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2018年4月

2018年4月21日 (土)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録23の中野之幕之大事

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
23無雙直伝英信流居合目録
 
居合心持肝要之大事
 
1、捕手和合居合心持之大事
2、立合心之大事
3、太刀目附事
4、野中之幕之大事
5、夜之太刀之大事
6、閨之大事
7、潜り之大事戸脇之事
8、獅子之洞出之事
9、獅子之洞入之事
読み解く
、野中之幕之大事
 小藤亀江伝来の目録には居合心持肝要之大事は目録の表題9項目が記載されています、古伝「居合心持肝要之大事」でも表題は9項目なのですが表題が以下の通りです。
番目及び2番目は小藤亀江伝来の目録とは表題が違います。3番目以降は同じと見ていいでしょう。
居合心持肝要之大事 付 大小指違之事
1、居合心持立合之大事 大小指違
2、太刀組附位
3、太刀目附之大事
4、野中之幕
5、夜之太刀
6、閨之大事
7、泳之大事(潜り之大事)
8、獅子洞入
9、獅子洞出
、野中之幕
 取籠者抔の有の時杖の先き或は竹の先に又横手をくゝり付け其横手を羽織の袖に通し其竹の本を左の手に持て向えさし出し右の手に刀を持ち生捕なれば木刀の類を持ち我身は羽織の陰に隠れ羽織をば相手の方へつき付べし向より切ると云へ共我身にはとゞく事なし其所を持ちたる刀にて相手の足を薙ぐべし亦矢玉を防ぐに至て宜し

*
 小屋内に入って居る取籠者などを成敗する時は、竹の先に横手を十文字に括り付けその横手に羽織の袖を通し、竹の本を左手で持って向こうへ差出し、右手に刀を持って、生捕る場合は木刀で、我が身は羽織の陰に隠れ、相手の方へ突き付けていく、向こうより切って来ても羽織に切りつけるのでとどくことはない。其処を持っている刀で相手の足を薙ぎ払うのである。亦矢玉なども羽織で防ぐのにも至って宜しい。

 何故か、ほのぼのとした古き良き時代の風景が浮かんできます。効果のほどは、相手が見境なく上気して、我は沈着冷静、ほの暗い納屋などを想像してしまいます。

 身を守る事は、行政や警察など自らの自己責任では無く社会環境が為す事位の現代日本人の脳天気では、野中之幕は漫画です。

 しかし、武術は人の心を推し量る能力も養う事でなせるものだろうと思います。

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2018年4月20日 (金)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録22太刀目附事

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
22無雙直伝英信流居合目録
 
居合心持肝要之大事
 
1、捕手和合居合心持之大事
2、立合心之大事
3、太刀目附事
4、野中之幕之大事
5、夜之太刀之大事
6、閨之大事
7、潜り之大事戸脇之事
8、獅子之洞出之事
9、獅子之洞入之事
読み解く
、太刀目附事
 小藤亀江伝来の目録には居合心持肝要之大事は目録の表題9項目が記載されています、古伝「居合心持肝要之大事」でも表題は9項目なのですが表題が以下の通りです。
番目及び2番目は小藤亀江伝来の目録とは表題が違います。3番目以降は同じと見ていいでしょう。
居合心持肝要之大事 付 大小指違之事
1、居合心持立合之大事 大小指違
2、太刀組附位
3、太刀目附之大事
4、野中之幕
5、夜之太刀
6、閨之大事
7、泳之大事(潜り之大事)
8、獅子洞入
9、獅子洞出
3、太刀目附之大事
 敵の足に目を付けべし是にて場合能く知るゝのみにてならず臆せざる也是を上見ぬわしの位とも云うなり心は下に有って事さ上に速に応ずる油断無の心なり

*立合いの目付は敵の足に目を付ける事、是によって場合の状況を良く知る事が出来るものである。それだけでは無く臆する事も無い。
上を見ぬ鷲之位とも云うのである。心は下にあって事が上にあり速やかに応ずる油断の無い心である。

 「事さ上に速に応ずる」の「事さ」は解読不明ですが、敵の足に目付けをしていれば、敵との間合いも、動作の起こりも把握可能なので心を下に澄ませて置き、上での起こる事に速やかに応ずる油断なき心の目付というのでしょう。

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2018年4月19日 (木)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録21立合心之大事

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
21無雙直伝英信流居合目録
 
居合心持肝要之大事
 
1、捕手和合居合心持之大事
2、立合心之大事
3、太刀目附事
4、野中之幕之大事
5、夜之太刀之大事
6、閨之大事
7、潜り之大事戸脇之事
8、獅子之洞出之事
9、獅子之洞入之事
読み解く
2、立合心之大事
 小藤亀江伝来の目録には居合心持肝要之大事は目録の表題9項目が記載されています、古伝「居合心持肝要之大事」でも表題は9項目なのですが表題が以下の通りです。
番目及び2番目は小藤亀江伝来の目録とは表題が違います。
居合心持肝要之大事 付 大小指違之事
1、居合心持立合之大事 大小指違
2、太刀組附位
3、太刀目附之大事
4、野中之幕
5、夜之太刀
6、閨之大事
7、泳之大事(潜り之大事)
8、獅子洞入
9、獅子洞出
 前回同様、小藤亀江伝来の目録には解説がない表題だけですから此処では古伝英信流居合目録秘訣の「居合心持肝要之大事 付 大小指違之事」を参考に其の「2、太刀組附位」を解説しておきます。
2、太刀組附位
 互に太刀を打下し組付けたる所に勝あり敵の太刀より遅きと見えても上太刀と成位あり唯肝要は拳也
組付たる処にて其気先にてすぐに突べし

*互いに太刀を真向に打ち下ろし、太刀が触れ合う処に勝ちがある、敵の太刀より遅く打ち下したと見えても敵の太刀に上太刀になる位がある。唯肝要なのは拳に打ち込めたか否かである。
組み合って上太刀になるや太刀の切先にてすぐに突くべし。

 これは、どうやら新陰流の合し打ちによる十文字勝ちのようです。相手の太刀に遅れて打ち下ろし相手の太刀の上に乗り即座に相手の拳に摺り込んで突く事を言っているようです。
ここにも第九代林六太夫が大森六郎左衛門より学んだ真陰流の業が秘められているようです。

 参考に、土佐には、衣斐丹石の丹石流が山内一豊、二代山内忠義に仕え野中兼山の失脚とともに衰えています。
 上泉伊勢守の門人小笠原玄信斎が真心陰流を起こし、その弟子小林市郎左衛門の孫小林喜太夫が近江の長浜で山内一豊に抱えられ土佐に随従しています。
 柳生新陰流は柳生但馬の高弟出淵道先の次男三郎兵衛が元禄10年1697年知行三百石で仕えたが、馬術指南役国沢五郎左衛門との馬上での仕合を行い馬術に悩まされ得意の剣法が繰り出せず敗退して、それを恥じて知行を返上しています。
 また、都治月丹による無外流が宝永4年1707年頃から5代藩主山内豊房に召されて出入りがあったようです。6代藩主山内豊隆の正徳5年1715年には出入り料20人扶持が給付されています。
 その後享和5年1720年には月丹の4代目辰五郎が15人扶持格式は御小姓格江戸詰めで正式に抱えられています。無外流は土佐に根を下し明治以後土佐の無外流剣客川崎善三郎を生んでいます。

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2018年4月18日 (水)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録20捕手和合居合之大事

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
20無雙直伝英信流居合目録
 
居合心持肝要之大事
 
1、捕手和合居合心持之大事
2、立合心之大事
3、太刀目附事
4、野中之幕之大事
5、夜之太刀之大事
6、閨之大事
7、潜り之大事戸脇之事
8、獅子之洞出之事
9、獅子之洞入之事
読み解く
1、捕手和合居合心持之大事
 小藤亀江伝来の目録には居合心持肝要之大事は目録の表題9項目が記載されています、古伝「居合心持肝要之大事」でも表題は9項目なのですが表題が以下の通りです。
番目及び2番目は小藤亀江伝来の目録とは表題が違います。
居合心持肝要之大事 付 大小指違之事
1、居合心持立合之大事 大小指違
2、太刀組附位
3、太刀目附之大事
4、野中之幕
5、夜之太刀
6、閨之大事
7、泳之大事(潜り之大事)
8、獅子洞入
9、獅子洞出
1項目と2項目がアンマッチです。小藤亀江伝来の項目には解説は無いので同じものであろうと断定はできません。
 何時の時代にか、あるいは伝承者によって変わったかもしれません。此処では居合心持肝要之大事の順番で解説しておきます。
 従って1項目は「1、居合心持立合之大事 大小指違」を当てておきます。
1、居合心持立合之大事 大小指違
 敵と立合兎やせん角やせんとたくむ事甚嫌ふ況や敵を見こなし彼が角打出すべし其所を此の如くして勝ん抔とたのむ事甚悪しゝ先づ我身を敵の土壇ときわめ何心なく出べし敵打出す所にてちらりと気移りして勝事なり常の稽古にも思あんじたくむ事を嫌ふ能々此念を去り修行する事肝要中の肝要也

 大小指違と云は世人脇指を帯二重に指刀を三重にさすなり居合の方にては二重に刀を指し三重に脇指を差す也敵に出合たる時大小を子(ね)じ違へて脇差をば下し指しにして刀を抜戦べし然るときは脇指の柄まぎる事無亦刀のさやの鐺は子(ね)る故に足を打つことなく働の自由宜し常に此の如く指すべし


 敵と立合うのに、兎やせん角やせんと企む事は甚だ嫌う事である、況や敵を見透かして彼がこの様に打ち出して来たら其の所をこの様にして勝とうなどと思い頼む事は甚だ悪い。
 先ず我が身を土壇と極めて何心も無く場に出て行くのである。
 敵が打ち出す所にちらりと気移りする処に勝事である。常の稽古でも思案に暮れて企む事を嫌う。能々この念を去り修行する事肝要中の肝要である。

 大小指し違いと云うのは、世人は脇差を帯二重の下に差し、刀を帯三重の下に差すのである。
 居合では帯二重の下に刀を指し、帯三重の下に脇指を差すのである。
 敵に出合った時は、大小をねじ違えて、脇差を落し差しにして刀を抜き戦うべきものである。その様にすれば脇指の柄が邪魔になる事は無い。又刀の鞘の鐺がはねて足を打つ事も無く、働きが自由になって宜しい、常にこの様に大小を指し違いに指すものである。

 「大小をねじ違へて」とは太刀が上にあって小太刀が下にあるのを、小太刀を落とし差しにして太刀の柄の上に小太刀の柄がある様にする事でしょう。
この様にすれば、脇差の柄が邪魔になる事も無いと云うのです。

 「亦刀のさやの鐺は子(ね)る故に足を打つことなく働の自由宜し常に此の如く指すべし」
 指し違いにして指していれば、鐺がはねても足を打たない、の状況が認識できないのですが、ご存知の方は状況をご教授ください。

 

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2018年4月17日 (火)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録19智羅離風車

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
19無雙直伝英信流居合目録
 
極意之大事 
 
1.暇乞・2、獅子洞入・3、地獄捜・4、野中幕・5、逢意時雨
6、火村風・7、鉄石・8、遠方近所・9、外之剱・10、釣瓶返
11、智羅離風車
読み解く
11、智羅離風車
 手拭にても煙草入にても向の面に投付けてビクとする所を切るべし又刀を抜きて其手に扇抔を持添て打込躰にて其扇を投げ付ビクとする所を打込勝なり

 智羅離風車(ちらりふうしゃ)の読みで良いのでしょう。漢字は当て字でしょう。一瞬のまどわしによる勝口の教えです。

 手拭でも煙草入れでも相手の顔に投げつけ相手がビクとする処を切るのである。又、刀を抜いて柄と一緒に扇などを持って打ち込む様にしてその扇を投げ付けビクとする処を打ち込んで勝のである。

 相手をビクとさせて一瞬気を奪っておいて、その処を切るのは「上意之大事」の教えで三角、四角の業の教えにありました。極意の大事では、火村風、逢意時雨、外之劔、鉄石などもこの教えと同じです。

 奇襲は当たり前の事であったのでしょうが、平和が続き江戸末期には卑怯な行為とも取ったのかも知れません。

智:知恵、さとい、賢い

羅:あみ、つらなる、つらねる、目のすいた薄い絹物(うすもの)

離:はなす、はなれる、とりつく、

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2018年4月16日 (月)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録18釣瓶返

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
18無雙直伝英信流居合目録
 
極意之大事 
 
1.暇乞・2、獅子洞入・3、地獄捜・4、野中幕・5、逢意時雨
6、火村風・7、鉄石・8、遠方近所・9、外之剱・10、釣瓶返
11、智羅離風車
読み解く
10、釣瓶返
 英信流居合目録秘訣の極意之大事では「鉤瓶返」です。
 座上にては刀をば抜いて置く事當然也然時に向ふより切かくるときぬき合する間なければ鞘と柄とを取って鞘共に請て其儘引ぬいて片手打に切るべし

 鉤瓶返は(かぎべかえし)ですから是は「釣瓶返」の誤字でしょう。

座して居る時は、刀を腰から抜いて置くのは当然である。その様な時に向うから斬りかかって来る時は抜く間が無ければ鞘と柄を取って鞘ごと請けて其の儘刀を抜いて片手打ちに切るものである。

此の場合、刀を右膝の脇か左膝の脇か有る筈ですから夫々稽古しておくべきものでしょう。

水鴎流に左右の応じ方が有ります。
左側に刀を置く場合「立浪」「左手で刀を取り、敵の顔面に柄当てして右手で柄を取るや抜き受けに打ち込んでくる敵の小手を斬る」
右側に刀を置く場合「立浪裏」「右手で刀を取り、敵の顔面に柄当てし、左手を柄に掛けるや刀を抜いて敵を突く」

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2018年4月15日 (日)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録17

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
17無雙直伝英信流居合目録
 
極意之大事 
 
1.暇乞・2、獅子洞入・3、地獄捜・4、野中幕・5、逢意時雨
6、火村風・7、鉄石・8、遠方近所・9、外之剱・10、釣瓶返
11、智羅離風車
読み解く
17、外之剱
 自宅他家共に其の座に有る物に心を付べし箱の類にても又はけさんの類盤の類にても之有時は我が量に叶うべきを計其近所に座して透間を見て是を打つけべし亦常とても此心得有るべし其座に有るもの近所にざすべし亦我が居間に是々有と常に心を用い置時は至って利を得る也
 仕合抔望まれたる時向原の詞聞きたる上は油断すべからず立合迄もなしすぐに何にても取って打倒すべし又しなえ抔くみてあらば立合ふ迄もなし居ながら取かえして打ころすべし


 これも前同然のことですが、その場にある得物になるものを即座に認知しておくこと、と言っています。
 自宅や他人の家でもその座敷に有るものに心を付けておく事、箱の類、またはけさんの類盤の類(そろばん か?)、でも有るならば我が武器になりそうなものが有ればその附近に座して、相手の隙を見て是を打ち付けるのである。
 亦、常にこの事を心得て置くものであり、その座に有るものの近所に座すべきである。
 亦、我が居間に於いても、これこれの物が有ると常に心覚えしておく時はその場に至って利を得るものである。
 仕合など望まれた時は相手の言葉を聞いたとたんに油断なくして、立ち合うまでもなくすぐに何でも取って相手を打ち倒すのである。また、竹刀など組あげてあれば立ち合うまでもなく居ながら竹刀を取って打ち殺せ。

 是が、戦国時代から江戸中期にかけての武士の心掛けだったのでしょう。むざむざ切られたのでは、武士道精神に欠けお家断絶の憂き目に会う時代です。

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2018年4月14日 (土)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録16

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
16無雙直伝英信流居合目録
 
極意之大事 
 
1.暇乞・2、獅子洞入・3、地獄捜・4、野中幕・5、逢意時雨
6、火村風・7、鉄石・8、遠方近所・9、外之剱・10、釣瓶返
11、智羅離風車
読み解く
8、遠方近所
 小藤亀江の相伝した目録は項目のみですから是だけではどのように極意を身に付けたのか解りません。
 一回ぐらいは谷村樵自庸から講義を受けたか、伝書の写し書きをしたか、授与されたかあったかもしれません。
 現代居合では十段になっても目録のみでそれも第17代大江正路の残した居合の形の順番が書かれてある程度でしょう。
 「遠方近所」の極意は英信流居合目録秘訣の九項目目に残されています。
遠方近所
 我に敵する者と見るときは其の者の側に寄りて居る事肝要也或は庭前の花にことよせ或は掛物を見る躰抔して側に近よりて居べし刀に手をかけば其儘手を取って引倒すべし間を隔てゝ居る故に不覚を取るなり或は意趣有って仕掛られ丸腰にて出合て不覚を取たる者も間々之有也是等も此習を得たればたとい丸腰なり共不覚をば取まじ其故はいや貴殿の短慮なり能く合点せよ抔と云て側に詰寄て居る時は刀をぬけば引倒す故丸腰とても不覚は取まじきなり
亦大事の仕物九寸五分の合口抔を指近く居て思わぬ処で取って引寄さしころす時はたしかに仕留る也是等皆師子王かんよう也


 我に敵する者だと見た時は、其の者の側に寄って居る事が肝要である。或は庭の花に事寄せ、或は掛物を見る振りをして側に近寄って居るのである。
刀に手を掛けたなら其の儘その手を取って引き倒せばよい、間を隔てて居るので不覚を取るのである。
 或は意趣あって仕掛けられ丸腰で出合って不覚を取った者も間々ある。これ等も此の習いを得ていれば丸腰であっても不覚を取る事は無い。
 それ故「いや貴殿の思い違いでしょう、よくお考え下さい」抔と云って側に詰め寄って居れば刀を抜けば引き倒せばよいので丸腰であっても不覚を取ることは無いであろう。
 亦、上意の大事な捕り物であれば九寸五分の合口などを指し、近くに居て相手が思わぬ所で抜き取って刺し殺すならば確実に仕留めることになろう。

 これ等の事は皆師子王の心(大丈夫の心)が肝要である。

 この極意は「我に敵する者だと見た時は、其の者の側に寄って居る事が肝要である」に極まるでしょう。

 
 

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2018年4月13日 (金)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録15

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
15無雙直伝英信流居合目録
 
極意之大事 
 
1.暇乞・2、獅子洞入・3、地獄捜・4、野中幕・5、逢意時雨
6、火村風・7、鉄石・8、遠方近所・9、外之剱・10、釣瓶返
11、智羅離風車
読み解く
7、鉄石(てっせき)
 是も英信流居合目録秘訣の極意ノ大事八項目目にあります。
鉄石
 旅抔にて気遣しき所を通るには石を袂に入れて行くべし 尤是に限らず用心を為〆(なして)行先は必ず石を袂に入行くべし時に取って是を打つくる也 座上にても鉄石の心得有  あの者を切らんと思ふ時は 其者の膝本のたたみ抔をハタと敲くときは夫に気をうつす也 其所を切ればきり安き者也
*
 心得の極意の「鉄石」とは何でしょう。鉄と石非常に堅固なものの・・譬え、と有ります。
 何となく気遣う様な所を通るには、用心のために石を袂に入れて行き、何かあった時には、石を取って打ち付ける、是に限らず用心を怠ってはならない。上司でも鉄石の心得有るものだ。
 次の「あの者を切らん・・」の文章も鉄石なのでしょうか、袂の石の心得とは違いますが、あの者を切ろうと思う時は、その者の膝辺りの畳をハタと敲いて、気を散らしておいて切れば切りやすいものである。
*
曽田本その1神傳流秘書を読み解くに大剣取の四本目に鉄石の業があります。
鉄石
 是も前の如く坐し是は廻り寄りて切らんと心得て抜かざる時行なり二小太刀尓て地をハタと叩いて気をうばうて入りてさ春
従是相寸
読み
鉄石(てっせき・てついし?)
 是も前の如く坐し 是は 廻り寄りて 切らんと心得て抜かざる時 行くなりに小太刀にて地をハタと叩いて 気を奪いて 入りて刺す
是れより相寸
読み解く
 是も相手は「前の如く坐し」ですから居合膝に坐す処、我が「廻り寄りて」は、めぐりよりて、めぐってきて、相手はそばに寄ってくれば切ろうとしているが抜こうとしない時、我は小太刀を下げてスカスカと間境に歩み行き、体を低め、小太刀で地をハタと叩き相手の気を奪い、相手が抜こうと抜くまいと体を低めたまま中に入り、相手の柄手を制して刺す。

 いささか、文章が解りずらいのですが、抜こうとしているが、抜く気があっても抜こうとしない相手の気を奪って付け込んで刺す、という業です。
 仕組の稽古でこの気を出せるかは難しいでしょうが、業に成りきって稽古する事も大切な事だろうと思います。

 政岡先生は、相手が抜かないので抜刀して地面をはたと打つと抜きはじめる、そこを飛び込んで右手をおしあげてさす。としています。

*
 この極意之大事は、孫子の「兵は奇道也」です。目的を達するには、細心の注意と誰も思っても見ない、状況を作り出し目的を果たすものでしょう。

 綺麗ごとにばかりに、夢を見ている武道修行者には違和感のある部分かも知れません。然し多かれ少なかれ、日常のビジネス活動にも要求される心得でしょう。

 刀を持って戦う事は勿論、生か死を見つめる事の乏しいこの時代、武士道を美化して、正面から名乗り合って仕合うことと見るのも仕方のない事かも知れません。

 

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2018年4月12日 (木)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録13・14

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
13・14無雙直伝英信流居合目録
 
極意之大事 
 
1.暇乞・2、獅子洞入・3、地獄捜・4、野中幕・5、逢意時雨
6、火村風・7、鉄石・8、遠方近所・9、外之剱・10、釣瓶返
11、智羅離風車
読み解く
極意之大事5、逢意時雨
 英信流居合目録秘訣 極意ノ大事の5項目目に「逢意時雨」は有ります。逢意時雨は「ほういしぐれ・あういしぐれ」とでも読むのでしょう。
5、逢意時雨
 火村の風に異る事無し是は茶抔所望して其茶椀をとってすぐに打付べし又自宅へ敵来たらば我は茶を汲で持出て其茶を取らんとする手を取て引倒して勝也
 「火村風」という事が出てきました、これも極意ノ大事の4項目目にあります。読みは「かそんのかぜ」と読みます(曽田メモ)続けて読んでみます。
6、火村風
 仕物抔に行たる時其者と物語抔をして都而(却ってならずや虎彦註)色にあらわさず扨煙草盆を持出したらば其火入れを取って打付けて然しておくれたる所を勝べし 亦捕物抔に行に灰を袋につつみ其灰の中に石を入おんぶくの様にして持相手の面に打つくるとパッと
開いて眼くらむ也 其所を捕る也 譬え開かず共石を入れて打付る故転どう(倒?)する也 或は此事を聞くさし(ききさし)捕手の役に行く密談に事よせ捕る仕組也 一人密談しいたるに脇より紙に灰を包み打つけるに紙しかと包て有りたる故都而(却ってにあらずや虎彦註)不開おんぶくの如くなるものにて面を打たる故いよゝに相人(あいひと、相手)気ばりて取急たると是伝をしらざる故用に不立(たたず)
*

 前回の「逢意時雨」同様に相手の油断に不意打ちを食らわせ臆するところを捕り押さえる心得です。
これも場面が目に見える様です。「火村風」の業名も不思議な名です。

 「都而」は「却而」いずれも現代に使われていないのですが、「・・としてすべて色にあらわさず」の様に使ったのでしょう。学識のある方のご指導をいただければ幸いです。

 世間話などして少しも仕物に来たことを色に出さず、煙草盆を出してもてなす風を装い、突然其の火を相手に投げつけ臆するところを捕えるのです。

 亦,捕り者に行く時は、灰を紙につつんでその中に石を入れて、「おんぶく」は土佐の方言の一つかも知れません。紙に包んだ米を正月に備える風習もある様です。
相手の顔にぶつけて包みが解けて目潰しとなって目がくらんでいる処を捕る。
譬え紙が開かなくとも石が入っているので当たれば衝撃を受けて動転する。

 この方法を聞いて捕り者に行き、密談があると気を引いて捕る仕組み、密談して居て灰を入れた紙を相手に打ち付けたが紙をしっかり包んでいたので開いてくれず、相手は却って気張ってしまう、慌ててしまってこの伝を知らずに用が立たない事も有。
此処は其の儘読んでも、意味不明なので勝手に思いつくまま解釈して見ました。

 この辺は目録の中でも、面白い処です。
役目を果たすと云う事への執念を教えると理解すべき処でしょう。

 
 
 

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2018年4月11日 (水)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録12

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
、小藤亀江伝来の目録
12無雙直伝英信流居合目録
  
極意之大事 
 
1.暇乞・2、獅子洞入・3、地獄捜・4、野中幕・5、逢意時雨
6、
火村風・7、鉄石・8、遠方近所・9、外之剱・10、釣瓶返
11、智羅離風車
読み解く
極意之大事3、野中幕
曽田本その1に英信流居合目録秘訣が納められています。外之物ノ大事・上意之大事・極意ノ大事、更に居合心持肝要之大事に「野中之幕」があります。
 
野中之幕
 取籠者抔の有之時 杖の先き或は竹の先に又横手を括り付け其横手を羽織の袖に通し其竹の本を左の手に持ち向へさし出し右の手に刀を持ち 生捕なれば木刀の類を持ち 我身は羽織の陰に隠れ羽織をば相手の方へ突き付べし 向より切ると云えども我身には届く事なし其所を持たる刀にて相手の足を薙ぐべし亦矢玉を防ぐに至て宜し
 是が極意の事の一つですが、暗がりとか余程相手の気が立って居なければ役立ちそうもありません。
 居合とは無関係の様な教えです、目録授与の際に口頭で説明すればよい様な内容です。
 
 
 

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2018年4月10日 (火)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録11

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
、小藤亀江伝来の目録
11無雙直伝英信流居合目録
  
極意之大事 
 
1.暇乞・2、獅子洞入・3、地獄捜・4、野中幕・5、逢意時雨
・6、
火村風・7、鉄石・8、遠方近所・9、外之剱・10、釣瓶返・11、智羅離風車
読み解く
 極意之大事の3番目「地獄捜」
 小藤亀江は無双直伝英信流居合目録を相伝しても、目録の項目の内容は知らなかったと思うのです。
 根元之巻は師匠に見せられても、目録の項目の全ては師匠も知らなかったのだろうと思います。
 現代居合では刀を抜く形ばかりで、何も相伝していないのが実情です。
*
 古伝神傳流秘書にも無かった「地獄捜」英信流居合目録秘訣極意之大事三項目目にあります。
地獄捜
 闇りに取籠り者抔有るときの心得也夫れにては已成らず惣じて闇にて人をさがすの術也
 刀の身と鞘と半分抜掛て鐺を以て一面にませ捜すべし鐺に物のさわるを證に抜て突べし
 亦鞘口三寸計に切先を残し居ながら静かに四方へ回してさぐるべし九尺四方何事も知れ申す
*
 山川幸雅による目録口授覚、印可口授覚に居合兵法極意秘訣(英信流兵法極意秘訣)というのがあります。
 「老父物語を書付置久しき事ゆえ失念之事多し・・」で始まる林 政詡が明和元年16764年に「賜之」とある覚書です。
 その當流申伝之大事の閨之事に地獄捜と同様の事が書かれています。
閨之事
 不案内なる所にては刀を抜鞘口三寸ほどのこし居ながらしづかに四方を振さぐるべし九尺四方其まま何事もしれ申し候
此処はこの暗闇での用心の方法とみてよさそうです。真っ暗闇など都会ではめったに有り得ない事ですが、知らない所で真っ暗ならば困惑してしまいます。
 
 
 

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2018年4月 9日 (月)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録10

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
、小藤亀江伝来の目録
10無雙直伝英信流居合目録
  
極意之大事 
 
1.暇乞・2、獅子洞入・3、地獄捜・4、野中幕・5、逢意時雨
・6、
火村風・7、鉄石・8、遠方近所・9、外之剱・10、釣瓶返・11、智羅離風車
読み解く
 暇乞の次は「獅子洞入」ですが是は英信流居合目録秘訣の極意ノ大事では「獅子王剱」の表題で載っています、然し小藤亀江の目録では「獅子洞入」で同じものと云う感じがしません。
「獅子王剱
 是は事に非ず我が心に大丈夫を備ふる事也此の習何よりも肝要なり此備無き時はせきて色に出る故暇乞の類の術をもなすことならず常に能心に備えるべし
 英信流居合目録秘訣の居合心持肝要之大事に「獅子洞入 獅子洞出」という項目があります。表題が同じでも、「居合心持肝要之大事」の項目であって小藤亀江伝来の極意之大事ではありません。従ってこれかなとも思えるのですが心持を述べている項目との誤認では無い様です。
「獅子洞入 獅子洞出」
 是以戸口抔を入るの習也其外とても心得有るべし或は取籠者抔戸口の内に刀を振上て居るときは容易に入る事不能其時刀を抜て背に負たる如くに右の手にて振り上げ左の手にて脇指を提げうつむきて戸口を入るべし上より打込めば刀にてふせぎ下をなぐれば脇差にて留る向ふの足をなぐべし獅子洞出是以同出入の心得を知らする也
土佐の居合には柳生新陰流の風が幾つも出てきます、この獅子洞入もその一つです。柳生新陰流の九箇「小詰」を柳生流新秘抄から読んでみます。
「九箇 小詰」
小詰は尖になじると云う事なり。相手の右手の膝に太刀を押し当てるがごとく鋒先をささえて構うるなり、此の形を獅子の洞出と云い、洞穴より猛獣の猛って出るに喩ゆ、この太刀さき三寸へつけて弓手の肘を捧げ、相手の太刀先を押ゆる、相手拳を払うとき、太刀を擦り込んで両腕を押へ、詰めて勝なり、此の有りさまを獅子の洞入りと云い、鋒をもって敵の胸板をつらぬくことを小詰と云うなり。
*
この小藤亀江伝来の目録はどの様に谷村樵夫自庸は小藤亀江に相伝したのでしょう。恐らく、居合の形である大森流(正座)、英信流(立膝)位は指導されたのでしょうが、奥居合である古伝神傳流秘書の抜刀心持之事は、外之物之大事、上意之大事を参考にして業技法を習い得たかは疑問です。
 
 現代居合も同様に、刀を以て抜刀する事だけが無双直伝英信流や夢想神傳流であると手解きされているばかりです。
 棒術や和は傳書すら知り得ない状況です。ようやく仕組みである組太刀を見直す一部の人達が出ていますが、申し合わせの形に留まり、中には演武会用の見世物踊りに終始したりしています。術理を学ばず、申し合わせによる、強く早いばかりの大人のチャンバラも横行しています。

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2018年4月 8日 (日)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録9

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
、小藤亀江伝来の目録
無雙直伝英信流居合目録
  
極意之大事 
 
1.暇乞・2、獅子洞入・3、地獄捜・4、野中幕・5、逢意時雨
・6、
火村風・7、鉄石・8、遠方近所・9、外之剱・10、釣瓶返・11、智羅離風車
読み解く
 極意の大事に相当する教えは恐らく戦後の師匠から弟子へ伝えられた形跡は知る限りでは見られません。
 無双直伝英信流及び夢想神傳流でも、刀を抜き付ける居合の業技法に偏ってしまっていると思われます。
 指導を受ける者も、聞いては見ても現代には有り得ないことぐらいで右から左へ聞き流してしまうかも知れません。
 項目ごとに、英信流居合目録秘訣の極意を味わってみます
1、暇乞
英信流目録秘訣
 仕物抔を云付られたる時抔其者之所へ行て四方山の咄抔をして其内に切べし隙之無ときは我が刀を取て又近日と立さまに鐺を以て突き倒し其侭引ぬいて突く也又は亭主我を送って出る時其透間を見て鐺にて突たおして其侭引ぬいて突くべし
 現代居合はいつの間にか、相手の害意を察して、機先を制して後の先もしくは先々に制するものと理解しています。しかし古伝は相手の害意を察するとも、後の先とも状況を指定していません。どの様な状況でも教えられた業技法を以て勝也です。
 古伝神傳流秘書の抜刀心持之事にも英信流居合之事にも大森流居合之事にも暇乞と称する業名は見当たりません。
古伝神傳流秘書大森流居合之事 抜打
 坐して居る所を向うより切て懸るを其のまゝ踏ん伸んで請流し打込み開いて納る 尤も請流に非ず此所筆に及ばず
 この抜打は相手に打ち込まれたのを請け流して勝、後の先を表しています。
古伝神傳流秘書英信流居合之事 抜打
 大森流の抜打に同じ事也
古伝神傳流秘書抜刀心持之事 抜打
 抜打上中下
 「(暇乞三本)格の低き者に対する黙礼の時、等輩に対する礼の時、目上の者に対する礼の時 曽田メモ」
 曽田本その1の1神傳流秘書抜刀心持之事の17本目に「抜打上中下」と有りますがその手附けは有りません。
 そこには曽田先生のコメントとして「(暇乞三本)格の低き者に対する黙礼の時、等輩に対する礼の時、目上の者に対する礼の時」とあって、抜打について、地位の格差による礼法の違いを以て抜き打ちの仕方が違う様にメモられています。
 何時の時代かに抜打と暇乞の時の頭の下げ具合による抜刀法とを合体させた業が付加されたのかも知れません。
 木村永寿先生の林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流伝書集及び業手付解説「神傳流業手付」の抜刀兵法傳来の抜刀心持之事には抜打上中下 「(暇乞三本)格の低き者に対する黙礼の時、等輩に対する礼の時、目上の者に対する礼の時 曽田メモ」に相当する記述は有りません。私は曽田虎彦先生が、当時土佐の居合で一般化した大江正路の居合の暇乞三本を書き加えた様に思います。
 その暇乞三本と英信流目録秘訣の仕物を言い付けられた時何が何でも首を取って帰らなければならない使命を帯びて、相手の隙を伺い奇襲する先制攻撃がコラボしている様に思います。
 現代では、奥居合の暇乞は卑怯な奇襲戦法として演武会では演じてはならないとまで飛躍している場合があります。
 お辞儀の角度がいか様でも、敵が攻撃を仕掛けて来る事も有る筈で、それに応じる後の先の技は暇乞三本でもあり得ることです。拡大解釈すべきものでは無さそうです。
白石元一長谷川流奥居合
 暇乞という業名は見当たりません。業手付から類推します。
 長谷川流奥居合の二十本目抜打
 (互に挨拶をして未だ終らざるに抜き打ちに斬る意)正面に対して正座し抜刀の用意をなしたる後、両手をつきて坐礼を行い頭を上げつゝ刀を抜き上体が起き終るまで已に敵を抜き打ちに斬りつく。
 この手附は互に挨拶をし、相手が起き上がる前に抜き打てと言っている様です。これは将に先制攻撃です。
尾形郷一神傳流居合兵法
 英信流奥居合之部ニ十本目抜打
(対坐して居る者を斬る)正面に向い対座し、刀を鞘なり前腹へ抱へ込む様に横たへ両手を前につかへ 頭を下げ礼をして俯きたるまま両手引込め鯉口と柄を執り 急に腰を伸しつつ刀を右前へ引抜き刀尖を左後へ突込み 諸手上段に引冠りて斬込む 
 「刀を鞘なり前腹へ抱へ込む様に横たへ両手を前につかへ」を忠実にやれば「両手を前につかへ」の解釈、手をつかえ(支・閊・痞)によって前屈みになって両手を床に着くと解釈できます。白石元一居合と同様でしょう。
大江正路剣道手ほどき 
 奥居合十九本目暇乞(黙礼)
 両手を膝上に置き黙礼し、右手柄に掛るや刀を斜に抜き付け上段にて斬る
 奥居合二十本目暇乞(頭を下げ礼をする)
 両手を板の間に付け、頭を板の間近く下し礼をなし、両手を鞘と柄に同一に掛け直ちに上に抜き上段となり前面を斬る
 奥居合二十一本目暇乞(中に頭を下、右同様に斬る)
 両手を膝上に置き黙礼より稍や低く頭を下げて礼をなし、右手を柄に掛け刀を斜に抜き上段にて斬る。
 大江正路の暇乞は後の先とも先とも不明ですがこの文章では、お辞儀をしつつ不意打ちの先制攻撃の色が濃そうです。
 大江正路の剣道手ほどき大森流居合の十一本目抜打を見てみましょう。
 「対坐にて前の敵を斬る心組にて其正座の儘刀を前より頭上に抜き、上段に冠り、身体を前に少しく出し、前面の頭上を斬る」
 是では正座の部の抜打ちも不意打ちの雰囲気です。古伝の「坐して居る所を向うより切て懸るを其のまゝ踏ん伸んで請流し打込み開いて納る 尤も請流に非ず此所筆に及ばず」は何処に行ってしまったのでしょう。
 この一方的な抜打は白石居合にも尾形居合にも同様と云う事は、細川義昌に伝えた下村派第十四代下村茂市定の教えであったと思われます。
 当然の事で下村茂市定を師匠とした吉宗貞義を師とする曽田虎彦にも通ずるものかも知れません。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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2018年4月 7日 (土)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録8

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
、小藤亀江伝来の目録
無雙直伝英信流居合目録
  
極意之大事   
暇乞・獅子洞入・地獄捜・野中幕
逢意時雨・火村風・鉄石・遠方近所
外之剱・釣瓶返・智羅離風車

居合心持肝要之大事
1.捕手和合居合心持之大事
1.立合心之大事
1.太刀目附事
1.野中之幕之大事
1.夜之太刀之大事
1.閨之大事
1.潜り之大事 戸脇之事
1.獅子之洞出之事
1.獅子之洞入之事
右九ヶ条者深秘之極意也非真実之人者努々不可有相伝者也

無双直伝英信流居合就多年御熱心太刀次悉令相伝□向後嗜専要候若御所望之仁於有之者兼而其之人之取罰文御指南尤可仍許免之状如件

明治三十四年六月十五日  
           谷村樵夫自庸
小藤亀江殿
 
読み解く
 曽田虎彦先生の実兄小藤亀江が谷村樵夫自庸より伝授された居合根元之巻に付随する無双直伝英信流居合目録を読み解いてきました。
 免許状の形式は大凡このようにその流の始祖による流を起こした謂れ、その奥義と云える教え、それを行うに当たっての心構えなどの様です。
 伝えた業目録は目録のみで業名が記載されているばかりです。土佐の居合も其の形式に依っています。
 従って、目録を見てもどの様に伝授されたのかはわかりません。中には目録一部で流の最も基本とする奥義の業のみ伝授され他は独習せよとばかりのものもあろうかと思います。
 目録允可は根元之巻とは異なり、「業を教えたよ」というものに過ぎません。中には初伝・中伝・奥伝と分けて居る場合もありますが、それは其処までの伝授の証しでもあり、中には金目当ての巻物に過ぎないものもあったでしょう。根元之巻は「奥義の心を伝えたよ」というものです。これは免許皆伝ですから流の業技法も心得も伝えたものですから師範として道場を開く事を許されたと言えるでしょう。
 流の宗家として立つには紹統印可を現宗家から印可されるもので、根元之巻を師匠から伝授されたとて自称宗家を名乗るべきでは無くその乱立は疑うべきもので、自らが見直すべきでしょう。
 いくつかに分けて小藤亀江伝来の無双直伝英信流居合目録を解説して見たいと思います。
 参考とするものは、英信流目録秘訣しか見当たりません。
 既に発行されているものでは昭和30年1955年発行の第20代宗家河野百錬の無双直伝英信流居合兵法叢書第二編居合兵法極意秘訣第四章英信流居合目録秘訣P61。
 もう一つは昭和57年1982年発行夢想神傳流の木村永寿範士による林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流伝書集及び業手付解説の英信流居合目録秘訣P69。
 木村永寿本は夢想神傳流を正当化する事に気を遣いすぎ、林崎甚助重信から伝わり、長谷川主税助英信が時代に合わせて改変し、荒井勢哲清信から伝授され土佐の林六太夫守政が土佐にもたらした無双神傳英信流居合兵法であることをぼやけさせています。
 其の表題によってせっかくの細川家伝来の資料集が無双直伝流を学ぶ者にも伝わらず絶版になっているのは残念です。
 河野本は内容は曽田虎彦からの手書きの伝書集から版を起されていますが、何せ版数も少なく高価で、発行時期も早すぎたためでありましょう、限られた人にしか渡っておらず、其の侭書庫に埃を冠って居るか遺族が破棄したか古本としても市場に出てきません。
 図書館でコピーするか再版を待つばかりです。先師から譲られてお読みの先生は少なかろうと思います。
 日本の国語教育の貧困さからページを開いても読みこなせない若者ばかりで宝の山はいずれ消えてしまうでしょう。
 居合を学ぶ者は国語も学ばなければならない、同時に戦国期から江戸期の日本人の思想や体の使い方も学び、新陰流と兵法家伝書・武蔵の五輪書・一刀流極意なども勉強せざるを得ないでしょう。
 武術はその師の域に達しなければ、指導された意味も術も理解できないものです。形は真似られても術にはならないのが古流だろうと頭も尻も叩かれています。当然伝書を書かれた先人の域に達せられなければ其の内容は理解不能でしょう。
 よく、伝書は、流の極意技を知られない様に書かれているなどの聞き覚えをさせられます。 私はそんな事では無く其の域に達していなければ唯の巻物で口にくわえて呪文でも唱える以外にないものと思っています。
 余談が長すぎました。次回は極意の大事に入ります。
 
 

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2018年4月 6日 (金)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録7

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
7.無雙直伝英信流居合目録
上意之大事3 
 10、鐺返・11、行違
 12、手之内・13、輪之内・14、十文字
読み解く
上意之物之大事の業名から次の伝書に相当する業名を拾い出してみます 
10、鐺返
古伝神傳流秘書抜刀心持之事 
 該当せず 
白石元一長谷川流奥居合 
 該当せず 
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 
 該当せず 
大江正路剣道手ほどき 
 該当せず
英信流居合目録秘訣(参考) 鐺返
 座して居る時後ろより小尻を取て押しあぐるときは刀を抜く事ならず此時相手のひざ頭を踏み其のきおいに向うへたおれてぬき突くべし
11、行違
古伝神傳流秘書抜刀心持之事 行違:  
 行違に左の脇に添えて払い捨冠って打込也
白石元一長谷川流奥居合 摺違:
 (歩行中摺れ違う際敵を斬る意)歩行中敵と摺れ違う一歩手前に於いて(左足にて鯉口を構へ右足をふみ出して)刀を抜き、左足を出すと同時に刀を左側に取る。此時右手は左肘の外に位置し、左手は鯉口を持ちたるまま右脇腹に取り左右の腕は交叉す。続いて右足を踏み出し摺れ違いざまに敵の胴を横に払い、直ちに振り返り右足を踏み出しと同時に、再び上段より斬り下ろす。
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 行違:
 (摺れ違いに左側の者を斬る)正面へ歩み往きつつ(右側を通り)鯉口を切り左足踏出しながら右手を柄に掛け、右足を踏出すなり刀を向うへ引抜き、左足踏出しつつ(刃部を外へ向け)左腕外へ突込み、更に右足踏出すと共に摺違いに刀を向うへ摺抜き(相手の左側を軽く斬り)直ぐ左斜に振返へりつつ諸手上段に振冠り右足踏込んで斬込み刀を開き納め終る。
大江正路剣道手ほどき 行違
 (進行中正面を柄頭にて打ち、後を斬り又前を斬る)右足の出出たる時、(敵顔面を柄頭にて)左手は鞘と鍔を拇指にて押へ、右手は柄を握りたるまゝ前方に伸し、柄當りをなし、其足踏みのまゝ体を左へ廻して、後方に向いつつ、抜き付右手にて斬り、直に前方の右へ振り向き上段に斬る。
英信流居合目録秘訣(参考) 行違
 我左脇を通す宜し切る事悪しと知るべし行違さまに抜て突事宜し又敵先に抜んとせば先んじて早く柄にて胸を突くべし行違の詞の掛様の事大事有、夜中に往来をするにうさんなる者の有時は自分の姓名を急に呼かくべし我に敵するものなればはいと答るもの也、其所を切るなり、旅抔にては白昼にも此心得有るべし又何んぞ言うを云かけて見るに我に敵する気ある者は必ず返答にあぐむもの也
12、手之内
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 
 該当せず 
白石元一長谷川流奥居合 
 該当せず 
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 
 該当せず 
大江正路剣道手ほどき 
 該当せず
英信流居合目録秘訣(参考)手之内
 敵と刀を打合はするに合刀せずと云事なし其合刀したる所にて敵の拳を押へて突くべし
13、輪之内
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 
 該当せず 
白石元一長谷川流奥居合 
 該当せず 
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 
 該当せず 
大江正路剣道手ほどき 
 該当せず
英信流居合目録秘訣(参考)輪之内
 敵と打合はするに輪にならずと云事なし上にて打合せ亦下にて合えばすぐに輪と成る竪横皆同じ其輪をはつして勝べし
14、十文字
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 
 該当せず 
白石元一長谷川流奥居合 
 該当せず 
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 
 該当せず 
大江正路剣道手ほどき 
 該当せず
英信流居合目録秘訣(参考)十文字
 敵と打合すれば輪と成り十の形となる互に打合せたる所は是十の形ち也其十の形になりたる所にて手を取れば勝也手の内輪の内十文字は別の事ならず皆一つに唱る事なり外の事にはあらず拳を取れと言事の教也
*
 大江正路の業名の引きあたった数が他よりも多く、業名だけならば英信流居合目録秘訣に近い様です。
 問題は手附の内容です。古伝神傳流秘書とも、細川義昌-植田平太郎-尾形郷一の手附ともずれています。これは何を意味するでしょう。
 当然英信流居合目録の内容とも合わないのです。大森流(正座の部)、英信流(立膝の部)は特に違和感は感じませんが、奥居合については疑問です。
 組太刀の改変と奥居合の改変には、江戸末期から明治の大きな変動が原因と思うのですが、私は明治維新前後に青春を迎え充分修練をすべき時期に、武士の職を解かれ生きるために誰もが居合処ではなかった、貴重な師からの指導が途絶え、目録ばかりが目に付いて中身の手附も口伝口授も看取り稽古も出来なかったのではないかと思います。
 
 そんな中で、大江正路は一人土佐の居合を独創したと云われながら必死で体系立てて守ったのかも知れません。現在の無双直伝英信流の隆盛を思えば中興の祖としてたたえるべき逸材とも思えます。
 しかし、唯神格化して崇めるばかりでは、林崎甚助重信の居合をしのぶばかりで実の無いものとなって、長谷川英信の改革を待たねばならなかった様に此の居合は消えてしまうでしょう。
 この時代居合を学ぶ者の行きつくところは、棒振りの運用上手になったとしても、業数をこなし得たとしても、大した意味はありそうにもない。
 武術を勝ち負けのスポーツとするも、健康体操とするも、華麗な踊りとするも、護身術とするもその課題を得られれば良いのでしょう。
 然し武術は互いのコミュニケーションの最後の手段でもあり、其処に至らせない心を、武術を修錬する中から学び直す時代であると思います。
 
 
 
 
 
 
 
 

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2018年4月 5日 (木)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録6

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
6.無雙直伝英信流居合目録
上意之物之大事2  
 6、戸詰・7、戸脇・8、壁添・9、棚下
読み解く
上意之物之大事の業名から次の伝書に相当する業名を拾い出してみます
6、戸詰
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 
 該当せず
白石元一長谷川流奥居合  
 該当せず
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 
該当せず
大江江正路剣道手ほどき 戸詰:
 (右を斬り左を斬る)抜き付け、右の敵を右手にて切ると同時に右足を右斜に出す、其の右足を左斜横に踏み変へて上段にて左斜を真直に斬る。
英信流居合目録秘訣(参考)戸詰
 障子或は戸を明けかけて内へ入れと云て入る所を戸にて立詰んとするときは是を察して扇を敷居のみぞに入れ其扇のはしを膝にて敷然て内へ入るときはたて詰らるゝ事なし
7、戸脇
古伝神傳流秘書抜刀心持之事 
 該当せず
白石元一長谷川流奥居合 
 該当せず
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 
 該当せず
大江正路剣道手ほどき 戸脇:
 (左を突き右を切る)右足を右斜へ踏み出し、刀を抜き、左横を顧みながら突き、足踏みは其まゝにて上体を右横に振り向け、上段にて切り下す。
英信流居合目録秘訣(参考)戸脇
 戸の手前にて立って居てあれへ通れと云て入る所を切らんと心懸るならばつかつかと戸口を入躰に歩み行て柄にて胸を押しつけて而して引抜てつくべし 亦火急にて既に切かけられたる時は或は柄を以てはらいのち早わざをきかすべし 亦戸の内に人ありと思わば戸口を直ぐに入る事なく内に人の有る方に向て筋違て入るべし
8、壁添
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事
 該当せず 
白石元一長谷川流奥居合 
 該当せず 
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 
 該当せず 
大江正路剣道手ほどき 壁添へ
 (進行中立留り両足を踏み揃へ上に抜き直下に斬下し竪立に刀を納む)中央に出で体を直立とし両足を揃え刀を上に抜き上段となりて趾先を立てて真直に刀尖を下として斬り下し、其体のまゝ刀尖を下としたるまま血拭い刀を竪立として納む。
(参考)古伝神傳流秘書抜刀心持之事 人中:
 足を揃えたって居る身にそえて上へ抜き手をのべて打込む納るも躰の中にて納る 
英信流居合目録秘訣(参考)壁添
 壁に限らず惣じて壁に添たる如くの不自由の所にて抜くには猶以腰を開きひねりて躰の内にて抜突くべし切らんとする故毎度壁に切あてかもいに切あてゝ仕損ずる也突くに越たる事なし就中身の振廻し不自由の所にては突く事肝要
9、棚下
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 棚下:
 大森流逆刀の如く立て上へ抜打込む時体をうつむき打込是は二階下様の上へ打込ぬ心得也
白石元一長谷川流奥居合 棚下:
 (低き棚の下又は天井床等の下にて前方に居る敵に対して行う意)左足を十分後方に伸ばしたるまま退きて上体を前方へ傾け(此時右足太股に上体を接す)刀を左側にて抜き、直ちに振り冠り上体を起こすことなく前方の敵を斬る。血振りを行いたる後左膝を床につけ、刀を納めるにつれて上体を起し同時に右足を引きつける。
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 棚下:
 (上の閊える所にて前の者を斬る)正面に向い居合膝に座し、例により鯉口を切り右手を柄に掛け体を前へ俯け腰を少し浮かせ左足を後へ退き伸ばし其膝頭をつかへ刀を背負う様に左膝頭上へ引抜き諸手を掛け前者へ斬込み、其のまま刀を右へ開き納めつつ体を引起し右脛を引付けるなり左踵上へ臀部を下し納め終る。
大江正路剣道手ほどき 棚下
 (頭を下げて斬る)座したる処より頭を前方へ下げ稍や腰を屈め右足を少し出しつつ刀を抜き、上体を上に起すと同時に上段となり右足を踏み込みて真直に切り下す。
英信流居合目録秘訣(参考) 棚下
 二階下天井の下抔に於いて仕合うには上へ切あてて毎度不覚を取物也故に打込む拍子に脺を突いて打込むべし此習を心得るときはすねをつかずとも上に当てざる心持ちあり

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2018年4月 4日 (水)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録5

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
.無雙直伝英信流居合目録
上意之物之大事1  
 1、虎走・2、両詰・3、三角・4、四角・5、門入
読み解く
上意之物之大事の業名から次の伝書に相当する業名を拾い出してみます
1、虎走
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 虎走:
 居合膝に坐して居立って向へ腰をかがめつかつかと行 抜口の外へ見へぬ様に抜付打込納 又右の通り腰をかがめ後へ引抜付打込也
・白石元一長谷川流奥居合 虎走:
 (暗夜前方の敵に対して行う)姿勢を低くして(前方をすかし見る心)数歩小足にて走り行き左膝をつき 右足を踏み出すと同時に「横雲」と同様斬りつけ、血振り、納刀し(此の時臀は踵に付けない)終るや、再び敵前方より来るに依り起ちて一足となり中腰の儘後方に小走りにて数歩退き、右膝をたて左足を退きて膝をつくと同時に横一文字に斬り付く。
・尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 虎走: 
 (次の間に居る者を斬り退る処へ追掛け来る者を斬る)左手を鯉口に、右手を柄に執り抱へ込む様にして立上り、上体を俯け前方へ 小走に馳せ行き腰を伸すなり右足踏込んで(対手の右側面へ)抜付け、左膝を右足横へ跪きつつ、諸手上段に引冠り、更に右足踏込んで斬込み、刀を開き納めたるまま立上り、又刀を抱へ込む様に前へ俯き小走に退り腰伸すと同時に、左足を一歩後へ退き、追掛け来るへ(右側面へ)大きく抜付け、又左膝を右足横へ跪きつつ諸手上段に引冠り右足踏込んで斬込む。
・大江正路剣道手ほどき 虎走り:
 (中腰となり、走り抜斬又後ざりして抜斬る)座したる処より柄に手を掛け、稍や腰を屈め、小走りにて数歩進み出で、右足の踏み出したる時抜き付け、同体にて坐して斬る(血拭ひ刀を納むるや)刀を納めて二三寸残りし時屈めたる姿勢にて、数歩退り左足を退きたる時中腰にて抜付け上段となり座して斬る。
・英信流居合目録秘訣(参考) 虎走:
 仕物抔云付られたる時は殊に此心得入用也其外とても此心得肝要也敵二間も三間も隔てて座して居る時は直に切事能わず其上同座し人々居並ぶ時は色に見せては仕損る也
 さわらぬ躰に向へつかつかと腰をかがめ歩行内に抜口の外へ見えぬ様に体の内にて刀を逆さまに抜きつくべし虎の一足の事の如しと知るべし大事とする所は歩みにありはこび滞り無く取合する事不能の位と知るべし
2、両詰
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 両詰:
 右腋へ抜打に切り付け左を斬る 抜て片手にて左脇を突き直に振向いて右腋を切る
・白石元一長谷川流奥居合 両詰:
 (左右の敵に対して行う)右足を稍右横に踏み出して右方に抜刀し、前後詰と同様刀背を胸部に接し左方の敵を刺したる後、右方に向きをかへ右足を出して上段より斬り下ろす。
・尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 両詰:
 (左右に坐して居る者を斬る)右手を柄に掛けるなり、腰を伸し(右へ掛かると見せて)右足を少し右へ踏出し其方向へ刀を引抜き咄嗟に左へ振向き(右片手にて)左側の者の胸部を突き直ぐ右へ振返りつつ諸手上段に引冠り右側の者へ斬込む。
・大江正路剣道手ほどき 両詰:
 (抜放け諸手にて真向を突き斬る)座したる処より右足を少し出して、刀を抜き、柄元を臍下に当て、右足を踏み出して、前方を諸手にて突き、其姿勢のまゝ、上段にて前面を真向に斬る。
・英信流居合目録秘訣(参考) 両詰:
 是又仕物抔言付けられ又は乱世の時分などにわ使者などに行左右より詰かけられたる事間々之有る也ケ様の時の心得也尤外とても入用也、左右に詰かけられたる時一人宛て切らんとするときはおくれを取るなり故に抜や否や左わきの者を切先にて突すぐに右を切るべし其のざ惟手早きに有り、亦右腋の者に抜手を留らるべきと思う時は右を片手打に切り直に左を切るべし。
3、三角
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 三角:
 抜て身を添え右廻りに後へ振り廻りて打込也
・白石元一長谷川流奥居合 三角:
 (前右後の三方の敵に対して行う)右足を出すと同時に刀を抜き、右足を引きつけると同時に後方の敵を刺す。(この時左手は鞘口を握りたるまゝ右横腹の所に取り、右手は左側肘の上より後方の敵を刺す、両腕は交叉する如くし)更に右足先を軸として左足も従って後方に退き乍ら百八十度右方より廻り、前右後方の三人を一時に薙ぎ斬りたる後、(此時正面に向き左手は鐺が背に接する如く左方に十分開く)刀を振り冠り左膝を右足踝の所に引きつけてつき、右足を踏み出すと同時に上段より斬り下ろす。
・尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 三角:
 (前右後の三人を斬る)正面より(左廻りに)後向き居合膝に座し、例により鯉口を切り右手を柄に掛け、前に掛かると見せて右足を摺り出し腰を伸ばし刀を引抜くなり、右足を左足に引きよせるなり刃部を外へ向け左腕外へ深く突込み、立上りつつ右へくるりと廻りながら前、右、後の三人を軽く斬り、正面へ向く、同時に左膝を跪きつつ諸手上段に引冠り右足踏込んで斬り込む。
・大江正路剣道手ほどき 三角
 該当せず
・英信流居合目録秘訣(参考)三角
 三人並び居る所を切る心得也ヶ様のときはふかぶかと勝んとする故におくれを取る也、居合の大事は浅く勝事肝要也、三人並居る所を抜打に紋所のあたりを切先はづれにはろうときはビクとするなり其所を仕留る也三人を一人ずつ切らんと思う心得なれば必仕損ずる也一度に払うて其おくれに付込で勝べし。
、四角
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 四角:
 抜左の後の角を突き右の後の角を切右の向を請流し左の向を切又右の向を切る也
・白石元一長谷川流奥居合 四角:
 (四隅四人の敵に対して行う)右前角の敵に斬りつくる如く気勢を見せ乍ら右足を出して刀を抜き終るや左後方の敵を刺し返す刀を以て(左方より冠り)右後方の敵を斬り(左膝にてまわる)尚刀を返さんとするや(右方より冠る)、右角の敵我に対し斬りかかるを受け流し、左前角の敵をきり続いて左方より冠り右前角の敵を斬る。
・尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 四角:
 (四隅に居る者を斬る)正面に向い居合膝に座し、例により鯉口を切り右手を柄に掛け腰を伸し右膝をたてつつ(右前へ掛かると見せ)刀を其方向へ引抜き、咄嗟に左膝頭で(左廻りに)後斜へ廻り向き左後隅の者を(右片手にて)突き、直ぐ右へくるりと廻りつつ諸手上段に引冠り右後隅の者へ斬込み、直ぐ左へ廻りつつ刀を頭上へ振冠り(右前隅の者より斬込み来る太刀を受け流しながら)左前隅の者へ斬込み、直に再び右へ振向きつつ諸手上段に引冠り右前隅の者へ斬込む。
・大江正路剣道手ほどき 四方切:
 右足を右斜へ出し、刀を右斜に抜き、刀峯を胸の処に当て、刀を平として斜に左後を突き右側面の横に右足を踏み変え、上段にて切り、右足を左斜横に踏み変えて(請け返して打つ)上段となりて切り、右足を正面に踏み変えて、上段より切る。
英信流居合目録秘訣(参考)四角
 三角にかわる事無し是は前後左右に詰合う之心得也故に後ろへ迄まわって抜付る也
5、門入
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 門入
 該当せず
白石元一長谷川流奥居合 門入り
 該当せず
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 門入り
 該当せず
大江正路剣道手ほどき 門入:
 (進行中片手にて前を突き後を斬り前を斬る)右足を出したる時、刀を抜き、左足を出して、刀柄の握りを、腰に当て刀峯を胸に当て、右足を出して、右手を上に返し、刀刃を左外方に向け、敵の胸部を突き、其足踏みのまゝ体を左へ振り向け、後へ向き、上段にて斬り、直に右へ廻り前面に向き上段にて斬る。
英信流居合目録秘訣(参考) 門入:
 戸口に出入りするの心得也戸口に内に刀をふり上て待つを計知ときは刀の下緒のはしを左の手に取り刀を背てうつむきとどこおり無く走り込むべし我が胴中に切かくるや否や脇指を以抜つけに足をなぐべし
つづく
 

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2018年4月 3日 (火)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録4

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
4.無雙直伝英信流居合目録
外之物之大事  
 1、行連・2、連達・3、逐懸切・4、惣捲・5、雷電・霞
読み解く
外之物之大事の業名から次の伝書に相当する業名を拾い出してみます
1、行連
古伝神傳流秘書抜刀心持之事 行連
 立って歩み行内に抜て左を突き右を切る両詰と同事也
白石元一長谷川流奥居合 行連
 右側の敵を抜き打ちに右片手にて斬りつけ、直ちに刀を返し右方より振り冠り(左手 を添えて)右足を踏み出し左方の敵を斬る。
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 行連:
 左右の者を斬る、右へ振り向くなり、抜打ちに(右の者へ)斬付け直左へ振返りつつ諸手上段に振冠り右足踏込んで(左の者へ)斬込む。
大江正路剣道手ほどき 行連:
 進行中右に斬付け又左を斬る、左足を左横に踏み、上体を稍や左横に寄せ右足を右横に踏み出す時、中腰にて抜き付け、上段にて右を斬る、其足踏みのまま、左に体を返して、上段にて中腰にて斬る。
英信流居合目録秘訣(参考) 行連:
 右を片手打に左を諸手にて切る事も有り是は皆気のりにてする心持ち也、歩み行くうちに刀を抜我が左の方を突き其侭冠て右の方を切是は敵を左右につれたち行く時の事也或我を左右より取こめんとする時抔の事也
2、連達
・連達古伝神傳流秘書抜刀心持之事 連達:
 歩み行内前を右の拳にて突其侭に左廻りに振返り後を切り又前へ振向て打込也
白石元一長谷川流奥居合 連立:
 前後重なりて歩行中、右足を踏み出すと同時に前方の敵を抜き打ちに右片手にて斬りつけ、返す刀にて後方の敵を斬る。
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 連達:
 前後の者を斬る、右手を柄に掛けるなり抜打に(前の者へ)斬付け直ぐ(後の者へ)斬込む。
大江正路剣道手ほどき 連達:
 進行中左を突き右を斬る、右横へ右足を踏み、体を右に避け、刀を斜に抜き、左横を顧みながら刀を水平として左を突き、右へ体を変じて上段にて斬る。
逐懸切英信流居合目録秘訣(参考) 行連:
 右を片手打に左を諸手にて切る事も有り是は皆気のりにてする心持ち也、歩み行くうちに刀を抜我が左の方を突き其侭冠て右の方を切是は敵を左右につれたち行く時の事也或我を左右より取こめんとする時抔の事也
3、遂懸切
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 追懸切
 抜て向へ突付走り行其侭打込也
白石元一長谷川流奥居合 追掛:
 前方を行く敵を追い掛けて斬る、右足にて刀を抜き刀先を返し中段に構え小走りに追い掛け、左足を踏み出したる時振り冠り、右足を出すと同時に大きく真向より斬り下ろす。
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 追掛斬:
 刀尖を前に、柄頭を腹部に引き付け諸手となり小走に前方へ走り往きつつ上段に振冠り右足踏込んで斬込む。
・大江正路剣道手ほどき 
 該当せず
英信流居合目録秘訣(参考) 逐懸切:
 刀を抜我が左の眼に付け走り行て打込但敵の右の方に付くは悪しし急にふり廻り又ぬきはろをが故也
4、惣捲
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 
  業名該当せず 五方切が元であろう
 歩み行内抜て右の肩へ取り切又左より切又右より切又左より切段々に切下げ其侭上へ冠り打込む也
・白石元一長谷川流居合 
 業名該当せず 五方斬りであろう
 (前方の敵を五回に斬る意)右足を出すと同時に左側にて刀を大きく抜くや直ちに上段に取り、先づ右袈裟がけに斬り振り冠り続いて左袈裟掛けに切り、返す刀にて右より胴を払い腰を落として左より足を払い、再び立姿となり右方より上段に取り真向に斬り下ろす。
尾形郷一無双神傳抜刀術兵法
 業名該当せず 五方斬であろう
 (前方に立って居る者を斬る)鯉口を切り左足踏み出し右手を柄に掛け右足を踏み出す同時に刀を引抜刀尖を左後へ突き込み頭上より右肩へ執り対手の左袈裟に斬込み 其刀を右上より振返へし頭上より左肩に執り対手の右大袈裟に斬込み 又其刀を左上より振返し右腕外へ執り腰を低めて対手の左腰より横一文字に斬込み 甲手を返へして左腕外へ執り 更に腰を下げ対手の向脛を横に払い腰を伸しつつ諸手上段に振り冠り(真向幹竹割に)斬り下す。
大江正路剣道手ほどき 惣捲り:
 進行中面、肩、胴、腰を斬る、右足を少し出して、刀を抜き、其足を左足に引き寄せ、右手を頭上へ廻し、右肩上に取り、左手を掛け稍や中腰にて(右足より左足と追足にて)敵の左面を斬り、直に左肩上に刀を取り、追足にて敵の右片を斬り、再び右肩上段となりて、敵の左胴を斬り、再び左肩上段となり右足を踏み開き敵の右腰を目懸け刀を大きく廻し体を中腰となして敵の右腰を斬り、中腰のままにて上段より正面を斬る。(‥一連として早きを良しとす)
英信流居合目録秘訣(参考) 惣捲形十:
 竪横無尽に打振て敵をまくり切る也故に形十と有也常の稽古の格には抜打に切り夫より首肩腰脛と段々切り下げ又冠り打込也
霞:
 俗に撫斬りという、抜き付け、手を上に返して、左面水平に刀を打ち返す、直に上段となりて前面を斬る。
5、雷電・霞八相
・古伝神傳流秘書抜刀心持之事 見当たらず
白石元一長谷川流居合 見当たらず
・尾形郷一無双神傳抜刀術兵法 見当たらず
・大江正路剣道手ほどき 雷電見当たらず
 霞の業名あり、古伝の向払の業を霞と改めたのか、その必要も無いと思われるが理解できません。霞八相については知っていたのか疑問です。
霞:(俗に撫斬という)正面に座して抜き付け、手を上に返して、左側面水平に刀を打ち返す、直に上段となりて前面を斬る。
・英信流居合目録秘訣(参考) 雷電・霞八相:
 雷電霞の二ヶ条当流極秘中の秘にして大事この外に無 請流に心明らかにして敵の働きを見と云教有れ共当流には雷電の時の心亦霞ごしに見るが如くの心の所に大事の勝ある事を教る也 夢うつつの如くの所よりひらりと勝事有其勝事無疵に勝と思うべからず 我が身を先ず土壇となして後自然に勝有 其勝所は敵の拳也 委しき事は印可に有 八相は四方八方竪横自由自在の事也 故に常に事形の修練熟せされば時に臨て其習い出会う事無し 本文には教を広く云亦曰八相に打下ろす所にて大事の勝有則二星也
 小藤亀江の居合目録の手附がどのようなものだったかは判りません。然し英信流居合目録秘訣の外之物大事と業名もその順番もすっかり同じですから目録は英信流居合目録を参考に作成されたと思われます。
 曽田本とは別に、細川家に伝わる伝書にも英信流目録秘訣はあったはずです(木村永寿著 林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流傳書集及び業手付解説P69)。
 細川義昌の道統とされる白石元一、尾形郷一両先生の行連・連立(連達)・追掛(追掛斬)はほぼ同じ手附ですが、古伝神傳流秘書とも英信流目録秘訣とも異なるものもあり、何処かで改変があったのでしょう。
 それにしても、大江正路の業名も業手附も、独創と言っていいのか疑問です。次回は上意之大事で同様の事をやってみます。古伝は何処かでねじ曲がって、バラバラになってそれぞれの道統を歩いている様です。
 雷電・霞などは現代居合では忘れられた剣術の心得でしょう。新陰流がチラつきます。
 
 

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2018年4月 2日 (月)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録3

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
3.無雙直伝英信流居合目録
外之物之大事  
 行連・連達・逐懸切・惣捲・雷電・霞
 
上意之大事   
 虎走・両詰・三角・四角・門入・戸詰
 戸脇・壁添・棚下・鐺返・行違・手之内
 輪之内・十文字
読み解く
外之物之大事の業名から次の伝書に相当する業名を拾い出してみます
1、古伝神傳流秘書抜刀心持之事  
 行連・連達・逐懸切
2、白石元一長谷川流奥居合     
 行連・連立・追掛
3、尾形郷一無双神傳抜刀術兵法  
 行連・連達・追掛斬
4、大江正路剣道手ほどき
 行連・連達・惣捲り・霞
5、英信流居合目録秘訣(参考)
 行連・連達・逐懸切・惣捲形十・雷電・霞八相
上意之大事の業名から次の伝書に相当する業名を拾い出してみます。
1、古伝神傳流秘書抜刀心持之事  
 両詰・三角・四角・棚下・行違
2、白石元一長谷川流奥居合     
 両詰・三角・四角・棚下・虎走
3、尾形郷一無双神傳抜刀術兵法  
 両詰・三角・四角・棚下・虎走・行違
4、大江正路剣道手ほどき
 虎走り・両詰・四方切・門入・戸詰
 戸脇・壁添へ・棚下・行違
5、英信流居合目録秘訣(参考)
 虎走・両詰・三角・四角・門入・戸詰
 戸脇・壁添・棚下・鐺返・行違・手之内
 輪之内・十文字
 業名の対比では英信流居合目録秘訣に記載されている業名と、小藤亀江の目録の業名がぴったり一致します。
 次回は、それぞれの業名の一致したものを、英信流居合目録秘訣の業手附とそれぞれの業手附と並べてみます。
 
 

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2018年4月 1日 (日)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録2

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
2.無雙直伝英信流居合目録
外之物之大事  行連・連達・逐懸切・惣捲・雷電・霞
 
上意之大事   虎走・両詰・三角・四角・門入・戸詰
            ・戸脇・壁添・棚下・鐺返・行違・手之内
            ・輪之内・十文字
 
極意之大事   暇乞・獅子洞入・地獄捜・野中幕
            ・逢意時雨・火村風・鉄石・遠方近所
            ・外之剱・釣瓶返・智羅離風車

居合心持肝要之大事
1.捕手和合居合心持之大事
1.立合心之大事
1.太刀目附事
1.野中之幕之大事
1.夜之太刀之大事
1.閨之大事
1.潜り之大事 戸脇之事
1.獅子之洞出之事
1.獅子之洞入之事
右九ヶ条者深秘之極意也非真実之人者努々不可有相伝者也

無双直伝英信流居合就多年御熱心太刀次悉令相伝□向後嗜専要候若御所望之仁於有之者兼而其之人之取罰文御指南尤可仍許免之状如件

明治三十四年六月十五日  
           谷村樵夫自庸
小藤亀江殿
読み解く
 この目録は明治34年1901年の発行ですから江戸時代の内容を保持しているのか疑問です。然し小藤亀江は谷村派の第十五代谷村亀之丞自雄-楠目繁次成栄-谷村樵夫自庸-小藤亀江の道統から相伝しているものです。
 第一五代谷村亀之丞自雄は第一六代五藤孫兵衛正亮へ相伝し、五藤孫兵衛正亮は第一七代大江正路へ相伝したと云われています。
 大江正路が授与された允可状は、何処からも出てきませんから謎になります。但し大江正路先生の発行したものは公にされています。これは大江正路によって改変されたもので土佐の古伝とは言い難いものです。
 大江正路は下村派の第一四代下村茂市定に師事し、兄弟子には行宗貞義、細川義昌が居るわけで、行宗貞義は曽田虎彦の師匠です。
 大江正路が下村茂市に師事したのは嘉永5年1852年7歳の時で、明治維新1868年の時には16歳で戊辰戦争に出陣しています。
 明治5年1872年20歳の時には土佐藩の常職を解かれ失業、明治10年1877年には師匠の下村茂市が没しています。大江正路25歳の時です。その後職を求め土佐を跡にしている事も長く明治30年1897年45歳の時に高知県尋常中学校の剣術教士となっています。
 其の年第一六代五藤孫兵衛正亮が没しています。
 その後も土佐を離れ47歳ごろに土佐に落ち着いた様です。激動の時代でしょうから飯を食う事が大変だったでしょう。居合の相伝はどの様であったか、残されたものは無く、土佐の古伝が改変されてしまうのもやむおえないのかも知れません。 
 細川義昌の居合は香川の植田平太郎に伝えられ、植田平太郎から徳島の尾形郷一、尾形郷一から広島の梅本三男、梅本三男から広島の貫汪館森本邦生館長に無雙神傳英信流抜刀兵法(梅本三男の授与された允可状には無双神傳抜刀兵法と有ります)として引き継がれている筈です。
 森本邦生貫汪館館長は、一時昭和47年1972年頃白石元一の居合を門人の森務より習い、後昭和50年1975年梅本三男に入門されている様です。
 細川義昌の居合は夢想神傳流の祖と云われる中山博道の師とされていますが中山博道は谷村派第一六代五藤孫兵衛正亮の弟子森本兎久身の居合を習い、細川義昌からの指導はごく限られた時間であったと思われます。
したがって、小藤亀江が相伝した居合目録は是等を意図しながら読み解いて見たいと思います。
 先ず、古伝神傳流秘書の業名と小藤亀江の目録の業名を同定し、白石居合、尾形居合と対比し、現代居合の大江居合を当てがって見ます。
 本来、曽田本その1にある英信流居合目録秘訣を以て解説すべきでしょうが、現代居合との乖離を先に認識したいと思います。
 
 
 

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