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2017年12月20日 (水)

曽田本その1の2英信流目録読み解く1居合棒太刀合之巻6大森流居合之位1初發刀

曽田本その1
2.英信流目録読み解く
居合棒太刀合之巻
 兼 大森流居合 小太刀之位
6、大森流居合之位
 
一本目初發刀
 平常之如く坐之居ㇽ也右の足を一足婦ミ出抜付討込亦左の足を出之右尓揃へ血ぶるひをして納むる也血ぶるひの時立也右を引納ㇽ也
読み
一本目初發刀(しょはっとう)
 平常の如く坐し居る也 右の足を一足踏み出し抜付け討ち込む 亦 左の足を出し右に揃へ 血ぶるいをして納むる也 血ぶるいの時立つ也 右を引き納むる也
読み解く
 平常の如く座している。右足を踏み出して抜き付け、その足のまま振り冠って討ち込む。左足を右足に揃えて立ち血振るいをし、右足を引いて刀を納める。

 「平常の如く坐し居る」ですが、正座とも立膝とも書かれていません。

 古伝神傳流秘書の大森流之事初発刀を読んでみます。
「右足を踏み出し向へ抜付け打込み扨血震し立時足を前の右足へ踏み揃へ右足を引て納る也」

 神傳流秘書は随分簡単に書かれています。英信流目録の方がやや克明です。これも座仕方の説明はありません。

 この英信流目録の原本は安永5年1776年に書かれています。江戸幕府は慶長8年1603年に開かれています。幕府が開かれてから173年も経ち10代将軍家治の時代です。
 立膝の方法はかなり古そうですが、正座は江戸時代に入ってから、武家の正式な座し方になったとも言われています。
 座り方など特に決まりがなければ如何様にも座れます。
 「平常の如く坐し居る」と言えば、この安永5年頃ならば正座の坐し方が、殿中では十分浸透した武士の座し方と言えるかもしれません。
 大森流は正座と思い込んでいますから、何の疑いもなく「正座」しますが「平常の如く・・」と改めて読むと「さてどのように座ろうか」と思ってしまいます。

 此処は同時代に書かれた「童蒙初心之心持」の動作をよく研究してみます。
 
この伝書は木村栄寿先生の「林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流」に記載されているもので庚申5月(1860年万延3年)に下村定から島村義郷に伝授したものです。転載禁ずですがこの道の正しい継承の為にご容赦ください。

 「刀を差し体を真っ直ぐ腰腹の抜けない様に着座し両手を膝に置く。
 正面に対座する敵を見定める心持で、息を吐くにつれて左右の手を刀に掛けるや抜き出す。
 右手の柄掛は柄の平部分より何となく柔らかに掛け、糸を繰り出す様にするすると抜き出し、切先が鯉口を離れる間際に鞘を左に返し、柄の握りが自然と納まる所に納まるや、小指・薬指を次第に締めて、左の肩腰共後ろへ捻り開き、右の肩はぐっと締めて、顎を引いて俯けにならず、のびやかにして、右手の力六分左手の力四分の心持ちで何の懸念も無く左右の手で引き分けて抜き付ける。

 抜き付けた時は、体は胸を張り、腹を出し、半身ならず正面向きにならず、いわゆる三角の曲尺(まがりかね)で半開半向となる。
 さて抜き付けの際、顔色に今から抜くぞとばかりに柄を握り抜き出すなど甚だ悪く、何事も無き様に柔和に抜き出すべし。

 抜き付けは臍の底に心を鎮め、敵の乳通りを無心に抜き付けるもので、敵が屈んで脛を立てた時は我も同じと心得、抜き付けた刀は肩から拳刀の切先へと水走りするものとする。しかし、水が滞り無く流れてしまうように切先が下がり過ぎてはいけない。この処は筆に述べ難い。

 左右の足は真直ぐに踏み、後ろの脛が床から浮かないように。前の脛が内側に倒れては甚だ弱くなる。

 抜き付けの、切り上げる様な、かまぼこの様な刃筋は鞘の引き方に問題が有るので充分工夫すべきだ。

 業のポイントは第一に目付けである。首を左へ傾けて抜き付けた刀を覗き見するようにしていてはいけない。気脈が切れてしまう。打ち込むまでは敵の面より拳を見、打ち込みに連れて斬り付けた所へ目を移していくものだ。納刀が終わり座を立つまで目付けは敵に付けておく事。

 振り冠りは後ろ足を進める心持で冠り込む、切先倒さず左の肩の上へ突き込む心持で、冠る拍子に拳を下げるのは気脈が切れるようで甚だ悪い。振り冠った時ちょっと上目使いするのも気脈の切れるのでよくない。

 打ち込みは手の内を柔らかに冠り、体をよく伸ばし腰に気を入れ、小指より順に締めて打ち込む。刃筋狂わず、強く打ち込むのがよい。

 右手が勝って右の小鬢より打ち込んでいるのは曲芸と言うものだ。拳を揃え絞まりよく調えば刀刃は真直ぐに下りて切れ心知よい。」


 この童蒙初心之心持を読んでいますと、昔から同じ事を言われていたのかと少しも変わらない修行途上の事をほほえましく思います。

 童蒙とは初心者の事で、「初心の者への修行の考慮の一助になればとあらましを書いた」、としています。
 大いに参考になるもので、原文のままでも十分意味は伝わってきます。

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