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2019年7月 4日 (木)

曽田本その2を読み解く20スクラップ無雙直傳英信流居合術20の5居合術業書奥居合立業之部9壁添

曽田本その2を読み解く
20、スクラップ無雙直傳英信流居合術
20の5居合術業書
奥居合立業之部9壁添

 正面に向ひて立ち、両足を真直に爪先を立て左腕を脇に着けて動かさずして右手を柄に掛け、刀を上方に抜取り双手上段に取りて打ち下す、(此場合柄は下腹に接近し、刀尖は両足先に近き所迄切付く、)血振は打下したる状態にて右に刀を開きてなし、次に右拳を前より静かに納め終る、(左側に壁がありて普通の如く刀の抜けざる場合なり)

 大江先生の剣道手ほどきより壁添へ:「(進行中立留り両足を踏み揃へ上に抜き直下に斬下し竪立に刀を納む)中央に出で體を直立とし両足を揃へ刀を上に抜き上段となりて趾先を立てゝ真直に刀尖を下として斬り下し、其體のまゝ刀尖を下としたるまゝ血拭ひ刀を竪立として納む。」

 此の動作は、古伝神傳流秘書抜刀心持之事人中に相当します。:「足を揃へ立って居る身にそへて上へ抜き手をのべて打込む納るも躰の中にて納る」

 大江先生は何故奥居合では業名を変え動作まで変えてしまったのか解りません。
 古伝の抜刀心持之事では、場の状況による業名では無く敵との対応に依る業名が優先しています。しかし棚下と夜之太刀が場の状況下での動作になって居ます。古伝の人中は「ひとなか」では「立って居る身に添へて上に抜き・・躰の中にて納む」とは人の大勢いる所では、周りの人を傷つけない様に体の中で抜けと云うのです。
 大江先生は古伝の行違を袖摺返に変えてしまい人中での人を押し退けて前面の敵を斬る業を独創してしまったので、「ひとなか」での抜刀法では無く「壁添へ」壁に挟まれた狭い場所での抜刀法に想定を変えてしまった様です。
 河野先生は更に「左側に壁がありて普通の如く刀が抜けざる場合」とされています。それでは、右側はどうなってるんでしょう。説明不足です。
 取り敢えず壁があって抜くのが上にしか出来ないとします。その抜き上げる際、「左腕を脇に着けて動かさずして右手を柄に掛け、抜取り」左手で鯉口も切らずに抜刀するそうです。
 次の上段からの斬り下しは、「河野先生の場合疑問点が二つ、一つは「爪先を立てゝ・・刀を上方に抜き取り上段に取り」と不安定な足裁きをさせて置いて「刀尖は両足先に近き所迄切付く」のですが、踵を下したまま抜き取り、上段から打ち下す際、踵を上げて斬撃力を増すべきでしょう。河野手附ではふらついた手打ちにしかなりません。習い始めの頃は「自分はまだ居合に向く体作りが出来ていない、修行が足りないからだろう」と素直に自分の不甲斐なさを嘆いたものです。更に敵を真っ向から斬り下すのを何故爪先まで斬り下すのでしょう。その必要は、不必要な爪先立ちを先にしてしまったので意識的に大きく振り下すことで良しとしたのでしょうか。
 
 細川義昌先生系統の梅本三男先生に依る居合兵法無雙神傳抜刀術では「人中」:「(群集中にて前の者を斬る)正面に向ひ、直立の儘(刀は落差に)鯉口を切り右手を柄に掛けるなり、刀を上へ引抜き(左より背部へ廻し)素早く諸手となり、前者へ斬込み(両足の間へ斬下す)其儘刀を開き、柄を上へ引上げ(刀尖を真下に釣下げる様にして)納め終る(体は直立の儘動かさぬ事)」
 斬り下しは「両足の間へ斬下す」ですから河野先生と同じでしょう。切先下がりであれば体の内側で血振りが容易そうです。
 納刀の説明で「刀尖を真下に釣下げる様にして」とは我が体前は空いているのに、不自然な要求ですが四角な筒の中での運剣の稽古と考えれば良いかも知れません。
 古伝の大らかさはドンドン失われて尾ひれがついてゆくものなのでしょう。

 英信流居合目録秘訣の上意之大事壁添:「壁に限らず総じて壁に添たる如の不自由の所にて抜くには猶以て腰を開きひねりて躰の内にて抜突くべし、切らんとする故毎度壁に切あてかもいに切あてゝ仕損ずる也、突くに越る事なし、就中身の振廻し不自由の所にては突事肝要」と有ります。
 不自由な所では突くべきなのでしょう。是は古伝神傳流秘書抜刀心持之事向詰にあります。向こうとは正面の敵に応ずるもので:「抜て諸手を懸け向を突打込也」
 これは大江先生の両詰で稽古した業になります。両詰:「(抜放け諸手にて真向を突き斬る)座したる處より右足を少し出して、刀を抜き、柄元を臍下に当て、右足を踏出して、前方を諸手にて突き、其姿勢のまゝ、上段にて前面を真向に斬る。」
 
 河野先生は「両詰」に拘って無雙直傳英信流居合道の奥居合居業の部両詰では:「意義-吾が両側に障害ありて、刀を普通の如く抜き得ざる場合にして、前の敵を刺突して勝つの意なり。」
 同じく壁添では「意義-吾が前面に敵を受け、左に壁ありて普通の如く抜刀し得ざる場合左上方に刀を抜きとりて斬り仆すの意なり。(右に壁ある場合も同意)」と補足されています。
 大日本居合道図譜では、:「意義-我が前面に敵を受け、左又は右に壁ありて抜刀自由ならざる場合ひ、刀を上方に抜き取りて敵を仆すの意なり」と進化してきています。
 人中なり、壁添で前方が開いているならば前に抜き出し刺突する古伝の向詰が有効です、前に抜き出しつつ刃を下に向け下から切り上げる抜刀をしっかり稽古する事で、敵の仕掛けてくる場合に応じられる勢中刀(月影)、稲妻などを身幅の中で抜刀する事も良いでしょう。

 古伝の人中が群集の中での抜刀法であったものを、壁の様な障害物が左側にある場合の抜刀法に変えてしまいおかしなものになった様です。動作は同じ事ですから「おおらか」に想定を巡らせてこの業の何故を思って見るのもいいのでしょう。然し古伝を伝承しているとか、昔はこうだったなどの嘘はつかずに、現代居合ではとか、明治時代に失伝寸前の土佐の居合の教えでは位の謙虚さが欲しいものです。或ははっきりと大江正路先生の居合ではと云うべきでしょう。この奥居合には居合の業と云うよりも人中では周囲の関係のない人を傷つけるな、と言っていると思うべきでしょう。


 

 

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