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2019年6月 1日 (土)

曾田本その2を読み解く20スクラップ無雙直傳英信流居合術20の4居合術業書正座之部5八重垣

曾田本その2を読み解く
20、スクラップ無雙直傳英信流居合術
20の4居合術業書
正座之部
5、八重垣

 正面に向ひて正座し、例に依りて抜きつゝ右足を前に踏み出し、抜き払ふと同時に立上り、左足を右足の一歩前に踏み出し乍ら雙手上段に振り冠り、右膝を跪くと同時に打ち下し、刀を右に開きて(血振)納め終り、(鍔元より二、三寸位の所迄)其儘立上り、左足を右足より一歩後に引くや抜き払ひ、右脛を刀にて囲ひ、(脛になぎ来るを受る)(此時左手は腰に取る)左膝を跪くや刀を左側より雙手上段に振冠り、真向に割付け、血振し刀を納め終る事同前。


古伝神傳流秘書の大森流居合之事5本目陽進陰退
 「始め右足を踏出し抜付け左を踏込んで打込み開き納又左を引て抜付跡初本に同じ」


第15代谷村亀之丞自雄の英信流目録より大森流居合之位嘉永5年1852年
 「陽進刀 是は正面に座す也、右の足一足ふみ出し立なりに抜付け左をふみ込み撃込む也、直に右脇へ開き其の儘納む也
  陰退刀 其儘左の足を跡へ引、其時亦抜付打込み血ふるひの時立左の足を右に揃へ納る時右を一足引也」


細川義昌先生の系統梅本三男先生の居合兵法無雙神殿抜刀術5、陰陽進退(前方を斬り 又 薙付け来る者を斬る)
 「正面に向ひ正座し、例により鯉口を切り右手を柄に掛け、抜きつつ膝を伸し右足踏込んで(対手の右側へ)抜付けたるも剣先が届かぬ為、急に立上り左足を右足の前へ踏越しつつ刀を引冠りて正面へ斬込み刀を右へ開き(開くとは血振ひの事)刀を納めつつ右膝を跪き納め終りたる所へ(別人が向脛薙付け来る)急に立上り左足を一歩退くと同時に刀を前へ引抜き切先の放れ際に左腰を左へ捻り、体は正面より左向きとなり(視線は右の対手に注ぐ)刃部を上に向け差表の鎬にて張受けに受け止め、体を正面に戻しつつ左膝を右横へ跪きながら、刀尖を左後へ突込み右諸手上段に引冠り、更に右足踏込んで斬込み血振ひして刀を納め終る。(刀を開くとは血振ひする事、英信流の血振ひ同様 斬込んだままの刀の刃部を右斜下へ向け右拳を右前下へ突出し傘の雫を振落す様に切先を振って血糊を振落す事)


大江先生の剣道手ほどきによる大森流居合5番八重垣
 「正面に向ひ正座す、右足を出し左膝を浮かめて中腰となりて首に抜付け、左足を前方へ踏み出して両膝浮かめて中腰の儘大間に上段に取り前方真直に頭上を斬り下し、此時右膝をつき左膝を立て同体にて長谷川流の血拭ひを為し刀を納む、此時敵未だ死せずして足部を切り付け来るにより血拭ひの姿勢より右足を重心に乗せて立ち、直に左足を後へ開き体を左斜構ひとし刀を膝の前へ抜きて平とし、膝を囲みて敵刀を受け更に身体を正面に向け上段となり、座しながら頭上を充分斬る、血拭は右足を後部へ引き刀を納む。


 大江先生の大森流の業名の改変は古伝を知れば知る程、伝統を蔑ろにするその意味が理解できなくなります。中学生向きに判りやすくしたとは思えません。
 下村派第14代下村茂市の弟子であったことは事実でも、十分な指導は受けられなかったために本物が判らなかったか、中学校長の現代風に替えようと云う指示によって古伝の意義も知らずに改変したか、古伝の業を知らないがために抹殺する暴挙であったか、もう知るすべはありません。大森流を正座之部、初発刀を前、左刀・右刀・當刀を右・左・後など何を根拠としたのでしょう。
 そして此の陰陽進退を八重垣とはひどすぎます。現代居合は大江居合であって第9代林六太夫によって土佐にもたらされた、伝統を明治維新のもとに切り捨てたとしか思えません。ですから大江居合は明治時代に改変された現代居合、古伝は古伝と割り切って稽古したいものです。

 此の業の意義はどうやら。一本目初発刀の如く横一線に抜き付けたが、敵は上体を後方に反らして躱されてしまう。敵は躱すや後方に退かんとするのを我は追い込んで上段から打ち込む。充分に斬り込み横血振りして納刀する所、正面から他の敵が斬り込んで来る、即座に抜刀して敵刀を下がり乍ら受け止め上段に振り冠って打ち込む、あるいは下がり乍ら抜打ちに敵の胴を切り払って上段に振り冠って打ち込む。
 または、倒した敵が死力をふり絞って薙ぎ付けて来るのを受け止めて、再び上段から打ち込む。という敵が一人か二人、の想定なのでしょう。大江先生も細川先生も下村派14代下村茂市の指導で大森流は身につけられていたかもしれません、にもかかわらず、細川陰陽進退は二人目の敵、大江八重垣は倒した敵が死力をふり絞ってくる。
 それでは、谷村派の第15代谷村陽進刀隠退刀はどうかと云えば、倒した相手とも、他の敵とも云っていません「・・開き其儘納む也。其儘左の足を跡へ引き其時亦抜付打込み・・」です。
 此の業の想定は、実戦的には倒してもう充分と思う所を死力では、様になりません。疑問ですが、大森流居合を初発刀・左刀・右刀・當刀と4本稽古して来たククリとして考えれば、まあいいかでしょう。もう一つ想定の最初の抜打ちで相手の戦意を殺ぐ事も出来ず、もっとひどいのは抜き付けを躱され追い込んで打ち込むなど、敵は我が抜き付けを躱すのが精一杯で後方に退いて間を外し我に追い込まれる状況は大変難しいものです。奥居合の向払なら、我は躱されて切り返します。大森流の稽古では躱されるなどお粗末ですが、初心者だから良しでしょうか。
 この業は、武的演舞では英信流の見せる良い踊りです。然しその一連の流れは河野先生が習った想定ではお粗末すぎです。設対者をお願いしてあらゆる状況にどの様にこの業を展開できるか研究して見れば大森流の真髄に触れられることになりそうです。

 

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