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2019年2月15日 (金)

曾田本その2を読み解く4長谷川流居合抜方4の4浮雲

曾田本その2を読み解く
4、長谷川流居合抜方
4の4浮雲
参考(曽田本その1より)
古伝神傳流秘書
英信流居合
浮雲:右へ振り向き足を踏みもぢ彳腰をひねる抜付左の手を添へて敵を突倒す心にて右の足上拍子に刀をすねへ引切先を後へはね扨上へ冠り膝の外へ打込み後同前又刀を引て切先を後へはねずして取りて打込む事も有
行宗先生
右身
浮雲:左向に座し左足を少し引き立ち同時に柄を左手にて下横にとり更に(正面に向き直ると同時に柄をとり 曽田補足)左足を右足に搦みて抜きつけ(左に体をひねりて抜く 曽田補足)中腰となる此の時左手を刀峯に添へ引き倒して左膝外に正面を切るなり
参考(剣道手ほどきより)
大江先生
右身の部
浮雲:左向き静かに立ち、中腰となりて左足を後へ引き、刀を左手にて左横に開き、右手を頭上に乗せて力を入れる、其開きたる状態より左足を右足前方へ一文字となし刀は柄を右手に握り、胸に当て右の下へ抜きつゝ体を右へ廻し、刀尖の三寸残りし時、刀を一文字の儘体は中腰となり右横より左へひねり正面に向け抜付け、折り返して打ち、左手の内にて刀峯を押へ伸ばし右手は弓張とし、右左を右斜へ引き、其膝をつき、敵を引き倒し、直に刀を肩上にてかざし、上段にて正面に直り左斜を斬る、此時膝頭外にて両手を止む、血拭ひ刀を納む。(敵三人並び一人の敵を置き先の敵を斬る時)
 古伝の浮雲は抜けだらけで、現代居合を思い浮かべながら勝負しているようなものです。現代の浮雲の動作と当てはまっている様です。
 吉宗先生も、抜けだらけですが古伝が出来れば問題ない様です。「刀峯に添へ引き倒して左膝外に正面を切るなり」の「正面を切る」ですから引き倒すのであって右に引き廻さなければ充分正面に倒した敵を切れるでしょう。
 大江先生の長谷川流居合は奥居合で横雲から抜打(真向)が曽田本その2から抜けていて曽田先生の批判が見られないのは残念です。
 従って長谷川流の横雲から真向迄は、大江・堀田共著の「剣道手ほどき」に依り手附解説します。
 正直言って大江先生の手附は読みづらい。この浮雲は敵が我にどの様に仕掛けて来たのか古伝も行宗先生も大江先生も語って居ません。
 右身浮雲の業名によって、敵は我が右側に座して居る、其処で我は場の正面左向きに座すのだと判断します。
 敵は長谷川流(英信流)の場合一人が原則の様ですが、長谷川流でも奥居合である古伝抜刀心持之事では複数も存在します。
 それにも関わらず、大江先生は手附の終りに括弧書きして「(敵三人並び一人の敵を置き先の敵を斬る時)」と後書きしています。
 この文章も、このまま読めば敵三人と我でその場に4人いる様な文章にしか読めません。
 と云う事で大江先生の手附は、信頼性が無い様に思います。
 その上、浮雲の動作はどう見ても、右側の敵が仕掛けて来たのでそれに応じただけで他の敵に対する配慮などみあたりません。
 当然古伝も行宗先生の浮雲も敵は右脇に一人と思えます。
 大江先生の浮雲で、敵が仕掛けて来たので、敵を見ながら中腰に立ち上がって左足を後に引き、刀を左横に開く、右半身になっていますから柄頭は差した状況から稍々左に開くでしょう。
 敵が柄を制止に来たのを外した所に相当します。
 そこで「右手を頭上に乗せ、力を入れる」この動作の意味は、柄を取り逃がした敵が右手を取ろうとするから、とかいう人も居る様ですが、私なら右足に取り付き引き倒します。
 替え業は如何様にあるとも「剣道手ほどき」に正規の手附として乗せるべきものでは無いでしょう。
 次に左へ柄を逃がした後左足を右足の前に「一文字となす」は爪先左向きの右足の前に左足を敵に向けて踏み込むことになります。敵は右脇すぐそばですから踏み込みはここまでです。
 是により、我が身は右身から左身に反転し同時に柄を右胸に引き付け右手柄に掛け、敵に向かって刀を抜きつつ更に右に腰をひねる。
 「刀尖の三寸残りし時、刀を一文字の儘体は中腰となり」は、右胸に引き付けた柄を上に抜き上げ切先三寸迄抜て鞘と刀刃が一文字になった時、体を低く中腰に下げ、左へ腰を捻って正面に(敵に)抜きつける。
 更にもう一度、打ち返す二度切の意味も、説明の無いもので、一度目が浅いとか相手の手を切っただけとか勝手に推測すればいいでしょう。是も一度の斬り付けで充分な稽古をすべきで、二度打ちする様なへぼは意味がありません。古伝も行宗先生も「抜付」です。
 跡は左手を刀の峯に添えて右足の方に退き倒し、上段に冠って左足膝外に倒れた敵を斬って居ます。
 この堀田捨次郎先生の手附は大江先生の演武を見て書かれたのでしょう。恐らく替え業か何かの演武であったと思われます。
 大江先生が不明瞭な「敵三人」の攻防により、直弟子だった政岡先生の浮雲などでは、柄を取りに来る敵以外にも仕事をしてもらい、仲裁に立つとか、逃げるとか、知らんふりしているとかの動作を解説されています。
参考(居合読本より)
中山博道先生の浮雲:「意義、右側面に坐せる敵が我が刀柄を握ろうとするのを避けつゝ立ち上がり抜刀と同時に斬り着け敵の倒るゝに乗じ胴部を斬る業である。」
 敵は右側一人です。
参考(居合兵法無雙神傳抜刀術より)
 細川義昌系統の梅本三男先生の浮雲:)「(右側に座して居る者を斬る)正面より左向き居合膝に坐し、例により左手を鯉口に執り立ち上がり柄諸共左足を前に踏出し(視線は右正面の対手に注ぐ)。
 体を右へ廻し正面へ向きつつ柄を上げ対手の頭上を越さすようにして、刀を前腹へ横たへると同時に左足の裏を上に向け右足の前を超えさせ、足を交叉し柄頭を左右へ割り、腰を下げ刀を右真横へ引抜き切先き放れ際に体を左へ捻り、正面より左向きとなりつつ対手の胸元へ斜に(切先き上りに、手元下りに)抜付け。
 体を右へ捻り戻しつつ刀の腰に左手の四指を添へ、体は正面より右向きとなりながら、刀尖を下げ柄頭を右後へ引上げ対手の体を押倒すなり。
 右膝を跪き刀尖を上より後へ振り返し、双手を向ふへ突出し、横一文字に構へ(視線は正面の対手に注ぐ)右膝を正面へ進ませつつ、左上段に振冠り、左膝を踏出し其脛を少し右へ倒し左脛の外側へ(胴体に)斬り込み刀を開き納め終る。」
 この場合は、我が右に敵は一人でしょう。相手の状況は不明ですから一方的な攻撃でしょうか、相手が柄を取りに来たならば外す動作が欲しいのですが「立ち上がり柄諸共左足を前に踏出し」ています。
 相手が仕掛けんとするに先んじて立ち上がって前に出る、相手に向き直りつつ柄を上げ、相手の頭を越して、柄を左に横たえながら抜き出し同時に左足を右足の右に踏んで交叉させ、右真横へ引き抜きざま体を左に捻って「正面より左向きとな」って切先上がりに「相手の胸元へ」斬り付ける。
 「体を右へ捻り戻しつつ」左手を刀の腰に添へ、刀尖を下げて右後ろへ押し倒す。「右膝を跪き刀尖を上より後へ振り返し、双手を正面に突き出し、横一文字に構へ」左上段になって・・。
 体の向きがクルクル状況に応じて変わるので動作が其の都度止まり「えっ、えっ」て言いながらどうにか演じて見ました。
 文章にすると、大変判りずらいのが動作でしょう。かと言って動画では演じる人が文章通りにできなかったり、癖が強調されたりやっかいです。
 長谷川英信流の業のうち「浮雲」は複雑すぎる動作を要求していますが、これ等を元に古伝の簡略な手附に近付ける稽古をすべきかもしれません。
 相手次第に変化するのはどの業でも同じ事ですから仮想敵の動きに惑わされない技の習得が大切なのでしょう。
 
 
 
 

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