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2019年1月31日 (木)

曾田本その2を読み解く2大森流居合抜方3の1初発刀

曾田本その2を読み解く
2、大森流居合抜方
3の1古伝神傳流秘書・行宗貞義・大江正路
  の抜方対比
1、初発刀
・ 
古伝神傳流秘書
初発刀:足を踏み出し向へ抜付け打込み扨血震し立時足を前に右足へ踏み揃へ右足を引て納る也
行宗貞義
前身(初刀又は初発刀):正面に座し抜き付け冠りて切る血振いを為し右足(踏み出したる足の事)を引き納刀勝をつく
大江正路(剣道手ほどきより)
前:我体を正面に向け正座す、右足を出しつゝ刀を抜付け、前の敵首を切り更に上段になり同体にて前面の頭上を真直に切り、血拭い刀を納む
 曽田先生は、大江批判から始まり、「名称古伝と違うなり」と云いますが、行宗居合も「前身・初刀・初発刀」で似たようなものです。手前味噌が過ぎると思えますが大江居合の業名称は概ね改変されて古伝の趣は失われています。
 行宗、大江共に座し方は正面に座す、場の正面を差す様な表現であって、対敵に対し「我が正面に座す敵」イメージが乏しい。古伝は「向へ抜付け」の表現で正面に座す対敵を意識したものとなっています。
 大江居合の註記に、曽田先生は「総じて座業にて抜付けは二星を勝つ故に首に非ず」と大江居合の「前の敵首を切り」に異論を述べています。
 古伝及び行宗居合の抜付け部位は「抜付け」の文言だけで指定がありません。林崎甚助重信の根元之巻には「柄口六寸勝」を極意としています。
 大森流居合及び長谷川流居合は既に根元之巻の成立時から遠く「柄口六寸勝」は失われている様です。
 相対する敵の何処に斬りつけるかは古伝神傳流秘書ですら指定していません。大森流居合の発生が真陰流の大森六郎左衛門であると云うので「柄口六寸」所謂「二星」であり、林崎甚助重信の居合が「腰刀三尺三寸により柄口六寸に勝つ」根元之巻から持ち出されたものでしょう、しかし土佐に持ち込まれた居合には「柄口六寸」の教えは術理では幻となっています。
 「英信流居合目録秘訣の外之物ノ大事雷電霞八相」に曽田先生が述べている極意が記載されています。
 「雷電霞の二ヶ条當流極秘中の秘にして大事、此外に無、請流に心明らかにして敵の働を見と云教有れ共當流には雷電の時の心亦霞ごしに見るが如くの心の所に大事の勝ある事を教るなり。
 夢うつつの如くの所よりひらりと勝事有、其勝事無疵に勝と思うべからず、我身を先ず土壇となして後自然に勝有、其勝所は敵の拳也、委しき事は印可に有、八相は四方八方竪横自由自在の事也、故に常に事(業か)形の修練熟せざれば時に臨て其習い出る事無し。
 本文には教を広く云、亦曰八相に打下ろす所にて大事の勝有則二星也。大小詰之極意は霞蹴込につづまる夫とは敵の眼を我が手を以払う、敵憶くるゝ所にて勝、手ウゴカシ難きときは我頭を敵の顔に突付べし、又は足にて敵の陰嚢を蹴る也。
 詰合は二星につづまる、敵の拳也、二星一文字と云時は敵のこぶしを抜払う事也、総じて拳を勝事極意也」
 林崎甚助重信当時の業では拳に抜きつける術があった様ですが、大森流、及び長谷川英信流では、失伝した極意の様です。
 あえて、拳への抜き付けを強調した場合、行宗居合、大江居合は成り立たない様に思われます。
 それは、手首を折り曲げたり捏ねる様にして対敵の抜き付けんとする拳に斬り付ける事となり、あるいは右足を踏出しての抜き付けで、上体の高さを自由に調整できなければ不自然となる場合が予測されます。位置が定まらない動く拳への抜き付けの難しさを克服するには、まず、対敵の抜き付け位置が上下に動く首なりこめかみなりに抜きつけられる稽古を嵩ね、その上で拳への抜き付けを稽古する事になります。
 その場合、現代居合の標準である、形を逸脱し、横一線の抜き付けも縦横無尽の抜き付けを身に着ける事となるでしょう。
 連盟の教えや段位に拘る人には不向きな事になりそうですが、日ごろ同じ形の抜付けばかりに甘んずる事の無い心構えが大切でしょう。
 曽田先生はそこまで意識されて大江居合を批判したとも思えません。神傳流秘書の「大らかな抜付け打込み」を如何にものにできるかは、まず現代居合の要求事項を100点取れる様に、2~3年でクリヤーできる人だけに許されるものかも知れません。
 大江先生の抜き付けで気になる文言に「右足を出しつゝ刀を抜付け」と有ります。「足を踏み出し」との違いは何処まで認識できるでしょうか。文章は堀田捨次郎先生によると思われます。
大江先生:右足を踏出しつゝ刀を抜付け
河野先生:右足を踏出すや敵の抜刀せんとする腕より其の顔面に真一文字に斬り付ける。
政岡先生:抜付と同時に右足を直前(すぐまえ)に大きくふみ出し・・・。
池田先生:剣先を一気に抜き出すと同時に、右足を踏み込み、踏み立てて横一文字に斬り付ける。
中山博道先生:右足踵が左膝頭附近に来るごとく踏み著くると同時に刀を抜く。
抜き付けは、「右足を踏み立てるや同時に抜きつける」の文言の方が強い斬撃力が得られると考えられます。
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 行宗先生の血振は、抜き付けた右足に左足を退き付けずに血振している様です。其の右足を引いて納刀する様ですが、これでは倒した敵との距離が離れすぎます。左足を右足に引き付け踏み変えてから右足を引くべきでしょう。
 大江先生の文章からは、血振後の状況が読み取れません。「剣道手ほどき」から「・ ・頭上にかざしたる刀は頭上より右斜め下へ旋円して下す。此の時後ろの左足は尤も軽く右足に揃へ上体を稍や前面に屈む、左足を後へ引き右拳を上に返し刀の峯8寸を鯉口を握りたる左手の拇指の股へ摺・・刀を納む」
 現代居合では、踏み出した右足を引いて納刀します。この「剣道手ほどき」には写真も載っています。右足前での納刀写真となるので、血振の際み踏み出した右足に左足を引き付けず其の侭血振納刀ですんでしまいます。
武術の手附は言葉をよく吟味し、動作の順番や、寸法・形・方法は間違いなくすべきものでしょう。
 大江・堀田共著「剣道手ほどき」は大正7年1918年ですからほぼ100年前のものになります。
 
 

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