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2018年9月

2018年9月30日 (日)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣原文9相間之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣原文
9、相間之事
 我ト敵間タ(多の誤写か)有時ハ敵ノ来ルヲ待ッテ行ベカラス待ニ利有リ一ニハ身ヲ苦シメザル利アリ二ニワ心ドヲセズ三二ハ工夫スル間アッテ吉四ニ悪所二行掛ラス天利自然ノ利アリサレ共我ガ待所アシクバ前後左右二心ヲ付利能シ
読み
 我と敵 間多く有る時は敵の来るを待って行くべからず 待つに利有り 一つには身を苦しめざる利あり 二つには心が動ぜず 三つには工夫する間あって吉 四つには悪所に行き掛らず天の利自然の利有り されども我が待つ悪しくば前後左右に心を付けなば利良し

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2018年9月29日 (土)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣読み解く8雷電之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣読み解く
8、雷電之事
 雷鳴時稲光ヲ我ガ後ヱ受雷二敵ノヲクルゝ所打可シ
 読み及び読み解く
 雷の鳴る時は稲光を我が後ろへ受け 雷に敵が臆した處を打つのである
 後ろには眼は無いし、雷鳴と稲光はビクとしても正面に受ける者の方が多少は気が散るかも知れません。
 この極意は、第9代林六大夫に伝えた誰かのものか、林六大夫の独創か判りませんが「・・であろう」と云った妄想の感じがします。
 戦う相手もそれなりの人であればものに動じない修業は当然の事だろうと思います。但し軍を率いての場合は部下の格差もあるでしょうからこの教えに従い、場取りには十分の配慮が必要な気もします。
 机上のっ空論ですが・・思いつくままに。

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2018年9月28日 (金)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣原文8雷電之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣原文
8、雷電之事
 雷鳴時稲光ヲ我ガ後ヱ受雷二敵ノヲクルゝ所打可シ
読み
 雷の鳴る時 稲光を我が後ろへ受け 雷に敵の臆るゝ處を打つべし

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2018年9月27日 (木)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣読み解く7寒中天之事

曽田本その1
7.居合へ兵法極意巻秘訣読み解く
7、寒天之事
 寒夜ハ手足冷兵器持二不覚取落ス事アリ故二口二生姜ヲフクミ手足二酒ヲヌリテヨシ第一コセフヲ一ツブヲ二ツ二割リ火ニテイリ能ク帋二包テホソ二當置可手足コゞヱズ
 丁子ノ油ヲワタ二シテ印籠二入レ持ツ可シ手足二ヌリテコゞエザルナリ□野往来ノ時ヌレバ毒虫ナド近ツク事曽而無之也
読み及び読み解く
 寒中天之事と有るのですが「中」の字に〃〃×が曽田先生によって書かれています。内容から見れば「寒中之事」でも「寒天之事」でも差支えない、むしろ「寒夜之事」でもあるでしょう。
 寒い夜は手足が冷えて兵器を持つのに思わず取り落す不覚がある そこで口に生姜を含み手足に酒を塗っておくのが良い 第一は胡椒の粒を二つ割にして火で炙って 紙に包んで臍に当てて置けば手足が凍える事は無い。
 丁子の油を綿にしませて印籠に入れ持って行くと良い 手足に塗れば凍える事は無い 山野往来の時に塗れば毒虫などが近付くことな大方無いのである。
 生姜は生であればジンゲロールが血管を拡張する働きがあるそうで血流効果が有りそうです。生姜を加熱したり乾燥させればジンゲロールがショウガオールになり呑めば体の芯からジワリと温めるそうです。
 胡椒は含まれている辛み成分のピぺリンが血行を良くし食欲増進、栄養素の吸収、脂肪の燃焼、抗酸化作用、発汗作用などあるそうです。但し食べ物に入れての事ですから紙に包んで臍に当てて置いても効果があるとも思えません。
 酒を手足に塗り込んで寒さ知らずの効果はどうでしょう。寧ろ酔わない程度に飲んだ方が良さそうですが。
丁子油については、刃物の錆止めとして昔から言われていますが、椿油や鉱物油が現在は一般的の様です。錆止め効果の程ははっきりしていません、いつの時代かに日本に持ち込まれ椿油より高価だったりして、商売人に乗せられた可能性は高そうです。
 手足に塗る効果はどうなんでしょう。登山をしていた頃、冬山などではグリセリンをべたべた塗った事を思い出しました。
 昔からの言い伝えをわけも解からずに後生大事にしている事も多いのですが、「何故」を捜せば「なるほど」もあれば「「うそ」もあります。
 古伝も同様ですが、やって見て現代居合との違いを認識し何が本物か見極めて見たいものです。
 本物を求めだすと、「そのように習った」としか言えない指導者にはついて行けません。自分でやるしかないのです。
 
 
 
 

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2018年9月26日 (水)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣原文7寒中天之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣原文
7、寒天之事
 寒夜ハ手足冷兵器持ニ不覚取落ス事アリ故二口二生姜ヲフクミ手足二酒ヲヌリテヨシ第一コセフヲ一ツブヲ二ツ二割リ火ニテイリ能ク帋二包テホソ二當置可手足コゝヱズ
 丁子ノ油ヲワタ二シテ印籠二入レ持ツ可シ手足二ヌリテコゴヱザルナリ□(山、亦)野往来ノ時ヌレバ毒虫ナド近ツク事曽而無之也
読み
 寒い夜は手足冷えて兵器を持つに覚えず取り落す事あり 故に口に生姜を含み 手足に酒を塗りてよし 第一は胡椒を一粒を二つに割り火にて煎り 能く紙に包みて臍(ほぞ、へそ)に當て置くべし 手足凍えず
 丁子の油を綿にして印籠に入れ持つべし 手足に塗りて凍えざるなり □(山、又)野往来の時塗れば毒虫など近づく事総じて之れ無きなり

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2018年9月25日 (火)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣読み解く6雪中之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣読み解く
6、雪中之本
 地二雪ノ積リナバ間ヲ隔テ敵ノ来ルヲ待ツベシ我行ベカラス敵雪二辷リコロブ物也地二積ラズハ雨中ノ心得ト同前上段ヨシ
 読み及び読み解く
 地に雪が積もっているならば 間を隔て敵の攻め込んで来るのを待つのがよい 我は進んで間を詰めようとしてはならない 敵は間を詰める事ばかり心がけて雪に辷って転ぶものである 雪が地に積もらない様な時は雨中の心得と同様に頭を垂れて雪が顔に掛らないようにして敵の太刀構えを見ながら 太刀を上段に構え 敵が仰向く様に誘い 敵の顔に雪が降りかかり眼が見えにくくなると思うや 打ち下ろす
 雨は降っても雪は大したことも無さそうな土佐の居合之心得です。恐らく第9代林六大夫が江戸で習った時に聞かされた教えでしょう。
 あまり有効な方法とも思えませんが、拮抗した状況を破るには、太陽も月も暗闇も、風や雨や雪も場の条件を使いこなして有利を得るものだと述べているのでしょう。

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2018年9月24日 (月)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣原文6雪中之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣原文
6、雪中之事
 地二雪ノ積リナバ間ヲ隔テ敵ノ来ルヲ待ツベシ我行ベカラス敵雪二辷リコロブ物也地二積ラズハ雨中ノ心得ト同前上段ヨシ
読み
 地に雪の積りなば間を隔てて敵の来るを待つべし 行くべからず 敵は雪に滑り転ぶものなり 地に積もらずば雨中ノ心得と同前 上段よし

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2018年9月23日 (日)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣読み解く5雨中之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣読み解く
5、雨中之事
 間ヲ積り間ヲ隔て頭ヲタレ敵ノ兵器ノ色ヲ見ル可シ扨我ガ太刀ハ上段二構テ敵ノアヲノク様二ハカロフ可シ
読み及び読み解く
 敵との距離を測って 間を稍々隔てて頭を低く垂れて敵の武器の状況を見極めるのである さて 我が太刀は上段に構えて敵が仰のく様に計らう事が大切である
 雨の日の仕合では、上を向くと眼に雨が入って遅れを取る、其処で刀を上段に構えて頭を低く垂れて、間合いを計って間を常よりも広く取り、上目遣いに相手の武器の状況を見て、切先を前後に綾を切る様にしながら、敵が切先を気にして上を向くや雨粒が眼に入って見にくくなった瞬間に打ち込んで勝負をつける。
 「アオノク様二ハカロフ可シ」では突き放されてしまいそうです。上段の構えで綾を切るよりも、稍々遠間から上段の切先を徐々に下げながら間を詰めて行き、敵が我慢できずに我が切先を越して打込まんと上向きになるや突き込んで行く。色々方法はありそうです。然しこの様にしよう、あの様にしようなど算段をして見ても敵の乗りが悪ければ意味なしです。
 下俯いているのですから、打ち込まれれば負けてしまいそうです。

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2018年9月22日 (土)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣原文5雨中之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣原文
5、雨中之事
・ 
 間ヲ積リ間ヲ隔テ頭ヲタレ敵ノ兵器ノ色ヲ見ル可シ扨我ガ太刀ハ上段二構テ敵ノアヲノク様二ハカロフ可シ
読み
 間を積り 間を隔て 頭を垂れ敵の兵器の色を見るべし 扨我が太刀は上段に構へて敵の仰のく様に計らうべし

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2018年9月21日 (金)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣読み解く4風吹之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣読み解く
4、風吹之事
 風ハ四季二ヨリテカワル春風ハ地ヨリ空ヱ吹上ル夏ハ中ヲ吹也秋ハ上ヨリ下ヱ吹冬ハ下ヲ吹右ノ心ヲ以テ風ヲ背二受テ働ベシ敵ヲ風二向ハセルヨフ二計ル可シ眼クラミテ先ヲ得見ヌ也家内ニテハ自家他家ニテハ壁ヲ後ロカ右二ウクベシ戸障子を後ロ二ウクベカラズ外ヨリ人来テアシゝヒビキ驚クモノナリ心得ベシ
読み及び読み解く
 風は四季によって変わる 春風は地より空へ吹き上げる 夏は中を吹くのである 秋は上より下へ吹き 冬は下を吹く 右の心を以て風を背に受けて働くのである 敵を風に向かわせるように計るのである 眼くらみて先を見えぬのである 家の内にては家により 他家(外家 家の外)では壁を後ろか右に受けるのである 戸障子を後ろに受けるべきではない 外より人が来て悪い 響き驚くものである
 風の吹き方を述べていますが、地方や地形などで一概に言えるか判りません。季節風の風の場合は夏は南風、冬は北北西などと大雑把にとらえています。海風と山風などもあります。
 気圧の状況によって風は吹くのでしょうから、季節やその日の状況で吹き方をキャッチして風を背に受ける様な場の取り方を考えろという事でしょう。極意とは其処まで意識できるようになれということでしょう。
 「家内二テハ自家他家二テハ壁ヲ後ロカ右二ウクベシ」の文章は不明瞭ですが家の中で相対した場合、家の外での場合ともに壁を後か右にして対応しろというのでしょう。

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2018年9月20日 (木)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣原文4風吹之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣原文
4、風吹之事
 風ハ四季二ヨリテカワル春風ハ地ヨリ空ヱ吹上ル夏ハ中ヲ吹也秋ハ上ヨリ下ヱ吹冬ハ下ヲ吹右ノ心ヲ以テ風ヲ背二受テ働ベシ敵ヲ風二向ハセルヨフニ計ル可シ眼クラミテ先ヲ得見ヌ也家内二テハ自家他家ニテハ壁ヲ後ロカ右二ウクベシ戸障子ヲ後ロ二ウクベカラズ外ヨリ人来テアシゝヒビキ驚クモノナリ心得ベシ
読み
 風は四季に依りて変わる 春風は地より空へ吹き上げる 夏は中を吹くのである 秋は上より下へ吹き 冬は下を吹く 右の心を以て風を背に受けて働くのだ 敵を風に向かわせる様に計るものである (敵は)眼眩みて先を(が)見えぬものである 又家の内にては家により 他家(外家 家の外)にては壁を後ろか右に受けるのである 戸障子を後ろに受けるべからず 外より人が来て良くない 響き驚くものであって心得る様にすべきである
 

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2018年9月19日 (水)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣読み解く3闇夜之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣読み解く
3、闇夜之事
 ヤミノ夜ハ我カ身ヲシヅメテ敵ノ形ヲ能見透カス可シ兵器ノ色ヲハカルベシ若難所有ラバ我カ前二當テ戦フ可シ敵ノスソヲナクル心持ヨシ
読み及び読み解く
 闇の夜には我が身を沈めて(身を低くして)敵の様子をよく透かして見るのである 兵器が何であるか、遣い様の慣れているものかその様子を計るのである 若し難所が在るならば我が前に難所を当て敵が難所を背になる様にして戦うべきである 身を沈めているのだから敵の裾を薙ぐる心持が良いのである。
孫子の兵法行軍篇
 「凡そ地に絶澗・天井・天牢・天羅・天陥・天隙あらば、必ず亟(すみやか)にこれを去りて、近づく事勿れ。吾れこれに遠ざかり、敵には近づかしめよ。吾はこれを迎え、敵にはこれを背せしめよ。」
 孫子も難所には近づくな、敵に近づかせろ、我は難所を迎える様に前に見て、敵には難所を背にするようにさせろというのです。
 この「闇夜之事」と同じ事を言っています。第9代林六大夫守政は能く兵書を学んでいた様です。
 突然説明も無く「敵の裾を薙ぐる(殴る?)心持ちよし」の攻撃方法が伝えられるのですが、ここはせっかく身を沈めて我が状況を計れない様にしているのですから、その姿勢のまま先手を打つならば下方に斬り付けるのが順当でしょう。
 

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2018年9月18日 (火)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣原文3闇夜之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣原文
3、闇夜之事
 ヤミノ夜ハ我カ身ヲシヅメテ敵ノ形ヲ能見透カス可シ兵器ノ色ヲハカルベシ若難所有ラバ我カ前二當テ戦フ可シ敵ノスソヲナクル心持ヨシ
読み
 闇の夜は我が身を沈めて敵の形を能く見透かすのである 兵器の色(様子、形、獲物など)を計るのである 若し難所があれば我が前に当てて戦うのが良い 敵の裾を薙ぐる心持ちがよい

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2018年9月17日 (月)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣読み解く2月夜之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻き秘訣読み解く
2、月夜之事
 月夜ニハ我ハ陰ノ方二居テ敵ヲ月二向ハス可シ我ハカクレテ敵ヲアラワス徳有り
読み及び読み解く
 月夜の仕合の立ち位置を教えています。我は月を背にして顔や手足の様子が看取れない陰となる様にし、敵は月に向かう位置に追込むのである。
 我は隠れた様になって、敵からは我の詳細は読みずらい、敵は月光にさらされてよく見えるのである。
 前回の日中之事でも「日を背に受く可し」で月夜之事と同様に強く光る物を背にして立ち、敵は光を正面に向う様に追い込む事、「此方の色〆(いろめ)を見る事不成也」と同様です。
 どの様にすれば、この様な有利な条件を手に入れられるかの教えは特に無さそうです。相手も充分な判断力もあり腕も立つのであれば、我は平常心を保ち、相手の判断力を失わせるほど怒らせるなどあるでしょう。そんな場合が作れるならば最初から立合う程の事も無く呑み込んでしまってもどうと云うことでも無さそうです。
 宮本武蔵も五輪書の火之巻之に「場の次第」として書いています。
「場のくらいを見わくる所、場におゐて日をおふという事有り、日をうしろになしてかまゆる也。若し所により、日をうしろにする事ならざる時は、右のわきへ日をなすやうにすべし。座敷にても、あかりをうしろ、右脇となす事同前也。うしろの場つまらざるやうに、左の場をくつろげ、右のわき場をつめてかまへたき事也。夜にても敵のみゆる所にては、火をうしろにおい、あかりを右脇にする事、同前と心得てかまゆべきもの也。
 敵をみおろすといひて、少しも高き所にかまゆるやうに心得べし。座敷にては上座を高き所とおもふべし。扨戦いになりて、敵を追廻す事、我左の方へ追ひまはす心、難所を敵のうしろにさせ、いづれにても難所へ追掛くる事肝要也。 
 難所にて、敵に場を見せずといひて、敵に顔をふらせず、油断なくせりつむる心也。座敷にても、敷居・鴨居・戸障子・縁など、亦柱などの方へ追ひつむるにも、場をみせずといふ事同前也。いづれも敵を追懸くる方、足場のわるき所、亦は脇にかまいの有る所、いづれも場の徳を用ゐて場のかちを得るといふ心専にして、能々吟味し鍛錬あるべきもの也。」(宮本武蔵著渡辺一郎校注「五輪書」より)
 場の取り様の事は孫子の兵法にも記述されてよく読まれていたと思われます。
 「・・凡そ軍は高きを好みて下(ひく)きを悪み、陽を貴びて陰を賤しむ。生を養いて実に処り、軍に百疾なきは是れを必勝と謂う。丘陵堤防には必ず其の陽に処りて而してこれを右背にす。此れ兵の利、地の助けなり・・」(金谷治訳注「孫子行軍篇」より)
 

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2018年9月16日 (日)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣原文2月夜之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣原文
2、月夜之事
 月夜ニハ我ハ陰ノ方二居テ敵ヲ月二向ハス可シ我ハカクレテ敵ヲアラワス徳有り
 読み
 月夜には我は陰の方に居て 敵を月に向かわすべし 我は隠れて 敵を表わす徳(得)有り

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2018年9月15日 (土)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣読み解く1月日中之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣
  従是兵術嗜之介條迠先生御註釈
1、日中之事
 日ヲ背二受ク可シ気盛二ナルノ利有亦敵日二向ヱバ眼マバユクシテ此方ノ色メヲ見ル事不成ラ也
読み及び読み解く
 居合兵法極意巻秘訣是より兵術嗜の介條迠先生御註釈
 陽を背にして受けるのである 気が盛んになり利がある 亦 敵は陽に向かえば眼がまぶしく此方の色目(思いを密かに見る)を見る事は成らない
 太陽を背にして気が盛んになるでしょか、そうだと思えばいいのでしょう。我が太陽を背にすれば当然敵は太陽を前にして眩しいのでしょう。我が仕掛けて来る様子が眩しくてよく見えないと言います。
 効果の程は、自身で確認していただければと思います。あまり頼るものでも無さそうですが、入射角が程よいならば其の通りでしょう。
 この居合兵法極意巻秘訣は第9代林六大夫守政によるもので、項目ごとに林六大夫が第7代林安大夫政詡に註釈されたものを覚書したのでしょう。
 老父物語から書き出されたものの一部と捉えれば納得できます。居合兵法極意秘訣の書き出しは「老父物語ヲ書附置久敷事故失念之事多し荒増如此覚候儘記申也」でした。
 

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2018年9月14日 (金)

曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣原文1日中之事

曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣 印可部
  従是兵術嗜之介條迠先生御註訳
1、日中之事
 日ヲ背二受ク可シ気盛二ナルノ利有亦敵日二向ヱバ眼マバユクシテ此方ノ色メヲ見ル事不成ラ也
読み
 日(陽)を背に受けるべきである 気盛んになるの利がある 亦 敵日に向かえば眼眩くして此方の色目を見る事ならざるなり

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2018年9月13日 (木)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く4居合心持之大事8獅子洞入・獅子洞出

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
4、居合心持之大事
8獅子洞入・獅子洞出
 是以戸口抔ヲ入ルノ習也其外トテモ心得可有或ハ取籠者抔戸口ノ内二刀ヲ振上テ居ルトキハ容易二入ル事不能其時刀ヲ抜テ背二負タル如ク二右ノ手二而振リ上ケ左ノ手ニテ脇差指ヲ提ゲウツムキテ戸口ヲ入ルベシ上ヨリ打込メバ刀ニテフセキ下ヲナクレバ脇指二而留ル向フノ足ヲナグ可シ獅子洞出是以同出入ノ心得ヲ知ラスル也
以上
居合目録口□(受)覚終
 読み及び読み解く
 是を以て戸口などを入る習いとする その外の状況でも心得て置くべきである 或いは取籠り者などが戸口の内に刀を振り上げて居る時は容易に入る事は出来ない その時刀を抜いて背に負う様にして右の手を振り上げ左の手に脇差を下げて俯いて戸口を入るのである 上より打ち込んで来れば背に負った刀で防ぎ下を薙ぐって来れば脇差で留めて 相手の足を刀で薙ぐのである 獅子洞出である 是を以て同じく出入の心得を知らすのである
 第17代大江正路先生は奥居合立業の部に「門入」と云う業名の業を独創されています。門入の呼称ですから門の出入りの業だろうと現代居合では第20代河野百錬先生が「門入」の解説をしています。(昭和17年大日本居合道図譜より)
 門入の意義「我れ門の出入に際し、門の内外に多数の敵を受けたる時(前後に多敵を受けたる場合と同意)我れ門の真中に進み内外の敵を仆の意なり。」
 門の内外から敵を受けたと場の想定を河野先生は附け加えてしまったのですが、(本来前後に多敵を受けたる場合)が元なのです。
 業名の過剰反応が後世の「門入」に更に付加されたのです。「頭上に鴨居又は門等ありて刀先の閊える場合に行う業也」(昭和58年第21代福井聖山先生著無双直伝英信流居合道第二巻より)
 第22代も之を引き継いで居ます。無双直伝英信流正統会の「門入」は門の鴨居を意識した動作が優先してしまった様です。動作のポイントは棚下の上に当たらない様な抜刀と振り冠り及び、切先が上に当たらない打ち込みにあるようです。手打しか出来ない居合では棚下での打下は殆ど無力です。
 恐らく、大江先生は古伝は伝承していないでしょう。奥居合も下村茂市に指導を受けられたか疑問です。
 独創された事は間違いないと思いますが、その後の河野先生の探求心がポイントを外してしまい、次代に引き継がれて門がメインになってしまったのでしょう。
 古伝英信流居合目録秘訣上意之大事
 門入「戸口を出入するの心得也戸口の内に刀を振り上げて待つを計り知る時は刀の下緒の端を左の手に取刀を背負いて俯き滞り無く走り込むべし我が胴中に切りかくるや否や脇指を以って抜き付け足を薙ぐべし」
 棚下
 「二階下天井の下などに於て仕合うには上へ切りあてゝ毎度不覚を取ものなり故に打込む拍子に膝(脛)を着いて打込むべし此の習を心得る時は脛を着かずとも上に当たらざる心持ち有り 
 大江先生の門入
 「(進行中片手にて前を突き後を斬り前を斬る)右足を出したる時、刀を抜き、左足を出して、刀柄の握りを、腰に當て刀峯を胸に當て、右足を出して、右手を上に返し、刀刃を左外方に向け、敵の胸部を突き、其の足踏みのまゝ體を左へ振り向け、後へ向き、上段にて斬り、直に右へ廻り前面に向き上段にて斬る」
 この動作は、前面の敵を刺突する初動に掛かっています。ただ動作のみ追ったのではただの体操です。
 門入の業名に捉われてしまうか、前後の敵に応じる緊迫した状況を充分学ぶかは指導者の居合哲学に因るかも知れません。
 しかし現代居合は場の想定を重要視していますが却って動作を複雑にしている様です。
* 次いでですから細川義昌先生の奥居合には立業の「門入」は無く居業の「棚下」があります。
 「(上の閊へる所にて前の者を斬る)・・右手を柄に掛け体を前へ俯け腰を少し浮かせ、左足を後へ退き伸ばし、其膝頭をつかへ、刀を背負う様に左後頭上へ引抜き、諸手を掛け、前者へ斬込み、其のまま刀を右へ開き納めつつ、体を引き起こし右脛を引き付ける也・・」
 是は大江先生も習われたか見たことがある下村派の奥居合です。棚下から這い出る動作は見られず棚下での抜刀及び斬り込む事がポイントです。(昭和49年貫汪館発行尾形郷一先生の無双神殿抜刀術兵法より)
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                  曽田先生の写し
                  土佐の居合は腰布一枚の絵がほとんどです。
                  着衣から武士と百姓の間に位置する人の武術の様に
                  思えます。
以上
居合目録口□(受)覚終わり

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2018年9月12日 (水)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文4居合心持肝要之大事8獅子洞入・獅子洞出

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣)原文
4、居合心持肝要之大事
8獅子洞入 獅子洞出
 是以戸口抔ヲ入ルノ習也其外トテモ心得可有或ハ取籠者抔戸口ノ内二刀ヲ振上テ居ルトキハ容易二入ル事不能其時刀ヲ抜テ背二負タル如ク二右ノ手二而振リ上ケ左ノ手ニテ脇指シヲ提ゲウツムキテ戸口ヲ入ル可シ上ヨリ打込メバ刀ニテフセキ下ヲナクレバ脇差二而留ル向フノ足ヲナグ可シ獅子洞出是以同出入ノ心得ヲシラスル也
以上
居合目録口□(訣)覚終
読み
 是を以て戸口などを入るの習い也 其の外とても心得有るべし 或いは取籠り者抔戸口の内に刀を振り上げて居る時は容易に入る事能わず その時刀を抜いて背に負たる如くに右の手にて振り上げ左の手にて脇差を下げ俯きて戸口を入るべし 上より打込めば刀にて防ぎ  
 下を薙ぐれば脇差にて止める 向うの足を薙ぐべし 獅子洞出 是を以て同じく出入の心得を知らする也
以上
居合目録口□(受)覚終

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2018年9月11日 (火)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く4居合心持肝要之大事7泳之大事

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
4、居合心持肝要之大事
7泳之大事(潜り之大事 曽田メモ)附戸脇
 旅ニテモ常ニテモ夜寝ルニ気ガゝリ成ル時ハ其家二戸樞(框 曽田メモ)抔アラバ其戸樞ノ内二手水鉢カ亦桶ノ類ニテモ置クベシ不意二入来ル者ハ是二ツマツキ騒動スルナリ其所ヲ仕留ル也惣而首ヨリ先キへ入ヲキロウ足ヨリ先ヱ入ルベシ
 附けたり
 戸脇ト云ハ夜中二戸口ヲ入ルニ必内裏我ヲ切ラント心懸テ戸脇二振リ上テ居ルト思フトキワ直二戸口ヲ入事無ク杖抔ヲ持合タラバ其レヲチラリト内ヘ差シ出シ見ベシモシ内二待設ケテ居ルトキハ夜中ノ事ナレバ必其レ二切付可シ杖ヲ出シテ見テカッチリト何ンゾ當ラバ其侭内二飛入ル可シ猶豫否ヤスル時ハ害有リカッチリト當ルヤ否ヤ飛入ルトキハ二ノ太刀ヲカヱス二暇無故害セラルゝ事ナシ
読み及び読み解く
 この「泳之大事」にしても「潜り之大事」にしても題名と内容がつながらない様な気がします。
 何か、すでに失念してしまった要件か、題名と誤った内容を記述してしまったか、私の知識不足か判りません。
 旅に出た時でも常のことでも夜寝るに気がかりなことがある時は、其の家に戸框(樞?)があるならば其の戸框の内側に手水鉢か桶の類を置いておくのが良い、不意に入って来た者が是に躓き慌て騒ぐであろう、その處を仕留めるのである、総じて首より先に入らず足より先に入るべきである。
 附けたり
 戸脇と云うのは夜中に戸口を入るのに、必ず戸口の内側又は裏側に我を切ろうと心懸け戸脇で刀を振り上げて居ると思う時は、直ぐに戸口を入る事無く、杖などをたまたま持っているならば、それを先にチラリと内へ差し出して見る もし内に待ち受けている時は 夜中の事ならば必ず其れに斬り付けて来るものである。
 杖を出して見てカッチリと何ぞ当たれば其の侭内に飛び入るものだ、猶予否やする時は害有り、カッチリと当たるや否や飛び入る時は二の太刀を返す暇は相手に無いので害せられる事は無い。
 さて、カッチリと直ぐに来ないと判断した場合はどう対処しましょう。
 英信流居合目録秘訣の2上意之大事5門入
 「戸口を出入するの心得也戸口ノ内に刀を振り上げて待つを計知る時は刀の下緒の端を左の手に取刀を背て俯き滞りなく走り込むべし我が胴中に切りかくるや否や脇指を以って抜き付けに足を薙ぐべし」と教授を受けています。
 現代居合では大江先生の奥居合立業門入りがそれらしき雰囲気を残していますが、この門入りは前後を多敵に攻められた場合の応じ方から、門を入る場合の運剣を付け足した替え技でしょう。
 古伝は「獅子洞入・獅子洞出」として英信流居合目録秘訣の最終に記述されています。次回はその「獅子洞入・獅子洞出」となります。
 
 

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2018年9月10日 (月)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文4居合心持肝要之大事7泳之大事

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
4、居合心持肝要之大事
7泳之大事(潜り之大事 曽田メモ)附戸脇
 旅ニテモ常ニテモ夜寝ル二気ガカリ成ル時ハ其家二戸樞(からくり・とぼそ)(框ナラン虎彦註)抔アラバ其戸樞ノ内二手水鉢(ちょうずばち)カ 又桶ノ類ニテモ置クベシ不意二入来ル者ハ是二ツマツキ騒動スルナリ其所ヲ仕留ル也惣而首ヨリ先中へ入ヲキロウ足ヨリ先ヱ入ルベシ
 附タリ 戸脇ト云ハ夜中二戸口ヲ入ル二必内裏我ヲ切ラント心懸テ戸脇二振上テ居ルト思フトキワ直二戸口ヲ入事無ク杖抔ヲ持合タラバ其レヲチラリト内へ差シ出シ見ベシモシ内二待設ケテ居ルトキハ夜中ノ事ナレバ必其レ二切付可シ杖ヲ出シテ見テカッチリト何ンゾ當ラバ其侭内二飛入ル可シ猶予否スル時ハ害有リカッチリト當ルヤ否ヤ飛入ルトキハ二ノ太刀ヲカヱス二暇無故害セラルゝ事ナシ
読み
 泳ぎノ大事(潜りの大事)
 旅にても常にても夜寝るに気掛りなる時は その家に框などあらば其戸框の内に手水鉢か又は桶の類にても置くべし 不意に入り来る者は是に躓き騒動するなり 其の所を仕留める也 総じて首より先に中へ入るを嫌う 足より先へ入るべし
 附けたり
 戸脇と云うは夜中に戸口を入るに必ず 内か裏(内外)に我を切らんと心懸けて戸脇に振り上げて居ると思う時は 直ぐに戸口を入る事無く 杖などを持ち合たらば其れをチラリと内へ差し出し見るのがよい 若し内に待ち設けている時は夜中の事なれば必ず其れに切りつけるであろう 杖を出して見てカッチリと何ぞ当たらば其の侭内に飛び入るのだ 猶予否やする時は害有り カッチリと当たるや否や飛び入る時は二の太刀を返すに暇無く害せられる事は無い

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2018年9月 9日 (日)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く4居合心持肝要之大事6閨之大事

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
4、居合心持肝要之大事
6閨之大事
 旅抔二泊ル時夜中気遣敷時カ又常ニモ用心有トキワ先ツ笄隠レヲ用ベシ笄隠レト云フワ行燈ノ土器二楊枝ヲ横二渡シ笄ヲ火ノ上二ソット置ク也火消タル如シ入用ナレバ笄ヲ除クレバ火明カ也扨其間二戸口アラバタゝミヲ一枚ハギテ其戸二モタセ楊枝ヲツカ二シテ置クベシ外ヨリ戸ヲ明クレバ楊枝二タゝミモタセテ有故二タゝミ速カ二倒ルゝ也寝て居ルト云へ共其音二不驚ト云フ事ナシマダ急ナルトキワ我ワ座ノ隅二座シ寝床ハ座ノ真中二我カ伏〆居如ク二見セテ置クベシ亦ユルヤカナル時ハ四方ヨリ糸ヲ十文字二引渡シ其ノ糸ヲ入口ノ戸二付ケ置ク茶碗二茶ヲ入レ其茶碗ヲ糸ノ十文字ノ違目二カラメ付我カ顔ヲ其茶椀ノ下ヱヤリテ寝ベシ外ヨリ戸ヲ明ル時ハ糸ウゴク故其水コボレテ我面二落ル故驚クナリ是ヲ夢間ノ寝覚ト云也又常二イタメ帋ノ水呑ヲ拵テ四方二穴ヲ明テ懐中スベシ右の茶碗之代二用ル也尤枕本二大小ヲ置クコトナク刀ノ下緒二脇差ノ下緒ヲ通シ刀ノ下緒ノ端シヲ手二持テ寝ベシ火急ノトキワ大小ヲ否ヤ取ッテ指ス二宜シ
 イタメ帋水呑
 茶ヲカクル風袋ノ小キ形二スベシ四隅二乳ヲ付置クベシ水無キ所ニテハルカ二深キ井戸亦谷水抔汲む二ヨシ長キ糸ヲ付ケテ瓶ノ如クニ汲也尤水呑ノ中二石ヲ入レオモリ二シテ汲ム也
 読み及び読み解く
 この居合心肝要之大事の閨之大事は書かれている様な事で満足いくものなのか、江戸時代前期がこの程度の事であったか判りません。然し大切な教えは、旅などで何となく物騒な気配を感じる事は現代人より遥かに敏感だったと思われます。
 安易に夜を迎えてはならないという戒めを先ず教えています。それは笄隠れの業を以て明かりを細め寝たふりをし、戸口に畳を楊枝にもたせかけて仕掛けをする。本当に害意を持った敵が居るならば寝静まってから戸を開けて攻め込んで来るでしょう。其の時畳が倒れるので寝ていても音に驚いて飛び起き対応できる、と云っています。方法論に取らわれず如何に夜を眠って過ごせるかその用心をしておきなさいと云うことでしょう。
 現代の企業活動にもそれ程の用心があればと、ふと思ってしまいます。
 どうかな~と云うことでなく、今夜襲って来ると察したならば、寝床を真中に敷いて寝たふりをして、自分は部屋の隅に座し襲ってきたら即座に応じる態勢を作れと云います。
 いつ来るかよくわからないが来るであろうという様な場合は、眠りを一気に覚ます方法を考えろと云っています。この処の地震や台風の予告に応じる対策を思い描いてしまいます。
 それが茶碗に水を入れて顔の上に吊るし、水が顔に掛れば驚いて応じられると云います、この糸で茶碗を釣るなどとても現実的では無さそうです。方法論よりも心がける中で何が有効かを考えろというのです。
 イタメ帋はいため紙ですが、当時の紙は楮やミツマタを漉いた和紙です。和紙を張り合わせた紙ですからとても丈夫で水呑みなどに作っても水に容易に溶けません、代用品と其の使い道は豊富にありそうです。
 それで水呑み茶碗を作って代用にしたらと云っています。あるものを有効に使うという教えとも取れます。
 大小の刀を下緒でつなぎ、事有れば即座に刀で応じられる様にする事、最も重要な教えは是でしょう、刀を手に持って寝ることが出来、事有れば即座に起きる感覚を磨き、刀は切るのではなく突刺すことをも示唆しています。
 イタメ帋の水呑みは代用品の取り扱いの効用をさらりと流しています。何でも特定な道具や  容器が無いと戸惑ってしまう現代人から見れば生きのびることは大変かもしれませんが、考えて実行する楽しさは何十倍だったことかと、ふと思ってしまいました。
 
 

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2018年9月 8日 (土)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文4居合心持肝要之大事6閨之大事

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
4、居合心持肝要之大事
6閨之大事
 旅抔二泊ル時夜中気遣敷時カ又常ニモ用心有トキワ先ツ笄隠レヲ用ベシ笄隠レト云フワ行燈ノ土器二楊枝ヲ横二渡シ笄ヲ火ノ上二ソット置ク也火消タル如シ入用ナレバ笄ヲ除クレバ火明カ也扨其間二戸口アラバタゝミヲ一枚ハギテ其戸二モタセ楊枝ヲツカ二シテ置クベシ外ヨリ戸ヲ明クレバ楊枝二タゝミモタセテ有故二タゝミ速カニ倒ルゝ也寝テ居ルト云ヘ共其音二不驚ト云フ事ナシマダ急ナルトキワ我ワ座ノ隅二坐シ寝床ハ座ノ真中二我カ伏〆居如クニ見セテ置クベシ亦ユルヤカナル時ハ四方ヨリ糸ヲ十文字二引渡シ其ノ糸ヲ入口ノ戸二付ケ置テ茶碗二茶ヲ入れ其茶椀ヲ糸ノ十文字ノ違目二カラメ付我カ顔ヲ其茶碗ノ下ヱヤリテ寝ベシ外ヨリ戸ヲ明ル時ハ糸ウゴク故其水コボレテ我面二落ル故驚クナリ是ヲ夢間ノ寝覚ト云也又常二イタメ帋ノ水呑ヲ拵テ四方二穴ヲ明テ懐中スベシ右ノ茶碗之代二用ル也枕本二大小ヲ置クコトナク刀ノ下緒二脇差ノ下緒ヲ通シ刀ノ下緒ノ端シヲ手二持テ寝ベシ火急ノトキ大小ヲ否ヤ取ッテ指ス二宜シ
 ○
 イタメ帋水呑茶ヲカクル風袋ノ小キ形二スベシ四隅二乳ヲ付置クベシ水無キ所ニテハルカ二深キ井戸亦谷水抔汲二ヨシ長キ糸ヲ付ケテ瓶ノ如ク二汲也尤水呑ノ中二石ヲ入レヲモリ二シテ汲ム也
読み
 旅などに泊る時 夜中気づかわしき時又常にも用心の(必要)ある時は 先ず笄隠れを用いるべきである 行燈の土器に楊枝を横に渡し笄を火の上にそっと置くのである 火が消えた様になる 入用であれば笄を除けば火の明らかになる さてその居間に戸口あれば畳を一枚はぎて其の戸にもたせ楊枝をつっかいぼうにして置くのである 外より戸を開ければ楊枝に畳を持たせて有る故に畳は速やかに倒れるのである 寝ていると云えどもその音に驚かずという事は無い 又急なる時は我は座敷の隅に座し寝床は真中に我が伏している様に見せて置くのである 又時間が緩やかな時は四方より糸を十文字に引き渡し その糸を入り口の戸に付けて置いて茶碗に茶を入れ その茶碗を糸の十文字の違い目に絡め付けて置き 我が顔をその茶碗の下へやりて寝るのである 外より戸を開ける時は糸が動くので其の水こぼれて我が面に落ちるので驚くのである 是を夢間の寝覚めと云うのである また常にいため紙の水呑みを拵て四方に穴を開けて懐に入れて置く右の茶碗の代わりに用いるのである 枕元に大小を置くことはせずに刀の下緒に脇差の下緒を通し刀の下緒の端を手に持って寝るのである 火急の時大小を否や取って刺すに宜しい
 いため紙は水呑みや茶をかける風袋の小さい形にすべきで四隅にチを付けて置き 水の無い所では はるかに深い井戸や谷水を汲むに良い様に長い糸を付けて瓶の様に汲むのである 尤も水呑みの中に石を入れて重りにして汲むのである
 

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2018年9月 7日 (金)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く4居合心持肝要之大事5夜之太刀

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
4、居合心持肝要之大事
5夜之太刀
 夜中ノ仕合ニワ我レワ白キ物ヲ着可シテキノ太刀筋能見ユルナリ場合モ能知ルゝモノナリ放レ口モナリ安シ白き肌着抔ヲ着タラバ上着ノ肩ヲ脱クベシカマヱハ夜中二ハ下段宜シ敵ノ足ヲ薙ク心得肝要ナリ或ハ不意二下段二ナシテ敵二倒レタルト見セテ足ヲ薙ク心得モ有可シ
読み及び読み解く
 夜中に仕合う様な時には、白い着物を着ていくのが良い 敵の太刀筋が良く見えるのである 場の状況も良くわかるのである 「放し口もなりやすし」は間合いが十分読めるので相手の太刀を外す頃合いも易々できる 白い肌着など着ている場合は上着の肩を脱ぐと良い 構えは夜中は下段が剣先が相手に見えにくくて良く 相手の足を薙払う心得が肝要である 或いは中段か上段から不意に下段にすると相手が我が倒れたと錯覚して打込んで来るのでその足を薙ぐダマシの術も心得ておくのが良い
 この白衣の効用は、相手から我は見やすそうに思えるのですが、我が白衣で相手が地味な色物ではどうなのでしょう。真っ暗闇と月明かりなど有る場合はなど、首を捻ってしまいます。
 想像の世界なのか実戦の中で培われたものか、剣友と実験してみる価値があるやなしやです。
 足を薙ぐ運剣については、下段での業手付は古伝の業手附に見当たりません。せっかく下段に構えているのですから、構えを変えたりせずに下段のまま左右何れかに筋を替りすれ違い様に薙ぎ払うのが良さそうです。
 古伝神傳流秘書抜刀心持之事では「行違」が使えます。
 「行違に左の脇に添えて拂い捨て冠って打ち込む也」この業は大江先生の改変により奥居合立業の「袖摺返」の原形です。
 大江先生の袖摺返は前方に敵を見出し、抜刀して群衆をかき分けて正面の敵を切るものです。
 第21代福井聖山先生のビデオの中に替え技として古伝の「行違」を「袖摺返替え業」の呼称で演じられていますが、最近の高段者でも知らない人が多そうです。
 横道ですが、元々群衆の中で抜刀して敵を切る業は古伝では「人中」の業がありました。大江先生はこの業も「壁添」の業に変えてしまいました。
 「人中」は「足を揃え立って居る身にそえて上へ抜き手をのべて打込む納るも体の中にて納める」
 左右に壁などあって横一線に抜き放てない場合の抜刀法に場の想定を変えてしまったのです。大江先生は、想定が敵と我と云う人を対象にした居合から、場所或は正面に座す我と云う、人を元にしていない技の運用が目立ちます。
 現代居合を習って、古伝を身に着ければ居合に息吹が吹き込まれる様に思えてきます。袖摺返で群衆をかき分けるなどやって見れば誰もどいてくれません。抜刀して打込む前に群衆をかき分ける稽古が必要です。
 壁添の爪先だった抜刀も爪先立ってから抜き上げたのではふらつくばかりです。武的身体の運用の欠如はひどすぎます。
 
 

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2018年9月 6日 (木)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文4居合心持肝要之大事5夜之太刀

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
4、居合心持肝要之大事
5夜之太刀
・ 
 夜中ノ仕合ニワ我レハ白キ物ヲ着可シテキノ太刀筋能見エルナリ場合モ能知ルゝモノナリ放レ口モナリ安シ白キ肌着抔ヲ着タラバ上着ノ肩ヲ脱クベシカマエハ夜中二ハ下段宜シ敵ノ足ヲ薙ク心得肝要ナリ或ハ不意二下段二ナシテ敵二倒レタルト見セテ足ヲ薙ク心得モ有ル可シ
読み
 夜中の仕合には我は白き物を着るのが良い 敵の太刀筋能く見えるのである 場合も能く知れるもので 放れ口もよく知れるものなりやすい 白き肌着などを着ているならば上着の肩を脱ぎなさい 構えは夜中には下段が良い 敵の足を薙ぐ心持が肝要である 或いは不意に下段にすれば敵に我ガ倒れたと見せて足を薙ぐ心得も有るのである

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2018年9月 5日 (水)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く4居合心持肝要之大事4野中之幕

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
4、居合心持肝要之大事
4野中之幕
 取籠者抔ノ有之時杖ノ先キ或ハ竹ノ先二又横手ヲクゝリ付ヶ横手ヲ羽織之袖二通シ其竹ノ本ヲ左ノ手二持テ向ヱサシ出シ右ノ手二刀ヲ持チ生捕ナレバ木刀ノ類ヲ持チ我身ハ羽織ノ陰二隠レ羽織ヲバ相手之方へツキ付べし向ヨリ切ルト云へ共我身二ハトドク事ナシ其所ヲ持タル刀ニテ相手ノ足ヲ薙グベシ亦矢玉ヲ防ク二至テ宜シ
読み及び読み解く
 竹の棒か杖に十文字に横手を付けて、羽織の袖に横手にを通してを、他家の棒を左手で持ち右手に抜き身の刀を持ち、取り籠っている処にスーと指し出す。
 この心得は、ダミーを使って相手に其れを攻めさせてその隙に生け捕るなり、切るなりの教えです。
 文章表現が少々変だろうとも、そんな事に気を使って居ては切られてしまうでしょう。「・・・右の手に刀を持ち生捕るなれば、(相手が)木刀の類を持ち、我が身は羽織の陰に隠れ・・」なども「思いつくままに・おおらかに」解釈すればいいのでしょう。
 この場面は、夜が有効か日中が有効かの議論があっても面白いでしょうが、そんな事よりも、気がたって居る取籠り者です。状況次第に相手がハッとして打込んで来る様にするだけです。打ち込んで来ても羽織と我との間に距離を取れば、斬り込まれても相手の刀は届かない。
 其処を踏み込んで相手の足を刀で横に拂って取り押さえる。矢玉ぐらいならば羽織で防ぐ事も出来るので至って宜しい。
 このままの「そっくりさん」で良いのかどうかは状況次第でしょうが、心理作戦を考えろと教えてくれています。
 

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2018年9月 4日 (火)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣原文4居合心持肝要之大事4中野之幕

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣原文
4、居合心持肝要之大事
4野中之幕
 取籠者抔ノ有之時杖ノ先キ或ハ竹ノ先二又横手ヲクゝリ付ヶ其横手ヲ羽織之袖二通シ其竹ノ本ヲ左之手二持テ向ヱサシ出シ右ノ手二刀ヲ持チ生捕ナレバ木刀ノ類ヲ持チ我身ハ羽織ノ陰二隠レ羽織ヲバ相手之方へツキ付ベシ向ヨリ切ルト云へ共我身二ハトドク事ナシ其所ヲ持タル刀ニテ相手ノ足ヲ薙グベシ亦矢玉ヲ防ク二至テ宜シ
読み
 取籠り者抔の之有る時杖の先或は竹の先にまた横手をくくり付け その横手を羽織の袖に通し その竹の本を左の手に持ちて向こうへ指し出し 右の手に刀を持ち生捕るなれば木刀の類を持ち我が身は羽織の影に隠れ羽織おば相手の方へつき付くべし 向うより切ると云えども我が身には届くことなし 其の所を持ちたる刀にて相手の足を薙ぐべし 又矢玉を防ぐにいたってよろし
 

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2018年9月 3日 (月)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く4居合心持肝要之大事3太刀目附之事4

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
4、居合心持肝要之大事
3太刀目附之事4
 ここでの目付は「敵の足に目を付けべし」でした。そのわけは「是にて場合能く知るるのみならず臆せざる也」といって、足に目を付け、相手の全身も、周囲の状況も場合もよくわかる。それによって相手の顔や眼に目付して惑わされたり、一点に執着して切先に目付するのと違い、自然に遠山の目附となり、真剣勝負での臆する心が無くなる。
 更に「上見ぬ鷲の位」によって心は下に有って、動作は上となり迅速に応じて油断ない心を得られる。とするのでしょう。
 ここでの目付は居合にも通じるでしょうが、仕合う場合の相手を見る目の見、心を感じさせるところです。
 しかし、参考の教本からは、足に目を付ける教えは見当たりませんでした。
 足への目附などで昇段審査や競技会で演武すれば、即座に飛んで来る物知り顔の古参がおられるでしょう。
 武蔵の三十五箇条や五輪書によれば、ありうる、とも云えます。うなじを直ぐにして目を細めてうらやかに、足に目付けが出来るでしょうか。
 多くの教本は、先師の教えを「かたち」ばかりトレースする事で終わっています。仮想敵相手で切られない居合ではそれでもいいでしょう。本物を求めなければ武術にはなりません。
 前後左右に気配りし、相手の動きをとらえられる目付などやって居ると、「かたち」ばかりの者が「違う!」と一点凝視の目附を要求してきます。
谷田左一著高野茂義校閲昭和10年「剣道真髄と指導法詳説」目付の事
 「己の眼をば大体敵の顔面に注ぐのが常である。これ自然の理であって、我々が人に対しては先づ其の面を見るものである。然れども敵の顔面に固定することなく、古人の教の如く遠山を望むと同じく、接近した敵をも遠方を見ると同じ眼で見、爪先から頭上、手先の末に至るまで、一挙一動瞭然として己の眼中に映ぜしめるのである一部分のみに注目する時は其の部分はよく見えるが、全体の挙動を知ることが出来ない。必要に応じて一部分を見ながら全体を見、全体を見ながら一部分を見逃さないやうにせねばならぬ。
 目付に就いては、古来各流派に因って其の説を異にしている。圓明流では「心は顔面に表はれるものであるから目の付け處は顔に及ぶものはない」といひ、又一刀流では二つ目付と称して、敵を一体に視る中にも特に重きを置く處が二つある。一つは剣尖に目を付け、一つは拳に目を付け、又我を忘れることなく、彼我二つ目を付ける必要があるので、旁々之を二つ目付といっている。又四つ目付の教えもある又見当の目附の事がある。或は又撃突の意志は、悉く眼に現はれるものであるから、敵の眼に目を付けて一挙一動を見抜くといひ或は之と異なって激突の意志は眼に現はれる故に、敵の眼と我が眼を見合せないで、わざと臍の辺りなどに注目して迷はす流がある。之を脇目付或は帯の矩といっている。その他腕に眼を付け足になど付ける流もある。
 昔からまた観と見との教がある、観の目は強く、見の目は弱い。観の目は敵の心を見、其の場の位を見、大きく目をつけて其の戦いのけいきを見、折節の強弱を見て正しく勝つ事。
 古語に「眼を開けば則ち誤る」と云っているが、これは其の視る所に著するの謂である。吾人の注意する所に惹かれ易く、注目する所は変化あるものに惹かれ易い。眼で視る時は其の視る所に著して迷を起こす事となる。即ち敵の手を視れば心は手に惹かれ、足を視れば足に偏るものである。敵の色に付き、動作に心を奪はれては意外の失敗を招くに至るから、宜しく大観して偏見すべきではない。敵の色と形との観察を聴き、無形に見、敵の意志が色形に現はれない先に我が心に感じ、我が耳に聴き、我が眼に視、我が鼻に嗅ぐものである。山岡鉄舟は心を以て心を撃つと云っている。斯くの如きは長年月の工夫鍛錬の後にここに達するものである。一朝一夕にして企て及ぶべきものではないが、平素此の心掛けを以て練習すべきである。」
 各流派の伝書が公になって来た昭和の始めにここまで読み込んで纏められたものは少ないでしょう。長文ですが掲載させていただきました。
 なお、谷田左一先生は無双直伝英信流を大江正路先生に習い、山内豊健子爵と共著で「図解居合詳説」を昭和13年に出されています。

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2018年9月 2日 (日)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く4居合心持肝要之大事3太刀目附之事3

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
4、居合心持肝要之大事
3太刀目附之事3
 この英信流居合目録秘訣の居合心持肝要之大事にある太刀目附は「敵の足に目を付けべし」でした。
 是は居合心持肝要之大事ですから居合の際の目付けになります。
 そこで、無双直伝英信流及び夢想神傳流の目付けはどうなっているのでしょう。
 教本によってどのように捉えていたかを見て見ましょう。
木村栄寿著昭和57年「林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流伝書集及び業手付解説」
 抜刀術童蒙初心之心持「指體容を直に胴のぬけざるようにして両手を膝に置打向ふ敵を見定める心持にて向へ・・」
大江正路・堀田捨次郎著「剣道手ほどき」視線
 「両手を膝上に置き心を安静にし丹田に気力を整へ四肢を緩やかにし眼の視線は正座前方七尺の所を凝視し・・
 河野百錬著昭和13年「無双直伝英信流居合道」
 居合の作法並に心得「着眼」
 「1、坐したる時の着眼は目の高さに於ける前方空眼(9尺位ひの辺り)(一定の箇所に留むるにあらず、八方に心眼を注ぐの意)遠山を望む気持ちたるべし。
  2、動作中の着眼は、仮想の敵になす。(対敵の場合は6尺位ひの辺り)業によりて一定せざるも、横一文字の抜き付けは敵未だ仆れざるの態にて、坐したる時の着眼の高さに於いてなし、最後の打下したる時は其の打下す太刀の後を追ひて約6尺位に前方(仆れたる敵の体を見越したる点)の床を注視するを適当とせん、是は正座一本目の業を中心としての着眼なるも、業に依り種々相違あるは言をまたず、要は抜刀の真意を解し、臨機自然の着眼を為すを本旨とす。
  3、動作中は妄りに瞬きをせぬ様心すべき事。」
 河野百錬著昭和17年「大日本居合道図譜」
 「打向ふ敵を確かに見定むる心持にて向ひ・・」
 河野百錬著昭和37年「居合道真諦」無双直伝英信流嘆異録
 目付の事:「目付は常に敵に、とワカリキッタ事が実行されて居ない人を多々見受けるが之は業の真意を解さぬ証左である、武道はすべて目付が肝要である。」
 政岡壱實著昭和49年「無双直伝英信流居合兵法地之巻」
 英信流居合道の作法と心得座り方
 「座し終わった時親指は重ねず接す。膝頭は両拳を入れる程に開く(膝の巾が肩幅と同じともいわれている)腰は押し出す気持ちで臍下丹田に力を充たし、腹は出さないで腰をはる。上体は真直に、両肩は自然に下げて胸ははらず顎を少し引きうなじをのばして頭は真直に保ち、口は軽く結び奥歯をかみしめる気持ちで、眼は半眼に開き、3mほど前方にそそぎ遠山の目附をなす。対手のある時はその周囲にも目をくばる(敵の一部を見つめることなく敵全体を中心として周囲にも目をくばる)勿論左右前後にまでも心眼をそそぐべきである。両手は肘に力を入れることなく股の基部にハの字に軽くおき、肘は柔かく自然に張る。この時の気持は極めて自然であり、武張らず柔かで而も臍下丹田に気力を充実していることが大切である。然しこの気力は決して外に露わざず物静かなるを要す。」
山蔦重吉著「夢想神傳流居合道」着眼(目付け)
 「正座、立膝いずれの場合でも前方三メートル下に着眼するものであるが、これを遠山の目付けといい、目標の一点に着眼はするが遠くの山を望むごとく目を半眼にして、全体を見るように左右の視野を広げる心持が大切である。動作中は常に敵に目を付け、斬下した場合には、倒れた敵(その倒れた敵を含めた三メートル位前方)に目を付ける。あまりうつむきすぎてはならない。」
檀崎友影著「居合道教本」着眼
 「正座の時も立膝の時も、眼付けは、前方凡そ九尺(2.7メートル)とする。一ケ所に着眼するといっても八方に心眼を注ぎ遠山を望む気持ちになることである。動作中に対敵およそ六尺(1.8メートル)斬下した場合、その刀のあとを追うように又、倒れた場合敵を見越した点になるが、その場合の臨機自然の着眼となるのを本旨とする。目は半眼になるのを常とする。」
加茂治作著「無双直伝英信流居合道」目付け
 「ほぼ九尺(270センチ、3メートル弱)の距離をおいて相手を見るのが、ふつう、居合の目付けである。施術後、敵が倒れたとき、これを目付けにする。ただし、他敵の来襲に心をくばり、遠山の目付けもたいせつである。目付けは、特殊の業以外に首を動かしてはいけない。いわゆる落とし目、流し目を理想とする。」
池田聖昂著平成17年「無双直伝英信流居合道解説」一般基本事項
 「正座したる時、其の眼付けは約3m位(約十尺位)先に付けるが、一定箇所に目付けを固定するに非ず、八方に心眼を注ぐ意、即ち遠く山を望む心持ちにて見る事が肝要である。」
* 
 まだまだ、居合の資料はあるのですが、この辺にしておきましょう。河野先生、政岡先生の十分突っ込んだ解説で「かたち」は出来上がるでしょう。しかし、本来武術です。
「かたち」は似ていても術になるかは、その人の哲学によるもあり、更に心と身体の奥へ踏込まなければ、切るも、切らずにおさめるにも、仮想的相手の武的演舞はともかく、実場面では役に立たないものでしょう。
 次回はもう一度古流剣術に戻って目付を考えて見ます。
 
 

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2018年9月 1日 (土)

曽田本その1の6英信流居合目録秘訣読み解く4居合心持肝要之大事3太刀目附之事2

曽田本その1
6.英信流居合目録秘訣読み解く
4、居合心持ち肝要之大事
3太刀目附之事(その2)
 古伝英信流居合目録秘訣では太刀目附之事
 「敵の足に目を付けべし是にて場合能く知るるのみならず臆せざる也是を上見ぬ鷲の位とも云なり心は下に有って事サ上に速に応ずる油断無の心なり」
そこで古来からどの様に目付について言われているのかを探ってきました。もう少し捜してみましょう。
 何も考えずに、習ったままに他にはやった事も無く、習ったままに相手の顔や眼を見るのが目付でしょうか。其のまま後輩に嘘を教えていいのでしょうか。
 前回まででも随分納得されたと思いますが習っただけしかやっていなかった方は、教えのどれか自分のと違うものを一年ばかり稽古してその意味を学び飛躍できればしめたものです。
笹森順造著昭40年「一刀流極意」
 一刀流兵法十二ヶ条目録「二つ之目付之事」
 「人に目が二つある。一つの物を見るのにも二つの目をつかう。片目で一方から見たのでは物が平面に見えて立体の遠近や真相がはっきりわからない。両眼で見て始めて実体が正確にわかる。物を見る時に目についた表面の一部分だけに気をとられたのでは本当の物を見そこなう。特に目に付いた部分が全体の中でその一部分と最も関係の深い他の要な部分を見のがしてはならない。
 一部分と全体を見るべきである。
 相手の体と心理を見る。相手の眼中と心中とを見る。即ち有形と無形とを見る。
 相手の技の起る所と納まる所とをともに見て応ずるべきである。
 相手と己れを見る心がけが必要である。
 眼も心も居付いてはならない。
 大局に一局を見、一局に大局を忘れず。活眼を開いて彼我の有無と一切の一円を見る事を本旨とする。」
 目心之大事:「目心の極致は目に見えた形の窓から奥の院の心の扉を開いて霊眼を以て不動妙智を看破することである。有形を通して無形を見、万象の実相に即応して中らざるなきに至るのは目心の至極である。」
 捨目付:「形に見える目付を捨て心にて過現未の三色を透見し万全の真相を直観する明哲至極の位に登る目付、思無邪の目付。」
千葉栄一郎編「千葉周作遺構」(オンデマンド版)
 北辰一刀流十二箇条釈
 二之目付之事:「二の目付とあるは、敵に二つの目付あると云事也。先敵を一体に見中に目の付所二つ有となり。切先に目を付、拳に目を付るなり。是二つなり。敵の拳動ねば、打事叶はず。切先動ねば打事叶はず。是二の目付也。又敵に耳目を付て己を忘れてはならず。故に我も知り、彼も知るべき事を、為がため、二之目付也」
 目心之大事:「目心とは目で見るな、心で見よと云事なり。目に見るものは迷ひあり、心より見るものは迷はず、目は目付役に使、心の目にて見るなり。目の用も速かなるものなれども、心にて主宰するものなれば、未だ動止せざる前に動止を知るは心の功なり」
*
高野澄編訳平成15年「山岡鉄舟剣禅話」
阿部正人編山岡鉄舟筆記「鉄舟随感録」一刀流兵法箇条目録
 ニ之目付之事:「ニの目付とは、敵に二つの目付ありと云ふ事なり。先ず敵を一体に見る中に、目の付け所二つあり、切先に目をつけ、拳に目を付く、是れ二つなり、故に拳うごかねばうつことかなわず、切先うごかねばうつことかなわず。是れ二目 をつくる所以なり。敵にのみ目を付け、手前を忘れてはならぬ故、己をも知り彼をも知る必要あるを以て旁々之を二の目付けと云ふなり。」
 山田次郎吉大正12年心身修養剣道集義
 源清音剣法初学記「物見」
 「物見は俛く(うつむく)にも非ず仰くにも非ず平かなるを要す。俛くも仰くも皆病なり。又左右に傾くべからず、傾くも亦病也」
 源清音剣法性格「物見」
 「物見は目を謂ふ、目の官は則ち見るなり。其の大略は高下左右を見るの外なし。又其の元とする所は、初めに目を著けたる處、即ち直ちに見る所にして、例えば人に対し先づ其の面を見るが如し。是教へを待たずして然るものなり。蓋し面は見る所の元なれば、其の元を見れば其の心の変化より動作に分るる處も、自ら明らかなるべし・・目は見るの官なれども心を主として目を用ひざれば目に見て気に移り、心は空と為るを以て動作する所前後と為り、別れたる末のみを見ること多し。目見の作用宜しきを得ざるより、手足の動止亦意の如くならず。」
 源清音剣法規則据物枢要「目附の事」
 「目に初、中、後の三段あり。第一其所に対し當に切るべき所に剣を配るとき、正しく其の所を見定むべし。第二剣を蒙るに随ひ目を放ち、中眼にして其の所を見。第三身の反り体と共に上眼に移し中眼は遠きを見渡し上眼は高山又は日月等を仰ぎ見る形を謂う、目見る所を失わず、打ち込に至り、太刀よりも目の早く下るを嫌ふ。 目其の切る所を見んことを思はず、打ち込と共に目の下るに非ざれば気二つに分れ、身の権衡 を失ひ、気と刀と相離れて業を為すこと能はず。目の早きは心気の調はざるなり、早く其所を見るも益なけれど心調ははざる者は早く見んことを思ひ是より心気離るるなり。心気正しからずして体を離るるが故に、心気目に移りて見んことを欲し、目早ければ全体撓みを生ず。打ち下す刀の跡を追ひて見る心を以て権衡と為し、体と気と一ならざるべからざるなり。」
 目付の事は大変面白いもので、これらのそれぞれの教えに微妙な違いも見られます。顔に付けろ、眼に付けろ、足に、いや体全部だ、動いていれば変化極りない、心で見るのだ。
 次回にも、もう少し目付けを勉強してみます。

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