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2019年1月22日 (火)

曾田本その1を読み終えて

曾田本その1を読み終えて

 曽田本その1は、江戸時代中期後半に土佐に残された居合の業技法がまとめられたもので、現在行われている無双直伝英信流の各流派、及び夢想神傳流、その他土佐から伝わっている幾つかの元となっている伝書です。

 曽田虎彦先生によって、伝書を持たれていた方々から借り受けられてそれらを一字一句誤りなく写され、まとめられたものです。
 第九代林六太夫守政によって土佐にもたらされた居合は「無雙神傳英信流居合兵法」とあったものです。
 この流名は、南山大学の榎本鐘司先生のご研究による北信濃に残された「無雙直傳流」と近似のもので「神傳」か「直傳」かの違いがあっても、この曽田本その1にある山川幸雅先生相伝による「神傳流秘書」の写し「居合兵法伝来」に明示されています。
 明治維新前後の時期に正しい流名も朧になって「無雙直伝英信流居合兵法」がそれであるように今日まで引き継がれています。

 広島の貫汪館には土佐の細川義昌先生伝来の「無雙神傳英信流抜刀兵法」が森本邦生館長により伝承されています。
 その業技法の手附の幾つかは神傳流秘書と異なりますが時の流れが変化させたと見て、第九代林六太夫守政をルーツとした土佐の居合でしょう。
 細川義昌先生と同門であった大江正路先生の「無雙直伝英信流居合兵法」が、「無雙神傳英信流抜刀兵法」と異なる部分が多々あって「はて」と頭を傾ける事もしばしばでした。

 第17代大江正路先生の独創による第九代林六太夫守政のもたらした土佐の居合の手附神傳流秘書から逸脱した業名および業手附の改変は、更に第20代河野百錬先生によって手を加えられ現代居合として21代、22代、23代と引き継がれています。

 居合だけを見ても、神傳流秘書と異なり特に奥居合の違いは甚だしく、何故と疑問を持つのですが、第17代大江正路先生は居合だけに拘って土佐の居合が総合武術であったことを置き捨ててしまいました。
 大江先生は居合術の伝承しか引き継がなかったか、既に指導出来る師が土佐には居なかったかでしょう。大江先生の剣術は小栗流であったとか何処かにあった様に記憶します。
 あるいはすべて知っていたが、疑いを持たずに中学生への指導による伝承では居合だけで手いっぱいで、尚且つ古伝は難しかったかとも思われます。

 曽田本その1は、土佐の居合が総合武術であった証しに、神傳流秘書には居合、組太刀、棒術、和(やわら)の業手附が簡明な記述によって残されています。
 さらにその心構えや詳細な術理も「居合兵法極意秘訣」や「英信流居合目録秘訣」に克明に残されています。
 「居合兵法の和歌」も神傳流秘書を書き写された山川幸雅先生によって伝えられています。

 曽田本その1は土佐の居合「無雙神傳英信流居合兵法」の業技法を「神傳流秘書」で学び、その心を居合兵法極意秘訣や英信流居合目録秘訣から学ぶ組立てとなっています。

 神傳流秘書の手附による復元は、かなりの武術に対する洞察力や経験が無いと、これを片手に一人稽古する事は難しかろうと思います。
 しかし、神傳流秘書は現代居合が忘れている「江戸時代の武術と其の心」を網羅しているものと思います。
 そこで、この神傳流秘書を現代の無双直伝英信流のルーツとして忘れ去られないために、現代居合が忘れているものを学ぶ事を主眼として「無雙神傳英信流居合兵法」の流名を自らに課し伝承して行く事とします。

 習い覚えた大江正路系統による第20代河野百錬系統の「無雙直伝英信流居合兵法」の業技法は居合の技法の一部として大切に抱えざるを得ないことは当然の事でしょう。多くの諸先輩方から手取り足取りご指導賜り、体で覚えたものは決して忘れる事はないでしょう。

 残念ながら現代居合も竹刀剣道も、ただ早くて強い、あるいは形ばかりが優先して最も有効な武術としての運剣動作やその意図する処を引き継ぐ事は出来ていないようです。
 体力が衰えた老人が若者に勝つことが出来ない様な武術は武術では無い、それを乗り越える術理がなければ武術を学ぶ意味は半減してしまいます。
 従って、「神傳流秘書」を片手にしながら、自ら工夫研鑽すると同時に、時間を有効に使うためにも江戸期における古流剣術を継承されている他流の力は借りざるを得ません。

 私に残された時間がどの位あるかは天のみぞ知る事として、「無雙神傳英信流居合兵法」の名のもとに古伝「神傳流秘書」を、次代に残すために修行して行こうと決めました。
 同じ思いの方には、その門流を問わず、所属も其のままに、経歴も段位もなく共に、今ある力量を持って学んでいただければ、「咄々々」を得てより一層の悟りがあるものと信じています。

 「無雙神傳英信流居合兵法」は古伝研究会として毎月第2木曜、第4木曜に研究会を鎌倉市の鎌倉体育館若しくは見田記念体育館で実施いたしていますので、お気軽にお立ち寄りください。

 平成31年1月22日 ミツヒラこと松原昭夫

 明日から「曽田本その2」の投稿を始めます。「曽田本その2」はまた新たな発見があるかもしれません。

 

 

 

 

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コメント

ミツヒラ先生

おめでとうございます。
”無雙神傳英信流居合兵法”
前々から素晴らしい流名だと思っています。

直傳でも正統でもなく神傳。
無雙の次に来るのは神傳が一番しっくりきます。
現代英信流はそのうち正真正銘英信流とか元祖英信流などと使いそうな勢いです。

今日よりも明日と追い求める事が出来るのは、生きている人間の特権でしょう。本当に有難いことです。

私、直傳を捨てるわけにはいきませんが、神傳の志を直傳に取り戻したいと思い、精進致します。


無銘さま
コメントありがとうございます。
「無雙神傳英信流居合兵法」の流名は凡そ300年前に名付られ本来「無雙神傳重信流」と有るべきだが「長谷川氏は後の達人なる故之も称して英信流と揚られたる由也」と言う事です。
その武術を伝承するにはやはりこうならざるを得ないでしょう。
無銘さまもこの「無雙神傳英信流居合兵法」の伝承者です。宜しくご指導お願いいたします。
 ミツヒラこと松原昭夫


投稿: 無銘 | 2019年1月22日 (火) 21時38分

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