« 2017年7月16日 - 2017年7月22日 | トップページ | 2017年7月30日 - 2017年8月5日 »

2017年7月23日 - 2017年7月29日

2017年7月29日 (土)

曽田本その1の1神傳流秘書原文10夏原流和之事3小具足6逆ノ剱

曽田本その1
1.神傳流秘書原文
10、夏原流和之事
3)小具足
六本目逆ノ剱
逆ノ剱
 如前相手の手首を留多る時相手短刀を抜以て突んとするを膝を少し立弛し右の手二亭其突手を取り如前阿の希耳倒春也
逆ノ剱(ぎゃくのつるぎ・ぎゃくのけん)
 前の如く相手の手首を留たる時 相手短刀を抜いて突かんとするを 膝を少し立て弛し
右の手にて其の突き手を取り 前の如く仰のけに倒す也
参考
「如前相手の手首を留多る時」の前は二本目剱當詰迄戻ります。「相手左の手二亭我可胸を取る我可左の手二亭其手首を取る」
「右の手二亭其突手を取り如前阿の希耳倒春」の前は五本目繰返でしょう。「相手短刀を抜亭打込を右の手二亭留其手を相手の額に押當阿能希ニねじ多を春」
 

| | コメント (0)

2017年7月28日 (金)

刀法の解釈の5全日本居合道刀法解説(2)立業ハ切先返

刀法の解釈
 
5、全日本居合道刀法解説
 
配布時の解説
 
(2)立業
 
ハ)切先返し
 
◎意義
 敵我が真向に斬込み来るを左斜めに受流し、左手を刀に添へて敵の面部を引き切り、直ちに腹部を刺突して勝つ。
◎動作
 前進しながら右足を前に踏込み刀を頭上に抜き上げ(刀刃は後方にして切先を左に下げ我が頭部と肩をかこひ表鎬にて受流す)敵の刀を左斜に受流すや、直ちに左手を刀の棟に(物打の下方に)添へ、少し体を沈めつつ柄を右腰に下げ乍ら敵の面部を引き切り、左足を一歩前に踏込んで(左手を刀棟に添へたまま)敵の腹部を刺突す。残心し左足を後方に一歩退き刀を右に開いて納刀す。
 「切先返し」は伯耆流の「切先返し」を基にしています。
伯耆流磯波会江島敬隆著星野宣敏校閲の伯耆流居合術教本昭和17年1942年の教本によって稽古して見ます。カタカナを仮名に直してあります。線画が付属していますが省略します。
切先返し(立姿)
 正面より斬り下す敵に対して抜き流して、受け流し、間髪を入れず、敵の顔面を断ち斬り、更に腹を突きて倒すのである。
 踏み込んで受け流すところ、顔面を断ち切る動作並に其の姿勢より突く所、妙味ある事である。
1、前方より斬りかゝらんとするものあり之に応じてすゝみ寄る。
2、敵が斬り下したる刀を抜き放って受け流す。
3、頭上に刀をかざして攻撃をとる。
4、敵の顔を断ち斬る。
5、突の構え。
6、敵の腹を突いて倒す。
7、残心。
8、引き上げ。
9、納の構。
 刀法の切先返しが体を沈めつつ敵の顔を引き切るのに対し、伯耆流の切先返しは頭上に刀をかざし攻撃の体勢をとって顔面を断ち斬るの違いがあります。
 この違いは、受け流されて間近くある敵の顔面を引き切り戦意を消失させるか、顔面を「断ち斬る」の文言にひかれ、頭上よりズンと断ち割り致命傷を与え、止めに刺突するかの想定の違いを思い浮かべてしまいます。
 河野百錬先生の大日本居合道図譜の切先返しの写真では、敵刀を受流すや、直ちに左手を刀の腰に(ほぼ中央)に添え、右足先を稍々左に向け左後足は受け流した位置の侭、左手を十分前に延ばし、右下後ろに、右手を十分引いて敵の面部を引きかき切る。とされていますが、受け流された敵は間近に顔は有ります、これでは受け流された敵が即座に後方に引かない限り、我が刀は敵の頭上に斬り込んでしまい、意図する「面部を引き切る」とはなりそうにもありません。
 この河野先生の面部引き切りの左足捌きは、無外流の中川先生の写真にも見られますので制定当時の動作であったのでしょう。
 河野百錬先生、福井聖山先生、池田聖昂先生の動画により意義に対する動作を拝見してみます。
 お三人とも動作は形も拍子も夫々です。河野先生の受け流してから左手を物打ち下に添えて、何とも曖昧な顔面切り、その左足の固定された捌きは敵の動きをどの様に意識されたのか術理が不明瞭です。
 福井先生の受流すや左手を物打ち下に添える際、下から突き上げる様にして敵頭上から断ち割るが如き動作は、「左手を刀に添へて敵の面部を引き切り」の意義に合いません。
 両大家とも、敵の打ち込みをひょいと受けてすり流す様です。敵刀の打ち込みをどの様に受けているのでしょう。なり行き任せに見えてしまいます。
 当代は、刀を抜きつつ、敵の上段からの打ち下しに、もぐりこみ突き上げる様に表鎬にて受流すや物打ちに左手を添え、即座に切先を敵の顔面に当てる様に引き切る。
 右入身、左入身の体捌きにこの業の進化の歴史を見るようです。
 ある地区の指導者は福井先生の様に左手を物打ち下に添え、切先を後ろに刃を上向け床に水平に取り、敵の頭上に切先を付けて断ち割っている様です。しかも切先は敵の体に深く放物線を描く様に入っていますから、右腰に刀を引き下ろすことは現実的に難しそうです。
 第七代会長による「刀法」解説
敵刀を受け流すポイントを上げてみます。
 少し腰を沈め気味に刀を抜き込み、右半身となって、右手は進行方向に平行、右肩の線上にあり、刀刃は後方に向かい切先は左斜下方にあり、我が顔面・頭部並びに左肩を覆う形で我が顔前頭上にある。
 刀を下から上に突き上げ、腰を左に捻る気が大切。
 上段から打ち込んで来る敵刀を受ける際、敵刀の打ち下ろす物打ちを受けるのではなく鍔元近くで受けます。
 摺落すのではなく、当り拍子に腰を左に捻って右入身となって敵刀を受け流します。この受け流しは修練を積んだ人にしか理解できないかもしれません。擦り流しは受け流しではありません。
 受け流すや、直ちに左手を刀の棟(物打ち手前)に添え、柄を我が乳の高さに下げつつ切先を敵の顔面に当て、引き切る様に切先を敵の正中線を通して斬り下す。
 左手の添え手の位置は肩幅で物打ち下に添えると指導された古参がおられますが其れでは深く斬り込み過ぎになります。
 此の時、右爪先を軸に左廻りに右爪先を正面に90度に向け、左膝を右膝のかがみに引き寄せ右足先が真横になる瞬間に引き切り、左膝を右ふくらはぎの上に重ね左入身になる。
 この際刀を右腰にとり腰を沈める、柄は右腰より二拳位後方、刀は水平袴の帯下に把持する。顔面引き切って「刀を右腰にとり腰を沈め」次の刺突の準備に速やかに移行するには左足の捌きは重要です。受流した時の左足の位置のままでは敵の動きに付いてはいけません。
 この引き切りでも、勘違いして切先が敵顔面に付けた位置より深く孤を描いて斬り割く如き動作をしている人が見られます。飽くまでも、引き切る切先であるべきでしょう。切先は顔面に当てた位置からスッと下り、右腰に引き付けられるべきです。
 其の為には左手の添え手の位置は重要です。当然引き切って引き付けられた左手は体(左腰)から離れている筈です。
 沈めた腰を上げながら左入身のまま左足を踏込み、「敵の腹部を刺突す」が敵の上腹部(臍と水月の間)を刺突すると特定されています。左手は空手の手刀の突き手、刺突した切っ先は敵の腹部から水月の高さに刺突する。
 「腹部を水平に刺突する」、かつての教えの変わった部分ですが、中には腹部から切先は喉元まで突き上げると、指導されたとされている人もいます。
 低い位置から腰を上げながら刺突すれば手の内を変えなければ自然に水月の辺りに突き上げます。喉元まで突き上げるには手で突き上げる事になりその必要はあるでしょうか。
 刀法の意義を充分熟読し想定を描くならば、動作の書き足りない部分は自ずから浮かんでくるはずです。
*
 「なま兵法大疵のもと」と宮本武蔵は五輪書の地之巻に書いています。
 業技法は進化するべきなのに、昔習っただけに拘るなどは怠け者としか言い様は有りません。
 当代の解説を熟読し、講習会に参加し、習った通りに反復した上で、自論を述べるのは良しとしても、刀法は全日本居合道刀法であって基準の動作は当代の動作基準が最優先であるべきものでしょう。
 当代より最高の允可を受けながら心得違いは業技法に拘る姿勢よりも、何を学びどの様に指導すべきかの根本理念に指導者としての問題が有りそうです。自論に拘るならば当代に直に進言すべきものでしょう。
 ある地区では指導に当たって、A十段が当代会長の剣理と術理を説明し、B十段が模範演武をするに当たって自分流を得々と演じられます。
 是では、教習を受けに来た者には何をすべきかがわからなくなります。当然審査や競技の判定にもそれは現れるでしょう。
 全日本居合道刀法は剣理、術理ともに統一されていなければその存在の意味は無いものです。
 然し、統一理論を前面に押し出し、意義(剣理)も動作(術理)も統一された時、流派を越えた刀法の存在の問題点が大きく浮上して来ると思われます。
 全剣連の竹刀スポーツが古流剣術の各流派を駆逐した様に、制定居合が居合の根本的動作基準と錯覚してしまえば古伝は消えでしまうでしょう。
 自流の業の根源を求める事が武道文化の継承の根幹であって、各流派共通の全日本居合道刀法の意義・動作に自流・自分流を主張し拘るべきとは思えません。
 他流の審査に他流を知らずして、その代わりに制定居合で補う様な安易な審査員養成は、答えが出ている様に思えて仕方がありません。
 自道場から武者修行に出た事も無く、自流の業ですらその謂れも知らず、意義も動作の有りようも解からず、中には自流の現宗家の解説書すら見た事も無い、たまたま近所で出会った道場で習ったものを師伝と称し「かたち」だけ模倣し、その「かたち」から抜け出す事も出来ない者が、しかとして武術論を論じ、他流の手附もその宗家筋の演武を学び見る事も無く、「のほほんとしてきた者」が他流を元とした「全日本居合道刀法」を推し量る事などできるのでしょうか。
 
思いつくままに・・・・刀法解説を終ります。・・・講習会が楽しみです。
 
 此の「刀法」のブログを公表したとたん、ある地区の特定の指導者を中傷するもので許すべきではない、と息巻いているそうです。
 ミツヒラを揶揄する暇があるならば、そんな低レベルに明け暮れる暇に、「刀法」の制定された意味と、其処から何を学び、何を標準化すべきなのか、どの様に指導するべきなのかある地区の指導者が議論するべきでしょう。第七代会長が答えを示されていると思うのですが・・・。(追記 2017年8月19日)
 
 
 
 
 
 
 
 

| | コメント (0)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く10夏原流和之事3小具足5繰返

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
10、夏原流和之事
3)小具足
五本目繰返
繰返
 又如前手首を留たる時相手短刀を抜亭打込を右の手二亭留其手を相手の額に押阿能希ニねぢ多を春
読み
繰返(くりかえし)
 又 前の如く手首を留たる時 相手短刀を抜きて打ち込むを 右の手にて留め 其の手を相手の額に押し仰のけに 捩子倒す
*参考 如前
 此処は二本目剱當詰までもどります。
 相手左の手二亭我可胸を取る我可左の手二亭其手首を取る 相手小太刀を抜て下を突くを左の膝を少し立帰りてはづし右の手二亭突手を打落引伏セ堅
読み解く
 また前の様に、相手が腰を上げて右足を踏み出し我が胸を左手で取るので、我も右足を踏み出し左手で相手の左手首を取る。
 相手右手で短刀を抜出し、頭上に打ち込んで来るのを、我右手で相手の短刀を持つ右手首に当て制するや相手の右手首を取って相手の額に押し当て左手を引き込み相手を仰向けにねじ倒す。

 「相手短刀を抜て打込むを右の手にて留」によって、相手は右手で短刀を抜く、我は右手で其の打ち込みを留めると、理解できます。従って相手は左手で我が胸を取り、我も左手で相手の左手首を取るとできます。

 この場合、相手左手で我が胸を取る、我はとっさに右手で相手の左手首を取る。相手右手で短刀を抜き上から打ち込んでくるのを我は右手で相手の左手を持ったまま其の打ち込みを留め、そのまま相手の額に押し込んでねじ倒す。もありかもしれません。

 業名の繰返の意味は、相手が我が胸を取る業の繰り返しの稽古を意味するのでしょうか。胸を取られる業はまだ続きます。

 小具足は一本目から相手左手で我が胸を取り、我は右手又は左手で相手の左手を取る、相手右手で短刀を抜き・・・。と八本目まで続いています。

| | コメント (0)

2017年7月27日 (木)

刀法の解釈の5全日本居合道刀法解説(2)立業ロ四方切

刀法の解釈
 
5、全日本居合道刀法解説
 
配布時の解説
 
(2)立業
 
ロ)四方切
 
◎意義
 敵が周囲から斬り懸るに応じて之に勝つ。
◎動作
 前進しながら右足の爪先を右に向けて、右方に踏込み右に向くと同時に片手抜討ちを以て右敵の右肩から袈裟に斬り、切先を水月の高さに止める。抜付けたる瞬間左敵に注目し、左方より旋廻して右足を左方に踏込み双手上段に振冠り左敵の真向を斬下す。斬下した瞬間正面の敵に注目し右足を正面に踏込み双手にて正面の敵の右胴を横一文字に斬り、左から旋廻して左足前のまま後敵の真向を斬り、再び右から廻って右足前のまま正面の敵の真向から両断する。残心し右側に刀を開いて血振いして納刀す。
 この業は水鴎流の獅子乱刀から引用したものと思われます。
 水鴎流の手附けは文章によるものは公開されていない様で、第15代宗家の「純一無雑 瞬機一刀の理 水鴎流居合剣法」のビデオにより看取り稽古して見ます。
 前後左右を敵に囲まれ正面向きに正座しています。
 座したまま腰を上げ、右廻りに右敵に振り向き、右足を踏み出し横一文字に抜打ちし、左敵に振り向きつつ双手上段となって、右足を踏込み左敵の真向に斬り下します。
 その足踏みの侭正面の敵に注目し立ち上がりつつ左脇構えに取るや右足を正面に踏み込み、正面の敵の右胴を横一文字に斬り払い、左から旋回して右足を踏込み後敵を真向から斬り下します。
 後ろ向きのまま、刀を右に開き納刀しつつ体を下し、右廻りで正面に戻ります。
 全居連の刀法では正面の敵は胴を切られたのに再び真向より両断されます。
 胴切りが不充分若しくは後敵に危険を感じ前敵を追い払うなどの事が無ければ、正面に戻っての両断は不要でしょう。
 もし充分斬って正面に戻る演舞(武ではない)ならば、後敵を斬って、正面に戻り、上段からゆっくり刀を下し残心の形を示すべきです。
 刀法は技の基本の形を示すだけで武術的な事は後廻しと言うならば、此の業は四段審査の指定業です。そんな事でいいのでしょうか。
 ある地区の指導者は、この業で正面の敵の右胴を横一文字に斬るに当たって、左敵を真向に切り下すや、切先を上げて鍔を口元まで引き寄せ、左に刀を倒し、左手を左腰に引き付け腰溜めの車に構え、右足を正面に踏み込むや敵の右胴を腰を右に振って両断する様に水平に引き切る指導をして居ます。
 見事に、両断して、つぎに後の敵を真向から斬り下し、正面に戻って、正面の敵を真向から立ったまま切り下しています。「あれ!正面の敵は胴を両断されて崩れている筈なのに」。
 河野百錬先生も福井聖山先生も正面の敵を腰溜めの車でなど切っていないのに、独創してしまった様です。
 正面の敵と背後の敵に攻められた時は、両方の敵を意識しながら敵の仕掛ける前に正面の敵を浅く斬り、ビクとさせて追いやりその隙に背後の敵を斬り倒し、正面の敵を両断するのが、囲まれた時の鉄則です。
 第七代会長の解説からこの業を研究してみます。
◎剣理
 敵が周囲から斬り掛かるに応じて、これに勝つ意也。
術理
 左手鍔にかけるや右足を踏み出し、左足をやや一歩より狭く爪先をやや右に向けて踏み出し、右手を柄に掛けるや右敵に向き、右足爪先を右敵の方に向けながら柄頭を右敵の右肩口に向けながら抜きかけ、右足爪先を右敵正中線より30度位左に向けて大きく踏込み右肩口より水月迄袈裟懸けに斬り付ける。
 
 直ちに左敵に顔を向けるや両踵で左廻りに、右肩を覆う様に双手上段に振り冠り右足を大きく踏み込んで左敵の真向に膝の高さ迄斬り下す。
 
 直ちに左踵を押えながら体をたてつつ、切先を上げて鍔を口元に上げた瞬間顔を前方の敵に向けるや、刀を逆八相の構えの位置を経て把り、その瞬間右足を左足の前に踏み込み、上体を前に投げ入れる感じで左より右に水平に薙ぎ払う様に前敵の胴部に斬り付ける。
 
 直ちに左廻りに双手上段に廻り切り左足前のまま後敵を真向に斬り下す。
 
 右廻りに廻り双手上段となり前敵の真向に右足前のまま斬り下す。
 
 会長の前敵への胴切りは、逆八相から上体を倒して薙ぎ払う様に斬り付けています。これは前敵を追いやる若しくはビクとさせる鉄則に則った動作でしょう。逆八相からの水平斬りの妙技はやるつもりのものしか出来無い技でしょう。
 此処は余談ですが、八相及び逆八相からの切り込みを稽古し、その一つに逆八相からの水平切を稽古すればよいだけです。
 竹刀剣道の形の教えにある八相から上段に振り冠ってから真向打ちや腰車から上段に振り冠って八相に斬り込むしか理解できないのではお粗末です。
 腰車に構えてしまえば前敵は攻め込んで来るので胴を両断する事になります。しかし、それでは後敵に仕掛けられてもいるのですから、間に合わず斬られてしまいます。
 右足を踏込み左敵を斬り下し、逆八相に把る時、右足を左足に引き付けてから正面に踏み込む教えが、先代の頃にあって其の足踏みをしている古老と其の弟子もおられます。これも右足を後足に引き付ける無駄な動作です。
 第七代会長は是も否定されています。正面の敵が斬り込んで来る隙を与えない事も四方に敵を受けた時の心構えでしょう。
 前会長に指導を受けられた方の中にこの胴切りの動作を「刀身を鉛直に鍔が口の高さに至るまで持ち上げ、顔を正面の敵に向けながら、右手首を左横水平に返し、柄から外れた左甲を右掌に添えて刀刃を前に左にした刀身をそのまま水平に左脇胴前に下ろし、右足を90度正面(左足踵前)に二足半長運びながら正面の敵の胴を横一文字に右45度まで切り払う・・」(南野輝久著 無双直伝英信流居合道覚書より)
 ある地区の指導者とよく似た車の構えに至る動作です。是は逆八相から胴切りするのではなく、左腰車にとってから胴切りするので、刀を鉛直に立てる意味があるのでしょうか、古流剣術では見られない動作です。
 左敵を真向に斬り下してその手の位置のまま腰車にとってもおかしくは無いでしょう。飽くまでもこの場合は前敵の胴を両断する動作です。
 DVDも付属しますので拝見していますが、文字であらわされた動作よりも、柄手が良くのびておられますので、ある地区の指導者程では無いようです。
 刀法の制定時の意義及び動作は抜けだらけですから、如何に年期を重ねられたベテランでも状況を充分把握し最も適した運剣操作を確立するには、良く見て良く読み良く考える人と、人真似に過ぎない人とのレベルの違いが歴然と現れます。想定を誤れば意義を達せられないものになります。
 全居連の各流派に共通の「刀法」です。第七代会長の解説書に従い、毎年行われる「刀法講習会」に出席して文字に表せない、あるいは、解説書発行時より進化した運剣動作を身に付け地区の指導をすべきでしょう。
 己が正しいとするならば、その事を会長に進言し改変を望むべきものです。「俺は前会長の動作を忠実に演じているだけで、当代が勝手に替えたのだ」では、最高段位を当代会長から頂戴していながら、やるべき事をやらず、地区に於いて勝手に会長の指導以外の動作を指導するのは「刀法」においては特に如何なものでしょう。
 
 
 
 
 
 
 

| | コメント (0)

曽田本その1の1神傳流秘書原文10夏原流和之事3小具足5繰返

曽田本その1
1.神傳流秘書原文
10、夏原流和之事
3)小具足
五本目繰返
繰返
 又如前手首を留たる時相手短刀を抜亭打込を右の手二亭留其手を相手の額に押阿能希ニねぢ多を春
繰返(くりかえし)
 又 前の如く手首を留たる時 相手短刀を抜きて打ち込むを 右の手にて留め 其の手を相手の額に押し仰のけに 捩子倒す
*参考 如前
 此処は二本目剱當詰までもどります。
 相手左の手二亭我可胸を取る我可左の手二亭其手首を取る 相手小太刀を抜て下を突くを左の膝を少し立帰りてはづし右の手二亭突手を打落引伏セ堅

| | コメント (0)

2017年7月26日 (水)

刀法の解釈の5全日本居合道刀法解説(2)立業イ切上げ

刀法の解釈
 
5、全日本居合道刀法解説
 
配布時の解説
 
(2)立業
 
イ)切上げ
 
◎意義
 敵が真向上段に抜き上げて仕懸けんとするを、我れ其の右腋つぼに下から斬上げ、直ちに双手上段から敵の左袈裟に斬下して勝つ。
◎動作
 前進しつつ右足を前に踏込みながら抜きかけ刀の反りを一杯に返して(抜きつつ)刀刃を下から敵の右脇つぼに右斜に斬上げ、左足を少し進めながら双手上段となり右足を踏込んで敵の左袈裟に下段まで斬り下す。正眼(中段)に直って残心し刀を右に開いて静かに納刀す。次に左足を右足に揃へて直立し左足から後へ退り元の位置にかへる以下同じ。
 この業は神道無念流より改変されて全居連の刀法に組み込まれたと思われます。制定委員に神道無念流の中山博道先生がおられた筈です。編成時の承認の際(昭和31年1956年10月7日)欠席されています。
 神道無念流の立居合12本の第一本目の意義:「若干歩前方にある敵が将に刀を抜かんとする機に先ち敵の右前臂(ひじ)を下方より切るも続いて敵前進し来るを以って後退して切り更らに敵の後退するを進んで切るのであって此際敵は倒れたりとするのである。」(太田龍峰著 居合読本より)
 この業で、敵の右前臂を切り上げるのですが、更に攻め込んで来るので我は後退して敵の正面を切っています。敵が後退するのを追って再び正面を切る。と云う事でどうやら左袈裟が見られません。
 第十本目にやはり「敵抜かんとするのを右前臂を下方より切り、左足より二歩前進し敵の正面を切る。刀を青眼の儘で、刀を敵に突きつける姿勢で二歩前進す。刀を上段にして残心を示す、刀を青眼に復してこれを収む。」
 この方が、参考になる様ですが、制定委員に神道無念流の先生は含まれていませんし、中山博道先生も既に意欲を失っている時期ですから何とも言えません。
 全日本居合道刀法の「刀の反りを一杯に返して(抜きつつ)刀刃を下から敵の右腋つぼに右斜に斬上げ・・」ですから右胴下から切先三寸位で腋窩に抜き付け、斜めに切り上げ、抜上げるとするもので、より深く斬り込んで行く様な事は、不要でしょう。この一刀で敵は致命傷になってしまいます。
第七代会長の「切上げ」
◎剣理は配布時の意義とほぼ同じです。
 「敵が真向上段に抜き上げて仕懸けんとするを、我れ其の右腋つぼ(腋窩(えきか))に下から斬り上げ、直ちに双手上段から敵の左袈裟に斬下ろして勝つ意也」
◎術理は腋窩への切上げは右胴下から斜めに斬りあげる。
 「・・刀を鞘ごと少し我が進行方向正中線と平行に出しながら、柄頭を床面と平に敵の右胴下に向わしめつつ、我が腰を少し左に捻りながら刀刃を上にして、物打ち手前迄抜き付けて行く。
 物打ち手前に至らば、刀刃を鞘諸共外に返し刀刃の反りを下に一杯に返しながら抜き込み、一杯にかえった瞬間、敵の右胴下より右腋つぼにかけて右斜めに斬り上げる」
 腋窩に抜き付ける事がポイントですが、これはかなり鋭角な斬りあげです。よく見かけるのは右胴下から左首元又は左肩下への切り上げです。腋窩は脇の下の窪みでしょう。これでは指定された所に刀刃は斬り付けられません。
 それも、物打ちからさらに深く切り込んでいますがさて腋窩への切上げの意味が理解出来ているのか疑問です。
 切り上げた刀刃、右斜め上方、40~45度に傾き、切先は進行方向に平行、刀身は床に平、右拳は肩より二拳位上。と会長により指定されています。
 拳が高く頭上を越えているのをよく見かけます、或は角度が浅く流れてしまっている。
 左足は60度位開き、半身の切り上げと第七代会長の解説書は指定していますが、現在は、鋭角に切上げる事を強調するため、左足は90度を超える程に開き、上体を開いて伸び上がる様に右入身に近い半身となります。
 「左足を少し進めながら双手上段となり右足を踏込んで敵の左袈裟に下段まで斬り下す。」
 左袈裟に斬り下すには、まず、斬り上げた刃筋の通り切先を下げ、左踵を正面に向け直し、右足踵まで引き寄せ双手上段になる。
 我が右足を敵の正中線に踏込み、右半身で敵の左肩口(左肩下一寸位)より水月を通して右胴下敵の右膝まで斜めに斬り下す。
 是も現在では、右入身に近い左袈裟切りですから、斬り下した柄手の左拳は右骨盤上一拳前、切先は敵の右膝線上に位置し、左へ流さない。切先が流れないコンパクトながら鋭い運剣法と云えます。
 上段から右に柄手を振って左袈裟切りするのを、第七代の講習会では上段にとった柄頭を前方に押し出す様にして右足を踏み出すと共に体を左に披いて右肩下に斬り下す。
 この左袈裟の運剣も敵左肩下に切先三寸程の処を斬り込みさらに深く斬り込む様な指導者もいますが、畳を両断するような剣捌きは不要です。
 居合は真剣による刀法であって、浅く勝べきで、見栄えの良い殺陣の踊りでは無いのです。
 
 
 
 
 

| | コメント (0)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く10夏原流和之事3小具足4瀧返

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
10.夏原流和之事
3)小具足
四本目瀧返
瀧返
 如前胸を取を我も前能如く其手首を取り右の手をひぢ二懸う津む介耳横へ伏セる也
読み
瀧返(たきかえし)
 前の如く 胸を取るを 我も前の如く其の手首を取り 右の手をひぢに懸け 俯けに横へ伏せる也
参考 「如前胸を取るを 我も前能如く其手首を取り」 は三本目先手 及び二本目剱當詰を
 参考にします。「相手左の手二亭我可胸を取る」で同じです。
 次の動作では、二本目剱當詰は「我可左の手二亭其手首を取」、三本目先手では「我可右の手二亭相手の手首を取」で相手の左手首を取る我が左右の手が変わります。
 此処では「如前」を優先すれば、三本目先手の「我可右の手二亭相手の手首を取」でしょう。
読み解く
 前の如くは、三本目先手の前の二本目劔當詰まで戻ります。
双方八文字に座し、相手腰を上げて右足を踏み出し左の手にて我が胸を取る。次の「前の如く」のここは三本目先手の様に我も腰を上げ右足を踏み出し我が右の手で相手の左手首を取り、右手のひじを相手の左手のひじに懸け左足を引いて相手を右脇にうつむけに横に伏せる。

 業名は「瀧返」これは、たきかえしえと読めばいいのでしょう。業名から動作のイメージが浮かんできません。文字を読んで頭に入れて体裁きをしていたのでは瀧返しにならないのでしょう。それと相手がゆるゆると我が胸を取るのであれば瀧とも言えません。相手も瀧が落下する如き動作があればそれを拍子に返すイメージも浮かびます。
しかし、強く早い動作ばかりが良いとは言えません。相手も何気なく我が胸を取るとされた場合の動作もありうるので課題です。

| | コメント (0)

2017年7月25日 (火)

刀法の解釈の5全日本居合道刀法解説(1)正座ロ前後切

刀法の解釈
 
5)全日本居合道刀法解説
 
配布時の解説
 
(1)正座
 
ロ)前後切
◎意義
 敵我が真向に斬込み来るを受流すや顔面に双手上段から斬付け、直ちに後敵の真向に斬下し、更に前敵の真向に斬下して勝つ。
◎動作
 腰を上げ爪立つや刀を頭上に抜き上げ左斜下に敵刀を受流し直ちに双手上段となり右足を踏込みて前敵の面部に斬付けるや、膝を浮かして爪先にて左廻りに後方に向きつつ双手上段から右膝を床につけるや、後敵の真向から斬下し更に右廻りにて正面に向き直り、双手上段から左膝を床につけるや前敵の真向から斬下す。中段に直りて残心し刀を右に開いて納刀する事同前。
 二本目「前後切」は無外流の五用の二本目「連」より組み立てられたと言われます。
 
無外流居合兵道「連」
理合:前後に敵を受けた場合で、先ず前敵の眉間に諸手で抜きつけ、後ろを振り向くや、後敵を真向に斬り下ろして仕留める。
方法:両足の爪先を立て腰を上げると共に刀を上方に抜き上げる。
 刀を抜き上げる共に左手を柄にかけ、諸手上段となり、右足を踏み出して眉間に斬りつける。
 両膝を浮かし、直ちに左方から後方に向きを換えつゝ上段となり、向きを換え終るや真向に斬り下ろす、切先は床上五寸位。
 残心、納刀以下前に同じ。
 敵は前後ですが、正面の敵に再び斬り付ける事はせずに終わります。
 「全日本居合道刀法」は、「敵我が真向に斬込み来るを受流すや顔面に双手上段から斬付け」後ろに振り向き真向に斬下し、前敵に向き直って再び、真向から斬り下ろします。
 前後に囲まれた場合、前敵が先に抜き上げて真向斬り込んで来るのを受け流し、浅く斬り付け戦意を殺いでおいて即座に後ろに振り向くのであって、深く斬り込んでしまっては、刀が抜けず、浅く切る事は鉄則です。
 後に振向き後敵の状況を即座に判断して真向に打ち下ろすと解釈できます。後ろ敵は刀を抜き上げ真向に打ち込んで来るならば「合し打ち」「切り落とし」が有効です。再び前に振り戻って前敵を真向から斬り下ろしています。充分斬っているならば前に振り返る必要は無いし、真向から斬り下ろす必要も無いでしょう。
 中川先生の無外流の「連」は、我が方から仕掛けて前敵を制し、後ろに振り向き真向に斬り下ろし残心です。
 この全居連「刀法」のポイントは、受け流すや顔面に双手上段から斬付ける、と、後に振り返って斬り下ろす、再び前敵に向かうその方向転換の足捌きと、体裁き、刀捌にある筈です。
 無外流の「連」では「爪先を立、腰を上げると共に刀を上方に抜き上げる、刀を抜上げる共に左手を柄にかけ、諸手上段となり・・」で受け流しの意識は文章には見られません。
 然し中川先生の写真の動作は、刀を正中線上を体に近く刃を外向けて上に抜上げています。
 左手を鞘引きすれば切先は左に稍々振られ、左肩を覆う様になる筈で見事です。
 敵の斬り込みを受け流せば、敵との間合いは自ずから近く敵が退かんとする前に眉間に抜き付けるとすれば、上段から大きく振り下すのでは理に合いません。
 我が切先で敵顔面を引き切る位の運剣でしょう。当然両肘は屈む事になり、引き切った切先は敵の喉元で中心を取っているべきです。
 土佐の居合の教えに、「敵に囲まれた時は一人宛て深々とズンと斬っていては遅れをとる、居合の大事は浅く勝事肝要也、ビクとさせておいてその隙に一人づつ斬っていく(英信流居合目録秘訣上意之大事)」と言う教えがあります。
 受け流すに当たっての抜き上げについて、無双直伝英信流居合道覚書を書かれた南野輝久先生は「刀刃を左15度外側に傾けて、柄頭を正中線(額)に沿って静かに鞘引きしながら切先3寸(9cm)まで抜き上げ、切先3寸(9cm)から鞘を引き落し、切先が外に撥ね上らぬように抜上げる。抜き上げると同時に爪先立ち、右手首を直ちにその場で右に返して上段・・」と書かれています。切先は左体側より外に出ていなければならず、抜き上げる下からの突き上げと切り込まれるとの当り拍子が認識できませんと受け流しはおろかすり流しも不十分となります。
 第7代会長の刀法解説では「受け流す為に抜刀する時、右柄手を顔前を通して、刀刃を外懸け(外に倒す)にしながら払いあげる様に抜き取り敵刀を左斜め下に擦り落す様に受け流す」と明快です。
 右柄手を返し、左手を正中線上を上げて諸手上段に振り冠り、顔面に斬り付ける。
 ある地区の講習会では深々と敵の頭上に斬り付ける指導を当たり前の様にしていますが顔面に斬り付けるのであって両手が充分伸びた打ち下しでは無いでしょう。河野先生、福井先生の動画では顔面では無く深々と斬り付ける様に見られます。これでは意義を達せられないでしょう。動画を重要視する修行者に不向きな動作です。
 方向転換の動作で、すっくと立ち上がって方向転換し立ったまま斬り下ろしてから、後膝を床に着く動作が目に付きます。
 此処は、「膝を浮かして爪先にて左廻りに後方に向きつつ双手上段から膝を床につけるや、後敵の真向から斬下し更に右廻りにて正面に向き直り、双手上段から左膝を床につけるや前敵の真向から斬下す。」であって腰は挙げず浮かすようにして廻り、床に膝を着くと同時に斬り下ろすのがポイントでしょう。
 回転の足捌きは、敵との間合いを変えない様に体軸がぶれない足裁きをすべきで、爪先、踵の足裁きを工夫すべきです。
 会長の解説では、「左廻りする時、両足爪先にて廻切れば振り向きたる時一足分だけ後ろに下がる」とされています。「右足は爪先にて廻り、左足は踵にて廻る」とされています。
 武術は、その領域に達した者だけにしか理解できない奥義とも云えるものがあって、それが「術」となるはずです。真似ただけの「かたちは」は誰でも出来る様になるでしょう。
 設対者を置いての稽古が当たり前の相対しての剣術ならば己の技量は設対者の技量によって「術」の達成度は少しは推し量れます。
 仮想敵相手の一人演武の居合は如何に「かたち」の練習を積み上げても、時に独りよがりに陥り、出来ていると錯覚してしまいます。その良し悪しは師匠の「かたち」からともすると「癖の真似」の良し悪しで判断してしまうものです。
 真似すら出来ない者は「体格も、力も、哲学も師とは違う」と己の個性を強調して誤魔化すばかりです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

| | コメント (1)

曽田本その1の1神傳流秘書原文10夏原流和之事3小具足4瀧返

曽田本その1
1.神傳流秘書原文
10.夏原流和之事
3)小具足
四本目瀧返
瀧返
 如前胸を取を我も前能如く其手首を取り右の手をひぢ二懸う津む介耳横へ伏セる也
瀧返(たきかえし)
 前の如く 胸を取るを 我も前の如く其の手首を取り 右の手をひぢに懸け 俯けに横へ伏せる也
参考 「如前胸を取るを 我も前能如く其手首を取り」 は三本目先手 及び二本目剱當詰を
 参考にします。「相手左の手二亭我可胸を取る」で同じです。
 次の動作では、二本目剱當詰は「我可左の手二亭其手首を取」、三本目先手では「我可右の手二亭相手の手首を取」で相手の左手首を取る我が左右の手が変わります。
 此処では「如前」を優先すれば、三本目先手の「我可右の手二亭相手の手首を取」でしょう。
 
 

| | コメント (0)

2017年7月24日 (月)

刀法の解釈の5全日本居合道刀法解説(1)正座イ前切

刀法の解釈
 
5、全日本居合道刀法解説
配布時の解説
(1)正座
 
イ)前切
 
◎意義
 前敵の仕懸けんとする其の腕部又は顔面に抜付け(斬付)、直ちに双手上段より真向に斬下(打下し)して勝つ。
◎動作
 右足を踏出すや敵の腕部又は顔面に横一文字に斬付け、直ちに双手上段となり敵の真向から斬下す。
 残心し刀を右に開きて納刀しながら右足を左足に引き付け爪立ちたる踵に臀部をおろし納刀し終る。次に右足より前に一歩踏込みて立ち、左足に右足を引付けて元の位置に正座し次の業に移る。
*
 この配布時の意義はともかく、動作は如何様にも解釈できる大らかなものです。「右足を踏出すや敵の腕部又は顔面に横一文字に斬付けだけですから半身でも正対していてもいい筈です。英信流もどちらも行われていたもので下村派は半身、谷村派は正対などと云う人もいますがどちらも行われています。これでは配布されてもどうしたらよいか迷ってしまうでしょう。
真向斬り下ろしも、振り冠りや斬り下ろしの刀を止める位置なども特定できません。
 昭和34年1959年発行の無外流の中川申一宗家著「無外流居合兵道解説」に写真付きで刀法解説がみられます。
 横一線の抜き付けは半身の抜き付け、振り冠りは切先上りに45度、斬り下ろしは敵の水月辺りでしょう。血振りは切先下がりです。
全居連刀法として制定されても、業の動作の統一までは出来ていなかったと言えるでしょう。
全居連第七代会長の解説
剣理
 我が前に座せる敵が、我れに仕懸け来らんとする気配を我れ察知し、敵の機先を制して其の上腕部又は頸部或いは顔面に横一文字に、我が方の左より右へ斬り付け、直ちに双手上段より真向に斬り下ろして(打ち下ろして)勝つ意也。
制定時の業解説における「意義」が「剣理」に替えられています。言い回しも微妙です。
術理(動作運用)
 術理のポイントを押えてみます。
 無外流の中川申一先生の抜き付けが半身の抜き付けに見える写真でした。
 第7代会長の抜き付けは、踏み立てた右足は膝が直角で、下腿が床面に垂直、左足膝も床面に直角です。
 水平に斬り付けた時、上体は正面に正対、右拳は肩の高さ、正中線に対して右外45度位、刀刃は水平に右向き、進行方向と平行、切先やや下がるも可。
 振り冠りは約45度切先下がり、尾骶骨に接したり、浅く水平は不可。
 斬り下ろしは柄頭は臍前緩く一拳にあり、切先は床上七~八寸(20~25cm)。踏み立てた右足大腿内側にすれすれ。
 鍔は右膝の線・右膝の高さ。斬下した時の目付は1m50cm位の前方を見る。と細部にわたり特定されています。
 諸手上段となり斬下す際、横一線に斬り付けた足の位置を其の儘に斬り下ろすとする文言が抜けていますが、更に踏み込む等の動作を要求していませんから、抜き付けた足の位置を変えずに斬下す、となります。
 無双直伝英信流正統会の居合をされる人には自然に出来る動作ですが、他派や他流の方には自流と異なる動作の基準が特定されて慣れませんと動作が単純なだけに戸惑います。
 無双直伝英信流正座の部の一本目「前」と立膝の部「横雲」の混合で組み立てられていますが、あくまでも「刀法」として把握するものでしょう。
 制定居合は居合の統一を求める様に進化して行くのは全剣連も同様です。夢想神傳流のある会派は、理由はともかく自流の半身の抜付けを正対の抜付けに替えておられる様です。
 あまり制定居合に依る統一理論が先行しますと、流派の掟が失われてゆくのも竹刀剣道で多くの流派が消えてしまった事でも想像されます。
 すでに数えるほどしか残っていない居合の流派がさらに消えていくなど寂しい限りです。経済学のグレシャムの法則に云う「悪貨は良貨を駆逐する」の法則の様です。市場を席捲しているものが本物かどうか疑わしいかも知れません、反面本物が秘められて伝承が途絶え消えて行ったのでは日本の武道文化もどうなるでしょう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

| | コメント (0)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く10夏原流和之事3小具足3先手

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
10、夏原流和之事
3)小具足
三本目先手
先手
 如前胸を取り我右の手二亭相手の手首を取相手短刀を抜んとする処をす具耳右の手を相手の胸耳押當足を込ミ亭阿をの希ニ倒す
読み
先手(さきて・せんて・せんしゅ?)
 前の如く胸を取る 我が右の手にて相手の手首を取る 相手短刀を抜かんとする処を 直ぐに右の手を相手の胸に押し当て 足を込みて仰のけに倒す
参考
 如く前胸を取る
 「相手左の手二亭我可胸を取る・・」
読み解く
 双方向かい合って爪先立ち左の膝を付き右の膝を浮かせて八文字に座す時、相手が腰を上げて我が胸を前の剱當詰のように左の手で取る。
 我右の手で相手の左手首を取る。相手は右手で短刀を抜こうと柄に手を掛ける処、我はすぐに右の手を相手の胸に押し当て、右足を踏み込んで相手を仰のけに倒す。

 此の業も、相手の仕掛けてくる動作にすぐ応じて機を外さない事がポイントでしょう。相手が短刀を抜こうと手を柄にかけるまでに踏み込むことが大切で、抜いてからでは当然のことながら危険です、「相手短刀を抜んとする処」です。
 相手は左手で我が胸を取り右手で短刀を抜こうとしています。
我は相手の左手首を右手で制し、尚且つ短刀を抜こうとする際再び右手で相手の胸に押し当てて居ます。
 左手の役が何も語られていません。左手は相手の小太刀の柄又は柄を取った相手の右手を制し相手の柄を抜かさない様に押し付けるのも研究課題です。
 

| | コメント (0)

2017年7月23日 (日)

刀法の解釈の4解説の比較

刀法の解釈
 
4、解説比較
 
Ⅰ)昭和52年1979年「全日本居合道刀法」配布時の解説
(1)礼式
◎平常坐したる時は、刀の下緒は輪にたばねて、刃を内側に向け鐺を後方に、鍔が膝の線にある程度にし右側に置く。
◎始礼(神座並に刀に対する礼)
1、刀を下緒と共に右手に、拇指を鍔に懸けて栗形の部を握り、右腰に鞘を約45度位に刃を上にして堤げる。
2、演武の場所に進みて正坐し、刀を膝の前約1尺程の処に鐺を右に柄を左に刀刃を我が方に向けて下緒を刀の向ふ側に添へて静かに置く。
3、次に前に両手をつき両食指と拇指を接して三角形を作り深く頭を下げる。
4、礼を終りて右食指を鍔にかけて刀を把り、体の中央膝の前方に立て、左手を鞘の下方三分の一程度の処にかけて鐺を持ち上げ腰に帯刀す。
 此時下緒は後に鞘にかけ、柄頭は体の中央にある程にさす。
◎終礼は前記の始礼を略逆行する。
◎正座の姿勢は、膝は肩の巾、足は深く重ねず拇指を重ぬる程度とする。
(2)血振
 血振いは斬下した(又は正眼に直った)右拳の位置から右側約1尺切先下りに刃を右にし(刃は少し下向けに)正面の線に並行に開く。
Ⅱ)平成15年2003年第七代会長の全日本居合道刀法解説
 
 「神座の立礼をせずに座礼を以て神座の礼とする」。が原則です。
 刀法から始める演武は神座の立礼をしなくともよい筈ですが、現在では、第7代会長の解説では左手に刀を提げて演武場所に進み、刀を右手に持ち替え神座への立礼を行います。
 刀を左手に再び持ち替え、会長に礼をし、その腰に提げたまま演武の方向に向き直って座し、刀礼をし帯刀しています。
 「礼を終りて右食指を鍔にかけて刀を把り、体の中央膝の前方に立て、左手を鞘の下方三分の一程度の処にかけて鐺を持ち上げ腰に帯刀す」は、第7代会長の解説では鞘の三分の一では無く刀の三分の一と変わっています。
 「下緒は後に鞘にかけ、柄頭は体の中央にある程にさす」については下緒は鞘の上から懸けて後ろに垂らす様に読み取れますが、現行では下緒が長い事も有り前に廻して左側で袴の紐に掛ける様にしています。
 ある地区の記念に配られた下げ緒が180cm程で短く、丈高く業によっては下緒が邪魔になります、後に垂らしただけでいますと、必ず前に廻し袴の帯に懸ける様に言う物知り顔のもの知らずが声を掛けています。だったらもっと長い下緒を配布すべきだったでしょう。
 神座への礼を全居連の演武で行うのは、刀法以外の自流の業も演じるためか、配布時の解説とは変わっているのか、刀法のみの場合にのみ適用されるものなのか明解な指導を受けた覚えはありません。
配布「◎平常坐したる時は、刀の下緒は輪にたばねて、刃を内側に向け鐺を後方に、鍔が膝の線にある程度にし右側に置く。」
 会長解説も同様であり、補足として「鐺を後方にして我が正中線と平行に置き、且つ座したる右大腿より約六~七寸(約20cm位)外側に置く。刀の下緒は三等分して輪に束ね、我が右側に置きたる刀の棟側に添えておく。」
 
 ある地区の前地区会長の場合は袴を見事に左右に蝶の羽の様に広げて座り、広がった袴の上に刀が置かれています。
 武術の心構えを欠いており、袴を踏まれたり、刀を手にする前に立ち上がれば刀は転がってしまいます。武術は見栄えを競うものではないでしょう。小さな心構えが伝わって来なければ、立派な解説書を出されていますがこの写真一枚ですべての解説が偽物に見えてしまいます。
配布「◎始礼(神座並に刀に対する礼)」
「1、刀を下緒と共に右手に、拇指を鍔に懸けて栗形の部を握り、右腰に鞘を約45度位に刃を上にして堤げる。」
 
「2、演武の場所に進みて正坐し、刀を膝の前約1尺程の処に鐺を右に柄を左に刀刃を我が方に向けて下緒を刀の向ふ側に添へて静かに置く。」
 配布の時の堤刀は右手に提げている様に制定され、そのまま演武の場所に座して刀礼の体勢を整えたのでした。
 第7代会長の解説では、刀を下緒と共に左腰に左手にて提げ、演武の場所に至り、その場所で右手で袴の裾を払う様に捌き、左膝より床に着き、次いで右膝を着き正座する。
 左手は刀を握り、左腰に把り、右手は大腿部の上に置く。
*
 配布時「血振いは斬下した(又は正眼に直った)右拳の位置から右側約1尺切先下りに刃を右にし(刃は少し下向けに)正面の線に並行に開く。」ですが、第7代会長は刀及び刀刃は床に水平を最も良いとされています。
*
 第七代会長の所作の幾つかは、それまで配布時の所作をそれとしてきた先生方には戸惑いもあったと思われます。
 どちらかというと無双直伝英信流正統会の所作に近づいてしまったと言えるでしょう。
 
 
 
 
 
 

| | コメント (2)

曽田本その1の1神傳流秘書原文10夏原流和之事3小具足3先手

曽田本その1
1.神傳流秘書原文
10、夏原流和之事
3)小具足
三本目先手
先手
 如前胸を取り我右の手二亭相手の手首を取相手短刀を抜んとする処をす具耳右の手を相手の胸耳押當足を込ミ亭阿をの希ニ倒す
読み
先手(さきて・せんて)
 前の如く胸を取る 我が右の手にて相手の手首を取る 相手短刀を抜かんとする処を 直ぐに右の手を相手の胸に押し当て 足を込みて仰のけに倒す
参考
 如前胸を取り・・
 「相手左の手二亭我可胸を取る・・」

| | コメント (0)

« 2017年7月16日 - 2017年7月22日 | トップページ | 2017年7月30日 - 2017年8月5日 »