頭上に切先を付けて断ち割っている様です。しかも切先は敵の体に深く放物線を描く様に入っていますから、右腰に刀を引き下ろすことは現実的に難しそうです。
 第七代会長による「刀法」解説
敵刀を受け流すポイントを上げてみます。
 少し腰を沈め気味に刀を抜き込み、右半身となって、右手は進行方向に平行、右肩の線上にあり、刀刃は後方に向かい切先は左斜下方にあり、我が顔面・頭部並びに左肩を覆う形で我が顔前頭上にある。
 刀を下から上に突き上げ、腰を左に捻る気が大切。
 上段から打ち込んで来る敵刀を受ける際、敵刀の打ち下ろす物打ちを受けるのではなく鍔元近くで受けます。
 摺落すのではなく、当り拍子に腰を左に捻って右入身となって敵刀を受け流します。この受け流しは修練を積んだ人にしか理解できないかもしれません。擦り流しは受け流しではありません。
 受け流すや、直ちに左手を刀の棟(物打ち手前)に添え、柄を我が乳の高さに下げつつ切先を敵の顔面に当て、引き切る様に切先を敵の正中線を通して斬り下す。
 左手の添え手の位置は肩幅で物打ち下に添えると指導された古参がおられますが其れでは深く斬り込み過ぎになります。
 此の時、右爪先を軸に左廻りに右爪先を正面に90度に向け、左膝を右膝のかがみに引き寄せ右足先が真横になる瞬間に引き切り、左膝を右ふくらはぎの上に重ね左入身になる。
 この際刀を右腰にとり腰を沈める、柄は右腰より二拳位後方、刀は水平袴の帯下に把持する。顔面引き切って「刀を右腰にとり腰を沈め」次の刺突の準備に速やかに移行するには左足の捌きは重要です。受流した時の左足の位置のままでは敵の動きに付いてはいけません。
 この引き切りでも、勘違いして切先が敵顔面に付けた位置より深く孤を描いて斬り割く如き動作をしている人が見られます。飽くまでも、引き切る切先であるべきでしょう。切先は顔面に当てた位置からスッと下り、右腰に引き付けられるべきです。
 其の為には左手の添え手の位置は重要です。当然引き切って引き付けられた左手は体(左腰)から離れている筈です。
 沈めた腰を上げながら左入身のまま左足を踏込み、「敵の腹部を刺突す」が敵の上腹部(臍と水月の間)を刺突すると特定されています。左手は空手の手刀の突き手、刺突した切っ先は敵の腹部から水月の高さに刺突する。
 「腹部を水平に刺突する」、かつての教えの変わった部分ですが、中には腹部から切先は喉元まで突き上げると、指導されたとされている人もいます。
 低い位置から腰を上げながら刺突すれば手の内を変えなければ自然に水月の辺りに突き上げます。喉元まで突き上げるには手で突き上げる事になりその必要はあるでしょうか。
 刀法の意義を充分熟読し想定を描くならば、動作の書き足りない部分は自ずから浮かんでくるはずです。
*
 「なま兵法大疵のもと」と宮本武蔵は五輪書の地之巻に書いています。
 業技法は進化するべきなのに、昔習っただけに拘るなどは怠け者としか言い様は有りません。
 当代の解説を熟読し、講習会に参加し、習った通りに反復した上で、自論を述べるのは良しとしても、刀法は全日本居合道刀法であって基準の動作は当代の動作基準が最優先であるべきものでしょう。
 当代より最高の允可を受けながら心得違いは業技法に拘る姿勢よりも、何を学びどの様に指導すべきかの根本理念に指導者としての問題が有りそうです。自論に拘るならば当代に直に進言すべきものでしょう。
 ある地区では指導に当たって、A十段が当代会長の剣理と術理を説明し、B十段が模範演武をするに当たって自分流を得々と演じられます。
 是では、教習を受けに来た者には何をすべきかがわからなくなります。当然審査や競技の判定にもそれは現れるでしょう。
 全日本居合道刀法は剣理、術理ともに統一されていなければその存在の意味は無いものです。
 然し、統一理論を前面に押し出し、意義(剣理)も動作(術理)も統一された時、流派を越えた刀法の存在の問題点が大きく浮上して来ると思われます。
 全剣連の竹刀スポーツが古流剣術の各流派を駆逐した様に、制定居合が居合の根本的動作基準と錯覚してしまえば古伝は消えでしまうでしょう。
 自流の業の根源を求める事が武道文化の継承の根幹であって、各流派共通の全日本居合道刀法の意義・動作に自流・自分流を主張し拘るべきとは思えません。
 他流の審査に他流を知らずして、その代わりに制定居合で補う様な安易な審査員養成は、答えが出ている様に思えて仕方がありません。
 自道場から武者修行に出た事も無く、自流の業ですらその謂れも知らず、意義も動作の有りようも解からず、中には自流の現宗家の解説書すら見た事も無い、たまたま近所で出会った道場で習ったものを師伝と称し「かたち」だけ模倣し、その「かたち」から抜け出す事も出来ない者が、しかとして武術論を論じ、他流の手附もその宗家筋の演武を学び見る事も無く、「のほほんとしてきた者」が他流を元とした「全日本居合道刀法」を推し量る事などできるのでしょうか。
 
思いつくままに・・・・刀法解説を終ります。・・・講習会が楽しみです。
 
 此の「刀法」のブログを公表したとたん、ある地区の特定の指導者を中傷するもので許すべきではない、と息巻いているそうです。
 ミツヒラを揶揄する暇があるならば、そんな低レベルに明け暮れる暇に、「刀法」の制定された意味と、其処から何を学び、何を標準化すべきなのか、どの様に指導するべきなのかある地区の指導者が議論するべきでしょう。第七代会長が答えを示されていると思うのですが・・・。(追記 2017年8月19日)
 
 
 
 
 
 
 
 

|

« 曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く10夏原流和之事3小具足5繰返 | トップページ | 曽田本その1の1神傳流秘書原文10夏原流和之事3小具足6逆ノ剱 »

稽古の日々」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く10夏原流和之事3小具足5繰返 | トップページ | 曽田本その1の1神傳流秘書原文10夏原流和之事3小具足6逆ノ剱 »