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2019年10月

2019年10月31日 (木)

曾田本その2を読み解く46行宗先生より中村虎猪氏に授与したる中傳書写46の4長谷川流居合術颪

曾田本その2を読み解く
46、行宗先生より中村虎猪氏に授与したる中傳書写
46の4長谷川流居合術
1、颪 敵抜かけ来る処にて我右足にてふみおとす心にて胸へ抜付け勝つ

 前回までに浮雲迄を解説して来ました。動作が複雑になって手附の文章が長く、複雑になりました。今回も似たようなところが有りそうです。

 神傳流秘書 山下風:右へ振り向き右の足と右の手を柄と一所にて打倒し抜付後同前
  大江居合 颪(又山おろしとも云う):左向き腰を浮めて右斜めに向き、柄止め、直に左へ足を摺り込み、其踵へ臀部を乗せ右斜向体となり、斜刀にて筋変へに打ち其形状にて左手は刀峯を押へ、左足を左横に変へ、刀を右へと両手を伸ばして引き、敵体を引き倒すと同時に右足を右斜へ寄せ、直に其刀を右肩上の處にかざし左足を後部に引き右足を出し、正面に向き上段となりて斬るなり。血拭い刀納む。(敵の眼を柄にて打つ進んで胸を斬り更に頭上を斬る)
 細川居合 山下風:(右側に座して居る者を斬る)正面より右向き・・体を右へ廻し正面へ向くなり右足を引付けると同時に柄を右胸上部へ引上げ右手を柄に逆手に掛け右足踏出すと共に鍔にて対手の左横顔を打ち直ぐ右足を引寄せる。同時に鯉口を腹部へ引付け、刀を右真横へ引抜き(切先き放れ際に)左膝を左へ捻り正面より左向きとなり対手の胸元へ(切先上りに手元下りに)斜に抜付け、更に体を右へ捻り戻しつつ刀の腰に左手の四指を添へ刀尖を下へ柄頭を後上へ引上げ体を右へ廻しつつ対手の体を押倒すなり(正面より右向きとなり)左足を跪き刀尖を(上より)後へ振返し右足踏だすと共に双手を向うへ突出し横一文字に構へ(視線は左正面の対手に注ぐ)左膝を右足へ引寄せつつ諸手上段に振り冠り右足を正面へ踏み出し(胴体へ)斬込み刀を開き納め終る。

 行宗先生の長谷川流の颪は「敵が抜きかけ来る処」を右足で「ふみおとす」そして胸に抜きかけて勝つ業だそうです。中山博道の夢想神傳流の山下嵐が行宗居合の様でした。
 神傳流秘書の山下風は敵の起こりは語られず一方的に「右の足と右の手を柄と一所にて打倒す」と意味不明な文章です。現代居合の夢想神傳流を思い浮かべて、浮雲が敵が柄を取り来るのだからこの業は、同方向に向いて坐している敵が、我が方を向き柄に手を掛け抜き付けんとする、その敵の柄手を我が鍔で打ち右膝を我が右足で打倒して、打ち倒した敵に抜き付けるのも変ですが、起き上がる処を抜き付け、引き倒して、上段から打ち込むのでもいいかなと思えるし、敵が柄を取りに来るのを避けて打ち据えるのもいいかなといった程度で妥協します。

 大江居合は敵の動作は「柄止め」とだけあるのですが、敵が抜かんとするのを「柄止め」するのか、敵が我が柄を取らんとするのを止める「柄止め」なのか疑問です。我が敵のぬかんとするのに行宗居合の様に柄止めして、或いは敵が我が柄を取らんとするのを柄止めして、斜めに抜き付け、敵体を引き倒し、上段となって切り下ろすのでしょう。

 細川居合も解かりずらい、敵の動作は不明ですが、柄を右胸に引き付け右手で逆手に持ち、(反りを返すのでしょう)斬り、敵の左横顔を鍔で打つ、刀を右真横へ抜いてから切先上がりに敵の胸へ斬り付ける、敵を押し倒し、上段から切り込む。

 第20代無雙直伝英信流の宗家河野百錬先生の昭和8年1923年発行の「無雙直傳英信流居合術全」から「颪」:意義 正面より左向に立膝に座し、・・左手を鯉口に掛け鯉口を握りたるまゝ拇指を鍔にかけ右手を柄に掛け、右足を踏み込みつゝ柄頭にて敵の顔面を一撃し、左足を引き付けつゝ右手にて刀を抜きつゝ腰を十分左にひねりて抜き放ち敵の胸元へ切り付け(体は左にみぎ膝は浮かし左膝は下に付く)顔は正面に向け左足を少し後に引き左手の四指をかたなの腰に当て、敵を横に引倒すや右足を正面より右(九十度)に踏み開き肩の高さに右拳を伸ばし(顔は正面に向く)刀を後にはねかえし、みぎあしにて廻り正面に向き乍ら雙手上段に冠り真向に斬込みて納め終ること同前。

此処でも何故「柄頭にて敵の顔面を一撃し」たのか説明はありません、顔面の何処とも言って居ません。昭和17年1942年の河野先生の「大日本居合道図譜」の颪では:浮雲と同様に我が柄を取らんとするを我れ柄頭を敵の顔面に当てる、敵退かんとするを直に其胸部に斬込み右に引倒して上段より胴を斬下して勝つ。 
 動作の解説の中では、柄を敵が取りに来るので、柄を左に逃すや右上方に半円を描く心持にて・・顔面に柄当てするそうです。河野先生の独創かこの辺りも気になる所です。
 そこで昭和13年1938年の山内豊健、谷田左一著「図解居合詳説」の「颪(又山おろしとも云ふ):目的 右側に坐って居る敵が、我に斬り掛かろうとするので、先ず柄頭を以て敵の眼に柄当てを行い、其のひるむ処を胸に斬り付け、更に之を引き倒して、頭上を両断するのである。

 古伝神傳流秘書の教えが抜けだらけなために、昭和になっても夫々の師伝か独創ばかりでした。恐らくどれも指導されてきた名残をとどめながら動作をして来た結果でしょう。どの様な状況に於いても応じられることが出来なければ武術ではないわけで、それぞれの状況下での最善を盡せれば良しでしょう。

以下次号 
 

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2019年10月30日 (水)

曾田本その2を読み解く46行宗先生より中村虎猪氏に授与したる中傳書写46の3長谷川流居合術浮雲

曾田本その2を読み解く
46、行宗先生より中村虎猪氏に授与したる中傳書写
46の3長谷川流居合術
1、浮雲 右脇より我柄を取来る時。

 前回に置いて横雲・虎一足・稲妻の3本について、古伝神傳流秘書・大江居合・細川居合から行宗居合の意義を考えて来ました。今回は浮雲・颪・稲妻の三本を同様に稽古して見ます。

1、浮雲:右脇より我柄を取来る時。
 神傳流秘書:右へ振り向き足を踏みもぢ彳腰をひねり抜付左の手を添へて敵を突倒す心にて右の足上拍子に刀をすねへ引切先を後へはね扨上へ冠り膝の外へ打込み後同前又刀を引て切先を後へはねずして取って打込事も有。
 大江居合:左向き静かに立ち、中腰となりて左足を後へ少し引き、刀を左手にて左横に開き、右手を頭上に乗せて力を入れる、其開きたる状態より左足を右足前方へ一文字となし刀は柄を右手に握り、胸に当て右の下へ抜きつつ体を右へ廻し、刀尖の三寸残りし時、中腰となり右横より左へひねり正面にむけ抜付け折り返して打ち左手の内にて刀峯を押へ伸ばし右手は弓張とし、右左を右斜めへ引き、其膝をつき、敵を引き倒し、直に刀を肩上にてかざし、上段にて正面に直り左斜めを斬る、此時膝頭外にて両手を止む、血拭い刀を納む(敵三人並び一人の敵を置き先の敵を斬る時)。
 細川居合:(右側に座して居る者を斬る)・・立上り、柄諸共左足を前に踏出し(視線は右正面の対手に注ぐ)、体を右へ廻し正面へ向きつつ柄を上げ対手の頭上を越さすようにして刀を前腹へ横たへると同時に左足の裏を上に向け右足の前を越させ足を交叉し、膝頭を左右へ割り腰を下げ刀を右真横へ引抜き切先放れ際に体を左へ捻り正面より左向きとなりつつ対手の胸元へ斜に(切先き上りに手元下りに)抜付け、体を右へ捻り戻しつつ刀の腰に左手の四指を添へ体は正面より右向きとなりながら刀尖を下げ柄頭を右後へ引上げ対手の体を押し倒すなり、右膝を跪き刀尖を上より後へ振返し双手を向へ突出し横一文字に構へ(視線は正面の対手に注ぐ)右膝を正面へ進ませつつ左上段に振り冠り左足を踏出し其脛を少し右へ倒し膝の外側へ(胴体に)斬込み刀を開き納め終る。

 右側の敵が刀の柄を取ろうと手を伸ばして来るのを、柄を左に開き立ち上って外すや、柄を上げて右手を柄に掛け同時に左足を右足前に踏み込み、体を相手に向けるや相手の胸に切先下がりに抜き付ける、左手で刀の棟を押さえ膝を着いて相手を右に押し倒す、刀尖を振り上げて上段に振り冠り左膝の外側に斬り下し刀を納める。ざっとこんな動作でしょう。大江先生の浮雲の動作は、まず敵は右に居並ぶ一人置いて二人目の敵が柄を取りに来るそうです。古伝にはその様な事は掛れていないのに何故そうするのか、古伝の手附と違うより先にその動作が読み取れません。右脇の敵が仕掛けても、其の右隣でも動作は大して変わらない書き方です。一人置いた二人目の敵ならば、一人目を押し退けるか、その前から越して来るかに依ります、越して来るならば我が座した右前から手を伸ばして来る筈です。
 刀を左に開いて敵手を外した時、右手を頭上に乗せる意味が不明です。特に「頭上に乗せて力を入れる」と何の効果があるのでしょう。体を左に捻ってから正面に向けて抜き付ける、軌道は横一線なのか、次の「折り返して打ち」の意味する所も疑問です。大江居合の筆者は大江先生の居合を見て其の動作を記述したであろうと思われ大江先生の監修を受けていたか疑問です。
 大江居合、細川居合とも夫々有効な動作であるならばそれを稽古すればよいのですが、此の業の動作は文章が複雑すぎて手附から稽古するのは厄介です。何故そうするの何故が抜け落ちた手附けといえると思います。当然その道統の方には口伝口授師匠の演武があって演じられるのでしょう。

以下次号とします。 
 

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2019年10月29日 (火)

曾田本その2を読み解く46行宗先生より中村虎猪氏に授与したる中傳書写46の2長谷川流居合術横雲虎一足稲妻

曾田本その2を読み解く
46、行宗先生より中村虎猪氏に授与したる中傳書写
46の2長谷川流居合術

1、横雲  敵の拳へ抜付
1、虎一足 敵先に抜付
1、稲妻  敵の打込拳へ抜付 

1、浮雲  右脇より我柄を取来る時
1、颪   敵抜かけ来る処にて我が右足にて敵の柄をふみおとす心にて胸へ抜付け勝つ
1、岩浪  敵真向にて左の方より我が柄を取んと両手を出す時我柄を左足の方へよぢて敵の胸乳の上へ切先りに突込勝つ

1、鱗返  敵は真向にて抜かんとかまえるか声にてもかくれがたくさままはって抜付て勝つ
1、波返  右同断
1、瀧落  敵我鐺を取り上へおしあげる所を前へたち抜くひょうしに鐺にて當て突く

以上

 前回は初伝として大森流居合、今回は中傳と位置付ける長谷川流居合がこの流の通り相場と言えるのですが、初伝・中傳・奥伝と振り分けた伝書は古伝ではあったのでしょうか。
 さて、それよりも中村虎猪への行宗貞義の中伝授与では大森流と違って業手附が書き込まれています。通常この手の伝書は目録として業名のみなのですがこの様に教えたと云うのでしょう。

 一本づつ、古伝神傳流秘書(曽田本その1)、大江居合(剣道手ほどき)、細川居合(梅本三男著居合兵法無雙神伝抜刀術)と手附を並べてみます。
1、横雲 敵の拳への抜付
 神傳流秘書:右足を向へ踏出し抜付打込み開き足を引て先に坐したる通りにして納める。
 大江居合:正面に座して刀を右へ静に抜きつゝ、三寸残りし時右足を出し、刀尖を抜付け、その姿勢にて上段にて真直に前方を斬る(敵の首を斬る)。
 細川居合:・・(対座して居る者を斬る)右足踏み込んで(対手の右側面へ)抜付け左膝を進ませつつ刀尖を左後ろへ突込み右諸手上段に引冠り、更に右足踏み込んで斬込み、刀を開く・・納刀
* 
 横雲の抜き付けは「拳」と行宗居合は明言しています。どの様な仮想敵の想定なのでしょう。柄に手を掛け抜き出さんとする拳、或いは抜刀して上段に振り冠って打ち込まんとする拳でしょうか。抜付けは現代居合では、敵の害意を察してというあいまいな動機より横一線に抜き放つ抜付けを指導されて細かな演武上の形をとやかく言われています。古伝神傳流秘書はおおらかです、拳とも首とも右側面とも言って居ません。
 状況次第で如何様にも抜付ける様になれと言って居るわけです。従って敵の右側面と大雑把に捉えれば、敵の動きに拘わらず立膝から腰を上げ「抜付けたる拳の高さは右肩の高さにて右前の所にて止る」と稽古の際に教わったものです。相手の身長に依ってこの抜付けでは首などという固定されたところへの抜き付けなど出来るわけはない、そこで相手は我と同体格で同じ様に動作するとありえない事を稽古してきたわけです。現代居合では河野先生は大日本居合道図譜では「敵の抜刀せんとする腕より其の顔面に(首とも胸とも想定可)横一文字に斬付ける」としています。
 行宗居合の「敵の拳への抜付」は動く標的に抜き付ける事を要求しているわけで中村虎猪さんは、出来たのかこれからの道標なのか判りませんが、根元之巻に基づいた「柄口六寸」の勝を見つめるもので、古伝の安易な稽古の大らかさを踏み越える奥義を要求していると思いたいものです。
 柳生新陰流の抜刀の稽古をしています、一人稽古では仮想敵相手に抜刀していますが、相手に小手を着けてもらい、その小手に向かって抜打ち稽古をします。もたもたして居れば頭上に木刀が打ち込まれてきます。

1、虎一足 敵先に抜付け
 神傳流秘書:左足を引き刀を逆に抜て留め扨打込み後前に同じ
 大江居合:静かに立ちながら左足を引きて刀を抜付くと同時に膝をう囲う、此の囲うは体を左向き中腰となり、横構にて受け止める事、此の体形にて刀を上段に冠り正面に向き座しながら斬り下すなり。・・(膝を受け頭上を斬る)。
 細川居合:(向脛へ薙付け来る者を斬る)・・右手を柄に掛けるなり立上り、左足を一歩後へ退く、同時に刀を引抜き(刀尖放れ際に)左腰を左後へ捻り体が左向きとなるなり(相手が向脛へ薙付け来る)差表の鎬にて強く張受けに受け止め、左膝を右足横へ跪きつつ右諸手上段に引冠り更に右足踏込んで斬込み、刀を開き納め終る。

 居合膝に座す処を相手が先に抜付けるのは同様ですが、さて我は坐している時相手は向こう脛に切り付けるなどあるでしょうか。双方居合膝ならば相手は横雲の抜き付けならば、我が拳、首、右側面でしょう。
 此処は双方抜刀せんと右手を柄に掛け立ち上がりながら刀を抜き出す、そこへ相手が先に抜刀して我が向こう脛へ薙付けるでしょう。そうであれば大江居合の「静かに立ちながら云々」は如何にも演舞向けの対敵意識の無い動作と言えるでしょう、それとも我は敵に先んじ敵の抜刀を誘う様に静かに立ちつつ刀を抜きつつするのでしょう。仮想敵を想定する事を怠って稽古したり演武して居る人が居るようです。習った形ばかり気にしていると何をしているのか傍から見ていると直に判ってしまいます。中には修行を積んで仮想敵が見えるようになったなどと意味不明の事を云う人も居たりして思わず吹き出す始末です。
 古伝神傳流秘書は「左足を引き刀を逆に抜て留め」です。「刀を逆に抜き」とは刃を下にして抜くと読めます。刃を上にして抜出し差表の鎬で相手の我が右足脛に斬り込む刀を受止めるのとは違う様に思えます。行宗居合の横雲の「敵の拳への抜付け」が頭を過ります。相手の斬り付けんとする拳へ「刀を逆に抜きて留め」であったならばこれも根元之巻の極意柄口六寸の勝になるでしょう。
 一本目横雲で出来たならば二本目虎一足でも容易でしょう。刀で相手の刀を受け止める受太刀を何時まで稽古しているのでしょう。
 留めた時は斬った時でありたいものです。基本の形から次々に変化をさせ根元之巻の要求事項を押さえたいものです。

1、稲妻 敵の打込拳へ抜付
 神傳流秘書:左足を引き敵の切て懸る拳を払ふて打込み後同前
 大江居合:右足を少し立てながら左足を後へ引き、両膝を浮めて稍左斜へ斬付け、姿勢の儘上段に取り其体より両膝を板の間に着けて斬り落すなり、血拭い刀を納るは1と(横雲)同じ。抜付けは刀尖を高くするを宣とす。(敵の甲手及頭上を斬る)
 細川居合:・・右手を柄に掛け抜きつつ立上がり、右足を出し(或は立上り左足を退きてもよし、対手の右側面へ)抜付け、左足を右足横へ跪きつつ刀尖を左後へ突き込み、右諸手上段に引冠り更に右足踏込んで斬込み刀を開き納め終る。

 現代の無双直伝英信流では大抵、相手は立ったまま抜刀して上段に振り冠って真向に打込んで来る、我は立ち上がり左足を引いてその拳に抜打つとしています。古伝は相手の状況は一言も述べていません。
 現代居合に口伝口授の面影を偲べば、相手は立って真向に打込んで来るだったと云いたい処ですが、古伝の大らかさから深読みすれば、相手が座したまま腰を上げて抜き打って来る、左足を引いてその拳に抜き付けるならばこの業は根元之巻の柄口六寸が見えて来そうです。
 行宗先生はどの様に「敵の打ち込む拳へ抜き付けたのでしょう。細川居合の『右足を出し」は相手はどの様にして掛って来たのでしょう。打太刀を設けて様々な変化を稽古して見ると一本目横雲、二本目虎一足、三本目稲妻は拳に抜き付ける事でそれらの集大成となりそうです。

下次号に・・

 

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2019年10月28日 (月)

曾田本その2を読み解く46行宗先生より中村虎猪氏に授与したる中傳書写46の1大森流居合術

曾田本その2を読み解く
46、行宗先生より中村虎猪氏に授与したる中傳書写46の1大森流居合術

大森流居合術
1、前後左右
1、進退
1、請流
1、介錯
1、順刀
1、勢中刀
1、追懸
1、抜打
以上
右大森流派業数11本にして何の口伝も無く業の起りも業附の書なし

 行宗貞義から中村虎猪へ中傳を伝授したものを写したと思われます。明治39年(1906年)秋8月27日と記載されています。行宗貞義先生は嘉永3年1850年生まれ大正3年1914年64歳で亡くなられています。56歳の時のもので伝書に記載されている署名は「大日本武徳会高知支部居合術講習係行宗貞義」とされています。
 無雙直伝英信流とも無雙神傳英信流居合兵法とも云っていないわけで大日本武徳会高知支部居合術講習係と云っています。然し大森流居合術と明記しているのですからこの中傳の位置づけはどうなるのでしょう。中伝は長谷川流居合術と書かれていて業名は長谷川流の一本目は横雲から始まっています。現代居合も同様です。
 大森流居合術の業名は何処かおかしい。業附き口伝も書き付けたものもない、とあります。古伝神傳流秘書も見た事は無かったのでしょう。
行宗先生自信が目録も授与されていなかったと云えそうです。

大森流居合術
1、「前後左右」は、神傳流秘書では「初発刀・左刀・右刀・當刀」となります。
大江居合では「前・右・左・後」です。大江居合は対敵の配置に対しての業名から道場正面に対し我の座す方向に変えられています。
細川居合では「初発刀・左刀・右刀・當刀」です。
吉宗居合は変な配列ですが、同門の細川居合は神傳流秘書と同じです。
1、「進退」は、神傳流秘書では「陽進陰退」。大江居合では「八重垣」。細川居合は「陰陽進退」
1、「請流」は、神傳流秘書では「流刀」。大江居合では「請け流し」。細川居合は「流刀」
1、「介錯」は、神傳流秘書では「順刀」。大江居合では「介錯」。細川居合は「順刀」
1、「順刀」は、神傳流秘書では「逆刀」。大江居合では「附込」。細川居合は「逆刀」
1、「勢中刀」は、神傳流秘書では「勢中刀」。大江居合では「月影」。細川居合は「勢中刀」。
1、「追懸」は、神傳流秘書では「虎乱刀」。大江居合では「追風」。細川居合は「虎乱刀」。
1、「抜打」は、神傳流秘書では「抜打」。大江居合では「抜き打ち」。細川居合は「抜打。

此処で云う細川居合とは、細川義昌ー植田平太郎ー尾形郷一貫心ー梅本三男と道統される居合で下村茂市系統の居合となります。現代では最も古伝神傳流秘書に近い業名の居合と言えるでしょう。
 下村茂市の同門で細川義昌の弟弟子に当たる吉宗貞義、大江正路は修行半ばで明治維新1868年を迎え十分な指導は受けられなかったかも知れません。
 細川義昌も同様であったとしても、維新前に根元之巻を授与され、島村家の一員として細川家に残された伝書類から想像できる古伝の指導を受けられたと思われます。
 木村栄寿先生の「林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流伝書集及び業手付解説」に記載されている伝書を追ってみます。
 文政4年1821年真傳流居合極意書を山川幸雅から坪内長順が受けています。
 文政10年1827年居合兵法咄を坪内長順から坪内清助が受けています。
 天保7年1836年居合兵法極意巻秘訣を山川幸雅から島村右馬丞が受けています。
 天保2年1831年根元之巻を坪内清助から嶋村右馬丞が受けています。
 万延元年1860年抜刀術童蒙初心之心持を下村茂市から嶋村義郷が受けています。
 慶応2年1866年根元之巻を下村茂市から嶋村善馬(細川義昌の旧氏名)17歳で受けています。
 
 

  

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2019年10月27日 (日)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流立居合と曾田本神道無念流立居合12本目

曾田本その2を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流立居合12剣の業と
曾田本神道無念流立居合12本
12本目

曾田本神道無念流立居合
12本目
(意義)
前進中敵先に抜打をなし敵の之れに応ずるを切り返し倒す也
(動作)
第1、右足より二つ進二歩目左足にて刀を抜き三歩目に敵の正面を切る。
第2、切り返をなす2本目第4動に同じ。
 2本目第4動:両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払流し(此時刀尖は其位置にて左拳を刀尖より稍上ぐ)同時に左手を中心に右肩より冠りつゝ左足を左前に踏み右足を左足の後に引き敵の右肩より八相に切下ぐ。
第3、納刀
刀の納め方
1、前の足を後足に引き付ると同時に刀を左肩に擔ぐ如く持ち来り左手は鯉口を持ち鞘を正しくす。
2、左手の拇指と食指とにて「ハバキ」の近くを挟み右手の拇指は縁頭の近くを其の他の指は下より鍔及び柄を持つ
3、左足を後方に一歩引くと同時に右手を以て刀身を前下方に引き刀尖を鯉口の処に持ち来る。
4、右足を左足に引付つゝ刀身を鞘に納める。

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」立居合12剣の業
12本目
三歩前進正面打込、霞切返し、納刀
前敵抜付 歩行中、左足が前に出たとき刀に右手をかけ頭上に抜刀、右足を踏み出して諸手で前敵の正面に打込む。
霞切返し 前に同じ。
 前は2本目霞切返し:またしても敵が反撃して来る気配に一歩進めて霞に攻める。敵は我の正面を打って来るので、左足を左斜前に踏み出し、切返しのごとく敵刀を右にすり落し、刀を右から頭上に回転させ、右足を左足の後方に引くと同時に左斜上段から敵の右肩に強く袈裟に打込む。
 霞の構えが立居合では記載されていません。
 刀法の終りに霞の解説がありますのでそれを採用して見ます。右足前で水月迄切り下ろした後ですから、右霞で良いでしょう。
 右霞:刀柄を握った右手の甲を下に左手の甲を上にして刀刃を左にし、切先を前敵に向ける。 
 曾田本の構えと同じ様ですが、刀刃の向きが曾田本は上、長州藩相伝は左と異なります。
 此の構で、敵が我が頭上に打ち込んで来るのを払い受ける様にして摺り落すのでしょう。
納刀 前に同じ
 1本目納刀:正眼に構えてから、切先を敵の胸元、喉元、眉間の高さにと徐々に前に大きく円を描くように出し、残心を示しながら右足を左足に引き揃えて刀身を左肩にとり、左手は鯉口を握り僅かに鞘を引き出す。刀身は肩にとったまま鎺を鯉口を握った左手の人差指に支える。と同時に、左足を右足の後方に引き、右手の柄を前下に伸ばし刀背を引いて切先を鯉口に入れ、ゆっくりと刀身を鞘に納める。左足を右足に引き揃え、直立して右手を柄から放し、左手は親指を鍔にかけて当初の演武の位置に復する。なお、各業とも納刀の動作は同じであるが、逆足(左前足)で終了した場合(2、3、8、9、12本目)は左足を右足の後方に引き納刀する。

 神道無念流立居合12本の最終です。
 曾田本の12本目の意義の書き出しは「前進中敵先に抜刀をなし」とあります。敵は前進しながら我より先に抜刀して、(正眼に構え)前進して来るわけで、之に応じて右足、左足と進めて刀を上に抜き上げ上段に振り冠って敵の正面に右足を踏み込んで打込む。
 敵之を外し、上段に振り冠って打ち込まんとするを、我切先を敵の左目に付け(水月まで打込んだ切先を)、左霞の構えとなり、敵が真向に打込んで来るや左手を稍々高く刀刃を上に向け敵刀を受け払う様に右に受け流す。
 同時に左足を左斜め前に踏み込み刀を右肩から振り冠リ、右足を左足の後方に引くや左から敵の右肩に逆袈裟に打ち込む。


 神道無念流立居合12本の曾田本と長州藩相伝を並べて、曽田本の出典を求めたのですが、曾田本との違いもいくつかあっても曾田本の立居合12本は、西日本の何処かの手附、若しくは明治以降に曽田先生が神道無念流の誰かから指導されたメモ、又は神道無念流伝書を写されたものでしょう。

 木村高士先生の長州藩相伝神道無念流には、長州藩相伝に依る神道無念流立居合の大村藩無念流立居合業手付が掲載され長州藩無念流との違いを述べられています。其の外に戸賀崎宗家に依る神道無念流12本が記載されています。堂本明彦編著の「中山博道剣道口述集」には立居合初伝10本、上伝20本が納められています、いずれそれらを読み込んで曾田本の神道無念流を稽古して見たいと思います。

 曾田本その2にある「神道無念流立居合12本」の出処が判りません、曾田本にあります神道無念流立居合12本についてをご存知でしたら御教示いただきたいと思います。 

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2019年10月26日 (土)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合11本目

曾田本その2を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流立居合12剣の業と
曾田本神道無念流立居合12本
11本目

曾田本神道無念流立居合
11本目
(意義)
大体10本目に同じなるも、敵退却せず打却て敵に追い詰められ後退しつゝ敵を切り倒す也、
但し最初停て居るにあらず前進中敵に出会たるものとす。
(動作)
第1、右足より前進中右足の地につくや僅かに後退して抜刀(1本目第1動に同じ)
 1本目第1動:右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此時左手で鞘を前方に出す気持を加え後方に振り上げ上体を左斜にして十字形をなし左足は右足につれ前方に送り左足先を右踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、1本目第2動、第3動に同じであるが、右足より後退しつゝ行くのが異て居る。
第3、右同じ
第4、10本目第4動、第5動に同じ。
第5、右同

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」立居合
11本目
後退切上げ、後二足一刀正面打込、正眼二歩攻右上段、納刀
前敵抜付 進行中、右足が床につくと同時に、素早く左足を右足の後方に引き前敵の右肘を切上げる。(抜付の要領は1本目と同じ。)
後退打込 尚且、敵が追い込んで来るので、右、左と二歩後退しながら上段に冠り、右足を踏み出して正面に打込む。
攻入残心 正眼に構えて、左足から二歩攻め入り、右上段となって残心気迫を示し、ゆっくりと正眼の構えに復する。
納刀 前に同じ

意義から、曾田本も長州藩相伝も「後退して抜刀」「後退切上げ」ですから、進行中敵の害意を察し右足、左足と踏み出し刀を抜き出し、右足を左足の僅か前に踏み込み揃え右足が地に着くや左足を右足の後方に引いて、敵の右前肘に下から抜き付ける。所謂足の踏み替えで抜刀して見ました。此の方法が敵の攻めに対して容易に間を維持して尚且つ、剣先に威力を持たせる事が出来ます。
 敵怯まずに猶攻め込んで来るので、右足を左足に引付左足を一歩引いて上段に振り冠り、右足を踏み込んで敵の真向正面に打込む。
 尚も敵前進して来るので右足を左足に引付、左足を引いて上段に冠り、右足を踏み込んで敵の真向に打込む。此処は長州藩相伝では要求していませんが曾田本は下から切り上げ、退いて真向打込み、更に引いて真向打込みを要求しています。
 正眼に構え、次に右上段となって残心、納刀。
 敵の攻め込に後退して切り込む、足運びは、敵の詰めに依る間合いに依って対応すべきもので、一人演武の居合では特に無双直伝英信流などは克明に指定されますが、いかがなものでしょう。

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2019年10月25日 (金)

第23・24回土佐の居合 古伝神傳流秘書による古伝研究の集い

土佐の居合 古伝神傳流秘書による古伝研究の集い

第23回・24回古伝研究の集い
無双直伝英信流、夢想神傳流の古伝神傳流秘書を曽田虎彦先生の直筆本から読み解いて江戸時代中期の居合を研究しています。
今年は主として大小詰・大小立詰を研究して居ります。
師伝が如何様であろうとも、古伝をご存知の方は少ないものです。
たとえご存知であっても古伝神傳流秘書に書かれている通りに演じる方は少なく、他流を持ち込んで結果だけで良しとしたり、経年の中で曲げられたりしているものです。
ご参加いただいた方が、夫々「我が師」であることをご理解戴き、ご自由な意見を出され共に学ぶ研究会です。
武術はともすると「俺の考えに従へ」という傾向があります、ここでは出来る理由も出来ない理由も研究の対象となります。
 記
1、期日
◎23回
・令和元年11月14日(木)
 15:00~17:00 鎌倉体育館
・令和元年11月28日(木)
 15:00~17:00 見田記念体育館
◎24回
・令和元年12月1212日(木)
 15:00~17:00 見田記念体育館
 12月は1回のみ
2、住所
見田記念体育館
248-0014鎌倉市由比ガ浜2-13-21
TEL0467-24-1415
鎌倉体育館
248-0014鎌倉市由比ガ浜2-9-9
TEL0467-24-3553
3、アクセス
 JR横須賀線鎌倉駅東口下車徒歩10分
(駐車場 鎌倉体育館に有り)
 4、費用:会場費等割勘つど 500円
5、参加申込み 直接会場へお越しください
 Email:sekiun@nifty.com(何かあれば)
6、研究会名:無雙神傳英信流居合兵法
 湘南居合道研修会 鎌倉道場
7、御案内責任者:ミツヒラこと松原昭夫
 令和元年8月25日 松原記す

 

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曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合10本目

曾田本その2を読み解く
45長州藩相伝神道無念流立居合12剣の業と
曾田本神道無念流居合立居合12本
10本目

曾田本神道無念流立居合
10本目
(意義)
敵に接し居る時敵刀を抜かんとするに対し動作するも敵退きたるにより之を追詰めて切り倒す也
(動作)
第1、右足を踏み出すと同時に抜刀敵の右前肘を切る、1本目第1動同
 1本目第1動:右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此時左手で鞘を前方に出す気持を加え後方に振り上げ上体を左斜にして十字形となし左足は右足につれ前方に送り左足先を右踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、左足より二歩進み正面を切る。
第3、次に青眼のまゝ突き付けながら二歩進む。
第4、次に上段にて残心を示し
第5、青眼に直り納刀。

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」立居合
10本目
其場切上げ、前二足一刀正面打込み、中段二歩攻右上段(残心)、納刀
前敵抜付 前方の敵に充分接近して下方から肘に抜付ける。(歩行中でもよし、抜付は1本目に同じ。)
 1本目前敵抜付:右足より三歩進めて間に入る。前敵が我に抜刀しようとするので、左足が前にでたとき、(二歩目)刀の柄に右手をかけ、右足が出ると同時に前方の敵の右肘を下方より逆袈裟に切上げる。右手は切手で拳は相手の肩の高さとする。
前敵打込 敵が後退するので左、右足と二足一刀に追込んで正面に打込む。
攻入残心 正眼に構えて、左足から二歩攻め入って刀を上段に構え、気迫を込めて残心を示し、ゆっくりと正眼の構えに復する。
納刀 前に同じ。

 曾田本と長州藩相伝とはさして違いは無いでしょう。但し一刀目の敵前肘に切り上げる際、曾田本は右左右と歩み乍ら攻め込んでいます。長州藩相伝は「其場切上げ」と言って居ますから、敵が前進して来るのを、自然体で待ち受け、敵が抜かんと右手を柄に掛けた瞬間に、右足を踏み込んで下から敵の右前肘に抜き付けるのでしょう。然し手附では「前方の敵に充分接近して下方から肘に抜き付ける」と言って居ます。その後に括弧付きで(歩行中でもよし、抜付けは1本目と同じ)とありますから、ますます混乱します。状況に応じて想定しなさいと云うのでしょう、あるいは神道無念流にしか通用しない文言かも知れません。我が下よりの切り上げが浅いか、瞬時に敵に外され敵が左足右足と後退するのを、右足に左足を引き付け上段に振り冠右足を踏み込んで敵の真向に切り下す。此処の足捌きも拘らず敵との間を切らない様に詰めていく事が剣術の嗜みでしょう。足捌きに拘ればただの形になってしまいます。
 次に、水月まで切り下ろしたまま、敵が更に後方に引くのを左足右足と攻め入って、敵が戦意を失って倒れるのを上段に振り冠り、気迫を込めて残心を示し、ゆっくりと正眼に戻し、納刀する。
 
 

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2019年10月24日 (木)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合9本目

曾田本その2を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流立居合12剣の業と
曾田本神道無念流居合立居合12本
9本目

曾田本神道無念流居合
9本目
(意義)
敵の抜かんとする前肘を切るも(1本目に同じ)敵之れを弛し我胴を切り来るに対し体を変し切り倒す也
(動作)
第1、1本目第1動に同じ
 1本目第1動:右足より前進し二歩目右足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此時左手で鞘を前方に出す気持を加え後方に振り上げ上体を左斜んいして十字形をなし左足は右足につれ前方に送り左足先を右踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、上段のまま右足より二歩退き次に鎬を以て敵刀を下方に押へ、敵我胴を切り来るを防ぐ如く刀を体の右前下方に持ち来る此の時右足を左足先に引き付くる。
第3、次に青眼に直りつゝ少し前進す此の時左足は右足につく如く送り敵を襲う気持なり。
第4、次に切り返しをなす二本目第4動に同じ
 2本目第4動:両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払流し(此の時刀尖は其位置にて左拳を刀尖より稍上ぐ)同時に左手を中心に右肩より冠りつゝ左足を左前に踏み右足を左足の後に引き敵の右肩より八相に切下ぐ
第5、納刀 

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」立居合
9本目
切上げ、二足後胴打下し、中段一歩攻、霞切返し、納刀
前敵抜打 前方の敵に下方から抜付ける。(1本目と同じ。)
 1本目前敵抜付:右足より三歩進めて間に入る。前敵が我に抜刀しようとするので、左足が前に出た時(二歩目)刀の柄に右手を掛け、右足が出ると同時に前方の敵の右肘を下方より逆袈裟に切上げる。右手は切手で拳は相手の肩の高さとする。
請抑 前敵は身を転じて我が胴を打って来るので、右足から二歩後退しながら左回りに刀を上段に冠り、敵の刀を刃をもって右前下に打払う。
青眼攻め 正眼に構えて一歩攻め入る。
霞切返し 前に同じ
 2本目霞切返し:またしても敵が反撃して来る気配に一歩進めて霞に攻める。敵は我の正面を打って来るので、左足を左斜前に踏み出し、切返しのごとく敵刀を右にすり落し、刀を右から頭上に回転させ、右足を左足の後方に引くと同時に左斜上段から敵の右肩に強く袈裟に打込む。
納刀 前に同じ

 曾田本神道無念流は、仕太刀の動作だけで、打太刀の動作が見えにくい。仕太刀の動作から打太刀の動きを判断して対応することを意図しているのでしょう。居合は仮想敵相手の攻防ですからそれもそうかです。ちなみに組太刀では神道無念流は打太刀は「元」、仕太刀は「掛」と呼んでいます。
 前敵が抜刀しようとするので、我は、右足左足と前進しその機先を制して敵の前肘に下から抜き付けに切り上げる。
敵は我が切上げを左足を引いて柄を上に刀を抜き上げ外し上段に冠り、我も外されて上段に振り冠る。
敵は右前に転じて我が左胴を打って来る、我は右足左足と後退しながら上段から右前下に敵刀を鎬を以て我が右前下に打ち払う。長州藩相伝では刃を以て右前下に打ち払う。
我は青眼に構え右足を一歩進め、左足を右足に送る。
敵攻め込まれて左足から一歩後退し上段に振り冠り、我が真向に打ち下ろさんとする、我は右霞に構る処、敵我が頭上に右足を踏み込んで打ち込んで来るのでそれを払流し同時に左足を左前に踏み込み右足を左足の後に踏み替え、右肩から刀を振り冠り、逆八相に敵の右肩から切り下す。
 曾田本と長州伝をミックスさせてこの業を演じて見ました。

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2019年10月23日 (水)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合8本目

曾田本を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流居合と
曾田本神道無念流居合立居合12剣の業
8本目

曾田本神道無念流居合立居合
8本目
(意義)
勉めて敵に接して抜打するも敵後退するにより追詰めて切倒す也
(動作)
第1、其場にて抜刀右足一歩出し正面を切る。
第2、左足より二歩前進して切る。
第3、2本目第4動の如く切り返し、
 2本目第4動:両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払流し(此の時刀尖は其位置にて左拳を刀尖より稍上ぐ)同時に左手を中心に右肩より冠りつゝ左足を左前に踏み右足を左足の後に引き敵の右肩より八相に切下ぐ
第4、納刀

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」立居合
8本目
其場抜刀右足前正面打、二足一刀正面打込、霞切返し、納刀
前敵打込 前方の敵を充分に引つけて、その場で頭上に抜刀し、右足を踏み出して正面を打つ。更に敵が後退するので二足一刀に追込み正面に打込む。
霞切返し 前に同じ
 この場合の「前に同じ」では7本目になってしまうので、此処は2本目の霞切返しです。
 二本目霞切返し:またしても敵が反撃して来る気配に一歩進めて霞に攻める。敵は我の正面を打って来るので、左足を左斜前に踏み出し、切返しのごとく敵刀を右にすり落し、刀を右から頭上に回転させ、右足を左足後方に引くと同時に左斜上段から敵の右肩に強く袈裟に打込む。
納刀 前に同じ

 この8本目は曾田本の神道無念流居合と長州藩士相伝神道無念流居合共に同じ様に演ずると読めます。しかし文章上は双方とも抜けが有って取り敢えず無双直伝英信流居合の業技法を駆使して演じてみます。
 曾田本「其場にて抜刀右足一歩出して正面を切る」、長州藩相伝「其場抜刀右足前正面打」で雰囲気は同じです。曾田本の正面を切るはどの様にするのか指定されていませんから、立姿は左手鍔、右手を柄に掛け、右足を稍々前に左足爪先を右足土踏まず附近に左斜めに向けて立つ。
 此処で、ハタと困ったのは敵が刀を何時抜くのかが読めない、敵は抜刀して青眼に構えて間境を超す、我は立位置のそのまま、柄を上に向け刃を左に正中線上を抜き上げ右手を返して上段に振り冠り左手を柄に掛けるや左足を踏み込み敵の正面を喉元迄打つのが長州藩相伝、曾田本は床上一尺迄切り下ろす。
 敵我が真向打ち込み後方に出足を後足の後方に引いて外す。我は空を切って即座に左足を右足に引き付け上段に振り冠り、右足を踏み込んで敵の真向に切り下す。ここは長州藩相伝も床上一尺膝の高さまで空を切る。
 敵再び二足後方に引いて之を外すや上段に振り冠り、またしても敵反撃して来る気配に右足を一歩進めて、青眼に構え、其の刀尖を敵に向けたまま、両手で右手甲を下にし、左手甲をうえにして刀刃を上にし(又は左向き)左手を稍々高くして霞に構える。
 敵真向に打ち下ろして来るのを刀刃を以て右に払い流し、刀を右から頭上に回転させ、左足を左前に踏み込み右足を左足の後方に踏み替えるや左上段から敵の右肩に逆袈裟に切り下す。上段に構え、残心、納刀(前に同じ)。

 敵の抜刀は二度我に切り込まれてからでも、抜刀して青眼に構えて接近して来る、青眼が上段でもいいでしょう。仮想敵の動作を我が動作から逆に想像して演じてみると、敵の抜刀や打ち込みに依って間が開く可能性もあるので、その状態で拍子を工夫しませんと間抜けな一人演武になりそうです。

 

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2019年10月22日 (火)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合7本目

曾田本その2を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流立居合12剣の業と
曾田本神道無念流居合立居合12本
7本目

曾田本神道無念流立居合
7本目
(意義)
前方右方の敵に対する動作(6本目に同じ)
 7本目(意義):前方右(6本目は左)方の敵に対するも右(左)方の敵、最初我に近寄り過ぎた為めに進出して切ること能わず、従て其場に於て切り、次で敵後に倒るゝを以て其侭進んで残心を示す。
(動作)
6本目と替ることなし、左方と右方との違なるのみ。
 7本目動作:
第1、1本目第1動に同じ
 1本目第一動:右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此時左手で鞘を前方に出す気持を加へ後方に振り上げ上体を左斜にして十字形をなし左足は右足につれ前方に左足先を右踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、左(6本目は右)足を軸とし右(左)向となり右(左)正面を切る。
第3、次に左(右)足を右(左)足に揃へ上段となり左(右)足にて切る。
第4、次に中段の侭右(左)より二歩進み、
第5、上段の残心を示し。、
第6、青眼に直り納刀。

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」立居合
7本目
切上げ、右足前右正面打、右足前同正面打込、中段(正眼) 二歩攻右上段、納刀。
前敵抜付 前方の敵に抜付ける。(一本目に同じ)
 一本目前敵抜付:右足より三歩進めて間に入る。前敵が我に抜刀しようとするので、左足が前に出たとき(二歩目)刀の柄に右手をかけ、右足が出ると同時に前方の敵の右肘を下方より逆袈裟に切上げる。右手は切手で拳は相手の肩の高さとする。
右敵打込 接近している右敵に、右足を軸に右に向きながら左足を右足の後に引き、刀を上段に冠り、右敵の正面を打つ(打つとは相手の咽の高さまで斬る)。更に、右足を左足に引き揃えて刀を上段に冠り、右足を踏み出して右敵の正面に打込む(右打込むとは水月まで斬り下す)。
残心 正眼に構えて、左、右足と二歩攻め入り、右上段となり気迫をもって残心を示し、ゆっくりと正眼の構えに復する。
納刀 前に同じ
この業は6本目が左右前後したものである。

 長州藩相伝神道無念流立居合の6本目は敵は前・左でした、7本目は敵は前・左、敵の立ち位置は左・右と異なりますが同じだと云います。従って前敵の右前肘を下から切り上げて倒し、左足を軸に右に向き右敵を切るのです。
 右敵が近いので左足を引いて間合いを調節して右敵の真向を咽まで切り。更に右足を後ろに引いた左足に引き揃えて上段に振り冠り、右足を踏み込んで右敵の水月迄切り下ろす。
 右敵が倒れるや正眼に構え、左右と二歩攻め入り、右上段となって残心。此の場合左右と二歩攻め入ると、右敵への一刀目の切り込みが一歩引いて斬っています。二刀目も右足を引いて左に踏み揃えて間を切ったのですが、また右足を踏み込んでますから、一刀目の位置に敵が立っているのに切り込んだことになります、小さく前進しませんと右敵を踏み越えてしまいそうです。其れか右敵は後ろに倒れたのでしょう。

 曾田本は足裁きを指定していませんので、6本目の左敵を切った足捌きでもいいのですが、敢えて稽古として7本目は6本目の足捌きの逆で応じて見ました。
 前敵の右前肘を右足を踏み込み下から切り上げ、左足を追い足に右足に引き付け、左足を軸に右敵に振り向き上段となるや右足を引いて右敵の正面を切る。
 次に左足を右足に揃え上段となって、左足を踏み込んで右敵の正面を再び切る。
 次に中段となって右足左足と二歩進み上段残心、青眼に直り納刀。
 6本目と違って居る所は、6本目は右敵を切るのに、後に下がって二度斬りましたが、今回の7本目は一刀目は下がり、二刀目は下って上段に構え直し踏み込んで右敵を切る事にしてあります。長州藩相伝にあわせてあります。長州藩相伝は掛れている侭演じることになりますが、曽田本は抜けが有るので、其の抜けた部分は読んだ者の力量次第でいいのでしょう。
 流派の奥義を伝える場合は明確に書き記すべきで、謎解きにしてしまえば、後世の者は如何様にも解いてしまい本物が見えなくなるものです。

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2019年10月21日 (月)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合6本目

曾田本その2を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流立居合12剣の業と
曾田本神道無念流立居合12本
6本目

曾田本神道無念流居合立居合
6本目
(意義)
前方左方の敵に対するも左方の敵、最初我に近寄り過ぎた為めに進出して切ること能わず、従て其場に於て切り、次で敵後ろに倒るゝを以て其侭進んで残心を示す。
(動作)
第1、1本目第1動に同じ。
 1本目第1動:右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此時左手で鞘を前方に出す気持を加へ後方に振り上げ上体を左斜にして十字形をなし左足は右足につれ前方に送り左足先を右踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、右足を軸とし左向となり左正面を切る。
第3、次に右足を左足に揃へ上段となり右足にて切る。
第4、次に中段の侭左足より二歩進み
第5、上段の残心を示し
第6、青眼に直り納刀。

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」立居合
6本目
切上げ、左足後左正面打、右足前同正面打、中段(正眼)二歩攻右上段、納刀。
前敵抜付 前方の敵に抜付ける。(1本目に同じ)。
 1本目前敵抜付 右足より三歩進めて間に入る。前敵が我に抜刀しようとするので、左足が前に出たとき(二歩目)刀の柄に右手をかけ、右足が出ると同時に前方の敵の右肘を下方より逆袈裟に切上げる。右手は切手で拳は相手の肩の高さとする。
左敵打込 接近している左敵に、右足を僅かに引き右足を軸に左に向きながら左足を右足の後方に引き刀を上段に冠って左敵の正面を打つ。更に、右足を左足に引き揃えながら刀を上段に冠り、右足を踏み出して左敵正面に打込む
残心 正眼に構えて、前方に倒れる敵に左足から二歩攻め入り、右上段に構え気迫を込めて残心を示す。上段からゆっくりと正眼の構えに復する。
納刀 前に同じ
*
 曾田本の6本目は文章に抜けが有るのか、動作が解りずらいのですが、前に稽古していますからもう一度振り返ってみます。敵を前と左に受けての攻防です。
 右足左足と踏みこみ右足を踏み込むや前敵の抜き付けんとする右前肘に下から逆袈裟に切り上げ左足を右足踵に引き付け、右足を軸に左に向き上段に振り冠るも、左敵接近し過ぎているので、足を後方に引いて左敵の正面に切り下す、右足を左足に引き揃え上段に振りかぶるが、更に左敵攻めて来るので左足を後方に引いて、右足前で左敵の正面に切り下す、左敵後方に倒れるので、切り下ろした中段のまま左足右足と二歩進み、上段に冠り残心、青眼に直り納刀。

 この曾田本神道無念流立居合6本はのミツヒラによる無双直伝英信流の振り付け動作はこの様にします。

 木村高士先生の長州藩相伝神道無念流居立居合12剣の業6本目は、曾田本同様に右足を踏み込んで前敵の右肘に逆袈裟に切り上げます。其の時曾田本では左足を右足踵に添へ足捌きに引き付ける様な文章ですが、ミツヒラは切り上げてから一拍子遅れて左足を右足に引き付けます。
 長州藩相伝では、右足を踏み込み前敵の右肘に切り上げてから、右足を僅かに引くのであって、左足を送り足していません。

 右足を軸に左に曾田本も長州藩相伝も左敵に振り向き、左敵が接近し過ぎているので曾田本、長州藩相伝共に左足を引いて左敵之正面を切る。

 次に曾田本は右足を引いて左足に踏み揃え左足を引いて左敵の正面に斬り下す。長州藩相伝では同じく右足を左足に揃へ右足を踏み出して左敵の正面に斬り下す。立ち位置の軸が曾田本は更に下がり、長州藩相伝は前に出るわけで此の場合は左敵は正面を切られて後ろに下がる処を踏み込まれて斬られる。両方共右足前となります。

 中段のまま左右と二歩前進し上段残心、青眼に直り納刀。

 

 

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2019年10月20日 (日)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合5本目

曾田本その2を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流立居合12剣の業と
曾田本神道無念流立居合12本
5本目

曾田本その2神道無念流居合立居合
5本目
(意義)
前右左の敵に対する動作なり。
(動作)
第1、1本目1動に同じ
 1本目1動:右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此時左手で鞘を前方に出す気持を加へ後方に振り上げ上体を左斜めにして十文字形をなし左足は右足につれ前方に送り左足先を右踵に接する)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、左足を軸とし右の敵の正面を切る
第3、左足を軸とし廻れ左をなして右足を一歩出して左の敵の正面を切る納刀

木村高士著「長州藩相伝神道無念流居合」立居合
5本目
切上げ、右正面打込、左正面打込、納刀。
前敵抜付 前方の敵に抜付ける。(1本目に同じ)
 1本目:前敵抜付 右足より三歩進めて間に入る。前敵が我に抜刀しようとするので、左足が前に出た時(二歩目)刀の柄に右手をかけ、右足が出ると同時に前方の敵の右肘を下方より逆袈裟に切り上げる。右手は切手で拳は相手の肩の高さとする。
右敵打込 左足を右足の半歩前に出し左足を軸にして体を右に回しつつ刀を上段に冠る。右敵に向かって右足を踏み出し右正面に打込む。
左敵打込 更に、右足を軸にして左に回り、左上段から右足を踏み出して左敵の正面に打込む。
納刀 前に同じ

 一刀目の前敵に対する下からの切上げは神道無念流以外にも見られる動作です。2刀目の右敵へ打込む際の足捌き「左足を右足の半歩前に出し左足を軸にして体を右に回しつつ刀を上段に冠る」右敵に向かって右足を踏み出し右敵の正面に打込む。その時の左足を右足の半歩前に出す」足捌きは右敵の立ち位置次第ですが、曾田本は前敵を下から抜打ちし、その踏み込んだ右足の後方にある左足を抜付けと同時に右足に送り足に右足踵に引き付けてその左足を軸に右へ振り向くのです。足裁きで右敵との間を調節するわけですが、右敵の位置も常に一定では無いのでどちらも稽古すればいいと思うし、左足を送らずに右に向くのも相手次第でしょう。
 左の敵を切る時は右足軸にしていますが、これは右敵に切り込んだ時の右足の位置で軸となっています。長州藩相伝が左足の捌きに拘った意味は特に解説されていませんが、無双直伝英信流に無い稽古ですから参考にさせていただきその意味を味わってみるとします。

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2019年10月19日 (土)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合4本目

曾田本その2を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流立居合12剣の業と
曾田本神道無念流立居合12本
4本目

曾田本神道無念流居合立居合
(意義)
前進中敵後より来り鐺を取られ続いて前方よりも敵切り掛り来るのに対する動作なり。
(動作)
第1、右足より前進中左足にて上体を前に懸け右手にて刀柄を下より握り(此の握り方は拇指は上方にその他の指は下方にす)腰を左方に廻し刀を抜く。
第2、上体を其侭とし左上膊の左側に刀刃を左斜上方にして後方の敵を刺す。
第3、柄に左手を添へ刀刃上方に刀尖を前方に向け踏み出して前方の敵を刺す左足を送るなり。
第4、右足を後に引くと同時に刀を右脇に刀身を水平にして後方の敵を刺す。
第5、柄を持ち替え右足を一歩出して正面を切る。
第6、左足を軸とし左に廻り右足より一歩進み後方の敵の正面を切り納刀。

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」立居合12
右手後突、諸手前突、諸手後突、前正面打込、後正面打込、納刀
逆手抜刀 歩行中、後方の敵が鐺を捉えるので、右足が前に出たとき、前敵に気を強く配り、体の重心を少し前にかけ、右手をもって逆手に柄を握り、前敵を圧しつつ前方に刃を上にして低く抜刀する。
後敵刺突 後敵に眼を注ぎ、刃を上にして切先を後敵に向け、刀身は左上膊部に支え、左手は鯉口を握ったまま、その場に突刺す。
前敵刺突 直ちに、右手は逆手のまま手首を返し、切先は下回りに刃は上に向け、刀身を体の前に来るように操作する。右手は本手に持ちかえ、左手を柄に添えて右足を踏出し前敵を突刺す。
後敵刺突 突いた刀は刃を上にしたまま、右手は再度柄を逆手に握って切先を後敵に向ける。右足を後に引きながら左手は手掌を柄頭に宛て、刀身は左脇下に支え、すり足で一歩後退して後敵を突刺す。
前敵打込 顔を前敵に向ける。右手は逆手から本手に持ちかえながら諸手で左上段に冠り、右足を踏み出して前敵の正面に打込む。
後敵打込 左回りに後方に向き上段に構え、右足を踏出して後敵の正面に打込む。
霞切返し 前に同じ:またしても敵が反撃して来る気配に一歩進めて霞に攻める。敵は我の正面を打って来るので、左足を左斜前に踏み出し、切返しのごとく的刀を右にすり落し、刀を右から頭上に回転させ、右足を左足の後方に引くと同時に左斜上段から敵の右肩に強く袈裟に打込む。
納刀 前に同じ

  曾田本の神道無念流居合の4本目は、第6、「左足を軸とし左に廻り右足より一歩進み後方の敵の正面を切り納刀」で終わっています。長州藩相伝では、正面を切られた後敵は反撃して上段から切込んで来る。我は之を霞切返しに依って外すや右肩に斬り込むのです。動作が一式多いわけです。
 前敵刺突の際、曾田本では右手を本手(順手)に持ち替えませんが、長州藩相伝では持ち変えて左手を添えて刺突します。次の右側から後敵を刺突する際には、再び右手を逆手に持ち替え、左手は柄頭に手のひらを宛てて刺突します。更に前敵の正面二打込む際には再び本手に持ち替えます。稽古ではどちらも出来るように稽古して置けばいいのですが、曾田本の省略した右手の持ち替え、霞切返しは何処かで抜け落ちたのかなのでしょう。
 

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2019年10月18日 (金)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合3本目

曾田本その2を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流立居合12本12剣の業と
曾田本神道無念流立居合12本
3本目

曾田本神道無念流居合立居合
(意義)
前進中後方より敵来を呼ぶにつき二回追詰切る也
(動作)
前進中左へ振り返り右足を踏出し敵の右肘を抜打ちに切り次に左足を踏み込みて切り右足にて更に切り込む也、続いて二本目第4の如く体を転じ切り返しをなす、次に納刀。
二本目第4:両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払流し(此の時刀尖は其位置に置き左拳を刀尖より稍上ぐ)同時に左手を中心に右肩より冠りつゝ左足を左前に踏み右足を左足の後に引き敵の右肩より八相に切下ぐ。

木村高士著「長州藩相伝神道無念流居合」立居合
後方切上げ、二足一刀正面打込 霞切返し 納刀。
後敵抜打 歩行中、後方より敵が我に抜刀しようとするに先駆け、右足が前に出たとき、刀の柄に右手をかけ左足を軸に後に方向転換し、右足を踏出して後敵の右肘を下方より抜付ける。(抜付の要領は一本目と同じ。)
一本目抜付:右足より三歩進めて間に入る。前敵が我に抜刀しようとするので、左足が前に出たとき(二歩目)刀の柄に右手をかけ、右足がでると同時に前方の敵の右肘を下方より逆袈裟に切上げる。右手は切手で拳は相手の肩の高さとする。
後敵打込 後退する敵を二足一刀に追って、刀は左廻りに上段に冠り正面に打込む。
霞切返し 前に同じ
二本目霞切返し:またしても敵が反撃して来る気配に一歩進めて霞に攻める。敵は我の面を打って来るので、左足を左斜め前に踏み出し、切返しのごとく敵刀を右にすり落し、刀を右から頭上に回転させ、右足を左足の後方に引くと同時に左斜上段から敵の右肩に強く袈裟に打込む。
納刀 前に同じ

神道無念流立居合3本目は敵が後ろより来て切ろうとするのを察して、左足を軸に左回りに振り返って右足を踏出して敵の右肘に下から抜き付け、敵怯んで後退するのを追って左足を踏み込み上段から切り下し、更に右足を踏み込んで上段から切り下す。敵反撃せんと上段に振り冠るので霞の構えとなって、敵打込むや霞の構えから敵刀を払い流し、同時に左足を左前に踏み込み右足を左足の後方に引き付け右肩より上段に振り冠って敵の右肩より八相(逆八相)に切り下す。
一本目二本目との違いは後方に振り向く動作と云う事になる様です。振り返って敵の右肘を切り上げ、退く敵を追い込んで二度切り下ろす際敵は体を退いて外すのでしょう、受け太刀になる動作は手附に見られません。我は空振りして上体を前に屈したりたたらを踏むことなど、無双直伝英信流の大江居合の居合道型に見られる動作は見られません。
 通常の居合の稽古でも打込む態勢は崩さず、居付かず即座に変化できる心掛けが望まれます。

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2019年10月17日 (木)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合2本目

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と
曾田本神道無念流立居合12本
2本目

曾田本神道無念流立居合12本
(意義)
敵我正面を切り来るを以て払ひ流し体を左前方に替し敵の右肩より切り下ぐ
(動作)
第1、1本目の第2動に同じ
 一本目第2:次に右手を左肩より振り冠り左手を添へ右足を一歩引き敵の正面を切る。
第2、上段より右、左と二歩退き敵の正面を切る。
第3、左足より二歩前進し敵の正面を切る。
第4、両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払流し(此の時刀尖は其位置にて左拳を刀尖より稍上ぐ)同時に左手を中心に右肩より冠りつゝ左足を左前に踏み右足を左足の後に引き敵の右肩より八相に切下ぐ。
第5、次に納刀

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」立居合2本目
 敵の右肩から八相に切上げ、二歩後正面打、二歩前正面打込、霞切返し、納刀
前敵抜付 前方の敵に抜付けるまでの動作は一本目に同じ
前敵打込 前進して来る敵に右、左足と二歩後退して左から上段に冠り正面を打つ。
更に、後退する敵を追って二足一刀に攻め入り正面に打込む。
霞切返し またしても敵が反撃して来る気配に一歩進めて霞に攻める。敵は我の正面を打って来るので、左足を左斜前に踏み出し、切返しのごとく敵刀を右にすり落し、刀を右から頭上に回転させ、右足を左足の後方に引くと同時に左斜め上段から敵の右肩に強く袈裟に打込む。

参考
堂本明彦編著中山善導・稲村栄一原著中山博道剣道口述集より
立居合初伝2本目
右左右で右片手で前面を左から右に水平に払い切り、左から刀を振り上げ右足を引いて諸手切り下げをなし、又右足を出して諸手切り下げをして、左霞をとって、左足を出して前面を切り払って終る。

 曽田本の神道無念流居合の2本目の意義では「敵我正面を切り来る」から始まっているのですが第1動では一本目の第2に同じだと云います。一本目の第2は、敵の右前肘を下から切り上げたのですが、敵不充分で攻め込んで来るので右足を引いて後退しながら攻め込んで来る敵の正面を切るのです。
 長州藩相伝は少しも違和感がないので、曽田先生の誤写若しくは原本の誤りでしょう。長州藩相伝に従ってここは稽古しないと業が成立しません。
 従って、第1は切上げ、第2は原本通り「上段より右、左と二歩退き敵の正面を切る」、
第3も原本通り「左足より二歩前進し敵の正面を切る」、
第4は「両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払流し」・・。
でしょう。そこで曾田本の不十分はこの「払流し」の技でしょう。
 長州藩相伝では「霞切返し」という神道無念流の技を要求しています。無双直伝英信流の「受流」では、真向に打込んで来る敵刀を受けるや摺り落すのですが、此処では「受」ではなく「払」の文字が使われています。
 長州藩相伝では「霞切返し」の技を学ばなければなりません。曾田本の「両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵刀を払流し」、ですから、第3で切り下ろした右足前の正面で切先を敵の咽に附け、刀刃を上にし左手を稍々高くして構える。
 敵が真向に打込んで来るので両手を頭上に上げて受払うと同時に左足を左前に踏込み、右足を左足の後方に踏み左半身となって摺り落し、同時に右肩から上段に振り冠って、長州藩相伝の「敵の右肩に強く袈裟に打込む」
 長州藩の霞の構えですが、この場合は「右霞」でしょう。「右霞とは刀柄を握った右手の甲を下に左手の甲を上にして刀刃を左にして、切先を前敵に向ける」この刀刃を上に向けるのでしょう。

参考の中山博道剣道口述集の立居合初伝2本目は、下から切り上げないで右足を踏出し水平に切り払っています、次に右足を引き切り下げ、右足を出して切り下げ、左霞をとって打ち込んで来るのを左足を出して前面を切り払う。
 ここで云う左霞の構えが判りませんが、長州藩相伝に依れば「左霞とは右手の甲を上に、左手の甲を下にして刀刃を右に向ける」とあります。
 曽田先生はこの神道無念流の立居合をどの様に解釈され、稽古されたのか興味が湧いてきます。無双直伝英信流には無い構えであり、真向に打ち込まれた時、此の構えから「左足を出して前面を切り払って終る」神道無念流の手ほどきを受けなければ、無双直伝英信流の「受流」に依って右霞から十文字受けして受け流す、自流の範囲を越えられそうもありません。
 敵の切り込みを刀の刃で請け、受け流すのは初心の頃の稽古としては良いでしょうが、体を躱して同時に切り付ける極意を要求していると理解したいものです。
 

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2019年10月16日 (水)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合1 本目

曾田本その2を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流立居合12剣の業と
曽田本神道無念流立居合12本
1本目

曾田本神道無念流立居合1本目
(意義)
数歩前方にある敵が▢に刀を抜んとする機に先ち敵の右前肘を下方より切るも▢いて敵前進し来るを以て後退して切り更らに敵の後退するを進んで切るのであって此の時敵の倒れたるものとする。
(動作)
第1、右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此の時左手で鞘を前方に出す気持ちを加へ後方に振り上げ上体を左斜にして十文字形をなし左足は右足にるれ前方に送り左足先を左踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、次に右手を左肩より振り冠り左手を添へ右足を一歩引き敵の正面を切る
第3、更に右足一歩進め真向より正面を切る

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」立居合1本目
切上げ、右足後正面打、右足前正面打込、納刀
前敵抜付 右足より三歩進めて間に入る。前敵が我に抜刀しようとするので、左足が前に出た時(二歩目)刀の柄に右手をかけ、右足が出ると同時に前方の敵の右肘を下方より逆袈裟に切上げる。右手は切手で拳は相手の肩の高さとする。
前敵打込 なおも、敵は前進して来るので、切上げた右手の刀を左から大きく廻して上段に冠りながら右足を左足の後に引き敵の正面を打つ。(打つとは相手の咽の高さまで斬る。以下、参照のこと)怯んで後退する敵に右足を踏み出して正面に打込む。(打込むとは水月まで斬り下す。以下、参照のこと)

参考
「中山博道剣道口述集」堂本明彦編著 神道無念流立居合初伝1本目
自然体で左手を鯉口にかけ右手を柄につけて、左足右足で刀尖三寸まで抜き、一足大きく出て抜き付け即ち左から右に水平に切り払う(人に依って左斜め下から右斜上に切り上げる細田謙蔵先輩の如き人も居るが、これは正式ではないので注意されたい)。左足を右足につけて左から振り上げ、右足を出し左手を柄につけて諸手真向を切りおろす、刀尖は地上一尺位のところで止める。次に体を左に向け霞の構えとなって左足を出し、できるだけ水平に左から右に切り払う(これに就いても一本目は水平であるが、切り上げる事もあるので注意されたい)。納刀

参考
「中山博道剣道口述集」堂本明彦編著 神道無念流立居合上伝1本目
左足右足と出しながら三歩目に右横に左足を踏出す。勿論右足はその左足の前に踏出すので、この点練習を要する。其の間右手で徐々に抜刀し、最後、右横に体を向けた時に右片手で上から下に切りおろし、一足に踏み出しながら刃を左に返し右片手で切り上げ、左から刀を振り上げて左手を柄につけて諸手で切りおろし、納刀は初伝同様にして終る。是は最初の足取りが難しい事を考えに置いて努むる事。

参考とした初伝、上伝とも曾田本とは業としては異なるので一本目のみで業稽古を省きます、いずれ資料などが集まり稽古されておられる方がおればご指導仰ぎたいと思います。

 曽田本と長州藩相伝とは略同じでしょう、長州藩相伝の「打つはのどの高さまで斬る、打込むは水月まで斬り下す」という違いは、曽田本では「正面を切る」で何処まで振り下すのか指定されない。
 参考の初伝では「諸手真向を切りおろす、刀尖は地上一尺位のところで止める」とありますから、これは無双直伝英信流の現代居合の真向打ち下しと同じでしょう。
 上伝にも見られるのですが、「右片手で上から下へ切りおろし」です、片手真向で無双直伝英信流には無い動作です。「諸手で切りおろし」も「おろす」を解釈すれば「刀尖一尺位のところで止める」が妥当でしょう。解説は文章上では見当たりません。
 無双直伝英信流では一刀目で充分効果を出し、二刀目で止めの両断を目指して稽古するのですが、神道無念流の場合は抜打ちでは斬られても敵は怯まず、攻撃してくるのを下がりながら牽制の正面打ち、敵怯んで体勢を整え下る処に踏み込んで止めの打込み残心、納刀する。
 他流の動作を促す手附だけでは、仮想敵の状況を如何様に描くのか思いめぐらせるところです。
 自流の考え方のみで他流を思い描くことは出来ても、本質に至るには入門するなり、公開の講習会などが有れば参加して学ぶ事が必要でしょう。連盟と称して幾つもの流派を一まとめに審査したり優劣の判定をしたりしている様ですが、自流しか知らない者の審査ではどこまで正しくできることでしょう。其の為審査は連盟の制定した居合のかたちのみを対象にするのでは連盟である意味は無く連盟流になってしまいそうです。
 審査員対象は各地区にも必要なのですから、連盟に所属する各流派のポイントだけでも講習会を開くべきかと思ってしまいます。
 
 
 

 

 

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2019年10月15日 (火)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合納刀

曾田本その2を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流立居合12剣の業と
曾田本神道無念流立居合12本
納刀

曽田本神道無念流立居合
刀の納め方
1、前の足を後足に引き付けると同時に刀を左肩に擔ぐ如く持ち来り左手は鯉口を持ち鞘を正しくす。
2、左手の拇指と食指とにて「ハバキ」の近くを挟み右手の拇指は縁金の近くを其の他の指は下より鍔及び柄を持つ
3、右足を後方に一歩引くと同時に右手を以て刀身を前下方に引き刀尖を鯉口の処に持ち来る。
4、右足を左足に引付つゝ刀身を鞘に納る。

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」立居合
納刀
 正眼に構えてから、切先を敵の胸元、喉元、眉間の高さにと徐々に前に大きく円を描く様に出し、残心を示しながら右足を左足に引き揃えて刀身を左肩にとり、左手は鯉口を握り僅かに鞘を引き出す。刀身は肩にとったまま鎺を鯉口を握った左手の人差指に支える。と同時に、左足を右足の後方に引き、右手の柄を前下に伸ばし刀背(みね)を引いて切先を鯉口に入れ、ゆっくりと刀身を鞘に納める。
 左足を右足に引き揃え、直立して右手を柄から放し、左手は親指を鍔にかけて当初の演武の位置に復する。なお 各業とも納刀の動作は同じであるが、逆足(左前足)で終了した場合(2,3,8,9,12本目)は左足を右足の後方に引き納刀する。

参考
堂本明彦先生編著原著は中山善道・稲村英一先生に依る「中山博道剣道口述集」から立居合初伝一本目にある納刀の仕方を稽古して見ます。
「・・最後の本数まで納刀の仕方は同じであるから、それを一括して述べて置く、術が完了した際、左足又は右足(後方にあった場合)を必ず前足につけると共に諸手で刀を自分の前に垂直に刀尖を下にしてから左肩に刀峯を付けてかつぐ様にしてから、右手を逆手に持ち変えて左手を鯉口にして刀を前から納めるのである」・・結び立ちしてから納刀迄の足捌きについて触れられていません。

 納刀なども流派に因ってと云うより道場によってなんか俺のと違うと云う事があるものです。稽古は大方師匠の口伝口授と看取り稽古に依るので師匠の癖も引き継いでしまうものです。
 曽田本神道無念流は出典が定かでは無いのですが、これも長州藩相伝とも似ている様でも足捌きが違う、タイミングも違うのです。有信館(中山博道先生の神道無念流)のとも異なるのです。
 右手を逆手に持ち変えて納刀するのは曾田本と有信館、長州藩相伝は特に触れていませんから順手の儘でしょう。
 
右足前で業を終了した場合の足捌きだけ対比してみます。
曾田本:1、右足前左足後 2、右足を左足に引揃え 3、右足を後方に引く 4、右足を左足に引付る
長州藩:1、右足前左足後 2、右足を左足に引揃え 3、左足を後方に引く 4、左足を右足に引付る
有信館:1、右足前左足後 2、左足を右足に揃え  3、記載なし     4、記載なし

 最後に切り下してからの残心も、上段に振り冠って残心、剣先を下げて左肩にかつぐ様にする、有信館の様に垂直に刀尖を下げてから左肩にかつぐなどあるので、12本一本ずつやりながら学んでみます。

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2019年10月14日 (月)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合刀礼帯刀

曾田本その2を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流立居合12剣の業と
曾田本神道無念流立居合12本
刀礼帯刀

 曽田本その2の神道無念流立居合 帯刀
第3、右手を以て刀を体の中央前膝の線に刀背を前方にし垂直に立つ
第4、右手を以て下緒を「スゴク」如くして鐺の附近を持ち両手を以て帯刀する(此時左手の拇指を鍔の内側より前方に押し鯉口を切り食指を以て刀の抜けざる様、左外側より後方にひき鍔は概ね体の中央前にある)
第5、起立して右足より三歩後退す(起立せる時右手は自然に垂れる)
終礼の場合及脱刀
第1、右手を以て刀を脱し右腰に持ち来りつゝ蹲踞して敬礼す(開始の場合と同じ)
第2、起立して右足より三歩後退して立礼す。

 木村高士著長州藩相伝神道無念流立居合 帯刀
帯刀:礼を終え、右腰の刀を右手を使って体の中央前に刃を手前に向けて立てる
 つづいて鞘の下部(鐺の上部)に左手を添え、体の中程に鍔の内側がくるよう両手をもって左腰に帯刀する。
 下緒は鞘と帯との間に上から掛けたらすか、または右腰の帯に結ぶ。
 蹲踞の姿勢から、左手の親指を帯刀の鍔にかけ、右手は自然にたれ、その場に立ち、左足から数歩後退して演武開始の位置に直立する。
 なお、終礼は始礼の逆順に行う。
 演武にあたって発声はしない。

 神道無念流の帯刀は、上座の礼の時の状況で蹲踞し上座の礼を行ったならば、無双直伝英信流の様に刀の礼をする事無く、その姿勢のまま帯刀します。
 曾田本その2は「右手を以て刀を体の中央前膝の線に刀背を前方にし垂直に立つ」、長州藩相伝でも「体の中央前に刃を手前に向けて立てる」ですから、刀の体の中央で位置は蹲踞姿勢の膝の線上ではチョット窮屈です、長州藩相伝では体の中央前ですから右手を伸ばして体の中央前に立てれば懐にゆとりもでき安定もします。
 鞘の下部は鐺の附近を以て帯刀し、帯刀した時の鍔は曽田本その2は体の中央前、長州藩相伝では「体の中程に鍔の内側賀くるよう」ですから納まった姿は同じでしょう。現在の全剣連の帯刀、夢想神傳流、英信流の幾つかの師伝にあるものです。
 大江居合を継承する無双直伝英信流居合兵法正統会では河野先生指導に依り、「柄頭が体の中央」となって小刀を差した場合を配慮しています。
 曾田本その2の帯刀の際「左手の拇指を鍔の右内側より前方に押し鯉口を切り食指を以て刀の抜けざる様、右外側より後方に引き・・」の文言のうち、「鯉口を切り」の理由、更に「食指を以て抜けざる様」の意味はあるのか、その必要性は何か疑問です。
 
 全居連にしろ全剣連にしろ帯刀の前に刀礼が付加されています。この神道無念流の場合は刀礼は手附に無い様です。

 

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2019年10月13日 (日)

曾田本その2を読み解く45長州藩相伝神道無念流居合と曾田本神道無念流居合礼式

曾田本その2を読み解く
45、長州藩相伝神道無念流立居合12剣の業と
曾田本神道無念流立居合12本
礼式

 曽田本神道無念流立居合
敬礼
1、開始の場合と帯刀
第1、右手に刀を提げ正面に対し立礼し、堤刀は刀刃を上方にし栗形の下方を持ち(此際指は鍔に掛けざるものとす)体に並行して約45度の位置にする。
第2、右足より三歩前進し、両踵を揃え蹲踞し(此際刀を右腰にし鍔を体の中心前とす左手を地につく如くして敬礼す

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」立居合
礼式
立礼 まず刀を右手に持ち提げ(刃部を上に、下緒をたぐって栗形の上部を握る)、上座に向かって立礼する。
始礼 刀を右腰にとり、右足から演武の位置に進み、両足を揃えてその場所に蹲踞する。刀を右腰に持ったまま左手の甲を前にして指先を下座について始礼をする

 曽田本その2に曽田先生の手書きで記載されている神道無念流居合立業12本を前回までに読み解いて稽古をしてみました。
 神道無念流居合を、師匠について稽古をつけていただいたことは無いので、習い覚えた無双直伝英信流を基にして居りました、神道無念流ではその様にはしないものだと仰られる事はあるだろうことは充分承知しています。
 手元には中山善道・稲村栄一先生原著で堂本明彦先生編著の「中山博道剣道口述集」、香山会の「幽芳録」、堂本明彦先生の「中山博道有信館」を参考にしようとしたのですが、居合は「中山博道「中山博道剣道口述集」に立居合初伝伝10本と上伝
20本の手附は或るのですが、曽田本その2にある立居合12本は見当たらず、其の上運剣動作にも「一足大きく出て抜き付け即ち左から右に水辺に切り払う(人に依って左斜下から右斜上に切り上げる細田謙蔵先輩の如き人も居るが、これは正式ではないので注意されたい)」とあってどの流派でも経年による変化を認めないような書き出しがあったりして曽田先生の原本はどうやら東ではなく西にあろうかと思ってしまいました。
 神道無念流の業技法に関するものは無いかとネットで調べると、木村高士先生の長州藩相伝神道無念流居合が見つかりました、早速高額にプレミアがついたものを買い求め読んでみたのですが、神道無念流立居合12本は順番及び手附は同じ様なのですが、意義や動作の記述方法が異なります。礼式ですら部分的には異なるわけで、曽田先生の元となった資料は霞のかなたに隠れてしまいました。
 然し、大筋は変わらないと考え、此処に対比しながら稽古を仕直して見たいと思います。木村高士先生の長州藩相伝神道無念流立居合12本の手附を拝借させていただきたくお許しください。
 太平洋戦争直前の曽田先生が書き写された神道無念流立居合12本の曾田本その2の手附はこの対比によって生き返る事を信じています。無双直伝英信流を学ぶ者として他流の居合を知ることによってより深く自流を考える糸口を見つけられるかも知れないと思う次第です。
 また神道無念流を学ぶ方々の参考になれば、曽田先生の思いも伝わるのではないかと念じています。

 早速曾田本その2と長州藩相伝の比較に入ります。
 礼式の部分で赤字の部分に違いが見られます。
 右手に堤刀の際、栗形の下方を持つのが曽田本、下方を持てば指先は鍔に掛らないでしょう。栗形上部を持つのが長州藩ですがこの場合は指は鍔に届きます。鍔に手を掛ける事は戦闘意識を表すとするならば上座に向かう場合は掛けるべきではないでしょう。但し右手に堤刀ですから意識すべきかはその流の仕きたりに従うでよいのでしょう。
 ちなみに無双直伝英信流の大江居合では「場に入る時は鍔元を左手に持ち拇指にて鍔を抑へ、刃を上にして刀を下げ下座より玉座に向ひ直立体の侭刀を右手に持替へ(此時刃を後方に向け)右側に軽く接し立礼をなす。刀を左手に復して適当の位置に至りて正座す。」となります。正座してからは刀礼、帯刀となります。

 上座に一礼して演武の位置に歩み行くのですが曾田本は右足より三歩前進ですから、演武場への入場は下座から演武位置の三歩手前まで出場して立礼するのでしょう。
 長州藩は下座で入場の立礼をしてから演武位置まで進むのでしょう。
 演武位置で蹲踞し上座に礼をする場合の左手の所作で長州藩は左手の甲を前にして指先を下座(床・地)について、と指定しています。蹲踞した両膝の間で左手を地に着ければ自然に手の甲は前向きになります。

 神道無念流居合の読み解くでは、順序通りに記述していますが、同じ流の手附でも比較しながら進めていきますと、中々面白いものです。まして他流との対比をすると猶さらと思います。

 
 

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2019年10月12日 (土)

曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の2神道無念流(立居合12本)12本目

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の2神道無念流(立居合12本)
12本目

(意義)
前進中敵先に抜打をなし敵の之れに応ずるを切り返し倒す也。

(動作)
第1、右足より前進二歩目左足にて刀を抜き三歩目に敵の正面を切る。
第2、切り返をなす二本目第4動に同じ。
 参考2本目第4動:両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払流し(此の時刀尖は其位置にて左拳を刀尖より稍上ぐ)同時に右手を中心に右肩より冠りつゝ左足を左前に踏み右足を左足の後に引き敵の右肩より八相に切下ぐ。
第3、納刀

 意義を読んだだけでは敵が真向に打込んで来るので、我は刀を抜き払流して八相に切ると読めるのですが動作はちょっと回りくどい。
 双方歩み寄る時、敵先に、右足出し左手で鯉口を握り、左足出す時右手で柄を握り、刀を抜き上げ上段に振り冠るや左手を柄に添え、右足を踏み込んで我が真向正面に切り下す。我も「右足より前進二歩目左足にて刀を抜き」上段に振り冠って、右足を踏み込んで「敵の正面を切る」第1動

 一刀目は間合い不十分で、敵左足を右足に引き付け上段に振り冠る、我は右足前の侭青眼に直る、敵真向より右足を踏み込んで我が正面に斬り込み来る、我は「両手で刀刃を上にし、刀刃を以て敵の刀を払流す(此の時刀尖は其の位置にて左拳を刀尖より稍上ぐ)や、同時に「右手を中心に右肩より冠りつゝ左足を左前に踏み右足を左足の後に引き敵の右肩より八相に切下ぐ」。第2動

 我上段に振り冠り残心を示し、剣先を下げ青眼に構え、左足を右足に「引き付ると同時に刀を左肩に擔ぐ如く持ち来り、左手は鯉口を持ち鞘を正しくす、左手の拇指と食指とにて「鎺」の近くを挟み右手の拇指は縁頭の近くを其の他の指は下より鍔及び柄を持つ。右足を後方に一歩引くと同時に右手を以て刀身を前下方に引き刀尖を鯉口の処に持ち来る、左足を右足に引付つゝ刀身を鞘に納る」第3動

 神道無念流居合12本を稽古してみました、他流の事で細部まで理解出来ているか、足裁きが逆だなどありそうです。意義に述べられて居ても動作では抜けていたり逆の場合もあったと思います。
 無双直伝英信流では、一刀目の抜き付けで勝負がつき止めの打ち下し、血振り納刀ですが、神道無念流では抜き付けでは浅い、不十分、外された、即死状況ではないのでしょう、そこから体捌き、剣捌きが続きます。
 この曽田本に掲げられた神道無念流居合12本は堂本明彦編著中山善導・稲村栄一原著の「中山博道剣道口述集」にある「立居合」初伝10本、上伝20本とは構成の仕方が違う様です。
 いずれ対比しながら神道無念流の居合を稽古して見たいものです。

 曽田先生はこの居合の手附をどの様に手に入れて曾田本その2に書き付けたのでしょう。土佐で神道無念流を遣う人が居たのでしょうか。

 Netで検索して木村高士著平成2年1990年発行の「長州藩相伝神道無念流」を手に入れました。そこには長州藩相伝神道無念流の道統は、細川家資料より起された「林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流」の著者故木村栄寿範士の指導で継承されたとしています。そこには「立居合12剣の業」として曽田先生のものに相当する立居合12本が掲載されています。
 曾田本その2による神道無念流居合12本は運剣を見ながらメモをされたものを、写した様なきらいもありますが、木村高士先生の立居合12剣の業と曾田本とを対比しながらもう一度稽古を仕直して見たいと思います。剣術の運剣動作なので、木村先生の記述を私なりに変えることは憚られますので、立居合12本については、原本の侭記述させていただきます。
  

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2019年10月11日 (金)

曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の2神道無念流(立居合12本)11本目

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の2神道無念流(立居合12本)
11本目

(意義)
大体10本目と同じなるも、敵退却せず打掛て敵に追ひ詰められ後退しつゝ敵を切り倒す也
但し最初停て居るにあらず前進中敵に出合たるものとす。

(動作)
第1、右足より前進中右足の地につくや僅かに後退して抜刀(一本目第1動に同じ)
 参考1本目第1動:右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此時左手で鞘を前方に出す気持を加へ後方に振り上げ上体を左斜にして十字形をなし左足は右足につれ前方に送り左足先を左踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、1本目第2第3動に同じであるが右足より後退しつゝ行くのが異て居る。
 参考1本目第2動:次に右手を左肩より振り冠り左手を添へ右足を一歩引き敵の正面を切る。
 参考1本目第3動:更に右足一歩進め真向より正面を切る。
第3、右同
第4、10本目第4動第5動に同じ
 参考10本目第4動:次に上段にて残心を示し
 参考10本目第5動:青眼に直り納刀
第5、右同

 11本目は、「前進中敵に出合いたるもの」の意識で稽古しろと云うのでしょう。この手附は右足の裁き様が独特なのか誤記なのか無双直伝英信流の足捌きでは出来ない、繰返し稽古して納得できるまでやって見る以外にない。
 敵に出合いさりげなく右足を踏出し左手で鯉口を切り、左足を踏み出しつゝ柄を握り刀を抜き出し右足を踏み込んだが敵の攻めが強く右足を僅かに引いて前肘を下から切り上げる。第1動
 敵前肘に抜き付けられるが怯まずに打込もうとするが、我は右手を左肩より振り冠り左手を添え上段に振り冠って敵の正面を右足を一歩引いて正面を切る。第2動
 敵更に詰め寄って来るので上段に振り冠り右足を一歩引くや真向より敵の正面を切る。第3動 
 左足を一歩引いて上段に構え残心。第4動
 正眼に直り、右足を左足に引き付けつゝ刀棟を左肩に付け、左手で鯉口を握りその拇指と食指で刀の鎺元を挟み、右手を逆手に持ち替え左足を退くや柄を前に引いて、切先鯉口に至れば静かに納刀、左足を右足に引き付け終了。第5動

 ◯◯に同じとして手附を省略していますが、その省く意義は何処にあるのでしょう。たいした労力とも思えませんし、正しい伝承をしたいならば動作を書き込んでおくのが良さそうです。細切れの転写による動作ではその必要動作が抜け落ちる可能性もあります。伝承は師匠に依る口伝口授による手取り足取りが出来ないこともあり得るものです。
 
 

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曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の2神道無念流(立居合12本)10本目

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の2神道無念流(立居合12本)
10本目

(意義)
敵に接し居る時敵刀を抜かんとするに対し動作するも敵退きたるより之れを追進めて切り倒す也

(動作)
第1、右足を踏出すと同時に抜刀敵の右前肘を切る、一本目第1動同じ
 一本目第1動:右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此時左手で鞘を前方に出す気持を加へ後方に振り上げ上体を左斜にして十字形をなし左足は右足につれ前方に送り左足先を右踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、左足より二歩進み正面を切る。
第3、次に青眼のまゝ突き付けながら二歩進む。
第4、次に上段にて残心を示し、
第5、青眼に直り納刀。

 敵と接している時、敵刀を抜かんとするのに対し、右足より前進し、二歩目に柄を握り、三歩目右足を踏出すや刀を抜き出し、下から敵の右前肘を切り上げ左足を右足に引き付ける。第1
 敵これを右足を引いて外し、左足を後方に引き抜刀せんとするを、我左足を踏み込み上段となるや右足を踏み込んで追い進み敵の正面に打ち下ろす。第2
 敵切られて右足を引いて間を切らんとするを、我青眼に構え敵の喉に切先を突きつけながら左足、右足と二歩前進する第3
 敵左足を引きながらくず落ちるを我、上段に振り冠り残心を示し、第4
 正眼に直り、右足を左足に引きつけ、刀棟を左肩に担ぐ様に持ち来り、左手拇指と食指を以て刀の鎺元を挟み、鞘を直し、右手を逆手に持ち替えるや左足を一歩引いて切先を鯉口に入れるや、右足を左足に引付つつ納刀す。

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2019年10月10日 (木)

曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の2神道無念流(立居合12本)9本目

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の2神道無念流(立居合12本)
9本目

(意義)
敵の抜かんとする前肘を切るも(一本目に同じ)敵之れを弛し我胴を切り来るに対し体を躱し切り倒す也

(動作)
第1、一本目第一動に同じ
 一本目第1動:右足より前進し二本目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(この時左手で鞘を前方に出す気持を加へ後方に振り上げ上体を左斜にして十文字形をなし左足は右足につれ前方に送り左足先を右踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、上段のまゝ右足より二歩退き次に鎬を以て敵刀を下方に押へ敵我胴を切り来るを防ぐ如く刀を体の右前下方に持ち来る此の時右足を左足に引き付くる。
第3、次に青眼に直りつゝ少し前進す、此の時左足は右足につく如く送り敵を襲ふ気持なり。
第4、次に切り返しをなす2本目第4動に同じ
 2本目第4動:両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払流し(此の時刀尖は其位置にて左拳を刀尖より稍上ぐ)同時に左手を中心に右肩より冠りつゝ左足を左前に踏み右足を左足の後に引き敵の右肩より八相に切下ぐ。
第5、次に納刀

 「敵の抜かんとする」ですから、鯉口に左手がかかる瞬間から切先が鞘離れする瞬前迄を「抜かんとする」動作となるのですが、此処ではその際、我は「敵の右前肘を下より切り上ぐ」のです。従って更に進んで、右手を柄掛りした瞬間から、柄頭にて我を圧し抜き放つ瞬前迄となります。
 敵が左手を鯉口に触れるや、我も右足を踏み込みつゝ鯉口を握り鍔に拇指をあてがい、右手を柄に掛けるや左足を踏み出しつゝ柄頭を敵の右前肘に附けながら刀を抜き出し、間境を超すや右足を踏み込み刀の刃を下に返すや敵の前肘に下より切り上げる。第1動
 我が下より敵の右前肘に抜き付けるを、敵左足を引いて右足を引き付け之を外すや、我上段に振り冠り右足より左足と二歩退く、敵刀を抜き出し右足を踏み込み青眼に構えるところ、上段より刀を下げ鎬を以て敵刀を下方に押さえ、「敵我が胴を切り来るを防ぐ如く刀を体の右前下方に持ち来る」同時に我右足を左足に引き付ける。第2動
 次に、青眼に直りつつ、敵を襲う気を以て右足を稍々踏み込み左足を追い足に右足に送る。第3動
 敵、上段に振り冠り、打ち下ろすを、我青眼の構えから「刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払い流し同時に左手を中心に右肩より冠りつゝ左足を左前に踏み込み右足を左足の後に引き敵の右肩より(逆)八相に切下ぐ」第4動
 その足の位置で青眼となって残心、左足を右足に引き付けつつ刀の棟を右肩に運び、左手を鯉口に添え拇指と食指で刀の鎺元を挟み、右手を逆手に返し左足を後方に一歩引くと同時に右手を以て刀身を前下方に引き刀尖を鯉口の処に持ち来る、左足を右足に引き付けつゝ刀身を鞘に納める。第5動

 敵の動作が記載されていませんので、状況に合わせ組み立てて見ました。納刀は左足前の状況で、納めましたが、左足を右足に引き付け、右足を引いて刀を左肩に担ぎ、左足を引いて刀尖を鯉口に持ち来り、左足を右足に引き付けつつ納刀の納める。

 

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2019年10月 9日 (水)

曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の2神道無念流(立居合12本)8本目

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の2神道無念流(立居合12本)
8本目

(意義)
勉めて敵に接して抜打するも敵後退するにより追詰めて切倒すなり。

(動作)
第1、其場にて抜刀右足一歩出し正面を切る
第2、左足より二歩前進して切る
第3、二本目第4動の如く切り返し
 二本目第4動:両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払流し(此の時刀尖は其位置にて左拳を刀尖より稍上ぐ)同時に左手を中心に右肩より冠りつゝ左足を左前に踏み右足を左足の後に引き敵の右肩より八相に切り下ぐ
第4、納刀
*
 この8本目も抜けが有って解りずらいのですが、対敵は正面から歩み来て我はその場で「勉めて敵に接し」て、抜き打つのか、双方歩み行く時「勉めて敵に接し」間に至るのでしょう。
 稽古では左足前右足爪先を左足土踏まず附近に置き、その場で右足を踏み込み横一線に「抜打」する、あるいは上に抜き上げ上段に振り冠って敵の正面に「抜打」する。
 次に、敵引く処左足を踏み込み上段に振り冠右足を踏み込んで真向に切り下す。
 切下すや敵の反撃を受けて、切り下ろした切先を残し「その位置にて」刀刃を上に向け左拳(左柄手)を切先より稍々高くして下から払い上げる様に受け流し、「左手を中心に」右肩より振り冠つゝ「左足を左前に踏み右足を左足の後に引き」逆八相となって「敵の右肩より八相(逆八相)に切り下げる。
 剣尖を青眼に戻し残心、左足を引いて右足に踏み揃え刀の棟を左肩に添え、左手を鯉口に執り刀の鍔元を拇指と人差し指で挟み、右手を逆手に持ち替えると同時に右足を引いて、刀を斜め右前に引き切先が鯉口に入るや刀を鞘に納めつつ右足を左足に踏み揃えて納刀す。
 ちょっと違うかな、英信流っぽくなったかもしれません。

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2019年10月 8日 (火)

曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の2神道無念流(立居合12本)7本目

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の2神道無念流(立居合12本)
7本目

(意義)
前方右方の敵に対する動作(六本目に同じ)

(動作)
6本目と替ることなし、左方と右方との異なるのみ。

 右方の敵と左方の敵との違いだと云うのですから、6本目の動作を基に7本目を作成しなければなりません。武術の手附には往々にしてこの様な省略が当たり前の様に書かれるのですが、後世の者はそれを基に文章を作成せざるを得ないのです。古伝の真似を現代でもするべきとも思えません。
 きちんと書いておくぐらいの気ずかいはすべきでしょう。誤って伝えられることも考えておくべきです。
 6本目の左敵を右の敵に替えて曾田本その2の手順で手附を作ります。
(意義)
前方右方の敵に対するも右方の敵、最初我に近寄り過ぎた為めに進出して切ること能わず、従て其場に於て切り、次で敵後に倒るゝを以て其侭進んで残心を示す。
(動作)
第1、一本目第1動に同じ:右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此時左手で鞘を前方に出す気持を加へ後方に振り上げ上体を左斜にして十文字形をなし左足は右足につれ前方に送り左足先を右踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、左足を軸とし右向となり右正面を切る。
第3、次に左足を右足に揃へ上段となり左足にて切る。
第4、次に中段の侭右足より二歩進み。
第5、上段の残心を示し。
第6、青眼に直り納刀

 第2動では右足前で右敵を切る、第3動で右足に左足を送り左足を踏み込んで右敵を再度切る、第4動では右足左足と二歩進み第5動で左足前の侭上段となり残心、第6動でその足のまま切先を下げ青眼となり、左足を退くと同時に切先を上げて左肩に刀の棟を当て、右足を引いて納刀、右足を左足に踏み揃える。

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2019年10月 7日 (月)

曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の2神道無念流(立居合12本)6本目

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の2神道無念流(立居合12本)
6本目

(意義)
前方左方の敵に対するも左方の敵、、最初我に近寄り過ぎた為めに進出して切ること能わず、従て其場に於て切り、次で敵後に倒るゝを以て其侭進んで残心を示す。
(動作)
第1、一本目第一動に同じ
 一本目第一動:右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀、(此時左手で鞘を前方に出す気持を加へ後方に振り上げ上体を左斜にして十字形をなし左足は右足につれ前方に送り左足先を右踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、右足を軸とし左向きとなり左正面を切る。
第3、次に右足を左足に揃へ上段となり右足にて切る。
第4、次に中段の侭左足より二歩進み
第5、上段の残心を示し
第6、青眼に直り納刀

 文章に抜けが有って意味が通じない、というより表現力の低さなのか、他流に容易に判読されない様にしたのか解りませんが難問です。前方及び左方の敵に対する攻防で、先ず、前方の敵に右足より進み鯉口を握り、左足を踏み出し柄に手を掛け刀を抜き出し右足を踏み込んで前方の敵の右前肘を下から抜き付ける。(第1動)
 左方の敵は我に近寄り過ぎたために、踏み込んで切る事が出来ない、従って我は踏み出した右足に左足を引き付け右足を軸に左向きとなって左足を引いて上段から左敵の正面を切り下ろす。(第2動)
 次に右足を引いて左足に踏み揃え左足を引いて再び左敵の真向に上段より斬り下す。(第3動)

 ◉此の時正面の敵は右前肘を切られているが命に別条がない筈なので、正面の敵に切り下すことも想像したのですが、此処では、正面を再び斬る動作を要求されていない為、左敵に再度真向から斬り下しています。
 次に左向きの侭、切り下ろした中段のまま左足より二歩進み(第4動)、上段に構え残心を示し(第5動)、青眼に直り納刀(第6動)。

 曽田先生の写された神道無念流の6本目には、何故接近し過ぎた相手を斬るのに後ろに退きながら斬る動作が示されていないのでしょう。第2、第3ともに文章不十分です。曽田先生の看取り稽古に依るメモなのか、神道無念流を演じる誰かのメモなのか疑問です。

 

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2019年10月 6日 (日)

曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の2神道無念流(立居合12本)5本目

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の2神道無念流(立居合12本)
5本目

(意義)
前右左の敵に対する動作なり

(動作)
第1、一本目一動に同じ
  一本目一動:右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此時左手で鞘を前方に出す気持を加へ後方へ振り上げ上体を左斜にして十時形をなし左足は右足につれ前方に送り左足先を右足に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ。
第2、左足を軸とし右の敵の正面を切る。
第3、左足を軸とし廻れ左をなして右足を一歩出して左の敵の正面を切る、納刀。

 前右左に敵に囲まれた場合の動作で、此処では敵が抜刀して斬り込んで来る場合とも、帯刀して今にも抜かんとしているとも言って居ません。
 敵に向かって右足から前進し左手で鯉口を切り、左足を出す時右手で柄を握り、左手で鞘を前方に出す気持ちで送り鞘を後方に振り上げ、右足を踏出すと同時に敵の右前肘を下より切り上げ左足を右足踵に継ぎ刀は肩の高さで止める。
 左右の敵も並行して間を取って来るので、先ず右敵に向かって刀を左肩から上段に振り冠り、左足を軸に右に廻って右敵の正面に斬り下す。次に左敵に振り返り、左足を軸に左敵に振り向きつつ右肩から上段に振り冠り、右足を踏み込み左敵の真向正面に斬り下し、納刀。

 この業は、まず前の敵を倒してから右の敵左の敵を順次倒していくわけで、英信流の心得には無いでしょうが、その運剣動作を以て稽古出来そうです。
 左右の敵を倒してから前の敵に斬り付けるにしても、まず前敵を牽制して実施すべきで参考になります。

 

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2019年10月 5日 (土)

曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の2神道無念流(立居合12本)4本目

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の2神道無念流(立居合12本)
4本目

(意義)
前進中敵後より来り鐺を取られ続いて前方よりも敵切り掛り来るのに対する動作なり

(動作)
第1、右足より前進中左足にて上体を前に懸け右手にて刀柄を下より握り(此の握り方は拇指は上方にその他の指は下方にす)、腰を左方に廻し刀を抜く。
第2、上体を其侭とし左上膊の左側に刀刃を左斜上方にして後方の敵を刺す。
第3、柄に左手を添へ刀刃上方に刀尖を前方に向け踏み出して前方の敵を刺す左足を送る也。
第4、右足を後に引くと同時に刀を右脇に刀身を水平にして後方の敵を刺す。
第5、柄を持ち替え右足を一歩出して正面を切る。
第6、左足を軸とし左に廻り右足より一歩進み後方の敵の正面を切り納刀。

 前進中、敵が後ろより来て鐺を取られたので、鯉口を左手で握り鍔に手を掛けるや、左足を前に踏み出し上体をやや前懸りにしながら右手の拇指を上にその他の指を下にして逆手に柄を握り、腰を左に廻し刀を抜くや、上体は前を向いたまま、左上膊部の外側(左側)に刀刃を左斜め上に向け後方の敵を刺突する。
 続いて右手は其のままに、左手を柄に添え、刀尖を下から前方に向け刀刃を上向け右手は逆手のまま、右足を踏み込み同時に前方の敵を刺突するや左足を右足に引き付ける。
 更に右手は逆手のまま、右足を後方に引くと同時に右脇に刃を右向に水平にし、刀棟を右脇に引き付け後方の敵を再度刺突する。
 右手を順手に持ち替え、上段に振り冠り右足を一歩踏み込んで前面の敵の正面に斬り付ける。
 左足を軸として左廻りに後方に振り返り上段に振り冠って右足を一歩踏み込み後方の敵の正面に斬り下す。
 納刀。

 鐺をつかんだ後ろの敵は左からと右からと二度刺突され、最後は正面から切り下される。前面の敵は一度刺突され、真向から斬られるわけです。
 此の業も居合抜した後は所謂刀を抜いての攻防ですが、居合らしく、刀同士の打ち合いの無い手際のよい斬撃を要求しているのでしょう。
 英信流に無い逆手抜刀による左後方の刺突、逆手に依る前方の刺突、逆手に依る右後方の刺突、稽古して置きたい業の一つです。 

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2019年10月 4日 (金)

曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の2神道無念流(立居合12本)3本目

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の2神道無念流(立居合12本)
3本目

(意義)前進中後方より敵来を呼ぶにつき二四追詰め切るなり
(動作)前進中左へ振り返り右足を踏出し敵の右肘を抜打に切り 次に左足を踏み込みて切り 右足にて更に切り込む也 続いて二本目第四の如く体を転じ切り返しをなす 次に納刀

二本目第四の動作:両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払流し(此の時刀尖は其位置にて左拳を刀尖より稍上ぐ)同時に左手を中心に右肩より冠りつつ左足を左前に踏み右足を左足の後に引き敵の右肩より八相に切下ぐ。

 前進中敵が後ろから来て呼ぶので左から振り返って右足を踏出し、斬り込んで来る敵の右肘を下から抜き打ちに斬り上げる、左足を踏み込んで真甲から斬り下し、更に右足を踏み込んで真向に切り込む、其の体勢の儘敵が真向から斬り込んで来るのを刀刃を返して上に向け、敵の刀を払い流すと同時に左足を左前に踏み込み右足を左足の後方に引き刀を右肩より冠って逆八相から敵の右肩に斬り下す。
 
神道無念流の居合は「抜打に切り 次に左足を踏み込みて切り 右足にて更に切り込む」と同じ切り込みを繰返します。その理合は其の流によるものでしょう。英信流ならば「敵の右肘を抜き打ちに切り、左足を踏み込んで真向より斬り下し勝つ」で終わってしまう、神道無念流では抜き付けた後に運剣を稽古させて居合と剣術(剣道)を混在させている様です。

抜打ちの際下から切り上げず、敵の右小手に英信流の稲妻の様な抜き付けるもありでしょう。
赤字二四と読めましたが意味不明です、読み違いかも知れません。

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2019年10月 3日 (木)

曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の2神道無念流(立居合12本)2本目

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の2神道無念流居合(立居合12本)
2本目

(意義)
敵我正面を切り来るを以て払ひ流し体を左前方に替し敵の右肩を切り下ぐ。

(動作)
第1、1本目の第2動に同じ(1本目の第2動:次に右手を左肩より振り冠り左手を添へ右足を一歩引き敵の正面を切る)
第2、上段より右、左と二歩退き敵の正面を切る。
第3、左足より二歩前進し敵の正面を切る
第4、両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払流し(此の時刀尖は其位置にて左拳を刀尖より稍上ぐ)同時に左手を中心に右肩より冠りつゝ左足を左前に踏み右足を左足の後に引き敵の右肩より八相に切り下ぐ。
第5、納刀。

 この手附は、解りにくい書き方をしています。(意義)だけ読めば「敵が正面より切って来るので、右足を左前に踏み込んで抜き請けに払い流し、逆ハ相に振り被って左足を踏み込み右足を引いて敵の右肩を逆八相に切り下げる」と動作をつければ出来るはずです。敵の動作も書き込みは「敵我正面より切り来る」だけですから、敵が我が正面に上段から切り込んで来るわけです。
 然し、(動作)の第1を読むと1本目の第2動に同じと云うので混乱します。そこで、今ある手附は1本目と2本目だけですからこの2本の業を使って2本目を稽古して見ます。それが神道無念流の立居合2本目と異なっても仕方が無いことでしょう。
A、第1動、第2動は1本目を初動として稽古する。
1、右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀、敵の打ち込まんと上段より斬り下ろさんとする右前肘を下より切り上げる。
2、次に右手を左肩より振り冠左手を添へ右足を一歩引き敵の正面を切る。
3、右足を引いて上段に振り冠り左足を引くと同時に敵の正面を切る。
4、左足を踏み込みつつ上段に振り冠って、右足を踏み込み敵の正面を切る。
5、同体の儘両手で刀刃を上にし刀刃を以て敵の刀を払い流し、同時に左手を中心に左肩より逆八相に振り冠つつ、左足を左前に踏み込み右足を左足の後に引き敵の右肩より逆八相に切り下ぐ。
6、納刀は左足を右足に引き付けると同時に刀を左肩に擔ぐ如く持ち来り、左手は鯉口を持ち鞘の刃側を上に向ける。左手の拇指と食指とにて「鎺」の近くを挟み、右手を返して拇指は縁頭の近くをその他の指は下より鍔及び柄を持つ。
 左足を後方に一歩引くと同時に右手を以て刀身を前下に引き刀尖を鯉口の処に持ち来る。右足を左足に引付つゝ刀身を鞘に納める。
B、1本目の第2動の動作で敵の切り込みを外し抜き打つ。
1、右足より前進し、左右と出た時敵が真向に切り込んで来るので、刀を上に抜き上げ右足を一歩引き敵刀に空を切らせ、同時に右手を右肩より振り冠り、左手を柄に添へ敵の正面を切る。
2.上段に冠りつつ右足を引き、左足を引くと同時に敵の正面を切る。
3、左足より上段に振り冠りつつ前進し、右足を踏み込んで敵の正面を切る。
4、同体に儘(切り下ろした切先を下段に遺したまま)両手で刀刃を上に向け正面に向け打ち込んで来る敵刀を払い流し、同時に左手を中心に左肩より逆八相に振り冠りつつ、左足を左前に踏み込み右足を左足の後方に引き敵の右肩より逆八相に切り下ぐ。
5、納刀(同じ)

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2019年10月 2日 (水)

曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の2神道無念流(立居合12本)1本目

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の2神道無念流(立居合12本)
1本目

(意義)数歩前方にある敵が将に刀を抜かんとする機に先じ敵の右前肘を下方より切るも続いて敵前進し来るを以て後退して切り更らに敵の後退するを進んで切るのであって此の時敵の倒れたるものとす。

(動作)
第1、右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此時左手で鞘を前方に出す気持を加へ後方に振り上げ上体を左斜めにして十字形をなし左足は右足につれ前方に送り左足先を右踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切りあぐ。
第2、次に右手を左肩より振り冠り左手を添へ右足を一歩引き敵の正面を切る。
第3、更に右足一歩進め真向より正面を切る。
第4、納刀

 前進しつつ下より切り上げ、退きながら真向に切り下し、再び前進して真向に切り下す業です、中山博道先生の有信館でも稽古されていたのかどうか、そこでは立居合の初伝1本目は、堂本明彦編著による原著者は中山善道、稲村栄一による「中山博道剣道口述集」に依れば以下の様です。
 「自然体で左手を鯉口にかけ右手を柄につけて、左足右足で刀尖三寸まで抜き、一足大きく出て抜き付け即ち左から右に水平に切り払う(人に依って左斜下から右斜上に切り上げる細田謙蔵先輩の如き人も居るが、これは正式ではないので注意されたい)。
 左足を右足につけて左から振り上げ、右足を出し左手を柄につけて諸手真向を切りおろす。刀尖は地上一尺位のところで止める。次に体を左に向け霞の構えとなって左足を出し、出来るだけ水平に左から右に切り払う(これに就いても一本目は水平であるが、切り上げる事もあるので注意されたい)。」
 これでは、まず足運びが左右左で左から右へ水平の抜きつけ、踏み出した左足を右足に引き付けつつ左から上段に振り冠って、右足を出して諸手で真向に切り下ろす。更に体を左に向けて逆横霞に構えて左足を踏み込んで左から右に水平に切り払う。となりそうです。これでは曾田本とかけ離れてしまいそうです。
 
 口述集の初伝1本目は、「右左右で右片手で前面を左から右に水平に払い切り、左から刀を振り上げ右足を引いて諸手切り下げをなし、又右足を出して諸手切り下げをして、左霞をとって、左足を出して前面を斬り払って終る」
 此の方が一刀目は水平切りですが、二刀目、三刀目は曾田本に同じ動作になりそうです。四刀目はオマケです。神道無念流の切り上げが見たい、更に口述集の頁を繰ってみます。

 上伝の2本目、「左足を静かに出しながら右手で静かに三分の二位抜刀し、右足を大きく前に出すと共に右片手で左から右に切り上げる(この切り上げは斜切りと称する。後から又出てくるので覚えて置く事)左足を右足に揃え、刀を左から振り上げて、右回りしながら右足左足と送り込んで諸手切り下げをなし、其のままの体位で右霞をとって右足を踏み込み、右斜下から左斜上に切り上げて終る。」
 一刀目に切り上げが出て来たのですが、それ以降は別物です。曽田本の神道無念流の居合は有信館に伝わった居合では無さそうです。

 其の流派の業は、其の流派の中で当たり前とする、約束事例えば構や、動作の方法を知らない者にはその流の手附からだけでは演じられないものです。従ってその流の心持ちなど口伝に依ることなど他流では読み取ることは難しでしょう。従って連盟の制定した形をもって優劣をつけようとするのが現今の考え方と思います。是では500年も伝承されてきた流派の奥義の業と心を失念してしまい居合踊りになってしまいそうです。流派の免許皆伝より連盟の段位を優位に思っておられる居合人の何と多いことでしょう。
 堂本明彦氏の「中山博道有信館」平成5年1993年発行をめくりながら、博道先生の神道無念流を振り返って居る時こんな一文に出合ってしまいました。
 有信館の進級試験の後の懇親会の一席での事「当時の道場の気分はつまりはかくのごとくで、いまどきのように剣道の理念は人間形成であるなどとうたいあげ、それはたしかに結構な事だが、おかげで段位が人よりも上ならば人格もまた人より優れていると、いつのまにか思いこんでしまうようなおかしな風潮はまだはびこっておらず、その意味ではニセモノがいなかった。つけ焼き刃の浅薄な精神訓話を垂れてしたり顔する剣道家が巷に増え始めたのがいつ頃なのか、もっと調べてみないとわからない。」思いつくままに、余談です。

 全居連の刀法三本目切上げの元になった業は神道無念流にあるとされています。
切上げ:「剣理:敵が真向上段に抜き上げて仕懸けんとするを、我れ其の右腋つぼ(腋窩)に下から斬り上げ、直ちに双手上段から敵の左袈裟に斬りおろして勝つ意也」池田聖昂著全日本居合道刀法解説より。全日本居合道連盟全日本居合道刀法昭和31年1956年10月7日制定、昭和52年1979年5月1日配布の「切上げ」と同文。

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2019年10月 1日 (火)

曾田本その2を読み解く44神道無念流居合44の1敬礼

曾田本その2を読み解く
44、神道無念流居合
44の1敬礼

敬礼
1、開始の場合と帯刀
第1、右手に刀を堤げ正面に対し立礼し、堤刀は刀刃を上方にし栗形の下方を持ち(此際指は鍔にかけざるものとす)体に並行して約45度の位置にする。
第2、右足より三歩前進し、両踵を揃へ蹲踞し(此際刀を右腰にし鍔を体の中心前とす)左手を地につく如くして敬礼す。
第3、右手を以て刀を体の中央前膝の線に刀背を前方にし垂直に立つ。
第4、左手を以て下緒を「スゴク」如くして鐺の附近を持ち両手を以て帯刀する(この時左手の拇指を鍔の右内側より前方に押し鯉口を切り食指を以て刀の抜けざる様、左外側より後方にひき鍔は概ね体の中央前にある)
第5、起立して右足より三歩後退す(起立せる時右手は自然に垂れる)

2、終止の場合の脱刀
第1、右手を以て刀を脱し大腰に持ち来たって蹲踞して敬礼す(開始の場合と同じ)。
第2、起立して右足より三歩後退して立礼す。

刀の納め方
1、前の足を後足に引き付ると同時に刀を左肩に擔ぐ如く持ち来り左手は鯉口を持ち鞘を正しくす。
2、左手の拇指と食指とにて「はばき」の近くを挟み右手の拇指は縁頭の近くを其の他の指は下より鍔及柄を持つ
3、左足を後方に一歩引くと同時に右手を以て刀身を前下方に引き刀尖を鯉口の処に持ち来る。
4、右足を左足に引付つゝ刀身を鞘に納る。


 神道無念流の居合の手附を何処から手に入れたのでしょう、土佐の居合とどの様に関連付けてこの手附を曽田本その2に書き加えられたのか分かりません。
 単純に貴重な資料を手に入れたので覚書として書き留めて置いたのかも知れません。土佐の居合との違いを研究してより磨きをかけようとされたかもしれません。
  土佐の居合も谷村派だ下村派だとかその違いがよくわからないまま語られ、最近は大江先生以後の宗家筋に異論を持つのか分派が林立し、更に連れ立って何とか連盟などと云う意味不明の集合体を作ったりしています。大江居合に過ぎないくせに、業技法の形程度のことで分派するなど愚かなもので、そこそこ稽古を重ねれば一人一人の考え方や癖は強く出て来るものです。分派に至るのは業技法の考え方よりも宗家だ代表だと云う権威を手に入れた者が、箸の上げ下げ迄俺に従えと云う権力者になった様に錯覚し、共に歩んできた仲間を排除しようとしたり、無理やり自分の形に押し込めようとする事が原因かもしれません。小さな井戸の中で居場所を争って自己満足に浸っているようなものでしょう。
 分り合う事もせず一方的では嫌気もさすでしょう。異論を唱えられると権力者は暴力的になるものです。
 本物を求める意識も知恵もなく、まして年を取って自己主張ばかり強くなると、どうでもいいと投げやりになるかが目立ちます。話し合い理解し合う事を怠る、怠け者の集団の分裂に過ぎない様に思えて仕方が有りません。
 曽田先生は自流の本道を知ってしまったのですから、当然他流の研究も芽生えて来たのかも知れません。

 神道無念流も地域道場によっては、業技法が違う事もあり得るでしょう。神道無念流は夢想神傳流の育ての親中山博道先生の剣術であったと記憶しています。そこで中山博道先生の神道無念流居合に関する書籍から訪ねたのですが、曾田本その2の居合とは聊か抜方が違っています。
 神道無念流は信州飯綱権現で活眼して始祖となった福井平右衛門より始まると聞いています。享保20年1735年の事だそうです。
 敬礼および納刀法は大江居合とは異なりますが、文章を忠実に実行すれば簡単に出来てしまいますので解説は省略します。

 但し、納刀の方法については「前の足を後足に引き付ると同時に刀を左肩に擔ぐ如く持ち来る」は中山博道口述集の立居合初伝では「左足又は右足(後方に在った場合)を必ず前足につけると共に、諸手で刀を自分の前に垂直に刀尖を下にしてから左肩に刀峯を付けてかつぐ様にして、右手を逆手に持ち変えて左手を鯉口にして刀を前から納めるのである」と解説されています。
 「右手の拇指は縁頭の近くをその他の指は下より鍔及び柄を持つ」の文章とは少々違和感があります。が逆手には違いありません。抜けている部分を自分の力量の範囲で補うのも古伝を研究するのに役に立ちますが、やり過ぎは別のものになってしまいます。
 居合に就いては一本ずつ稽古して見たいと思います。

 

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