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2019年2月 4日 (月)

曾田本その2を読み解く2大森流居合抜方3の5陽進陰退

曾田本その2を読み解く
2、大森流居合抜方
3の5陽進陰退
古伝神傳流秘書
陽進陰退
初め右足を踏出し抜付け左を踏込んで打込み開き納又左を引て抜付跡初本と同じ
行宗先生
進退(八重垣 大江派)(陰陽進退)(陽進陰退のことならん)
正座し抜き付けたる時膝を浮へ左足を踏み込むと同時に冠りて切り刀を横に開き納刀漸時左足を引き付くる也此時敵又切り込み来るを左足を引き右脛を囲い冠りて切る也(脛囲の時抜き放ちても不苦)同断
大江先生
八重垣
正面に向い正座す、右足を出し左膝を浮めて中腰となりて首に抜付け、左足を前方へ踏み出して両膝浮めて中腰の儘大間に上段に取り前方真直に頭上を斬り下し、此時右膝をつき左膝を立て、同体にて長谷川流の血拭ひをなし刀を納む、此時敵未だ死せずして足部を切り付け来るにより血拭ひの姿勢より右足を重心に乗せて立ち、直に左足を後へ開き体を左斜構ひとし刀を膝の前へ抜きて平とし、膝を囲みて敵刀を受け更に身体を正面に向け上段となり、坐しながら頭上を充分斬る、血拭は右足を後部へ引き刀を納む。(剣道手ほどきより)
 古伝の業名「陽進陰退」ですが、行宗先生は「進退」、大江先生は「八重垣」。業名に工夫をこらすことは武術流派に有るものですが、業の雰囲気を全く無視して「八重垣」とはどの様な状況によって変えたのでしょう。
 この頃大江先生も職が無く中学校の剣道の先生との話が出て其の校長辺りから、中学生向きに業名変更を突き付けられ応じたものかも知れません。
 八重垣の業名は、大江先生が置き捨てた組太刀の詰合の4本目に「八重垣」の業名が存在します。
 是は「双方下に抜き合わせたる時相手打込むを我切先に手を懸けて請け又敵より八相に打を切先を上にして留又上より打つを請け相手打たんと冠るを直に切先を敵の面へ突詰める」という大技です。立ったり座ったりの繰り返し動作が陰陽進退と雰囲気が似ているとして引用したかも知れません。
 大江居合は古伝の剣術を捨ててしまったとしか言いようのない行為です。
 戻りますが、古伝の陰陽進退は「・・開き納又引て抜付跡・・」です。第二の敵が来たとも、最初の敵が死力を奮って斬り込むとも、斬り込みを受け払って切るとも言っていません。この場面は自分で想定して稽古しろ、とでも言うのでしょう。
* 
 曾田本その1に谷村派第15代谷村亀之丞自雄による「英信流目録」があります。大江先生の先代16代五藤孫兵衛正亮の師なのですがその陽進陰退「陽進刀是は正座に坐する也右の足一足ふみ出し立也に抜付左を踏み込み討込む也すぐに右脇へ開き其侭納む也。陰退刀其侭左の足を跡へ引其時亦抜付打込み血ふるひの時立左の足を右に揃へ納る時右を一足引也」とあります。
 この手附は古伝を解説した文章とはとても思えません。陽進はともかく、陰退の「其侭左の足を跡へ引、其時亦抜付打込み・・・」で之では古伝の儘に過ぎず参考になりません。これは谷村派の陽進陰退ですから中山博道先生の陰陽進退と思えます。 
 中山博道先生はこの陰陽進退の意義をどの様にしたか。
「互に対座せる時急に初発刀の如く切りつけたるも、敵逃れしを以って直に追いかけ之を斬り倒し、刀を納めんとせし時、再び他の敵より斬りつけられたるを以って直に之れに応じて敵の腰を斬る」
 現在の夢想神傳流の業となります。
 細川義昌系統の梅本三男先生の陰陽進退も中山博道先生と同じと云えるでしょう。
「陰陽進退」前方を斬り又薙付け来る者を斬る。
「正面に向ひ正座し、例により鯉口をきり右手を柄に掛け、抜きつつ膝を押をのばし右足踏み込んで(対手の右側面へ)抜付けたるも剣先が届かぬ為、急に立上り左足を右足の前へ踏越しつつ刀を引冠りて正面へ斬込み刀を右へ開き、刀を納めつつ右膝を跪き納め終りたる所へ(別人が向脛へ薙付け来る)急に立上り左足を一歩退くと同時に刀を前へ引抜き切先放れ際に左腰を左へ捻り、体は正面より左向きとなり刃部を上に向け差表の鎬にて張受けに受け止め体を正面に戻しつつ左足を右足横へ跪きながら刀尖を左後へ突込み右諸手上段に引冠り更に右足踏込んで斬込み血振ひして刀を納め終る」
 古伝の陰陽進退から倒した敵が再び斬り付けて来り、新たな敵が来たり、恐らく替え業は幾つも横行したのでしょう。手附が不十分であれば、その順序に従って抜けた部分は如何様にも想像できるのが、仮想敵相手の居合なのです。
 行宗、細川、大江の各先生とも下村派の下村茂市の同門です。大森流は一対一の攻防を主としている様ですから、新たな敵が斬り込み来るは疑問ですが、現在にも生きて居る業となります。
 新たな敵が向こう脛に斬り付けるのも立って来る新たな敵が向こう脛ですか?それより一刀目で不充分な抜きつけが気にいりません。どうせなら柄か抜き懸けた刀で敵に受けてもらいたかった。
 脛に斬り付けられた際、刀の刃で受けるか、表鎬か、棟かいずれにしても柄握りの妙が無ければ刃、又は刃の平で受けてしまいます。
 この業は「柄口六寸」の極意を学べる業と云えそうです。敵刀を受けるのではなく小手に抜き付ける・・・。

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