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2019年9月17日 (火)

曽田本その2を読み解く37三つの声と云事

曽田本その2を読み解く
37、三つの声と云事

 三つの声と云は、初、中、後の声と云て三つにかけわくる声也、所により声を掛くると云う事専也、声は勢なるによって、火事抔にも掛け、風波にも掛け、声は勢力を見せるものなり、大分の兵法にても、戦より初に懸る声は、いかほどもかさを懸けて声をかけ、又戦ふ間の声は調子をひきひき底より出づる声にてかゝり、勝て後あとに大きに張り懸る声、是三つの声也。
 又一分の兵法にしても、敵をうごかさんため打つと見せてかしらより「エイ」と声をかけ、声の後より太刀を打出す物也。(行宗先生の「敵は真向にて抜かんとかまえるか、声にて、かくれがたく、さま廻て抜き付」とは此の意ならん)。又敵を打ちて後に声を懸来る事、勝を知らする声也、是を前後の声と言ふ。
 太刀と一度に大きに声を懸くる事なし、若し戦の内に懸くるは拍子にのる声、ひきく懸くる也、よくよく吟味有べし。(武術叢書)

 この写しも武術叢書からの引用です。武術叢書が引用したものは宮本武蔵の五輪書「火之巻」に依ります。宮本武蔵が五輪書の冒頭で「諸流の兵法者と行合ひ、六十余度まで勝負すといへども、一度も其の利をうしなはず。其の程、年十三より二十八、九迄の事也。」とある様に試合に依って身に着けた知恵をまとめたもので、武術の参考はもとより人生の参考ともなる事も多く、海外でも読まれているものです。
 大江先生の組太刀英信流居合之型では、掛け声を掛ける様に指定されています。それは「発声は相互の打合せ、或は受け又は打ち込みたる時、其業毎に「イーエー」と長く引きて声を掛け合ふなり」とされています。是は三つの声でも否定している「太刀と一度に大きに声を懸くる事なし」と違います。「若し戦の内に懸くるは拍子にのる声、ひきく懸くる也」です。
 河野先生の大日本居合道図譜の居合道形の掛声は「発声はイーエーと互に斬込みたる時掛けふ。(イーはヤアにてもよし)(斬込む瞬前にイーとかけ、斬込みたる瞬間にエイとかける)」演武会などや、youtubeを見ていますと大声で勇ましい掛声を出して木刀を振り廻しています。古伝神傳流秘書には掛声の有無は記載されていません。太刀の打込みに合わせた掛声はともすると、力みを呼び「この一刀で真っ二つにせん」と打込み容易に裏を取られるものとなります。戦前の赤紙一枚で徴用された兵士を死地に向かわせ白兵戦に怖気させない為の洗脳とは現代は違って、少しでも武術の奥義をと名人上手を志し日々修錬する人は武蔵の云う「よくよく吟味有べし」に目をやるべきでしょう。

 

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