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2017年7月26日 (水)

刀法の解釈の5全日本居合道刀法解説(2)立業イ切上げ

刀法の解釈
 
5、全日本居合道刀法解説
 
配布時の解説
 
(2)立業
 
イ)切上げ
 
◎意義
 敵が真向上段に抜き上げて仕懸けんとするを、我れ其の右腋つぼに下から斬上げ、直ちに双手上段から敵の左袈裟に斬下して勝つ。
◎動作
 前進しつつ右足を前に踏込みながら抜きかけ刀の反りを一杯に返して(抜きつつ)刀刃を下から敵の右脇つぼに右斜に斬上げ、左足を少し進めながら双手上段となり右足を踏込んで敵の左袈裟に下段まで斬り下す。正眼(中段)に直って残心し刀を右に開いて静かに納刀す。次に左足を右足に揃へて直立し左足から後へ退り元の位置にかへる以下同じ。
 この業は神道無念流より改変されて全居連の刀法に組み込まれたと思われます。制定委員に神道無念流の中山博道先生がおられた筈です。編成時の承認の際(昭和31年1956年10月7日)欠席されています。
 神道無念流の立居合12本の第一本目の意義:「若干歩前方にある敵が将に刀を抜かんとする機に先ち敵の右前臂(ひじ)を下方より切るも続いて敵前進し来るを以って後退して切り更らに敵の後退するを進んで切るのであって此際敵は倒れたりとするのである。」(太田龍峰著 居合読本より)
 この業で、敵の右前臂を切り上げるのですが、更に攻め込んで来るので我は後退して敵の正面を切っています。敵が後退するのを追って再び正面を切る。と云う事でどうやら左袈裟が見られません。
 第十本目にやはり「敵抜かんとするのを右前臂を下方より切り、左足より二歩前進し敵の正面を切る。刀を青眼の儘で、刀を敵に突きつける姿勢で二歩前進す。刀を上段にして残心を示す、刀を青眼に復してこれを収む。」
 この方が、参考になる様ですが、制定委員に神道無念流の先生は含まれていませんし、中山博道先生も既に意欲を失っている時期ですから何とも言えません。
 全日本居合道刀法の「刀の反りを一杯に返して(抜きつつ)刀刃を下から敵の右腋つぼに右斜に斬上げ・・」ですから右胴下から切先三寸位で腋窩に抜き付け、斜めに切り上げ、抜上げるとするもので、より深く斬り込んで行く様な事は、不要でしょう。この一刀で敵は致命傷になってしまいます。
第七代会長の「切上げ」
◎剣理は配布時の意義とほぼ同じです。
 「敵が真向上段に抜き上げて仕懸けんとするを、我れ其の右腋つぼ(腋窩(えきか))に下から斬り上げ、直ちに双手上段から敵の左袈裟に斬下ろして勝つ意也」
◎術理は腋窩への切上げは右胴下から斜めに斬りあげる。
 「・・刀を鞘ごと少し我が進行方向正中線と平行に出しながら、柄頭を床面と平に敵の右胴下に向わしめつつ、我が腰を少し左に捻りながら刀刃を上にして、物打ち手前迄抜き付けて行く。
 物打ち手前に至らば、刀刃を鞘諸共外に返し刀刃の反りを下に一杯に返しながら抜き込み、一杯にかえった瞬間、敵の右胴下より右腋つぼにかけて右斜めに斬り上げる」
 腋窩に抜き付ける事がポイントですが、これはかなり鋭角な斬りあげです。よく見かけるのは右胴下から左首元又は左肩下への切り上げです。腋窩は脇の下の窪みでしょう。これでは指定された所に刀刃は斬り付けられません。
 それも、物打ちからさらに深く切り込んでいますがさて腋窩への切上げの意味が理解出来ているのか疑問です。
 切り上げた刀刃、右斜め上方、40~45度に傾き、切先は進行方向に平行、刀身は床に平、右拳は肩より二拳位上。と会長により指定されています。
 拳が高く頭上を越えているのをよく見かけます、或は角度が浅く流れてしまっている。
 左足は60度位開き、半身の切り上げと第七代会長の解説書は指定していますが、現在は、鋭角に切上げる事を強調するため、左足は90度を超える程に開き、上体を開いて伸び上がる様に右入身に近い半身となります。
 「左足を少し進めながら双手上段となり右足を踏込んで敵の左袈裟に下段まで斬り下す。」
 左袈裟に斬り下すには、まず、斬り上げた刃筋の通り切先を下げ、左踵を正面に向け直し、右足踵まで引き寄せ双手上段になる。
 我が右足を敵の正中線に踏込み、右半身で敵の左肩口(左肩下一寸位)より水月を通して右胴下敵の右膝まで斜めに斬り下す。
 是も現在では、右入身に近い左袈裟切りですから、斬り下した柄手の左拳は右骨盤上一拳前、切先は敵の右膝線上に位置し、左へ流さない。切先が流れないコンパクトながら鋭い運剣法と云えます。
 上段から右に柄手を振って左袈裟切りするのを、第七代の講習会では上段にとった柄頭を前方に押し出す様にして右足を踏み出すと共に体を左に披いて右肩下に斬り下す。
 この左袈裟の運剣も敵左肩下に切先三寸程の処を斬り込みさらに深く斬り込む様な指導者もいますが、畳を両断するような剣捌きは不要です。
 居合は真剣による刀法であって、浅く勝べきで、見栄えの良い殺陣の踊りでは無いのです。
 
 
 
 
 

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