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2018年7月

2018年7月31日 (火)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文2上意之大事12手之内

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、上意之大事
12手之内
 敵ト刀ヲ合ハスル二合刀セズト云事ナシ其合刀シタル所二而敵ノ拳ヲ押へテ突クベシ
読み
 敵と刀を合するに 合刀(あいとう)せずと云う事なし 其の合刀したる所にて(処にて) 敵の拳を押さえて突くべし
参考
 この「手之内」に該当する業は古伝神傳流秘書のなかには見当たりません。

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2018年7月30日 (月)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く2上意之大事11行違

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
2、上意之大事
11行違
 我左脇ヲ通ス宜シ切ル事悪シと知ルベシ行違サマ二抜テ突事宜シ又敵先二抜ントセバ先ン之テ手早ク柄二而胸ヲ突ベシ行違ノ詞ノ掛様ノ事大事有夜中二往来ヲスル二ウサンナル者ノ有時ハ自分之姓名ヲ急二呼カクベシ我二敵スルモノナレバハイト答ルモノ也其所ヲ切ルナリ旅抔二テハ白昼二モ此心得有ベシ又何ンゾ言ヲ云カケテ見ル二我二敵スル気有者ハ必ス返答二アグムモノナリ
 読み及び読み解く
 我が左脇を通すのが宜しい 切る事悪しと知るべきである 行き違い様に抜いて突事が宜しい 又 敵先に抜かんとするならば先んじて手早く柄にて胸を突くものである 行き違いのことばの掛け様の大事がある 夜中に往来をするにうさんなる者のある時は自分の姓名を急に呼び掛けるべきで 我に敵する者なれば「ハイ」と答えるものである 其の所を切るのである 旅抔にては 白昼にもこの心得有るべきである 又 何ぞ言(言葉)を云い懸けて見るに我に敵スル気有る者は必ず返答に倦むものである
 行き違う時は、我が左脇を通すのが良い、切るのは悪いもので行き違い様に抜いて突くのが良い。突きは確実性が高いのでしょう。
 敵が先んじて抜こうとしているならばそれに先んじて手早く柄に手を掛けて胸をつく。
 行き違う際の言葉の懸け様は夜中ならば自分の、姓名を呼び掛ければ敵する者ならば「ハイ」と答えてしまう。旅などでは白昼でも有効だと云います。
 敵する気持ちのある者は必ず返答に倦み何等か答えてきてしまう。
 この行違の心得で、「我が左脇を通す宜し、切る事悪しと知るべし、行違ざまに抜いて突事宜しい。又、敵が先に抜かんとせば先んじて手早く柄にて胸を突くべし」
 古伝神傳流秘書の抜刀心持之事「行違」
 「行違に左の脇に添へて拂ひ捨冠って打込也」と稽古の手附は切る業を示しています。斬るより突けと云うのです。
 抜刀心持之事は「格を放れて早く抜く也 重信流)」ですから、土佐の居合はまず基本的な動作を身に着け、形を越えて行けと云い、其の中で切るより突事をのべているのでしょう。
 大江先生は、古伝の「行違」を業名を盗用して奥居合立業の「行違」として古伝の神傳流秘書「連達」を改変してしまいました。まず大江先生の「行違」
 「(進行中正面を柄頭にて打ち、後を斬り又前を斬る)右足の出たる時、(敵顔面を柄頭にて)左手は鞘と鍔を拇指にて押へ、右手は柄を握りたるまま前方に伸し、柄當りをなし、其足踏みのまま體を左へ廻して、後方に向かひつつ、抜き付右手にて斬り、直に前方の右へ振り向き上段に斬る」
 是は古伝神傳流秘書抜刀心持之事「連達」です。「行違」とは全く違います。
 「歩み行内前を右之拳にて突其侭左廻に振返り後を切り又前へ振向て打込也」
 何故可笑しな改変をしてしまったのか全く分かりません。大江先生は林六大夫が土佐に持ち帰った居合の全てを知らなかったための独創としか思えないのですが残念です。
大江先生の兄弟子であった細川義昌先生の系統である無双神傳抜刀兵法尾形郷一先生の「行違」
 「摺れ違ひに左側の者を斬る)正面へ歩み往きつつ(右側を通り)鯉口を切り左足踏出しながら右手を柄に掛け、右足を踏出すなり刀を向ふへ引抜き、左足踏出しつつ(刃部を外へ向け)左腕外へ突込み、更に右足踏出すと共に摺違ひに刀を向うへ摺抜き((対手の左側を軽く斬り)直ぐ左斜に振返へりつつ、諸手上段に振冠り、右足踏込んで斬込み、刀を開き 納め終る」
 是は古伝神傳流秘書抜刀心持之事「行違」です。細川先輩に伝わり後輩の大江先生には伝わっていなかったとしか思えません。
 大江先生はこの古伝「行違」は奥居合立業の部「袖摺返」として「進行中抜き放ち、刀を左の身に添へ群衆を押開き進みつつ斬る」という替え業にしてしまったのでしょう。
 大江先生の改変は、奥居合に極端に表れています。正しく下村派の下村茂市からも谷村派の五藤正亮からも指導を受けていなかったとしか思えません。
 15,6歳で戊辰戦争、明治維新、数年して廃藩置県、廃刀令。下級武士にとって生きる事に必死だった激動の時代だったのでしょう。
 
 土佐の居合が消える寸前を中学生相手に指導して残そうとされた大江先生に、古伝の業と心を導かなかった細川先生にも問題が有りそうですし、請け入れる心を大江先生も持てなかったのかも知れません。
 明治と云う時代の日本文化の置き忘れは、150年の今日にも思い出そうとする大家も無く、師伝と称するものを真似るばかりの狭義な武的演舞の完成か、勝ち負けのスポーツに向けて進化し続けている気がします。
 まず、正しく見直し、其処から新し時代のコミニュケーションツールとしての武術を構築して行くべきなのでしょう。
 第9代林六大夫守政が土佐にもたらした無双直伝英信流の古伝は、古文書解読の学者でも、他流の師範にも根元には至れないでしょう。
 その流を学んで其の域に達しようとする人にしか読み取ることはできないのかも知れません。
 

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2018年7月29日 (日)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文2上意之大事11行違

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、上意之大事
11行違
 我左脇ヲ通ス宜シ切ル事悪シト知ルベシ行違サマ二抜テ突事宜シ又敵先二抜ントセバ先ンシ手早ク柄二而胸ヲ突クベシ行違ノ掛様ノ事有夜中二往来ヲスル二ウサンナル者ノ有時ハ自分之姓名ヲ急二呼カクベシ我二敵スルモノナレバハイト答ルモノ也其所ヲ切ナリ旅抔二テハ白昼二モ此心得有ルベシ又何ンソ言ヲ云カケテ見ル二我二敵スル気有者ハ必す返答二アグムモノナリ
読み
 我が左脇を通す宜し 切る事悪しと知るべし 行違い様に抜いて突く事宜し 又 敵先に抜かんとせば 先んじて早く柄にて胸を突くべし 行き違いの詞の掛け様の事大事有り 夜中に往来をするにうさんなる者の有る時は 自分の姓名を急に呼びかくべし 我に適する者なれば ハイと答えるもの也其の所を切る也 旅抔にては白昼にも此の心得あるべし 又 何ぞ言を云い掛けて見るに 我に適する気ある者は必ず返答に倦むもの也
参考
古伝神傳流秘書抜刀心持之事 行違
 行違に左の脇二添へて拂ひ捨冠って打込也
古伝神殿流秘書抜刀心持之事 行連
 立って歩ミ行内二抜て左を突き右を切る両詰に同事也
古伝神傳流秘書抜刀心持之事 両詰
 抜て片手尓て左脇を突き直に振向いて右脇を切る

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2018年7月28日 (土)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く2上意之大事10鐺返

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
2.上意之大事
10鐺返
 座シテ居ル時後ロヨリ小尻ヲ取テ押シアグルトキハ刀ヲ抜ク事ナラズ此時相手ノヒザ頭ヲ踏ミ其ノキヲヒ二向フヱタヲレテ抜突クベシ
読み及び読み解く
 座して居る時 後ろより鐺を取りて押し上ぐる時は 刀を抜く事ならず この時相手の膝を踏み其)きおい(気負う・競う・勢う)に向こうへ倒れて抜き突くべし
 座して居る時、後ろから鐺を取って上に押し挙げられたので抜く事が出来ない、鯉口を取って押し挙げられるままに腰を上げ、右に稍々振り向き、右足を以って相手の右膝を踏み付け、相手の気を奪うや(競り合う拍子に)前に伏す様に体を倒しながら、刀を抜き出し左脇から相手の胸を突く。
 左回りでも同様に出来るでしょう、この心得は、寧ろ業手附として稽古するものかも知れません。
 同様に鐺を取られる業は、現代居合では大江先生の立膝の部「瀧落」に見られます。
 「後を向き、徐ろに立ちて左足を後へ、一歩引き鞘を握りたる左を其儘膝下真直ぐに下げ、鐺を上げ後方を顧み、右手を膝上に置き同體にて左足を出し、右手を柄に掛け胸に當て右足を前に進むと同時に抜き、刀峯を胸部に當て、同體の儘左へ転旋して、體を後向け左足を前となし、其體の儘胸に當てたる刀を右手を伸ばし刀は刃を右横に平とし突き左足を出しつつ上段に取り、左膝を着き座しつつ頭上を斬る、血拭ひ刀を納む。」
 大江先生の直弟子だった政岡壱實先生はこの業で、相手が右手で鐺を取るか左手で鐺を取るかで動作をいじっています。鐺の握り方が上からか、下からか、又右上に押し付けられるか、左上に押し付けられるか、更に前に押し出されるか、後に退かれるかなど、相手の変化は幾つもあるでしょう。
 古伝神傳流秘書英信流之事「瀧落」
 「刀の鞘と共に左の足を一拍子に出して抜て後を突きすぐに右の足を踏込み打込み開納る此事は後よりこじりをおっ取りたる処也故に抜時こじりを以て當心持有り」
 古伝は、「おおらか」です。然し「抜く時こじりを以って當てる心持」が技の動作では失伝している様です。
 この鐺を取られた場合の応じ方は何故か古伝神傳流秘書では仕組み(組太)の大小立詰に三本見られます。一本目袖摺返・五本目蜻蛉返・六本目乱曲です、順に紹介しておきます。
大小立詰 一本目袖摺返
 「我が立て居る処へ相手右脇より来り我が刀の柄と鐺を取り抜かせしとする時其侭踏みしさり柄を相手の左の足のかがみに懸け中に入り又我右より来り組付をひじを張り躰を下り中に入る」
 手附の文言不十分ですが、文章通り出来るものです。大江先生はこの「袖摺返」の業名を奥居合立業に盗用した様です。
大小立詰五本目蜻蛉返
 「相手後より来り我が右の手を取り刀の鐺を取り背中に押付られたる時後へしさり中に入り倒す」
 是も手附不十分です。右手で我が右手を取り、左手で鐺を取られた想定で其の侭後ろに下がり相手と密着すれば倒し方は容易です。
大小立詰六本目乱曲
 「前の如く後より来り鐺を取り頻りにねじ廻し刀をぬかせじとする時後へ見返り左の手か右の手にて取りたるかを見定め相手左の手ならば我も左にて鯉口を押へ相手右ならば我も右にて取る城へ退き付けんとするを幸しさり中に入り倒す。」
 この文章で「相手左の手ならば我も左にて鯉口を押へ 相手右ならば我も右にてとる・・」の部分から振り向いて相手の右手か左手を見定め鯉口の取り様を示唆しています。左手ならば左手で鯉口をとる、右手ならば右手で鯉口を取るでは腑に落ちません。手附の文言に欠落があるか、写し間違いが有りそうです。
 
 あまり拘って見ても意味は無さそうですが・・。
 
 

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2018年7月27日 (金)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文2上意之大事10鐺返

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、上意之大事
10鐺返
 座シテ居時後ロヨリ小尻ヲ取テ押シアグルトキハ刀ヲ抜ク事ナラズ此時相手ノヒザ頭ヲ踏ミ其ノキヲヒ二向フヱタオレテヌキ突クべし
読み
 座して居る時 後より鐺を取って押し上げる時は 刀を抜く事ならず 此の時相手の膝頭を踏み 其の気負(勢い)に向うへ倒れて抜きつくべし
参考
 古伝神傳流秘書抜刀心持之事にはこの鐺返の業名も、動作も見当たりません。神傳流秘書の英信流居合之事にある「瀧落」の想定動作がやや該当しそうです。
英信流居合之事 瀧落
 刀の鞘と共二左の足を一拍子に出して抜て後を突きすぐ二右の足を踏込ミ打込ミ開き納る此事ハ後よりこじりをおっ取りたる処也故二抜時こじりを以て當心持あり
古伝の読み
 刀の鞘と共に左の足を一拍子に出して抜て後ろを突き 直ぐに右の足を踏み込み打ち込み開き納める 此の事は後ろより鐺を押っ取りたる処也 故に抜く時鐺を以って當てる心持ち有り
 
 

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2018年7月26日 (木)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く2上意之大事9棚下

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
2、上意之大事
9棚下
 二階下天井ノ下抔二於テ仕合フ二ハ上ヱ切アテゝ毎度不覺ヲ取物也故二打込ム拍子二脺ヲ突イテ打込ム可シ此習ヲ心得ルトキワス子ヲツカストモ上ヘ二不當心持有
 読み及び読み解く
 二階下 天上の下抔において仕合うには 上へ切りあてて毎度不覚を取るものである 故に打込む拍子に脺(膝・脛の誤写或は誤字)を着いて打込むものである この習いを心得る時は脛を着かずとも上に当てざる心持ち有り
 古伝神傳流秘書抜刀心持之事に「棚下」の手附があります。
 「大森流逆刀の如く立て上へ抜打込む時躰をうつむき打込む是は二階下様の上へ打込ぬ心持也」
 業手附と心得は同じ状況と云えるでしょう。
 二階の下や天井の下などの低い所での試合は刀を上に無造作に振り上げて斬り下ろそうとすれば天上に斬り込んで不覚を取る。
 打込む拍子に脛(すね)を床に着いて打込む心得を以って打込め。稽古業は大森流逆刀(大江先生の正座の部「附込」の様に、(相手が切って懸るを、)立ち上り刀を上へ抜き出し打込む時に俯いて打込むのだ、と示唆しているのでしょう。
 大江先生の棚下は奥居合居業之部にあります。
 「(頭を下げて斬る)座したる處より、頭を前方に下げ、稍や腰を屈め右足を少し出しつつ、刀を抜き、上体を上に起すと同時に上段となり、右足を踏み込み真直に切り下ろす」
 是は居合膝に座した状況から上が低い場所から抜け出して打込む想定によるものとすっかり現代居合では摺り込まれていますが、大江先生其処まで何処にも書かれていません。稽古では中学生に「棚から這い出て切る」と教えていたかどうか。
 「右足を少し出しつつ」で棚下から抜け出れるかは、棚次第です。
 細川義昌先生の教えによる無双神傳抜刀術兵法尾形郷一先生の奥居合「棚下」
 「(上の閊へる所にて前の者を斬る)正面に向ひ居合膝に座し、例により鯉口を切り右手を柄に掛け体を前へ俯け腰を少し浮かせ、左足を後へ退き伸し、其膝頭をつかへ、刀を背負ふ様に左後頭上へ引抜き、諸手を掛け、前者へ斬込み、其まま刀を右へ開き納めつつ、体を引き起こし右脛を引付けるなり、左踵上へ臀部を下し、納め終る」
 この、手附では大江先生の棚下から這い出て斬り込むのではなく棚下での応じ方を示しています。従って体を俯け、左足を後方に退いて抜刀し、その姿勢のまま上体を起こさずに斬り付けています。
 文言上の「・・其膝頭をつかへ・・」の部分の読み取りですが、左足を後方に退き伸ばして、膝を床に着き・・でしょうか。右足を踏み込まずに斬り付けています。
 この心得はどのような天井の高さでも上段からの斬り付けです。現代居合河野先生の様に棚下から這い出て切る・・この状況は無いとは言えませんが、床下や天井の低い所での攻防もあるわけで、今日思い描く棚下が短く這い出ることの出来る状況と、床下や天井下では這い出ないで戦うことの両方を学ぶべきかもしれません。
 大江先生の教えにも這い出る事は文言に無いのですが、動作を学び業名の「棚下」を思い描くと後世の者は、戸詰・戸脇と同様にその場の状況ばかり優先して根元を見失うものです。
 壁添での教えは「突く事肝要」でした。何が何でも真向斬り下ろさなければならない状況では無いと思えます。

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2018年7月25日 (水)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文2上意之大事9棚下

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、上意之大事
9棚下
 二階下天上ノ下抔二於テ仕合フ二ハ上ヱ切アテヽ毎度不覚ヲ取物也故二打込ム拍子二脺ヲ突イテ打込ム可シ此習ヲ心得ルトキワス子ヲツカストモ上ヘ二不當心持有
読み
 二階天上の下抔に於いて 仕合うには上へ切り当て毎度不覚をとるものなり 故に打込む拍子に膝をついて打込むべし この習いを心得る時は脛をつかずとも上に当てざる心持有
参考
谷村派第17代大江正路先生の奥居合居業之部棚下 
(頭を下げて斬る)座したる処より、頭を前方へ下げ、稍や腰を屈め右足を少し出しつつ、刀を抜き、上體を上に起すと同時に上段となり、右足を踏み込み真直に切り下す
古伝神傳流秘書 抜刀心持之事 棚下
 大森流逆刀の如く立て上へ抜打込む時躰をうつむき打込是ハ二階下様の上へ打込ぬ心持也

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2018年7月24日 (火)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く2上意之大事8壁添

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
2、上意之大事
8壁添
 壁二不限惣而壁二添タル如クノ不自由ノ所ニテ抜ク二ハ猶以腰を開ヒ子リテ躰ノ内にて抜突くベシ切ラントスル故毎度壁二切アテカモイ二切アテテ仕損スル也突クニ越ル事ナシ就中身ノ振リ廻シ不自由ノ所二而ハ突事肝要
読み及び読み解く
 壁に限らず、総じて壁に添いたる如くの不自由な所にて抜くには 猶以って腰を開き ひねりて躰の内にて抜き突くものである 切ろうとするので毎度壁に切りあて鴨居に切りあて仕損ずるなり 突くに越したる事は無い 中でも身の振り廻し不自由の所にては突く事肝要である
 この心得の様に抜刀する大江先生の奥居合立業「壁添へ}があります。
 然し抜き出して真向に打ち込んでしまい、突き業にはなっていません。
 「(進行中立留り両足を踏み揃へ上に抜き直下に斬下し竪立つに刀を納む)中央に出で體を直立とし両足を揃へ刀を上に抜き上段となりて後先をたてて真直ぐに刀尖を下とし、其体のまま刀尖を下としたるまま血拭ひ刀を竪立として納」
 変な日本語ですが無双直伝英信流を稽古している人には伝わるでしょう。
 この大江先生の「壁添へ」は古伝神傳流秘書の抜刀心持之事では「人中」の業手附が相当します。
 「足を揃へ立って居る身にそへて上へ抜き手をのべて打込む納るも躰の中に納る」
 業名は「人中」です。じんちゅう・ひとなかとでも読むのでしょう。人中では無用の手傷も負わせないように抜刀する術を示しています。
 それが、左右を壁に囲まれた狭い場所の想定にされてしまいました。古伝はあくまでも人を対象にした運剣動作を最優先しています。
 大江先生は、場所、所謂人よりも環境を目安に業を出しています。なぜ、その様に替えてしまったのでしょう。
 壁添の心持ちと人中の心持ちは、動作は同じでも根本的に違うのです、人と物との違いを充分時の中学生に指導されていたのでしょうか。
 下村派の下村茂市の弟子で大江先生の兄弟子であった細川義昌系統の無双神傳抜刀術兵法の尾形郷一先生のこの様な手附は「人中」のままです。
 左右が障害となる場合は、上にも障害があり得るから突きを以って応じろと云う教えを素直に受ければいいのでしょうが、何かの思いがあったかもしれません。
 物はそのものだけでは移動しません。人は柔軟に状況判断してあるべき場に移動するものです。

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2018年7月23日 (月)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文2上意之大事8壁添

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、上意之大事
8壁添
 壁二不限惣而壁二添タル如ノ不自由ノ所ニテ抜クハ猶以腰ヲ開ヒ子リテ躰ノ内ニテ抜突クベシ切ラントスル故毎度壁二切アテカモイ二切リアテゝ仕損スル也突ク二越ル事ナシ就中身ノ振廻シ不自由ノ所二而ハ突事肝要
読み
 壁に限らず そうじて壁に添いたる如くの不自由の所にて抜くは 猶もって腰を開き ひねりて体の内にて抜き突くべし 切らんとする故毎度壁に切りあて鴨居に切りあてゝ仕損ずる也 突くにこえる事無し なかんずく身の振り廻し不自由の所にては突く事肝要也
参考
 古伝神傳流秘書 抜刀心持之事には壁添に相当する業名は有りません。
 谷村派第17代大江正路先生は奥居合立業に「壁添へ」の業名を付した業を独創されています。
壁添へ
 (進行中立留り両足を踏み揃へ上に抜き直下に斬下し竪立に刀を納む)中央に出で體を直立とし両足を揃へ刀を上に抜き上段となりて趾先を立てゝ真直に刀尖を下として斬り下し、其體のまま刀尖を下としたるまま血拭ひ刀を竪立として納む
大江先生の「壁添へ」は古伝神傳流秘書抜刀心持之事「人中」の動作そのものです。
人中
 「足を揃へ立って居る身二そへて上へ抜き手のべて打込む納るも躰の中にて納る」
 

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2018年7月22日 (日)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く2上意之大事7戸脇

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
2、上意之大事
7戸脇
戸ノ手前二立ッテ居テアレヱ通レト云テ入ル所ヲ切ラント心懸ルナラバツカツカト戸口ヲ入躰二歩ミ行テ柄ニテ胸ヲ押シツケテ然而引抜テツクベシ亦火急ニテ既二切カケラレタル時ハ或ハ柄ヲ以テハライノケ早ワザヲキカス可シ亦戸ノ内二人アリト思ハバ戸口ヲ直ク二入ル事ナク内二人ノ有ル方二向テ筋違テ入るベシ
読み及び読み解く
 戸の手前に立っていて あれえ通れと云いて入る所を切らんと心懸けるならば ツカツカと入躰に歩み行きて 柄にて胸を押し付けて然して引抜いて突くべし 火急にて既に切掛けられたる時は 或いは柄を以て払い除け 早業を効かすものである 戸の内に人ありと思わば戸口を直ぐに入る事無く 内に人の有る方に向いて筋違いに入るべきである
 この教えも、戸を入る際の心得を述べています。一つは戸口を入るや敵に突き当たるように柄で押付抜刀して突く。二つ目は打ち込んで来る敵の刀を柄で払って抜き打つ。三つ目は戸口を入る際に敵と筋違いに入り抜き打つ。
 大江先生の独創は前回の戸詰で終わりにしておきましょう。大江先生は消えてしまったであろう無双神傳英信流を復活させた中興の祖でいいのでしょう。
 伝書や業技法を正しく伝える剣士が土佐には当時いなかったか、大江先生を羨んで嫉妬するばかりの棒振り剣士ばかりで古伝を伝えるべきだったのでしょう。
 中学生相手の稽古だったため、閉鎖された処の業になっていて変わってしまった事に気が付かなかった事も有るかも知れません。
 後世の者が、戸がある無しなどの事に拘って、対敵意識を薄くしているだけでしょう。古伝の両詰はまだ生きているのは大江先生が両詰を、戸詰・戸脇の二つに分けて業を磨かせたお陰で失伝せずに残ったとも言えます。
 さて、この戸脇の教えの中に「・・火急にて既に切掛けられたる時は或は柄を以て払い除け早業を効かすものである…」の…部分が気になります。
 二本差しならば、他人の家に入るには太刀を腰から鞘ごと腰帯から抜いて左手に持っているでしょう。或は状況から腰に差したままと云うこともありえます。
 この、「柄を以て払い除ける」の業は他流にもあるものですが、此処では何の解説も無ければ、無双直伝英信流の現代の方々も何ら気にもしていない様です。
 鈴木安近先生著「鹿嶋清孝先生伝新陰流居合」、所謂制剛流抜刀術に「戸入(といり)」と云う居合があります。
 紹介させていただきます。
 「左手を鍔元に掛けながら右手を戸に掛け身体を戸と一緒に移動させながら戸を開け、内の気配をさぐりつつ左足から屋内に入る。頭上に切りかかる屋内の敵に向き直り上体を縮めながら、左手で反りを返しながら刀を顔の前に鞘のまま抜きあげ、柄・鍔で敵の刀を受け止め、右手を柄に掛け反りを返しながら上から一拍子に、片手で切りつけ勝つ(左からの敵・右からの敵二通り有)(古記録に「戸脇の大事ー口伝」とあるのはこれか?」
 「左手で柄にて敵の斬り込みを請け、右手で小太刀を抜いて突く」などの応用もあり得るもので研究しておくのも良いと思われます。
 その他にも、水鴎流にも柄にて請け止める業も見られます。この上意之大事戸脇は研究すれば幾重にも業が広がるものです。
 もう一つ「戸の内に人ありと思わば戸口を直ぐに入る事無く 内に人の有る方に向いて筋違いに入るべきである」ですが、これも無造作にまっすぐ入らず、内に人がいるのを見定め、筋違いに入って行き、敵の打ち下ろす筋を外して空振りさせて制するのだと暗示しています。
 棒振り体操に明け暮れているのもいいでしょうが、時には古伝を片手に議論しながら業の研究も良いものです。
 それによって、大江先生の教えもしっかり受け止められる「おおらか」さが身につきます。

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2018年7月21日 (土)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文2上意之大事7戸脇

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、上意之大事
7戸脇
 戸ノ手前二立ッテ居テアレヱ通レト云テ入ル所ヲ切ラント心懸ルナラバツカツカト戸口ヲ入躰二歩ミ行テ柄ニテ胸ヲ押シツケテ然而引抜テツクベシ亦火急ニテ既二切カケラレタル時ハ或ハ柄ヲ以テハライノケ早ワザヲキカス可シ亦戸ノ内二人アリト思ハバ戸口ヲ直ク二入ル事ナク内二人ノ有ル方二向テ筋違テ入ルベシ
読み
 戸の手前に立って居て あれへ通れと云いて入る所を切らんと心懸けるならば つかつかと戸口を入り体に歩み行きて 柄にて胸を押し付けて然して引抜きて突くべし 亦 火急にて既に切り懸けられたる時は 或は 柄を以て拂い除け早業を効かすべし 亦 戸の内に人ありと思わば戸口を直に入る事無く 内に人の有る方に向きて筋違いて入るべし
参考
 古伝神傳流秘書 抜刀心持之事には戸脇の業名は有りません。
 谷村派第17代大江正路先生の奥居合居業「戸脇」
 (左を突き右を切る)右足を右斜へ踏み出し、刀を抜き、左横を顧みながら突き、足踏みは其のままにて上體を右横に振り向け、上段にて切り下す

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2018年7月20日 (金)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く2上意之大事6戸詰

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
2、上意之大事
6戸詰
 障子或ハ戸ヲ明ケカケテ内ヱ入レト云テ入ル所ヲ戸ニテ立詰ントスルトキハ是ヲ察而扇ヲ敷居ノミソ二入レ其扇ノハシヲ脺(そつ・膝?)ニテ敷而内ヱ入ルトキハタテ詰ラルル事ナシ
 読み及び読み解く
 障子或は戸を開け掛けて 内へ入れと云って入る所を 戸にて竪詰んとする時は 是を察して扇を障子の溝に入れ其扇の端を膝にて敷きて内へ入る時は竪詰らるる事無し
 開けたままになっている障子又は戸の敷居の手前で伏して礼をする際の心得です。扇子を敷居に置いて膝で押さえておいて礼をしろと云うのです。これも業手附では無く上意で出向く際の心得です。
大江正路先生が独創した、無双直伝英信流居合奥居合之部居業には「戸詰」の業名は存在します。しかし古伝神傳流秘書抜刀心持之事には「戸詰」の業手附は存在していません。
 大江先生の独創による「戸詰」
 「(右を斬り左を斬る)抜き付け、右の敵を右手にて切ると同時に右足を右斜に出す、其の右足を左斜横に踏み変へて上段にて左斜を真直に斬る」
 左右の敵を斬ると云っていながら、右前・左前を斬っていて動作が変ですが、左右の応用ですから「おおらか」に・・・。
 是は古伝神傳流秘書抜刀心持之事の「両詰」の替え業です。
 「右脇へ抜打に切りつけ左を斬る」とあります。
 古伝の「両詰」は「抜て片手にて左脇を突き直に振り向いて右脇を切る」で「これは左右に詰掛けられたる時一人宛て切らんとする時は遅れを取る也、故に抜や否や左脇の者を切先にて突き、直ぐに右を切るべし、その業唯手早きに有。
 亦、右脇の者が抜く手を留めらるべきと思う時は右を片手に切り直ぐに左を切るべし」と上意之大事で述べられている右脇の者が抜く手を留めて来そうな時の応用業です。
 大江先生が「両詰」の業を、本来左右から詰め懸けられた時の応じ方を述べた手附を、戸のある場面の様な印象を与える業名に分けて戸詰・戸脇などと言い出して指導したため、上意之大事の心得は失念して、おかしな進化を向きになってやっているのが現代居合です。古伝をいじると変な事になる良い例です。
 与えられた業は出来るが、根元を求めないような指導者によるとあらぬ方に引きずられるので要注意です。
 古伝の両詰の稽古は、基本は敵は左右から詰めかけている状況から「左を突き右を切る」・「右を切り左を切る」であって、次に敵の配置を前後にしたり、右前・左後にしたり、右後・左後にしたり思いつくままに稽古すべきでしょう。
 それから、それぞれの場面に戸障子などの障害物を想定して応用問題を解決していけばいいもので、やたら狭義の想定をしてしまうのは疑問です。
 場の状況は、まず相手との応じ方が最優先でしょう。
 
 
 
 

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2018年7月19日 (木)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文2上意之大事6戸詰

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、上意之大事
6戸詰
 障子或ハ戸ヲ明ケカケテ内ヱ入レト云テ入ル所ヲ戸ニテ立詰ントスルトキハ是ヲ察而扇ヲ敷居ノミソ二入レ其扇ノハシヲ脺ニテ敷然而内ヱ入ルトキハタテ詰ラルゝ事ナシ
読み
 障子或は戸を明けかけて 内へ入れと云いて入る所を戸にて建詰んとする時は 是を察して 扇を敷居の溝に入れ 其の扇の端を脺(せつ、そつ?、膝・脛?)にて敷 而して内へ入る時は建詰られるゝ事なし
参考
 古伝神傳流秘書 抜刀心持之事にこの業名は存在しません。
 谷村派第17代大江正路 剣道手ほどき  奥居合居業 「戸詰」
 (右を斬り左を斬る)抜き付け、右の敵を右手にて切ると同時に右足を右斜に出す、其の右足を左斜横に踏み変えて左斜を真直斬る

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2018年7月18日 (水)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く2上意之大事5門入

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
2、上意之大事
5門入
 戸口ヲ出入スルノ心得也戸口ノ内二刀ヲフリ上テ待ツヲ計知ルトキハ刀ノ下緒ノハシヲ左ノ手二取刀ヲ背テウツムキトドコオリ無ク走リ込ムベシ我ガ胴中二切カクルヤ否ヤ脇指ヲ以抜付ケ二足ヲナク可シ
 読み及び読み解く
 戸口を出入りする(時)の心得である 戸口の内に刀を振り上げて待つを計り知る時は 刀の下緒の端を左の手に取り 刀を背負って俯き 滞りなく走り込むのである 我が胴中に切り懸って来るや否や脇指を以って抜き付けに足を薙ぐ也
 古伝神傳流秘書抜刀心持之事には「門入」に相当する業名も動作も見当たりません。
 大江正路先生の「門入」は、独創か、又は江戸末期から明治にかけて替え業が横行した中に上意之大事に相当する業があったかも知れませんが、文献上は不明です。
 大江先生の「門入」
 「(進行中片手にて前を突き後を斬り前を斬る)右足を出したる時、刀を抜き、左足を出して、刀柄の握りを、腰に當て刀峯を胸に當て、右足を出して、右手を上に返し、刀刃を左外法に向け、敵の胸部を突き、其足踏みのまま體を左へ振り向け、後へ向き上段にて斬り、直ぐに右へ廻り前面に向き上段にて斬る。」
 是では、全然上意之大事「門入」にはなりません。
 現代居合では、門の内に敵が居る想定で、門内の敵を敷居をまたいで刺突し、その足踏みのまま、右廻りに振り向き後から攻撃して来る門外の敵を刀を床と水平に鴨居に当たらない体勢で諸手上段になって右足を踏み込んで斬り下ろし、門内の新たな敵を左廻りに刀を床と水平に鴨居に当たらないように振り冠り門内の敵を右足を踏み込んで斬り下ろす。
 考え方は鴨居に当たらないように門内から出て真向に斬る、同じ様に鴨居に当たらないように門内の敵を切る。
 是では古伝神傳流秘書抜刀心持之事「棚下」の立業の様です。
 「大森流逆刀の如く立って上へ抜打込む時躰をうつむき打込む是は二階下様の上へ打込ぬ心持也」
 参考にする業は有るでしょうからそれを参考に独創した、で取り敢えずいいでしょう、現代居合もそれなりにきめています。
 細川義昌先生の系統の尾形郷一先生による無双神傳抜刀術兵法奥居合之部に「棚下」の業が「四角」の次に配されています。
 「(上の閊へる所にて前の者を斬る)正面に向ひ居合膝に座し、・・・略す」
 門入之心得は業手附に存在しない心得を説いたものでしょう。大江先生の独創した「門入」も業としてはおかしなものですが心得としておけばそれなりでしょう。

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2018年7月17日 (火)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文2上意之大事5門入

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、上意之大事
5門入
 戸口ヲ出入スルノ心得也戸口ノ内二刀ヲフリ上テ待ツヲ計知トキハ刀ノ下緒ノハシヲ左ノ手二取刀ヲ背テウツムキトドコヲリ無ク走リ込ムベシ我ガ胴中二切カクルヤ否ヤ脇指ヲ以抜ツケ二足ヲナク可シ
読み
 戸口を出入するの心得也 戸口の内に刀を振り上げて待つを計り知る時は 刀の下緒の端を左の手に取り刀を背負いて俯き滞り無く走り込むべし 我が胴中に切りかくるや否や 脇指を以って抜付けに足を薙ぐ可し
参考
 古伝 神傳流秘書 抜刀心持之事 該当する業名および動作は見当たらず
・ 
参考
 谷村派第17代大江正路先生の門入
 (進行中片手にて前を突き後を斬り前を斬る)右足を出したる時、刀を抜き、左足を出して、刀柄の握りを、腰に當て刀峯を胸に當て、右足を出して、右手を上に返し、刀刃を左外方に向け、敵の胸部を突き、其足踏みのまま體を左へ振り向け、後へ向き、上段にて斬り、直に右へ廻り前面に向き上段にて斬る。

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2018年7月16日 (月)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く2上意之大事4四角

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
2、上意之大事
4四角
 三角二カワル事無シ是ハ前後左右に詰合フ之心得也故二後ロへ迠マワッテ抜付ル也
読み及び読み解く
 三角に変わる事は無い 是は前後左右に詰合う心得である 故に後へまで廻って抜き付けるのである。
 三角の処の重要な心得は、複数に取り囲まれた時には一人ずつ深々と斬っていては遅れを取るので仕損じるものだ、居合の大事は浅く勝事が肝要で、並み居る敵の紋所の辺りに切先外れに払ってビクとして相手が臆したところを付込んで仕留めるのだ、と極意を語っています。
 当然三人でも四人でも同じ事と述べています。上意之大事はどんな場合でも仕損じるわけにはいかない、封建時代の根底にある武士社会の倫理が裏打ちされているわけで単なる試合とは分けが違うのです。
古伝神傳流秘書抜刀心持之事四角
 「抜左の後の角を突き右の後の角を切右の向を請流し左の向を切又右の向を切る也」
 上意之大事の四角は前後左右に囲まれた想定で我は十文字の交点に坐すとすればよいでしょう。
 古伝は左前・右前・左後・右後で×印の交点に我は位置しています。拘る事も無く場に応じて「おおらか」に運剣出来ない様では奥居合を学ぶ心掛けが出来ていないと云えるでしょう。
 正面に向いた我が体を、刀を抜きつつ右前の敵に廻り込み抜刀するや左後ろの敵を刺突し、右足を軸に左前の敵の紋所の辺りを斬り払い、右前の敵の紋所辺りを斬り払い、右後ろの敵も払って右肩から諸手上段に振り冠って右後ろの敵に斬り込み、右肩を覆う様に刀を振り被りつつ左廻りに右前の敵の斬り込みを請け流し、左前の敵の真甲に諸手上段から斬り下し、即座に右廻りに右前の敵に振り返り上段から真向に斬り下ろす。
 この様にすれば、三角の時の教えを守った運剣と成る筈です。
大江正路先生系統の現代居合ではこの上意之大事の心得は見られず一人ずつ深々と斬っています。尚且つ、敵の坐す位置がどうしたわけか変則で、左後・右前・左前・正面となっていて右後は空いています。
細川義昌先生系統の無双神傳抜刀術兵法の尾形郷一先生の「四角」
 「(四隅に居る者を斬る)正面に向ひ居合膝に座し、例により鯉口を切り右手を柄に掛け腰を伸し右脛を立てつつ(右前に掛かると見せ)刀を其方向へ引抜き、咄嗟に、左膝頭で(左廻りに)後斜へ振り向き、左後隅の者を(右片手にて)突き直ぐ右にくるりと廻りつつ、諸手上段に引冠り、右後隅の者へ斬込み、直ぐ左へ廻りつつ、刀を頭上へ振り冠り(右前隅の者より斬込み来る太刀を受け流しながら)左前隅の者へ斬込み、直ぐ再び右へ振向きつつ、諸手上段に引冠り右前隅の者へ斬込み、刀を開き、納める。」
 この手附は古伝神傳流秘書抜刀心持之事「四角」を演じている様です。
 この手附による四方切の替え業と称して第21代福井聖山先生が演じたビデオが残されています。大江先生の手附が替え業だったのでしょう。
 この下村派細川先生は大江先生の兄弟子でしたが、何故同様の四角が伝わっていなかったのでしょう。
 恐らく、奥居合まで十分指導を受けられる環境に無い大江先生が生きた明治維新が大きく影響したのでだろうと勝手に理解し、自ら独創を余儀なくされたか、あるいは江戸末期に既に奥義の教えは失念し替え業オンパレードだったかもしれません。

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2018年7月15日 (日)

曾田本その1の6英信流居合目録秘訣原文2上意之大事4四角

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、上意之大事
4四角
 三角二カワル事無シ是ハ前後左右二詰合フ之心得也故二後ロへ迠マワッテ抜付ル也
読み
 四角(しかく、よすみ)
 三角にかわる事なし 是は前後左右に詰合うの心得也 故に後へ迠廻って抜付ける也
参考
 古伝神伝流秘書 抜刀心持之事 四角
 抜左の後の角を突右の後の角を切右の向を請流し左の向を切又右の向を切る也
読み
 抜き 左の後ろの角を突き 右の後ろの角を切る 右の向こうを請流し 左の向こうを切る
又 右の向こうを切る也
 

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2018年7月14日 (土)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く2上意之大事3三角

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
2、上意之大事
3三角
 三人並居ル所ヲ切ル心得也ヶ様ノトキフブカと勝ンとスル故二オクレヲ取ル也居合ノ大事ハ浅ク勝事肝要也三人並居ル所ヲ抜打二紋所ノアタリヲ切先ハツレ二ハロヲトキハビクトスルナリ其所ヲ仕留ル也三人ヲ一人ヅツ切ラント思フ心得ナレバ必仕損スル也一度二拂フテ其オクレ二付込デ勝ベシ
読み及び読み解く
 三角はさんかくでしょう、「みすみ」と読ませる先生も居たような。
 三人並び居る所を切る心得である ケ様の時深々と勝たんとする故に遅れを取るのである 居合の大事は浅く勝事が肝要である 三人並び居る所を抜打ちに紋所の辺りを切先外れに払う時はビクとするので その所を仕留めるのである 三人を一人ずつ切ろうと思えば必ず仕損じるものである 一度に切り払いその臆するところに付け込んで勝つものである
古伝神傳流秘書抜刀心持之事「三角」
 「抜て身を添へ右廻りに後へ振り廻りて打込也」
 古伝の三角の手附は不十分でどうしてよいかわからないのですが、この英信流居合目録秘訣を読んでなるほどと納得です。
 三人の敵に囲まれた場合、一人ずつ斬ると考えずに、目の前の敵に向かって浅手に抜き付けるや右廻りに刀に身を添える様にして、後ろに振り廻って前・右・後の三人を紋所の辺りに切先浅く斬り通し、刀を右肩から振り冠って後ろの敵を斬り、右の敵の斬り込んで来るのを請け流し、前の敵に打ち下ろし、右の敵に斬り込む、のでしょう。
 敵の配置が如何様でも同じ様二するのです。
 この二古伝の三角は大江先生は奥居合居業では残さず、「四方切」として左後ろを刺突し・右前の敵を諸手上段から斬り下ろし・左前・正面と真向に斬り下ろし四人の敵を一人ずつ斬っています。
 上意之大事の教えを知っていればこの様な運剣は指導しなかったかも知れません。剣術は小栗流を学んでいた様ですからそこらに要因があったかもしれません。
 下村茂市先生の門人で大江先生の兄弟子であった細川義昌先生の三角は手元資料ではその系統の白石元一先生の「大森流長谷川流伯耆流居合術手引」と尾形郷一先生の「無双神傳抜刀術兵法」に「三角」が残されています。
 尾形郷一先生の英信流奥居合之部「三角」
 「(前右後の三人を斬る)正面より(左廻りに)後向き 居合膝の座し例により鯉口を切り右手を柄に掛け 前に掛かると見せて 右足を摺り出し腰を伸し 刀を引き抜くなり 右足を左足に引きよせるなり刃部を外へ向け 左腕外深く突込み 立ち上がりつつ右へくるりと廻りながら前、右、後の三人を軽く斬り 正面へ向く 同時に左足を跪きつつ諸手上段に引冠り 右足踏込んで斬込み 刀を開き納め終る」
 細川先生の三角も動作では古伝神傳流秘書と違うな、と思いつつも大江先生よりも三角の心持ちを残している様です。
 後向きに坐したのですから、先ず後ろの敵(元前に坐す敵)を刺突し、立ち上って左の敵(元右に座す敵)を右廻りに軽く斬り、前の敵(元後ろの敵)も右廻りに軽く斬り、後の敵(元前の敵)にも軽く斬り付け右肩から刀を上段に振り冠って諸手で前の敵の真向に斬り付け 開き納める、のでしょう。元右と元後ろの敵は軽く斬られるだけで、元前の敵は刺突され、軽く斬られ真向に斬られているのでしょう。
 チョット中途半端ですが上意之大事を心得た運剣です。 
 大江先生系統はこの上意之大事三角の心持ちを引き継がなかった様で、演武形としては見栄えは良いのですが、途中で切られてしまいそうです。大江先生の独創が先行したと云えるでしょう。
 

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2018年7月13日 (金)

曾田本その1の6英信流居合目録秘訣原文2上意之大事3三角

曾田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、上意之大事
3三角
 三人併居ル所ヲ切ル心得也ケ様ノトキフカブカと勝ントスル故二オクレヲトル也居合ノ大事ハ浅ク勝事肝要也三人併居ル所ヲ抜打二紋所ノアタリヲ切先ハツレ二ハロヲトキハビクトスルナリ其所ヲ仕留ル也三人ヲ一人ヅツ切ラント思フ心得ナレバ必仕損スル也一度二拂フテ其オクレ二付込デ勝ベシ
読み
 三角(さんかく、みすみ?)
 三人並び居る所を切る心得也 ケ様の時深々と勝たんとする故に遅れを取る也 居合の大事は浅く勝事肝要也 三人並び居る所を抜打に紋所の辺りを切先外れに払ろう時はビクとする也 其の所を仕留める也 三人を一人づつ切らんと思う心得なれば必ず仕損ずる也 一度に払うて其のおくれに付け込んで勝べし
 古伝神傳流秘書 抜刀心持之事 三角
 抜て身を添へ右廻り二後へ振り廻りて打込也
読み
 抜いて 身をそえ右廻りに後ろへ振り廻りて打込む也

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2018年7月12日 (木)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く2上意之大事2両詰

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
2、上意之大事
2両詰
・ 
 是又仕物抔言付ラレ又ハ乱世ノ時分抔二ワ使者抔二行左右ヨリ詰カケラレタル事間々有之也ヶ様ノ時ノ心得也尤其外トテモ入用也左右に詰カケラレタル時一人宛切ラントスルトキハオクレヲ取ナリ故二抜ヤ否ヤ左ワキノ者ヲ切先二而突スグ二右ヲ切ル可シ其ワサ唯手早キ二有亦右脇ノ者二抜手ヲ留ラルベキト思フ時ハ右ヲ片手打二切リスク二左ヲ切ルベシ
読み及び読み解く
 上意によって仕物を云いつけられた時や乱世の時分に使者などに行き 左右より詰め懸けられる事は間々あるものだ その様な時の心得である その外でも入用なものである 左右より詰め懸けられた時一人づつを切ろうとすると遅れを取るものである そこで抜くや否や左脇の者を切先で突き直ぐに右の者を切るべきである その業唯手早きにある 又 右の脇の者に抜く手を留めらると思う時は 右の者を片手で切り直ぐに左の者を切るべきである
 現代居合しか知らないものは両詰は17代大江正路先生によって改変されてしまった奥居合居業の七本目両詰を思い描くのですが、古伝は両脇から詰め寄られる時の応じ方を伝授しています。
 古伝神傳流秘書抜刀心持之事「両詰」
 「抜て片手にて左脇を突き直に振向いて右脇を切る 右脇へ抜打に切り付け左を切る」
 大江正路先生の改変してしまった奥居合居業の七本目「両詰」
 「(抜放け諸手にて真向を突き斬る)座したる處より右足を少し出して、刀を抜き、柄元を臍下に當て、右足を踏出して、前方を諸手にて突き、其姿勢のまま、上段にて前面を真向に斬る」
 是では古伝神傳流秘書の抜刀心持之事「向詰」です。
 「抜て諸手を懸け向を突打込也」
 土佐の居合は方向については明確に統一しています。「向」は正面に敵が居る場合、「両詰」は左右に敵に囲まれた場合です。場の想定では無く敵の位置関係を表しているわけです。居合は相手との攻防であって場の状況が優先するわけでは無いのです。
 下村派で下村茂市の兄弟子であった細川義昌の「両詰」を無双神傳抜刀術兵法の尾形郷一貫心先生の奥居合之部「両詰」
 「(左右に座して居る者を斬る)正面に向ひ居合膝に座し、例により鯉口を切り右手を柄に掛けるなり、腰を伸ばし(右へ掛かると見せて)右足を少し右へ踏み出し其方向へ刀を引抜き、咄嗟に左へ振向き(右片手にて)左側の者の胸部を突き、直ぐ右へ振返へりつつ、諸手上段み引冠り右側の者へ斬込み、刀を開き 納め終る」
 細川義昌先生の教えは古伝の運剣動作です。古伝が引き継がれていたのです。大江先生の改変が不思議です。
 ついでに細川義昌先生の「向詰」も稽古して見ます。これも尾形先生の手附からです。
 「(対座して居る者を斬る)正面に向ひ居合膝に座し、例により鯉口を切り、右手を柄に掛け、両膝を立つなり右足を少し右前へ踏出し、其方向へ刀を引抜き、右足を引戻すと共に、刀尖を向ふへ、柄頭を腹部へ引付け諸手となり(刀を水平に構へ)体を少し前へ進め、対手の胸部を突き、更に左足を進ませつつ諸手上段に引冠り、右足を踏込んで斬込み、刀を開き 納め終る」
 是も古伝の向詰です。大江先生は変です。そのまま大江先生の教えを受けた無双直伝英信流の居合を稽古する所はおかしいまま治せなくなってしまっています。 
 それでも先師の努力でそれなりですから「おおらかに」稽古しています。古伝は本物を目指す者の目標です。
 然し、古伝の両詰が「戸詰」と「戸脇」に別れ、戸障子の有る無しと、敵の位置が左右から、「戸詰」は戸障子の敷居の向こう右前と左前に我を迎える。
 「戸脇」は敷居の手前に居る我が方の左後と、敷居の向こう右前に居る想定になってしまいました。戸など無かったのに、戸の有る想定がついてドンドン特定の運剣動作に進化して行き基本の心持ちすら失念し始めている感があります。
 大江先生が付け加えた「戸」に後世の者が敏感過ぎてしまったのも本筋を外す原因だったのでしょう。
 
 

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2018年7月11日 (水)

曾田本その1の6英信流居合目録秘訣原文2上意之大事2両詰

曾田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、上意之大事
2両詰
 是又仕物抔言付ラレ又ハ乱世ノ時分抔二ワ使者抔二行左右ヨリ詰カケラレタル事間々有之也ケ様ノ時ノ心得也尤其外トテモ入用也左右二詰カケラレタル時一人宛切ラントスルトキハヲクレヲトルナリ故二抜ヤ否左ワキノ者ヲ切先二而突スグ二右ヲ切ル可シ其ワサ唯手早キ二有
 亦右脇ノ者二抜手ヲ留ラルベキト思フ時ハ右ヲ片手打二切リスク二左ヲ切ルベシ
読み
 両詰
 是又仕物抔言い付けられ 又は 乱世の時分抔には使者抔に行く 左右より詰かけられたる事 ままこれ有る也 ケ様の時の心得也 尤も其の外とても入用也 左右に詰かけられたる時一人宛て切らんとする時は遅れを取る也 故に抜くや否や左脇の者を切先にて突き直ぐに右を切るべし 其の技唯手早きに有 亦 右脇の者に抜く手を留めらるべきと思う時は 右を片手打ちに切り直に左を切るべし
参考
 古伝 神傳流秘書 抜刀心持之事 両詰
 抜て片手尓て左脇を突き直に振向いて右脇を切る
 (右脇へ抜打に切り付希(つけ)左を斬る)
参考
 古伝 神傳流秘書 抜刀心持之事 向詰
 抜て諸手を懸け向を突打込也

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2018年7月10日 (火)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く2上意之大事1虎走

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
2、上意之大事
1虎走
 仕物抔云付けラレタル時ハ殊二此心得入用也其外トテモ此心得肝要也敵二間モ三間モ隔テゝ坐シテ居ル時ハ直二切ル事不能其上同坐シ人々居並ブ時ハ色二見セテハ仕損ル也サワラヌ躰二向フヱツカツカと腰ヲカガメ歩行内二抜口ノ外へ見ヱヌ様二躰ノ内ニテ刀ヲ逆サマ二抜キツクヘシ虎ノ一足ノ事ノ如シト知ル可シ大事トスル所ハ歩二アリハコヒ滞リ無ク取合スル事不能ノ位ト知ルベシ
 読みと読み解く
 上意による仕物抔を云いつけられた時は殊に此の心得入用である 其の外であってもこの心得肝要である 敵が二間も三間も隔てて坐している時は 直ぐに切る事は出来ない 其の上同坐している人々が居並んでいる時は 色に見せては仕損じるのである さわらぬ躰に向うへつかつかと腰を屈め歩み行くうちに 抜き口が外へ見えないように躰の内にて刀を逆さまに抜き出し 虎一足の如くと知るべきである 大事とする所は歩みに有 足運び滞りなく取合いする事 (不信感を周囲に)能えずの位と知るべきである 
 古伝神傳流秘書抜刀心持之事「虎走」
 居合膝に坐して居立って向へ腰をかがめつかつかと行抜口の外へ見えぬ様に抜付け打込 
 納又右の通り腰をかがめ後へ引抜付打込也
 古伝神傳流秘書大森流居合之事「虎乱刀」
 是は立事也幾足も走り行く内に右足にて打込み血震し納る也 但し膝を付けず
 大森流の虎乱刀は大江先生の追風ですが、走り込んで接近し抜打の一刀で斬り倒しています、特に抜口の見えない様な考慮をせよとは言っていません。
 虎走は、抜口の周囲にも見えない様な動作と刀を下に抜いて斬り上げて一刀で倒す心得であったのでしょう。
 追風も虎走りも、いつの間にか心得を忘れ、ドタバタ足音を立てて見たり、抜口など気にもせず抜き付けたりしています。
 是は、その様な想定で、廻りの者を気にせず、逃げる敵を追いかける想定に過ぎません。
 間境でドタドタ足踏みして、敵に我が接近を知らしめて抜き付けるなども掛け声を懸けると同様の一つの替え場面でしょう。
 抜き足差し脚忍び足で追風を演じている「虎乱刀」を拝見しましたが、「虎走」と混線した先師がおられたのでしょう。
 抜刀の方法も「刀を逆さまに抜きつく」などは失伝してしまっている様です。下からの切り上げは、防ぎ辛いもので仕損じない運剣の一つです。
 面白いのは、一刀目の抜付け、二刀目は真向に打込むに際しての左足捌が右足に左足膝を引き付け跪き右足を踏み込み打込むか(細川義昌先生系統)、抜き付けた足のまま跪いて打込むか(大江正路先生系統)などの教えもあって愉快ですが、状況次第でしょう。
 演武会では、「俺が正しい」などと馬鹿を言ってないで、流派の教えで演じていればいいだけです。

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2018年7月 9日 (月)

曾田本その1の6英信流居合目録秘訣原文2上意之大事1虎走

曾田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
2、上意之大事
1虎走
 仕物抔云付ラレタル時ハ殊二此心得入用也其外トテモ此心得肝要也
 敵二間モ三間モ隔テゝ坐シテ居ル時ハ直二切事不能其上同坐シ人々居並ブ時ハ色々見セテハ仕損ル也サワラヌ躰二向フヱツカツカト腰ヲカガメ歩行内二抜口ノ外へ見ヱヌ様二躰ノ内ニテ刀ヲ逆サマ二抜キツクルヘシ虎一足ノ事ノ如シト知ル可シ大事トスル所ハ歩ミ二アリハコヒ滞リ無ク取合スル事不能ノ位ト知ルベシ
*
読み
 仕物抔云いつけられたる時は殊に此の心得入用也 其の外とてもこの心得肝要也
 敵 二間も三間も隔てゝ坐して居る時は直ぐに切る事能わず 其の上同坐し人々居並ぶ時は 色々見せては仕損じる也 さわらぬ躰に向うへつかつかと腰を屈め歩み行くうちに 抜き口の外へ見えぬ様に躰の内にて刀を逆さまに抜付くべし 虎の一足の事の如しと知るべし 大事とする所は歩みにあり 運び滞りなく取合いする事能えずの位と知るべし
*
参考
古伝 神傳流秘書 抜刀心持之事 虎走
 居合膝に坐して居立って向へ腰をかがめつかつかと行抜口の外へ見へぬ様に抜付打込納 又右の通り腰をかがめ後へ引抜付打込也
 居合膝に座して居 立って向こうへ腰を屈めつかつかと行き 抜口の外へ見えぬ様に抜き付け打込む 又 右の通り腰を屈め後ろへ引き抜き付け打込む
 
 
 

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2018年7月 8日 (日)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く1外之物ノ大事7詰合ハ二星

曽田本その1
6。英信流居合目録秘訣読み解く
1、外之物ノ大事
7詰合ハ二星
 詰合ハ二星二ツヅマル敵之拳也二星一文字ト云時ハ敵ノコブシヲ抜払フ事也惣而拳ヲ勝事極意也
読み及び読み解く
 この教えも現代居合しか知らず、居合の業と其の順番だけを指導された者には、なぞなぞのようなもので何も理解できない所です。
 河野百錬先生が昭和30年に発行した「無双直伝英信流居合兵法叢書」がありながら最高段位の先生すら知らなかったと云うばかりです。
 ここで云う詰合は古伝神傳流秘書にある「重信流也 従是奥之事極意たるに依而格日に稽古する也」と前書きのある「詰合」でしょう。
 詰合の業は古伝では「詰合」10本、江戸末期以降のものは「詰合之位」と呼ばれ11本となります。
 「‥之位」などの呼び名は土佐の居合にはもともと無かったものでどこぞからの借り物か、当時の如何にもとする流行用語でしょう。
 「詰合ハ二星」を読んでみます。
 詰合は二星に約まる(つづまる) 敵の拳也 二星一文字と云う時は 敵の拳を一文字に抜き払う事である そうじて拳に勝つ事が極意である
 土佐の居合の免許皆伝である根元之巻に「・・霊夢有大利得以腰刀三尺三寸勝九寸五分事柄口六寸勝之妙不思議之極意一国一人之相伝也腰刀三尺三寸三毒則三部に但脇指し九寸五分九曜五古之内証也・・」と示唆しています。
 是もこのままでは理解不能な極意の伝授ですが居合の根元を追及していけば自ずから開けてくるはずです。
 詰合の業のうち相手の抜き付けを下で受けて打ち返す業は十本中以下の五本の様になっています。
1、発早
 楽に居合膝に坐したる時相手左の足を引下へ抜付るを我も左の足を引て虎の一足の如く
 抜て留め打太刀請る上へ取り打込み勝也
2、拳取
 如前に足を引抜合我左の手にて相手の右の拳を取り制す也
3、岩浪
 拳取りの通り相手より拳を取りたる時我よりも前の如く取り我が太刀を放し右の手にて敵の
 肘のかがみを取り左脇へ引たおす
4、八重垣
 如前抜合たる時相手打込を我切先に手を懸けて請け又敵左より八相に打を切先を上にし
 て留又上より打を請け相手打たんと冠を直に切先を敵の面へ突詰める
5、鱗形
 如前抜合せ相手打込むを八重垣の如く切先に手を添へ請留直に敵の太刀を摺落し胸をさす也
 他の五本も拳を捕えてしまえば相手は何も出来ないものです。
 何故、初動が「発早」の抜き付けの「相手左の足を引下へ抜付るを我も左の足を引て虎の
 一足の如く留め」なのでしょう。
 もともと、虎の一足でも、座した相手の足に抜き付けるなど術理に合わない運剣でしょう。当然相手の上半身に抜き付けるものでしょう。
 詰合は双方居合膝から刀を抜き乍ら左足を退いて抜き付けています。相手が左足を引いて抜き付けて来ても膝と膝で三尺離れて居れば、体軸の間は少なくとも後二尺ありますから五尺の開きがあります、左足を引いてしまうと五尺以上の間になって相手の切先はチョット体を引けば我が体に届かない。
 従って相手との居合膝の膝間隔は二尺が良い所です。大小詰を考慮すればなおさらです。相手の抜き付けんとする拳を目がけて抜き払うのがこの詰合の極意でしょう、次の運剣動作は請け留められた場合の応用動作に過ぎません。それをこの英信流居合目録秘訣の外之物ノ大事詰合ハ二星は述べているのです。
 横一線の抜き付けを双方でやったのでは、怪我だらけです。稽古では斜めに抜き合わせているだけでしょう。
 二星はここでは拳だと云っています。土佐の居合に影響を及ぼしている新陰流では拳以外に敵の眼を「目付二星之事」の教えもあります。次いでですが柳生新陰流の柳生兵庫助利厳による「始終不捨書」には「六寸之事」として我が太刀先三寸と敵の拳三寸と合わせれば六寸という浅く拳に勝つ、柄口六寸の教えもあります。
 ある地区の指導者は物打で斬り込み更に深く斬り込む運剣を可として、恥ずかしげもなく指導して居ました。これは土佐の居合の根元を伝えるだけの力量の無い、仮想敵相手の一人演武だけを頼りにした武的演舞の教えによるのでしょう。
 詰合之位として手附とビデオを頼りに稽古され是は極意の組太刀だから範士以上が習うものなどと勝手に云っていますが、刀を持った踊りの稽古に過ぎません。わけもわからない者の教えは無双直伝英信流では無いでしょう。
 ある無双直伝英信流の流派の先生は「大江正路先生によって伝承された無双直伝英信流は根元之巻とその目録は居合と居合道形7本だけである、詰合などを稽古し公の場所で演じるなどとんでもない、見つけ次第に除名だ」と息巻いています。その癖どこぞの柔術やら運剣を取り込み何を言っているのか疑問だらけです。
 大江先生の時代は、廃藩置県、廃刀令などによって武士の失業によって、古来からの武術は伝承が立ち消える寸前だった、また日本が欧米に追い付け追い越せの時代で日本の伝統の幾つかは消えざるを得なかった時代です。
 大江先生には無双直伝英信流の伝書類も業技法の伝授も充分なされたのか疑問だらけです。然し今日のこの流の繁栄の礎を築かれこの文化の消滅を防がれた事は何よりの事です。
 この時代には、其の時失念したものを古伝を頼りにしてでも呼び覚ますことが出来ない様な事では、無双直伝英信流の指導者などと云えるわけは無いでしょう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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2018年7月 7日 (土)

曾田本その1の6英信流居合目録秘訣原文1外之物ノ大事7詰合ハ二星

曾田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
1、外之物ノ大事
7詰合ハ二星
 詰合ハ二星二ツゞマル敵之拳也二星一文字ト云時ハ敵ノコブシヲ抜拂フ事也惣而拳ヲ勝事極意也
読み
 詰合は二星につづまる敵の拳也 二星一文字と云う時は敵の拳を抜き払う事也 そうじて拳を勝事極意也

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2018年7月 6日 (金)

曾田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く1外之物ノ大事6大小詰之極意

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
1、外之物ノ大事
6大小詰之極意
 大小詰之極意ハ霞蹴込二ツヅマル夫トハ敵ノ眼ヲ我手ヲ以拂フ敵オクルゝ所ニテ勝手ウゴカシ難キトキハ我頭ヲ敵ノ顔二突付ベシ又ハ足ニテ敵之陰嚢ヲ蹴ル也
読み及び読み解く
 大小詰の極意は霞蹴り込みに約まる それとは敵の眼を我が手を以て払う 敵が憶する(遅滞スル)ところにて勝 手を動かし難き時は我が頭を敵の顔に突き付くべし 又は足にて敵の陰嚢を蹴る也
 大小詰は古伝神傳流秘書の大小詰を指しているのでしょう。大小詰ですから我は太刀、敵は小太刀を帯して、居合膝で詰合います。
 膝と膝の間隔は一尺~一尺五寸でしょう。それでも双方の中心軸では三尺から三尺五寸の間があります。
 大小詰の心得には「是は業に有らざる故にっ前後もなく変化極りなし始終詰合組居合膝に坐す気のり如何様ともすべし先ずおおむね此の順にする」、順番は気分が乗った所でやればいいと云っています。
 大小詰は「重信流」と添え書きがありますから、英信流より古いものでしょう。
1、抱詰
 「楽々居合膝に詰合たる時相手両の手にて我が刀の柄を留る時我両の手を相手の両の肘に懸け少し躰を浮き上がり引いて其の儘左の後の方へ投げ捨る」
2、骨防扱(ほねもぎ)
 「立合の骨防返に同じ故になし                                                                                 骨防返:相懸りに懸りて相手我刀の柄を留めたる時我右の手にて柄頭を取り振りもぐ也」
3、柄留
 「抱詰の通り両の手にて柄を取り下へ押付られたる時向のわきの辺りへ拳にて當扨我右の足にて相手の手を踏み柄をもぐ常の稽古には右の足を押膝にてこぜもぐ」
4、小手留
 「立合の鍔打返に同じ故に此の處にては不記 鍔打返:相懸りに懸り我刀を抜かんとする其の手を留られたる時柄を放し手を打もぐ也」
5、胸留
 「詰合たる時相手我が胸を取り突き倒さんとする時我右の手にて其手を取り左の足を後へ引柄頭にて相手の脇へ當る又引く時は随って抜突く也」
6、右伏
 「我右の方に相手並び坐し柄を取られたる時直に我右の手を向の首筋へ後より廻し胸を
取り押伏せんとするに相手いやとすくばるを幸に柄を足に懸て後へ投倒す 又抜かんとする手を留められたる時も右の通りに取倒す」
7、左伏
 「是は左の手を取る也事右伏に同左右の違ばかり也尤も抜かんとする手を留められたる時は柄を放し身を開きて脇つぼへ當り又留られたる手を此方より取引倒す事も有也」
8、山影詰
 「是は後より相手組を刀を抜き懸其手を切ると一拍子に我も共に後へ倒るゝ也」
以上八本
 大小詰の手附を読むと大小詰之極意が霞蹴込に集約されている事が良くわかります。大小詰、大小立詰、大剣取は現代居合の道場ではその名すら知らない道場も多く、殆んどが長い刀を抜き付ける稽古ばかりです。
 無双直伝英信流居合兵法は総合武術であったことを忘れていたのでは、目録止まりでも仕方がありません。

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2018年7月 5日 (木)

曾田本その1の6英信流居合目録秘訣原文1外之物ノ大事6大小詰之極意

曾田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
1、外之物ノ大事
6大小詰之極意
 大小詰之極意ハ霞蹴込二ツゞマル夫トハ敵ノ眼ヲ我手ヲ以拂フ敵ヲクルゝ所ニテ勝手ウゴカシ難キトキハ我頭ヲ敵ノ顔二突付ベシ又ハ足ニテ敵之陰嚢ヲ蹴ル也
読み
 大小詰の極意は霞蹴り込みにつづまる 夫れとは敵の眼を我が手をもって払う 敵遅るゝ(憶るゝ・臆るゝ)所にて勝つ 手動かし難き時は 我が頭を敵の顔に突き付くべし 又は足にて敵の陰嚢を蹴る也
 
 

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2018年7月 4日 (水)

曾田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く1外之物ノ大事5雷電・霞八相

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
1、外之物ノ大事
5雷電・霞八相
 雷電霞ノニヶ条當流極秘中ノ秘二而大事此外二無請流二心明ラカ二して敵ノ働ヲ見ト云教有レ共當流ニワ雷電ノ時ノ心亦霞ゴシ二見ルガ如クノ心ノ所二大事ノ勝アル事ヲ教ル也夢ウツツノ如クノ所ヨリヒラリト勝事有其勝事無疵二勝ト思フベカラズ我身ヲ先ヅ土壇トナシテ後自然二勝有其勝所ハ敵ノ拳也委シキ事ハ印可二有八相ハ四方八方竪横自由自在ノ事也故二常二事形ノ修錬熟セサレハ時二臨テ其習イ出ル事無シ
 本文二ハ教ヲ広ク云亦曰八相二打下ロス所ニテ大事ノ勝有則二星也
読み
 雷電霞の二ヶ条は当流の極秘中の秘にして大事 このほかに無し 請け流しに心明らかにして敵の働きを見ると云う教え有れども 当流には雷電の時の心又霞ごしに見るが如くの心のところに大事の勝ある事を教える也 夢現の如くのところよりひらりと勝事有 其の勝事無疵に勝と思うべからず 我が身をまず土壇となして後 自然に勝有其の勝ところは敵の拳也
 くわしき事は印可に有り 八相は四方八方竪横自由自在の事也 故に常に事形の修錬熟せざれば時に臨みて其の習い出事なし
 本文には教えを広く云う 又曰く八相に打ち下ろすところにて大事の勝有すなわち二星也
読み解く
 是は、なぞなぞです。雷電と霞八相を合わせて説明しています。当流の極秘中の秘でこのほかには無いものだと云います。
 受け流しのさい、心を広く持ち、敵の動作を良く見て受けると云う教えは有る。
 当流では雷電の時の心持ちや霞ごしに見るような心持ちに勝がある事を教えるものである。
 雷電及び霞八相は老父物語の処に業が述べられていました。
「雷電 片手に持ち引っ提げ敵の両眼へ突き込む否や跡へ引き又敵打ちかくる処を請け込敵の右の足を打ち外し打つ也 是是極一刀石甲万字軍用の太刀口伝大事」
 是はどうやら武蔵の二刀流の様です。霞八相などは新陰流のようです。「・・敵切れば切るべし切らずば切るまじ、又するすると行かずして身を沈み車に構え敵切って懸かるその拍子を受けず其の間合いを勝事・・」。真陰流の一刀両断でしょうか。 和卜(かぼく)勝の教えなどもありました。
 土佐に居合をもたらした林六大夫守政が江戸勤番の時に習い覚えた剣術の数々とその極意でしょう。
 夢現の処をひらりと勝、其勝ところは身を土壇として勝のであって勝つ部位は敵の拳であると云い切っています。
 くわしき所は印可にありとさらりとこの流の根元之巻にいう処の「柄口三寸の勝」を示唆しています。
 分かりにくい文章ですが、何度も読み直して行くうちに、居合に通ずる剣術の極意の心持ちが理解されてくるところです。
 「外之物ノ大事」の意味するところも、当流に無い他流の極意も飲み込む心得を諭されている様に思います。
 其の域に達しなければなぞなぞで終わってしまう処でしょう。

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2018年7月 3日 (火)

曾田本その1の6英信流居合目録秘訣原文1外之物ノ大事5雷電・霞八相

曾田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
1、外之物ノ大事
5雷電 霞八相
 雷電霞ノ二ヶ条當流極秘中ノ秘二而大事此外二無請流二心明ラカ二シテ敵ノ働ヲ見ト云教有レ共當流二ワ雷電ノ時ノ心亦霞ゴシニ見ルガ如クノ心ノ所二大事ノ勝アル事ヲ教ル也夢ウツツノ如クノ所ヨリヒラリト勝事有其勝事無疵二勝ト思フベカラズ我身ヲ先ツ土壇トナシテ後自然二勝有其勝所ハ敵ノ拳也委シキ事ハ印可二有八相ハ四方八方竪横自由自在ノ事也故二常に事形ノ修練熟セサレハ時二臨テ其習イ出ル事無シ
 本文二ハ教ヲ広ク云亦曰八相二打下ロス所ニテ大事ノ勝有則二星也
読み
 雷電霞の二ヶ条當流極秘中の秘にして大事此外に無し 請流しに心明らかにして敵の働きを見と云う教え有れ共 當流には雷電の時の心 亦霞ごしに見るが如くの心の所に大事の勝ある事を教る也  夢うつゝの如くの所よりひらりと勝つ事有 其の勝事無疵に勝と思うべからず我身を先づ土壇となして後自然に勝有 其の勝所は敵の拳也 委しき事は印可に有 八相は四方八方竪横自由自在の事也 故に常に 事 形の修練熟せざれば時に臨て其の習い出る事無し  
 本文には教を広く云う 亦曰く八相に打下ろす所にて大事の勝有 則ち二星也

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2018年7月 2日 (月)

曾田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く1外之物ノ大事4惣捲形十

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
1、外之物ノ大事
4惣捲形十
 竪横無尽二打振テ敵ヲマクリ切ル也故二形十ト有也常二稽古ノ格ハ抜打二切リ夫ヨリ首肩腰脛ト段々切リ下ゲ又冠リ打込也
読み及び読み解く
 竪横無尽に打ち振り敵を捲り切るものである 故に形十とある 常に稽古の形は抜打に切り それより首肩腰脛と段々切り下げ 又冠り打込むのである
 「常に稽古の格は抜き打に切り」は常に稽古では一刀ごとに納刀して抜打ちしろと云うのでしょうか。それでは現代居合の大江先生による奥居合立業の「惣留」です。
 ついでに大江先生の惣留の元になった古伝は神傳流秘書の抜刀心持之事「放打」です。
 「行うち片手打に切り納めては又切る数きわまりなし」
 古伝神傳流秘書抜刀心持之事「五方切」が英信流居合目録秘訣の「惣捲形十」に相当するでしょう。
 「歩み行くうち抜て右の肩へ取り切り 又 左より切り 又 右より切 又 左より切り 段々切り下げ其の侭上へ冠り打込也」
 抜いて八相に取り敵の左首を切る、逆八相に取り右肩を切る、・・段々切り下げ上段に振り冠って真向に打ち込むのでしょう。
 大江先生は奥居合立業三本目の」「惣捲り」に取り上げて伝えています。
 「右足を少し出して、刀を抜き、其足を左足に引き寄せ、右手を頭上へ廻し右肩上に取り、左手を掛け稍や中腰にて(右足より左足と追足にて)敵の左面を斬り、直に左肩上に刀を取り、追足にて敵の右肩を斬り、再び右肩上段となりて、敵の左胴を斬り、再び左肩上段となり右足を踏み開き敵の右腰を目懸け刀を大きく廻し体を中腰となして敵の右腰を斬り、中腰のままにて上段より正面を斬る、(左面斬り込みより終りの真面に斬ることは一連として早きを良しとす、)」
 大江先生の総捲りは抜いて右肩から左面に打ち込む、所謂八相からの斬り込み、次は左肩ですから逆八相から敵の右肩への斬り込む古流剣術の運剣法を当たり前にしています。
 足捌きは順逆共に右足前の方法でしょう。歩み足の方法も出来る処ですが何故でしょう。
 第20代河野百錬先生は大日本武徳会の統一理論からこの八相からの斬り込みを上段からの斬り込みに変えてしまいました。無双直伝英信流正統会の惣捲がそれです。
 「前進しながら右足の出たる時刀を水平に抜きかけ、敵刀を受流し乍ら右足を左足に退き付け上段となり、敵の退くに乗じてすかさず右足を踏み込み敵の左面に斬付ける。次に左面に斬込みたる刀の途より上段に冠りながら右足を踏み込むや(左足も連れて)敵の右肩より袈裟に斜めに斬込む。次に同要領にて上段となり右足を踏込みて(左足も連れて)敵の左胴に斜に斬込む。次に同要領にて上段より刀先を左方に廻し刃を前に水平に構えるや右足を深く踏込み(左足はその位置に)乍ら体を沈めて横一文字に腰部を斬り放ち、上段となるや直に右足より少し踏込む心持にて敵の真向に斬下す」
 すべて上段から斜め切りで、右足を踏込み斬付け左足を連れる足捌きも竹刀剣道に依る方法でしょう。
 下村派細川義昌先生系統である尾形郷一貫心先生の無双神伝抜刀術兵法の「五方斬」
 「正面へ歩み往きつつ鯉口を切り左足踏出し、右手を柄に掛け右足踏出す、同時に刀を引抜き刀尖を左後へ突込み、頭上より右肩へ執り対手の左大袈裟に斬込み、其刀を右上より振返へし頭上より左肩に執り対手の右大袈裟に斬込み、又、其刀を左上より振返へして右腕外へ執り、腰を低めて、対手の左腰より横一文字に斬込み、甲手を返へして左腕外へ執り、更に腰を下げ対手の向脛を横に拂ひ腰を伸しつつ、諸手上段に振冠り(真向幹竹割に)斬下し、刀を開き、納め終る」
 古伝の趣を残した雰囲気を感じます、足裁きが文章では不明瞭なのですがご教示いただきたい処です。
 奥居合は「格を放れて早く抜く也 重信流」と神傳流秘書の抜刀心持之事に付されています、格とは「かたち」に拘るなと戒めている処です。
 最近は更にコンパクトな動作を要求する様で、全て上段に振り冠ってから右足を踏込み左右の順逆の斜め斬り込みで、敵の体を斬り抜かず、敵の中心軸までの斬り込みで刀を返すとか、敵に受け太刀となられ乍ら切り返すなど竹刀剣道の稽古そのものを得々と指導される先生もおられる様です。
 
 

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2018年7月 1日 (日)

曾田本その1の6英信流居合目録秘訣原文1外之物ノ大事4惣捲形十

曾田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
1、外之物ノ大事
4惣捲形十
 竪横無尽二打振テ敵ヲマクリ切ル也故二形十ト有也常二稽古ノ格ハ抜打二切リ夫ヨリ首肩腰脛ト段々切リ下ゲ又冠リ打込也
読み
 竪横無尽に打ち振りて敵を捲り切る也 故に形十と有也 常に稽古の格は抜打に切り それより首肩腰脛と段々切り下げ又冠り打込也
参考 
 古伝 神傳流秘書 抜刀心持之事 五方切
 歩ミ行内抜て右の肩へ取り切又左より切又右より切又左より切段々切下切り下げ其侭上へ冠り打込也
読み
 歩み行くうちに抜きて右の肩へ取り切り 又左より切り 又右より切り 又左より段々切り下げ 其の侭上へ冠り打込む也
 
 

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