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2019年2月20日 (水)

曽田本その2を読み解く4長谷川流居合抜方4の9瀧落

曽田本その2を読み解く
4、長谷川流抜方
4の9瀧落
参考
古伝神傳流秘書
英信流居合之事
瀧落:刀の鞘と共に左の足を一拍子に出して抜て後を突き直ぐに右の足を踏込み打込ミ開納る此事は後よりこじりをおっ取りたる処也故に抜時こじりを以て当心持有り
行宗先生
後身
瀧落し:後向にて(敵鐺をとり上ぐる処を)右足を踏み出して立ち左足を進めて(柄に右手をかけて)柄を胸にとり右足を斜横に開き刀を胸にとり振り返りて(同時に抜刀を抜き出し□□間髪を入れざるよう)敵を突き其侭かむると同時に足を踏み込みて正面を斬り脛をつき納刀足を引く
参考
大江先生(剣道手ほどき)
後身の部
瀧落:後を向き、徐ろに立ちて左足を後へ、一歩引き鞘を握りたる左手を其儘膝下真直に下げ、鐺を上げ後方を顧み、右手を膝上に置き同体にて左足を出し、右手を柄に掛け胸に当て、右足を前に進むと同時に抜き、刀峯を胸部に当て、同体の儘左へ転旋して、体を後向け左足を前となし、其体の儘胸に当てたる刀を右手を伸ばし刀は刃を右横に平として突き左足をだしつゝ上段に取り、左膝を着き座しつゝ頭上を斬る、血拭ひ刀を納む。
 古伝は抜けだらけで、是では書かれていない処は想像することになりますが、現代居合の心得が無ければどんな業に成るか楽しみです。
 座して居る處、後の者が我が鐺を「押っ取りたる」ので、立ち上って、刀の鞘を左足に引き付けると共に左の足を一拍子に前方に踏み出し、鐺を上げて後ろの敵を打ち、右足を踏出し刀を抜き、左に振り向いて後ろの敵を刺突し、直に右足を踏み込み上段から真向に打ち込み開き納める。
行宗先生の瀧落は、敵が鐺を取り上に押し付けて来るので、立ち上り、右足を少し前に踏み出し直ぐに左足を右足前に踏み込んで柄を胸に引き上げ、右手を掛け、右足を右斜め前に踏み込んで同時に刀を押し下げ抜出し、間髪を入れず振り返って後ろの敵を刺突する。其の侭振り冠って右足を踏み込み正面を斬り下し同時に膝を着いて納刀。
大江先生の瀧落は、ほぼ現代居合無双直伝英信流正統会に近い物でしょう。
参考
中山博道先生(居合読本より)
瀧落:意義、敵が我が鐺を握ろうとするのを、之を避けて立ち上がったが、尚ほ追ひ迫るを以て再び之を避け、遂に抜刀して振り向きつゝ敵を突き刺し、尚ほ追撃する業である。
 動作:左手を以て刀柄を左方に開つゝ立ち上がり、左足を一歩前に踏み出すと同時に左拳が概右肩の附近に来る位まで刀を鞘の儘、抜き出し体を僅かに反らす、此際左踵は地に着かぬものとす。
 次に、右手を以て刀柄を握り右足を左足の稍々前側方に踏み着けると同時に左手にて、鞘を下方に押し下げつゝ体に近く抜刀し、刀尖が概左乳の上附近に来る如くす。此際後方から見た刀及び鞘の形は、概ね「直角」になるものとす。
 右足を軸として、後ろ向きをなしつゝ左足を少しく前方に出すと同時に刀刃を上にし、右片手にて敵を突き刺し、直ちに、刀を頭上に振り被り右足を左足の前方に踏み着けて敵を斬り側方に血振りをなしつゝ左膝を地につく以下横雲に同じ。
 鐺を握ろうとするのを二度も外す意味は鐺を取らせない事が大切で取られると振りもぐのは容易ではないからでしょう。
 外さずに取られた時はどうするのか、この手附では解りません。
 立ち上がり、左足を一歩踏み出すと同時に左拳が概右肩の附近に来る位まで刀を鞘の儘、抜き出し体を僅かに反らす、「此際左踵は地に着かぬものとす」の處は何故そうするのか、意味の有る動作ならば、読者の想像に任せるのはおかしいでしょう。
 刀の鍔から柄頭迄右肩から覗いています。その上体を反らし、踵まで上げて居ます。敵に鐺を取られていませんから此処までする必要は無さそうです。寧ろ後ろから肩越に柄を取られそうです。取らせて投げ飛ばすのでしょうか。
 後世の方が尾ひれをつけて解説されて居そうですが、敵に余計な事をさせない、シンプルさを欠いた動作はいかがなものでしょう。
 博道先生の「日本剣道と西洋剣技」の中に日本剣道型25項目目に「後方より武器を掴まれた場合」が述べられえています。
 「これを外づすには、左、右と順次に対手の逆を行くか、同時にこれを払ひ外すかの二種あるが、この外すといふことは非常に困難な業で、沢山ある抜刀各流にも、その例はまことに少ない」とやや否定的です。
細川義昌先生系統の梅本三男先生(居合兵法無雙神傳抜刀術)
瀧落:後に座して居る者を斬る)左手にて鯉口を握り立ち上り(後者が右膝を立て鐺を握り引き止る)、右足を踏出し柄を左へ突出し、左後へ振向き対手を見つつ急に左足を前へ踏越す、同時に柄を右肩の前へ引上げ右手を掛け、更に右足を前へ踏み出すなり、刀を引抜き鞘は後へ突込み、鐺で対手を突き、刀の棟を胸部へ引付け(左より)後へ向くなり左足右足と踏込み対手の胸部へ突込み、更に右足踏込みつつ諸手上段に冠り大きく斬込み刀を開き納めつつ蹲踞し左足踵上へ臀部を下すなり、右脛を引付け納め終る。
 対手の握る鐺を引き外す場面は「柄を右肩の前へ引上げ」の瞬間でしょうか。鐺が我が後方で右・更に右・右下・中で突く。
 複雑な想定程手附はシンプルで、作動中の変化に一々対応しないで完了できる業が技を生み出すと思います。
 業の進行途中でのアクシデントは予測しない事が大切で、相手を自分の動きに誘い込むことが出来ない業は業ではないでしょう。それが武術の奥義と信じています。
 

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コメント

ミツヒラ様

私のことを記憶してくれてありがとうございます。そのぐらいに長い時間が流れましたね。この部分は本当にすみませんでした。改めてよろしくお願い致します。

実は岩田先生の本ですが、最初は師伝芥考でしたね、これをネットで探して(岩田先生の弟子さんの中で一人、西本千春先生の兵庫尚道館のホムページで探しました)、'もしかして大先生がお持ちしているんじゃないか?'と思って直ぐ先生に「先生、もしかして大先生が岩田先生の本をお持ちしておりますか?」と聞きました。その後、先生が大先生に連絡して私の代わりにお聞きしました。その後、先生に大先生は岩田先生に貰った二つの本があり、師伝芥考と旦慕芥考という本があると聞きました。大先生が岩田先生から直接貰ったもので、最初のページに岩田先生が大先生にお伝えする言葉が書いております。
私にとってはけっこう幸運だったと思います。岩田先生の本は私家版なので求める易くないからです。

後、大先生のお陰様で二つの本をコピーした結果、私は二つのごコピーした本を持っています。先生は日本語はできないので、毎晩、親切にご指導してくれる先生についての感謝の心でお見上げに渡しました。
これが翻訳が終わるまでの経緯です。(個人的に旦慕芥考の方が私にとっては良いと思いまして、これに決めました)

本当に表現や用語がけっこう難しかったんです。まるで韓国の͡昔の詩とか文学を見る感じでした。現代ではよく使わない表現とか用語がたくさんあるのもありますが、韓国語では全然使わない用語もたくさんあるので、これをどうやって適切な表現、文章に訳するのがよいなのかが最大の悩みでした。
色々探したこともありますが、ミツヒラ様のお助けも本当に役立ちました。その時は、本当にありがとうございました。

ミツヒラ様の主催の研究会ですが、探してみたんですが、JR横須賀線鎌倉駅ですね。川口駅からは電車で1時間半ぐらいなので、いつかは時間を作って訪問しますから、その時はよろしくお願い致します。

今からは日本で住むことになったんですが、なるべくよく韓国に通って先生の指導される予定です。韓国と日本が随分近いから時間とお金の問題がなければよく通うのはできるので…

それと大先生の話ですが、大先生は岩田先生の弟子さんの柳田邦治先生と交流しております。柳田先生は東京蘆州会、大先生は韓国蘆州会として活動しております。
会ったことはないですが、大先生の縁があるので、柳田先生にもご挨拶のために訪問する予定です。一応、連絡先を知らないので、先に大先生に頼むしかないと思っています。

随分コメントが長くなりました。

最後ですが、岩田先生の本の話です。私が知っているのは旦慕芥考と師伝芥考、そして古流居合の本道です。ところで、先生に聞いたことですが岩田先生の本がそれ以外にもあると言われました。先生は題目は知らないと言われましたが、後にネットで探したところ、「居合道集義」という本がありました。予想は多分これだと思いますが、もしミツヒラ様はこの本をお持ちしておりましょうか?この「居合道集義」はどのような内容が載っているかこれが気になります。

Lee(李)


Leeさま
コメントありがとうございます。
西本千春先生、お会いしてお話しさせていただいたこともありましたが、一昨年お亡くなりになられました。
岩田先生の居合道集義は持ち合わせていません。無双直伝英信流の先生ですが流派が異なりますのと現代居合にあまり興味が無いのですが、Leeさまのお持ちの、古流居合の本道・旦慕芥考・師伝芥考は読ませていただきました。
岩田先生は古伝にも興味があった様で神傳流秘書もご研究されておられた様です。

   ミツヒラこと松原昭夫

投稿: Lee | 2019年2月21日 (木) 00時43分

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