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2019年7月19日 (金)

曽田本その2を読み解く22スクラップ居合の疑義につきての解説22の8八重垣

曽田本その2を読み解く
22スクラップ居合の疑義につきての解説
22の8八重垣の動作につきて

 答、右足にて水平に抜きつけ「左足を前に踏み出し膝を床に落ち付く」、(此場合の動作は一動にて行ひ、此動作中に刀を諸手上段に振り冠る)、故にすでに打ち下す時は右膝は床につき居りて納め刀は全体勢(前体勢の誤植?)のまゝにてなし、次に左足を右足の後に大きく踏み開き、(此時左足の動作始まると同時に右膝は床より浮かす)半身となりて脛囲に移る様致し候。

 河野先生の質問が不明ですから、八重垣の何を聞きたかったのでしょう。穂岐山先生の答えを反映しているのは昭和13年1938年の無雙直傳英信流居合道にあるかもしれません。
 無雙直傳英信流居合道は業の動作を順番に解説し次に注意すべき事が組み込まれ、最後にその業の「意義」として何のためにその業技法の動作を行うのかが掲載されています。この八重垣の意義は:「吾が正面に対座せる敵の首(又は顔、腕)に斬り付けたるも不十分にして、敵後退したるを更に一歩追ひ込みて斬り倒したるに致命に至らずして、其の倒れたる處より吾が右の脛に薙ぎ来るを、吾れ受留めて勝つの意なり。」という状況があって動作が展開する事でより理解が深まるものです。然し一方では状況は幾つもありうるのに固定観念にとらわれてしまい変化に応じられなくなる危険性も多く、武的踊りに陥りやすくなります。

 この意義をはじめに居合の教本に書き込まれたのは、中山博道先生の居合をあらわした太田龍峰先生の居合読本昭和9年1934年によります。その陰陽進退の意義:「互に対座せる時急に初発刀の如く切りつけたるも、敵逃れしを以て直に追ひかけ之を斬り倒し、刀を納めんとせし時、再び他の敵より斬り付けられたるを以って直に之れに応じて敵の腰を斬る業である。」

 細川義昌系統の梅本三男先生の陰陽進退は意義として想定を掲げて居ませんが、想定に対して動作がついて来る組立てになって居ます。
陰陽進退:「(前方を斬り 又 薙付け来る者を斬る)「正面に向ひ正座し、例により鯉口を切り右手を柄に掛け、ぬきつつ膝を伸し、右足踏込んで(対手の右側面へ)抜付けたるも剣先が届かぬ為、急に立上り左足を右足の前へ踏越しつつ、刀を引冠りて正面へ斬込み、刀を右へ開き(開くとは血振ひの事)刀を納めつつ右足を跪き納め終りたる所へ(別人が向脛薙付け来る)急に立上り左足を一歩退くと同時に、刀を前へ引抜き切先の放れ際に左腰を左へ捻り、体は正面より左向きとなり(視線は右の対手に注ぐ)刃部を上に向け差表の鎬にて張受けに受け止め、体を正面に戻しつつ、左膝を右足横へ跪きながら、刀尖を左後へ突込み、右諸手上段に引冠り、更に右足踏込んで斬込み血振ひして刀を納め終る」

 大江先生の場合も同様なのですが想定も動作も不十分なので、疑問が湧いても当然です。「剣道手ほどき」大正7年1918年今から101年前に発行された居合の手ほどきです、その八重垣:「正面に向ひ正座す、右足を出し左膝を浮めて中腰となりて首に抜付け、左足を前出して両膝を浮かめて中腰の儘大間に上段に取り前方真直に頭上を斬り下し、この時右膝をつき左膝を立て、同体にて長谷川流の血拭ひをなし刀を納む、この時敵未だ死せずして足部を斬り付け来るにより血拭ひの姿勢より右足を重心に乗せて立ち、直に左足を後方へ開き体を左斜め構ひとし刀を膝の前へ抜きて平とし、膝を囲みて敵刀を受け更に身体を正面に向け上段となり、座しながら頭上を充分斬る、血拭ひは右足を後部へ引き刀を納む。」。
 「首に抜付け・・頭上を斬り下し」は、抜き付け不十分で相手が下がらんとするのを追い込んでと言う説明不足でしょう。状況の想定不十分に動作が優先しているのです。

 古伝神傳流秘書の大森流之事「陽進陰退」:「初め右足を踏出し抜付け左を踏込んで打込み開き納又左を引て抜付跡初本に同じ」是は動作のみで、想定は無く動作の運用条件だけの簡略さで後は、師匠に習えか、自分で考えろと云うものです。

 河野先生より一月ほど早く山内豊健、谷田左一共著による図解居合祥説昭和13年1938年3月が発行されその八重垣には業動作より先に、目的が書かれています。:「正面に対座している敵の首に急に抜き付け、逃げる所を一歩追い掛けて其の頭上を斬る。此の時敵は死なないで、吾左足に斬付け来る敵に、先づ之を受け流し、更に上段から敵の頭上を両断するのである。」

 稽古をするには、意義や目的或は理合が先に示され其の想定を思い描き、動作を着けて行くのは有効でしょう。然し大方は其の想定のみに拘ってしまい、古伝のような大雑把なポイントのみでは想定が描けずどうすべきか頓挫してしまいます。然し闘争の武術として考えればどのような敵の攻撃なのかその場でしかわからないものです。示された動作を元にしてあるだけの想定を思い描きこの業が自然に応じて当を得ている処まで修錬すべきものでしょう。

 たとえば、最初の抜き付けは、十分手ごたえがある、斬り付けが浅い、間が足りない、相手が外した、相手が柄で受けた、刀で受けた、など幾らでも思いつくでしょう。

 

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