曽田本その1の7居合兵法極意巻秘訣読み解く18野町撃之事
曽田本その1
7.居合兵法極意巻秘訣読み解く
18、野町撃之事
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この極意の呼称も読み方がスッキリ読めません。「野や町で撃つの事」と云った意味合いの呼称です。
野二テハ先敵ノ足ヲ切ル心吉シ町二テハ敵ノ首ヲ切心ヨシ野ニテ足ヲ切レハ働キ成ラス聲ヲ出ストイエドモ人家遠ク助勢無キモノ也町ニテモ野ニテモ足ヲ切レバ追来ル事ナラス色々心得有ベシ
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読み及び読み解く
野や町にて之を撃つ事
野にて戦う時は先ず敵の足を切る心得が良い 町にては敵の首を切るのが良い 野にて足を切れば働くことが出来ない 聲を出しても人家遠く助勢無きものである 町にても野にても足を切れば追いすがって来る事は出来ない 色々心得有る事がたいせつである
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野では敵の足を切り、町では敵の首を切るの何故は、野では人家が遠ければ助けに来る者が無いので良いそうです。町では首を切れと云うのは、足を切ったのでは声を張り上げ助勢を求められるからでしょうか。
次に云う事が可笑しいもので、町でも野でも足を切れば敵は追い懸けて来る事は出来無いよ、いろいろ心得を考えなさいと云うのでしょう。
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この辺の極意を読んでいますと、古伝は「おおらか」で良いなと思うのですが、この流の発生はともかく、伝承されてきたのが武士と百姓の間にある人達によって引き継がれたことが浮かんできます。
厳格な仕来たりの中での極意と違い、長閑なそれでいて、状況次第に自由に応じる庶民の武術を思い描きます。
もともと、武術は戦場に連れて行かれた庶民が、生き残り国に帰れる最も大切な術であったかも知れません。
戦国時代が過ぎて徳川政権となっても、失業した浪人達は帰る家も土地も無く、盗賊になったりそれを守るものになったりお殿様の剣術ではない命がけのものが必要だったのでしょう。
それも過ぎて平和な時代における武術の心得はドンドン心の有り様に転化していったはずです。
それはお殿様剣術に近いものになって行ったはずです。明治以降の庶民は今度は個人の剣術から、術はともかく集団で闘う術を身に着けさせられてきたはずです。それは号令によって一糸乱れず斬り込んで行く「あれ」だったでしょう。
今でも、時代錯誤の道場では、手拍子で一斉に刀を抜き、同じ形が出来るまで稽古させられているはずです。少しでも本物の剣術を目指す者は異端児となってしまうのです。
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