« 曽田本その2を読み解く4長谷川流居合抜方4の11抜打 | トップページ | 曽田本その2を読み解く5長谷川流奥居合坐業抜方5の2脛囲 »

2019年2月22日 (金)

曽田本その2を読み解く5長谷川流奥居合座業抜方5の1霞

曽田本その2を読み解く
5、長谷川流奥居合座業抜方
5の1霞
参考
古伝神伝流秘書
抜刀心持之事(格を放れて早く抜く也 重信流)
1本目向払:向へ抜付返す刀に手を返し又払ひて打込み勝
行宗先生
長谷川流奥居合抜方
座業(奥居合には順序なしと伝へらる)
霞:抜きつけかへしてかむり切る。
大江先生
長谷川流奥居合抜方(大江正路先生、堀田捨次郎先生共著)
座業
霞(俗に撫斬りと云う:正面に座し抜き付け手を上に返し左側面水平に刀を打ち返す直に上段となりて前面を斬る、(血拭いはよく、刀は早く納める事。其刀身を鞘へ6分程早く入れ、残りは静に体の直ると共に納むるものとす、以下納めは之と同じ。 括弧内剣道手ほどきによる ミツヒラ)
 曽田本その2に、大江正路先生の長谷川流居合の横雲から真向の業が欠落しています。奥居合は座業、立業ともにありますので其の侭掲載しますが、一本目霞の様に括弧内の文章が省かれていますので、「剣道手ほどき」で補足してあります。以後すべて同様に不足分は補足します。
 古伝、行宗、大江とも抜き付けから切り返し真向切については、特に文章上の違いは見出できません。この様な業の運用は個人の思い入れが大きくなりますから詳細な運剣動作が残されて居ればその理解度が推し測れて参考になったでしょう。
 ここで、大江先生の括弧内記述で「血拭ひはよく」の文言ですが、奥居合は「血拭いはしないで納刀する」と読めるのですが、現代居合の奥居合では、しっかり「横血振り」として真向に斬り下した後に「血拭ひ」の動作が継承されています。この「剣道てほどき」の文章はほかの事を示唆しているとも思えません。
 奥居合などの横に開く「血振り」について、木村栄寿先生の「林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流伝書集及び業手付解説」の童蒙初心之心得に恐らく、横血振りを言っていると思われる一文が見られます。
 居合道の正しい認識を得る為、転記をご容赦願います。
「血揮開き収は敵に逢ての用たる事にてはなし業の締りを付けたる事ゆえ一己一己之事成とも異ならさる様にすべし」
「開は胸を照らし腹を入れ腰を張り拳も一時に尖く開く時は拍子揃て引合よし」と横血振りの心構えを述べ「當流(長谷川英信流と思われる)は開きて息を續跡大森流に替る事なし」とあって、長谷川英信流では横血振りをする事有りと思わせるもので、大江先生の様に「血拭ヒはよく」という事にはなりそうもありません。斬りっぱなしで納刀では「業の締り」は無さそうです。
 尚中山博道先生の奥居合に就いては「居合読本」では「各種の居合を全部写真解説しやうかと思ったのであったが、余り大冊になるので、現今、最も盛んに行われている大森流と長谷川英信流とだけに止めて置いた。」として奥居合はありません。
 その反面、第三章が神道無念流、第四章が警視庁流、第五章が伯耆流居合、第六章が荒木流、第七章が陸軍戸山学校に於ける居合。奥居合は中山博道先生の公の業は不明となってしまいました。居合読本ですから居合全般を追ったのは止むおえません。結果として現今の、夢想神傳流の奥居合は、何がベースなのか不明です。
 山蔦重吉先生の夢想神伝流居合道から
 奥伝奥居合坐業一本目霞:立膝から始動し、初伝、初発刀のごとく前にいる敵に抜付け、第一の敵を倒し、ただちに右手の甲を裏返して、倒した敵の後の第二の敵の首を右側水平に斬る。さらに上段より斬下す。
 第二の敵を斬り返しで斬る、誌上の空論では容易でしょうが、一人目がどのように倒れているのかによってこれはどうなるのでしょう。たまたま邪魔にならないとしても、間が遠いので其の距離を相手が刀を抜き出す前に出来るでしょうか。切り返しによる柄口六寸の極意業の出番かも知れません。 
 細川義昌先生系統の梅本三男先生の居合兵法無雙神伝抜刀術から
 英信流奥居合之部
一本目向払:(正面に座して居る者を斬る)右手を柄に掛け刀を抜きつつ両膝を立て、腰伸びきるなり右足踏込んで(対手の右側面へ)抜付けたるも剣先が届かぬため、みぎあしより迅速に体を進めつつ、抜付けた刀が止らぬ中に直ぐ振返し、返す刀で(対手の左側面へ)斬り付け、左膝を進めつつ諸手上段に引冠り、更に右足を踏込んで斬込み、刀を開き納め終る。
 「抜付けたるも剣先が届かぬため」については、第20代河野百錬先生の大日本居合道図譜でも「第一刀を斬込みたるも不充分のため」とあって、その様に教えられてきたものでしょう。批判して居ても稽古にはなりません。
 大森流から長谷川英信流立膝を経てたどり着いた奥居合でも「剣先が届かない・不充分」などの事では、初歩の指導法が間違っているのでしょう。
 「ここぞと抜き付けるも、相手、さすがに、刀を抜く間もない、然し修行充分で上体を僅かに後ろに引き我が剣尖を見切った、我は即座に追い進んで切り返し・・」位になりたいものです。
 剣道小説の読みすぎ・・。吉川英治の宮本武蔵以外ほとんど読んだ記憶はありません。
 切り返しの斬り付け部位は、最初に抜き付けた右手の高さを其の儘に、右手を返して体を進めつつ切り返す。
 古伝も先生方も敢えて文面には、切り返しの部位は記述されていません。
 現代居合のテキストではそれなりに切り返しは左側面に斬り込みますから、腰より下に抜き付けるのが良さそうですが、のんびりやっていたのでは片手抜打ちで真向を割られそうです。
 参考に何処へ切り返しているか諸先生のテキストから上げて見ましょう。
 河野百錬先生無雙直伝英信流居合術全
 :最初右首に抜き付け左首に斬り返す
 山内豊健・谷田左一先生居合詳説
 :首を斬り右手を返し首を斬る
 河野百錬先生大日本居合道図譜
 :膝
 政岡壱實先生無雙直伝英信流地之巻
 :最初抜き付けた高さに水平
 山蔦重吉先生夢想神伝流居合道
 :倒した敵の後の第二の敵の首
 檀崎友影先生居合道教本
 :倒した敵の後方の敵の首
 平井阿字斎先生居合道秘伝
 :脛
 三谷義里先生詳解居合無双直伝英信流
 :抜き付けたそのまま刀を返し逆一文字
 福井聖山先生無雙直伝英信流居合道
 :脛
 京都山内派無雙直伝英信流居合術
 :踝下
 池田昂淳先生無雙直伝英信流居合道理合動作解説
 :向こう脛又は腰車
 池田聖昂先生無双直伝英信流居合道解説
 :脛(高脛)
 余談ですが、切り返す際の手の内について語られているのは、池田聖昂先生だけのようです。直ちに右手甲を返して・・(右柄手の掌中を緩め柄を返して刀刃を真向に向けるや之を握り締める)無雙直伝英信流居合道解説より。
*
抜き付けも、切り返しも相手の状況次第で何処へでも斬り付けられる位の稽古はして置くべきものでしょう。その上で最も有効な稽古業の部位を手に入れたいものです。

|

« 曽田本その2を読み解く4長谷川流居合抜方4の11抜打 | トップページ | 曽田本その2を読み解く5長谷川流奥居合坐業抜方5の2脛囲 »

曾田本その2を読み解く」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 曽田本その2を読み解く4長谷川流居合抜方4の11抜打 | トップページ | 曽田本その2を読み解く5長谷川流奥居合坐業抜方5の2脛囲 »