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2019年5月22日 (水)

曽田本その2を読み解く19無雙直傳英信流居合術の傳統19の10第16代五藤孫兵衛正亮

曽田本その2を読み解く
19、無雙直伝英信流居合術の傳統
19の10第16代五藤孫兵衛正亮

 高知城下入新町の人馬廻り格、亀之丞に就て居合を学び其の蘊奥を極む。明治26年板垣伯帰懸せられし際、伯は武道の嗜み深く其の精髄を会得されて居らるゝこととて、同志の者当時材木町にあった武学館に招待し一場の講話を希望▢せしに、伯は英信流居合術又松嶋流棒術の功績を賛美し、其の廃絶を惜しまれ誰か其の術を継承し、居合術の如き抜く人もなき時とて漸く正亮の居合修養深きを知り、伯より子弟指導のことを話し素封家竹村家に謀りて道場を建設せしめ此の處にて居合を教ふることとなり、其の後時の第一中学校長渋谷寬氏の居合術が身心鍛錬に特効あるを認め正亮を聘して生徒指導の任に当たらしめたり。
 明治31年没す年64歳
記 五藤氏没後谷村樵夫後を継ぎ生徒を指導し居たるも明治38年没す、享年61歳
  此の門弟に土居亀江(旧姓小藤)抜群の技ありたり、土居虎彦(現曽田姓)-実兄
* 
 此の曽田先生の文章のもとになるのは、中西岩樹先生による「英信流居合と板垣伯」であろう。曽田先生のスクラップの中にあるものなのですが、その出典の有りようは不明です。
 「・・・明治25、6年頃と言へば大日本武徳会創設前で地方の一般武道は未だ萎微沈滞の域に立った時分である。殊に帯刀禁止令発布後十数年を経過している事ではあり、真剣を打振ふ居合の如きが分明改化を追ふに急なる国民に顧られれさうな筈は無く、五藤正亮 谷村樵夫 細川義昌等の達人が傳統を受継いで現存して居り乍ら、殆んど之を執心修行せんとする者は無く、又之等の先生も唯単なる余技として死蔵せるに止り或は神職として或は政界の人として時勢に従っていたのである。
 其の内に段々居合を知る人も物故し、之等の先生と雖何時迄も在るものではなく、今にして後継者を造らざれば高知藩門外不出の此の武技も遂には世に之を傳へる者が無くなるであらふと非常に痛惜慨嘆されて極力其の復活振興の労を執られたのが板垣伯である。
 即ち明治26年板垣伯のご尽力に依って高知市新堀竹村與右衛門氏邸内に道場武学館が建てられ、五藤正亮先生が居合の師として聘せられ一般教授の任に当られたのである。
 それが因となり五藤先生は当時の第一中学校(現在の城東中学校)の校長にして居合を好む渋谷寬といふ人に委嘱されて後同校の居合教師となり、尚他中学校にも招聘せらるゝこととなった。
 明治31年其の没せらるゝや谷村樵夫先生が之に代り同36年谷村先生の歿後大江正路先生が之に代ることゝなったのである。斯くして高知県に於ては五藤、谷村、大江の三先生に依り居合の命脈を継いで来られ殆ど伝授者も中学卒業者に限られていた如く換言すれば中学生によって居合が保持されて来たかの観がある。
 又一方県外方面では第一人者たる中山先生も此の五藤先生の御門下たる森本兎身先生に手解を受けられ、更に細川先生に就いて修得されて居られるが細川先生は高知県内では殆ど教授せられた事は無い模様で、当時衆議院議員として滞京中板垣伯の御斡旋で中山先生に伝授せらるゝに至ったと承知している。
 爾来中央に在っては中山先生高知県に在っては大江先生の非常なるご努力に依って此の居合が漸次全国的に普及進展し、今日の隆昌を見るに至ったが危機を救ふて此の基礎を固めて呉れた恩人は板垣伯である。
 実に板垣退助伯は舌端火を吐いて自由民権を提唱され高知県をして自由発祥の地たらしめたが、更に不言黙々裡に此の居合を広く世に紹介し、高知県をして又此の居合発祥の地たらしめられた。私は自由の神としての板垣伯を知る人に尚此の土佐居合の恩人である板垣伯を知って貰ひ度いのである。」

 この文章を読みながら、第19代福井春政先生から、大阪の八重垣会を運営された河野百錬先生に第20代が招統印可され、後に岐阜の福井聖山先生に第21代が招統允可された際、土佐人の幾人かが画策して土佐へ戻さんとして、新たに土佐英信流なるものを創設したりして纏まっていたものを分離させたりした事が思い浮かびました。その後も個人的な感情から分離独立する者もあって、相互の融和も無く、板垣伯の思いも知らないことになってしまったことを残念に思います。
 失われようとするものを残さんとした大江先生の居合も、それぞれがあらぬ方に向かいつつあるようです。古伝が示された今、もう一度古伝復元を計り本物を見つめ直す時期でもあるでしょう。

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