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2018年5月

2018年5月31日 (木)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事13麓なる

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
13麓なる
 麓なる一木能色を志り可ほ耳
         於具もま多みぬミよ志野の花
 心妙中勇ノ位不住之妙
 荒磯海の浪間幾王けかつく海士の
         以幾もつき阿へすも能をこそおもへ
 慈園歌二
 柴の戸二にほ者む花ハさも阿ら者あ阿れ
         な可めてけりなうらめし能身や
 
 夫刀術ハ専ラ人二勝事ノミヲ好ム二アラス大変二臨テ生死ヲ明二スルノ術也常二此ノ心ヲ
養ヒ其術ヲ修セズハアルベカラズト古人云エリ我カ道ヲ尽シ家法ヲ以テ命ヲスル所是刀術ノ極意トゾ         林 政詡 誌
 明和元年申歳孟冬吉辰賜之
読み及び読み解く
 麓なる一木の色を知り顔に
         奥もまだ見ぬ三吉野の花
 麓にある一本の木を見て知った顔してまだ見てもいない、、山奥の三吉野の桜の状況を語ることよ 
 武術のへぼ師匠に習うと、形ばかりの指導がほとんどで、決めつけてしまう人がほとんどです。敵のある変化からこうあるだろうと決めつけて誘いに乗ってしまう。
 
 心妙中勇ノ位不住之妙
 心妙(神妙) 人知を逸した現象での勇気は、住まわざる心、いわゆる武術で嫌う居付きをしないこと。居つく事は心も同じと云うのでしょう。
 
 荒磯の海の浪間をかき分かづく海士の
         息もつきあえずものをこそ思へ
 荒磯の海の浪間をかき分けもぐる海士の息もつく暇なく物を思う事も有ろうか。
 波にもまれ、波をかき分けながら、獲物をとる海士の何も考えていない様な自然体でことに応じろ、と教えているのでしょう。
 
 慈園歌に
 柴の戸に匂わん花はさもあらばあれ
         眺めてけりなうらめしの身や
 ひなびた家に咲く花も匂わない事などない 眺めているばかりで此の身が恨めしいことよ。
 慈園は平安から鎌倉時代の天台座主です。この歌は詠み人知らずとも云われます。ひなびた家に美しい乙女がいるのだが、眺めているばかりで、この恋心をどうしたらよいのか何も出来ないこの身が恨めしい。色っぽく詠んでみたのですが、さて武術の歌としてはどの様に教えを受けるのでしょう。
 相手の動きに誘われそうになるのだが、心静かに眺めていれば、と云われそうです。
 
 
 夫れ刀術は専ら人に勝事のみを好むにあらず 大変に臨んで生死を明らかにする術である 常に此の心を養い其の術を修業しないなどあってはならない 古人は言っている 我が道を尽くし家法を以って命を懸ける処これ刀術の極意であると
林安大夫政詡 誌
 
明和元年1764年申歳孟冬吉辰賜之
 その時代の考え方を充分把握出来ているとは言えませんが、この時代でも同じ事だろうと思います。刀術は仕合によって勝ための術ではない。大変に臨んで命を懸けて信じた道を尽くす事である。其の為の修行を怠るな、古人も命がけで我が道を全うする事が刀術の極意であると云う。
 長年にわたり稽古して来たのに年と共に衰える体力気力に打ち負けていたのでは、何のために多くの時間も金も費やしてきたのか疑問を抱かなければおかしい事です。
 年取った高段位の方が、「よくぞ飽きもせずいつまで棒振りしとるんか」と思われているのに、お世辞に「「素晴らしい演武でした、感動です」など言われて、大喜びし、ふるいたったりする。
 高段位を得て下位の者に威張ってみてもそれだけのもので振り返れば虚しいだけでしょう。傍から見ても哀れです。
 居合の業を順番通り覚えただけで、毎日同じことを繰り返すばかりで20年、30年と経て来ても、ちょっと想定が変われば戸惑うようでは何を学んできたのか疑問です。
 
 
 

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2018年5月30日 (水)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事13麓なる

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文
2、當流申伝之大事
13麓なる
麓なる一木能色を志り可ほ耳
         於具もま多みぬ三よし野の花
 心妙中勇ノ位不住之妙
荒磯海の浪間可幾王けかつく海士の
         以幾もつき阿へすも能をこそおもへ
 慈圓歌
柴の戸二にほ者む花ハさも阿ら者阿れ
         な可めてけりなうらめし能身や
夫刀術ハ専ラ人二勝事ノミヲ好ム二アラス大変二臨テ生死ヲ明二スルノ術也常二此ノ心ヲ養ヒ其術ヲ修セズハアルベカラズト古人云ヱリ我カ道ヲ尽シ家法ヲ以テ命ヲス(ッ)ル所是刀術ノ極意トゾ
 
 林 政詡 誌
明和元申歳孟冬吉辰賜之
読み
麓なる一木の色を知り顔に
         奥もまだ見ぬ三吉野の花
 心妙中勇の位に住まざるの妙
ありそ海の浪間かき分けかつぐ海士の
         息もつきあえずものをこそ思え
 慈円歌
柴の戸に匂わむ花はさもあらばあれ
         眺めてけりなうらめしの身や
夫れ刀術は専ら人に勝事にのみ好むにあらず 大変に臨みて生死を明らかにするの術也 常に此の心を養い其の術を修せずはあるべからずと古人云えり 我が道を尽くし家法を以て命を捨つる所を是れ刀術の極意とぞ
 林 政詡 
明和元年申歳孟冬(冬の始め・10月)辰之を賜う

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2018年5月29日 (火)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事12易二曰

曽田本のの1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
12易二曰
 易二曰無思無為寂然不動感而遂通於天下之故
 古詩云眼裏有塵三界窄心頭無事一生寬
 孔子曰匹夫不可奪志
 以ー心 伝―心 教外別伝
 天ー上 天ー下 唯ー我 独尊
 一ー月 萬ー水 二運有天
 生死在命
*
 読み及び読み解く
 易に曰く 思う無く 為す無く 寂然として動かず 感じて遂に天下の事に通ず
 古詩に云う 眼裏に塵あれば三界窄し(すぼくし、せまい) 心頭無事にして一生ゆたかなり
 孔子曰 匹夫の志を奪うべからず
 論語 総大将を虜に出来ても、たった一人の者の志も奪う事は出来ない。
 
 以心伝心教外別伝(いしんでんしん きょうげべつでん)
 禅語で、心を以って心に伝う、教外別伝は言説文字を離れて直接心から心へ伝える。
 
 天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)
 
 一月 萬水 二運天に有
 生死在命(富貴天命)
 論語 生きるか死ぬかは天命である
 
 読みのままでも意味は通じると思います。
 ここに掲げられた漢文は出典が易経、夢想国師語録・論語・禅語などによって述べられています。其の教本は恐らく享保の頃に読まれていた佚斎雩山(いっさいちょざん)の田舎荘子巻下の猫之妙術によるものと思います。
 
 
 
 
 

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2018年5月28日 (月)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事12易二曰

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原本
2、當流申伝之大事
12易二曰
易二曰無思無為寂然不動感而遂通於天下之故
古詩云眼裏有塵界三界窄心頭無事一生寬
孔子曰匹夫不可奪志
以-心 伝-心 教外別伝
天-上 天-下 唯-我 独尊
一-月 萬-水 二運有天
生死在命
読み
易に曰く 思い無く為す無きは寂然(じゃくねん)として動かず 感じて天下の故に遂通す
古詩に云う 眼裏に塵有りて三界窄(せまく) 心頭にことなくは一生寬(ひろし)
孔子曰 匹の夫れ志を奪うべからず
以心伝心教外別伝(いしんでんしんきょうがいべつでん)
天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)
一月萬水二運天に有
生死在命

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2018年5月27日 (日)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事11先師之咄

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
11先師之咄
読み
 先師の咄(ななし)の由 良く知るは耳に五音無きは耳の本体也 故に五音を聞きて違う事無し 常に耳に一音(で)もあれば五音違う 故に五音無きを耳の至善とす 
 口も五味無きは口の本体也 口に五味無き故に能く五味を別ち違う事無し 若し一味にても有れば違う 五味無きは口の至善とす
 人に善悪無きは心の本体也 善悪無き故に善悪を弁えて各誤る事無し 若し之有る時は善悪供に違う故善悪無しを心の至善とす かるが故に至善は心の本体也
 語に云う 好く為す無く 悪為す無く 三の路に順い其の善有るは其の善亡く 過ち無く 莫無く 義の興りに従う 亦云う可も無く不可も無し
 右居合兵法の業形大要覚え候事 此の如く道理をも少し合点せざれば高位大名の師となる事能わず能く能く工夫有るべし
読み解く
 先師(第九代林六大夫守政)の咄であるが、人が生まれながら持っている判断能力といわれる良知(陽明学による)について、耳はもともと五音など無いのが耳の本体である。
 五音とは宮(きゅう)=唇音、商(しょう)=歯音、角(かく)=牙音、徴(ち)=舌、羽(う)=喉音を云うのでしょう。
 それで、五音を聞いて聞き違う事がない、もし常に耳に一音でもあれば五音は違う様に聞こえるだろう。だから五音を持たない耳が此の上もなく善いと云える。
 口にも五味の無い事が口の本体である。
 五味とは仏教でいう処の、乳味、酪味、生酥味、熟酥味、醍醐味だそうです。不勉強でよく解りません。
 甘味・酸味・辛味・苦味・旨味の基本の味位しか知りません。口に五味が無いので能く五味を味わえて間違える事がない。若し一味でもあれば違ったものになるであろう。
 口に五味の無い事がこの上もなく善いと云える。
 
 人に善悪のない事は人の本体である。
 善悪をもたないので、善悪を弁えて過剰になる事がない。もし善悪のどちらかでもあるとすれば善悪供に違うものになるであろう。善悪を持たない事が心にこの上もなく善いと云える。
 そういうわけで、至善は心の本体である。
 語に云う。
 善く為すでも無く、莫が無く、三の路に順じ(???)其の善があれば其の善を亡くし、過も無く、莫も無く、善の興りに従うものである。
 又、云うべきも無く、云うべからざるも無い。
 
 右の通り居合兵法の業形、大要を覚えたならばこの様な道理も合点していなければ高位の大名の師となる事は出来ない。能々工夫する事である。
 ここで、「高位大名の師となる事能わず」の解釈ですが、高い位の大名と読みましたが「高位で大名の師となる」とした方が良さそうです。
 それは武術を極め取り立てられた者の地位は決して高いものでは無かった、一番は柳生但馬でしょう、徳川家で一万石の大名となっています。
 他はせいぜい武士に取り立てられる程度の事でした。それは棒振りが譬え上手であってもそれは芸人に過ぎなかったからでしょう。
 国政に参加できるだけの能力が無かったと云えます。
 土佐の居合も、術理ばかりを追うのではなく、随所に散りばめられている教えに今一度心を開いて見る価値はあります。
 第九代林六大夫守政の咄として、第十代林安大夫が書き留めた老父物語ですが、思い込みに居付かず無の境地で受け留めなければ真実を認識できないと説いています。
 だから、「義の興りに順い可も不可も無い」、此の道理を理解出来なければ大きなことを為す事は出来ないと教えたのでしょう。
 
 
 

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2018年5月26日 (土)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事11先師之咄

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文
2、當流申伝之大事
11先師之咄
 先師之咄之由良知ハ耳二無五音者耳ノ本躰也故二五音ヲ聞テ無違フコト若シ常二耳二一音モ有レハ五音違フ故二五音無キヲ耳ノ至善トス口モ無五味ハ口ノ本躰也口二無五味故二能ク五味ヲ別チ無違フコト若シ一味ニテモ有レハ違ふ無五味ハ口ノ至善トス人二無善悪者心ノ本躰也無善悪故二善悪ヲ弁テ各過ル事無シ若シ有之時ハ善悪供二違故無善悪ヲ心ノ至善トスカルカ故二至善ハ心之本躰也語云無為好無為悪順三之路有其善者亡其善無適無莫義之與従フ亦云無可無不可モ
 右居合兵法事(業)形大要覚候事如此道理ヲモ少シ合点セザレバ高位大名ノ師トナル事不能能々工夫可有
読み
先師のはなしの由 良知は耳に五音無きは耳の本体也 故に五音を聞きて違う事無きは 若し常に耳に一音もあれば五音違う 故に五音無きを耳の至善とす 口も五味無くは口の本体也 口二五味無き故に能く五味を別ち違う事無し 若し一味にても有れば違う 五味無くは口の至善とす 人に善悪無きは心の本体也 善悪無き故に善悪をわきまえて各過ぎる事無し 若しこれ有る時は善悪共に違う 故に善悪無きを心の至善とす かるが故に至善は心の本体也 語に云う 為す無く 悪を為す無きを好む 三の道に順り その善有るは其の善亡きなり 適う無く義莫く之と従う 亦云う可無く不可モ無し
 右の居合兵法業形大要覚え候事 此の如く道理をも少し合点せざれば高位大名の師となる事能わず 能々工夫有るべし

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2018年5月25日 (金)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事10気滅法2

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
10気滅法
2肩敵之拳二當る
読み解く
1、肩敵之拳二當る
 打込む際、相手の拳に我が肩が当たる程に前懸かりになって斬り込んでいくのでしょう。
 甲冑を着た介者剣法を思わせます。
  柳生新陰流の石舟斎宗厳が孫で後の兵庫助利厳に与えた新陰流截相口伝書事(慶長8年1603年)にある「身懸五箇之大事」の二番目に「敵のこぶし吾肩にくらぶべき事」との教えがあります。
 斬り込んだ時大股になり身を低くする、それによって太刀中に身を入れる「刀中蔵の身」となる。
 兵庫助が尾張大納言に印可相伝の際(元和6年1620年)に進上した「始終不捨書」では身を前懸りにして構えては居着いてしまうから、前を豊かにして「直立たる身の位」で、打ち込み勝には「身之懸五箇」を改善しています。この「居合兵法極意秘訣」は改善前の教えによると思われます。
 それにしても、古い教えを一世紀以上も経っているのに習って来た第九代林六大夫は其の侭信じていたのでしょうか。
 
2、右の手短 左のひじ長
 新陰流截相口伝書事「身之懸五箇之大事」を上げておきます。
 第1 身を一重に成すべき事
 第2 敵のこぶし吾肩にくらぶべき事
 第3 身を沈にして吾拳を盾にしてさげざる事
 第4 身をかかりさきの膝に身をもたせ跡のえびらをひらく事
 第5 左のひじをかがめざる事
 これは第5項目の教えでしょう。
 右手は柄の鍔際を握っていますから容易に前に伸ばせます。左手の肘を曲げると刀が前に伸びません。
 右手は少しゆったりと肘を曲げ、左手の肘を伸ばすように心得ろというのでしょう。無双直伝英信流の斬り下ろした左手拳の位置が臍前一拳か一拳半では少々剣先は伸びが少ない様です。
 腰で切る、腹で切る、ならば左拳を引っ張り込まないのでゆったりとした剣先の伸びが期待できます。
 天井をスイープさせてフィニッシュで両拳を臍前に引き込む可笑しな人を見かけます、大抵その場合手打ちです。
 
3、右の足にて太刀を下し左の足にて勝を取る。
 第4項目に当たるのでしょう。右足を踏出し右足の膝に重心を乗せるようにして太刀を打ち込み、左足膝を伸ばして一重身になって勝。
 この文章からは、右足を踏み込んで中墨に打ち込み上太刀になるや左足を踏込み太刀を摺り込んで敵の拳から腹部へ刺突するとも読めそうです。
4、左の肩を向る事・一手字
 左の肩を敵の方に向ける事によって左肩の前に出た一重身となり、敵が左肩に打ち込んで来るのを十文字勝するというのでしょう。
 第1項目で「身を一重に成すべき事」ですから構えの基本は右足前か左足前の一重身を推奨しています。
 是は敵を誘う手立てかも知れないとも思うのです。
 
 「手字種利剣の目付」などという新陰流の教えから、目付は敵の動きを察知する大切なもので手字は「衣の内合して衣文成るを大体の手字と云う也、手裏見は手の内也」十兵衛の月之抄より、ですから目付の場所は敵の両肩から着物の合わせの辺りを遠山の目付をすると云うのでしょう。
5、足一本の事 峯谷二星
 峯谷から類推すれば踏み出す足一本で敵の動きを峰谷の動きで察知して踏込み足一本で切り下ろすとでも読めます。
 新陰流では足を揃えて立ったりするのを嫌う様です。また大きく左右の足を前後に開いて打込めば最も嫌う居着きになってしまいます。
 峯谷は嶺谷、腕のかがみ、両腕の伸び縮を云う、兵法家伝書より。右肘を嶺、左肘を谷。その際の二星は目の付け処でしょう。
 目であり、両拳も目の付け処です。此処では嶺谷である肩から拳の辺りに目付をするのが良さそうです。
6、右におこり左におこり無刀の事
 新陰流截相口伝書事に見られませんが、敵の打ち出す刀が右であろうと左であろうと、そのおこりに合わせて無刀でも応じられるというのでしょう。
 古伝神傳流秘書の大森流居合之事の冒頭に「上泉伊勢守信綱之古流五本仕形有と云う」は新陰流の「三学円之太刀」の五本と思われます。
 居合の業も、組太刀の業も稽古を本気でやっていますと、三学円の太刀がチラついてきて無刀でも同じ事かも知れないなどと思うこの頃です。
 右のヶ条常に我が心中に能く覚えるべき事也
 林六大夫守政が学んだ真陰流の中にこれ等の教えがあったと思われます。
 しかし、兵庫助は古い介者剣法の方法を改め「直立ったる身」に改善しています。土佐に持ちこまれる一世紀以前の改善です。
 ですから、其の侭失伝せずに引き継がれていたら可笑しなことになっていたかも知れません。
 「温故知新(古きを訪ねて新しきを知る)」そんなことを思いながら、柳生新陰流の古伝も其の幾つかの進化した業も合わせて学んでいます。
 柳生春延氏の柳生新陰流道眼に、上泉伊勢守が柳生石舟斎宗厳に訓示した「兵法は時代によって恒に新たなるべし。然らざれば、戦場戦士の当用に役立たず。また忠孝節義の道を践み行うことはできない」と云う。
 まさにその通りであろうと思います。古伝に返るのではなく、古伝を学び現在を見直し本物を見つける事こそ意味のあるものになると信じています。
 手っ取り早く、意味も解らずに人の真似をするだけの人形にはなりたくないものです。

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2018年5月24日 (木)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事10気滅法

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
10気滅法
1、気滅法 1、胴ノ火 1、火縄 1、雨松明伝
居合仮名
1、向拂 1、柄留 1、四方 1、向詰 1、二階下 1、人中
1、介錯 1、打拂 1、弛抜 1、抜打 1、五方切
1、肩敵之拳二當ル
1、右の手短 1、左ノヒジ長
1、左ノ足ニ而太刀ヲ下シ左ノ足二而勝ヲ散
1、左ノ肩ヲ向ル事一手字
1、足一本ノ事
1、峰谷二星
右之ヶ条常二我ガ心中二能可覚事也
読み及び読み解く
1、気滅法(きめつほう) 目録のみ解説見当たらず
1、胴ノ火(どうのひ)   目録のみ解説見当たらず
1、火縄(ひなわ)     目録のみ解説見当たらず
1、雨松明伝(あめの松明伝) 目録のみ解説見当たらず
居合仮名(いあいかりな)
 目録のみで解説は無いのですが古伝神傳流秘書の抜刀心持之事に同名の業手附があるので参考に読み下し文で記する事にします。
1、向拂(むこうはらい)
  向へ抜付返す刀に手を返し又拂ひて打込み勝
1、柄留(つかとめ)
  虎の一足の如く下を留て打込む也
1、四方(しほう) 目録のみ、四角と同じかも知れません。
  四角 抜き左の後の角を突右の後の角を切り右の向こうを請流し左の向を切る又右の向を切る也
1、向詰(むこうつめ)
  抜いて諸手を懸け向を突き打込也
1、二階下(にかいした) 該当せず、棚下と同じかも知れません。
  棚下 大森流逆刀(正座の部附込)の如く立ちて上へ抜き打込む時体をうつむき打込む是は二階下様の上へ打込めぬ心持也
1、人中(じんちゅう)
  足を揃へ立って居る身に添えて上へ抜き手をのべて打込む納るも体の中にて納める
1、介錯(かいしゃく) 目録のみ解説見当たらず
1、打拂(うちはらい)  目録のみ解説見当たらず
1、弛抜(ゆるみぬき)
  前の如く歩み行き敵より先に打を体を少し開き弛して打込み切也
1、抜打(ぬきうち)
  歩み行くうちに抜打に切る敵を先に打つ心也
1、五方打(ごほううち) 目録のみ、五方切かも知れません。
  五方切 歩み行く内抜て右の肩へ取り切る又左より切る又右より切る又左より切る段々に切り下げ其の侭上へ冠り打込む也
 次の八項目は、該当するものは曽田本には見当たりません。真陰流(新陰流)の教えと思われます。
 柳生石舟斎宗厳が柳生平介長厳(兵庫助利厳)に与えた新陰流截相口伝書事に見られるものもあります。その後兵庫助によって始終不捨書が書かれて手直しされています。
1、肩敵之拳二當ル(かたてきのこぶしにあたる)
  ・敵のこぶし吾肩にくらぶべき事
  ・直立たる身の位之事(始終不捨書)
  ・前に及び懸るより反るべき事(始終不捨書)
1、右ノ手短(みぎのてみじかし) 
  ・胸に肘の付く事(始終不捨書) 
  ・脇の下すかせば手太刀のびる事(始終不捨書)
1、左ノヒジ長(ひだりのひじながし)
  ・左のひじを屈めざる事
1、右之足二而太刀ヲ下シ左ノ足二而勝ヲ取(みぎのあしにてたちをおろしひだりのあしにてかちをとる)
  ・足は懸る時も退く時もかたかた浮きたる心持之事(始終不捨書)
1、左之肩ヲ向ル事一手字(ひだりのかたをむけることいちしゅじ)
 ・しゅ字手裏見
1、足一本ノ事(あしいっぽんのこと) 
1、峰谷二星(みねたににせい)
  ・目付について
1、右二ヲコリ左二ヲコリ無刀ノ事(みぎにおこりひだりにおこりむとうのこと)
右之ヶ条常二我ガ心中二能可覚事也(右のヶ条常に我が心中に能く覚えるべき事也)
 土佐に無双神傳英神流居合兵法をもたらした第九代林六大夫守政は、第七代長谷川英信や第八代荒井勢哲に江戸勤番中に指導を受けたと思われます。剣術は真陰流の大森六郎左衛門に上泉伊勢守信綱の新陰流を習ったとされます。宮本武蔵の二刀の剣術も誰かに習ったものでしょう。そのことから推し測ればこの謎の文言は解けるかもしれません。
 居合演舞ならいざ知らず、太刀打や詰合、大剣取や小太刀、棒や和を学ぶならばこの辺りの日本の代表的剣術は、出来ないまでもその大凡の事は知れば運剣の心を学べます。
 竹刀剣道による試合や無双直伝英信流の演舞による現代居合のみでは古伝は理解できません。
 
 
 
 
 
 
 

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2018年5月23日 (水)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事10気滅法他

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文
2、當流申伝之大事
9気滅方 他
 1.気滅方 1.胴ノ火 1.火縄 1.雨松明伝
 
 居合仮リ名
 1.向拂 1.柄留 1.四方 1.向詰 1.二階下 1.人中
 1.介錯 1.打拂 1.弛抜 1.抜打 1.五方打
 
 1.肩敵之拳二當ル
 1.右ノ手短 1.左ノヒジ長
 1.右ノ足二而太刀ヲ下シ左ノ足二而勝ヲ取
 1.左之肩ヲ向ル事一手字
 1.足一本ノ事 1.峯谷二星
 1.右二ヲコリ左二ヲコリ無刀ノ事
 右之ヶ条常二我ガ心中二能ク可覚事也
 

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2018年5月22日 (火)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事9亦一伝

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
9亦一伝
 亦一伝芋カラヲ煎シ其汁二奉書ノ紙ヲヒタシテ干シ上テ後ヒダヲ付其ヒダ二真コモノ黒焼ヲ入置也刀之血ヲ拭二スキト除ク也久シクシテ血コガリ付タル二ハホケヲ吹キカケテヌクフ也
読み
 亦一伝 芋がらを煎じて其の汁に奉書の紙を浸して干し上げて後ひだを付け 其のヒダに真菰の黒焼を入れ置く也 刀の血を拭にすきと除く也久しくして血コガリ付たるにはホケヲ吹きかけて拭う也
読み解く
 亦一伝 里芋の茎を煎じてその汁に奉書紙を浸して干し上げる、そのあと折り目のひだを付けてそのひだに、真菰の黒焼きを入れて置く、刀の血を拭うと綺麗に拭ける。しばらく経っていて血がコガリ付いた(こびりついた)場合は息を吹きかけて拭うのである。
 芋茎(いもがら)は八頭、里芋、赤芽芋などの葉柄で食用にもなります。干してアクを抜き煮付けて食べるとおいしい。
 煎じるとアクが出るからそれに奉書紙を浸すのです。アクはシユウ酸カルシュウムの様ですから血のりとはどの様に反応するのでしょう。
 真菰の黒焼きは水辺に生えるイネ科の植物で黒焼きにして煮付ですから、炭状にするのでしょう。若芽のマコモタケは食用にもなっています。
 この奉書紙・芋茎の煎じた汁・真菰の炭の組み合わせと血のりとの関係が良いのでしょうか。当時の土佐の昔からの言い伝えでしょうか。
 現代では試す術も無いのも」当然の事ですが、戦国期を150年近く過ぎた時代の言い伝えですから首をひねってしまいます。
 

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2018年5月21日 (月)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事9亦一伝

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文
2、當流申伝之大事
9亦一伝
 亦一伝芋カラヲ煎シ其汁二奉書ノ紙ヲヒタシテ干シ上テ後ヒダヲ付其ヒダ二真コモノ黒焼ヲ入置也刀之血ヲ拭二スキト除ク也久シクシテ血コガリ付タル二ハホケヲ吹カケテヌクフ也
読み
 亦一伝 芋茎を煎じてその汁に奉書の紙を浸して干し上げて後襞を付け その襞にマコモの黒焼きを入れ置く也 刀の血を拭くにすきと除く也 久しくして血こがり付きたるには ほけを吹き懸けて拭う也
 

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2018年5月20日 (日)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事8早拭之大事

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
8早拭之大事
 早拭之大事ヒエタル馬糞ヱ太刀ヲ指込候得バイカ様ノノリニテモ其侭ノキ申也詮議之時ナンヲノガル可秘也
読み
 早や拭いの大事冷えたる馬糞へ太刀を差し込み候えば如何様の糊にても其の侭除き申す也 詮議の時難を逃る秘すべし秘すべし
読み解く
 早や拭いの大事 冷えたる馬糞へ太刀を差し込めば 如何様の血糊でも直に除ける 詮議の時など人を斬ってないと言って難を逃れる事も出来る。秘すべきものである。
 馬糞の大部分は繊維カスでしょうから汚れを取るには良さそうです。

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2018年5月19日 (土)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事8早拭之大事

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文
2、當流申伝之大事
8早拭之大事
 早拭之大事ヒエタル馬糞ヱ太刀ヲ指込候得ハイカ様ノノリニテモ其侭ノキ申也詮議之時ナンヲノガル可秘々
読み
 早や拭いの大事 冷えたる馬糞へ太刀を差し込み候らえば 如何様の(血)糊にても其のまま除き申す也 詮議の時難を逃る 秘すべし秘すべし
 

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2018年5月18日 (金)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事7座中

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
7座中
 座中ニ而口論喧嘩何二而モ気遣ノ時ハ小刀ヲ抜テタヽミヱ指込我前二置事出来タル時右之小刀ニテタタミヲハ子上テ我かタテ二スベシ直二敵ヱ打懸テヨシ其マヽフミタオス也深キ大事可秘也
読み
 座中にて口論喧嘩何れにても気遣わしき時は 小刀を抜きて畳へ指し込み 我が前に置く 事出で来る時右の小刀にて畳を跳ね上げて我が楯にすべし 直ぐに敵へ打ち懸けて良い 其の侭踏み倒す也 深き大事秘すべき也
 

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2018年5月17日 (木)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事7座中

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文
2、當流申伝之大事
7座中
 座中二而口論喧嘩何に而モ気遣ノ時ハ小刀ヲ抜テタゝミヱ指込我前二置事出来タル時右之小刀ニテタゝミヲハ子上テ我カタテ二スベシ直二敵ヱ打懸テヨシ其マゝフミタヲス也深キ大事可秘々
読み
 座中にて口論喧嘩何にても気遣いの時は 小刀を抜て畳へ指し込み我が前に置く 事出で来たる時右の小刀にて畳を跳ね上げて我が楯にすべし 直ぐに敵へ打ち懸けてよし 其の侭踏み倒す也 深き大事秘すべき也
読み解く
 座中で口論や喧嘩などあって、不穏な空気が流れる時がある、そんな時は小刀を抜いて畳へ指し込み我が前に置く 刃傷沙汰が起こるならば小刀で畳をはね上げて、畳を盾にしてすぐ打ち懸けて行けばよい。其の侭踏み倒して気を奪うなど深いものがある大事に秘すべきである。
 面白い、策です充分稽古しておかないと上手く出来るか判りません。逆上した相手は何をしてくるか判りませんから先ず防禦の心掛けがあるべきでしょう。
 実戦で使われたものか疑問ですが、現代でも通じる考え方です。ただ、マニュアルに随っていたり、上司の言いなりな人には無関係な事かも知れません。
 

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2018年5月16日 (水)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事6亦暗夜

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
6亦暗夜
 亦暗夜コロビタル者ヲソツジ二切事ナカレ二グル者ヲヲワス夜ハ頭巾二而モ笠二而モ鉢巻ニテモ必二スベシ向ヨク見ル也気遣敷所成ラス鼻紙ヲ一條水二ヒタシ鉢巻之下二冠ル可シクサリ頭巾ヨリツヨキ物也中々太刀ニ而不切秘事也夜中旅行之時ハ高ク唱不調道之真中ヲ行可シ月夜ニワ影ヲ可行敵ヲ月ノ方二可見る大酒ヲ呑ンテワ足不立心得可有其外何事モユダンアルベカラズ
読み
亦暗夜 転びタル者を卒爾に斬る事勿れ 逃げる者を追わず 夜は頭巾にても笠にても鉢巻きにても必にすべし 向う良く見える也 気遣わしき所ならず鼻紙を一條水に浸し鉢巻の下に冠るべし 鎖頭巾より強きもの也 なかなか太刀にても切れず秘事也 夜中旅行の時は高く唱い 調べざる道の真中を行くべし 月夜には影を行くべし 敵を月の方に見るべし 大酒を呑んでは足立たず心得あるべし 其の外何事も油断あるべからず
読み解く
 前回に引き続き暗い夜における心得です。
 亦、暗夜、転んだものを軽率に切ってはならない、逃げる者は追ってはならない。これは何故でしょう、わざと転んで斬りかかってゆくと不意に攻撃される事もあるでしょう。逃げていく者も追ってはならないのは逃げた先に仕掛けがあるかも知れません。見えない事は危険が多くあることを思うべきなのでしょう。
 夜は、頭巾でも笠でも鉢巻きでも必ず着ける事、向うが良く見える、と言っています。どうでしょうか。疑問です。
 気遣わしい所ばかりでなく夜は、鼻紙を一條(一帖の当て字でしょう。海苔一帖は10枚です、鼻紙ならば百枚の束ですが、この一條は良く判りません、和紙ですから繊維も強く厚みもあります10枚あればかなりのものでしょう)水に浸して鉢巻の下に入れて冠る、鎖頭巾より強いものである、太刀ではなかなか切れないもので秘事である。
 夜中旅行の時は高声で歌う事、事前に調べていない道は真中を行くべし。
 月夜には影を後にして行く、敵を月の方に見るべきである。
 大酒を飲んでは足が立たなくなるので其の心得を持て。
 其の外にも何事も油断しない事。
 
 
 

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2018年5月15日 (火)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事6亦暗夜

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文
2、當流申伝之大事
6亦暗夜
 亦暗夜コロヒタル者ヲソツシ二切事ナカレ二クル者ヲヲワス夜ハ頭巾二而モ笠二而モ鉢巻ニテモ必二スベシ向ヨク見ル也気遣敷所成ラハ鼻紙ヲ一條水二ヒタシ鉢巻之下二冠ル可シクサリ頭巾ヨリツヨキ物也中々太刀二而不切レ秘事也夜中旅行之時ハ高ク□(唱)不□(調)道之真中ヲ行可シ月夜二ワ影ヲ可行敵ヲ月ノ方二可見大酒ヲ呑ンデワ足不立心得可有其外何事モユダンアルベカラズ

読み
 亦暗夜 転びたるものを卒爾に切る事なかれ 逃ぐる者を追わず 夜は頭巾にても笠にても鉢巻きにても必にすべし 向こう良く見える也 気遣わしき所ならば鼻紙一條水に浸し鉢巻きの下に冠るべし 鎖頭巾より強きもの也 中々太刀にて切れざる秘事也 夜中旅行の時は高く唱い調べず 道の真中を行くべし 月夜には影を行くべし 敵を月の方に見るべし 大酒を呑んでは足立たず心得あるべし 其の外何事も油断あるべからず

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2018年5月14日 (月)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事5暗夜

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
5暗夜
 暗夜気遣敷所ヲ通時手頃之石ヲ三ッツ四ッツ袖二可入何二テモ向二見ル物ヲ當ル間敷ヲ考テ打可付先之勝也驚所二而此方ヨリ切立追散スベシ亦三四尺程之鉄之クサリノ先二五十目程之玉ヲ付ケテ可持杖二テモ脇指ノサヤニテモ右之クサリヲ付テ四方一面二フリ廻スヘシ皆二敵ヲ打拂二ヨシ第一ハ旅行二ハ半弓ヲ可持辻切強盗二出合時ヨシ
読み
 暗夜気ずかわしき所を通る時 手頃の石を三つ四つ袖に入れるべし 何にても向うに見えるものを当てるまじくを考えて打ち付くべし 先の勝也 驚くところにて此方より切りたて追い散らすべし 亦三四尺程の鉄の鎖の先に五十匁程の玉を付けて持つべし 杖にても脇指の鞘にても石の鎖を付けて四方一面に振り廻すべし 皆に敵を打ち払うによし 第一は旅行には半弓を持つべし 辻斬り強盗に出合う時よし
読み解く
 暗くて何か潜んでいそうなどの気のする夜道を行く時、手頃な石を三つ四つ袖に入れるべきで、何でも向うに見える物に打ち当てることを考えるべきである、先の勝である。驚くところに此方より切りたて追い散らすべし。
 亦、三四尺程の鉄の鎖の先に五十匁程の玉を付けて持つべし。杖でも脇差の鞘でもこの鎖を付けて四方一面に振り回すならば皆敵を打ち払うに良い。
 第一は旅行には半弓を持つべきで辻斬り強盗に打合っても良い。
 此の居合兵法極意秘訣の書かれた明和元年1764年の事です。
 第十代徳川家治の時代です。徳川政権の中期であり、戦国期から一世紀以上経っています。
 それでも治安は不十分で、飢饉や政策の不十分さなどにより各地で農民一揆、打ちこわしも多発し、戦争は無くとも人々の暮らしは楽では無く不満は多かったでしょう。
 農民と武士との谷間のあぶれ者などが、徒党を組んで村に押し寄せた事もあったでしょうし、旅も命がけだったようです。
 無双神傳英神流の成立時期にはそれらの谷間の人々に武術を指導したともいえます。

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2018年5月13日 (日)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事5暗夜

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文
2、當流申伝之大事
5暗夜
 暗夜気遣敷所ヲ通時手頃之石ヲ三ッ四ッ袖二可入何二テモ向二見ル物當ル間敷ヲ考テ打可付先之勝也驚所二而此方ヨリ切立追散スベシ亦三四尺程之鉄之クサリノ先二五十目程之玉ヲ付ケテ可持杖ニテモ脇指ノサヤニテモ右之クサリヲ付ケテ四方一面二フリ廻スヘシ皆々敵ヲ打拂二ヨシ第一ハ旅行二ハ半弓ヲ可持辻切強盗二出合時ヨシ
読み
 暗夜気遣わしき所を通る時手頃の石を三つ四つ袖に入れるべし 何にても向うに見えるものに当てるまじくを考えて打つべし先の勝也 驚く処にて此方より切りたて追い散らすべし 亦三四尺ほどの鉄の鎖の先に五十匁ほどの玉を付けて持つべし 杖にても脇指の鞘にても右の鎖を付けて四方一面に振り回すべし 皆々敵を打ち払うによし 第一は旅行には半弓を持つべし辻斬り強盗に出会う時よし
 

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2018年5月12日 (土)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事4山中

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
4山中
 山中抔二而俄二湯ヲ呑時ワカシ様ノ事金物ナクテモ湯ヲワカス事茶碗二而モヒ杓に而モ水ヲ一杯入其上ヲ布モメン手拭ニテモ紙ナラバ五枚ホドフタ二而ツヨキ焚火之上二而アフレハタチマチ湯ト成ル口伝水ヲヒ杓二汲テイソキ走ル時モ紙二而モ布二而モ包ミ行ケバ道二而コホレズ
*
読み
 山中などにて俄かに湯を飲む時の沸かし様の事 金物無くても湯を沸かす事 茶碗にても柄杓にても水を一杯入れ 其の上を木綿手拭にても紙ならば五枚程蓋にして 強き焚火の上にて炙れば忽ち湯と成る 口伝 水を柄杓に汲みて急ぎ走る時も紙にても布にても包み行けば道にてこぼれず
読み解く
 山中などで、俄かに湯を飲みたくなった時の沸かし方です。湯沸かしの金物など無くても茶碗や柄杓などに水を口切一杯入れて木綿の手拭でも紙ならば五枚程蓋にして強い焚火の上で炙ればすぐに湯と成る。
 口伝に水を柄杓に汲んで急いで走る時も紙でも布でも包んで行けば道中でこぼれる事は無い。
 必要なものでその場に無ければ何でも工夫する事の教えでしょう。
 
 

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2018年5月11日 (金)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事4山中

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣
2、當流申伝之事
4山中
 山中抔二而俄二湯ヲ呑時ワカシ様ノ事金物ナクテモ湯ヲワカス事茶碗二而モヒ杓二而モ水ヲ一杯入其上ヲ布モメン手拭二テモ紙ナラバ五枚ホドフタ二而ツヨキ焚火之上二而アフレハタチマチ湯ト成ル口伝水ヲヒ杓二汲テイソキ走ル時モ紙二而モ布二而モ包ミ行ケバ道二而コホレズ
読み
山中抔にて俄かに湯を呑む時の沸かし様の事 金物なくても湯を沸かす事 茶碗にても樋杓にても水を一杯入れ 其の上を布木綿手拭にても紙ならば五枚ほど蓋にして 強き焚火の上にて炙れば忽ち湯と成る 口伝 水を樋杓に汲みて急ぎ走る時も紙にても布にても包み行けば道にてこぼれず
 

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2018年5月10日 (木)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事3捕者之大事

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
3捕者之大事
 捕者之大事二階住居ナラバ先傘ヲ持上ル可シハシゴ一足二踏上リ口ニテ右之傘ヲサットヒロゲ見ル可シイナヤ其時之考見ハカライニテ打タヲスベシ何二而モ見合二器ヲ持ッテ上ルヨシ敵之色ヲ見事也口伝有
読み
 捕物の大事 二階に住み居るならば 先ず傘を持って上るべし 梯子を一足踏み 上り口にて右の傘をサット広げ見るべし 否や其の時の考え見計らいにて打ち倒すべし 何にても見合いに器を持って上るのがよい 敵の色を見る事也 口伝有り
読み解く
 捕り物の大事 二階に住み着いているならば先ず、傘を持って梯子を一足登り上り口にその傘をサット開けば其の時、相手の様子が思い描けどうすべきかの考えや計らいが出来るので、それを元に打ち倒すべきである。
 何でも場の状況次第で、その辺にある器物を持って上がり敵の様子を先ず探る事である。
 口伝有り、ですが失伝しています。

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2018年5月 9日 (水)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事3捕者之大事

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文
2、當流申伝之大事
3捕者之大事

 捕者之大事 二階住居ナラバ先傘ヲ持上ル可シハシゴ一足二踏上リ口二テ右之傘ヲサットヒロゲ見ル可シイナヤ其時之考見ハカライニテ打タオスベシ何ニ而モ見合二器ヲ持ッテ上ルヨシ敵之色ヲ見事也口伝有
読み
 捕者の大事 二階に住み居るならば 先ず傘を持ち上げるべし 梯子ひと足に踏み 上がり口にて右の傘を広げ見るべし いなや其の時の考見計らいにて打ち倒スベシ 何にても見合いに器を持って上るよし 敵の色を見る事也 口伝有り

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2018年5月 8日 (火)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事2閨之事

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
2閨之事
 閨之事不案内成所二而ハ刀ヲ抜鞘口三寸ホドノコシ居ナガラシヅカ二四方ヲ振サクル可シ九尺四方其ママ何事モシレ申候
読み
 閨之事 不案内なる所にては刀を鞘口三寸ほど残し 居ながら静かに四方を振り探るべし九尺四方そのまま何事も知れ申し候
読み解く
 閨(ねや)の事、閨の事と云えば男女の房事を云いますが、此処では寝所とでも読めばいいのでしょう。
 初めての処で暗くて様子がわからない所では、刀を鞘口三寸程残して抜切出し下緒を持って その場で静かに四方を振り廻し探って見れば 九尺四方そのまま何事か有るか無いか知れるものである。

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2018年5月 7日 (月)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事2閨之事

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文
2、當流申伝之大事
2閨之事
閨之事不案内成所二而ハ刀ヲ抜鞘口三寸ホドノコシ居ナガラシヅカ二四方ヲ振サクル可シ九尺四方其マゝ何事モシレ申候

読み
 閨之事 不案内なる所にては刀を抜き 鞘口三寸ほど残し居ながら静かに四方を振り探るべし 九尺四方そのまま何事も知れ申し候

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曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事1門戸出入之事

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
1門戸出入之事

 門戸出入之事夜中ウタガワ敷所二而ハ先足ヨリ先ヱ可出ス刀鞘供二ヌキカケテ我首之上二カフリテ出入ス可シ三方ノ(業ワイ)ワザワイ止ルナリ其上ワ時二自分自分ノハタラキ有ルベシ
*
 読み
 門戸出入之事夜中疑わしき所にては先ず我が足より先へ出すべし 刀鞘供に抜きかけて我が首の上に被りて出入すべし 三方の禍止まるなり 其上は時に自分自分の働き有るべし


 読み解く
 門戸を出入する事で、夜中疑わしき所にては先ず、我が足から先へ門戸の中に出すべし 刀を鞘と共に抜きかけて我が首の上に被りて出入するものである。
 前右左の三方の禍は止まる。その上は時に自分自分の働きを持つべきである。

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曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文2當流申伝之大事1門戸出入之事

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、當流申伝之大事
1門戸出入之事
 門戸出入之事夜中ウタガワ敷所二而ハ先我足ヨリ先ヱ可出刀鞘供二ヌキカケテ我首之上二カフリテ出入ス可シ三方ノワザワイ止ルナリ其上ワ時二自分自分ノハタラキ有ルべし
読み
 門戸出入の事 夜中疑わしき所にては 先ず我が足より先へ出すべし 刀鞘ともに抜きかけて我が首の上にかぶりて出入すベし 三方の禍止める也 其の上は時に自分自分の働き有るべし

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2018年5月 6日 (日)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く1老父物語5雷電その3

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
1、老父物語
5雷電その3
 惣躰足を踏み付けずに躰のいつかぬ様に浮きうきと立って右の事を行うべし敵と気分のくいあわぬ様に我はてきと別々と成る心也
 敵は〆合わせうとするを此方わ夫々移らすふわりと出合ふよしふわりとせねは右云う夫々の変出事無し
 考えるべし右のはたらきを敵がすれば此方の負けとなる事の上にて是より外の仕筋無深く工夫あるべし
 修行のこうはくと勇気とおく病と此二つのちがいばかり也
 此所は我と得道すべし外人より教がたし我が心に合点して無理に事をせず気分一ぱいにはたらき見るべし
 此上にいかぬはふたんれんか心まとひえ合点せぬか吾おく病か真剱の時は天命天運外になし
 當流印可居合柄口六寸の勝軍用の剱是口伝免べきこと此外無し
  この部分の老父物語は、足の踏み方を解いています。前回の仕筋を満足する為には足踏みは踏み付ける様ではダメだと云います。体も居付くことを嫌って浮きうきと立てと言っています。
 居付けば即座に変に応じられないものです。竹刀剣道を習われた方はどうした理合なのか、歩み足の時は爪先を床に押し付ける様にして足先から進み体は遅れて踏み出した足に乗って行きます。爪先で滑り出て、爪先を蹴って前進する、何とも不思議な歩行です。
 防具を付けた試合では、右足前で左足踵を浮かし、右足から飛び込み左足が追い足となって居付かない様に飛び込んで竹刀を振っています。
 速さと強さに頼らない前回の業の動作では、足先を浮かし踵を床から離さない浮き浮きとした摺足で居付かない事で成り立ちます。
 
 敵は自分の業に掛かる様に我を誘導して来るので、何をするか分からない「フワリとした出合い」を心懸けろ。
 是等を考えないで、敵が行えば此方の負けと云います。古流剣術は「かたち」バカリ出来ても術が決まらなければ斬られてしまうのです。
 全身が其の業をなすために活躍して呉れなければならないのです。
 修行の厚い薄い、勇気と臆病の二つの違いを理解しろと云いています。修行を重ね本物を身に付け勇気をもって応じろというのでしょう。
 
 この心得は自分で得道することであって他人では教えられない、自分の心で合点せよと云います。
 できもしないのに無理しても役に立たない、今の力を出し切るだけだ、その上でダメなのは、鍛錬足らずか、心が迷い、合点して居ないか、臆病かであろう。
 真剣での勝負では天命天運以外に無いよと突き放されます。
 当流の印可は居合に依る柄口六寸の軍用の剱である、是は口伝だから、このほかには無い。この教えの通り修行せよと云います。
 この無双神傳英信流居合兵法の失念した極意「柄口六寸は敵の柄口也」別のところで読み解きます。

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曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く1老父物語4雷電その2

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
1、老父物語
4雷電その2
 雷電 両方八相にて打合敵我が右をうくれば亦左え打所を此方より打落し跡え引き敵打をはずし亦引上げ下げ曲尺合心に能々修行無くては成り難し
 太刀おっ取てするするとゆく故切ればきるべし切らずば切るまじ
 亦するすると行かずして身を沈み車にかまえ敵切ってかゝる其拍子をうけず其間合を勝事我心に浮み我より出づべしと知るべし
 亦太刀をあだ切をして二の太刀にて勝位も有是も我より気にのりてゆくべし
 亦相懸にて敵来る時先に敵の太刀をころして勝位有古人和卜刀とも云えり
 亦敵先に切って懸る時左右えひらき勝位有り、みな我気のはたらき也
 亦太刀を敵え差懸切らせて引きすかして跡を切位有
 亦時によりて青眼にかまえて身を能くかこい敵より切一度にすり込鍔きわにて勝位有
 亦敵打時我が太刀をかぶり請又はうけ流して勝位有
 亦敵打時身をしずみちんたいにて敵の手首を打払いて勝位有
 亦中墨を打ち払ひて勝位も有
* 
 ここは、雷電についての様々な展開を書いているようです。然しよく読んでみると前回までの二刀によるものとは違う様です。
 両方八相に構え打ち合う、敵我が右を打って来るので請ければ、亦左へ打込んで来る処を、此方から打ち落してしまい、後に退て敵の打ちを外し、亦上、下と打ち合う間合いの心持ちは能々修行しなければ会得し難いものである。
 太刀を取ってスルスルと間に接するので、切れば切る、切らずば切らずの心持ちである。
 亦、スルスルと行かずに、身を沈めて車に構える、敵切って懸かるその拍子を敵刀を受けずにその敵の切って来る間合いを期して勝事、是は我が心に浮かび上がりむしろ我から斬りかかって勝つものと知るべきである。敵の斬り間は我が斬り間です。車に構えれば左肩を敵にさらす様な構えですから敵が左肩に斬り込んで来る拍子に敵の小手に斬り込み勝。
 是は真陰流(新陰流)の三学円の太刀一刀両断を思わせます。
 
 次の亦、「太刀をあだ切をして二の太刀にて勝」は、八相から大きく斬り込む風にして、敵が受けずして外すや、空を斬った太刀を残して誘いう、あるいは斬り流して誘い、ここぞと斬り込んで来る処を筋を替って斬り込み勝。
 これも真陰流(新陰流)の九箇の必勝か逆風であろうと思います。
 
 次の亦は「古人和卜とも云えり」と業名を先に出しています。これも真陰流(新陰流)の九箇の太刀の四本目和卜であれば敵は上段から我が青眼に構える左拳に打ち込んで来るのを、太刀を上げずに打ち落し敵の喉に切先を付けて勝。打ち込んで来る敵の太刀に十文字に乗って打ち落すとでも言ったらいいのでしょう。太刀を上げて叩き落すのでは、落すと同時勝にはなれません。
 
 次の亦、「敵先に切って懸る時左右え開き勝」は高く八相に構える左肘を斬って来るので左肘を引き付けて外して右に踏込み左と踏込み、打ち外された敵の左拳を上から切り下ろす。元に戻って、左肘を再び深く切って来るので左足を左前に踏込み体を左に披き上から敵の右腕に斬り下ろす。
 これは真陰流(新陰流)の天狗抄の花車とも言えます。「みな我気のはたらき也」と添えられています。敵の太刀に触れる事無く、外すや斬るの一拍子です。
 次の亦、「太刀を敵え差懸切らせて引きすかして跡を切る」この「太刀を敵え差懸け」がどのようなものかで悩みます。竹刀剣道などでは、敵に突き込む様にして払わせて其の拍子に乗って打つ、などの事も有るでしょう。
 ここは、真陰流(新陰流)の業の様ですから、太刀を払わせるのではお粗末です。そこで敵に太刀を持った拳ごと差し懸け、ここぞと拳に切り込んで来るのを外すや斬り込む、九箇の太刀の十太刀かくねり打ちが該当しそうです。
 次の亦は、「時によって青眼に構えて身を能く囲い敵より切一度に摺り込み鍔際にて勝」は青眼ですから真陰流(新陰流)であれば、切先は敵の左眼に付け、左拳は左脇前、右拳は正中線上でしょう。
 是で身を能く囲い、になりました。敵より左拳を切って来るので其の拍子に先ほどの和卜の要領で敵刀を落とし鍔際から摺り込み喉を突く。これは天狗抄の明身の様です。
 次の亦は、「敵打時我が太刀をかぶり請亦はうけ流して勝位有」といいます。敵が打ち込んで来るのを請けて廻し打ちして、あるいは請けるや請け流して打込むのでしょう。いずれも敵の打ち込む刀を受ける拍子を捉えて打ち込む、のですがこれは真陰流(新陰流)の基本でしょう。
 廻し打ち、はね打ち、によるものの様です。
 次の亦は、「敵打時我身を沈み沈躰にて敵の手首を打ち払ひて勝」是は先ほどの九箇の十太刀のくねり打ち、あるいは三学円の太刀の半開半向で青眼に構えた左拳を切って来るので左手を右上腕に引き付け敵の斬り込みを外すや腰を落とし膝をぐっと下げる様にして敵の手首を斬り払う。
 次の亦は、「中墨を打拂ひて勝」。この中墨の言葉は中心軸(正中線)と云えばいいのでしょう。真陰流(新陰流)の使いでしょう。これは抜けがありすぎて思いつくことが出来ません。
 新陰流の独特の「合し打」が語られていません。双方上段から真向に斬り下ろします。敵が我が真向に打ち込んで来るのをわずかに遅れて同様に斬り込み敵太刀を打ち落して敵の真向を斬り下ろす極意業です。「中墨を打拂う」の払うが気になります。
 此処までの読み解くは、この古伝を研究するに当たり、尾張柳生新陰流の名古屋春風館道場の関東支部長赤羽根龍夫、大介父子に入門し学んでいます。
 江戸初期から中期の他流にも同様の業は存在するかもしれませんが、土佐に持ち込まれた無双神傳英信流居合兵法は第九代林六太夫守政が江戸で身に付けたもので、剣術の師匠は真陰流の大森六郎左衛門と明記されています。
 真陰流・新陰流の違いは不勉強ですが上泉伊勢守信綱の流であれば柳生新陰流が脈打っていても間違いないでしょう。
 
 
 
 
 
 
 
 

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曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く1老父物語3惣捲

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
1、老父物語
3惣捲
 総捲 片手に持打込左の手に而とらゆるつりあい大事
*
 この短い文章は雷電の続きかも知れません。
 日本刀はこの時代太刀を両手で持つものとして作られています。平安時代には片手打ちの太刀も使われていたかと思いますが、敢えて「片手に持ち打込」・「左の手に而とらゆる(捕ゆる)」・「つりあい(釣合)大事」と右手に太刀、左手に小太刀を示唆してその扱いは左右(太刀と小太刀)の釣合いが大事と云うのです。
 前回の雷電の二刀の構えは無形から、小太刀で左眼を差し、太刀で右眼を差す、小太刀の切先に太刀を乗せる様にして肩の高さ位で詰めていく、円明流の円曲の構えをして見ます。
 相手は我が円曲の構えで攻めて来るので、太刀と小太刀の交点を上段から叩き落としに来る。
 我は、円曲を解いて交点を開き相手の太刀に空を斬らせる、相手再び上段に振り冠らんとする所を小太刀で押さえ、同時に太刀で相手の左面なり首を打つ。
 この左右の釣合が大切だというのでしょう。
 小太刀で相手の打込みを受けるとか、小太刀で相手の振り上げんとする太刀を押えるなど小手先の事ではすぐに崩されてしまいます。
 左の手の内はもちろんの事、切先から腕、肩、背骨、腰、膝、足までが十分働かなければ請け太刀にはなりません。
 請けるや否や、右手の太刀で思う所に斬り込んで制するわけですからその釣合いは自得する以外に有りません。
 稽古では易しく打込んでくれますが、それでは術を得る事は出来ず、形ばかりの真似事になってしまいます。
 形を申し合わせの演武位に考える人には「かたちをまねられてもくずされる」事が理解できないでしょう。
 形は本来剣術の術理を充分稽古し身に付けて、即座に応じられる術を学ぶものです。
 形に依る術理を疎かにした者が勝てるのは、「強くて速い動き」ばかりです。これでは、年と共にたちまち元気旺盛な若者に打ち負かされてしまうか、体を壊して役立たずになってしまうでしょう。そんなものは武術ではありません。
 武術は死ぬまで進化しなければ、意味の無い棒振りです。

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曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く1老父物語2雷電その1

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
1、老父物語
2雷電その1
 雷電 片手に持ひっさげ敵の両目へ突込むや否や跡へ引き 亦 敵打ちかくる処を請込 敵の右の足を打ちはずし打也 是極一刀石甲万字軍用の太刀 口伝大事
 この雷電は片手で刀を持ち、右手に太刀、左手に小太刀を持ち無形の構えを想像させますです。そうでなければ「敵の両目へ突き込む」に続きません。
 僅かに右足前、右手に太刀を切先を右足の線上、左手に小太刀を切先を左足の線上に引っ提げて立つ。
 スルスルと間を詰め乍ら小太刀の刃を外向けにして相手の右眼に付け、太刀も同様にして相手の左眼に付けて間境に至りぐっと右足を踏み込み突き込むや否や右足を退いて間を外す。
 相手打たんとする所を間を外されて右足を踏み込み、我が頭上に打ち込んで来る処を左足を踏み出し同時に小太刀で相手の太刀を左半身で請け、右足を踏み替え右半身で相手の右足膝に打込み勝。
 「敵の右の足を打ちはずし打也」の処は、相手の右足を「打ち払う様に打つ」と解釈すれば、体を右、左と躱しながら応じる。
 是、極め(是極)の一刀である、石甲は折甲で体当たりする。
 万字は卍、四方八方とも受け取れます。
 軍用の太刀は、想いが及びません。
 口伝があるからよく聞いて置けとでもいうのでしょう。
 
 二刀であれば、宮本武蔵を描きます。此の当時の真陰流が柳生新陰流であれば、尾張柳生に伝わる宮本武蔵の円明流が近そうです。
 

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曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く1老父物語1

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
1、老父物語
読み解く
 「老父物語を書付置久しき事故失念之事多しあらまし此の如覚候儘記申也」
 この書き出しで始まる「居合兵法極意秘訣」は難解です。何を言っているのかさっぱり解らず、曽田先生の文字とにらめっこするばかりです。
 読めても意味が解らないのは、「かたちは出来ても剣術にならない」のと同じです。何処を斬っているのか不思議な居合みたいです。言われた通りやっているのにぼこぼこにされこれでは、かたなど無い方がましです。
 この居合兵法極意秘訣を書き残したのは林政詡記「明和元申歳猛冬吉辰賜之」と末尾の奥書があります。
 土佐の居合の第十代林安大夫政詡が之を書いて明和元年申歳1764年甲申(つちのえさる歳)猛冬吉辰(もうとうは10月の辰の日)に、第十一代大黒元右衛門清勝が之を第十代林大夫政詡から賜ったのでしょう。
 老父とは第十代林安大夫政詡の父第九代林六大夫守政の事でしょう。九代が語ってくれたことを十代が思い出しながら書いて十一代に贈ったものなのでしょう。
 老父の第九代林六大夫守政は寛文2年1662年生まれ享保17年1732年に70歳で亡くなっています。
 第十代林林安大夫政詡が「居合兵法極意秘訣」を書き記したのが明和元年1764年ですから、第九代林六大夫守政の死後32年後の事になります。
 「久しき事故失念之事多し」も素直な書き出しです。
 「あらまし此の如く覚え候儘記し申す」大凡このようだったと覚えているまま書いておくよと言います。
 神傳流秘書は業の手附で技の手順などを書きあらわしたものですが、これは日常の武士の心得や業の術理を述べています。
 現代居合では、指導出来る人も無く学べない、戦国時代の名残を持つ江戸中期の心得や今では迷信扱いされることなども含まれています。
 始祖林崎甚助重信公も長谷川英信や荒井勢哲なども、城主でもなく主を持たない武士と農民の堺を生きた武術家だったと思われますのでその身分は低いもので高度な戦術や政治論には至っていません。林六大夫守政も料理番です。
 読み進みますと、剣術の術理に於いては学ぶべき内容が豊富に書き込まれています。第九代林六大夫守政の剣術の師匠は大森流の創始者大森六郎左衛門です真陰流(新陰流?)がチラつきます。
 宮本武蔵の二刀の心得も何処で誰に習ったのかチラつきます。
 神傳流秘書の大森流居合之事の書き出しに「此の居合と申すは大森六郎の流也、英信に格段意味相違無き故に話して守政翁是を入れ候、六郎左衛門は守政先生剣術の師也、真陰流也、上泉伊勢守信綱之流五本の仕形有と言う、或は武蔵守卍石甲二刀至極の伝来守政先生限りにて絶(曽田メモ 此の五本の仕形の絶えたるは残念也守政先生の伝書見当たらず)」
*
上泉信綱之流五本は恐らく三学円の太刀による五本(一刀両断・斬釘截鉄・半開半向・右旋左転・長短一味)でしょう。柳生新陰流ならば時代的には古流の三学でもその江戸遣でも尾張遣でも可能ですが真陰流ならば戦国期の名残の濃いものかも知れません。
 「思いつくままに」読み進んでゆきます。
 
 

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2018年5月 5日 (土)

曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文1老父物語2読み下し

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文
1、老父物語原文
2読み下し
 老父物語を書き付け置く、久しき事故失念の事多し、あらまし此の如く覚え候まま記し申す也
 雷電、片手に持ち引っ提げ敵の両眼へ突き込むや否や跡へ退き亦敵打かくる処を請込、敵の右の足を打弛し打つ也
 是極一刀石甲万字軍用太刀口伝大事
 惣捲り片手に持ち打込み左の手にて捕らゆる、釣合い大事
 雷電、両方八相にて打ち合う、敵我が右を打ち、受ければ亦左へ打所を此方より打ち落し跡へ退く、敵打つを外し亦打つ、引き上げ下げ、曲尺合心に能々修行なくては成り難し、太刀おっとってスルスルと行く、敵切れば切るべし切らずば切るまじ。
 亦スルスルと行かずして身を沈み、車に構え敵切って懸かる其拍子を受けず其間合いを勝事我心に浮かび我より出べくと知るべし
 亦太刀をあだ切をして二の太刀にて勝つ位も有り、是も我より気に乗りて行くベシ。
 亦相懸かりにて敵来る時、先に敵の太刀を殺して勝位有り、古人和卜刀とも云えり
 亦敵先に切って懸かる時左右へ開き勝位有り皆我が気の働き也
 亦太刀を敵へ差し懸け切らせて引き空かして跡を切る位有り
 亦時に依りて青眼に構えて身を能く囲い敵より切一度に摺り込み鍔きわにて勝位有り
 亦敵打つ時我が太刀を冠り請け、亦は請け流して勝位有り
 亦敵打つ時我が身を沈み沈体にて敵の手首を打拂いて勝位有り
 亦中墨を打ち払いて勝位も有り惣躰足を踏み付けずに躰の居着かぬ様に浮き浮きと立って右の事を行うべし、敵と気分の喰い合わぬ様に我は敵と別々となる心也、敵は〆合わせようとするを此方は夫々に移らす、ふわりと出合うよし、ふわりとせねば右云う夫々の事出る事無し考えるべし。
 右の働きを敵がすれば此方の負と成る事の上にて是より外の仕筋無し、深く工夫有るべし。
 修行の厚薄と勇気と臆病と此の二つの違いばかり也。此の所は我と得道すべし、外人より教え難し、我が心に合点して無理に事をせず、気分一杯に働き見るべし、此の上に行かぬは不鍛錬か心惑い得合点せぬか吾臆病か真剱の時は天命天運外に無し、當流の印可居合柄口六寸の勝、軍用の剱是口伝、免るべき事この他に無し。

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曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文1老父物語1

曾田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文
1、老父物語
1老父物語
 老父物語ヲ書付置久敷事故失念之事多シ荒増如此覚候侭記申也
 雷電、片手二持ヒッサケ敵ノ両眼ヱ突込否跡ヱ引亦敵打カクル処ヲ請込敵之右ノ足ヲ打ハズシ打也是極一刀石甲万字軍用太刀口伝大事
 惣捲片手二持打込左ノ手二而トラユルツリ合大事
 
 雷電両方八相二而打合敵我ガ右を打ウクレバ(受クレバ)亦左ヱ打所ヲ此方ヨリ打落シ跡ヱ引敵打ヲハヅシ亦打引上ゲ下ゲ曲尺合心二能ク修行ナクテハ難成
 太刀於ッ取テスルスルトユク敵切レバキルベシ切ラズバ切ルマジ亦スルスルト不行而身ヲ沈ミ車二カマエ敵切ッテカヽル其拍子ヲウケズ其間合ヲ勝事我心二浮ミ可出ッ與我知ベシ
 亦太刀ヲアダ切ヲシテ二ノ太刀二而勝位モ有是モ與我気二ノリテ行ク可シ
 亦相懸二而敵来ル時先二敵ノ太刀をコロシテ勝位有古人和卜刀トモ云ヱリ
 亦敵先二切ッテ懸ル時左右ヱヒラキ勝位有リ皆我気ノハタラキ也
 亦太刀ヲ敵ヱ差懸切ラセテ引キスカシテ(空ヲ切ラセテ)跡ヲ切位有
 亦與時而青眼二カマエテ身ヲ能クカコイ敵與切一度二スリ込鍔キワニテ勝位有
 亦敵打時我ガ太刀ヲカフリ(冠)請亦ハ受ケ流シテ勝位有
 亦敵打時我身ヲシズミチンタイニテ敵之手首ヲ打拂ヒテ勝位有
 亦中墨ヲ打拂ヒテ勝位モ有
 惣体足ヲ踏不附躰ノイツカヌ様二浮キウキト立ッテ立右之事ヲ行フベシ敵ト気分ノクヒアワヌ様二我ハテキト別々ト成心也敵ワ〆合ワセウトスルヲ此方ワ夫々移ラスフワリト出合フヨシフワリトセ子ハ右云夫々ノ変出事無シ可考右之ハタラキヲ敵ガスレバ此方ノ負ト成ル事ノ上ニテ是ヨリ外ノ仕筋無深ク工夫有ㇽ可シ
 修行ノコウハク(厚薄)ト勇気トオク病ト此二つノチガイバカリ也
 此所ハ我ト得道スベシ外人ヨリ教ガタシ我ガ心二合点而無理二事ヲセズ気分一パヒ二ハタラキ見ル可シ此上二イカヌワフタンレン(不鍛錬)カ心マドヒヱ合点セヌカ吾ヲク病カ真剣之時ハ天命外二ナシ當流ノ印可居合柄口六寸ノ勝軍用ノ剱是口伝可免事此外無シ
読み次回
 

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曽田本その1の5居合兵法極意秘訣原文書き出し

曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣原文・読み解く
書き出し
目録口授覚
    山川幸雅
印可口授覚
 
居合兵法極意秘訣
(英信流居合口授秘訣)
(戦火の為原本焼失せるならん 写本であるが恐らく之が原本だろう)
読み解く
 昭和20年7月高知への米軍による無差別爆撃によって原本は失われ、是が原本だろうと曽田虎彦先生は書き込まれています。
 曽田先生は戦後昭和25年1950年に亡くなられています。
 その後昭和57年1982年に夢想神傳流の木村栄寿先生によって細川家から借りられた伝書を元に発行された「林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流傳書集及び業手付解説」で、此の伝書も新たに陽の眼を見ています。
P65~P92に相当し「老父物語を書置・・」に始まるものです。
 お陰様で、曽田本との対比も出来、木村栄寿本は解説がありませんので、ここで拙いながら解説を施し、土佐の居合の根元に触れる事が可能となり後世に引き継げる武術の有り様を目の当たりに出来ます。
 既に神傳流秘書の居合の解説などに先取りさせて解説をしておりますが改めて書き下ろして見たいと思います。
 
 

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2018年5月 4日 (金)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録後書

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
後書
右九ヶ條者深秘之極意也非真實之人者努々不可有相伝者也
無雙直伝英信流居合就多年御熱心太刀次悉令相伝□ 向後御嗜専要候御所望之仁於有之者兼而其之人之取四罰文御指南尤可仍許免之状如件
 明治三十四年六月十五日  
 谷村樵夫 自庸
 小藤亀江殿
読み解く
 右九ヶ條は深秘の極意也 真実の人に非ざれば努々相伝有るべからずのものなり。
 無双直伝英信流居合を多年御熱心に就き太刀次悉く相伝せしむ 向後 お嗜み専ら要し候 御所望の仁之有るに於いては かねてその人の四罰文を取り御指南し 尤もにつき免許の状よって件の如し
 明治三十四年(1901年)六月十五日
 谷村樵夫 自庸
 小藤亀江殿

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2018年5月 3日 (木)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録27獅子之洞出之大事28獅子之洞入之大事

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
23無雙直伝英信流居合目録
居合心持肝要之大事
1、捕手和合居合心持之大事
2、立合心之大事
3、太刀目附事
4、野中之幕之大事
5、夜之太刀之大事
6、閨之大事
7、潜り之大事戸脇之事
8、獅子之洞出之事
9、獅子之洞入之事
読み解く
 獅子洞入、獅子洞出として古伝に有ります。
 獅子洞入
 是以戸口抔を入るの習い也其の外とても心得あるべし
 或は取り籠り者抔戸口の内に刀を振り上げて居るときは容易に入る事不能
 其の時刀を抜いて背に負うたる如くに右の手にて振り上げ左の手にて脇差を下げ俯きて戸口を入るべし
 上より打込めば刀にて防ぎ下をなぐれば脇差にて留る、向うの足をなぐべし
 獅子洞出是以て胴出入の心得を知らす也
戸口などを出入する場合の心得として、入り口の奥で刀を振り上げて待つ敵が居る途察したらば、刀を右手に持って背に負う様に持ち、脇差は下げて俯いて戸口を入る。
 上から切り下ろされたならば刀で防ぎ、下をなぐってきたら脇指で留める。相手の足を薙ぐべし。
 出入共に使える心得である。
 
 

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2018年5月 2日 (水)

曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録26潜り之大事戸脇之事

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
23無雙直伝英信流居合目録
居合心持肝要之大事
1、捕手和合居合心持之大事
2、立合心之大事
3、太刀目附事
4、野中之幕之大事
5、夜之太刀之大事
6、閨之大事
7、潜り之大事戸脇之事
8、獅子之洞出之事
9、獅子之洞入之事
・読み解く
古伝では「泳之大事 附 戸脇」があります。
 旅にても常にても夜寝るに気がかり感ずる其の家に戸框抔あらば、其の戸框の内に手水鉢か亦桶の類にても置くべし、不意に入り来る者は是につまずき騒動するなり其所を仕留る也
 惣じて首より先へ入るをきろう足より先へ入るべし
 
 附けたり、戸脇と云うは夜中に戸口を入るに必ず内裏我を切らんと心懸けて戸脇に振り上て居ると思うときは、直に戸口を入る事無く、杖抔を持合たらば其れをちらりと内へ差し出し見べし、もし内に待ち設けて居るときは夜中の事なれば必ず其れに切り付くべし杖を出して見てかっちりと何ぞ當らば其のまま内に飛入るべし
 猶予否やする時は害有りかっちりと當るや否や飛び入るときは二の太刀をかえすに暇無き故害せらるる事なし
 潜りの大事なのか泳ぎの大事なのか、何れでもない夜中に戸口を中に入る心得です。戸の框の辺りに手水鉢や桶があれば置いて、不意に踏み込んで来てもつまずいて騒ぐので其処を斬る。大方首から入らずに足から入って来るものである。
 附けたりとして、戸脇では中に入ろうとする時、刀を振り上げて待ち受けていると思う時、直ぐに入らずに杖などを持って居たならば、それをちらりと差し出して見る。もし待ち受けているならばそれに切りつけて来るので、かちりとあたってくれば、其のまま飛び込んでしまう。
 敵は二の太刀を振るう暇がないので害せられることはない。
 

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曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録25閨之大事

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
25無雙直伝英信流居合目録
居合心持肝要之大事
1、捕手和合居合心持之大事
2、立合心之大事
3、太刀目附事
4、野中之幕之大事
5、夜之太刀之大事
6、閨之大事
7潜り之大事戸脇之事
8、獅子之洞出之事
9、獅子之洞入之大事
読み解く
6、閨之大事
 古伝「居合心持肝要之大事」の5番目に「閨之大事」があります。
 旅抔に泊る時夜中気遣敷時か又常にも用心有る時は、先ず笄隠しを用べし、笄隠しと云うは行燈の土器に楊枝を横に渡し笄を火の上にそっと置く也、火消たる如し、入用なれば笄を除くれば火明か也。
 扨其間に戸口あらば畳を一枚はぎて其の戸にもたせ楊枝を柄にして置くべし、外より戸を明くれば楊枝に畳もたせて有る故に畳速やかに倒るゝ也、寝て居ると云え共其の音に驚かずと云う事なし。
 また急なる時は我は座の隅に座し、寝床は座の真中に我が伏し居る如くに見せて置くべし。
 亦ゆるやかなる時は、四方より糸を十文字に引渡し其の糸を入口の戸に付け置て、茶碗に茶を入れ其の茶碗を糸の十文字の違目にからめ付、我が顔をその茶碗の下へやりて寝るべし、外より戸を明る(開ける)時は、糸動く故其水こぼれて我が面に落る故驚くなり、是を夢間の寝覚と云う也。
 又常にいため紙の水呑を拵て四方に穴を明て懐中すべし、右の茶碗の代わりに用いる也、尤枕本に大小を置くことなく、刀の下緒に脇差を通し刀の下緒の端しを手に持て寝べし火急のとき大小を否や取って指すに宜し。
 旅などで気遣わしい時の用心の方法を述べています。行燈の土器に楊枝を渡してその上に笄をのせて火が消えた様にして置き、事あれば笄を取り外せば明るくなって応じやすくなる。
 畳を一枚、楊枝を支えにして入り口の戸に立てかけて置けば、外から戸を開けても畳が倒れてその音に驚いて目が覚める。
 急に危険を察知したら部屋の隅に座し、寝床は部屋の真中に寝て居る様に見せかけて置け。
 直ぐに襲われると云う事でもないならば、糸を戸に付け十文字に部屋に引き渡して置いて十文字の交点に茶碗に茶を入れて吊るし、その下に寝れば、外から戸を開ければ茶がこぼれて驚いて気が付く。是を夢間の寝覚めと云う。
 いため紙で水呑を拵ておいて四方に穴を開け茶碗の代用とする。
 枕許に大小を置かずに刀の下緒に脇差を通して置いて、下緒を手に持って寝れば急な時にも応じられる。
 方法はともかく、なんとなく危険を感じる時の用心はして置くべきでしょう。地震や水害、不意の侵入者など現代にも通じる心得ですが、疎かにしているようです。
 せめて枕元に懐中電灯、携帯ラジオ、携帯電話、2日分ぐらいの食糧、雨具や防寒具。あれもこれもと思う間に疎かになっています。

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曽田本その1の4居合根元之巻読み解く6小藤亀江伝来の目録24夜之太刀之大事

曽田本その1
4.居合根元之巻読み解く
6、小藤亀江伝来の目録
24無雙直伝英信流居合目録
居合心持肝要之大事
1、捕手和合心持之大事
2、立合心之大事
3、太刀目附事
4、野中之幕之大事
5、夜之太刀之大事
6、閨之大事
7、潜り之大事戸脇之事
8、獅子之洞出之事
9、獅子之洞入之事
読み解く
5、夜之太刀之大事
 古伝「居合心持肝要之大事」の5番目も「夜之太刀」ですから同じものと判断してもいいでしょう。
夜之太刀
 夜中の仕合には我れは白き物きを着るべし敵の太刀筋能見ゆるなり場合も能知るゝものなり放(ハズレ)口もなり安し白き肌着抔を着をたらば上着の肩を脱ぐべし構えは夜中には下段宜し敵の足のを薙ぐ心得肝要なり或は不意に下段になして敵に倒れたると見せて足を薙ぐ心得も有る可し
 夜中に仕合うには、我は白い物を着るのが良い、敵の太刀筋良く見えるし、場の状況も良く知れるものである。放し口(外し口)も容易である。
 白い肌着などを着ているならば上着の肩を脱いでおくのが良い。
 構えは夜中には下段が良い、敵の足を薙ぐ心得を肝要とする。不意に下段にすれば敵は倒れたと思う隙に足を薙ぐ心得も持つものである。
 白い着物は敵からも見付けやすい筈ですが、かえって敵の状況や周囲の状況が判断しやすいと云います。真っ暗闇ではどうかと思いますが、多少の光があれば白い着物に反射して見やすいというのでしょう。
 夜中の構えは下段が良いと言っています。見ようとすれば上ばかり気にする、其処を足を薙げというのでしょう。
 不意に下段にすれば敵は我が倒れたと思うので隙をついて足を薙ぐのだとも言っています。状況次第ではあり得ることかも知れません。この辺は素直に受け取って孫子の「兵は詭道なり」を考える処でしょう。
 河野先生の居合の哲学は、一方的先制攻撃を嫌っていますが、少々考えさせられます。
 敵が害意をもって攻撃して来たので機先を制して先制攻撃する、そのために腕を磨くのは大切な事です。
 しかし、それではただの早い、強いばかりの稽古に過ぎずより早い強い者には勝てない事になってしまいます。
 居合の鞘の内の理念「相手を圧する心意気を以て鞘放れの瞬時に相手を制すること、これ即ち居合の生命にして鞘の内と言う」、」抜刀する以前に為す勝つべき施策が術となるはずです。
 
 「兵は詭道也」は、戦闘行為は敵を欺く行為でもあります。不能であるように見せたり、不用のものと思わせたり、近いにもかかわらず遠くに見せたり、遠いものを近く見せたり、敵に利がある様に思わせ誘い込んだり、攪乱したり、充実していない様に見せたり、強いのに弱く見せたり、敵を驕らせたり、・・、隙を見せて敵の弱点を突く、や、不意の攻撃などによって戦術は成り立つものです。
 
 
 
 
 
 

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