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2018年8月31日 (金)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く4居合心持肝要之大事3太刀目附之事1

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
4、居合心持肝要之大事
3太刀目附之大事(その1)
 敵ノ足二目ヲ付ケベシ是ニテ場合能ク知ルゝ而巳成ラズ臆セザル也是ヲ上見ヌワシノ位トモ云ナリ心ハ下二有ッテ事サ上二速二應ズル油断無ノ心ナリ
読み及び読み解く
 敵の足に目を付けるべきである、是に依って場の状況が能く知れる のみならず臆する事も無い 是を上を見ざる鷲の位とも云うのである 心は下に有ってするべき事は上にあり速やかに応ずることが出来る 油断の無い心である。
 目付けについては剣術の各流派によりそれぞれの考えがあるのか一定したものは無さそうです。
 この敵の足に目を付けていますと、すっ飛んできて注意が飛ぶでしょう。一般には遠山の目付けと称する相手の目から肩、胸、肱、拳の辺りを遠い山を見る様に、一点に居付かない目付けを推奨されます。
*
 そこで目付についてどのように心得が伝えられているか現代のテキストを調べて見ました。
 古伝研究の為に先生方のテキストを引用させていただきます。
椎木宗近先生著2012年発行「天真正伝香取神刀流」
 「二之目付之事:二之目付とは敵に二つの目付有と云う事なり。先づ敵を一体に見る中に目の付け処二つあり。切先に目をつけ拳に目を付く是れ二つなり。故に拳うごかねばうつことかなわず、切先うごかねばうつことかなわず、是れ二つの目をつくる所以なり。
 敵にのみ目をつけ手前を忘れてはならぬ故、己をも知り彼をも知る要心あるを以てかたがた之を二つの目付と云うなり。」
大竹利典先生著平成26年発行「平法天真正伝香取神道流」
 「観見二つのこと」見るということは、肉眼で見ること・・観とは心で見ることであって、これを心眼といいます。心眼とは、種々の事を分析して心に留めることです。・・それらの一つひとつに心をうばわれてはなりません。状況は常に変化しているので、とらわれてはいけないのです。・・」
樋口一著昭和11年「念流の伝統と兵法」
 「目付と云ふあり。目付は敵の顔を第一とし、次に拳に目を付けべし、拳に目を付ける時は遅く見へて凌ぎ易き處なり。勤め知るべし。
柳生宗矩著寛永9年1632年「兵法家伝書」渡辺一郎校注岩波文庫
 「兵法家伝書の殺人刀では、二星・嶺谷・遠山の三ヶ条は目着也。二星は敵の柄を握った両手の拳の動き。
 嶺谷は腕のかがみ、両腕の伸び縮み、上段に構えている相手に対する目付.右肱を嶺、左肱を谷とよぶ。
 遠山は両の肩先、胸の間をいう。うちこむ時は嶺の目付け、切合わせ、組物との時は遠山の目付けを心によくかくべし。二星は不断はなれざる目付也。
 二目遣之事:見る様にして見ず、見ぬようにして見て、間々に油断なく、一所に目をおかず、目をうつしてちゃくちゃくと見る也。
 兵法家伝書活人刀では、神妙剣見る事、三段の分別で心にて見るを根本とす。心から見てこそ目もつくべきものなれ。然れば、目にて見るは心の次也。目にて見てその次に身足手にて見るべし。身足手にて見るとは、敵の神妙剣にわが身足手のはづれぬ様にするを身足手にて見ると云ふ也。心にて見るは、目にて見む為也。目にて見るは、足手を敵の神妙剣の座にあてんと云ふ事也。」
*
 柳生新陰流の柳生宗矩による兵法家伝書をそのまま読んでも独特の用語が先へ進ませてくれません。渡辺一郎先生の校注によって読み進みます。
 柳生十兵衛による「月之抄」は宗矩・宗厳の伝が平行的に書かれていて、其の上十兵衛の考えが述べられていて面白いものです。たとえば
「目付三之事 二星 嶺谷 遠山 ニ星之目付之事 
 老父の云く敵の拳両の腕也。此の働きを得る事肝要也。
 亡父の目録には二星不断の目付左右の拳と書せる也。
 私云、二星付けたり色と云心持あり是は二星はあて処なり二星の動きを色と也二星を見んと思ふ心より色々心付く心第一なり重々の心持至極まで是を用る也。亦云二つの星と云心持も二つを一つに見る心持二つは一つなり。亦云目付八寸之心持と云事あり。是と太刀の柄八寸の動きを心懸れば二星色も其内にあると云心を以てなり。此ニ星の習い第一也。是より種々の心持有により初めて心を知と云々・・・」
宮本武蔵の目付はどうでしょう。
円明流三十五箇条
赤羽根瀧夫・大介著 武蔵「円明流」を学ぶより
 「目付の事 目を付くと云う所、むかしは色々あることなれども、今伝うる所に目付けは、大抵顔に付けるなり。目の納めようは、常の目よりも細きようにして、うらやかに見るなり。目の玉、動かさず、敵合ちかくとも、いか程も遠く見る目なり。その目にて見れば、敵のわざは申すに及ばず、左右両脇までも見ゆる目なり。
 観見二つの見よう、観の目強く、見の目よわく見るべし。若又、敵に知らすると云う目あり。意は目に付、心は付かざるもの也能々吟味あるべし。奥の目付け別なり。」
宮本武蔵著渡辺一郎校注 五輪書
 「兵法の目付といふ事 目の付けやうは、大きく広く付くる目也。観見二つの事、観の目つよく、見の目よはく、遠き所を近く見、ちかき所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀をしり、聊かも敵の太刀を見ずといふ事、兵法の大事也。工夫有るべし。此目付、ちいさき兵法にも、大きなる兵法にも、同じ事也。目の玉うごかずして、両わき見る事肝要也。かやうの事、いそがしき時、俄にはわきまへかたし。此書付を覚へ、常住此目付になりて、何事にも目付のかわらざる所、能々吟味あるべきもの也」
宮本武蔵慶長十年落合忠右衛門尉への兵道鏡 
赤羽根瀧夫・大介著 武蔵「円明流」を学ぶより(底本森田栄、魚住孝至翻刻「宮本武蔵」)
 「目付の事 目の付け所と云うは、顔なり。面を除け、よの所に目を付ける事なかれ。心は面にあらわれるものなれば、顔にまさりたる目の付け所なし。敵の顔の見様の事、たとえば一里ばかりもある遠き島に、薄かすみのかかりたるうちの、岩木を見るごとし。また雪雨などの、しきりに降る間より、一町ばかりも先にある、やたいなどの上に、鳥などのとまりたるを、いずれの鳥と、見分くる様なる目つきなるべし。やたいの破風の懸漁、瓦などを見るに同じ。いかにも静まりて、目を付くべきなり。打ち所を見る事悪しし。わきは首を振る事なかれ。うかうかと見れば、五体一度に見ゆる心あり。顔の持ち様、眉間に、皺を寄すべし、額に、皺を寄する事なかれ。教外別伝たり。」
中山博道著剣道手引草
 「眼の付け方 眼は必ず遠山を望見する心持ちにて、一瞥敵の全体に注がねばならないものである。故に何処の点にも注意の欠くる事なく、又何処の点にも注視する事なき眼の練習をしなければならぬ。・・しかしながら一局部のみを注視してはならぬ。尚敵の眼に対しては、特に注意を要するものである。人の心は眼に表はるゝものであるから、敵の虚実を知るには最もよく其の眼に注意する事が必要である。」
高野佐三郎著剣道
 「目の附け方は大体敵の顔面に着目すれども敵の眼・拳等一定の部位に固着するは可ならず。恰も遠山を望むが如く接近せる敵をも成るべく遠く視、敵の頭上より爪先までを一目に見て注意の及ばざる隈なきやう勉むるを要す。
 敵を一体に見る中にも特に重きを置く点二つあり(注目するにあらず)一は剣尖にして一は拳なり。此の二点が動かざれば打出すを得ず。敵下段なれば動作の起りがまづ剣先に現はれ、上段八相の如きにありては拳に現はる、此の二点に注意し、早く敵の動作の起りを察して之を押さへ、又は先を撃つ等敵宜の処置に出べし(古来これを二の目付けと称せり。又敵にのみ目を付け我を忘るべからず、彼我の二つに目を付くる要ありとて之をも二の目付けといへり)撃たん突かんとする意志は悉く眼に現はるるものなるが、殊に我が敵よりも未熟なる時は忽ち我が眼によりて看破せらるるものなり、故に態と敵の眼を見合はずして帯の辺りなどに注目し敵を迷はすことあり(これを脇目附といひ又帯の矩と称して教へたる流儀あり)。」
 この太刀目附を集めているうちに面白くなってきました。今回はここまでとして次回にもう少し捜してみます。
 口伝と称して出鱈目な教えも多く、何故と聞かれても「そのようにならった」と答えるだけの諸先輩や、目付けの瞬間だけをとらえて「めつけがわるい」と云う形ばかりの、「のうなし」も多いものです。
 
 
 
 
 
 
 

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