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2019年6月26日 (水)

曽田本その2を読み解く20スクラップ無雙直傳英信流居合術20の5居合術業書奥居合立業之部1行連

曽田本その2を読み解く
20、スクラップ無雙直傳英信流居合術
20の5居合術業書
奥居合居業之部1行連

 正面に向ひ前方に歩み行きつゝ、例に依りて静かに鯉口を切り右手を柄に掛け同時に右斜前の敵を抜打に切り付け、直ちに左斜前に向き乍ら双手上段に引冠り右足を踏込みて左斜前の敵に切り込みて、刀を右に開きて同時に左手を腰に取り夫より鯉口を握りて納め終る。

 大江先生の剣道手ほどきの行連:「(進行中右に斬付け又左を斬る)直立体にて正面を向き、右足より数歩出で、道場の中央となりたる處にて、左足を左横に踏み、上体を稍や左横に寄せ右足を右横に踏み出す時、中腰にて抜き付け、上段にて右を斬る、其足踏みのまゝ、左横に体を返して、上段にて中腰にて斬り、同体にて血拭ひ刀を納む、(血拭ひ刀納めは以下之と同じ)」

 河野先生の行連には、大江先生の想定の「左足を左横に踏み、上体を稍や左横に寄せ」の動作が見られません。此の動作は稍々前進を押さえて敵との間を調整する動作がありません。想定についてですが河野先生も大江先生も敵と我はどのような状況にあるのかが述べられていません。
 「左足を左横に踏み」によって何が起こるのでしょう。現代居合では「左右の敵と同一方向に進行中」の攻防とされています。そうであれば、左足を左横に踏む事は一歩踏んでも左横ですから、敵を一歩分やり過ごす事になります。敵は一歩斜め右前と左前になって大江先生の右横、左横に敵は居ません。

 河野先生は其処で「右斜前の敵を抜打に切り付け、直ちに左斜前に向き乍ら双手上段に引冠り右足を踏込みて左斜前の敵に切り込み」となっておかしくはない。大江先生の「右を斬る・・左横に体を返して上段にて中腰にて斬り」は」「右斜前・左斜前」となるべきでしょう。
 大江先生の「上段にて右を斬る」と有るのですが、右敵へは「中腰にて抜付け、上段にて右を斬る」中腰の表現をどう演ずるか疑問なのと、抜き付けは斜め前ですから片手の斜め抜打が自然で、抜いてから上段に振り冠って右敵を斬るのはお粗末です。

 河野先生は、この行連に疑問を持ったのか、大江居合を参考にされたのか昭和13年1938年の「無雙直傳英信流居合道」の行連では:「意義-吾れ不法に連行される如き場合、吾れを中に左右に敵あり前進歩行中、敵の機先を制し一歩やりすごし乍ら右の敵を抜打に仆し、更に左の敵の振向かんとする所を斬り付けて勝つの意なり。正面に向ひて直立し、前方に進みつゝ、静かに鯉口をきり、左足を少し左に開き、敵をやりすごし、右手を柄にかけるや、右足を右斜前に踏み込むと同時に抜打ちに(刃を上にし)右の敵に、右片手にて斬り付け・・」と直されています。

 古伝神傳流秘書抜刀心持之事の両詰の変化業で「右脇へ抜打に切り付け左を斬る」の座業を立業にしたようなものです。大江先生の独創でしょうと云われますが、この業は細川義昌先生系統の梅本三男先生の「居合兵法無雙神傳抜刀術」の英信流奥居合之部11、行連に同様の業がます。行連:「(左右の者を斬る)正面に向ひ、歩み往きつつ鯉口を切り右手を柄に掛け、右へ振向くなり抜打ちに(右の者へ)斬付け、直左へ振返へりつつ諸手上段に振冠り右足踏込んで(左の者へ)斬込み刀を開き納め終る。」

 梅本先生の手附には奥居合之部12、連達という業があります。
 連達:「(前後の者を斬る)正面へ歩み往きつつ鯉口を切り右手を柄に掛けるなり抜打に(前の者へ)斬付け、直ぐ(左廻りに)後へ振返へりつつ諸手上段に振冠り右足踏込んで(後の者へ)斬込み刀を開き納め終る。」  
 梅本先生の奥居合之部には、前後に座して居る者を斬る「4、前後詰」と左右に座して居る者を斬る「5、両詰」があります。大江居合は古伝とアンマッチな業名や古伝に無い動作が幾つか見られるのですが、特に奥居合に集中しています。大江先生は下村派14代下村茂市定に師事して居ましたからその業を習ったか、兄弟子が演じるのを見ていた可能性は大きいでしょう。細川居合も下村茂市の教えに依るとは思いますが絶対という証明はできません。
 大江先生は奥居合ではかなり業手附及び業名を復元するのに苦戦されたかもしれません。明治という時代が為せる事でしたが、その後の剣術や体術、弓術の統一思考によって、古流が消えてしまった事を考えると、一概に武士が武術では飯が食えず失職して古伝が消えただけでは無く、十分な指導を受けられずに激動の時代を迎えてしまい、あえて消し去った一部の指導者の思想に負うところが大きそうな気がします。

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