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2019年5月29日 (水)

曾田本その2を読み解く20スクラップ無雙直傳英信流居合術20の4居合術業書正座の部2右

曾田本その2を読み解く
20、スクラップ無雙直傳英信流居合術
20の4居合術業書
正座之部2右

 正面より右向に正座し、例に依りて抜き付けつゝ爪先を立て、右膝頭を中心として(左足先と)左に廻り正面に向き、左足を踏み出し同時に刀を抜き放ち、右横一文字に切り付け、更に雙手上段にて割付け血振(此時右足を左に踏揃へ左足を後に引きて)刀を納むる事同前。

 一本目は、「正面に正座し」でしたが2本目は、正面より右向きに正座し、十分気の充ちたる時、左手を鯉口に取り左指にて鯉口を切り、右手の全指を延ばしたる儘柄に掛けて握り、膝を左にひねりて刀を」抜きつつ・・ここが例によりとなる部分です。
 この、スクラップの特色は、対敵意識が欠如している事です。一本目前は、前を向いているので前に敵が居るのかなと思うのですが、2本目は「正面より右に正座し、・・十分気充ちたる時・・」です。此の場合の正面とは、一本目の正面、我の正面に敵が居るので、敵に対し我は右向きに正座すると云う事でしょう。敵は我の左脇に座して居る事になります。その場合敵は我の方に向いているのか、我と同様右向きなのか業書きにはありません。

 古伝神傳流秘書の大森流之事2本目は左刀です。敵は正面に座し、我は一本目と違って:「左の足を踏み出し向うへ抜付け打込み扨血震して立時足を前に左の足へ踏み揃へ左足を引て納る」正面の敵を一本目初発刀は右足を踏出し抜き付ける。
 2本目は正面の敵に左足を踏み出して抜付けるのです。この古伝の足捌きの違いは何を意味するのか不明です。抜き付けには左右何れの足でも踏み込めるように稽古せよとでも云うのでしょうか。文章に「左脇の敵に」とか「左廻りに」とかあれば大江居合と同じなのですがこの文章では、正面を向いたままとしか読めません。
 第15代谷村亀之丞自雄による英信流目録では、第12代林益之丞政誠の英信流目録(安永5年1776年)を嘉永5年1852年に書き改めたと奥書があって、「大森流居合之位 左刀:是は左脇へ向いて坐するなりヒタリへ廻り左の足を一足ふみ出抜付直に打込亦血ぶるいをして立時右の足を左の足に揃へ納る時左を一足引納也」と、古伝を書き改めたとされています。

 神傳流秘書では左刀は左足踏み込みの抜き付け、英信流目録では対敵は我が左脇に座すと修正したことになります。曽田スクラップに依る大江居合は、我の正面の右向きに座すことで、左右の業名を入れ替えてしまったわけです。大江居合は、対敵の我に対する位置関係では無く、演武上の位置関係を主体として変えてしまったと云えるでしょう。大江先生系統の無双直伝英信流は現在でもこの様な座し方をしているわけです。

 大江先生は下村派第14代下村茂市定の門弟であったわけで、細川義昌先生の後輩に当たります。
 細川先生の系統の梅本三男先生に依る居合兵法無雙神伝抜刀術の大森流之部2本目は左刀(左側に座して居る者を斬る)対敵を想定した業名で古伝に従っています。
 「正面より右向に座し例に依り鯉口を切り右手を柄に掛け刀を抜きながら腰を伸しつつ脛を立て右膝頭で左へ廻り正面へ向くなり、左足踏込むと同時に(対手の右側面へ)抜付け右膝を前へ進ませながら刀尖を左後へ突込み諸手上段に引冠り更に左足を踏込んで斬込み血振ひして刀を納め終る」
 「例に依り」の書き出しに、何故か同統の名残を感じます。

 此の業の場合、敵も我と同様我が左脇で右向きならば条件は同じですが、敵は我が左脇で我が方を向いて座して居るならばそれを制するのは厄介です。
 河野先生の無雙直傳英信流居合道では「吾が左側に吾と同方向に向ひて座せる敵に対し行ふ業にして、其の1正面同意義なり」と想定を特定してしまっています。取り敢えず、左廻りに抜き付ける事を稽古せよと云うのでしょう。
 河野先生の大日本居合道図譜では「正面に向き直るや(左側の敵の方向の意)左足を踏出し抜刀せんとす。註、刀身45度の所ー刀を(右拳を)之より左に運ばぬ事。」と云う一文が加わっています。この事に対する明解な解説は現在もされないまま21代、22代、23代と其の儘引き継がれ、幻となって居る気がします。
 座した場合の柄頭は我が正中線上にあるのが、河野居合です。従って右向きに座して、左回りに正面に向いても柄頭は我が正中線上、当然敵の正中線上にあるべきでしょう。
 従って刀身45度の所でも我が正中線上に柄頭はあるべきです。刀を抜き出し乍らですから当然右拳は左へ移動させながら抜き出す事になります。此処までに切先3寸抜いていれば残りの45度は右拳の移動をせずとも我が正中線上に柄頭は保持され、当然敵の正中線上を柄頭が制している事になります。 
 対敵意識の乏しい大江居合では、右向きから正面向きに左回りに廻る、其の途中である正面45度に柄頭があればそこから柄頭を固定してしまい、我が体のみ捻じられて正面向きになってしまいます。当然柄頭は座を外したものとなり、既に体は左に捻じられていますから不十分な手抜となってしまいます。
 河野居合の右の解説は正しいのですが、その説明がなされていません。「そう習った」としか答えられない十段の多い事。

 

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