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2019年3月29日 (金)

曽田本その2を読み解く9英信流詰合之位9の1発早

曽田本その2を読み解く
9、英信流詰合之位
9の1発早
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
詰合(重信流也 従是奥之事 極意たるによりて格日(確実)に稽古する也
1本目
発早:楽々居合膝に坐したる時相手左の足を引下へ抜付るを我も右の足を引て虎の一足の如く抜て留め打太刀請る上へ取り打込み勝也
参考
曽田本その1
業附口伝
詰合之位
1本目
八相:(仕打納刀 口伝に発早とあり 曽田メモ)
是は互に鞘に納めて詰合て相向ひに右膝立て坐する也、互に左足を一足引きて倒様に抜合する也(互に右膝へ抜付ける)、其侭ひざをつき仕太刀はかむりて面へ打込也、此の時打太刀は十文字に頭上にて請け止むる也、互に合せ血振ひ足を引き納刀
 古伝神傳流秘書と曽田先生による第16代五藤正亮先生と曽田先生実兄土居亀江の師谷村樵夫自庸先生による口伝をまとめた「業附口伝」との違いは先ず、古伝は業の総称「詰合」です。
 これに対し業附口伝は「詰合之位」と総称に「・・之位」を付け足されています。「・・之位」は、古伝に在りません。東北地方の元禄時代の伝書にも「・・之位」は見当たりません。
 天明8年1788年の秋田藩の林崎流居合の伝書では「居合目録次第」として「向之次第」、「右身之次第」で「・・之次第」が使われています。
 明治44年1911年の新庄藩の林崎新夢想流も「表次第」の様に「・・次第」であって、「・・之位」はありません。
 信州に伝わった無雙直伝流にも「・・之位」が見当たりません。恐らく江戸末期に土佐藩内に幾つかの剣術流派がありましたから、それらのどれかに使用されていた「・・之位」を適用したのでしょう。
 「詰合」というより「詰合之位」、「太刀打之事」というより「太刀打之位」と云った方が、格が高く思え、響きも良かったのかも知れません。
 古伝を知れば、月並みな付け足しに思えるのも不思議です。土佐の居合は、武士の心得であっても決して上級武士のものでは無いでしょう。格上に見せるのは明治以降の様に思います。
 次に、古伝は「・・相手左の足を引下へ抜き付けるを、我も右の足を引て虎一足の如く抜きて留め」であって、相打ちとは思えません。
 業附口伝は「互に左足を一足引きて倒様に抜合する也」と、同時に抜き合うわけです。是では、チャンバラごっこでしょう。同時進行ですから、双方の刀は双方の中間で打ち合ってしまいます。同時に足を引いている為、少しでも坐する位置が遠ければ、双方の切先は双方の膝に届かない可笑しな演武がまかり通っています。
 居合の虎一足では、相手の切り込みを請け太刀となって請け留めていますから相手の剣先は、我が右足に届く位置で請け留めているのです。
 次の所で古伝も業付口伝も、詳細は無いので、古伝などは打が受け太刀の形を作った上に打込むように錯覚します。此処は、先に切り込んだが受け留められてしまった打は即座に上段に振り冠り再度打込まんとするに仕が機先を制するか、仕が打の刀を摺り上げつつ上段に振り冠って打ち込むのを打は請け留めるかでしょう。
 Img_0449
曽田本その2の原本です。
業附口伝と同じものになります。
 古伝神傳流秘書は、曽田先生から写しを直接もらわなければ、門外不出で伝授された個人のもので一般には知りえないものでした。
 河野百錬先生は昭和30年1955年の「無双直伝英信流居合兵法叢書により活字本として発行されたのです。そこで初めて古伝「神傳流秘書」の詰合が判りました。
 それ以前のもので詰合を知るものは、同じく河野百錬先生の「無雙直傳英信流居合道」昭和13年1938年発行の活字本に依ります。
 この「無雙直伝英信流居合道」に掲載された「詰合」は」「詰合之位」であって、この時期河野先生が曽田先生に文通したりの交友があって、それから知り得たものをすぐに当用された様です。
 「詰合之位」(以下記す所は當流古傳の略述にして文責筆者に在り)と断られています。
1、八相(口伝に発早とあり)
打太刀、仕太刀共も納刀より始む。互に鞘に納めて詰合ふて相向ひ右膝を立てゝ坐するなり、互に左足を一歩退きて逆まに抜き合す(互に右膝に抜き付ける)、其の儘膝をつき仕太刀は冠りて面に打込む、此時打太刀は十文字に頭上にて請け留むるなり。互に合わせ血振ひし足を退きて納刀す。
 古伝神傳流秘書の詰合の発早(八相)と文言も気勢の有り様も異なると思います、曽田先生が昭和の初めに書き込まれた業付口伝です。
 詰合の運剣動作は知り得ても、古伝の発早(八相)の心は伝わりません。従って切先の届かない双方の中間で刀を合わせて約束事をこなすばかりになってしまいます。
 私は、一本目の手附にある「「相手左の足を引下へ抜付るを我も左の足を引て虎一足の如く抜て留め」の心が詰合の1本目から5本目まで貫かれているからこそ、八相・拳取・岩浪・八重垣・鱗形まで同じ様に打ち込まれて受けて、返す業が続くと思うのです。
 組太刀以外でも相手の攻撃を跳ねのけていく業が幾つも見られます。行きつくところは「受けた時には斬って居る時」を極意とする事が理解出来ればと思っています。
参考に第19代福井春政先生直伝の嶋専吉先生の覚書を稽古して見ます。
無雙直傳英信流居合術形乾
詰合之位
1本目
発早(口伝に発早とあり、八相とも録す)
姿勢及構へ:仕太刀、打太刀互に刀を鞘に納めたるまゝ詰め合ひて相向ひに右膝を立てゝ坐す。
業:双方左足を一歩後方に退きて立ち上ると同時に互に対手の右脛に斬付くる心にて(剣尖を下方に)抜き合はす。
 次てその儘左膝を地につくと共に仕太刀は振冠りて上段より打太刀の正面に打込む、此の時打太刀は剣尖を右に頭上にて十文字に之れを請け止むるなり。
 次て互に刀を合はせ適当の位置に復し双方左膝を跪き血振ひ右足を退きて納刀す。
 嶋専吉先生の覚書も曽田先生の業附口伝の域を出ていません。第19代も曽田先生の業附口伝で学ばれた様です。
 或いは古伝を知っていたが古伝は抜けが多く対応が難しかった為、安易な業附口伝に従ったのかも知れません。

 

 

 

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