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2019年4月

2019年4月30日 (火)

曾田本その2を読み解く11英信流大小立詰11の4骨防返

曾田本その2を読み解く
11、英信流大小立詰
11の4骨防返
参考
曾田本その1
古伝神傳流秘書
大小立詰
2本目
骨防返:相懸りに懸りて相手我が刀の柄を留めたる時我右の手にて柄頭を取り振りもぐ也。
曾田本その2
業附口伝
英信流大小立詰
4本目
骨防返:互に対立する也、打は仕の柄を両手にてとりに来る也、我は右手にて敵の両手を越して柄頭をとって両手にて上にもぎとる也。
五藤先生の教示:敵両手にて柄を取る時引廻しもぐ
 古伝と業附口伝には違いはない様です。古伝の「振りもぐ」、業附口伝の「上にもぎとる」、五藤先生の「引廻しもぐ」が気になります。
 尤も簡単で有効なのは業附口伝の「上にもぎとる」でしょう。いたずらに振り回せば相手が力を籠めてしまって、力比べになってしまいます。柄を取られるや「ひょい」と云った感じが良さそうです。
 この業は業付口伝の大小詰2本目骨防の立業です。
業附口伝の大小詰二本目骨防をもう一度稽古して見ます。
 「互に対座、打は両手にて仕の柄を握る仕は右拳を顔にあて其のひるむときに乗じ右足を柄越にまたぎ右足内側より右手を柄に添へ右足にて敵の両手を押拂ふと同時に柄を防取る也、此の時敵は我右脇へ匍ひ倒る也。
五藤先生の教示:向ふて居る両手にて柄を押し付る時直に右手にて面へ当て其虚に乗り右足をふみ込み柄へ手をかけもぐ。
参考
古伝大小詰2本目骨防扱
 立合の骨防返に同じ故に常になし
 古伝の大小詰の骨防は大小立詰と同じと有りますから冒頭の参考に依ります。之を座して行うばかりのことです。
 ややこしい、動作を好むのは大道芸のようなもので、見せ場を作り関心させたり、小難しい動作で弟子を翻弄するなど、意味の無いことに拘るのは技ではありません。その状況に最も適した方法は簡単な方法なのです。
 「かたち」ばかり真似て、段位だけ時期が来て上がった様な似非師匠が多いこの時代、そんな師匠の業は決まらない、いろいろいじくりまわし、こねまわし無駄な動作を本物に見せかけてしまうのでしょう。
 古伝は単純に、柄を取られたら柄頭を持って胸に引き付ければ良いだけです。

 

 

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2019年4月29日 (月)

曾田本その2を読み解く11英信流大小立詰11の3鍔打返

曾田本その2を読み解く
11、英信流大小立詰
11の3鍔打返
参考
曾田本その1
古伝神傳流秘書
大小立詰
3本目
鍔打返:相懸りに懸り我刀を抜かむとする其の手を留られたる時柄を放し手を打もぐ也。
曾田本その2
業附口伝
大小立詰
3本目
鍔打返:互に対立する也、打は仕の抜かんとする右手首をとる也、仕は右手を離すと同時に左手に持てる鍔にて打の手首を打つ也。
五藤先生の手記による教示:抜んとする時其手首を押へる左手にて手首を打。
 この業は古伝も業附口伝も大小立詰の3本目にの位置して、内容は同じものと云えそうです。
 古伝は「抜かむとする其の手を留られたる時」相手が我が「手」であって、業附口伝の「打は仕の抜かんとする右手首をとる」と右手の手首と限定しています。
 古伝の、「柄を放し手を打ちもぐ」で抜こうとする我が柄手、すなわち右手とわかります、右手の何処を制せられようと抜く事を留められれば古伝は「いいよ」とおおらかです。
 柄手を放せば左手の鞘手は自由ですから後は、相手の右手を鍔で打ち据えればいいだけです。
 相手が、我が右手首と、柄頭を押さえて来れば左手を鞘から離せばいい。相手が我が柄手と鞘手を押さえに来たら・・・。色々在りそうですが、まず手附通りの動作を自然に出来る様にする事でしょう。
 鍔打返ですが古伝は「柄を放し手を打ちもぐ也」であって鍔で打てとも、柄でうてとも云っていません。業名に捉われたい人は鍔で打てばいいだけです。
 五藤先生は「と左手にて手首を打つ」とされています。鍔打ちでは怪我をさせる事を考慮したのでしょうか、有効なのは鍔でしょう。
 何でもできる積りで、この業の変化業ばかりいじくりまわしてもあまり意味があるとも思えません。
 仮想敵相手の空間刀法ばかりやってきた人には、目の前に相手が居てその動きに如何に対応できるか、あるいは相手を如何に自分の思う所に居付かせるかを学ぶものでしょう。

 

 

 

 

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2019年4月28日 (日)

曾田本その2を読み解く11英信流大小立詰11の2袖摺返

曾田本その2を読み解く
11、英信流大小立詰
11の2袖摺返
参考
曾田本その1
古伝神傳流秘書
大小立詰
1本目
袖摺返:我が立て居る處へ相手右脇より来り我が刀の柄と鐺を取り抜かせじどする時其儘踏みしさり柄を相手の左の足のかがみに懸け中に入り。又我右より来たり組付をひぢを張り体を下り中に入る。
曾田本その2
業附口伝
英信流大小詰
2本目
袖摺返:(左右あり)打は横より組付仕肱を張りて一当すると同時にすぐに打の刀を足にすけて後に投げる。
五藤先生手記による教示:横合より組付肱を張り一当して中に入り刀を足にすけ跡へ投げる左右共同前。
 大小立詰の業の順番は古伝と業附口伝とは異なっています。
古伝:   1袖摺返・2骨防返・3鍔打返・4〆捕・5蜻蛉返・6乱曲・7電光石火
業附口伝:1〆捕・2袖摺返・3鍔打返・4骨防返・5蜻蛉返・6乱曲・7移り
 ここでは、曽田本その2をメインに読み解いていますから業附口伝の順番に従います。何故業の順番が変わったのか、7本目は業名まで変わってしまっています。
 土佐の居合には、神傳流秘書という素晴らしい業手附が第9代林六大夫守政によってもたらされています。それにもかかわらず口伝口授による指導法が指導者による、曖昧な覚えや、勝手な解釈がもたらすのでしょう。
 順番はともかく、袖摺返は古伝も業附口伝も業名は一緒です。
 古伝は相手が右脇から来て我が柄と鐺を取って抜かせない様にする。その取られた状態のまま、後ろに下がって体を下り相手の左足膝の後に柄を懸けて、掬い倒す。又は、相手が右から来て組付くので、その時肘を張って弛んだ隙に体を下げて、相手の左足膝の後に柄を懸けて掬い投げるなりするのでしょう。
 古伝は投げるとは言っていませんので、相手の膝のかがみに柄を懸ける、そうするとやる事が見えるよ、と教えているのでしょう。
 業附口伝は、「左右あり」と云うので、この業は相手が右から或は左からどちらでも同じと云うのでしょう。
 柄と鐺を取られる古伝の業は、失伝して、横から組付いて来るので肘を張って相手の腹に一当して「うっ」とする所を体を下り相手の刀を相手の足に懸けて後ろに投げる。五藤先生の教示も同じようなものです。古伝の「又我右より・・」の業だけが残されたのでしょう。
 「打の刀を足にすけて跡に投げる」・・ここは「仕の刀の柄を「打の足にすけて跡に投げる」の、ミスかも知れませんが、云われた様にやって見て答えをだすべきものでしょう。
 河野先生の昭和13年発行無雙直傳英信流居合道の大小立詰2本目袖摺返
 打は横より組み付く、仕肱を張りて一当すると同時にすぐ打の刀を足にすけて後に投げる也。
 政岡先生は古伝神傳流秘書に依っています。

 

 

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2019年4月27日 (土)

曾田本その2を読み解く12英信流大小立詰12の1〆捕

曾田本その2を読み解く
12、英信流大小立詰
12の1
一本目
〆捕
参考
曾田本その1
古伝神傳流秘書
大小立詰
一本目
袖摺返:我が立て居る處へ相手右脇より来り我が刀の柄と鐺を取り抜かせじとする時其侭踏みしさり柄を相手の左の足のかがみに懸け中に入り又我が右より来り組付をひぢを張り体を下り中に入る。
 古伝の大小立詰の一本目は〆捕ではなく袖摺返でした。次いでですが大江先生は奥居合立業の袖摺返の業名はここから拝借したのかも知れません。
 戻ります、〆捕の業名は古伝では4本目〆捕としてあります。
参考
古伝神傳流秘書
4本目
〆捕:相懸りに両方より懸る時相手両手にて我刀の柄を留我左の手にて相手の脇坪へ入れて両手を〆引上如何様にも投る也。
曾田本その2
業附口伝
大小立詰
1本目
〆捕:互に対立する也、打は両手にて仕の柄を握る也、仕は左手を以て打の左手首を握る也、更に此の時すぐに仕は右手にて打の両腕を締め込み我が体を台にして之れを極めるなり。
五藤先生の手記による教示:敵柄を両手にて取る、左手にて敵の左の手首を押へ右手にて敵の両肘を押へ体を込み〆付る。
 業附口伝の1本目〆捕は、古伝の大小詰では4本目に在った〆捕の様です。相変わらず土佐の居合はさ迷っている様です。
曾田本その2
大小立詰1本目〆捕
Img_0471
 古伝の〆捕は相懸りに懸かり、相手が両手で我が刀の柄を握る、我はすぐに左手で相手の脇坪に突きを入れ、右手で下から相手の腕を締め上げ、如何様にも投げる。
 業附口伝は、お互いに向き合って立って居る時、相手が両手で仕の柄を握って来る、仕は打の左手首を握るや右手で相手の両腕を締め込み仕の身体を土台にして決める。
五藤先生も同様の様です。敢えて古伝の様に投げ倒さない、決め業の稽古で終わっています。
 何れにしても締め込む時は体をグット接近させて締め込み相手の身体を浮かせてしまうのでしょう。

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2019年4月26日 (金)

曾田本その2を読み解く11英信流大小詰11の8山影詰

曾田本その2を読み解く
11、英信流大小詰
11の8山影詰
参考曽田本その1
古伝神傳流秘書
大小詰
8本目
山影詰:是は後より相手組を刀を抜き懸其手を切ると一拍子に我も共に後へ倒るゝ也。。
曾田本その2
業附口伝
英信流大小詰
8本目
山影詰:打は仕の後に座して後より組み付其の時仕は頭を敵の顔面に当て敵ひるむ隙きに我が刀を抜きて打の組みたる手を切る也
五藤先生の手記による教示:後ろより組付頭にて一当てして仰向にそりかえる。
 古伝は、後ろより二の腕を両手で抱詰して来るので、我は右手で柄を下から握り抜き上げて、相手の手を摺り切り同時に後ろへ倒れる。後ろより組付く時の状況次第では、刀を抜けないかもしれません。相手も無造作に組付くのでは不覚を取ります。
 業附口伝はそんな事もあったのか、後から組付かれたら先ず後頭部で相手の顔面を強打して組み手が緩めば、その隙に、柄を下から握って抜き上げざまに相手の手を摺り切る。
 演武では相手は後ろから二の腕辺りに組附き、仕が刀を抜き易くしておけばいいかも知れません。手附に在りませんが組み付かれるや両腕を「ふっ」と張って少し弛ませ柄を下から握って刃を自分の方に向けたまま抜き上げ相手の小手を擦切る。
 この手附を読んで想定を思い浮かべるといろいろ駆け巡ります。

 

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2019年4月25日 (木)

曾田本その2を読み解く11英信流大小詰11の7左伏

曾田本その2を読み解く
11、英信流大小詰
11の7左伏
参考
曾田本その1
古伝神傳流秘書
大小詰
7本目
左伏:是は左の手を取る也事右伏に同左右の違ばかり也、尤も抜かんとする手を留められたる時は柄を放し身を開きて脇坪へ當り又留られたる手を此方より取引倒す事も有也
曾田本その2
業附口伝
英信流大小詰
7本目
左伏:右伏せの反対業也
五藤先生手記による教示:左脇に座す右手にて胸を取り其手を押へ前へ伏せる。
 古伝は、右伏と同じだが相手は我の左側に座す。と相手が左手で我が柄を取る、直ぐに我は、左手を相手の首の後ろから廻して胸を取り、押し伏せようとする、相手いやと反り返るを機に右手を相手の右足膝に添えて後ろに投げ倒す。
 右伏は柄を相手の右足にかけて投げ倒しましたが、左伏の場合は、わざわざ右手を柄に懸けずに相手の右足に懸けて投げて見ました。
 右伏に同じ、ですから右手を柄に懸けて柄を以て相手の右足下に入れて投げるべきものでしょう。
 「尤も抜かんとする手を留められたる時は、柄を放し身を開きて脇坪へ當り」は相手が我が左手を取るか右手を取るかでしょう。指定はありません。相手の右手の一番近い処は、我が左手です。然し左手を取っても右手で刀を抜く事は可能です。
 形に拘らずに考えられる事をやって見るばかりです。演武会の出し物にするならば、左手を右手で押さえられ、体を左に開いて右拳で脇坪を打つ。
 「又・・」は曽田先生の右伏、左伏の相手が胸を取るなり、柄を取るなり、腕を取るなりされてもその相手の腕を取って引き倒す。
 古伝も業付口伝も主語が省略されている事があります。例えば古伝7本目左伏「是は左の手を取る也」誰が誰の左の手を取るのでしょう。相手が我が左手を取る。その場合相手は右手で取りに来るのがこの並び座す場合普通でしょう。
 その場合は我は右手で相手の首の後ろから手を廻して相手の胸を取ることになります。

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2019年4月24日 (水)

曾田本その2を読み解く11英信流大小詰11の6右伏

曾田本その2を読み解く
11、英信流大小詰
11の6右伏
参考
曾田本その1
古伝神傳流秘書
大小詰
6本目
右伏:我右の方に相手並び座し柄を取られたる時直に我右の手を向の首筋へ後より廻し胸を取り押伏せんとするに相手いやとすくばるを幸に柄を足に懸て後へ投げ倒す、又抜かんとする手を留められたるも右の通りに取倒す。
曾田本その2
業付口伝
英信流大小詰
6本目
右伏:打は仕の右側に並びて座す、打左手より仕の胸を捕る仕はすぐに其の腕を巻き込みて逆手をとり前に伏せる也
五藤先生教示:右脇に座す左手にて胸を取り来る其の手を押へ前に伏せる
 古伝の6本目右伏は曽田先生の業付口伝ではすでに3本目柄留に変えられてしまっています。
業付口伝
3本目
柄止:打は仕の右側に並びて座す、仕の抜かんとする柄を留む、仕は右手を頚に巻き打を前に倒さんとす、打倒されまいと後に反る、其時すぐに仕は打の体の反りて前足の浮きたる下より(膝)柄をかけて後へ倒す力を添ふる也。
五藤先生の手記による教示:右脇に座す抜かんとする柄をとる我れ右手にて首をまき前へ押す敵後とへそるに付後へ倒す其時柄を足へかけ倒す也。
古伝神傳流秘書
大小詰
3本目
柄留:抱詰の通り両の手にて柄を取り下へ押付られたる時向のわきの辺りへ拳にて当扨我が右の足にて相手の手を踏み柄をもぐ、常の稽古には右の足を押膝にてこぜもぐ。
 柄留の處で何故取り違があったのか疑問でしたが、五藤先生の頃に既に業の順番や動作が怪しくなっていたのでしょう。
 実兄の土居亀江や曽田先生に指導された「田口さん」もうろ覚えだったのでしょう。現代では、流派の業技法を門外不出としてその地域に留めて外に出さなかったり、その流の宗家筋が秘す事を条件に引き継いでいたとしても、既に人と争う道具ではありえません。宗家筋の職業として、ありがたそうに秘して口伝口授を主体としていれば、いずれ同様の混乱が起こり其の価値を失う事となると思います。
 今のうちに、伝書の公開と、業手附の文章化はして置くべきでしょう。そして公に問う時代と心得るものと思います。
 曽田本その2ではこの大小詰6本目右伏を曽田先生は記述しておきながら、「打は仕の右側・・・倒す力を添ふる也」までを斜線を以て消されています。五藤先生の教示は残されています。
 五藤先生の業は、古伝には見当たらないものですが、簡単な業ですからついでに稽古して置くのも良いでしょう。
 右脇に座す相手が左手で我が胸を取りに来るので、その手を右手で押さえて相手を前に引き伏せる。
 古伝の右伏のポイントは右脇に座す相手が、腰を上げ左に振り向き我が柄を体を乗り出して取る、我はすぐに、右手を相手の首の後ろから巻き相手の胸を掴んで、押し伏せる。あいていやとして逃れようと反る、反る時相手の足が浮くのでその右膝後ろ(膝下でも可)に柄を懸けて投げ倒す。

 

 

 

 

 

 

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2019年4月23日 (火)

曾田本その2を読み解く11英信流大小詰11の5胸捕

曾田本その2を読み解く
11、英信流大小詰
11の5胸捕
参考
曾田本その1
古伝神傳流秘書
大小詰
5本目
胸捕:詰合たる時相手我胸を取り突倒さんとする時我右の手にて其手を取り左の足を後へ引柄頭にて相手の脇へ当る引く時は随って抜突く也
曾田本その2
業付口伝
英信流大小詰
5本目
胸捕:互に対座、打は仕の胸を捕へて突く、仕すぐに右手にて支へ左手に持たる柄頭を敵の脇坪に当てる也、又胸を捕りて引く時はすぐに刀を抜きて突く也
五藤先生教示:向ふて居る右手にて胸をとり突く時は其手を押へ左手にて脇坪へ当る引く時は抜きはなち刺す。
 古伝の大小詰5本目胸捕は、相手が我が胸を取って突き倒そうとするので、我は腰を上げ右手で相手が胸をつかんだ手を取って、左足を退くと同時に左手で以って相手の脇へ柄当てする。相手が下がろうとするに従って、抜刀して突く。
 ポイントは、倒されそうになるので相手の手を掴み、更に左足を引いて押し倒さんとする相手の脇に柄当てするのです。
 業附口伝の大小詰5本目胸捕では、相手が我が胸を捕って突き倒して来るので、居合膝に座したまま右手を後ろ床に付けて支へ、左手に持った刀の柄頭で相手の脇坪へ柄当てする。是では相手にのしかかられて潰されそうです。
 「又」で別の業として相手が、我が胸を捕って引く時はすぐに抜刀して突けと云っています。
 胸を掴まれて引かれる時に抜刀できる状況は難しそうです。相手が胸を掴んだが放して退く状況とは違います。業になりそうもありません。
 五藤先生の教示は、相手が胸を捕って突いて来る時は、腰を上げその手を右手で押さえて、左手で脇坪に突き込む。
 相手が引く時は抜き放ち刺す。是は相手が態勢を変えようとするのに付け入る状況と取れるのですが、「又」の意味を「それからさらに」と取るか、もう一つは「突かずに引く場合は」と取るか否かによると思います。
 大小詰の演武を見ていますと大方は、柄当てされ、ひるんで退く様に演じています。
 この「胸捕」は古伝も業付口伝も想定は同じとみていいかも知れません。文章による表現の仕方は、古伝は抜けだらけなのに何故か、動作が浮かんでくるのです。
 業付口伝では、動作が止まって、さてどうしようと云った感じにさせられてしまいます。

 

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2019年4月22日 (月)

曽田本その2を読み解く11英信流大小詰11の4小手留

曽田本その2を読み解く
11、大小詰
11の4小手留
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
大小詰
4本目
小手留:立合の鍔打返に同じ故に此處にては不記
参考
曾田本その1
古伝神傳流秘書
大小立詰
4本目
鍔打返:相懸りに懸り我刀を抜かむとする其の手を留られたる時柄を放し手を打もぐ也
 古伝は、大小詰4本目小手留は大小立詰の3本目鍔打返と同じと云います。同じでも大小詰は居合膝に座すので、居合膝に相対し我から刀を抜かんと柄に右手を懸けると、相手は其の右手を取らえて抜かさない様にする、我は右手を柄から離し、此処は鍔打返ですから、左手で持つ鍔で相手の手を打ちもぐ。
曽田本その2
業附口伝
大小詰
4本目
小手留:打は仕の左側に並びて座す打の抜かんとする右手を仕向き直って右手にて捕へ引き寄せると同時に左手にて柄頭を敵の脇坪に当てる也
五藤先生教示:左脇に座す抜かんとする右手を把る其手をおさへ左手にて脇坪へ柄頭を以て当てる。
 業附口伝と古伝は順番と業名は同じですが、前回同様に動作が違います。刀を抜こうとするのは打で、それを仕が右手で押さえて、左手で打の脇坪に柄当てしています。

 

 

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2019年4月21日 (日)

曽田本その2を読み解く11英信流大小詰11の3柄留

曽田本その2を読み解く
11、大小詰
11の3柄留
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
大小詰
3本目
柄留:抱詰の通り両の手にて柄を取り下へ押付られたる時向のわきの辺りへ拳にて当て扨我右の足にて相手の手を踏み柄をもぐ常の稽古には右の足を押膝にてこぜもぐ
曽田本その2
業附口伝
大小詰
3本目
柄留:打は仕の右側に並びて座す、仕の抜かんとする柄を留む、仕は右手を頚に巻き打を前に倒さんとす、打倒されまじと後に反る、其時すぐに仕は打の体の反りて前足の浮きたる下より(膝)柄をかけて後へ倒す力を添ふる也。
五藤先生の教示:右脇に座す抜かんとする柄をとる我れ右手にて首をまき前へ押す敵後とへそるに付後とへ倒す其時柄を足へかけ倒す也。
 大小詰3本目柄留の手附は古伝と業附口伝では内容が違います。
 業附口伝の柄留は古伝の6本目右伏の業です。
 業付口伝は第16代五藤正亮先生や谷村樵夫自庸先生の口伝を実兄土居亀江の口伝を元に組み立てられています。手附を書き付けたものを持たずに口だけで動作を指導し、形を打っていたのでしょう。
 既にこの頃から、居合抜ばかりが稽古だったのでしょう、大小詰まで定期的に稽古する事をおろそかにしていれば、内容は愚か順番もどこかへ行ってしまうものです。
業付口伝大小詰3本目柄留は
古伝神傳流秘書では大小詰6本目右伏
:我右の方に相手並び座し柄を取られたる時直に我右の手を向の首筋へ後より廻し胸を取り押伏せんとするに相手いやとすくばるを幸に柄を足より懸て後へ投げ倒す、又抜かんとする手を留められたる時も右の通りに取倒す。
 古伝神傳流秘書の大小詰の3本目柄留は、業附口伝からは消えてしまった様です。あえていえば前回の2本目骨防(ほねもぎ)に変えられたと云えます。
業付口伝
大小詰
2本目
骨防(ほねもぎ):互に対座、打は両手にて仕の柄を握る仕は右拳を顔にあて其のひるむときに乗じ右足を柄越しにまたぎ右足内側より右手を柄に添へ右足にて敵の両手を押払ふと同時に柄を防(もぎ)取る也、此の時敵は我右脇へ匍ひ倒る。
五藤先生教示:向ふて居る両手にて柄を押し付る時直に右手にて面へ当て其虚に乗り右足を踏み込み柄へ手をかけもぐ。
 政岡先生は無雙直傳英信流居合兵法地之巻では、古伝の大小詰2本目骨防扱、3本目も古伝の柄留を当てています。

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2019年4月20日 (土)

曽田本その2を読み解く11英信流大小詰11の2骨防

曽田本その2を読み解く
11、大小詰
11の2骨防(ほねもぎ 曽田メモ)
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
大小詰
2本目
骨防扱:(ほねもぎ 曽田メモ)立合の骨防返に同じ故になし
 立合の骨防返とは大小立詰の2本目のことでしょう。
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
大小立詰
2本目
骨防返:相懸りに懸りて相手我刀の柄を留めたる時我右の手にて柄頭を取り振りもぐ也
曽田本その2
業附口伝
大小詰
2本目
骨防返:互に対座、打は両手にて仕の柄を握る仕は右拳を顔にあて其のひるむときに乗じ右足を柄越にまたぎ右足内側より右手を柄に添へ右足にて敵の両手を押払ふと同時に柄を防取る(もぎとる)也、此の時敵は我が右脇へ匍ひ倒る也。
五藤先生教示:向ふて居る両手にて柄を押し付る時直に右手にて面へ当て其虚に乗り右足をふみ込み柄へ手をかけもぐ
 古伝は、相手が我が柄を両手でも片手でも掴んで抜くのを留めたならば、右手で柄頭を持って「振りもぐ」だけです。もぎ方の最も簡単なのは柄頭を握って、胸に引き付ければ簡単に外せてしまいます。その上で柄当てしようと殴ろうと自由です。
 業付口伝の曽田先生記述のものは古伝とも五藤先生の教示とも違って、柄越に踏み込んだ右足で、相手の両手を押し払って置いて右手で防ぎ取る、その時相手は我が右脇へ匍い倒れる。柄越に踏み込んだ右足で、右方に押し払わなければ我が右脇に匍い倒れそうにありません。
 五藤教示の様に右足をグット踏み込んで相手に附入り、柄頭を右手に握って引き付ければこれも容易です。
 古伝には、柄を握られた時に相手の顔面に右拳を打ち当てる動作は特にありません、其虚に乗じるのは状況次第ですが一連の動作に滞り無い様に稽古して置くことは善いかも知れません。 
 武術は、力と速さで勝つのは術とは言えないでしょう。無駄な動作は不要です。古伝に軍配です。

 

 

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2019年4月19日 (金)

曽田本その2を読み解く11英信流大小詰11の1抱詰

曽田本その2を読み解く
11、英信流大小詰
11の1抱詰
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
大小詰
(是は業にあらざる故に前後も無く変化極りなし始終詰合▢居合膝に坐す気のり如何様ともすべし先大むね此順にする)重信流
1本目
抱詰:楽々居合膝に詰合たる時相手両の手にて我刀の柄を留る時我両の手を相手の両のひぢに懸けて体を浮上り引て其侭左の後の方へ投捨る
英信流大小詰
業附口伝
朱書きは故五藤せんせいの手記ゟ写(五藤先生手記、曽田虎彦蔵す)
1本目
抱詰:互に対座、打は仕の柄を両手にて取らんとす、すぐに仕は両手にて打の二の腕を下より差し上ぐる様に掴み我左脇に引き倒す也
五藤先生手記:向て居る敵我刀の柄を両手にて押付る時、敵の両肘へ手をかけ「うすみ」上げ左へ振り倒す。
 古伝の大小詰について重信流から伝来と云う意味でしょう。
 この土佐の居合は指導者が変わるたびに動作が変化する習性を持っている様ですから、大小詰でなくともどんどん変わっています。
 時代の要請により変化するのは納得ですが、指導者の思い付きで変わるのは困ったものです。
 業を替えるよりもひどいのは大江先生の様に捨ててしまうのはひどすぎます。この大小詰も大江先生に捨てられた業です。というより大江先生、第14代下村茂市より習っていなかったから知らなかったと思えます.
 その上中学生に指導するには、居合だけで充分だったかも知れませんから丁度良かった。そんな事を思ってしまいます。
 古伝は、業では無いから変化極りなしと云っています。「業にあらざる故」居合では無いがその延長上にあるもので居合抜きではない事は云えますが、心得が無いと厄介です。
 大小詰ですから、仕は太刀を帯て居合膝に坐す、打は小太刀若しくは短刀を帯びると何処にも書かれていませんが、その様にやっています。業のやり取りから判断できそうです。
 仕は太刀を帯び、打は短刀を差し双方居合膝に坐す。
 居合膝は古来からの座し方として、護衛などの武士が事有れば即座に応じられる右膝を立て左膝を床について左足先を爪先立った「体構え」だろうと思います。河野先生は甲冑を着ては正座できないのでこのように座すと云っていた様です。
 わざわざ甲冑を着て立膝をやって見たらしっくりきた、などと云っていた人も居ました。
 東北地方に残された林崎甚助重信の居合など見ていますと、大太刀を帯した仕は立膝、短刀を帯びた打は正座などと云う変わった組み合わせの様でした。
 相対して居合膝に坐し、双方の間合いは右足先と右足先の間隔は2尺以内でしょう。それでも双方の体軸の間隔は4尺位になります。
 古伝は、打が腰を上げ少しせり出して、両手で我が柄を上から掴んで抜かさない様に留めて来る。
 業附口伝は「両手にて取らんとす」ですから、まだ柄に触っていない進行形です。その場合の対処法は相手の手を打つとか、払うとか、手首を取って引き倒すとか別の事を思い描いてしまいます。
 ここは、柄を握らせ居付かせて、我は打の左右の二の腕(両肘上辺り)を掌で我が右手で相手の左手、左手で相手の右手を下から差し上げる様に締め込み同時に腰を浮かしながら右足を軸にして、と古伝は「左の後の方へ投げ捨てる」、業附口伝は「左脇に引き倒す」、五藤先生の手記は「左へ振り倒す」、とそれぞれです。
*
 手附けはここまでですが、古伝は「左の後の方へ投げ捨てる」。
 業附口伝は「左脇に引き倒す」、五藤先生の手記は「左へ振り倒す」とやや異なります。仕が相手の二の腕を締めあげて立ち上がって左へ投げるのではなく、腰を浮かした状況で左へ投げるわけで、相手次第で打つなり、突なり出来る状況であるべきでしょう。相手をはるか向こうに投げ飛ばすのは理に合わないでしょう。
 五藤先生の手記の「うすみ上げ」土佐の方言に「うずむ」と云うのがあります、意味は「無造作に抱きかかえる」と云う事です。業に置き換えれば、柄を留めている相手の両肘を両手で抱きかかえ腰を浮かして左へ振り捨てるでしょう。この抱きかかえは、政岡先生の無双直傳英信流居合兵法地之巻の大小詰一本目抱詰に見られます。
 投げるに当たって、手で投げようとするのを見ますが。此処は、体軸をしっかりさせて腰で投げる。その後の処理は手附には無いので、投げた相手を起し元の位置に双方座すで良いのでしょう。実戦では投げた状況により様々な方法があるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2019年4月18日 (木)

曽田本その2を読み解く10英信流太刀打之位10の10打込一本

曽田本その2を読み解く
10、英信流太刀打之位
10の10打込一本
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
太刀打之事
10本目
打込:相懸又は待処へ遣方より請て打込み勝なり
曽田本その2
業附口伝
英信流太刀打之位
10本目
打込一本:(伝書になし口伝あり)(留の打込なり)(仕打中段)双方真向に物打にて刀を合はし青眼に直り退く
 古伝は「仕より請て打込み勝」です。文章通り捕えれば、打が打ち込んで来るのを仕は請けて、打込み勝のでしょう。
 9本目で抜き請けして打込んでいますから、抜刀して請けて打込む方が容易とも言えます、古伝には打込は無かったと業付口伝は云っていますから無かったでいいかも知れません。
それでは何故手附が書かれているのか、それは曽田先生が書き加えたのだろうとしか言えません。
*
 業付口伝は、相中段で間に至りて双方上段に振り冠、真向に打込んで物打で刀を合わせる。
 この業は何でしょう、新陰流の合し打ちをイメージしているのでしょうか。それとも武的踊りを上手に踊れと云っているのでしょうか。
 見ていますと、双方の切先が届かない間合いで双方の真中辺りで刀を打ち止めしています。
 真直ぐ打込む稽古と思えばまあいいかでしょう。上段から振り下して45度で双方手の内を締めて刀を合わせる稽古でしょう。
 恐らく、第九代林六大夫守政は真陰流(新陰流)を大森六郎左衛門から手ほどきを受けていたならば、新陰流の合し打ちを知っていたでしょう。
 打が上段から真直ぐに仕の頭上に打ち込むのを、仕も上段から真直ぐに打の頭上に打ち込み、打の刀を打ち落して斬り込む極意です。
 形骸だけが残ったのでしょう。打が手の内を緩めて応じてやれば容易に合し打ち風の形が見られるかも知れません。形は出来ても術は決まっていません。
 演武会の形演舞の稽古をしても意味の無いものです。
参考
第19代福井春政直伝
嶋専吉先生無雙直傳英信流居合術形乾
太刀打之位
10本目
留之剱:(打込一本、但し伝書になし)
姿勢及構へ、仕太刀、打太刀共に中段
業、互に進み間合にて真向より物打あたりにて軽く打合ひ(音を立てゝ強く撃ち合ふ意にあらず)更に青眼に直りて残心を示し正しき位に復す。
 右「留之剱」終らばそのまゝ一旦後方に退き血振ひして刀を鞘に納め更に前進し正坐にて刀の終礼を行ひ再度後退して対立のまゝ相互に黙礼をなし、次で神前の敬礼を行ふ。
 英信流太刀打之位を終ります。
 次回は英信流大小詰となります。

 

 

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2019年4月17日 (水)

曽田本その2を読み解く10英信流太刀打之位10の9心明剱

曽田本その2を読み解く
10、英信流太刀打之位
10の9心明剱
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
太刀打之事
9本目
心妙剱:相懸也打太刀打込を指なりに請て打込み勝也(打込む時相手の刀をおしのける業あるべし 曽田メモ)
曽田本その2
業付口伝
英信流太刀打之位
9本目
心明剱:(仕納刀、打上段)心妙剱ともあり山川先生秘書( 曽田メモ)是も相掛りにても相手待ちかけても不苦、敵は真向へかむり我鞘に納てスカスカと行也其時片手にて十文字に請るなり、其侭に敵引也すぐに我打込み勝也気合大事云々
 最後に打込む時は敵の刀を押し除ける様にして左足を踏み込み敵の首根に打込む也
 この業名は古伝は心妙剱です、業付口伝は心明剱となっています。
 古伝は7本目独妙剱・8本目絶妙剱・9本目心妙剱として「妙」の文字をもってきています。
 業附口伝7本目絶妙剱・8本目独妙剱・9本目心明剱で、9本目だけ「明」となっています。
 業附口伝は,曽田先生が実兄の師匠16代五藤正亮、谷村樵夫自庸の口伝を土居亀江によって聞き伝えられたものを書き留めたものです。
 古伝神傳流秘書が五藤先生に伝わって居れば古伝の侭であったでしょうが、聞き伝えで学んだものでしょうから思い違いがあるかもしれません。この7本の業名称は如何にも武術らしい名付けですが、業名と業技法は関連が無さそうです。こじつければ幾らでも思い浮かぶかもしれませんが、私には連想できるものがありません。
 古伝神妙剣の短い文章からこの業を思う時、抜けがあり過ぎてどうしたらいいのか、呆然としてしまうならば、曽田先生のメモに目をやって誤魔化してしまいそうになります。
 太刀打之事に至るまでに、大森流・英信流を稽古して来ています。其の中で相手が打ち込んで来るのをどの様にして応じて来たでしょう。大森流だけでも陽進陰退(八重垣)・流刀(受流)・順刀(介錯)・逆刀(附込)・勢中刀(月影)・抜打(抜打)の業は相手に打ち込まれ応じてきた業です。
 英英信流でも虎一足・稲妻・抜打(真向)是等もそうでしょう。中でも逆刀や勢中刀、抜打・稲妻・抜打(真向)は心妙剣の良いお手本です。是等は居業ですから此処では立業で相懸りです。
 相手も刀を腰に差して抜き打って来るでも、上段に構待でも充分応じられる筈です。心妙剣の「打太刀打込を指すなりに請て打込み」の「指すなりに請」ればいいのでしょう。「請て」は力任せにガチンと十文字受する事を頭に描く必要な無いでしょう。
 相手の打込みを、請けた業は、流刀・抜打でしょう。請けずに外して打込んだのは逆刀・順刀、断って置きますが順刀を介錯としたのは大江先生でしょう、古伝は首きりの業と特定して居ません。
 相手の打込みの先を取ったのは月影と稲妻です。従って相手が上段から打ち下ろさんとする其の機に相手の小手を取る程の業を身に着けているわけです。
 ここでは、私は抜打の立業を使いたいと思います。相手の打込みが早く、外す余裕が無い柄に手を掛けるや右手を正中線上に添って刀の刃を外に向け上に抜き上げ、相手真向に打込むや抜き放ち相手刀を摺落し手を返して相手の真向に打込み勝。是が出来なければ抜打と真向振り出しに戻るべきです。太刀打之事は初心者向けの組太刀では無いでしょう。
 従って、曽田先生のメモ書きの「相手の刀を押しのけるの」など 無用のことです。
*
 と云う事で業附口伝を稽古して見れば、相手が真向に打ち込んできたのを、片手で抜き請けに十文字受けしています。
 相手が再度打たんと右足を退いて振り冠る隙に、左足を踏み込んで打ち込み勝と云う、相手任せの業手附になりました。
 十文字受は相手の刀と我が刀をどの角度で請けるかがポイントで、十文字だから我が刀を刃を上に向け頭上で水平に受ける、などすれば忽ち刀と共に打ち砕かれそうです。
 私など、非力ですから、そんな十文字は思い描きません。稲妻の様に抜き請けします。抜き請け出来るならば柄口六寸の極意は出来てしまいますが、手附に添って請けるや右肩から刀を廻し受け流し、廻し打ちに足を踏み変えて相手の右面に打ち込みます。
 左手を添えて押し退けるなど、武術とは思っていません。此の心妙剣はいい業です。古伝は書いて無い処は自分で工夫して稽古するものです。だからと云って書いてあるところを替えてはならないと思います。
 業附口伝は大江先生の英信流居合の型よりましですが疑問です。
第19代福井春政直伝
嶋専吉先生無雙直傳英信流居合術形乾
太刀打之位
9本目
心明剱:姿勢及び構へ、仕太刀納刀の儘、打太刀上段、共に立姿
業、打太刀は真向に冠り、仕太刀は帯刀のまゝ相掛りに前進し間合に至り打太刀上段より仕太刀の面に打下すを、仕太刀間髪を容れず抜刀、隻手(ひとつて、せきて、片手)にて頭上十文字に請け止め、打太刀の引き際に(打太刀は足を替へずに体を僅に退く)右片手にて打太刀に刀を押し除くるが如く右下に払ひ、左足を左方に踏込み打太刀の首根を断つ。
 この業特に「気合大事なり」とあり充分こころすべし。
尚この形に於て仕太刀隻手刀を払ふ業、及び左足の踏込みと共に相手の頭べを撃つ動作には特に工夫あるべし。
 次に刀を合せ五歩後退。
 仕は抜き請けに右片手で相手の打ち込みを「十文字に請け止め、打の引き際に右片手にて打の刀を押し除くるが如く右下に払ひ」ですが、打の引き際は(打は足を替へずに体を僅かに退く)のだそうです。元々形は申し合わせを免れないとしてもこんな事をしていてもいつまで経っても上手に成れそうも有りません。 

 

 

 

 

 

 

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2019年4月16日 (火)

曽田本その2を読み解く10英信流太刀打之位10の8独妙剣

曽田本その2を読み解く
10、英信流太刀打之位
10の8独妙剣
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
太刀打之事
8本目
絶妙剣:高山にかまへ行て打込み打太刀より亦打込を請て相手の面へ摺り込み相手肩へ取る
(請くる時は切先に手をそへ頭の上にて十文字に請け留むるあり)
曽田本その2
英信流太刀打之位
8本目
独妙剣:(仕打八相)是も同じく抜也、敵待かけても相がかりにても不苦、八相にかたぎてスカスカと行場合にて打込也、其時敵十文字に請て又我が真向へ打込也、其時我又本の侭にて請け面へ摺り込み勝也
(山川先生には絶妙剣とあり)
(我請たる時は左手を刀峯に当て次に摺り込み勝也)
五歩退き納刀次に移る
 前回に解説していますが、古伝神傳流秘書の8本目は絶妙剣、業付口伝は8本目が独妙剣です。
 業は細部はともかく、仕が打に討ち込み打は其れを請ける、次に打が打ち込んで来るのでそれを十文字に請け打の面へ摺り込み勝。そんな業で同じ業が業名を取り違えられて伝承したと云うわけです。
 第16代五藤正亮先生に正しく古伝神傳流秘書が引き継がれて居れば恐らくこの様な取り違えは無かったでしょう。口伝口授に依る間違いとも言えます。それを曽田先生の実兄土居亀江先生は曽田先生に口授したわけです。
 業名に特に拘る絶妙と独妙の様ですから、業付口伝は8本目が独妙剣と覚えておけば江戸後期から明治の組太刀と知れるでしょう。
 古伝は上段に構え、業付口伝は八相です。
 相掛りに仕が上段から右足を踏み込み真向に打込、打も右足を踏み込み八相に請けるや右肩から廻して上段に冠リ、仕の真向に足を踏み替え打込む、仕は切先に手を添え足を踏み替え十文字に請け、左足を摺り込んで打の刀を摺り込み打の面へ付ける、打は一歩退き刀を左肩に取る。
 業附口伝は双方八相に構え相掛に歩行き、仕が八相から振り冠って打の真向に打込む、打は八相に請け、右肩から刀を廻し振り冠って、足を踏み替え仕の真向に打込む、仕は其の位置で右足前の侭、切先に手を添え十文字に請け左足を踏み込んで打の刀を摺り落し面へ付ける。
 仕の足裁きを替えてあります。
第19代福井春政直伝
嶋専吉先生無雙直伝英信流居合術形乾
太刀打之位
8本目
独妙剣:姿勢及び構へ、仕太刀、打太刀共に八相立姿
業、互にスカスカと進み間合ひにて仕太刀は打太刀の面に打下すを打太刀十文字に請止む。
 次で打太刀体を前に進め(足を替ふることなく)仕太刀の真向に打込み来るを仕太刀は左手を刀の棟に添へ(刃を上に、棟を拇指(内側)と他(外側)との間に請けて)体を後ろに退きて(足を替へず)頭上十文字に請止め。
 更に左足を一歩踏み出し摺り込みて打太刀の喉に刺突を行ふ姿勢となる(此場合打太刀は依然足を替へずに唯々上体を少しく後方に退く、従て打太刀の右膝と仕太刀の左膝と相向ふことゝなるなり)刀を合はせ互に五歩退き血振ひ納刀。
 打の打込みで、打が踏み込んで打ち込めば左足前、気勢が強ければ仕は退きつつ請ける。
 打が足を踏み替え其体の位置で打ち込めば、仕も足を踏み替え請ける。
 打が足踏みを替えずに打ち込めば、仕もその足踏みで請ける。
 どれが良いかは、状況次第でしょう。
 それよりは、打の打込みに仕は左手を刀に添えて十文字受けする、其の左手の添え方が気になります。
 拇指を内側他指は外側、拇指と人差し指の股に棟を乗せるように指導する、または絵や写真が横行しています。
 この添え手は、拇指は内側ですが他の指は稍々外向けで人差し指の付け根から小指下の膨らみに棟を乗せる下から支える様な手の内にすべきでしょう。
 更に十文字受けは、請けてどっこいしょと摺り落さずに、請けた瞬間に打の刀は摺り落ち、仕の切先は打の面に付けられる運剣を学ぶものでしょう。

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2019年4月15日 (月)

曽田本その2を読み解く10英信流太刀打之位10の7絶妙剣

曽田本その2を読み解く
10、英信流太刀打之位
10の7絶妙剣
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
太刀打之事
7本目
独妙剣:相懸也打太刀高山遣方切先を下げ前に構へ行場合にて上へ冠り互に打合う尤打太刀をつく心持有り柄を面へかへし突込み勝
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
太刀打之事
8本目
絶妙剣:高山にかまへ行て打込み打太刀より亦打込を請て相手の面へ摺り込み相手肩へ取る
(請くるときは切先に手をそへ頭の上にて十文字に請け留むるあり 曽田メモ)
曽田本その2
英信流太刀打之位
業附口伝
7本目
絶妙剣:(仕下段、打八相)是は我前へ切尖を下げスカスカト行き場合にて互に拝み打に討也、敵と我とは拳と拳と行合其時すぐに面へ柄頭を突込勝也
(相掛りにても敵待ちかけても不苦、仕は鍔ぜりとなるや右足を「どん」と踏み直に左足を踏み込て敵の拳の下より人中に当る也、打構へ不明なるも八相ならん 曽田メモ)(詰合の眼関落とし)(山川先生のには独妙剣とあり)
曽田本その2
英信流太刀打之位
業附口伝
8本目
独妙剣:(仕打相八相)是も同じく抜也、敵待ちかけても相がかりにても不苦、八相にかたぎてスカスカと行場合にて打込也、其時敵十文字に請て又我が真向へ打込也、其時我又本の侭にて請け面へ摺り込み勝也
(我請たる時は左手を刀峯に当て次に摺り込み勝也 曽田メモ)
五歩退き納刀次に移る
(山川先生のには絶妙剣とあり 曽田メモ)
 業名は古伝は7本目独妙剣・8本目絶妙剣ですが業附口伝は7本目絶妙剣・8本目独妙剣と入れ替わっています。
 業附口伝は、第16代五藤正亮・谷村樵夫自庸の口伝を実兄土居亀江の口伝によって曽田先生が記述したものです。
 江戸末期から明治には業名までも混乱するような時だったのでしょう。五藤先生は谷村派ですから古伝神傳流秘書を読む機会は無かったかもしれません。口伝口授で引き継がれてきた。下村派には機会はあっても一部の限られた人だけしか拝めなかったかも知れません。いずれにしても、明治維新後は伝承は途絶えたでしょう。
 ここでは業附口伝太刀打之位7本目絶妙剣と古伝神傳流秘書太刀打之事7本目独妙剣の対比となります。
 業付口伝は打八相、仕下段、古伝は打高山、仕下段。双方上段に振り冠って拝み打ちに打ち込み、拳を合わせ押し合って仕は柄を返して打の面へ突き込み勝。
 拝み打ちで何をすれば鍔競り合いになるでしょう。私なら打之太刀を切り落としてこの業は不成立です。
 或いは刀が交差する直前に刃を稍々斜めにして受け太刀になるや打之太刀を押し上げて踏み込みます。
 双方打ち合う時、古伝は仕は下段から打を突き上げるように摺り上げて刀を合わせ押し合う、業付口伝の拝み打ちとは異なります。
 柄を返して面へ突き込む際業附口伝は「ドン」と床を踏み鳴らして下から打の小手を押し上げ突き込む。押し合う拍子に突き上げて突く、打が本気で押し込んで来るのを往なすことが出来なければ業になりません。
参考
第19代福井春政先生直伝
嶋専吉先生無雙直伝英信流居合術形乾
7本目
絶妙剣:姿勢及び構へ、仕太刀下段、打太刀八相共に立姿
業、互に進み間合にて双方拝み打に撃下し次で鍔競りにて互に押し合ひ力を弛めし瞬間仕太刀は右足にて大地を踏み付け同時に左足を一歩相手の右側に踏込み相手の両拳下より人中に柄当てを行ふ、互に刀を合せ五歩退き血振ひ、納刀す。

 

 





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2019年4月14日 (日)

曽田本その2を読み解く10英信流太刀打之位10の6水月刀

曽田本その2を読み解く
10、英信流太刀打之位
10の6水月刀
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
太刀打之事
6本目
水月刀:相手高山或は肩遣方切先を相手の面へ突付て行を打太刀八相へ払ふ処を外して勝或は其侭随て面へ打込み勝も有り
曽田本その2
英信流太刀打之位
業附口伝
6本目
水月刀:(仕中段、打八相)(詰合の水月刀に□同じ)是も相懸りにても敵待かけても不苦、敵の眉間へ我太刀の切尖を指付てスカスカと行也、敵我太刀を八相にかけてなぐる也其の時我すぐにかむりて後を勝也
参考
業附口伝
詰合之位
9本目
水月刀:(相上段)是も同じく立合て真向へかむり相掛りにても敵待かけても不苦。我真向へかむりてスカスカと行場合にて太刀の切先を敵の眉間へ突き込む様に突く也、其時敵すぐに八相に払ふ其時すぐにかむり敵の面へ切込み勝也、互に五歩退り血振納刀以下同上
 古伝も業附口伝も双方の構えに違いがあっても、仕が打の面へ切先を突き付けるを、打が八相に払って来る。
 古伝は、打が払って来るのを「外して勝」のですが、業附口伝は打が「八相にかけてなぐる」のですから、仕は太刀を払われて、払われるに随って右肩から振り冠って真向に打込み勝のでしょう。此の事は古伝の「或は其侭随て面へ打込み勝も有り」の状況でしょう。
 業附口伝詰合之位の6本目水月刀は「敵すぐに八相に払ふその時すぐにかむり敵の面へ切込み勝」是は払われたのか、外したのか不明瞭です。
 古伝の「打太刀八相に払ふ処を外して勝」を稽古して見ましょう。此の場合は面に突きつけた我が太刀を敵が払う、あるいは我が左小手を払う、何れも、、仕は、突き付けた状態で打が打ち込んで来るぎりぎりまで待ってひょいと柄手を上に上げ、打の払い損ねた柄手に打込む。柄口六寸の極意業が出来れば最高でしょう。
第19代福井春政先生直伝
嶋専吉先生無雙直伝英信流居合術形乾
太刀打之位
6本目
水月刀:姿勢及び構へ、仕太刀中段、打太刀八相、共に立姿勢
業、立合ひ相掛りにて進み仕太刀は(打太刀の眉間に剣尖を擬しつゝスカスカと前進)間合いにて一歩踏出して打太刀の眉間を突く、打太刀は八相より、その刺突し来る仕太刀の刀を打払ふ、このとき仕太刀は左足を左方に踏み開き更に右足を進め打太刀の面に打下す。(打太刀に払わるゝや「仕太刀直に冠りて後を後を勝つなり」とせるもあり、此場合仕太刀は刀を払はるゝや左足を左方に踏み開き右足を一歩踏出して振冠り残心を示す姿勢となる)。
 刀を合せ五歩後退し血振、納刀。
 「仕太刀直に冠りて後を勝つなり」は業附口伝の文言です。
 八相に太刀を払われるのですから、払われるに随って、左に踏み開き右肩から振り冠って右足を踏み込み残心。
 この業を演じるのを見ていますと、だいたいこんな処です。古伝の「八相に払ふ処を外して」はお目にかかれません。
 仕の突き込む様に誘う小手は、打にとって充分狙える位置にあるのにわざわざ刀を払ってしまうわけです。刀を払うのは小手を斬るより遠間ですから、十分外せます。小手に切り込んできた場合も八相に切って来るので充分引き付けて柄手を上に上げて外せます。外すと同時に相手の小手を斬れるはずです。失伝した「柄口六寸」の極意業でしょう。

 

 

 

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2019年4月13日 (土)

曽田本その2を読み解く10英信流太刀打之位10の5月影

曽田本その2を読み解く
10、英信流太刀打之位
10の5月影
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
太刀打之事
5本目
月影:打太刀冠り待所へ遣方右の脇に切先を下げて構へ行て打太刀八相に打を切先を上て真甲へ上て突付て留め互に押相て別れ両方共車に取り相手打をはづす上へ冠り打込み勝
曽田本その2
業附口伝
5本目
月影:(仕下段、打八相)是も同じく抜て居るなり、相掛りにても敵待ちかけても不苦、敵八相にかたきて待ちかくる也、我は太刀先を下げてスカスカと行也場合にて敵八相に打処を出合て互に押合又互に開敵打込む処を我左足を引き立ち直りて打込み勝也
(我左足を引きたる為め敵空を打ちたるを我すぐにかむりて敵の真向に打込也、体互に開きたる時は脇構の様になる也)
 古伝は打「冠り待」ですから上段だろうと思えますが、仕「右の脇に切先を下げて構へ行」時、打は「打太刀八相に打」ので、上段から八相に取るか、八相に初めから構えるかでしょう。時代背景から上段よりも八相の方が良さそうです。
 仕の構えは右下段でしょう、切先を右足前に向け下段に構える。
 仕の左面から左肩が開いているので打は右足を踏み込み左面に切り込んで来る、仕は切先を上げて打の真向に突き上げるようにして、打の刀を摺り留め互いに拳を合わせて押合い、双方右足を後方に退いて左身になって車に構える。
 仕は左膝に誘う様にし、打は透かさず、車の構えから右足を大きく踏込み仕の膝に斬り付ける。
 仕は左足を右足に引き付け打に空を打たせ、上段に振り冠り右足を踏み込んで打ち込み勝。
 打は仕の膝に体を低くして斬り付ける際車の構えから上段に振り冠らずに切り込むのが古流剣術でしょう。仕は左足を退くと同時に刀を右から引被る様に上段に取り、体を立て直そうとする打の真向に打込むのが良さそうです。
 業附口伝は、打は八相の構えから仕の左面を打って来る、仕は下段から切先を上げて突き上げ摺り込み刀を合わせ、押し合い、互に車に構え後は古伝と同じでしょう。
 此の業を演じるに当たり、打は八相から上段に構え直し、仕も下段から上段に構え直し双方拝み打ち、中間で物打を合わせるなど、おかしな事を何故するのでしょう。
 八相から上段に振り冠る間に、下段から刃を返して左小手を斬る事も出来そうです。八相の構えから仕の左面か左肩に斬り付けるべきでしょう。
 仕も下段から上段に構え直す間に打に切られそうです。
参考
大江先生の英信流居合の型
五本目
鍔留に状況は同じです。
鍔留:・・打太刀は中段となり、仕太刀は下段となる、互に右足より三歩出で、打太刀は右足を左足に引き上段に冠り真直ぐに打下し、仕太刀は右足を左足へ引き上段となり、右足を出して打下して互に刀を合す、仕打鍔元を押し合ひ双方右足を後へ引き左半身となり、刀刃脇構として刀尖を低くす、打太刀は直ぐに上段より右足を踏み込み仕太刀の左向脛を切る、仕太刀は左足を充分引き上段となり空を打たせ上段より頭を斬る、・・・。
 この手附は、何故そうするのか不思議です。打中段、仕下段で三歩相進み、其処で右足を左足に引き付けて上段に双方ともなっています。
 打はそのまま真向に打ち下す、仕は右足を出して打下します。此の無駄な動作と打の足捌きは文章の抜けでしょうか。
 中学生に真向相打ちの意味を教えていたのか疑問です。古伝も業附口伝も打が八相に切って来るので真向打ちでも刀を合わせられますが、これはどうでしょう。
 打は切先を低くした脇構えから上段に冠って、中腰となり上体を前に流して仕の左足を斬りに行く・・。仕も脇が前から上段に冠って打の頭を斬る。
 ギッタンバッコンですね。大江先生の英信流居合の型は、古伝を勉強して見直す時期に来ているでしょう。
第19代福井春政先生直伝
嶋専吉先生の無雙直伝英信流居合術形乾
5本目
月影:姿勢及構へ仕下段、打八相、共に立姿勢
業、八相に構へて互に前進、間合を取り(此場合稍々間合を近くとる)、打太刀はっそうより仕太刀の頭上に打込み来るを仕太刀之に応じて同じく打合はせ拳が行き合ふ瞬間鍔元にて押し合ひ更に双方右足を大きく退きて稍々左半身に体を開き剣尖を低くして脇構へとなり続いて打太刀は右足を一歩踏込み上段より仕太刀の左股に斬り込むを仕太刀充分に左足を退きて空を打たせ、立直りて右足を一歩踏出し上段より打太刀の頭上に打下す。 
 刀を合せ互に五歩退き血振ひ納刀。
業附口伝の打ち合いと同じでしょう。脇構えの切先を低くする竹刀剣道の脇構の形は昭和17年ですから大日本武徳会指導による大日本帝国剣道形に従わざるを得なかったでしょう。第19代の打の脇構えから仕に切り込む部位が「左股」です、是は上段から右足を踏み込み切り込むのです。
 この流の業技法は一人の指導者によって左右されてきました、技術委員会など立ち上げて正しい業技法を検討しなければ古伝との乖離は我慢できても対敵意識の乏しい演舞では何処をさ迷うのか疑問です。
 とは言え帝国剣道形も委員が集まって検討したとはいえ、結局大家によって力押しされたと思います。

 

 

 

 

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2019年4月12日 (金)

曽田本その2を読み解く10英信流太刀打之位10の4請込

曽田本その2を読み解く
10、英信流太刀打之位
10の4請込
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
太刀打之事
4本目
請入:(請込共云う)前の如く打合相手八相に打を前の如くに留又相手より真甲を打を体を右へ開きひぢを切先にて留勝
「前の如く打合」
3本目
請流し:遣方も高山相手も高山或は肩へかまへるかの中也待処へ遣方歩行右の足にて出合ふ打込を打太刀請扨打太刀の方より少し引て裏を八相に打つを左足にて出合ふて留相手又打たんと冠るを・・
此処から4本目請入:・・(相手より真甲を打つを)体を右に開きひぢを切先にて留勝
曽田本その2
英信流太刀打之位
4本目
請込:(請入)(仕打相八相)是も同じく相掛りにても敵待かけても不苦、請流の如く八相にかたきスカスカと行て真向へ打込也、敵十文字に請て請流の如く裏より八相に打其処を我も左の足を出し請流の如く止むる也、敵其時かむりて表より討たんとする所を其侭左の肘へ太刀をスケル也
(体を右に開き下より二の腕を掬ひ上げる也)
 業附口伝は、足裁きが語られていませんが、仕は一刀目右足を踏み込み真向に打ち、打も右足を出してこれを十文字に請ける、二刀目は打が右足を引いて裏八相に仕に切り込む、仕は之を左足を踏み込み裏八相に請ける。
 打は上段に振りかぶらんと左足を引いて下る處、仕は右足を右斜め前に踏込み体を右に開き、左足を右足の後方に摺り込み低い八相から下から掬い上げる様に打の左肘に斬り付ける。
 この動作は古伝と同じです。この業は大江先生の英信流居合の型三本目絶妙剣に稍々近いものです。
参考
大江先生
英信流居合の型
3本目
絶妙剣:・・・仕ハ、八相のまゝ右足より五歩交互に進み出て、同体にて右足を踏み出して、右面を斬る、打は八相より左足を引きて仕の太刀と打合す、仕は左足を出し打は右足を引きて、前の如く打合せ、打は左足を引きて上段構へとなりて斬撃の意を示す、之と同時に仕は右足を出して体を右半身とし、中腰となりて、左甲手を斬る・・・。
 文章表現の違いで、古伝と同じだろうと云われる方もおられるかもしれません。此の場合打は退きながら先を取ろうとしている、それを仕に止められている事が表現から読み取れないでしょう。
 古伝は先に攻めて、次に後に請けて、終いは後の先なのです。
参考
第19代福井春政先生直伝
嶋専吉先生無雙直伝英信流居合形乾
太刀打之事
4本目
請込:(請入)姿勢及び構へ、仕打共に立姿勢、八相
業、相ひ八相より相掛りにてスカスカと進み仕太刀表より打太刀の面を撃つ、打太刀は之を表十文字に請く。
 仕太刀更に左足を一歩進め八相より裏に打込むを打太刀右足を退き裏にて請け更に左足を退きて上段に振り冠るところを仕太刀素早く右足を大きく一歩斜右前に踏込み体を右に開打太刀の左上膊部を下より掬ひ切に打つなり。
 静かに刀を合せ正位に復し互に五歩退きて血振ひ納刀をなす。
 第19代は、大江先生より二刀目の攻防がおかしい、一方的に攻められてしまい受け太刀になってしまいました。
 大江先生は、まだ相打ちでした。古伝はここは打が退きながら仕に切り込むのです、それを仕に受け留められたので、再び先を取らんと振り冠ると同時に「請込まれ」左肘に切り込まれるのです。
 攻防の妙に筋が通らないめちゃくちゃなのはこの流の指導者の力量に問題ありかも知れません。
 細かいところですが、仕は請込む時の切りつける部位もそれぞれです。
 古伝   :肘
 業附口伝:左肘
 大江先生:左甲手
 第19代 :左上膊部
 下からの掬い切りは、斬撃力を増す為の隠れた動作が膝・腰に無ければなりません、恐らく指導出来る先生は少ないでしょう。其の為に左甲手や左上膊部に当てる振りでお茶をにごしているようです。
 演武会などで見ていますと、下から掬い切りにするのを、上から打ち込んでいたり、右に筋を替らずに下から掬いきりしたり、どの様な考えで指導されたのか疑問です。あらゆる変化をやって見るのは良しとしても、演武会では流の形をしっかりすべきでしょう。
 一刀目の仕の斬り込みは大江先生は左面ですから、その請けは表八相で請ければよいのです。
 業附口伝の様に真向に打込まれた場合、打も真向に打込み双方の真中で物打で刀を合わせるなどおかしいでしょう。此処は十文字受とするもので、打の切先は右上で刃で請けるべきしょう。
 私が前に所属していたところでは、真向打ちに真向打ちで双方の中間で物打を合わせていました。何故の問いに「一刀流の切り落し」と同じと嘘ばっかりです。切り落とされてしまえば一刀目で勝負がついてこの請込は成立しません。一刀流の切り落としを学ぶ方便として真向打ち合いを入れたのならば、切り落としを別に指導すべきです。其の上で真向打ち合いを演舞上では双方の中間で合わせるならば理解しますが、正中線を真直ぐに打ち込む事も出来ず、手の内も不十分で寸止めも出来ない者が何をしているやら。

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2019年4月11日 (木)

曽田本その2を読み解く10英信流太刀打之位10の3請流

曽田本その2を読み解く
10、英信流太刀打之位
10の3請流
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
太刀打之事
3本目請流:遣方も高山相手も高山或は肩へかまへるかの中也待処へ遣方歩行右の足にて出合ふ打込を打太刀請扨打太刀の方より少し引て裏を八相に打を左足にて出合ふて留相手又打たんと冠るを直に其侭面へ突込み相手八相に払ふをしたがって上へ取り右の足にて真甲へ勝
曽田先生
業附口伝
3本目
請流:(仕打相八相)是は敵も八相の構にて行真向へ討込也(敵待ち居ても相掛理に手も不苦)敵十文字に請て又八相にかけて打込也、我其時左の足を一足踏み込て裏を止ると敵又引きてかむる処を我其侭面へ突込也敵其時横に払ふ也其処を我体を開きかむり後を勝也
(又最後に首根に討込み勝もあり)
 この業は、一刀目は仕は右足を踏み込み打込、打も右足を踏み込んで請ける。
二刀目は打が右足を退いて仕に裏八相に打込む、仕は左足を踏み込んでこれを請ける。
三刀目は打が打ち込もうと左足を引いて冠る、仕は右足を踏み込み打の面へ突き込む。打は右足を引いて仕の刀を払う。仕は払われるに従って左足を左斜めに踏み込んで打の払う刀を請流し右足を踏み込んで打の真向に斬り付ける。
 古伝も業附口伝も足捌きは仕は歩み足で前進、打は一刀目のみ踏み込み足、二刀目以下は歩み足で退きながら斬り付けています。
 業附口伝は仕の斬り込みが八相から真向への打込みです。曽田先生が記述された業附口伝ですから、仕の動きは直線的な動きでしょう。従って八相から上段に冠って真向打ち、ハ相から上段に冠って裏八相に受ける、そんな運剣を想像します。
 この業の教えは、相手が突きを払うに従って請け流す事を学ぶ様ですが、私は其れより筋を変わり乍ら打つ、請けるの足捌き体裁きを重要視したい処です。
 従って稽古では素早くチョンチョン打ち合わず、双方ユックリ打ち合う事と思います。
参考
第19代福井春政直伝
嶋専吉先生の無双直伝英信流居合術形乾
太刀打之位
3本目
請流:前の業終りて後、当業に移るに当たり、打太刀は後退することなくそのまゝの位置に留り仕太刀の前進を待ちかくるも苦しからず、但し以下何れも、打太刀も一旦後退して相掛りとなる場合を解説のことゝせり、当業以下「心明剣」に至る七本何れも同様なり。
姿勢及び構へ:仕太刀、打太刀共に八相の構へ(立姿勢)
:双方八相の構にて前進、仕太刀真向に打込む、打太刀之れを十字に請く。
 仕太刀更に左足を一歩進め裏を打つ、この時打太刀一歩右足を退き八相より裏に請止め、打太刀更に左足を退き上段に振冠るところを仕太刀青眼より右足を踏出して打太刀の面へ突込む、打太刀は之を左下方に払ふ。
 仕太刀其機に体を左に開き右足を前に進め上段に冠り後を勝つ。互に刀を合はせ原位に復し五歩後退血振ひ、納刀。
 どこで変わってしまったのか、第19代の請流は一刀目仕が真向へ打込み打が受ける。
 二刀目も仕が裏八相から打に打込み、打は裏八相に引きながら受け留めています。打が引きながら上段に振り冠る処を、仕は青眼になって突き込むので打は左下に払っています。
 打は前進しつつ攻撃をしています、古伝とも業付口伝とも違うのは、打は退きながら請け太刀になってしまっています。古伝も業付口伝も打は退きながら斬り込むのでした。
 土佐の居合は一本筋が通らない不思議が、権威者によってまかり通る処に在る様です。それだけに古伝の教えをしっかり受け止めて、筋を通し、その上で変化業は変化業として扱うべきでしょう。
 19代の請流では、仕の剣士としての成長は覚束ないでしょう。

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2019年4月10日 (水)

曽田本その2を読み解く10英信流太刀打之位10の2附込

曽田本その2を読み解く
10、英信流太刀打之位
10の2附込
参考
古伝神傳流秘書
太刀打之事
2本目
附入:(附込共云う)前の通り抜合せ相手後へ引かむとするを附入左の手にて拳を取る也右の足なれども拳を取る時は左の足也
曽田本その2
業附口伝
英信流太刀打之位
2本目
附込:(附入)(仕打相納刀)是も出合の如く相掛りにて右の足を先にして場合にてさかさまに抜合せ敵の引かんとする処を我左の足を一足付込左の手にて敵の右の手首を取る、此の時は左下に引きて敵の体勢を崩す心持にてなすならん、互に刀を合せ五歩退き八相に構へ次に移る。
 刀を鞘に納めて相掛に進み、相手より膝に切り込んで来るのを仕は虎一足の様に受け止める、相手引こうとする処を、相手に附け入って左足を相手の左足側面に踏込み相手の右手首を取って仕の左下に引いて打の体勢を崩す。
 古伝と業附口伝とはここまでで終わっています。此の業は大江先生の居合道型の2本目拳取りです。
参考
大江先生
英信流居合の型
2本目
拳取:一本目と同じく、虎走りにて出で、膝にて抜き合せ、仕太刀は、左足を打太刀の右足の側面に踏み込み、左手にて打太刀の右手頸を逆に持ち下へ下げる、打太刀は其まゝにて上体を稍や前に出し、仕太刀は其れと同時に右手の拳を腰部に當て、刀尖を胸に着け、残心を示す、仕太刀は一歩退り、打太刀は一歩出でて、青眼構となる、(仕太刀は五歩青眼にて退り打太刀は其まゝにて位置を占む)
 なんで虎走りにしたのか解りませんが、恐らく「突撃「の号令に遮に無に敵陣へ走る兵隊を思い描いたのではないでしょうか。抜き合わせも相打の雰囲気しか伝わりません。付け入って「打の右手首を逆に持ち下へ下げる」と「「刀尖を胸に着け、残心」が追加されています。
第19代福井春政先生の直伝
嶋専吉先生の無雙直伝英信流居合術形乾
太刀打之位
2本目
附込:姿勢及び構へ、仕太刀、打太刀共に帯刀のまゝ対立
業:互に右手を柄に懸け相掛りにて進み間合いにて右足を踏み出すと共に相手の右足に抜合すこと「出合」の場合と同様なり。
 次で打太刀の退かんとするところを仕太刀跳込むが如く左足を相手の右側に深く一歩踏込み右足をその後方に踏み添へて体を開き、相手の右手首を左手にて逆に捉へ之れを己が左方下に引きて打太刀の態勢を崩し、刀を右手にて腰部に支へつゝ剣尖を打太刀の水月に擬し之をれを刺突の姿勢となる。
 互に中段に刀を合せ正しき位置に復したる後双方五歩退し血振ひの上、刀を納む。
 福井先生しっかり大江先生の形を取り入れています。抜合すのであって、打の或いは仕の先制攻撃を請けるのではなく、相打ちにしています。
 「打が退かんとするところを仕は跳込むが如き」に踏み込みます。表現が大袈裟で飛び込んでしまいそうです。
 打の右手を制し、大江先生は胸に、福井先生は水月に刺突の姿勢を取っています。古伝及び業附口伝は附け入って相手の態勢を崩す処からは指定して居ません。福井先生は大江先生の形も業付口伝も知っていた筈で良く整理された形になっています。

 

 

 

 

 

 

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2019年4月 9日 (火)

曽田本その2を読み解く10英信流太刀打之位10の1出合

曽田本その2を読み解く
10、英信流太刀打之位
10の1出合
参考
古伝神傳流秘書
太刀打之事
1本目
出合:相懸りにかゝり相手より下へ抜付るを抜合せ留て打込相手請る右足也
曽田先生
業附口伝
太刀打之位
1本目
出合:(仕打相納刀)(詰合の発早の立業)是は互に刀を鞘に納めて相掛りにてスカスカと行、場合にて右の足を出しさかさまに抜き合せ敵引く処を付込みて左足にてかむり右足より討込也、此の時敵一歩退き頭上にて十文字に請け止むるなり、互に中段となり我二歩退き敵二歩進み更めて五歩つつ退く也納刀
 曽田本その2は前回までが詰合之位でした、古伝は太刀打之事、坂橋流之棒が13本あって詰合です。古伝の順番は、詰合は「重信流也、従是奥之事、極意たるに依って格日(確実)に稽古する也」と前書きしています。
 曽田先生は、詰合之位は座しての組太刀打から太刀打之位が後であるべきだろうとされたのかも知れません。
 是は、大江先生の英信流居合の型1本目出合の元の業でしょう。
参考
大江先生
英信流居合の型
1本目
出合:打太刀は柄に手を掛ける、仕太刀は打太刀の如く、柄に手を掛け、双方体を前方少しく屈め、虎走りにて五尺の距離に出て、右足を出したるとき、膝の處にて打は請、仕は抜打にて刀を合す、仕太刀は直ちに、右足左足と一歩摺り込みて上段より真面に打ち込む、打太刀は左足より右足と追い足にて退き、刀を左斜にして受ける、仕太刀は二歩退り、打太刀は二歩出て、中段の構へとなり、残心を示す、これより互に後へ五歩づつ下り元の位置に帰り血拭ひ刀を納む。
*
 古伝は、やるべき事をサラッと書いてあるだけで、後は口伝口授だったのか、口伝口授されたものをポイントの覚書にしておいたのか、いずれにしても後は自分で考えて行動しろと云うのでしょう。
 曽田先生の出合は古伝の抜けを補って動作を詳細に指定しています。
 納刀したまま双方歩み寄り、間境で刀を下に抜き出し右足を踏み込んで抜き付け相打、打が退くところを左足を進めて付け込んで振り冠り、右足を踏み込んで打の真向に斬り込む、打は左足を退いて右足を追い足に仕の打込みを頭上で十文字受けする。
 古伝は打が先に下へ抜き付けて来るので、それを受け留めています。この動作は指定されていませんから、間境で打の抜打ちを察して打込まれた瞬間右足を踏み込み斬り付けるように受け止めるのも、左足を退いて受け止めるのも状況次第です。この「おおらかさ」が稽古業です。
 大江先生は、双方虎一足の様に走り寄るのです。この動作は何をイメージしたのでしょう。其の上仕が先に切り込み打が受けるとしています。この抜き付けは見た事がありません。忘れられたのでしょう。走り寄る処はしっかりと残っています。「突撃」の合図で突進していく日本兵を思い描いて嫌な気分にさせられます。
 何れにしても先に切り込ませて請ける、請けるや間を置かず左足を前に進めて打を圧する、打が態勢を立て直さんと引く処に着け込むのか、請けるや打を圧して崩し真向から切り下すのか、打の刀を摺り上げて崩すのか、幾通りも出来るものです。
 業附口伝に捉われると、動作は限られ、相手の動作の順番待ちをしたりして、それでは形を追うばかりです。
 江戸時代末期に防具を着用し、竹刀で仕合稽古に慣れた者に、この様な形ばかりの剣術流派は打ち負かされてしまい、形稽古をそこそこに仕合稽古転じて行ったのも頷けます。
 十文字受けの方法がなにも指定されていません。刀で刀を請けるには、原則としては、相手の切り込む刀の刃を我も刃で請ける。バッテンの状況で請ける事を十文字受けと云います。
 打は仕に摺り上げられても、自分で上段に冠るとしても、右片手で相手の膝に斬り付けていれば左側から冠るでしょう。
 請け太刀の形は、左手を物打付近に添るか、左から冠りながら相手の打ち込む刀をはねてしまうか、切先を右斜め上に向けて請けるか、でしょう。此処は左手を物打附近に添えて十文字受けするのが良さそうです。
 請けられる余裕があるならば、反撃の機会を持てる受け太刀は有効です。その以前で打の振り冠るのが早く斬り込まれそうならば、仕はどうする・・・。
第19代福井春政先生の直伝
嶋専吉先生の無雙直伝英信流居合術形乾
太刀打之位
1本目
出合:姿勢及び構へ、仕太刀、打太刀共に刀を鞘に納めて帯刀のまゝ互に約九歩を距てゝ立姿にて相対す
業、帯刀のまゝ柄を把りつゝ相掛りにてスカスカと前進(「互に三歩前進」とせるもあり)、間合いにて右の足を踏出すと共に互に相手の右足に斬付くる心にて剱尖を下方に抜き合す。
 続いて打太刀退くところを仕太刀附け込み左足を右足に進めて振り冠り更に右足を一歩踏込みて上段より打太刀の面を打つ、このとき打太刀は一歩体を退き(右足を軽く退き更に左足を退き)仕太刀の刀を頭上にて剱尖を右方に十文字に請け止むるなり。
 次で互に中段となり静かに刀を合はせつゝ打太刀小幅に二歩前進、仕太刀二歩後退して中央の位置に就き更めて各五歩(退歩は歩幅狭きため五歩となる)退き血振ひの上、刀を鞘に納む。
 曽田先生の業附口伝による動作を更に詳細にしています。指導者が第19代であれば太刀打之位は形が固定化されてしまい演武の催し物の武的演舞は必然的に固まるはずです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2019年4月 8日 (月)

曽田本その2を読み解く9英信流詰合之位9の11討込

曽田本その2を読み解く
9、英信流詰合之位
9の11討込
参考
古伝神傳流秘書
詰合
11本目
討込:伝書に無し
業附口伝
英信流詰合之位
11本目
討込:(仕打中段)(伝書にはなし、留の打なり、右真之詰合11本気合極大事有口伝 曽田メモ)
双方真向に打込み物打を合わすなり。
参考
第19代福井春政先生直伝嶋専吉先生覚書
無雙直伝英信流居合術形乾より
詰合之位
11本目
打込(傳書になし、留の打なり)
姿勢及構へ、仕太刀打太刀共に中段
業、互に進み間合にて真向に打込み物打を合せて双方青眼となる。
 業終って其場にて左膝を跪き血振ひ納刀をなし一旦立ちて更めて正坐し帯刀を解き左腰に堤刀にて後退し相互に立礼、更に神前の敬礼を行ひて退場す。
 古伝神傳流秘書詰合は11本目霞剣で終わっています。
 江戸末期から明治にかけて17代五藤正亮先生、谷村樵夫自庸先生から伝授された実兄土居亀江先生口伝による曽田先生記述の業附口伝には詰合之位として11本目打込が記述されています。
 「伝書にはなし」ですから、後に加えられたものか、曽田先生の独創か判りません。この打込は双方中段に構え間境で上段に振り冠右足を踏出し相手の真向に斬り下すもので、業附口伝ではこの業が新陰流の「合し打」、一刀流の「切り落とし」を意味する事を知らずに双方の中間で手の内を締めて物打ち辺りで打ち止める事で「留の打」としたのでしょう。
 この様な打込みは、古伝でも、業附口伝でも8本目霞剣で実施済みの業になります。特に業付口伝の双方拝み打ちして双方の中間で物打を合わせて、意味不明な稽古を要求しています。
 土佐へ居合を持ち込んだ第9代林六太夫守政は真陰流(新陰流?)を学び、大森六郎左衛門の居合を大森流之事として組入れています。当然の事として「合し打」は知っていたでしょう。然しそれを意識しても表面には出してはいません。
 業附口伝は意味も解らず「合し打」のかたちを持ち込んでしまったとしか思えません。誰が見ても「変な打ち合い」では無く本物を学ぶか、前回の読み解くで示した、双方拝み撃ちに際し打の気勢が上回るならば仕は僅かに刃を傾けて受け太刀となり、青眼に戻しつつ機を伺い新たな手で勝つべきでしょう。
 何としても「合し打」で締めたいならば、他流を学ぶ心掛けが必要でしょう。居合人であれば、拝み打ちで相手の頭上で寸止めが出来なければ今まで何をしてきたのでしょう。
 少なくとも、双方の中間で打ち止めるならば、その先の軌跡は当然相手の頭上に至るべきです。
 現在、土佐の居合の古伝と称する太刀打之位、詰合之位共に、曽田先生が実兄から口伝されたものを書き留めた「業附口伝」がまかり通っている事は、このブログでご納得いただけたと思います。
 「業附口伝で何が悪い」と云われても、何も悪い事はありません、「土佐の居合の古伝ではありませんよ、神傳流秘書がその前に在ったのですよ」としか言いようはありません。しかし形を「かたち」ばかりの武的踊りである事は否めません。
 大江先生の「英信流之形」も大江先生が組み立てられたもので江戸末期に行われていた業附口伝の「太刀打之位」ではありません。古伝とは云い難いものです。
 古伝は業技法とそれを打つ心構や秘められた奥義がある事を忘れて打ってもそれは只の棒振り踊りです。「形だからそれでいい」と仰る人もおられます。「形だから秘儀を学ぶことが出来るのに心得違いでしょう、順番通り「かたち」は出来ても剣術の「術」が決まらなければ、演武会の「演舞」です。
 次回から曽田本その2の英信流太刀打之位となります。曽田先生の記述通りの順番ですから是は本来古伝では英信流居合之事(現在の立膝の部)の後に稽古する様に組み込まれているものです。
 曽田先生は、この太刀打之位の各業の後に「詰合の発早の立業」と補足しています。
 底本は業附口伝となります。古伝と対比しながら稽古して行きます。

 

 

 

 

 

 

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2019年4月 7日 (日)

曽田本その2を読み解く9英信流詰合之位9の10霞剱

曽田本その2を読み解く
9、英信流詰合之位
9の10霞剱
参考
曽田本その1
古伝神傳流秘書
詰合
10本目
霞剱:眼関落しの如く打合せたる時相手引かんとするを裏よりはり込み真甲へ打込み勝亦打込まずして冠りて跡を勝もあり
 眼関落の如く:古伝神傳流秘書詰合には眼関落の業名は無く8本目の「柄砕」が眼関落であろうと曽田先生は補足されています。
 柄砕:両方高山後は弛し木刀に同じ。と云うわけで、眼関落を捜しても太刀打之事には見当たりません。
 実は、曽田先生は「太刀打之位独妙剱がそれであろう」と更に補足しています
太刀打之事独妙剱:相懸なり打太刀高山遣方切先を下げ前に構へ行場合にて上へ冠り互に打合尤も打太刀をつく心持有柄を面へかへし突込み勝。
 10本目の霞剱の「眼関落しの如く打合せ」は、打太刀上段、仕太刀下段で相掛りにかかり、間境で打は拝み打ちに打ち込んで来る、仕は下段から打の喉を突き上げるようにして刀を合わす。打が刀を合わせ中段になり乍ら退こうとするところを裏より張り込むや上段に振り冠り打の真向に斬り込み勝。
業附口伝
英信流詰合之位
10本目
霞剱:(相中段)是も互に立合也、敵待かけても不苦、互に青眼の侭スカスカと行場合にて互に拝み打に討也、互に太刀の物打ちのあたり合たる所を中段に直る、我其侭左の足を踏み込み裏より払ひかむり勝也、五歩退り相中段に次に移る。
 古伝の解説を先にしていますので業附口伝の霞剱:双方中段(青眼)に構え行き、双方間境で上段に振り冠って拝み打ちに討つのですから新陰流の合し打ちでしょう。
 相手の真向に打込みます、其の侭正しく打ち込めれば理に叶ったものが相手の刀を打ち外して真向に斬り込んでこの10本目は勝負完了です。
 ところが、打ち込む途中で双方物打の辺りで打ち込みを止めて刀を合わせているのです、是では拝み打ちとは言えないでしょう。
 真直ぐに打ち下したが物打が交差する辺りで、仕か打が刃を返して受け太刀になったことになります。
 だったら「はっきり書いて置け」と云いたい処です。古伝は仕が打の拝み打ちを同時に下段から突き上げ刺突する所、摺り落ちて来る打の刀を鍔で受けたのでしょう。
 古伝も似た様なものですが、「尤打太刀を突く心持ち有」と断っています。この辺は新陰流の奥義を思わせる所で明らかにしていないのかも知れません。
 形を演舞にしてしまった原因も、伝書の不充分(秘儀を隠す)な部分は伏せられたために可笑しな運剣ばかりが形に残ったものかも知れません。
 ひいき目に言えば、相手が上回る力量ならば、合し打ちを受け太刀に変えて次の勝ち道を作れと云う事かも知れません。
 その勝ち道が双方中段になり放れ際に裏より払い冠り勝でしょう。
曽田本その2英信流詰合之位10本目霞剱
Img_0455
参考
第19代福井春政先生直伝による嶋専吉先生の詰合之位10本目霞剱
無雙直傳英信流居合術形乾より
霞剱:姿勢及構へ仕太刀打太刀共に立姿勢、相中段
業:互に青眼のまゝ(但し剣尖を幾分高目に且つ腕を稍々前方に伸ばす心地にて)スカスカと進み間合にて双方拝み撃に物打のあたりにて刀を合せ中段に直るところを仕太刀素早く左足を一歩進め瞬間裏より打太刀の刀を払ひ直に上段に冠り勝つなり。
 刀を合せ五歩退り(但し次の「留めの打」を演ずる場合は納刀はせず)相中段にて次に移る。
 現在見る詰合之位は嶋専吉先生の覚書の動作がほとんどで、双方拝み撃ちで「相打となる」と云う意味不明な形を得々と演舞されています。
 お聞きすると「形だから」だそうです「???」流派の業を伝承する事の難しさ、というより「秘儀」として隠したために、伝承不能になり「形だから神社や演武会の奉納演舞に」となってしまうのでしょう。
 柳生新陰流の始終不捨書の冒頭に円相が描かれ等分に三点が打たれています。三摩の位と云い、習い・稽古・工夫であると云います。
 この円相を思い返しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2019年4月 6日 (土)

曽田本その2を読み解く9英信流詰合之位9の9水月刀

曽田本その2を読み解く
9、英信流詰合之位
9の9水月刀
参考
古伝神傳流秘書
詰合
9本目
水月:相手高山に構へ待所へ我も高山にかまへ行て相手の面に突付る相手払ふを体を替し打込み勝
曽田本その2
業附口伝
英信流詰合之位
9本目
水月刀:是も同じく立合て真向へかむり相掛りにても敵待かけても不苦。我真向へかむりてスカスカと行場合にて太刀の切先を敵の眉間へ突き込む様に突く也、其時敵すぐに八相に払ふ其時すぐにかむり敵の面へ切込み勝也。互に五歩退り血振納刀以下同じ。
参考
曽田本その1
英信流太刀打之位
業附口伝
9本目
水月刀:(仕中段打ハ相)是も相掛りにても敵待かけても不苦、敵の眉間へ我太刀の切尖を指付けスカスカと行也敵我太刀を八相にかけてなぐる也、其時我すぐにかむりて後を勝也。
 古伝は9本目水月、業附口伝の詰合之位では水月刀となります。業名変更が行われた様です。
 古伝は打が上段に構え待つ処へ、仕が歩み行き間境で切先を下げて打の面に突き付ける、打が「払ふを体を替し打込み勝」の文章を如何に読み解くかがポイントでしょう。
 業附口伝は相掛りでも打が上段に構え待っても良いと云っています。
 スカスカと歩み行き間境で切先を下げ打の眉間に突き込むと、打は「すぐに八相に払ふ其時すぐにかむり敵の面へ切込」と同じ様に見えるのですが、ここは、参考に上げた業附口伝の太刀打之位9本目水月刀では「敵我太刀を八相にかけてなぐるなり」と刀を払って来るのが業附口伝の仕方かも知れません。
 此の業を第21代福井聖山先生は無雙直伝英信流之形詰合之位水月刀では「突出したる刀を八相に払われたる瞬間直ちに刀を冠り」とされています。
 仕は、突き込んだ刀を八相に払われるに従って振り冠るか、払われる瞬間に刀を振り上げて冠るかでしょう。「請け・冠り・打つ」、「外し・冠り・打つ」でしょう。
 古伝も、抜けだらけの文章から同様に演じても間違いとは言えないでしょう。然し、同様に古伝太刀打之事6本目水月刀では「・・面へ突付て行を打太刀八相に払ふ処を外して上へ勝つ」と云って、刀で受けてはいません。「外し・冠り・打つ」となります。
 そこで何故古伝は「水月」であって「水月刀」では無いのでしょう。業名から推察するのはいささか理に反するのですが、刀を中心に考えない極意がある筈です、それは「柄口六寸の勝」を思い出します。
 古伝は打が、仕を充分引き付け突き込まんとする仕の左小手に八相に切り込む、仕は「体を替し打込み勝」、「仕は外した時に打の小手を切った時」の一拍子を想い描きます。
第19代福井春政先生直伝の嶋専吉先生の無雙直傳英信流居合術形乾より
詰合之位
9本目
水月刀:姿勢及構へ 仕太刀、打太刀立姿勢、相上段(この場合も打太刀は後退せず原位に留るも可なり)
業、立合て右上段に冠り相掛りにて進み中途仕太刀は幾分刀を下げ間合いに至りて打太刀の眉間に突込む様に刺突す、打太刀之を八相に払ふ。仕太刀隙かさず左の足を稍々左方に踏み体を軽く左に転はして振冠り、右足を一歩踏み込み打太刀の面を打つ。(此場合体を左に開き上段に振冠りたるまゝ残心を示す様式もり)刀を合せ双方五歩退り血振納刀。
左側が水月刀
Img_0454_2

 

 

 

 

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2019年4月 5日 (金)

曽田本その2を読み解く9英信流詰合之位9の8眼関落

曽田本その2を読み解く
9、英信流詰合之位
9の8眼関落
参考
古伝神傳流秘書
詰合
8本目
柄砕:(眼関落のことならん 曽田メモ)両方高山後は弛し木刀に同じ
弛し木刀:(太刀打之位独妙剱の事ならむ 曽田メモ)
太刀打之事
7本目
独妙剱:相懸也打太刀高山遣方切先を下げ前に構え行場合にて上へ冠り互に打合、尤打太刀をつく心持有る柄を面へかへし突込み勝
太刀打之位
独妙剱:(仕打八相)(山川先生の秘書には絶妙剱とあり 曽田メモ)是も同じく抜也、敵待ちかけても相掛りにても不苦、八相にかたきてスカスカと行場合にて打込也其時敵十文字に請て又我が真向へ打込也、其時我又本の侭にて請け面へ摺り込み勝也(我詰たる時は左手を刀峯に当て次に摺り込み勝也)摺り込みたる時敵刀を左肩にとるなり
山川先生の傳書ではこの手附は絶妙剱の手附だと云うので
絶妙剱:(仕下段、打八相)(山川先生の秘書には独妙剱と有り 曾田メモ)是は我前へ切尖を下げスカスカと行き場合にて互に拝み打に討也敵と我とは拳と拳と行合其時すぐに面へ柄頭を突込み勝也(相掛りにても敵待ちかけても不苦、我は鍔ぜりとなるや右足をどんと踏み直に左足を踏み込みて敵の拳の下より人中に当て打構へ不明なるも八相ならん
英信流詰合之位
業附口伝
8本目
眼関落:(相上段)是も互に立ち敵も我も真向へかむり相掛りにてスカスカと行き場合にて互に拝み打に討也、其の時敵の拳と我が拳と行合也、其時我すぐに柄頭を敵の手元下より顔へはね込み勝也(右足をドンと踏み急に左足を踏み込む也)互に五歩退り納刀以下同じ
 古伝神傳流秘書の詰合8本目は「柄砕」で手附は「弛し木刀に同じ」と有るばかりです。曽田先生は「弛し木刀」とは「太刀打之位独妙剱」のことならん、と云っています。この判断は業付口伝の8本目が独妙剱なのでその業を追って行けば太刀打之事「独妙剱」に行き当たると云えばいいのでしょうが「太刀打之位独妙剱」と云っています。
 業附口伝の太刀打之位は独妙剱と絶妙剱が入違っていますので、業附口伝の絶妙剱が対応するのでしょう。業附口伝は江戸末期の五藤先生の口伝の様ですから曽田先生の実兄から伝授されたとしても、古伝から100年近く開いて居ますから、この8本目柄砕は如何なるものであったか証明できません。
 順番を抜かさない前提で業附口伝の絶妙剱から類推して古伝は太刀打之事独妙剱を「柄砕」として借用するとします。
 古伝柄砕きは、打は上段、仕は下段、打は拝み打ちに真向ヲ打って来る、仕は下段から打を突き上げる様にして打の拝み打ちを鍔で請けるや、仕は柄を返して打の面に突き込み勝。
 業附口伝の眼関落としは、相上段で相掛りに進み互に拝み打ち、拝み打ちで拳と拳を合わせるのは、拳を合わせる目的で真向に打込み合うのですから是は変ですが、拳と拳を合わせ仕は右足をドンと床に踏込み、相手の気を奪うと同時に左足を踏み込み相手の手元下から柄をはね上げ顔面に突き込む。
眼関落の線画
右側が眼関落
Img_0454
参考
第19代福井春政先生の直伝
嶋専吉先生覚書無雙直傳英信流居合術形乾
詰合之位
8本目
眼関落:姿勢及構へ、仕太刀打太刀立姿勢、相上段
業、互に立合ひて真向に振冠り相掛りにてスカスカと進み間合い(この場合は幾分間を近くす)にて互に拝み撃に打つ(物打あたりにて)、続いて双方の拳が行き合ふ瞬間、一時鍔元にて競り合ひ仕太刀は直に右足にて強く一度大地を踏み付け急に左足を打太刀の右側に一歩稍々深目に踏込みざま、打太刀の手元下より顔へ撥ね込み人中に柄当てを加ふ。刀を合せ互に五歩退き血振、納刀をなす。
業附口伝そのものです、古伝の詰合は第19代にも伝わっておらず、曽田先生の業附口伝によって稽古指導されていたのでしょう。

 

 

 

 

 

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2019年4月 4日 (木)

曽田本その2を読み解く9英信流詰合之位9の7燕返

曽田本その2を読み解く
9、英信流詰合之位
9の7燕返
参考
古伝神傳流秘書
詰合
7本目
燕返:相手高山我は抜かずして立合たる時、相手より打込むを我抜受に請る、相手引くを付込み打込,相手右より払ふを随って上へ又打込払ふを上へ取り打込、扨切先を下げて前へかまへ場合を取り切居處へ相手打込を受流し体を替し打込勝、又打込まず冠りて跡を勝もあり。
英信流詰合之位
業附口伝
7本目
燕返:(仕坐打左上段)是は敵も我も立つ也、敵は刀を抜てかむる我は鞘に納めて相掛りにて行く也、場合にて敵我面へ打込む也、我其時右片手にて抜き頭上にて請けすぐに左手を柄に添へ打ち込む也、敵又表よりはっそうに払ふ也、我又すぐにかむりて打込む也、敵又すぐに裏より八相に払ふ也、我又すぐにかむりて敵の面へ打込也(左足を一足踏み込)其時敵後へ引我空を打つ也、其時我切尖を下げ待也、敵踏み込みて我真向へ打込也、我其時左足より一足退り空を打たせ同時にかむりて一足踏込み敵の面へ勝也、互に五歩退り納刀後再び刀を抜き相上段にて次に移る。
 古伝は、相手より右足を踏み込み上段から真向に打ち込んで来るのを、仕は右足を踏出し抜き請けに請ける。
 請けられて打が上段に振り冠って右足を退くところを、仕は左足を踏み込み付け込んで、左手を柄に添え真向に打込む、打は上段から逆八相に払って来る。
 仕は払われるに従って上段に振り冠り、又上段から右足を踏み込んで真向に打込む、打は左足を退いて八相に払って来る。
 仕は打の払うに従って上段に振り冠り左足を踏み込んで打の真向に打込む、打は右足を大きく退いて仕の打込みを外す。
 仕は外されて、切先を下げたまま待つ、打は仕の頭上に右足を踏み込み上段から打ち込む、仕は右足を斜め前に踏込み受け流しに体を躱して打の面に打ち込み勝つ。又、打ち込まずに上段に構えて位を示す。
 古伝は、相手の切り込みを請けるや相手が下がるのに間を置かずに付け込んで斬り込み、相手に外されるや、反撃せずに、相手の打込みを待って受け流しに躱して勝つものです。
 相手高山ですから上段からの真向打ち込みですから、ここでは仕も上段から真向としました。
 業附口伝ですと、打の真向打ち込みを、仕は右足を踏み込んで抜き請けに請け即座に左手を添えて左足を右足に引き付け右足を退いて真向に打込みます。打も左足を右足に引き付け右足を退いて之を八相に払う。
 払われて仕は右足を左足に引き付け左足を退いて打の真向に打込む、打も右足を左足に引き付け左足を退き裏八相に払う。此処までは双方その場を維持し、足の踏み変えによって仕は打込み、打は受け払っています。
 仕は「我又すぐに冠りて敵の面へ打込也(左足を一足踏み込)」ですから此処で左足を踏み込んで打の面に打ち込む、打は「後へ引我空を打つ也」ですから右足を大きく後ろに引いて仕の打ちを外します。此処で仕は前進、打は後退しているのです。仕の踏み込みより打の退きが大きく仕は空を斬る。
 仕は切先を下げて打の打込みを誘うわけで、打が右足を踏み込んで仕の真向に打込んで来るのを、仕は左足を一足退き、打に空を打たせ同時に振り冠って打の面に打ち込み勝。
 古伝と業附口伝との足捌き、体裁きは両方共稽古するのが良さそうです。
 最初に打が打込むのを、仕は抜き請けに受け、打が古伝は下りながら上段それに付け込んで上段です。
 業附口伝は請けるや上段に振り冠っていますから、ここは、右足で抜き請けに受けていますから、即座に左手を柄に添え、左足を右足に引き付け、打を圧する気勢が先行しなければ逆に圧せられてしまいそうです。
 最後の所は、受け流すか、外すか間と間合いの面白い処です。
 古伝を稽古しているうちに、足捌きの違いや、打ち込みの違いなど、熟達していけば幾つもあり得るものでしょう。
 この燕返しは、返し業の研究が楽しい処です。
 抜き請けに受けて、相手に切り込むに当たり、相手の刀を押し退ける様にして、左手を柄に添え力任せに右下に押しやり上段に振り冠るヤクザのチャンバラの様な演舞をしばしば拝見する事があります。
 或いは、抜き請けに受けるや仕は稍々右足を退いて上段に冠り左手を添え、左足を踏み込んで真向に打込む、とされる教本もあります。
曽田本その2のツバメ返し
Img_0453
第19代福井春政先生直伝の詰合之位燕返
嶋専吉先生 無雙直伝英信流居合術形
詰合之位
7本目
燕返:姿勢及構へ、仕太刀立姿帯刀、打太刀立姿帯刀より左上段
業:打太刀は上段、仕太刀は刀を鞘に納めたるまゝ相掛りにて前進、間合にて打太刀は仕太刀の正面に打込む、仕太刀は素早く抜刀剣尖を左方に右隻手(みぎせきて、みぎかたて)にて頭上に十文字に請け直に雙手上段となり左足を一歩進め相手の裏ら面に打ち込むを打太刀は右足を一歩退き裏より之を八相に払ふ。
 仕太刀更に右足を一歩進め表て面に打込むを打太刀亦左足を一歩退き表より八相に払ふ。
 仕太刀は直に振冠りて左足を一歩進め打太刀の正面に打込む、この時打太刀は左足より大きく退きて仕太刀に空を打たせ。次で打太刀は右足を一歩踏込み仕太刀の真向に打下す、仕太刀は之に応じて左足を大きく引き体を後方に退きて打太刀に空を撃たせ(此際拳は充分に手許にとるを要す)振冠りざま右より踏込み打太刀の正面を打つ。
 刀を合せ原位に復し互に五歩退きて血振ひ納刀をなす。

 

 

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2019年4月 3日 (水)

曽田本その2を読み解く9英信流詰合之位9の6位弛

曽田本その2を読み解く
9、英信流詰合之位
9の6位弛
参考
古伝神傳流秘書
詰合
6本目
位弛:我居合膝に坐したる所へ敵歩み来りて打込むを立さまに外し抜打に切る或は前の如く抜合たる時相手より打を我も太刀を上へはづし真向へ打込み勝
英信流詰合之位
業附口伝
6本目
位弛:(仕坐納打左上段)是は敵は立ち我は坐する也、敵は太刀を抜てかむる、我は鞘に納めて右片ひざ立て坐する也、敵スカスカと来て拝み打に討つ也、我其時あたる位にてすっかりと立ち其侭左足を一足引きて抜敵に空を打たせ同時に右足を一足踏み込み面へ切り込み勝也
 仕太刀は此の時刀を合はせ五歩退きて血振ひ納刀
 打太刀は其位置にても五歩退りても不苦
 古伝の詰合は、二種類の位弛を組み立ててあります。
 一つは、我が居合膝に坐す処へ歩み来り上段から打ち込んで来るのを、立ち上り様に刀を上に抜き上げ右足を退くや相手の打ち込んで来る刀を外し、同時に相手の真向に右足を踏み込んで抜き打つ。
 二つ目は、相がかりに掛かり、抜き合って刀を合わせ相手より真向に打つを、我も上に刀を抜き上げ乍ら、右足を退いて相手太刀を外すや、真向に打込み勝。この形は見た事が無いのですが、業附口伝が広まったためでしょう。此の打の打込みを刀で請けずに体を捌いて外す事を学ぶには、後に引いて外す、右か左に体を開いて外す。
 業附口伝は古伝の相手立ち、我は居合膝に坐す。敵は左上段と指定されています。左足を前に出し上段に振り冠り柄頭は左足先を差す構えになります。スカスカと歩み来り、拝み打ちに打ち込んで来る、我は間合いを推し測り相手の刀が打ち下ろされる瞬間立ち上がりながら刀を抜き上げ、左足を一足後ろへ退いて間をは外して敵の刀に空を切らせ、同時に上段に振り冠って相手の面に打ち込む。
曽田本その2の位弛みの線画
右は5本目鱗形
左が位弛
Img_0452_2
第19代福井春政先生の直伝の嶋専吉先生の覚書
無雙直伝英信流居合形
詰合之位
6本目
位弛:姿勢及構へ 仕太刀は納刀其の位置に在て立膝、打太刀は五歩退きて立姿のまゝ一旦納刀の後、更めて抜刀左上段の構へ。但し帯刀より前進中抜刀するも苦しからず、此の場合発足即ち右歩にて抜刀、次の左足にて上段に冠り、続いて前進の事。
業:打太刀上段にてスカスカと前進し拝み撃に仕太刀の真向に打下す、仕太刀は打太刀の刃が将に己が頭に触るゝ位にて其刹那、敏速に左足より一歩体を退きつゝ刀を抜きて、スッカリと立ち打太刀に空を打たせ直に右足を一歩踏み込み上段より打太刀の面を撃つ。
 刀を合はせ各五歩退き血振ひ納刀。
 但し次の業例えば「燕返」に移る如き場合打太刀は後方に退らず、其の位置に止るも苦しからず。

 

 

 

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2019年4月 2日 (火)

曽田本その2を読み解く9英信流詰合之位9の5鱗形

曽田本その2を読み解く
9、英信流詰合之位
9の5鱗形
参考
古伝神傳流秘書
詰合
5本目
鱗形:如前抜合せ相手打込むを八重垣の如く切先に手を添へ請留直に敵の太刀を摺落し胸をさす也。
英信流詰合之位
業附口伝
5本目
鱗形:座り方同前、左足を一足引きて抜合す也、其時敵すぐに我面へ上より打つ也、我もすぐに太刀の切先へ左の手を添へて十文字に請て左の足を踏み込み摺込み勝也、刀を合せ血振ひ納刀。
曽田本その2
英信流詰合之位鱗型
Img_0452
 古伝の詰合の鱗形も、曽田先生の詰合之位の鱗形も特に違う所は無さそうです。
 双方立ち上がって刀を抜き、左足を一足後方に退くや相手の膝に抜き付ける。
 此処は打太刀が先んじて仕の膝に抜き付けるのが古伝の心持ちです。
 業附口伝では、同時に抜き付け、双方の中間で刀を合わせ、双方の切先は相手の膝横で請け留められる。
 受け留められるや打は、左膝を右足に引き付け、上段となるや右足を踏み込んで仕の真向に打込む。
 仕は打ち込まれて、即座に左手を物打ち付近の刀の棟に添え、左足を着くや十文字に受け留め、即座に左足を踏み込み左手を上げ右手を下げる様に打のこめかみを切先でひっかく様に摺り込み摺落とし詰める。是が業付口伝の運剣でしょう。
 仕がもたついていれば、打が再び仕の右脇に切り込んで来るのが八重垣です。十文字受けするや摺り落して詰めるのです。
 古伝は、打が立ち上がりつつ刀を抜き出し、仕の膝に抜き付けて来るのを虎一足の如く受け留め、打は即座に左膝を右足に引き付け上段に振り冠、右足を踏み込んで真向に斬り込んできます。仕は切先に手を添え左足を右足に引き付け右足を退き十文字に打の斬り込みを請けるや否や体を左に披き、打の刀を右に摺り落し同時に打の顔面に突き込む。打は右足前、仕は左足前となります。
 タイミング的には業附口伝は打の刀を受けてから受けた交点を維持しながら左手の切先で攻めながら打の刀を押し落すのでしょう。
 古伝の場合は、打之太刀を受けた瞬間に正対していた体を左入り身に変じ摺り落し同時に切先で打を詰めるものでしょう。古伝の大らかな手附は技を拡げてくれます。
第19代福井春政先生の鱗形を嶋専吉先生の覚書から稽古して見ます。
無雙直伝英信流居合術形乾
5本目
鱗型:姿勢及構へ 仕太刀、打太刀共に納刀のまゝ
業:前同様に抜合せ打太刀は右より進み仕太刀の面上に打下すを仕太刀左足より体を退き左手を棟に添へて頭上十文字に請け止め続いて左足を一歩踏込み(この時右跪となり)左手を刀に添へたるまゝ対手の刀を己が右方に摺り落しながら咽を刺突の姿勢となる。
 此の時打太刀は左足より体を退き刀を左方に撥ね除けられたるまゝ上体を稍々後方に退く。
 次いで刀を合せ血振ひ(若し続て次の「位弛」を演ずる場合は打太刀は五歩後方に退きて血振ひ))納刀す。
 この、嶋先生の覚書では、打太刀は十文字請けされて、仕に左足を踏み込まれ、左足を退いて摺り落しやすい態勢を作ってくれています。従って己が刀は左方に撥ね除けられています。

 

 

 

 

 

 

 

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2019年4月 1日 (月)

曽田本その2を読み解く9英信流詰合之位9の4八重垣

曽田本その2を読み解く
9、英信流詰合之位
9の4八重垣
参考
古伝神傳流秘書
詰合
4本目
八重垣:如前抜合たる時相手打込を我切先に手を懸けて請又敵より八相に打を切先を上にして留又上より打を請け相手打たむと冠(我切先に手を懸けて請け敵右より八相に打を切先を下げて留又敵左より八相に打を上にして留又上より打を頭上にて十文字に請け次に冠るを従て突込むもある 曽田メモ)を直に切先を敵の面へ突詰める
業附口伝
英信流詰合之位
4本目
八重垣:是も同じく詰合て坐し前の如く左足一足引てさかさまに抜合也、敵其侭我面を打つを我又太刀の切先へ左手を添へて面を請くる也、夫れより立て敵すぐに我右脇を打つを我其侭刀を右脇にさかさまに取りて此の時右足を一足引き請け留る也、敵又立ちて左の脇を打ち来るを我又左足を一足引きて左脇を刀を直にして請け止むる也、敵又上段より面へ打ち来るを我又右足を引きて上を請て敵かむる所を我右足より附込み勝也、刀を合せ原位置に帰り血振納刀。
八重垣
Img_0451_2
 古伝神傳流秘書の八重垣は、双方抜き合わせ、打が左膝を着き仕の真向に打ち込んで来るのを、仕も左足を着き、左手を切先に添えて頭上に十文字に請ける、打が左足を踏み込み八相から左脇に切り込んで来る、仕も右足を退いて切先を上にして左脇で之を請け、打が又上段から右足を踏み込み真向を打って来るのでこれも、切先に左手を添え左足を引いて十文字に請ける、打は再び打たんと右足を引いて上段に振り冠る処、仕は追い足で切先を打の面に着けて詰める。
 打込むたびに立ち上がって足を踏み込もうと、其の場で踏み変えようと、立ち上らずに切り込もうと特に指定されない処が、古伝のおおらかな処です。最後の打が上段に振り冠る処を仕が付入って刺突するのは、この業は打の隙をつく事を教える良い業です。
 演舞では、ぴょこたんぴょこたん双方でやって居ればいいでしょうが、一刀目下で抜き合わせ、二刀目真向を請ける時から、打の動作が相手を圧するものでなければ付け入る事は出来るものです。
 従って、業附口伝の一刀目抜き合わせ、二刀目頭上、三刀目右脇、四刀目左脇、五刀目頭上、六刀目相手冠るを付け入っているのは、切れるか稽古としては楽しい体操になりそうです。
 この、詰合の業名は「八重垣」です。最も居合らしい組太刀であって、相手を意識した良い業です。にもかかわらず大江先生は、この業名を盗用して、大森流の4本目陰陽進退の古伝名を変えて八重垣にしています。
 どの様な謂れがあって、その様な暴挙を行ったのか、土佐の居合をどの様に理解されていたのか疑問だらけです。
 前回も紹介した第19代福井春政先生直伝の嶋専吉先生の無雙直傳英信流居合術乾
から八重垣を紹介します。
八重垣
姿勢及構へ:仕太刀、打太刀双方帯刀の儘詰合ひて右立膝対坐
業:是も同じく詰合ひ対坐より左足を一歩退きて倒か様に抜合はせたる後、打太刀は右より進み左跪にて仕太刀の正面に打込み来るを仕太刀左より体を少しく退き左跪にて剣尖を左方に左手を棟に添へて頭上十文字に請止む。
 続て打太刀、左足を一歩進め(打太刀は一応立ち上り左足を一歩進め右膝を跪きて)仕太刀の右脇に打込むを仕太刀右足を一歩退き刀を倒か様にとりて(左手を棟に添へたるまゝ刀を体に近く剣尖を下方に略々垂直にして)右跪にて請止む。
 打太刀更に立ちて一歩右足を進め左跪にて仕太刀の左脇に打込み来るを仕太刀左足を一歩退き刀を直にとりて(左手を棟に添へ剣尖を上に刀を垂直にし)脇近くに之を請留む(左跪)。
 打太刀更に右足より進みて上段より正面へ打ち込むを仕太刀は右足を一歩退け左手を棟に添へて再び頭上十文字に請け止め次で打太刀右足を退き振冠るところを仕太刀右足を一歩進め附込み打太刀の喉を突く。(この際打太刀の左膝と仕太刀の右膝とは相接する如く向ひ相ふ)で刀を合せ原位に復し血振ひ納刀す。
 第19代福井春政先生の詰合之位八重垣は曽田先生の業附口伝に他なりません。第19代も古伝を知らなかったのでしょう。
 剣術流派の秘伝も門外不出として秘して居ても、同じ様に様変わりして本来の形も心持ちも失われ、日本武道文化の正しい伝承は失われ形骸だけが権威として権力を奮って見ても意味の無いものになりそうです。

 

 

 

 

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