曽田本その1の5居合兵法極意秘訣読み解く2當流申伝之大事13麓なる
曽田本その1
5.居合兵法極意秘訣読み解く
2、當流申伝之大事
13麓なる
・
麓なる一木能色を志り可ほ耳
於具もま多みぬミよ志野の花
心妙中勇ノ位不住之妙
荒磯海の浪間幾王けかつく海士の
以幾もつき阿へすも能をこそおもへ
慈園歌二
柴の戸二にほ者む花ハさも阿ら者あ阿れ
な可めてけりなうらめし能身や
夫刀術ハ専ラ人二勝事ノミヲ好ム二アラス大変二臨テ生死ヲ明二スルノ術也常二此ノ心ヲ
養ヒ其術ヲ修セズハアルベカラズト古人云エリ我カ道ヲ尽シ家法ヲ以テ命ヲスル所是刀術ノ極意トゾ 林 政詡 誌
明和元年申歳孟冬吉辰賜之
*
読み及び読み解く
麓なる一木の色を知り顔に
奥もまだ見ぬ三吉野の花
麓にある一本の木を見て知った顔してまだ見てもいない、、山奥の三吉野の桜の状況を語ることよ
武術のへぼ師匠に習うと、形ばかりの指導がほとんどで、決めつけてしまう人がほとんどです。敵のある変化からこうあるだろうと決めつけて誘いに乗ってしまう。
心妙中勇ノ位不住之妙
心妙(神妙) 人知を逸した現象での勇気は、住まわざる心、いわゆる武術で嫌う居付きをしないこと。居つく事は心も同じと云うのでしょう。
荒磯の海の浪間をかき分かづく海士の
息もつきあえずものをこそ思へ
荒磯の海の浪間をかき分けもぐる海士の息もつく暇なく物を思う事も有ろうか。
波にもまれ、波をかき分けながら、獲物をとる海士の何も考えていない様な自然体でことに応じろ、と教えているのでしょう。
慈園歌に
柴の戸に匂わん花はさもあらばあれ
眺めてけりなうらめしの身や
ひなびた家に咲く花も匂わない事などない 眺めているばかりで此の身が恨めしいことよ。
慈園は平安から鎌倉時代の天台座主です。この歌は詠み人知らずとも云われます。ひなびた家に美しい乙女がいるのだが、眺めているばかりで、この恋心をどうしたらよいのか何も出来ないこの身が恨めしい。色っぽく詠んでみたのですが、さて武術の歌としてはどの様に教えを受けるのでしょう。
相手の動きに誘われそうになるのだが、心静かに眺めていれば、と云われそうです。
夫れ刀術は専ら人に勝事のみを好むにあらず 大変に臨んで生死を明らかにする術である 常に此の心を養い其の術を修業しないなどあってはならない 古人は言っている 我が道を尽くし家法を以って命を懸ける処これ刀術の極意であると
林安大夫政詡 誌
明和元年1764年申歳孟冬吉辰賜之
*
その時代の考え方を充分把握出来ているとは言えませんが、この時代でも同じ事だろうと思います。刀術は仕合によって勝ための術ではない。大変に臨んで命を懸けて信じた道を尽くす事である。其の為の修行を怠るな、古人も命がけで我が道を全うする事が刀術の極意であると云う。
長年にわたり稽古して来たのに年と共に衰える体力気力に打ち負けていたのでは、何のために多くの時間も金も費やしてきたのか疑問を抱かなければおかしい事です。
年取った高段位の方が、「よくぞ飽きもせずいつまで棒振りしとるんか」と思われているのに、お世辞に「「素晴らしい演武でした、感動です」など言われて、大喜びし、ふるいたったりする。
高段位を得て下位の者に威張ってみてもそれだけのもので振り返れば虚しいだけでしょう。傍から見ても哀れです。
居合の業を順番通り覚えただけで、毎日同じことを繰り返すばかりで20年、30年と経て来ても、ちょっと想定が変われば戸惑うようでは何を学んできたのか疑問です。
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